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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20230711BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20230711BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M3/00 H
H02M3/155 W
H02M3/28 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020034184
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136850
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】小出 直孝
(72)【発明者】
【氏名】岩間 裕之
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-119257(JP,A)
【文献】特開2005-323479(JP,A)
【文献】特開2011-172318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H02M 3/155
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続される電力変換器と、
前記電力変換器に接続される複数の電力消費機器と、を備え、
各電力消費機器は、負荷および制御部を含み、
前記各電力消費機器において、前記制御部は2以上の異なる内部電圧のうちのいずれかの内部電圧で動作し、前記制御部が前記負荷を制御することで、前記負荷が前記電力変換器から供給される負荷電力を消費し、
前記電力変換器は、前記電源から出力される電力を利用して、前記負荷電力を生成して主電力線を通じて前記各電力消費機器に供給すると共に、前記2以上の異なる内部電圧を生成して制御系電力線を通じて前記各電力消費機器に供給する
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記電力変換器は、
前記2以上の異なる内部電圧に対応する2以上のDC/DCコンバータと、
前記2以上のDC/DCコンバータを制御する電力制御部と、を備え、
前記電力制御部は、前記複数の電力消費機器の動作に係わる指示に基づいて、前記2以上のDC/DCコンバータが生成する電力を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電力制御部は、前記複数の電力消費機器の動作に係わる指示および各電力消費機器の優先度に基づいて、前記2以上のDC/DCコンバータが生成する電力を制御する
ことを特徴とする請求項に記載の電源システム。
【請求項4】
前記複数の電力消費機器は、内部電圧ごとにグループ化され、
前記電力変換器は、グループごとに、電力消費機器に内部電圧を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項5】
前記複数の電力消費機器は、内部電圧ごと且つ各電力消費機器の優先度ごとにグループ化され、
前記電力変換器は、グループごとに、電力消費機器に内部電圧を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項6】
前記電力変換器および前記複数の電力消費機器は、車両に搭載される
ことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電源は高電圧バッテリであり、
前記電力変換器の出力側に、前記電力変換器から前記複数の電力消費機器の負荷に電力を供給するための電力バッファとして動作する低電圧バッテリが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力消費機器を備える電源システムに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車または産業車両等の車両には、様々な電気回路および電子機器が搭載されている。そして、車載バッテリから各電気回路および各電子機器に電力が供給される。ただし、車両に搭載される電気回路および電子機器に供給すべき電圧は、互いに同じではない。すなわち、様々な電圧を生成することが要求される。
【0003】
例えば、図1に示す例では、走行モータインバータ等の高電圧機器に加えて、パワーステアリング装置、ポンプ装置、センサ回路等の低電圧機器が車両に搭載されている。ここで、パワーステアリング装置およびポンプ装置は、内部電圧として直流5Vを必要とし、センサ回路は、内部電圧として直流3.3Vを必要とするものとする。内部電圧は、例えば、負荷を制御する制御デバイス等により使用される。
【0004】
高電圧機器には、高電圧バッテリから電力が供給される。また、低電圧機器には、電力変換器を介して電力が供給される。電力変換器は、DC/DCコンバータを含み、高電圧バッテリの出力電圧(例えば、250V)を所定の直流電圧(例えば、14V)に変換して出力する。低電圧バッテリは、電力バッファとして使用される。例えば、高電圧機器が大きな電力を要求し、電力変換器が十分な電力を出力できないときには、低電圧バッテリから低電圧機器に電力が供給されることがある。
【0005】
各低電圧機器は、自分が必要とする内部電圧を生成する内部電源を備える。例えば、パワーステアリング装置およびポンプ装置は、それぞれ、入力電圧を直流5Vに変換する内部電源を備える。また、センサ回路は、入力電圧を直流3.3Vに変換する内部電源を備える。
【0006】
なお、従来技術として、補機バッテリの入力電力に応じて外部充電時に用いられるDC/DCコンバータを適切に制御する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-111763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、各機器が必要とする内部電圧が異なる場合には、機器ごとに内部電源が設けられる。つまり、機器の数と同じ数の内部電源が必要になるので、車両全体のコストが高くなるおそれがある。また、各機器に設けられる内部電源が独立して動作するので、車両全体として電力効率が低下するおそれがある。なお、これらの問題は、車両のみにおいて発生するものではなく、必要な電圧が異なる複数の機器が実装される装置において発生し得る。
【0009】
本発明の1つの側面に係る目的は、複数の機器に電力を供給する電源システムにおいて内部電源部品を削減し、小型化および低コスト化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様の電源システムは、電源に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される複数の電力消費機器と、を備える。各電力消費機器は、2以上の異なる内部電圧のうちのいずれかの内部電圧で制御される負荷を含む。前記電力変換器は、前記電源から出力される電力を利用して、前記2以上の異なる内部電圧を生成する。
【0011】
上記構成によれば、各電力消費機器は、内部電圧を生成するための電源を備える必要はない。よって、各電力消費機器の小型化および低コスト化が実現される。
【0012】
前記電力変換機器は、前記2以上の異なる内部電圧に対応する2以上のDC/DCコンバータと、前記2以上のDC/DCコンバータを制御する電力制御部と、を備え、前記電力制御部は、前記複数の電力消費機器の動作に係わる指示に基づいて、前記2以上のDC/DCコンバータが生成する電力を制御してもよい。この場合、内部電圧を生成するための消費電力が削減され、電源システムとして効率を改善することができる。
【0013】
複数の電力消費機器は、内部電圧ごと且つ各電力消費機器の優先度ごとにグループ化されてもよい。この場合、電力変換器は、グループごとに、電力消費機器に内部電圧を供給する。この構成によれば、例えば、電力変換器から複数の電力消費機器に十分な電力を供給できないときであっても、少なくとも優先度の高い電力消費機器は動作を継続できる。
【発明の効果】
【0014】
上述の態様によれば、複数の機器に電力を供給する電源システムの内部電源部品を削減し、小型化および低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】複数の機器に電力を供給するシステムの一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係わる電源システムの一例を示す図である。
図3】電力変換器の一例を示す図である。
図4】電力制御部がDC/DCコンバータを制御するために使用する制御テーブルの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係わる電源システムのバリエーションを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係わる電源システムの他のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係わる電源システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる電源システム100は、高電圧バッテリ1、電力変換器2、低電圧バッテリ3、複数の補機4~6を備える。ただし、高電圧バッテリ1および低電圧バッテリ3は、電源システム100の構成要素でなくてもよい。すなわち、高電圧バッテリ1および低電圧バッテリ3は、電源システム100に接続する構成であってもよい。なお、電源システム100は、この実施例では、電気自動車等の車両に搭載されるものとする。
【0017】
高電圧バッテリ1は、例えば、不図示の充電器により充電される二次電池であり、電源システム100の電源として使用される。高電圧バッテリ1の出力電圧は、特に限定されるものではないが、例えば、250V~400V程度である。
【0018】
電力変換器2は、高電圧バッテリ1に接続され、高電圧バッテリ1から与えられる電力を変換して出力する。また、電力変換器2は、複数のDC/DCコンバータを含み、複数の異なる出力電圧を生成することができる。この例では、電力変換器2は、直流14V、直流5V、直流3.3V、直流1.3Vを生成できる。
【0019】
低電圧バッテリ3は、高電圧バッテリ1から出力される電力を利用して充電される二次電池であり、電源システム100の電力バッファとして使用される。例えば、高電圧機器50が大きな電力を要求し、電力変換器2から補機4~6に十分な電力を供給できないときには、低電圧バッテリ3から補機4~6に電力が供給されることがある。
【0020】
補機4~6は、車両に搭載される電気回路または電子機器である。具体的には、補機4~6は、例えば、DC/ACインバータ、パワーステアリング装置、パワーウィンドウ装置、パワーシート装置、ワイパー装置、オーディオ装置、センサ回路、ドアミラー駆動装置、ポンプ、LED回路などに相当する。そして、補機4~6は、それぞれ、電力変換器2に接続され、電力変換器2から与えられる電力で動作する。なお、各補機4~6は、電力変換器2から与えられる電力を消費する電力消費機器の一例である。
【0021】
各補機4~6は、負荷および制御部を含む。負荷は、当該補機の主要な動作を行う。例えば、パワーステアリング装置の負荷はモータであり、DC/ACインバータの負荷は、スイッチング素子を含むインバータ回路である。なお、各補機4~6の負荷が使用する電圧は、実際には必ずしも同じではないが、この実施例では、説明を簡単にするために、各補機4~6の負荷は、電力変換器2から与えられる直流14Vで動作するものとする。
【0022】
各補機4~6の制御部は、対応する負荷を制御する回路または電子部品であり、図2に示す例では、マイコンにより実現される。制御部の動作電圧は、補機4~6毎に異なっている。この実施例では、補機4(4a~4c)の制御部は直流5Vで動作し、補機5(5a~5c)の制御部は直流3.3Vで動作し、補機6(6a~6c)の制御部は直流1.3Vで動作する。なお、制御部の動作電圧を「内部電圧」と呼ぶことがある。
【0023】
電力変換器2と各補機4~6との間は、それぞれ、主電力線および制御系電力線で接続されている。主電力線Pは、電力変換器2から各補機4~6に直流14Vを伝達する。制御系電力線S1は、電力変換器2から各補機4(4a~4c)に直流5Vを伝達する。制御系電力線S2は、電力変換器2から各補機5(5a~5c)に直流3.3Vを伝達する。制御系電力線S3は、電力変換器2から各補機6(6a~6c)に直流1.3Vを伝達する。
【0024】
コントローラ30は、車両内で発生する指示に基づいて電力の使用に係わる電力制御指示を生成して電力変換器2に与える。例えば、車両の運転者がステアリングを操作したときには、コントローラ30は、パワーステアリング装置を駆動する旨の電力制御指示を生成して電力変換器2に与える。この場合、電力変換器2は、コントローラ30から与えられる指示に応じて電力変換器2内に実装されているDC/DCコンバータを制御することで必要な電力を生成する。なお、コントローラ30は、例えば、マイコンにより実現される。
【0025】
高電圧機器50は、車両に搭載される電気回路または電子機器である。高電圧機器50は、特に限定されるものではないが、例えば、車両の走行用モータ(または、走行用モータのためのインバータ回路)である。そして、高電圧機器50は、高電圧バッテリ1から与えられる電力で動作する。
【0026】
このように、本発明の実施形態に係わる電源システム100においては、電力変換器2が各補機4~6の内部電圧(即ち、制御部の動作電圧)を生成し、電力変換器2から各補機4~6に内部電圧が供給される。このため、各補機4~6は、自分で内部電圧を生成するための内部電源を備える必要はない。したがって、各補機4~6の構成が簡単になり、小型化および低コスト化が実現される。
【0027】
なお、電源システム100においては、図1に示す構成と比較して、電力変換器2と補機4~6との間の配線の数が増加する。ただし、本発明の実施形態では、内部電圧に応じて補機4~6をグループ化し、グループ毎に制御系電力線を設けることで、電力変換器2と補機4~6との間の配線の数の増加を抑制している。具体的には、内部電圧が5Vであるグループに属する補機4a~4cには、1本の制御系電力線S1を介して電力が供給される。同様に、内部電圧が3.3Vであるグループに属する補機5a~5cには、1本の制御系電力線S2を介して電力が供給される。また、内部電圧が1.3Vであるグループに属する補機6a~6cには、1本の制御系電力線S3を介して電力が供給される。ここで、各グループに属する補機は、対応する制御系電力線に対して芋づる式に接続される。具体的には、制御系電力線S1に補機4a~4cが芋づる式に接続され、制御系電力線S2に補機5a~5cが芋づる式に接続され、制御系電力線S3に補機6a~6cが芋づる式に接続される。よって、内部電圧ごとにグループ化することで、電力変換器2と補機4~6との間の配線の数が抑制される。
【0028】
図3は、電力変換器2の一例を示す。この例では、電力変換器2は、DC/DCコンバータ20~23および電力制御部24を備える。なお、電力変換器2は、図3に示していない他の回路またはデバイスを備えてもよい。
【0029】
DC/DCコンバータ20~23は、それぞれ入力電圧を所定の出力電圧に変換する。この実施例では、DC/DCコンバータ20、21、22、23は、入力電圧をそれぞれ14V、5V、3.3V、1.3Vに変換する。また、DC/DCコンバータ20~23は、電力制御部24から与えられる指示に従って、対応する補機が必要とする電力を生成する。なお、DC/DCコンバータ20~23がパルス幅変調方式で動作するときは、電力制御部24は、出力すべき出力に応じてパルスのデューティを表す指示を生成してもよい。
【0030】
電力制御部24は、コントローラ30から与えられる電力制御指示に従ってDC/DCコンバータ20~23を制御する。ここで、コントローラ30は、車両内で発生する指示に基づいて電力制御指示を生成する。例えば、車両の運転者がステアリングを操作したときには、コントローラ30は、パワーステアリング装置を駆動する旨の電力制御指示を生成して電力変換器2に与える。そうすると、電力変換器2は、コントローラ30から与えられる電力制御指示に応じて、電力変換器2内に実装されているDC/DCコンバータを駆動する。なお、電力制御部24は、例えば、マイコンにより実現される。
【0031】
図4は、電力制御部24がDC/DCコンバータ20~23を制御するために使用する制御テーブルの一例である。この制御テーブルには、コントローラ30から与えられる電力制御指示に対応するパラメータが登録されている。ここで、「負荷電力」は、電力制御指示が指定する補機の負荷の消費電力を表す。「内部電圧」は、電力制御指示が指定する補機の内部電圧を表す。「制御電力」は、電力制御指示が指定する補機の制御部の消費電力を表す。なお、各パラメータの値は、例えば、予め測定により取得されているものとする。
【0032】
電力制御部24は、図4に示す制御テーブルを参照して、各DC/DCコンバータ20~23の動作を決定する。例えば、パワーステアリング装置を駆動する旨の電力制御指示が与えられたときは、電力制御部24は、負荷電力として「20」が必要であり、5Vの制御部電力として「2」が必要であると判定する。この場合、電力制御部24は、直流14Vを出力するDC/DCコンバータ20に「電力=20」を生成させ、直流5Vを出力するDC/DCコンバータ21に「電力=2」を生成させる。
【0033】
コントローラ30から複数の電力制御指示が与えられたときには、電力制御部24は、出力電圧ごとに合計電力を計算する。例えば、DC/ACインバータを使用する旨の電力制御指示、及び、パワーステアリング装置を駆動する旨の電力制御指示が与えられたときには、電力制御部24は、負荷電力として「170」が必要であり、5Vの制御電力として「4」が必要であると判定する。この場合、電力制御部24は、直流14Vを出力するDC/DCコンバータ20に「電力=170」を生成させ、直流5Vを出力するDC/DCコンバータ21に「電力=4」を生成させる。
【0034】
また、パワーステアリング装置を駆動する旨の電力制御指示、及び、ワイパー装置を駆動する旨の電力制御指示が与えられたときには、電力制御部24は、負荷電力として「30」が必要であり、5Vの制御電力として「2」が必要であり、3.3Vの制御電力として「1」が必要であると判定する。この場合には、電力制御部24は、直流14Vを出力するDC/DCコンバータ20に「電力=30」を生成させ、直流5Vを出力するDC/DCコンバータ21に「電力=2」を生成させ、直流3.3Vを出力するDC/DCコンバータ22に「電力=1」を生成させる。
【0035】
なお、上述の実施例では、電力制御部24は、補機4~6の内部電圧毎に各電力制御指示に対応する電力の和を計算し、その計算結果に応じて各DC/DCコンバータを制御するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。例えば、複数の補機4~6が同時に動作する場合であっても、それらの全てがそれぞれ最大電力で動作するとは限らない。したがって、電力制御部24は、内部電圧毎に各電力制御指示に対応する電力の和を計算した後、その和に所定の係数K(Kは、1より小さい)を乗算してもよい。そして、電力制御部24は、この計算結果に応じて各DC/DCコンバータを制御する。
【0036】
したがって、電力制御部24により、各補機4~6の内部電圧を生成するための内部電圧に対応するDC/DCコンバータ21、22、23の消費電力が削減される。なお、係数Kは、例えば、予め実測またはシミュレーションにより決定される。また電力制御部24によりDC/DCコンバータ20を制御することで、さらに消費電力を削減することができる。したがって電源システムとして効率を改善することができる。
【0037】
<バリエーション>
車両には多数の補機が搭載されており、各補機の機能も様々である。例えば、運転状況を検知するためのセンサ回路、パワーステアリング装置、オイルポンプ等は、安全な走行を実現するために必要な補機であり、他の補機と比較して高い優先度で動作することが好ましい。一方、オーディオ機器等は、車両の走行に必須の機能とはいえないので、他の補機と比較して低い優先度で動作しても問題はないと考えられる。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係わる電源システムのバリエーションを示す。図5に示す電源システム100Bにおいては、車両に搭載される複数の補機は、各補機の内部電圧、且つ、各補機の優先度に応じてグループ化される。
【0039】
例えば、補機4H1~4H3には、最も高い優先度が与えられている。補機4M1~4M3には、2番目に高い優先度が与えられている。補機4L1~4L3には、他の補機より低い優先度が与えられている。なお、補機4H1~4H3、4M1~4M3、4L1~4L3の内部電圧は、いずれも直流5Vであるものとする。
【0040】
この場合、補機4H1~4H3が高優先グループに属し、補機4M1~4M3が中優先グループに属し、補機4L1~4L3が低優先グループに属するようにグループ化が行われる。そして、電力変換器2Bは、これらのグループそれぞれに対してDC/DCコンバータを備える。すなわち、高優先グループに属する補機4H1~4H3に対してDC/DCコンバータ21Hが設けられ、中優先グループに属する補機4M1~4M3に対してDC/DCコンバータ21Mが設けられ、低優先グループに属する補機4L1~4L3に対してDC/DCコンバータ21Lが設けられる。なお、各DC/DCコンバータ21H、21M、21Lは、直流5Vを出力する。
【0041】
また、各グループに対して制御系電力線が設けられる。そして、DC/DCコンバータ21Hに接続する制御系電力線Hに対して、高優先グループに属する補機4H1~4H3が芋づる式に接続される。同様に、DC/DCコンバータ21Mに接続する制御系電力線Mに対して、中優先グループに属する補機4M1~4M3が芋づる式に接続される。さらに、DC/DCコンバータ21Lに接続する制御系電力線Lに対して、低優先グループに属する補機4L1~4L3が芋づる式に接続される。
【0042】
電力変換器2Bは、コントローラ30から与えられる電力制御指示に従って各DC/DCコンバータを制御する。ただし、電力変換器2Bから各補機に対して十分な電力を供給できないときは、優先度の低いグループに属する補機への電力の供給を停止または抑制する。例えば、図2に示す高電圧機器50が大きな電力を要求し、電力変換器2Bから各補機に対して十分な電力を供給できないときは、電力変換器2Bは、DC/DCコンバータ21Lの出力を停止してもよい。また、電力変換器2Bは、DC/DCコンバータ20の出力電力を、補機4L1~4L3の負荷の消費電力の分だけ削減してもよい。
【0043】
この場合、優先度の低い補機は動作できなくなるが、優先度の高い補機は動作を継続できる。すなわち、何らかの理由によって電力変換器2Bから各補機に十分な電力を供給できない場合であっても、優先度の高い補機は動作を継続できるので、車両の走行に必要な機能は維持される。また、優先度によって不具合が生じた時などの安全対応を分けることもできる。例えば、低優先度の補機に不具合が生じた場合電力供給には即停止し、中優先度の補機に不具合が生じた場合には数秒後に電力供給を停止し、高優先度の補機に不具合が生じた場合には停止させないといったこともできる。なお、図5においては、内部電圧が5Vである補機のみが描かれているが、他の内部電圧の補機に対しても同様に優先度に基づくグループごとにDC/DCコンバータおよび制御系電力線が設けられる。
【0044】
図6は、本発明の実施形態に係わる電源システムの他のバリエーションを示す。図6に示す電源システム100Cにおいては、高電圧機器50の制御部(図6では、マイコン)に与えられる内部電圧が、電力変換器2により生成される。そして、例えば、高電圧機器50の内部電圧が直流5Vである場合、制御系電力線S1は、補機4a~4cだけではなく、高電圧機器50にも内部電力を供給する。
【0045】
また、上述の実施例では、1つの補機が1つの内部電圧を使用するが、1つの補機が複数の内部電圧を使用することもある。例えば、図2に示す電源システム100において、ある補機が、内部電圧として、直流5Vおよび直流3.3Vを使用するものとする。この場合、この補機は、制御系電力線S1および制御系電力線S2に接続される。
【0046】
なお、本発明の実施形態に係わる電源システム100、100B、100Cが搭載される車両は、特に限定されるものではない。例えば、電源システム100、100B、100Cは、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、ガソリン車、またはディーゼル車に搭載される。ガソリン車、またはディーゼル車の場合、低電圧バッテリ3が電源として機能する。また、電源システム100、100B、100Cは、サーバシステム等の定置型のシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 高電圧バッテリ
2、2B 電力変換器
3 低電圧バッテリ
4(4a~4c)、5(5a~5c)、6(6a~6c) 補機
20~23 DC/DCコンバータ
24 電力制御部
30 コントローラ
50 高電圧機器
100、100B、100C 電源システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6