(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】タグ測定環境評価装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20230711BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G06K7/10 104
G06K7/00 095
(21)【出願番号】P 2020021749
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小川 昌幸
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-037663(JP,A)
【文献】特開2019-159862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0129461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G01S7/00-7/42
G01S13/00-13/95
H04B1/00、1/30、1/59、1/72
H04B5/00-5/06
H04B11/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止している無線タグ(5)である停止タグと区別しつつ、移動している前記無線タグを検知する移動タグ検知に適した測定環境であるかを評価するタグ測定環境評価装置であって、
前記無線タグから送信され、前記無線タグと通信するタグリーダ(10)が受信した電波をもとに、移動タグらしさを示す移動タグ評価値を決定する評価値決定部(S2、S12、S22)と、
複数の前記無線タグについての前記移動タグ評価値をもとに、前記移動タグ評価値の代表値である移動タグ評価代表値を決定する代表値決定部(S3、S14、S24)と、
前記移動タグ評価代表値をもとに、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定する環境評価部(S5、S16、S16-1、S250)とを備えている、タグ測定環境評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタグ測定環境評価装置であって、
前記代表値決定部(S14)は、前記移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により前記移動タグ評価値を分け、階級別に前記移動タグ評価代表値を決定し、
前記環境評価部(S16)は、階級別に決定した前記移動タグ評価代表値を相互に比較して、前記測定環境指標が、前記移動タグ検知に影響するか否かを決定する、タグ測定環境評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載のタグ測定環境評価装置であって、
前記代表値決定部(S14)は、前記移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により前記移動タグ評価値を分け、階級別に前記移動タグ評価代表値を決定し、
前記環境評価部(S16-1)は、階級別に決定した前記移動タグ評価代表値をそれぞれ閾値と比較し、全部の階級において、前記移動タグ評価代表値が閾値よりも移動タグ検知に適している側にあれば、測定環境が移動タグ検知に適しているとする、タグ測定環境評価装置。
【請求項4】
停止している無線タグ(5)である停止タグと区別しつつ、移動している前記無線タグを検知する移動タグ検知に適した測定環境であるかを評価するタグ測定環境評価装置であって、
前記無線タグから送信され、前記無線タグと通信するタグリーダ(10)が受信した電波をもとに、移動タグらしさを示す移動タグ評価値を決定する評価値決定部(S32、S42)と、
前記移動タグについての前記移動タグ評価値の分布、および、前記停止タグについての前記移動タグ評価値の分布の特徴を、それぞれ、移動タグ評価特徴値として決定する特徴値決定部(S34、S44)と、
前記移動タグについての前記移動タグ評価特徴値と前記停止タグについての前記移動タグ評価特徴値との乖離度合いを示す分布間距離(dm、dc)を算出する分布間距離算出部(S35、S45)と、
前記分布間距離が、予め設定されている閾値よりも大きいか否かを判断することで、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定する環境評価部(S36、S47)とを備えている、タグ測定環境評価装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のタグ測定環境評価装置であって、
前記特徴値決定部(S44)は、前記移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により前記移動タグ評価値を分け、階級別に前記移動タグ評価特徴値を決定し、
前記分布間距離算出部(S45)は、1つの階級における移動タグについての前記移動タグ評価値の分布に対する移動タグ評価特徴値と、別の階級における停止タグについての前記移動タグ評価値の分布に対する移動タグ評価特徴値との乖離度合いを示す分布間距離(dc)を算出する、タグ測定環境評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動タグと停止タグを区別するのに適した測定環境であるかどうかを評価するタグ測定環境評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動タグと静止タグとを区別する方法が開示されている。特許文献1に開示されている方法は、タグからの電波の電波受信強度、位相、ドップラー周波数の時系列データの特徴から、移動タグか静止タグかを判断している。また、特許文献1には、誤って静止タグと判定したタグを、移動タグと判定するためにパラメータを変更することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、個々の無線タグが、移動タグであるか静止タグすなわち停止タグであるかを判定する技術である。個々の無線タグが移動タグであるか停止タグであるかを判断するのでは、測定環境が移動タグを検知するのに適しているかを判断することが面倒である。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、容易に測定環境が移動タグ検知に適しているかを判断できるタグ測定環境評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための1つの開示は、
停止している無線タグ(5)である停止タグと区別しつつ、移動している無線タグを検知する移動タグ検知に適した測定環境であるかを評価するタグ測定環境評価装置であって、
無線タグから送信され、無線タグと通信するタグリーダ(10)が受信した電波をもとに、移動タグらしさを示す移動タグ評価値を決定する評価値決定部(S2、S12、S22)と、
複数の無線タグについての移動タグ評価値をもとに、移動タグ評価値の代表値である移動タグ評価代表値を決定する代表値決定部(S3、S14、S24)と、
移動タグ評価代表値をもとに、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定する環境評価部(S5、S16、S16-1、S250)とを備えている。
【0008】
複数の無線タグについて決定した移動タグ評価値の代表値である移動タグ評価代表値を用いることで、個々の移動タグを移動タグと認識しているかを判断するよりも、容易に測定環境の適否を判断できる。
【0009】
上記タグ測定環境評価装置において、
代表値決定部(S14)は、移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により移動タグ評価値を分け、階級別に移動タグ評価代表値を決定し、
環境評価部(S16)は、階級別に決定した移動タグ評価代表値を相互に比較して、測定環境指標が、移動タグ検知に影響するか否かを決定するようにしてもよい。
【0010】
このようにすることで、階級分けした測定環境指標が、移動タグ検知に影響するか否かが分かる。
【0011】
また、上記タグ測定環境評価装置において、
代表値決定部(S14)は、移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により移動タグ評価値を分け、階級別に移動タグ評価代表値を決定し、
環境評価部(S16-1)は、階級別に決定した移動タグ評価代表値をそれぞれ閾値と比較し、全部の階級において、移動タグ評価代表値が閾値よりも移動タグ検知に適している側にあれば、測定環境が移動タグ検知に適しているとする、ことができる。
【0012】
このようにすれば、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定できる。また、移動タグ評価代表値を測定環境指標の階級別に決定しているので、一部の階級の測定環境が移動タグ検知に適していないにも関わらず、測定環境が移動タグ検知に適していると決定してしまうことを抑制できる。
【0015】
また、上記タグ測定環境評価装置において、
停止している無線タグ(5)である停止タグと区別しつつ、移動している無線タグを検知する移動タグ検知に適した測定環境であるかを評価するタグ測定環境評価装置であって、
無線タグから送信され、無線タグと通信するタグリーダ(10)が受信した電波をもとに、移動タグらしさを示す移動タグ評価値を決定する評価値決定部(S32、S42)と、
移動タグについての移動タグ評価値の分布、および、停止タグについての移動タグ評価値の分布の特徴を、それぞれ、移動タグ評価特徴値として決定する特徴値決定部(S34、S44)と、
移動タグについての移動タグ評価特徴値と停止タグについての移動タグ評価特徴値との乖離度合いを示す分布間距離(dm、dc)を算出する分布間距離算出部(S35、S45)と、
分布間距離が、予め設定されている閾値よりも大きいか否かを判断することで、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定する環境評価部(S36、S47)とを備えている、とすることができる。
【0016】
このタグ測定環境評価装置では、移動タグの移動タグ評価値の分布と、停止タグの移動タグ評価値の分布とが区別可能であるかを、分布間距離を算出して判断している。このようにすることで、測定環境が移動タグ検知に適しているかを、容易に判断でき、かつ精度よく判断できる。
【0017】
また、上記タグ測定環境評価装置において、
特徴値決定部(S44)は、移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての指標である測定環境指標の階級により移動タグ評価値を分け、階級別に移動タグ評価特徴値を決定し、
分布間距離算出部(S46)は、1つの階級における移動タグについての移動タグ評価値の分布に対する移動タグ評価特徴値と、別の階級における停止タグについての移動タグ評価値の分布に対する移動タグ評価特徴値との乖離度合いを示す分布間距離(dc)を算出する、ことができる。
【0018】
このタグ測定環境評価装置では、測定環境指標により、移動タグ評価値を階級に分けている。そして、階級間で、移動タグについての移動タグ評価値の分布に対する移動タグ評価特徴値と、停止タグについての移動タグ評価特徴値の分布に対する移動タグ評価特徴値の分布間距離を算出している。このようにすることで、移動タグ検知の適否に与える、測定環境指標の変動の影響を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】複数の移動タグと停止タグの位相変化量と位相偏りをプロットした図。
【
図7】第1実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図8】第2実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図10】第3実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図12】第4実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図14】第5実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図16】速度と分布間距離dmとの関係を例示する図。
【
図17】停止タグ枚数と分布間距離dmとの関係を例示する図。
【
図18】速度を変化させて3回測定した結果を示す図。
【
図19】移動タグと停止タグの、位相変化量と位相偏りを二次元グラフにプロットした図。
【
図20】速度を分けて移動タグと停止タグの位相変化量と位相偏りを二次元グラフにプロットした図。
【
図21】第6実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図22】1回目のトライアル回数のみをグラフ表示した図。
【
図23】2回目のトライアル回数のみをグラフ表示した図。
【
図24】3回目のトライアル回数のみをグラフ表示した図。
【
図25】1回目のトライアル回数と他のトライアル回数との違いを説明している図。
【
図26】第8実施形態において評価装置20が実行する処理を示す図。
【
図27】移動タグ枚数と分布間距離の関係を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[使用状態の一例]
図1は、タグリーダ10の使用状態を示している。
図1に示す使用例では、タグリーダ10は、通路2の脇に設置されており、荷物3が、移動体であるフォークリフト4などにより運ばれて通路2を通過したことを検出するために用いられる。荷物3には無線タグ5が貼り付けられており、タグリーダ10は、フォークリフト4などにより運ばれている荷物3に貼り付けられた無線タグ5が移動していることを検出する。
【0021】
無線タグ5を検出するために、タグリーダ10は、探索波を逐次送信する。無線タグ5はパッシブ型であり、探索波を受信したことにより動作して、応答波を送信する。タグリーダ10は、無線タグ5が送信した応答波を受信できれば無線タグ5を検出できる。以下、 無線タグ5が送信し、タグリーダ10が受信する電波を受信波とする。
【0022】
無線タグ5が移動していることが検出でき、その後、無線タグ5が検出できなくなれば、無線タグ5が貼り付けられた荷物3は、通路2を通過したと判断できる。ただし、無線タグ5が貼り付けられた荷物3は、通路2の脇に仮置きされることもある。通路2の脇に置かれた荷物3に貼り付けられた無線タグ5も、タグリーダ10が送信する探索波に対して応答する。
【0023】
そこで、タグリーダ10は、受信波を送信した無線タグ5が移動している無線タグ5(すなわち移動タグ)であるか、停止している無線タグ5(すなわち停止タグ)であるかを識別する機能を備える。
【0024】
評価装置20は、タグリーダ10が、移動タグと停止タグを区別するのに適した測定環境であるかどうかを評価するタグ測定環境評価装置である。評価装置20は、タグリーダ10と接続されており、受信波を示す信号あるいは移動タグ評価値を取得する。そして、評価装置20は、移動タグ評価値をもとに、移動タグと停止タグを区別するのに適した測定環境であるかどうかを評価する。評価装置20は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータにより実現できる。
【0025】
[タグリーダ10の構成]
図2にタグリーダ10の構成を示す。タグリーダ10は、アンテナ11、送信機12、カプラ13、アンテナ共用器14、直交復調器15、バンドパスフィルタ16i、16q、ADコンバータ17i、17q、演算部18を備えている。
【0026】
アンテナ11は、通路2においてアンテナ11の正面にある部分を通信範囲19(
図1参照)に含むものが用いられる。ただし、通路2がある部分のみを通信範囲19とすることは困難であることから、タグリーダ10から見て通路2とは反対側の部分や、タグリーダ10から見て、通路2を超えた部分にも通信範囲19が存在する。
【0027】
送信機12は、無線タグ5に向けて送信する探索波を表す信号である探索信号を生成して出力する。この信号は、カプラ13により分岐されて、アンテナ共用器14および直交復調器15に向かう。アンテナ共用器14は、送信機12からの信号をアンテナ11に出力し、アンテナ11が受信した受信波を表す受信信号を直交復調器15に出力する。アンテナ11は、探索波を空中に放射し、無線タグ5からの電波を受信する。
【0028】
アンテナ11が受信した受信波は、直交復調器15に入力される。直交復調器15は、移相器151と、2つのミキサ152i、152qを備えている。移相器151には、カプラ13で分岐した探索信号が入力される。一方のミキサ152iには、受信信号と探索信号とが入力される。受信信号と探索信号とがミキサ152iで混合されると、ベースバンド信号の同相成分であるI信号が得られる。他方のミキサ152qには、受信信号と、探索信号が移相器151により位相φが90度移相された信号が入力される。このミキサ152qからは、ベースバンド信号の直交成分であるQ信号が得られる。
【0029】
ミキサ152iで得られた信号はバンドパスフィルタ16i、ADコンバータ17iを介して演算部18に入力され、ミキサ152qで得られた信号はバンドパスフィルタ16q、ADコンバータ17qを介して演算部18に入力される。
【0030】
演算部18は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMなどの記録媒体に記憶されているプログラムを実行することで、移動タグ判定処理を実行する。移動タグ判定処理は、移動タグ検知に適していると評価された移動タグ評価値を用いて行う。
【0031】
〔評価装置20の構成〕
評価装置20は、
図3に示すように、演算部21、表示部22、記憶部23、操作部24、通信部25などを備えている。演算部21は、CPU、ROM、RAM等を備えた構成であり、表示部22、記憶部23、操作部24、通信部25を制御する。表示部22は、液晶モニタなどであり、測定環境を評価した結果などが表示される。記憶部23は、フラッシュメモリなど書き込み可能な記憶媒体を備える。操作部24は、マウスやキーボード等であり、ユーザが測定環境を入力するために操作する。通信部25は、タグリーダ10や上位機器等の外部機器との間でのデータ通信を行うための通信インタフェースである。
【0032】
〔測定環境評価〕
次に、評価装置20が、移動タグと停止タグとを区別するのに適している測定環境であるかどうかを評価する方法を説明する。
図4は、複数の移動タグと停止タグに対して、位相変化量と位相偏りを算出した結果をプロットした図である。
図4は、移動タグの移動速度を種々に変更して位相変化量と位相偏りを算出している。位相変化量と位相偏りは、移動タグ評価値の一例である。
【0033】
移動タグ評価値は、移動タグと停止タグとで、その値が異なる評価値である。移動タグ評価値は、換言すれば、移動タグらしさを示す値である。位相変化量は、無線タグ5からタグリーダ10が逐次受信する受信波の位相φの時系列データから算出する。時系列データは、受信波の位相φを、受信波を取得した取得時刻に対応付けたデータである。受信波の位相φは式1から算出する。式1において、AQはQ信号の振幅であり、AIはI信号の振幅である。
【0034】
(式1) φ=tan-1(AQ/AI)
位相φは0~180度の値として算出するものとする。つまり、算出できる位相範囲は180度である。ただし、これとは異なり、位相φを0~360度の値として算出するようにしてもよい。
【0035】
位相変化量は、移動タグが、タグリーダ10を極座標中心としてある開始角度から終了角度まで移動する間に逐次得られる位相差の積分値である。開始角度と終了角度は任意である。たとえば、タグリーダ10が移動タグを検出すべき角度範囲の一方の端を開始角度とし、他方の端を終了角度とすることができる。
【0036】
ただし、無線タグ5は、停止タグである場合もある。停止タグは開始角度から終了角度まで移動しない。測定環境が移動タグ検知に適しているかを評価するためには、停止タグについても位相変化量を算出する必要がある。測定環境評価をする際には移動タグの移動速度は既知であるので、移動タグが開始角度から終了角度まで移動する時間は算出可能である。そこで、位相変化量は、移動タグが開始角度から終了角度まで移動する時間に相当する評価値算出時間に逐次得られるの位相差の積分値とする。
【0037】
図4に示すように、位相変化量は、停止タグであっても変化する。停止タグの位相変化量が変化する理由は、停止タグからの応答波として、移動している物体を介した反射波が生じるからである。移動している物体を介した反射波は、その物体の移動に応じて経路長が変化するので、その物体の移動に応じて位相も変化する。したがって、位相差の積算値である位相変化量も、停止タグであっても、反射波を生じる物体の位置によって変化するのである。
【0038】
このように、位相変化量は停止タグであっても変化する。しかし、
図4から分かるように、停止タグの位相変化量は、移動タグの位相変化量に比較して相対的に小さい。したがって、位相変化量は、移動タグ評価値の1つである。
【0039】
位相偏りは、評価値算出時間の間に逐次算出できる位相φが、どの程度、偏っているかを示す値である。位相偏りは、一例としては、式2を用いて算出する。
【0040】
(式2) 位相偏り(%)=(位相が偏り範囲にある測定点数/全測定点数)×100
式2において、「偏り範囲」は、停止タグであるときに位相が偏る範囲であり、位相φの時間変化をプロットしたグラフを見てユーザが設定する。また、0~90度の90度範囲など、範囲を予め設定してもよい。移動タグであれば、位相φはほぼ0~180度まで変化するため、位相偏りは50%などの低い値になる。一方、停止タグの位相φは、応答波として、停止タグからの直接波と反射波が存在するため、ある位相範囲では、直接波と反射波が合成された合成波が弱められる。その結果、ある位相範囲では合成波は観測されないことになるため、移動タグほどには、位相変化範囲が広くない。つまり、移動タグほどには位相φはばらつかない。よって、位相偏りは、移動タグ評価値の1つである。
【0041】
[移動タグ評価値の具体例]
図5に、移動タグ評価値の具体例と、移動タグであるときの評価値の傾向を示している。前述したように、位相変化量は、移動タグであるとき、位相変化量が大きくなる。位相偏りは、移動タグであるとき、偏りが少ない。
図5には、位相変化量および位相偏り以外に、ドップラー周波数、RSSI変化量、RSSI最大値、位相反転時間が、移動タグ評価値として示されている。
【0042】
ドップラー周波数は、無線タグ5からの応答波のドップラー周波数である。移動タグであれば、ドップラー周波数は高くなる。したがって、ドップラー周波数の平均値、最頻値、絶対値などの値が高くなる。RSSI変化量は、上述の評価値算出時間内におけるRSSIの最大値と最小値の差である。移動タグであれば、RSSI変化量は大きくなる。RSSI最大値は、上述の評価値算出時間内におけるRSSIの最大値である。移動タグであれば、RSSI最大値は高くなる。
【0043】
位相反転時間は、
図6を用いて説明する。
図6には、移動タグM1と移動タグM2の時間と位相との関係をプロットしている。位相反転時間は、各無線タグ5において、位相φが算出できるようになってから位相φの変化傾向が反転するまでの時間である。移動タグ間では、位相反転時間のばらつきは小さい。
【0044】
なお、同一の測定環境に対して、どの種類の移動タグ評価値を用いたとしても、移動タグ検知に適しているか否かの判断結果が同一になるわけではない。測定環境によっては、ある移動タグ評価値であれば移動タグ検知に適しているが、別の移動タグ評価値は移動タグ検知に適していないということもある。
【0045】
図7は、測定環境が、移動タグ検知に適しているかを判断する際に、評価装置20が実行する処理の一例を示すフローチャートである。評価装置20が
図7に示す処理を実行する場合、測定環境を評価するために、
図1に例示したような測定環境においてタグリーダ10に、各無線タグ5のI信号とQ信号を測定させる。第1実施形態における測定環境の評価は、移動タグのみを用いて行う。第1実施形態では、移動タグに対して算出した移動タグ評価値が、停止タグの移動タグ評価値では示しにくい値であるかを判断するのである。 ステップ(以下、ステップを省略)S1では、タグリーダ10から、各無線タグ5のI信号とQ信号を取得する。このS1の処理は、タグリーダ10がI信号とQ信号を測定している間に逐次行い、無線タグ5のI信号とQ信号を逐次取得してもよい。また、タグリーダ10が複数の無線タグ5のI信号とQ信号を記憶しておき、S1では、評価装置20は、タグリーダ10から複数の無線タグ5のI信号とQ信号をまとめて取得してもよい。
【0046】
評価値決定部に相当するS2では、S1で取得した信号をもとに、無線タグ5ごとに、移動タグ評価値を算出する。前述したように、複数種類の移動タグ評価値がある。このS2では、1種類以上の予め定められた移動タグ評価値を算出する。
【0047】
代表値決定部に相当するS3では、移動タグ評価代表値を算出する。移動タグ評価代表値は、S2において、複数の無線タグ5について算出した移動タグ評価値の代表値である。移動タグ評価代表値は、たとえば、移動タグ評価値の平均値、中央値、最頻値などである。
【0048】
S4では、S1で取得した信号をもとに、タグ検知指標を算出する。タグ検知指標は、無線タグ5が移動タグであるか停止タグであるかを問わず、無線タグ5の検知しやすさを示す指標である。タグ検知指標は、たとえば、1つの無線タグ5の読み取り回数である。1つの無線タグ5の読み取り回数が少ないと、位相変化量、位相偏りなどの移動タグ評価値の精度を担保できないからである。
【0049】
また、RSSI最大値、RSSI変化量は移動タグ評価値として説明したが、移動タグのみについてのこれらRSSI最大値、RSSI変化量はタグ検知指標である。移動タグのRSSI最大値が低い場合には移動タグを検出しにくいからである。また、移動タグのRSSI最大値が小さい場合には、RSSI変化量も小さくなる。したがって、移動タグのRSSI変化量もタグ検知指標として用いることができる。
【0050】
S5は環境評価部に相当する。S5は具体的にはS6~S9の処理である。S6では、S4で算出したタグ検知指標が閾値を超えているか否かを判断する。閾値はタグ検知指標別に予め設定されている。S4で複数種類のタグ検知指標を算出した場合、各タグ検知指標を閾値と比較する。複数種類のタグ検知指標を閾値と比較した場合、タグ検知指標を算出した種類の数に対する、閾値を超えているタグ検知指標の数の割合が、S6用に設定した閾値以上であればS6の判断結果をYESとする。一方、その割合がS6用に設定した閾値よりも小さければS6の判断結果をNOとする。S6の判断結果がNOであればS7に進む。
【0051】
S7では、測定環境は移動タグ検知に適していないと決定し、測定環境は移動タグ検知に適していないことを、表示部22に表示する。S6の判断結果がNOになる場合、測定環境は、無線タグ5が移動タグか停止タグかによらず、無線タグ5の検知に適していないと言える。
【0052】
S6の判断結果がYESであればS8に進む。S8では、S3で算出した移動タグ評価代表値が、移動タグらしい値かを判断する。具体的には、移動タグ評価代表値の種類別に予め設定した閾値と移動タグ評価代表値とを比較し、移動タグ評価代表値が閾値よりも、移動タグである場合に示す値側にあるか否かを判断する。S3で複数種類の移動タグ評価代表値を算出した場合、各移動タグ評価代表値を閾値と比較する。複数種類の移動タグ評価代表値を閾値と比較した場合、移動タグ評価代表値を算出した種類の数に対する、閾値を超えている移動タグ評価代表値の数の割合が、S8用に設定した閾値以上であればS8の判断結果をYESとする。一方、その割合がS8用に設定した閾値よりも小さければS8の判断結果をNOとする。この割合は100%、つまり、算出した全種類の移動タグ評価代表値が移動タグらいしい値であることをS8の判断結果をYESとする条件としてもよい。S8の判断結果がNOであればS7に進む。S8の判断結果がNOになってS7に進む場合、無線タグ5の存在を検知する環境としては問題ないが、移動タグと停止タグの区別をする点において、適していない測定環境であると言える。
【0053】
S8の判断結果もYESであればS9に進む。S9では、測定環境は、移動タグ検知に適していると決定し、測定環境は、移動タグ検知に適していることを、表示部22に表示する。
【0054】
〔第1実施形態のまとめ〕
第1実施形態では、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを判断するために、移動タグ評価代表値を算出している(S3)。移動タグ評価代表値は、複数の無線タグ5について算出した移動タグ評価値の特徴を示している。この移動タグ評価代表値をもとに、測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを判断している(S8)。
【0055】
このように、測定環境が移動タグ検知に適しているかを判断しているので、個々の移動タグを移動タグと認識しているかを判断するよりも、容易に測定環境の適否を判断できる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0057】
図8に、第2実施形態で評価装置20が
図7に代えて実行する、移動タグ検知適否を判断する処理を示す。
図8に示す処理も、移動タグ検知の適否を判断する処理であるが、特に、次に説明する測定環境指標の影響を判断する処理である。
【0058】
S11、S12は、それぞれS1、S2と同じであり、S12では、移動タグ評価値を算出する。したがって、S12は評価値決定部に相当する。S13では、測定環境指標の階級により、S12で算出した移動タグ評価値を分ける。測定環境指標は、移動タグ検知に影響する可能性がある測定環境についての種々の指標であり、量的指標と、質的指標とがある。測定環境指標の量的指標は、測定環境指標のうち量的な変化がある指標である。量的指標は、たとえば、速度、距離、移動タグ枚数、停止タグ枚数、停止タグ位置、読み取り回数などである。速度は、移動タグの移動速度である。
【0059】
速度は、フォークリフト4に設置した速度計あるいは加速度計から算出したり、カメラを設置して画像解析により算出したりすることもできる。また、評価装置20に手入力してもよいし、位相変化量を読み取り時間で除算して算出することもできる。なお、読み取り時間は、無線タグ5の情報が読み取れる期間を意味する。
【0060】
距離は、タグリーダ10と無線タグ5との最短距離である。距離は、最大RSSI値をもとに算出することができる。RSSIと距離との間には相関があるからである。また、測距センサを備えて算出してもよし、カメラを設置して画像解析により算出してもよい。また、手入力をしてもよい。
【0061】
移動タグ枚数は、同時に読み取ることができる移動タグ枚数である。同時は、一度の読取り処理を意味する。移動タグ枚数は評価装置20に手入力すればよい。また、移動タグのIDを事前に入手しておいて、無線タグ5との通信により同時に取得できたIDが、事前に入手しておいたIDと一致する数を移動タグ枚数とすることもできる。また、カメラを設置して画像解析により移動タグ枚数を算出してもよい。
【0062】
停止タグ枚数は、たとえば、通信できた無線タグ5の数から移動タグ枚数を引くことで算出できる。また、停止タグのIDを事前に入手しておいて、無線タグ5との通信により取得できたIDが、事前に入手しておいたIDと一致する数を停止タグ枚数とすることもできる。また、評価装置20に手入力することもできる。
【0063】
停止タグ位置は、タグリーダ10から最も近い停止タグまでの距離を手入力すればよい。読み取り回数は、移動タグが、通路2を通過する間にタグリーダ10が移動タグから情報を読み取ることができた回数である。
【0064】
測定環境指標の質的指標は、測定環境指標のうち量的な変化がない指標である。質的指標は、たとえば、一時停止有無、蛇行運転有無、タグ箱種、運転手などである。一時停止有無は、移動タグの読取り時間に対する、移動タグの位相変化量が停止とみなせるほどに小さくなっている期間の比率から判断することができる。また、フォークリフト4に取り付けた加速度センサをもとに算出できる速度が1km/hである時間が一時停止を判断するための閾値時間以上である場合に、一時停止有りとすることができる。
【0065】
蛇行運転有無は、フォークリフト4の経路が等速直線経路から外れたかどうかをカメラで監視することで、判断できる。タグ箱種は、タグIDとグループ分けの規則を事前に決めておき、通信により取得できたタグIDから決定することができる。運転手は、運転手に固有のタグを取り付け、タグとの通信により決定することができる。また、画像認識により決定してもよい。さらに、いずれの質的変数も、手入力することもできる。
【0066】
測定環境指標の階級は、測定環境指標が量的指標であれば、その量的指標を複数の数値範囲に分け、移動タグ評価値をその量的指標の数値範囲別に分類する。測定環境指標が質的指標であれば、移動タグ評価値をその質的指標の有無等別に分類する。
【0067】
図9には、測定環境指標を最大RSSI、速度、移動タグ枚数とした場合の分類が示されている。なお、最大RSSIは、前述した、タグリーダ10と無線タグ5との最短距離を意味する指標である。最大RSSIは、数値範囲が-50dBm以上と-60dBm以下の2つの階級に分類されている。したがって、最大RSSIが-60dBm~-50dBmは、いずれの階級にも分類されない。速度、移動タグ枚数も、いずれの階級にも分類されない数値範囲がある。このように、いずれの階級にも分類されない数値範囲があってもよい。いずれの階級にも分類されない数値範囲があることで、最大RSSIが-49dBmと-51dBmなど、互いに近接した指標値が異なる階級に分類されることが抑制される。これにより、測定環境指標の変動が、移動タグ検知に与える影響を判断しやすくなる。
【0068】
代表値決定部に相当するS14では、階級別に、移動タグ評価代表値を算出する。
図9には、移動タグ評価代表値として平均位相変化量を示している。平均位相変化量は、複数の無線タグ5に対して算出された位相変化量の平均値である。
【0069】
S15では、階級別の移動タグ評価代表値の差分を算出する。
図9の最大RSSIの例では3000-1000を算出する。3つ以上の階級に分けている場合には、最大のタグ評価代表値と最小のタグ評価代表値との差分を算出する。また、すべての階級の組み合わせについて差分を算出してもよい。
【0070】
環境評価部に相当するS16では、S15で算出した差分を、その差分に対して予め設定されている閾値と比較し、階級分けした測定環境指標が、移動タグ検知に影響するか否かを決定する。具体的には、差分のほうが閾値よりも大きい場合には、階級分けした測定環境指標が移動タグ検知に影響すると決定する。S17では、S16の決定結果を表示部22に表示する。
図9の例では、最大RSSIは影響ありとする決定結果が表示部22に表示されることになる。また、階級分けした測定環境指標が速度であれば影響なしとする決定結果が表示部22に表示され、階級分けした測定環境指標が移動タグ枚数であれば影響ありとする決定結果が表示部22に表示される。
【0071】
この第2実施形態によれば、移動タグ評価代表値を測定環境指標の階級に分けて算出しており(S14)、その階級別の移動タグ評価代表値を比較している。このようにすることで、階級分けした測定環境指標が、移動タグ検知に影響するか否かが分かる。
【0072】
<第3実施形態>
図10に、第3実施形態で評価装置20が実行する、移動タグ検知適否を判断する処理を示す。
図10に示す処理は、
図8に示す処理に代えて評価装置20が実行する。
図10に示す処理は、S14までは
図8と同じである。前述したように、S14では、測定環境指標の階級別に移動タグ評価代表値を算出する。
【0073】
図10では、
図8で実行していたS15は実行しない。また、S16に代えてS16-1を実行する。環境評価部に相当するS16-1では、階級別に、移動タグ評価代表値を、その移動タグ評価代表値に対して予め設定されている閾値と比較する。比較した結果、全部の階級において、移動タグ評価代表値が閾値よりも移動タグ検知に適している側にあれば、測定環境は移動タグ検知に適しており、かつ、測定環境指標は移動タグ検知に対する影響が少ないと決定する。比較した結果、いずれか1つの階級でも、移動タグ評価代表値が閾値よりも移動タグ検知に適していない側にあれば、移動タグ検知に適していないと決定する。閾値よりも移動タグ検知に適している側は、たとえば、平均位相変化量であれば閾値よりも大きい側であり、位相偏りの代表値であれば、閾値よりも小さい側である。S17-1では、S16-1の決定結果を表示部22に表示する。
【0074】
第2実施形態では、測定環境指標が移動タグ検知に影響するかどうかが決定できるにとどまっていた。しかし、この第3実施形態では、階級別に算出した移動タグ評価代表値をそれぞれ閾値と比較することで、測定データを得た測定環境が移動タグ検知に適しているかどうかを決定できる。また、移動タグ評価代表値を測定環境指標の階級別に算出しているので、測定データを得た一部の階級の測定環境が移動タグ検知に適していないにも関わらず、測定環境が移動タグ検知に適していると決定してしまうことを抑制できる。
【0075】
<第4実施形態>
次に第4実施形態を説明する。第4実施形態以降の実施形態では、測定環境に停止タグも配置して、測定環境が移動タグ検知に適しているかを評価する。停止タグは、種々の位置に配置すればよいが、
図11に例示する領域R1、領域R2に配置して測定を行うことが好ましい。領域R1は、タグリーダ10から、通路2に垂直にタグリーダ10から離れる方向に延びる領域である。領域R2は、タグリーダ10から、通路2と約45度で交差する角度でタグリーダ10および通路2から離れる方向に延びる領域である。
【0076】
領域R1に停止タグを配置すると、停止タグの読み取り回数が増加し、また、RSSIも高くなる。また、領域R2に停止タグを配置すると、停止タグの位相変化量や位相偏りが、移動タグの位相変化量や位相偏りに近くなる。このような領域R1、R2に停止タグを配置して測定環境を評価しても移動タグの検知に適していると判断できれば、測定環境は、十分に移動タグ検知に適していると判断できる。
【0077】
図12は、第4実施形態で評価装置20が実行する、移動タグ検知適否を判断する処理を示す。
図12に示す処理において、S21は、
図9のS11と同じであり、タグリーダ10から測定データを取得する。
【0078】
評価値決定部に相当するS22では、S21で取得した測定データをもとに、位相偏りと位相変化量を、各無線タグ5について算出する。この第4実施形態では、無線タグ5として移動タグと停止タグがある。したがって、このS22では、移動タグについての位相偏りと位相変化量すなわち移動タグ評価値と、停止タグについての位相偏りと位相変化量すなわち移動タグ評価値とが算出される。
【0079】
S23では、S22で算出した位相偏りと位相変化量を、測定環境指標の階級別に分ける。代表値決定部に相当するS24では、階級別、かつ、移動タグと停止タグを分けて、位相偏りの代表値と分散、位相変化量の代表値と分散を算出する。なお、分散に代えて標準偏差を算出してもよい。
【0080】
S251以下、すなわちS250は、階級別に実行する処理である。S250は環境評価部としての処理である。S251では、
図13に示すエリアAまたはエリアBに、停止タグの位相偏りの代表値と位相変化量の代表値により定まる点がないか否かを判断する。エリアAおよびエリアBは、停止タグの位相偏りおよび位相変化量と、移動タグの位相偏りおよび位相変化量の境界エリアである。エリアAおよびエリアBよりも
図13における右下には、測定環境によらず、停止タグの位相偏りおよび位相変化量により定まる点が位置しないことが、これまでの実験により明らかになっている。エリアAおよびエリアBの具体的な数値は、実験を繰り返して決定する。
【0081】
エリアAまたはエリアBに、停止タグの位相偏りの代表値と位相変化量の代表値により定まる点がない場合(S251がNO)、停止タグの位相偏りの代表値と位相変化量の代表値により定まる点は、エリアA、エリアBよりも左または上にあると言える。
【0082】
S251の判断結果がNOであればS254に進む。S254では、代表値を算出した母集団の分散がいずれも小さいかを判断する。分散が小さいかどうかを判断している理由は、分散が大きい場合、測定のばらつきが大きいことから、移動タグ検知に適していないと判断するためである。分散が小さいことを判断する閾値は適宜設定すればよい。また、S251の判断結果がNOになってS254に進む場合には、ほとんどの停止タグの位相偏りと位相変化量が、エリアAおよびエリアBよりも左または上にあると言えるかどうかを判断していることにもなる。
【0083】
S254の判断結果がYESであれば、移動タグと停止タグを区別可能であることになる。そこで、S255に進み、移動タグ検知に適していると決定し、かつ、決定結果を表示部22に表示する。
【0084】
S251の判断結果がYESであればS252に進む。S252では、エリアCに移動タグの位相偏りの代表値と位相変化量の代表値により定まる点があるか否かを判断する。エリアCも、停止タグの位相偏りおよび位相変化量と、移動タグの位相偏りおよび位相変化量の境界エリアである。エリアCよりも
図13における左あるいは上には、測定環境によらず、移動タグの位相偏りおよび位相変化量により定まる点が位置しないことが、これまでの実験により明らかになっている。エリアCの具体的な数値は、実験を繰り返して決定する。
【0085】
エリアCに移動タグの代表値がある場合、移動タグと停止タグの区別が困難であることになる。エリアCに移動タグの代表値がある場合には、S252の判断結果はYESとなる。S252の判断結果がNOであれば、移動タグの位相変化量および位相偏りにより定まる点は、ほとんど、エリアCよりも
図13の右あるいは下にあると判断することができる。S252の判断結果がNOであればS254に進み、分散が小さければ、移動タグ検知に適していると決定することになる。
【0086】
S252の判断結果がYESであればS253に進む。S253では、エリアDに移動タグの位相偏りの代表値と位相変化量の代表値により定まる点があるか否かを判断する。エリアDは、エリアCよりも移動タグの移動タグ評価値が存在しやすい側に、エリアCに隣接するエリアである。エリアCにもエリアDにも、移動タグの位相変化量および位相偏りにより定まる点がない場合、エリアDよりも右あるいは下側に、移動タグの位相変化量および位相偏りがあると判断できる、準境界エリアである。
【0087】
S253の判断結果がNOであればS254に進み、分散が小さければ、移動タグ検知に適していると決定することになる。
【0088】
S253の判断結果がYESであればS256に進み、移動タグ検知に適していないと決定し、決定結果を表示部22に表示する。
【0089】
この第4実施形態では、測定環境が、移動タグ検知に適しているかを、2種類の移動タグ評価代表値で判断している。したがって、1種類の移動タグ評価代表値で移動タグ検知に適しているかを判断するよりも、より精度のよい判断ができる。なお、移動タグ検知に適しているかを判断したものと同じ移動タグ評価値を、実際の移動タグ検知にも用いる。また、第4実施形態では、測定環境が、移動タグ検知に適しているかを、測定環境指標の階級別に判断することもできる。
【0090】
図4に示すように移動タグと停止タグの各点がプロットされている場合、位相変化量のみでは、移動タグと停止タグを区別することは難しい。また、位相偏りだけでも、移動タグと停止タグを区別することは難しい。しかし、
図4の例のように移動タグと停止タグの各点がプロットされている場合であっても、第4実施形態のように、位相変化量と位相偏りを2種類の移動タグ評価値を使うと、移動タグと停止タグが区別できる。
【0091】
<第5実施形態>
図14に、第5実施形態で評価装置20が実行する、移動タグ検知適否を判断する処理を示す。
図14において、S31~S33は、
図12のS21~S23と同じである。したがって、S32は評価値決定部に相当する。
【0092】
S34以下は、階級別に実行する処理である。特徴値決定部に相当するS34では、移動タグの点と停止タグの点の相互の最近接点を決定する。これら最近接点は、それぞれ、移動タグについての移動タグ評価値の分布の特徴を示す移動タグ評価特徴値と、停止タグについての移動タグ評価値の分布の特徴と示す移動タグ評価特徴値である。
【0093】
移動タグ評価特徴値は、停止タグ分布あるいは移動タグ分布における移動タグ評価値の特徴を示す値である。移動タグ評価特徴値は、たとえば、停止タグ分布あるいは移動タグ分布における移動タグ評価値の代表値、すなわち、平均値、中央値、最頻値などである。
【0094】
また、移動タグ評価特徴値は、端値でもよい。端値は、分布の端を表す値であって、移動タグと停止タグとを分ける境界に近い側の端を表す値である。端値は、たとえば、最大値または最小値である。また、端値は、最大値でなく上位10%などの上位層の代表値でもよく、最小値でなく下位10%などの下位層の代表値でもよい。
【0095】
分布間距離算出部に相当するS35では、それら2つの移動タグ評価特徴値の乖離度合いを示す分布間距離dmを算出する。分布間距離dmは
図15を用いて説明する。分布間距離dmは、移動タグの移動タグ評価値の分布と、停止タグの移動タグ評価値の分布との距離である。特に、本実施形態では、2つの移動タグ評価値を二次元グラフにプロットしたときの、移動タグの点と停止タグの点の相互の最近接点間の距離である。換言すれば、
図15に示す二次元グラフにおいて、移動タグの点と停止タグの点との間の距離のうちの最小距離が分布間距離dmである。
【0096】
環境評価部に相当するS36では、分布間距離dmは十分であるか否かを判断する。ここでの十分は、停止タグと移動タグを区別するのに十分であるかとう意味であり、この観点で設定された閾値よりもS34で算出した分布間距離dmが大きければ、分布間距離dmは十分であるとする。S36の判断結果がYESであればS37に進む。S37では、移動タグ検知に適していると決定し、決定結果を表示部22に表示する。
【0097】
S36の判断結果がNOであればS38に進む。S38では、移動タグ検知に適していないと決定する。続くS39では、効果のある改善案を探索し、探索した改善案を、S38の決定結果とともに表示部22に表示する。
【0098】
改善案は、分布間距離dmを効果的に大きくできる測定環境指標の改善を提案するものである。測定環境指標の変化に対する、複数の移動タグ評価値の分布間距離dmの関係は予め測定されている。
図16、
図17には、この関係を例示している。
【0099】
図16は、測定環境指標が速度である。縦軸の分布間距離dmは、
図15と同じく位相変化量と位相偏りの2つの移動タグ評価値をプロットしたグラフにおける分布間距離dmである。
図17は、測定環境指標が停止タグ枚数である。縦軸の分布間距離dmは、
図16と同じである。
図16に示す関係を見ると、速度が低くなると、分布間距離dmが大きくなることが分かる。一方、
図17に示す関係を見ると、停止タグ枚数を少なくしても、それほど分布間距離dmは大きくならないことが分かる。
【0100】
探索する改善案は、現在の測定環境指標のうち改善余地があるものを、分布間距離dmが大きくなる方向に変化させる案である。また、改善余地がある測定環境指標が複数ある場合、測定環境指標の変化に対する分布間距離dmの変化が大きいものから順に、測定環境指標を分布間距離dmが大きくなる方向に変化させる案を改善案とする。
【0101】
第5実施形態では、2つの移動タグ評価値、すなわち、位相変化量と位相偏りにより定まる点をグラフ上にプロットしたときに、停止タグの点および移動タグの点の相互の最近接点の間の距離により、移動タグと停止タグを区別できるかを判断している(S36)。このようにすることでも、移動タグと停止タグとを区別できるかを精度よく判断できる。
【0102】
また、この第5実施形態では、測定環境が移動タグ検知に適していないと判断した場合、改善案を探索して提示する(S39)。したがって、ユーザは、どのようにすれば、移動タグ検知に適した測定環境にできるかを知ることができる。
【0103】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態を説明する。
図18に示す表は、速度が移動タグ検知に適しているかを評価するために、測定環境指標である速度を3種類に変化させて、移動タグ評価値である位相変化量および位相偏りをタグ毎に算出した結果の一部を示している。
【0104】
図19には、1回目および2回目のトライアルにより得られたデータをもとに、移動タグと停止タグの位相変化量および位相偏りを二次元座標にプロットした図を示している。
図19を見ると、移動タグの位相変化量が分布している範囲と、停止タグの位相変化量が分布している範囲が、一部、重複していることが分かる。移動タグの位相変化量が分布している範囲と、停止タグの位相変化量が分布している範囲が重複している場合、停止タグを移動タグとしてしまったり、反対に、移動タグを停止タグとしてしまったりする恐れがある。したがって、測定環境は、移動タグ検知に適していないと言える。
【0105】
しかし、
図20の上図と下図では、それぞれ、移動タグと停止タグが区別できることが分かる。
図20の上図は、速度を相対的に遅くして測定したトライアル回数1回目のデータである。
図20の下図は、速度を相対的に早くして測定したトライアル回数2回目のデータである。
【0106】
第6実施形態では、評価装置20は
図21に示す処理を実行する。S41~S43は、
図12のS21~S23と同じである。したがって、S42は評価値決定部に相当する。特徴値決定部に相当するS44では、階級別に、移動タグ分布の移動タグ評価特徴値、停止タグ分布の移動タグ評価特徴値を決定する。
【0107】
分布間距離算出部に相当するS45では、階級間の分布間距離dcを算出する。階級間の分布間距離dcは、1つの階級における停止タグ分布の移動タグ評価特徴値と別の階級における移動タグ分布の移動タグ評価特徴値との差である。
【0108】
図20には、2つの階級間の分布間距離dcを示している。1つの分布間距離dc1は、速度を遅くして測定した停止タグの位相変化量の最大値と、速度を速くして測定した移動タグの位相変化量の最小値の差である。もう1つの分布間距離dc2は、速度を速くして測定した停止タグの位相変化量の最大値と、速度を遅くして測定した移動タグの位相変化量の最小値の差である。なお、
図20では、分布間距離dcは、位相変化量のみから算出しているが、第5実施形態の分布間距離dmのように、複数種類の移動タグ評価値により示される点間の最小距離とすることもできる。
【0109】
S46では、分布間距離差Δdcを算出する。分布間距離差Δdcは、S44で算出した複数の分布間距離dcの差である。
図20の例では、dc2-dc1が分布間距離差Δdcである。
【0110】
S47は環境評価部に相当する。S47は具体的にはS48~S54の処理である。S48では、S46で算出した分布間距離差Δdcが閾値TH以上であるか否かを判断する。S48の判断結果がYESであればS49に進む。S48の判断結果がYESになる場合、分布間距離dc1、dc2の大きさに閾値TH以上の違いがあることになる。そこで、S49では、階級分けした測定環境指標の影響が大きい、すなわち、
図20の例では速度影響が大きいと判断する。
【0111】
続くS50では、S49の判断結果すなわち速度影響が大きいこと、および、運用案を表示部22に表示する。運用案は、階級分けした測定環境指標別に予め設定されている。階級分けした測定環境指標が速度であれば、運用案は、速度変動を小さくする運用案である。速度影響を小さくするための具体的運用案としては、最大速度を下げる、最低速度を高くするなどの案がある。また、速度影響が大きいので、速度を検出し、速度帯別にグループ分けする案もある。
【0112】
S48の判断結果がNOであった場合にはS51に進む。S48の判断結果がNOになる場合、分布間距離dc1、dc2の大きさが類似していることになる。そこで、S51では、全部の分布間距離dcが広いか否かを判断する。S51の判断結果がNOであればS52に進む。
【0113】
S52に進んだ場合には、速度による階級分けをしても、移動タグと停止タグを区別できない。そこで、S52では、速度調整では、測定環境は改善しないと決定する。続くS53では、S52の決定結果と、他の測定環境指標の調整を検討することを提案するメッセージを、表示部22に表示する。
【0114】
S51の判断結果がYESであればS54に進む。S54に進む場合、全部の分布間距離dcはともに広い。そこで、S54では、速度影響がなく、測定環境は良好であると決定し、決定結果を表示部22に表示する。
【0115】
この第6実施形態では、測定環境指標である速度により、位相変化量と位相偏りを階級分けしている(S43)。そして、階級間の分布間距離dcが閾値TH以上であるかどうかを判断することで、移動タグ検知の適否に与える、測定環境指標である速度の変動の影響を判断することができる(S48)。そのため、速度影響が大きいと判断した場合に(S49)、適切に運用するための運用案を表示することができる(S50)。
【0116】
また、移動タグ検知の適否に与える、測定環境指標である速度の変動の影響を判断しているので(S48)、速度調整では測定環境が改善しないことや(S52)、速度影響がない(S54)という判断もできる。
【0117】
<第7実施形態>
第7実施形態は、第6実施形態の変形例である。第6実施形態では、
図18に示すように、トライアル回数別に速度を変更している。そこで、第7実施形態では、ユーザ操作により、あるトライアル回数が選択された場合、選択されたトライアル回数の位相変化量と位相偏りのみを表したグラフを表示部22に表示する。
【0118】
図22は、ユーザ操作により1回目のトライアル回数が選択された場合に表示するグラフ例である。
図23は、ユーザ操作により2回目のトライアル回数が選択された場合に表示するグラフ例である。
図24は、ユーザ操作により3回目のトライアル回数が選択された場合に表示するグラフ例である。
【0119】
このように、
図22~
図24に示されるような、選択されたトライアル回数の位相変化量と位相偏りのみがグラフ表示されると、ユーザ自身が、その表示を見て、速度影響の有無を確認することができる。
【0120】
また、
図22~
図24に示されるようなグラフに加えて、
図25に示すように、選択されたトライアル回数のデータを他のトライアル回数のデータと比較したときの相違点などを表示部22に表示してもよい。
図25に示す例は、1回目のトライアルデータが選択された場合の例である。
図25に示す例では、選択されたトライアル回数のデータを他のトライアル回数のデータと比較した相違点、その相違点が生じている理由、解決例が表示されている。
【0121】
<第8実施形態>
第8実施形態は、第5実施形態の変形例である。第8実施形態では、
図26に示すように、S37において移動タグ検知に適していると決定し、決定結果を表示部22に表示した後、S39を実行する。
【0122】
S39では、移動タグ検知に適している測定環境指標の範囲を決定して表示する。
図27には、測定環境指標が移動タグ枚数であるときの分布間距離dmを示している。
図27に示すグラフは、
図16に示すグラフと異なり、外挿により、分布間距離dmの最小値を決定している。
図27のグラフによれば、移動タグ枚数が40枚になると、分布間距離dmが0になる。分布間距離dmがいくつ以上であれば移動タグ検知に適しているかは事前に実験等により決定しておく。S39で表示部22に表示する一例としては、
図27のグラフにおいて、移動タグ検知に適している分布間距離dmの最小値となる移動タグ枚数を表示する。
【0123】
図28、
図29には、
図27とは別の例を示している。
図28は横軸が距離、すなわち、タグリーダ10と無線タグ5との最短距離である。縦軸は位相変化量である。
図29は、横軸が速度、縦軸は位相変化量である。
図28、
図29ともに、移動タグの最小値の変化を示す曲線および停止タグの最大値の変化を示す曲線の一部を、外挿により求めている。
【0124】
図27では、縦軸は、2つの移動タグ評価値から定まる二次元グラフ上での移動タグの点と停止タグの点との最小距離であった。しかし、1つの移動タグ評価値のみを用い、複数の移動タグの移動タグ評価値のうちの最小値と、複数の停止タグの移動タグ評価値のうちの最大値の差を、分布間距離dmとすることもできる。
【0125】
図28の例では、横軸の各距離において、移動タグの最小値と停止タグの最小値の差が分布間距離dmである。この分布間距離dmが0であっては、移動タグと停止タグを区別することができない。したがって、分布間距離dmが0よりも大きい値に設定された閾値以上となる距離の範囲が、移動タグ検知に適している距離の範囲である。
【0126】
図29は、横軸が速度になっている点が
図28と相違する。
図29の例では、各速度において、移動タグの最小値と停止タグの最小値の差が分布間距離dmである。分布間距離dmが0よりも大きい値に設定された閾値以上となる速度の範囲が、移動タグ検知に適している速度の範囲である。
【0127】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0128】
<変形例1>
第3実施形態では、階級別に、移動タグ評価代表値を、その移動タグ評価代表値に対して予め設定されている閾値と比較していた(S16-1)。しかし、S16-1において、移動タグ評価代表値に代えて、移動タグ評価値の最小値を、その移動タグ評価値の最小値と比較するために設定されている閾値と比較してもよい。
【0129】
<変形例2>
第6実施形態では、端値である速度を遅くして測定した停止タグの位相変化量の最大値と、同じく端値である速度を速くして測定した移動タグの位相変化量の最小値を、移動タグ評価特徴値としていた。しかし、第6実施形態で示した他の端値を移動タグ評価特徴値として用いてもよい。また、第6実施形態においても、代表値を移動タグ評価特徴値として用いてもよい。第6実施形態において、代表値を移動タグ評価特徴値として用いる場合には、端値を移動タグ評価特徴値として用いる場合よりも、大きい閾値THを用いる。また、代表値を移動タグ評価特徴値として用いる場合には、さらに、分散が小さいか否かも判断してもよい。分散が小さいか否かを判断する理由は第4実施形態と同じである。第5実施形態でも同様に、最大値、最小値以外の端値や、代表値を用いることもできる。
【0130】
<変形例3>
タグ検知指標をもとにした測定環境の適否判断は、第1実施形態のみ行なっている。しかし、第2実施形態以降でも、タグ検知指標をもとにした測定環境の適否判断を行なってもよい。
【符号の説明】
【0131】
2:通路 3:荷物 4:フォークリフト 5:無線タグ 10:タグリーダ 11:アンテナ 12:送信機 13:カプラ 14:アンテナ共用器 15:直交復調器 16i:バンドパスフィルタ 16q:バンドパスフィルタ 17i:ADコンバータ 17q:ADコンバータ 18:演算部 19:通信範囲 20:評価装置 21:演算部 22:表示部 23:記憶部 24:操作部 25:通信部 151:移相器 152i:ミキサ 152q:ミキサ 評価値決定部:S2、S12、S22、S32、S42 代表値決定部:S3、S14、S24 特徴値決定部:S34、S44 分布間距離算出部:S35、S45 環境評価部:S5、S16、S16-1、S250、S36、S47