(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】乗物用シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20230711BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20230711BHJP
B60N 2/427 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B60N2/58
B68G7/05 B
B60N2/427
(21)【出願番号】P 2020019423
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 秀樹
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0222191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0113761(US,A1)
【文献】特開2006-199287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B68G 7/05
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション体であるシートパッドと、該シートパッドを被覆する複数のパーツが一体化されて形成されたシートカバーと、を有する乗物用シートであって、
前記シートカバーは、その一部に第1パーツと第2パーツが縫い合わされる縫製ラインと、該縫製ラインの片側において該縫製ラインと平行に延びるアウトステッチと、が設けられた部分を有しており、
前記第1パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第1縫い代の前記縫製ラインより前記第1縫い代の端末方向の位置において、帯状プレートが前記第1縫い代と前記第1パーツの本体とに対して前記アウトステッチによって縫い付けられており、
前記帯状プレートが前記縫製ラインより前記第2パーツの方向に延びて前記第2パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第2縫い代を前記第2パーツの本体に対して押圧して当接させた状態で、前記シートパッドが前記シートカバーで被覆されている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、前記シートパッドの内部にはエアバッグが配設されており、前記縫製ラインはエアバッグの展開により破断されるものであり、
前記帯状プレートの第2縫い代側の端部は、前記縫製ラインと前記第2縫い代の端部との間に位置している乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記縫製ラインと前記アウトステッチは互いに平行に曲線状に延びており、
前記帯状プレートには、前記帯状プレートの延びる方向に対して垂直な方向に延びる複数のスリットが少なくとも1つの側に所定間隔で設けられている乗物用シート。
【請求項4】
クッション体であるシートパッドと、該シートパッドを被覆する複数のパーツが一体化されて形成されたシートカバーと、を有する乗物用シートの製造方法であって、
前記シートカバーの一部分において第1パーツと第2パーツを縫製ラインで縫い合わせる第1工程と、
前記第1パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第1縫い代の前記縫製ラインより前記第1縫い代の端末方向の位置において、帯状プレートを前記第1縫い代と前記第1パーツの本体とに対して前記縫製ラインと平行に縫い付けるアウトステッチを設ける第2工程と、
前記帯状プレートを前記縫製ラインより前記第2パーツの方向に延びるように配置して前記第2パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第2縫い代を前記第2パーツの本体に対して押圧して当接させた状態で前記シートパッドを前記シートカバーで被覆する第3工程と、
を有している乗物用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートにおいて、表皮材であるシートカバーは複数のパーツを縫製ラインを設けることにより一体化して形成されている。ここで、縫製ラインとは別に縫製ラインに対して平行に延びる意匠線としてのアウトステッチを設けるものがある。かかるアウトステッチは縫製ラインの両側に設けられるものと、縫製ラインの片側のみに沿って設けられるものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、2つのパーツの縫製ラインの片側にのみ縫製ラインと平行にアウトステッチが設けられている。かかる場合に、アウトステッチが設けられるパーツの側の縫い代部分はアウトステッチによってパーツ本体に面状に当接した状態で固定される。しかし、アウトステッチが設けられないパーツの側の縫い代部分は縫製ラインを中心にパーツ本体に対して回動可能な状態とされパーツ本体に対して固定されていない。これによって、シートカバーをクッション体であるシートパッドに対して被せつけたとき、パーツ本体に対して固定されていない側の縫い代部分が縫製ラインの周辺で無制約に配置されることになる。この結果、縫製ラインが変則的に盛り上がったり凹んだりして外観品質を損なうおそれがあるという問題がった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、パーツ同士を一体化する縫製ラインの片側にのみ縫製ラインと平行にアウトステッチが設けられたシートカバーを有する外観見栄えの良い乗物用シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明の乗物用シートは、クッション体であるシートパッドと、該シートパッドを被覆する複数のパーツが一体化されて形成されたシートカバーと、を有している。 前記シートカバーは、その一部に第1パーツと第2パーツが縫い合わされる縫製ラインと、該縫製ラインの片側において該縫製ラインと平行に延びるアウトステッチと、が設けられた部分を有している。前記第1パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第1縫い代の前記縫製ラインより前記第1縫い代の端末方向の位置において、帯状プレートが前記第1縫い代と前記第1パーツの本体とに対して前記アウトステッチによって縫い付けられている。前記帯状プレートが前記縫製ラインより前記第2パーツの方向に延びて前記第2パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第2縫い代を前記第2パーツの本体に対して押圧して当接させた状態で、前記シートパッドが前記シートカバーで被覆されている。
【0007】
第1発明の乗物用シートは、第2縫い代が帯状プレートによって第2パーツの本体に対して押圧して当接させられた状態で、シートパッドがシートカバーで被覆されている。これによって、第2縫い代がシートパッドとの間に縫製ラインの周辺で無制約に配置されることにより縫製ラインの周縁部が変則的に盛り上がって外観品質が損なわれることがない。具体的に述べると、第2縫い代が第1パーツとシートパッドとの間に配置されたり第2パーツとシートパッドとの間に配置されたりして、縫製ラインの第1パーツの側が盛り上がったり第2パーツの側が盛り上がったりするのを回避できる。なお、アウトステッチとは、縫い目が表に出る縫製ラインをいう。
【0008】
本発明の第2発明の乗物用シートは、上記第1発明の乗物用シートにおいて、前記シートパッドの内部にはエアバッグが配設されており、前記縫製ラインはエアバッグの展開により破断されるものである。前記帯状プレートの第2縫い代側の端部は、前記縫製ラインと前記第2縫い代の端部との間に位置している。
【0009】
第2発明の乗物用シートは、帯状プレートが第2縫い代を第2パーツの本体に対して押圧して当接させた状態にするのに十分なだけの幅寸法を有しているにすぎない。これによって、エアバッグの展開時に縫製ラインを破断する作用を阻害せずに第1発明の乗物用シートの作用効果を奏することができる。
【0010】
本発明の第3発明の乗物用シートは、上記第1発明又は上記第2発明の乗物用シートにおいて、前記縫製ラインと前記アウトステッチは互いに平行に曲線状に延びている。そして、前記帯状プレートには、前記帯状プレートの延びる方向に対して垂直な方向に延びる複数のスリットが少なくとも1つの側に所定間隔で設けられている。
【0011】
第3発明によれば、帯状プレートには複数のスリットが設けられているので縫製ラインに沿って変形させるのが容易にでき外観品質の悪化を抑制できる。
【0012】
本発明の第4発明は、クッション体であるシートパッドと、該シートパッドを被覆する複数のパーツが一体化されて形成されたシートカバーと、を有する乗物用シートの製造方法である。この製造方法は、前記シートカバーの一部分において第1パーツと第2パーツを縫製ラインで縫い合わせる第1工程を有している。また、この製造方法は、前記第1パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第1縫い代の前記縫製ラインより前記第1縫い代の端末方向の位置において、帯状プレートを前記第1縫い代と前記第1パーツの本体とに対して前記縫製ラインと平行に縫い付けるアウトステッチを設ける第2工程を有している。さらに、この製造方法は、前記帯状プレートを前記縫製ラインより前記第2パーツの方向に延びるように配置して前記第2パーツにおける前記縫製ラインの縫い代である第2縫い代を前記第2パーツの本体に対して押圧して当接させた状態で前記シートパッドを前記シートカバーで被覆する第3工程を有している。
【0013】
第4発明によれば、第2縫い代が帯状プレートによって第2パーツの本体に対して押圧して当接させられた状態で、シートパッドがシートカバーで被覆される。これによって、第2縫い代がシートパッドとの間に縫製ラインの周辺で無制約に配置されることにより縫製ラインの周縁部が変則的に盛り上がって外観品質が損なわれることがない。具体的に述べると、第2縫い代が第1パーツとシートパッドとの間に配置されたり第2パーツとシートパッドとの間に配置されたりして、縫製ラインの第1パーツ側が盛り上がったり第2パーツの側が盛り上がったりするのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる自動車用シートの斜視図である。
【
図2】
図1におけるII-II矢視線断面図である。
【
図3】
図2におけるIII部分を拡大して示す図である。
【
図4】
図3に示すシートカバーの縫製ライン部を外側から見た斜視図である。
【
図5】
図3に示すシートカバーの縫製ライン部を内側から見た斜視図である。
【
図6】スリットを設けた帯状プレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図6は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用シート1に本発明を適用した例である。各図中、矢印により自動車用シート1を自動車に取付けたときの自動車及び自動車用シート1の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。本実施形態の自動車用シート1は、着座部となるシートクッション2と、背凭れとなるシートバック10と、頭部を支持するヘッドレスト(図示せず)を備える。シートクッション2、ヘッドレストについては、公知の構成のものであるので説明を省略し、シートバック10について説明していく。ここで、自動車用シート1が特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、シートバック10は、その骨格を成すバックフレーム11の上にクッション材である発泡ウレタン製のバックパッド12を載置し、その上から表皮材であるバックカバー13で覆った構造をしている。
【0017】
バックフレーム11は、上下方向に延びる断面が略U字状のプレス部材である左右一対のサイドフレーム11aの上部を正面視逆U字状のパイプ部材であるアッパフレーム11bで連結し、下部を正面視矩形状のプレス部材であるロアパネル11cで連結して、正面視で矩形枠状に形成した部材である。右側のサイドフレーム11a上部の右側面(シート外側面)には、エアバッグモジュール14が取付けられている。左右一対のサイドフレーム11aの下端部が、リクライナ(図示せず)を介してクッションフレーム(図示せず)の後端部に連結されてクッションフレームに対するバックフレーム11の傾きが調整可能となっている。エアバッグモジュール14は、ガスを発生するインフレータ14aと折畳まれたエアバッグ14bとを備えインフレータ14aがサイドフレーム11aに固定されることで取付けられている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、バックパッド12は、主に着座者の背部が当接する凹面形状の着座面を有する着座面部121と、着座者の側部を支える土手部122と、を有している。着座面部121は、着座者の背部上方中央部位を支える中央上部121aと、着座者の背部下方中央部位を支える中央下部121bと、を有している。土手部122は、着座面部121の左右両外側に位置しており、着座面部121よりも前方に向かって張り出した凸形状をしている。土手部122の左右の周縁後端部にはシート内側方向に向かって巻き返すように延びる包囲部123が設けられている。着座面部121の上下の各周縁後端部にはシート内側方向に向かって巻き返すように延びる包囲部(図示せず)が設けられている。左右の包囲部123及び上下の包囲部がバックフレームを覆った状態で、バックパッド12はバックフレーム11に対して取付けられている。バックパッド12とバックカバー13が、それぞれ特許請求の範囲の「シートパッド」と「シートカバー」に相当する。
【0019】
バックパッド12の着座面とは反対の面には不織布からなる裏面材124が一体的に接合されている。裏面材124は、バックパッド12の発泡成形時に予め成形型内に配置しておくことにより樹脂材料が含浸硬化して一体化されるものであり、バックパッド12の裏面がバックフレーム11のばね材に接触したときバックパッド12に亀裂等の損傷が及ばないようにする機能を有する。バックパッド12をバックフレーム11に対して取付けたとき、バックパッド12裏面の、エアバッグモジュール14のエアバッグ14bの前面に対向する位置には溝部125が設けられている。溝部125の開口端部で裏面材124は切り欠かれ開口部124aが設けられている。エアバッグ14bは、インフレータ14aからのガスが供給されると、開口部124a及び溝部125からバックパッド12を破断して展開可能とされている。
【0020】
図2~
図5に示すように、バックカバー13は、裁断した表皮材パーツを縫い合わせて袋状に形成したものである。表皮材としては、布帛や皮革等の表皮13aと、ウレタン製スラブパッド13bと、綿布や不織布製の裏基布13cと、をこの順に積層してラミネートした面状体が使用される(
図3を参照)。表皮材パーツとしては次のものがある。(1)バックパッド12の中央上部121aに対応するカバー中央上部131a、(2)バックパッド12の中央下部121bに対応するカバー中央下部131b、(3)バックパッド12の土手部122の着座面側に対応するカバー土手部132、(4)バックパッド12の上部及び左右側部を覆いカバー中央上部131aとカバー土手部132と連結されるカバー側部133、(5)バックパッド12の後部を覆いカバー側部133と連結されるカバー後部134、の5種類である。カバー土手部132のみが左右一対準備される。
【0021】
図1~
図3に示すように、カバー中央上部131aとカバー中央下部131bは、縫製ラインS1で縫製されており、カバー中央上部131a及びカバー中央下部131bと、カバー土手部132とは、縫製ラインS2で縫製されている。カバー中央上部131a及びカバー土手部132と、カバー側部133とは、縫製ラインS3で縫製されている。カバー側部133とカバー後部134とは縫製ラインS4で縫製されている。縫製ラインS1は、バックパッド12の左右方向に延びる吊り込み溝部(図示せず)に対して吊り込み固定され、縫製ラインS2は、バックパッド12の上下方向に延びる吊り込み溝部122aに対して吊り込み固定されている。吊り込み固定の方法については、バックパッド12にインサートされたワイヤに吊り綿布に取付けられたワイヤをホグリング等で係止する公知の方法なので詳しい説明を省略する。
【0022】
縫製ラインS3は、その一部がエアバッグモジュール14のエアバッグ14bが配設された位置の前方に対応する位置に位置している。
図3によく示されるように、カバー側部133は、カバー土手部132に対して縫製ラインS3で縫製されたのち、縫い代部133bが本体部133aに対してお互い裏基布13c側が当接するように縫製ラインS3で折り返される。そして、この状態で帯状の板部材である樹脂プレート15が縫い代部133bの表皮13aの側に重ね合わされてアウトステッチS5によって一体化される。カバー土手部132は、カバー側部133に対して縫製ラインS3で縫製されたのち、縫い代部132bが本体部132aに対してお互い裏基布13c側が当接するように縫製ラインS3で折り返される。そして、この状態で樹脂プレート15が縫い代部133bの表皮13aの側に重ね合わされて配置されることにより縫い代部132bが本体部132aに対して当接した状態が保持される。樹脂プレート15は、幅寸法が縫い代部133bの幅寸法と縫い代部132bの幅寸法とを合わせた寸法とされ縫製ラインS3に沿って延びている。樹脂プレート15は、軟質PVCの帯板状の部材で縫製が可能かつ縫い代部132bが本体部132aに対して当接した状態に保持可能な剛性を有している。
図6に示すように、樹脂プレート15の延びる方向に対して垂直な方向に延びる複数のスリット15aが所定間隔で設けられていると縫製ラインS3が曲線だった場合に沿わせやすい。スリット15aの長さは樹脂プレート15の幅寸法の1/4~1/2程度であってもよい。スリット15aは、樹脂プレート15の幅方向両側に設けてもよいが、少なくとも曲線のR外側方向の側に設ければ効果がある。ここで、縫製ラインS3と樹脂プレート15が、それぞれ特許請求の範囲の「縫製ライン」と「帯状プレート」に相当する。また、カバー側部133とカバー土手部132が、それぞれ特許請求の範囲の「第1パーツ」と「第2パーツ」に相当する。さらに、縫い代部133bと縫い代部132bが、それぞれ特許請求の範囲の「第1縫い代」と「第2縫い代」に相当する。加えて、本体部133aと本体部132aが、それぞれ特許請求の範囲の「第1パーツの本体」と「第2パーツの本体」に相当する。
【0023】
上記のように形成したバックカバー13をバックフレーム11に取り付けたバックパッド12の上に被せつける。すると、カバー土手部132の縫い代部132bは樹脂プレート15によって本体部132aに対して押し付けられた状態が保持される。これによって、縫い代部132bが縫製ラインS3を超えてカバー側部133の側に配置されたりして縫製ラインS3のカバー土手部132の側が盛り上がったりカバー側部133の側が盛り上がったりするのを回避できる。バックカバー13がバックフレーム11に取り付けたバックパッド12の上に被せつけられた状態で、エアバッグモジュール14のエアバッグ14bが展開し始めるとバックパッド12裏面の弱体化部である溝部125に応力が集中しここを起点にバックパッド12が破断し始める。次にこのエアバッグ14bの展開に伴う力は樹脂プレート15を介してバックカバー13の縫製ラインS3に印加され縫製ラインS3の破断が始まる。このとき、樹脂プレート15はアウトステッチS5によってカバー側部133にのみ連結されているので縫製ラインS3の破断を阻害しない。
【0024】
シートバック10の製造手順について説明する。まず、複数の表皮材パーツを縫製して袋状のバックカバー13を製造する。この工程において、カバー側部133とカバー土手部132を縫製ラインS3で縫製するのが第1工程である。次に、縫い代部133bが本体部133aに対してお互い裏基布13c側が当接するように縫製ラインS3で折り返す。そして、この状態で樹脂プレート15を縫い代部133bの表皮13aの側に重ね合わせてアウトステッチS5によって本体部133aと一体化する。この工程が第2工程である。最後に、縫い代部132bが本体部132aに対してお互い裏基布13c側が当接するように縫製ラインS3で折り返す。そして、この状態で樹脂プレート15が縫い代部133bの表皮13aの側に重ね合わされて配置されることにより縫い代部132bが本体部132aに対して当接した状態が保持される。この状態のバックカバー13をバックフレーム11に取り付けたバックパッド12の上に被せつける。この工程が第3工程である。
【0025】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。カバー土手部132の縫い代部132bが、樹脂プレート15によって本体部132aに対して押圧して当接させられた状態で、バックカバー13がバックパッド12の上に被せつけられている。これによって、縫い代部132bが、バックパッド12との間に縫製ラインS3の周辺で無制約に配置されることにより縫製ラインS3の周縁部が変則的に盛り上がって外観品質が損なわれることがない。具体的に述べると、縫い代部132bが、カバー側部133とバックパッド12との間に配置されたり、カバー土手部132とバックパッド12との間に配置されたりして、縫製ラインS3のカバー側部133の側が盛り上がったりカバー土手部132の側が盛り上がったりするのを回避できる。
【0026】
また、樹脂プレート15の縫い代部132bの側の端部は、縫い代部132bの端部と一致している。すなわち、樹脂プレート15は、縫い代部132bを本体部132aの方向に押圧して本体部132aに当接させた状態にするのに十分なだけの幅寸法を有しているにすぎない。これによって、エアバッグ14bの展開時に縫製ラインS3を破断する作用を阻害することを抑制できる。
【0027】
さらに、樹脂プレート15に所定間隔で複数のスリット15aを少なくとも1つの側に設けることによって、縫製ラインS3が曲線である場合に、縫製ラインS3に沿って変形させるのが容易にでき外観品質の悪化を抑制できる。
【0028】
加えて、シートバック10の製造は、3つの工程を有している。第1工程は、カバー側部133とカバー土手部132を縫製ラインS3で縫製する工程である。第2工程は、縫い代部133bを本体部133aに対して折り返した状態で樹脂プレート15を縫い代部133bの表皮13aの側に重ね合わせてアウトステッチS5によって本体部133aと一体化する工程である。第3工程は、縫い代部132bを本体部132aに対して折り返した状態で樹脂プレート15によって縫い代部132bが本体部132aに対して当接した状態として、バックカバー13をバックパッド12の上に被せつける工程である。これによって、シートバック10を合理的に製造できる。
【0029】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0030】
1.上記実施形態においては、自動車用シート1のシートバック10に本発明を適用したが、これに限らず、シートクッション2に適用することもできる。
【0031】
2.上記実施形態においては、樹脂プレート15の縫い代部132bの側の端部は、縫い代部132bの端部と一致するように構成した。しかし、これに限らず、縫い代部132bを本体部132aに対して折り返し当接した状態で保持できるならば、樹脂プレート15の縫い代部132bの側の端部を縫製ラインS3と縫い代部132bの端部との間に位置するように構成してもよい。
【0032】
3.上記実施形態においては、帯状プレートを、軟質PVCの帯板状の部材である樹脂プレート15として構成した。しかし、これに限らず、縫製が可能かつ縫い代部132bを本体部132aに対して当接した状態に保持可能な剛性を有しているならば、他の樹脂製であってもよいし、カーペット材、プレスフェルト材、ファブリック材等であってもよい。
【0033】
4.上記実施形態においては、樹脂プレート15に所定間隔で複数のスリット15aを設ける変形例を提示したが、スリット15aはある程度の幅を持った矩形状、三角形状、半円形状等の切欠きであってもよい。さらに、樹脂プレート15は、縫製ラインS3が曲線だった場合に、縫製ラインS3に沿うように湾曲しているものとしてもよい。
【0034】
5.上記実施形態においては、本発明を自動車用シートに適用したが、これに限らず、鉄道車両、船舶、航空機等のシートにも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車用シート(乗物用シート)
10 シートバック
12 バックパッド(シートパッド)
13 バックカバー(シートカバー)
14 エアバッグモジュール
14b エアバッグ
15 樹脂プレート(帯状プレート)
15a スリット
132 カバー土手部(第2パーツ)
132a 本体部(第2パーツの本体)
132b 縫い代部(第2縫い代)
133 カバー側部(第1パーツ)
133a 本体部(第1パーツの本体)
133b 縫い代部(第1縫い代)
S3 縫製ライン(縫製ライン)
S5 アウトステッチ