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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/03 20060101AFI20230711BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H04L25/03 B
H04L25/02 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020040059
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141543
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正志
(72)【発明者】
【氏名】真下 誠
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-167536(JP,A)
【文献】特開2016-96472(JP,A)
【文献】特開平9-275421(JP,A)
【文献】特開2003-46655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体及び第2導体と、
前記第1導体に接続される回路素子を有し、2つの導線の電圧差で表される差動信号に処理を施すアナログ回路と、
キャパシタを除く他の回路素子を含み、前記アナログ回路に接続される接続回路と、
前記アナログ回路が処理を施した差動信号を、前記接続回路を介して受信し、受信した差動信号に基づいて、基準電位が前記第2導体の電位である信号を生成する通信回路と、
キャパシタとは異なる回路素子であり、前記第1導体及び第2導体間に接続される接続素子と、
前記第1導体、第2導体、アナログ回路、接続回路、通信回路及び接続素子が収容される導電性の収容箱と
を備え、
前記収容箱は、前記第1導体及び第2導体の中で表面積が大きい導体に導通している
通信装置。
【請求項2】
前記第2導体の表面積は前記第1導体の表面積よりも大きい
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
抵抗と、
前記抵抗を介して、電圧が入力される入力回路と、
前記抵抗の一端及び前記第1導体間に接続される第1キャパシタと、
前記抵抗の他端及び前記第2導体間に接続される第2キャパシタと
を備える請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
外部装置に着脱可能に接続されるコネクタと、
前記入力回路に入力された電圧に基づいて前記コネクタへの前記外部装置の接続を検知する検知部と
を備え、
前記コネクタ及び抵抗を介して電圧が前記入力回路に入力され、
前記検知部は、前記入力回路に入力された電圧が閾値電圧以上である場合に前記外部装置の接続を検知する
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記抵抗及び第1導体間の距離は、前記抵抗及び第2導体間の距離と一致している
請求項3又は請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記アナログ回路は、差動信号の反射を防止する終端回路を有し、
前記終端回路は、差動信号が伝播する2つの導線の中途と、前記第1導体とに接続している
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項7】
前記接続回路は、コモンモードチョークコイルを有し、
前記通信回路は、前記接続回路を介して差動信号を送信する
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項8】
基準電位が前記第1導体の電位である直流の電圧からノイズを除去する除去器を備え、
前記除去器は、基準電位が前記第2導体の電位であってノイズが除去された電圧を、電力供給のための電力線に印加し、
前記除去器はインダクタを有し、
前記インダクタは前記接続素子である
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、複数の通信装置が相互に通信する通信システム(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載されている通信装置は、ECU(Electronic Control Unit)であり、2つの電圧の差で表される差動信号を受信する。通信装置では、差動信号がアナログ回路に入力される。アナログ回路の基準電位(ゼロVの基準)は接地電位である。アナログ回路は、入力された差動信号にアナログ処理を施す。アナログ回路がアナログ処理を施した差動信号を通信回路が受信する。通信回路は、受信した差動信号を、基準電位が接地電位であるシングルエンド信号に変換し、変換したシングルエンド信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-111911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような従来の通信装置においては、アナログ回路に入力した高周波ノイズが通信回路に入り、通信回路に入力した高周波ノイズがアナログ回路に入る。アナログ回路及び通信回路中の一方の回路から他方の回路に入る高周波ノイズが大きい場合、高周波ノイズが入った回路において、誤った処理が行われる可能性がある。更に、アナログ回路及び通信回路それぞれの設計において、自身の回路に入力した高周波ノイズだけではなく、他の回路から入力した高周波ノイズも考慮しなければならない。このため、アナログ回路及び通信回路それぞれの回路設計が難しいという問題がある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アナログ回路及び通信回路中の一方の回路から他方の回路に入る高周波ノイズが小さい通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る通信装置は、第1導体及び第2導体と、前記第1導体に接続される回路素子を有し、2つの導線の電圧差で表される差動信号に処理を施すアナログ回路と、キャパシタを除く他の回路素子を含み、前記アナログ回路に接続される接続回路と、前記アナログ回路が処理を施した差動信号を、前記接続回路を介して受信し、受信した差動信号に基づいて、基準電位が前記第2導体の電位である信号を生成する通信回路と、キャパシタとは異なる回路素子であり、前記第1導体及び第2導体間に接続される接続素子と、前記第1導体、第2導体、アナログ回路、接続回路、通信回路及び接続素子が収容される導電性の収容箱とを備え、前記収容箱は、前記第1導体及び第2導体の中で表面積が大きい導体に導通している。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、アナログ回路及び通信回路中の一方の回路から他方の回路に入る高周波ノイズが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1における通信装置の概要の説明図である。
図2】通信装置の要部構成を示すブロック図である。
図3】通信装置の分解図である。
図4】通信装置の平面図である。
図5】通信装置の側面図である。
図6】通信装置の断面図である。
図7】回路基板の平面図である。
図8】収容箱の効果の説明図である。
図9】アナログ回路の説明図である。
図10】検知回路の説明図である。
図11】抵抗の配置の説明図である。
図12】実施形態2における回路基板の平面図である。
図13】実施形態2における通信装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る通信装置は、第1導体及び第2導体と、前記第1導体に接続される回路素子を有し、2つの導線の電圧差で表される差動信号に処理を施すアナログ回路と、キャパシタを除く他の回路素子を含み、前記アナログ回路に接続される接続回路と、前記アナログ回路が処理を施した差動信号を、前記接続回路を介して受信し、受信した差動信号に基づいて、基準電位が前記第2導体の電位である信号を生成する通信回路と、キャパシタとは異なる回路素子であり、前記第1導体及び第2導体間に接続される接続素子と、前記第1導体、第2導体、アナログ回路、接続回路、通信回路及び接続素子が収容される導電性の収容箱とを備え、前記収容箱は、前記第1導体及び第2導体の中で表面積が大きい導体に導通している。
【0011】
上記の態様にあっては、キャパシタを除く他の回路素子、例えば、インダクタ又は抵抗等を含む接続回路を介して、アナログ回路は、アナログ処理を施した差動信号を通信回路に送信する。第1導体及び第2導体間に、インダクタ又は抵抗等の接続素子が接続されている。接続回路及び接続素子それぞれは、自身を介した高周波ノイズの伝播を抑制する。このため、高周波ノイズがアナログ回路に入った場合において、アナログ回路から通信回路に入る高周波ノイズは小さい。同様に、高周波ノイズが通信回路に入った場合において、通信回路からアナログ回路に入る高周波ノイズは小さい。
【0012】
また、第1導体、第2導体、アナログ回路、接続回路、通信回路及び接続素子が収容箱に収容されているので、アナログ回路及び通信回路に入る高周波ノイズは小さい。更に、アナログ回路及び通信回路から外部に出る高周波ノイズも小さい。更に、第1導体及び第2導体の中で表面積が大きい一方の導体に収容箱は導通している。このため、収容箱と他方の導体との間に形成される浮遊容量と、第1導体及び第2導体間に形成される浮遊容量とは小さい。結果、浮遊容量を介してアナログ回路から通信回路に入る高周波ノイズは小さく、浮遊容量を介して通信回路からアナログ回路に入る高周波ノイズも小さい。
【0013】
(2)本開示の一態様に係る通信装置では、前記第2導体の表面積は前記第1導体の表面積よりも大きい。
【0014】
上記の態様にあっては、アナログ回路に接続されている第1導体の表面積は小さく、通信回路に接続されている第2導体の表面積は大きい。
【0015】
(3)本開示の一態様に係る通信装置は、抵抗と、前記抵抗を介して、電圧が入力される入力回路と、前記抵抗の一端及び前記第1導体間に接続される第1キャパシタと、前記抵抗の他端及び前記第2導体間に接続される第2キャパシタとを備える。
【0016】
上記の態様にあっては、抵抗及び接続素子それぞれは、自身を介した高周波ノイズの伝播を抑制する。このため、高周波ノイズが第1導体に入った場合において、第1キャパシタ及び抵抗の順に伝播する高周波ノイズは小さく、第1導体から第2導体に入る高周波ノイズも小さい。高周波ノイズが第2導体に入った場合において、第2キャパシタ及び抵抗の順に伝播する高周波ノイズは小さく、第2導体から第1導体に入る高周波ノイズも小さい。
【0017】
(4)本開示の一態様に係る通信装置は、外部装置に着脱可能に接続されるコネクタと、前記入力回路に入力された電圧に基づいて前記コネクタへの前記外部装置の接続を検知する検知部とを備え、前記コネクタ及び抵抗を介して電圧が前記入力回路に入力され、前記検知部は、前記入力回路に入力された電圧が閾値電圧以上である場合に前記外部装置の接続を検知する。
【0018】
上記の態様にあっては、コネクタ及び抵抗を介して入力回路に入力された電圧が閾値電圧以上である場合にコネクタへの外部装置の接続を検知する。
【0019】
(5)本開示の一態様に係る通信装置では、前記抵抗及び第1導体間の距離は、前記抵抗及び第2導体間の距離と一致している。
【0020】
上記の態様にあっては、第1導体との距離と、第2導体との距離とが一致するように抵抗が配置される。このため、第1導体及び第2導体間の距離が長く、第1導体及び第2導体間に形成される浮遊容量は更に小さい。
【0021】
(6)本開示の一態様に係る通信装置では、前記アナログ回路は、差動信号の反射を防止する終端回路を有し、前記終端回路は、差動信号が伝播する2つの導線の中途と、前記第1導体とに接続している。
【0022】
上記の態様にあっては、差動信号が伝播する2つの導線の中途と、第1導体とに終端回路が接続している。終端回路は、差動信号の反射を防止する。
【0023】
(7)本開示の一態様に係る通信装置では、前記接続回路は、コモンモードチョークコイルを有し、前記通信回路は、前記接続回路を介して差動信号を送信する。
【0024】
上記の態様にあっては、接続回路はコモンモードチョークコイルを有する。コモンモードチョークコイルは2つのインダクタを有する。2つのインダクタそれぞれは、アナログ回路及び通信回路を接続する2つの導線の中途に配置されている。差動信号は、2つの導線を介して伝播する。コモンモードチョークコイルは、アナログ回路から通信回路へ伝播する差動信号からコモンモードノイズを除去するとともに、通信回路からアナログ回路へ伝播する差動信号からコモンモードノイズを除去する。
【0025】
(8)本開示の一態様に係る通信装置は、基準電位が前記第1導体の電位である直流の電圧からノイズを除去する除去器を備え、前記除去器は、基準電位が前記第2導体の電位であってノイズが除去された電圧を、電力供給のための電力線に印加し、前記除去器はインダクタを有し、前記インダクタは前記接続素子である。
【0026】
上記の態様にあっては、除去器は、基準電位が第1導体の電位である電圧からノイズを除去し、基準電位が第2導体の電位であってノイズが除去された電圧を電力線に印加する。除去器は、例えば、コモンモードチョークコイルであり、インダクタを有する。このインダクタが接続素子として第1導体及び第2導体間に接続されている。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る通信装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<通信装置の概要>
図1は、本実施形態における通信装置10の概要の説明図である。通信装置10は、ECU(Electronic Control Unit)又はゲートウェイ等であり、車両に搭載される。通信装置10はコネクタ20を備える。コネクタ20は、ケーブル11、又は、ダイアグツール12のコネクタ12aに着脱可能に接続される。
【0029】
ケーブル11が通信装置10のコネクタ20に接続している場合、電力がケーブル11を介して通信装置10に供給され、通信装置10が作動する。通信装置10は、ケーブル11を介して、図示しない他の通信装置と差動信号の送受信を行う。通信装置10は、BroadR-Reachと呼ばれる通信規格、又は、CAN(Controller Area Network)の通信規格等に基づく送受信を行う。
【0030】
通信装置10が、例えば、車両のドアの施錠及び解錠を行うモータの動作を制御するECUである場合においては、通信装置10は、ドアの解錠を指示する差動信号を受信したとき、モータにドアを解錠させる。例えば、車両のドアが施錠されているか否かを検知するセンサが通信装置10に接続されている場合においては、通信装置10は、センサの検知結果を示す差動信号を他の通信装置に送信し、検知結果を通知する。
【0031】
ダイアグツール12のコネクタ12aが通信装置10のコネクタ20に接続している場合、ダイアグツール12は通信装置10に電力を供給する。これにより、通信装置10は作動する。通信装置10及びダイアグツール12は相互に通信する。例えば、通信装置10は、故障の検知に用いるデータ、所謂ログデータを含む差動信号をダイアグツール12に送信する。また、例えば、ダイアグツール12は、通信装置10で実行されるコンピュータプログラムを更新するための更新データを含む差動信号を通信装置10に送信する。
【0032】
<通信装置10の構成>
図2は、通信装置10の要部構成を示すブロック図である。通信装置10は、コネクタ20に加えて、アナログ回路21、接続回路22、通信回路23、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)24、コモンモードチョークコイル25、レギュレータ26、検知回路27、第1導体G1及び第2導体G2を備える。これらは、導線によって接続される。電力供給に用いられる導線、即ち、電力線を太い実線で示している。第1導体G1及び第2導体G2それぞれは、導電性を有し、例えば、金属製である。
【0033】
接続回路22はコモンモードチョークコイル30を有する。コモンモードチョークコイル30は、第1インダクタ30a及び第2インダクタ30bを有する。コモンモードチョークコイル30では、図示しない環状の磁性体に第1インダクタ30a及び第2インダクタ30bが巻き付いている。コモンモードチョークコイル25は、第1インダクタ25a及び第2インダクタ25bを有する。コモンモードチョークコイル25は、コモンモードチョークコイル30と同様に構成されている。
【0034】
コネクタ20は、アナログ回路21に2つの導線によって接続されている。アナログ回路21には、更に、コモンモードチョークコイル30の第1インダクタ30a及び第2インダクタ30bの一端が2つの導線によって接続されている。アナログ回路21は、更に、導線によって第1導体G1に接続されている。第1導体G1への接続は、所謂接地である。コモンモードチョークコイル30の第1インダクタ30a及び第2インダクタ30bの他端は通信回路23に2つの導線によって接続されている。通信回路23は、更に、2つの導線によって、マイコン24及び第2導体G2に接続されている。第2導体G2への接続も所謂接地である。
【0035】
コネクタ20は、更に、導線によって、コモンモードチョークコイル25の第1インダクタ25aの一端に接続されている。コネクタ20は、更に、導線によって、コモンモードチョークコイル25の第2インダクタ25bの一端と、第1導体G1とに接続されている。第1インダクタ25aの他端は、導線によってレギュレータ26に接続されている。第2インダクタ25bの他端は、導線によって第2導体G2に接続されている。レギュレータ26は、更に、2つの導線によって、マイコン24及び第2導体G2に接続されている。マイコン24は、更に、導線によって第2導体G2に接続されている。
【0036】
コネクタ20は、更に、2つの導線によって検知回路27及び第1導体G1に接続されている。検知回路27は、更に、3つの導線によって、マイコン24、第1導体G1及び第2導体G2に接続されている。
【0037】
ケーブル11がコネクタ20に接続された場合、ケーブル11は、アナログ回路21、コモンモードチョークコイル25及び第1導体G1に接続される。コネクタ20及び検知回路27を接続する導線において、コネクタ20側の一端は開放される。
ダイアグツール12のコネクタ12aがコネクタ20に接続された場合、ダイアグツール12のコネクタ12aは、アナログ回路21、コモンモードチョークコイル25、検知回路27及び第1導体G1に接続される。
【0038】
差動信号は、ケーブル11又はダイアグツール12から、コネクタ20を介してアナログ回路21に入力される。差動信号は、2値信号であり、2つの導線の電圧差で表される。例えば、所定値以上の電圧差によって差動信号の「0」が表され、所定値未満の電圧差によって差動信号の「1」が表される。差動信号は2つの導線を介して伝播する。
アナログ回路21の基準電位(ゼロVの基準)は第1導体G1の電位である。アナログ回路21は、コネクタ20から入力された差動信号にアナログ処理を施す。通信回路23は、アナログ回路21がアナログ処理を施した差動信号を、接続回路22のコモンモードチョークコイル30を介して受信する。
【0039】
コモンモードチョークコイル30は、アナログ回路21がアナログ処理を施した差動信号からコモンモードノイズを除去し、コモンモードノイズを除去した差動信号を通信回路23に出力する。コモンモードノイズは、差動信号が伝播する2つの導線に同相で重畳するノイズである。接続回路22はキャパシタを除く他の回路素子を含む。
【0040】
通信回路23は、受信した差動信号に基づいて、基準電位が第2導体G2の電位であるシングルエンド信号を生成し、生成したシングルエンド信号をマイコン24に出力する。マイコン24は、通信回路23から入力されたシングルエンド信号の電圧を読み取る。これにより、マイコン24は、シングルエンド信号に含まれるデータを取得する。マイコン24は、通信回路23から入力されたシングルエンド信号に含まれるデータに基づいて種々の処理を実行する。
【0041】
マイコン24は、基準電位が第2導体G2の電位であるシングルエンド信号を通信回路23に出力する。通信回路23は、マイコン24から入力されたシングルエンド信号に基づいて差動信号に生成する。通信回路23は、生成した差動信号を、接続回路22、アナログ回路21及びコネクタ20を介して、図示しない通信装置又はダイアグツール12に送信する。接続回路22のコモンモードチョークコイル30は、通信回路23が送信した差動信号からコモンモードノイズを除去する。コモンモードチョークコイル30は、コモンモードノイズを除去した差動信号を、アナログ回路21及びコネクタ20を介して出力する。
【0042】
ケーブル11又はダイアグツール12から、コネクタ20を介して、コモンモードチョークコイル25に、基準電位が第1導体G1の電位である直流の電圧が入力される。コモンモードチョークコイル25は、第1インダクタ25a及び第2インダクタ25bに入力した電圧からコモンモードノイズを除去する。コモンモードチョークコイル25がコモンモードノイズを除去した電圧は、基準電位が第2導体G2の電位である電圧である。コモンモードチョークコイル25は、コモンモードノイズを除去した電圧を、レギュレータ26に接続されている導線に印加する。これにより、コモンモードノイズを除去した電圧がレギュレータ26に出力される。コモンモードチョークコイル25は除去器として機能する。図2に示すように、コネクタ20及び第1インダクタ25a間に接続される導線と、第1インダクタ25a及びレギュレータ26間に接続される導線と、レギュレータ26及びマイコン24間に接続される導線とは電力線である。
【0043】
レギュレータ26は、コモンモードチョークコイル25から入力された直流の電圧を、予め設定されている設定電圧に変換する。設定電圧は、基準電位が第2導体G2の電位である直流の電圧である。レギュレータ26は、変換した設定電圧をマイコン24に出力する。これにより、マイコン24に電力が供給される。
なお、レギュレータ26は、更に、通信回路23に設定電圧を出力し、通信回路23に電力を供給してもよい。
【0044】
ダイアグツール12のコネクタ12aがコネクタ20に接続された場合、ダイアグツール12は、基準電位が第1導体G1の電位である直流の電圧を検知回路27に出力し続ける。ダイアグツール12が出力する電圧は、予め設定されている閾値電圧以上である。ダイアグツール12のコネクタ12aがコネクタ20に接続されていない場合、ゼロVが検知回路27に出力される。ここで、ゼロVは、基準電位が第1導体G1の電位である電圧であり、閾値電圧未満である。
【0045】
検知回路27は、第2導体G2の電位を基準とした電圧をマイコン24に出力する。検知回路27は、ゼロV又は所定電圧Vc(図10参照)を出力する。検知回路27は、コネクタ20から入力された電圧が閾値電圧以上である場合、即ち、ダイアグツール12が接続されている場合、ゼロVをマイコン24に出力する。検知回路27は、コネクタ20から入力された電圧が閾値電圧未満である場合、即ち、ダイアグツール12が接続されていない場合、所定電圧Vcをマイコン24に出力する。マイコン24は、検知回路27から入力された電圧に基づいて、コネクタ20へのダイアグツール12のコネクタ12aの接続を検知する。
【0046】
<通信装置10の外観>
図3は通信装置10の分解図である。回路基板Bの上側の板面に、コネクタ20、アナログ回路21、接続回路22、通信回路23、マイコン24、コモンモードチョークコイル25、レギュレータ26及び検知回路27が配置されている。図3では、コネクタ20、アナログ回路21、マイコン24、レギュレータ26及び検知回路27が示されている。回路基板B内に、第1導体G1及び第2導体G2が配置されている。コネクタ20は、回路基板Bの前側の前縁部に配置されている。コネクタ20の一部は前縁よりも前側に突出している。
【0047】
回路基板Bの上側の板面には、図示しないスルーホール及び導電路が設けられている。導電路は、所謂回路パターンである。スルーホール及び導電路を用いて、第1導体G1又は第2導体G2への接続が実現される。具体的には、スルーホールの面に導箔が貼り付けられている。導箔は導電路と導通している。導箔及び導電路の両方、又は、導電路によって、導線が形成されている。
【0048】
図4は通信装置10の平面図である。図5は通信装置10の側面図である。図6は通信装置10の断面図である。図3図6に示すように、通信装置10では、アナログ回路21、接続回路22、通信回路23、マイコン24、コモンモードチョークコイル25、レギュレータ26、検知回路27及び回路基板Bは、導電性の収容箱4に収容されている。収容箱4は例えば金属製である。
【0049】
収容箱4は、回路基板Bの上側の板面を覆う導電性の上側覆い体4aと、回路基板Bの下側の板面を覆う導電性の下側覆い体4bとによって構成される。上側覆い体4a及び下側覆い体4bそれぞれは、一面が開放された箱体状をなす。上側覆い体4aは、底壁が上側となるように配置されている。下側覆い体4bは、底壁が下側となるように配置されている。上側覆い体4aの開口面の縁部は、下側覆い体4bの開口面の縁部と接触している。上側覆い体4aの内部に回路基板Bの上側の板面が配置される。下側覆い体4bの内部に回路基板Bの下側の板面が配置される。
【0050】
上側覆い体4aの底壁には、下側に凹んだ凹部40a,41aが形成されている。上側覆い体4aの底壁は、矩形状をなし、回路基板Bの上側の板面と対向している。2つの凹部40aそれぞれは、上側覆い体4aの底面の左辺部及び右辺部の中途に設けられている。上側覆い体4aの底壁の後辺部全体が凹んでおり、これにより、凹部41aが形成されている。
【0051】
下側覆い体4bの底壁には、上側に凹んだ凹部40b,41bが形成されている。下側覆い体4bの底壁は、矩形状をなし、回路基板Bの下側の板面と対向している。2つの凹部40bそれぞれは、下側覆い体4bの底壁の左辺部及び右辺部の中途に設けられている。下側覆い体4bの底壁の後辺部全体が凹んでおり、これにより、凹部41bが形成されている。図6に示すように、上側覆い体4aの凹部40a,41aそれぞれの底面は、下側覆い体4bの凹部40b,41bの底面に対向している。
【0052】
上側覆い体4aには、上下方向に貫通する4つの貫通孔42aが設けられている。図4に示すように、2つの貫通孔42aそれぞれは、2つの凹部40aの底壁に設けられている。残り2つの貫通孔42aそれぞれは、凹部41aの左側及び右側に設けられている。同様に、下側覆い体4bにも、上下方向に貫通する4つの貫通孔42bが設けられている。2つの貫通孔42bそれぞれは、2つの凹部40bの底壁に設けられている。残り2つの貫通孔42bそれぞれは、凹部41bの左側及び右側に設けられている。上側覆い体4aの4つの貫通孔42aそれぞれは、下側覆い体4bの4つの貫通孔42bに対向している。
【0053】
図7は回路基板Bの平面図である。図6及び図7に示すように、回路基板Bの上側の板面の4箇所それぞれにおいて、第2導体G2は露出している。回路基板Bの下側の板面の4箇所それぞれにおいても、第2導体G2は露出している。回路基板Bの上側の板面における第2導体G2の4つの露出面それぞれの下側に、回路基板Bの下側の板面における第2導体G2の4つの露出面が配置されている。
【0054】
第2導体G2の4つの露出面それぞれにおいて、上下方向に貫通する螺子孔52が設けられている。図6に示すように、上側覆い体4aの4つの貫通孔42aそれぞれに4つの螺子50の螺子部を上側から通している状態で、4つの螺子50それぞれを4つの螺子孔52に挿入する。4つの螺子50を締める。これにより、上側覆い体4aの貫通孔42aの周縁部は、螺子50の頭部と回路基板Bとによって挟まれる。このとき、上側覆い体4aの貫通孔42aの周縁部は第2導体G2に接触し、上側覆い体4aは第2導体G2に導通する。
【0055】
4つの螺子50を締めた場合、4つの螺子50の螺子部は回路基板Bの下側に突出している。下側覆い体4bの4つの貫通孔42bそれぞれに、下側に突出している4つの螺子50の螺子部を上側から通している状態で、4つの螺子50それぞれの螺子部に4つのナット51を先端から装着する。これにより、下側覆い体4bの貫通孔42bの周縁部は、ナット51と回路基板Bとによって挟まれる。このとき、下側覆い体4bの貫通孔42bの周縁部は第2導体G2に接触し、下側覆い体4bは第2導体G2に導通する。上側覆い体4aは、第2導体G2を介して下側覆い体4bと導通している。4つの螺子50及び4つのナット51は、導電性を有し、例えば金属製である。
【0056】
前述したように、上側覆い体4aの開口面の縁部は、下側覆い体4bの開口面の縁部と接触している。上側覆い体4aは、縁部分において下側覆い体4bと直接に導通している。上側覆い体4aの前壁には、前後方向に貫通する図示しない開口が設けられている。コネクタ20は、上側覆い体4aの開口を挿通し、収容箱4の前側に突出している。
【0057】
<通信装置10の構成部の配置>
図3及び図7に示すように、回路基板Bは矩形状をなし、第1導体G1及び第2導体G2それぞれは矩形板状をなす。第1導体G1及び第2導体G2の板面は、回路基板Bの板面と対向している。第2導体G2の表面積は、第1導体G1の表面積よりも大きい。第1導体G1及び第2導体G2は、前後方向に並べられている。第1導体G1及び第2導体G2は、互いに接触していない状態で、絶縁性の樹脂によって覆われている。
【0058】
図7に示すように、第1導体G1に接続し、かつ、第2導体G2に接続しないアナログ回路21は、第1導体G1の上側に配置されている。第1導体G1及び第2導体G2の両方に接続するコモンモードチョークコイル25及び検知回路27は、第1導体G1及び第2導体G2の上側に配置されている。第1導体G1及び第2導体G2の両方に接続しない接続回路22のコモンモードチョークコイル30も、第1導体G1及び第2導体G2の上側に配置されている。第1導体G1に接続せず、かつ、第2導体G2に接続する通信回路23、マイコン24及びレギュレータ26は、第2導体G2の上側に配置されている。
【0059】
図8は収容箱4の効果の説明図である。前述したように、アナログ回路21、接続回路22、通信回路23、マイコン24、コモンモードチョークコイル25、レギュレータ26、検知回路27及び回路基板Bは、導電性の収容箱4に収容されている。このため、通信装置10の外部で発生した高周波ノイズは通信装置10内に入りにくく、アナログ回路21、通信回路23、マイコン24及び検知回路27等に入る高周波ノイズは小さい。一例として、高周波ノイズは、静電気の発生に伴って発生する。他例として、高周波ノイズは、通信装置10の近傍に配置された導線を信号が伝播した場合に発生する電磁界の干渉によって発生する。
【0060】
また、アナログ回路21、通信回路23、マイコン24及び検知回路27等で発生した高周波ノイズは、通信装置10の外部に出にくい。結果、アナログ回路21、通信回路23、マイコン24及び検知回路27等から通信装置10の外部に出る高周波ノイズも小さい。
【0061】
第1導体G1は、収容箱4及び第2導体G2に導通していない。従って、収容箱4及び第1導体G1間において容量結合は発生し、第1導体G1及び第2導体G2間において容量結合が発生する。容量結合が発生した場合、浮遊容量が形成される。
通信装置10では、収容箱4は、第1導体G1の表面積よりも表面積が大きい第2導体G2に導通している。このため、収容箱4と表面積が小さい第1導体G1との間に形成される浮遊容量は小さく、第1導体G1及び第2導体G2間に形成される浮遊容量も小さい。従って、浮遊容量を介して、第1導体G1に接続している回路から、第2導体G2に接続している回路に入る高周波ノイズは小さい。浮遊容量を介して、第2導体G2に接続している回路から、第1導体G1に接続している回路に入る高周波ノイズも小さい。
【0062】
<アナログ回路21の構成>
図9はアナログ回路21の説明図である。アナログ回路21は、終端回路60及びキャパシタ61,62を有する。終端回路60は、差動信号が伝播する2つの導線の中途と、第1導体G1とに接続されている。キャパシタ61の一端は、コネクタ20及び終端回路60に接続されている。キャパシタ61の他端は、コモンモードチョークコイル30の第1インダクタ30aの一端に接続されている。キャパシタ62の一端は、コネクタ20及び終端回路60に接続されている。キャパシタ62の他端は、コモンモードチョークコイル30の第2インダクタ30bの一端に接続されている。
【0063】
終端回路60は、2つの導線を介して伝播する差動信号の反射を防止するアナログ処理を実行する。終端回路60の基準電位は、第1導体G1の電位である。終端回路60は、抵抗70,71,72及びキャパシタ73を有する。抵抗70,71それぞれの一端は、キャパシタ61,62の一端に接続されている。抵抗70,71それぞれの他端は、キャパシタ73の一端に接続されている。キャパシタ73の他端は第1導体G1に接続されている。キャパシタ73の両端間には、抵抗72が接続されている。
【0064】
抵抗70の抵抗値は、抵抗70の一端に接続されている導線を伝播する信号の伝播路の特性インピーダンスを考慮した抵抗値である。抵抗70の他端は、キャパシタ73を介して接地されている。このため、抵抗70の一端に接続されている導線を伝播する信号の反射が防止される。同様に、抵抗71の抵抗値は、抵抗71の一端に接続されている導線を伝播する信号の伝播路の特性インピーダンスを考慮した抵抗値である。抵抗71の他端は、キャパシタ73を介して接地されている。このため、抵抗71の一端に接続されている導線を伝播する信号の反射が防止される。結果、抵抗70,71は、2つの導線を伝播する差動信号の反射を防止する。
以上のように、アナログ回路21が行うアナログ処理は、差動信号の反射を防止する処理であり、基準電位が第1導体G1の電位である処理である。
【0065】
キャパシタ73は、2つの導線を伝播したノイズを除去するために配置される。ノイズは、2つの導線からキャパシタ73を介して第1導体G1に伝播する。キャパシタ73は、蓄えた電力を、抵抗72を介して放出する。
【0066】
キャパシタ61,62それぞれは、AC(Alternating Current)結合のために用いられる。キャパシタ61,62それぞれは、導線を介して、一端から入力された信号から直流成分を除去し、直流成分を除去した信号を他端から出力する。従って、キャパシタ61,62は、コネクタ20を介して入力された差動信号から直流成分を除去するとともに、通信回路23が送信した差動信号から直流成分を除去する。
【0067】
<コモンモードチョークコイル25,30の効果>
前述したように、通信装置10には、外部で発生した高周波ノイズが入る可能性がある。第1導体G1に高周波ノイズが入った場合、基準電位が所定電位、例えば、地面の電位である第1導体G1の電圧が高速に変動する。抵抗70,71を介して流れる電流は、第1導体G1の電圧の変動に追随することができない。このため、コモンモードチョークコイル30のアナログ回路21側の2つの導線では、第1導体G1の電圧の変動に伴って、第1導体G1の電位を基準とした電圧が高速に変動する。これにより、アナログ回路21に高周波ノイズが入る。
【0068】
第1導体G1及び第2導体G2間に、コモンモードチョークコイル25の第2インダクタ25bが接続されている。このため、基準電位が所定電位である第1導体G1の電圧が変動した場合であっても、基準電位が所定電位である第2導体G2の電圧は殆ど変動しない。第2インダクタ25bは接続素子として機能する。
【0069】
また、アナログ回路21及び通信回路23間を接続する一方の導線の中途に、コモンモードチョークコイル30の第1インダクタ30aが配置されている。アナログ回路21及び通信回路23間を接続する他方の導線の中途に、コモンモードチョークコイル30の第2インダクタ30bが配置されている。このため、コモンモードチョークコイル30のアナログ回路21側において、2つの導線の電圧が変動した場合であっても、コモンモードチョークコイル30の通信回路23側において、2つの導線の電圧は殆ど変動することはない。
【0070】
以上のように、コモンモードチョークコイル25,30それぞれは、自身を介した高周波ノイズの伝播を抑制する。アナログ回路21から通信回路23に入る高周波ノイズは小さい。
【0071】
第2導体G2に高周波ノイズが入った場合、基準電位が所定電位、例えば、地面の電位である第2導体G2の電圧が高速に変動する。通信回路23を介して第2導体G2に流れる電流は、第2導体G2の電圧の変動に追随することができない。このため、コモンモードチョークコイル30の通信回路23側の2つの導線では、第2導体G2の電圧の変動に伴って、基準電位が第2導体G2の電位である電圧が高速に変動する。これにより、高周波ノイズが通信回路23に入る。
【0072】
前述したように、第1導体G1及び第2導体G2は、コモンモードチョークコイル25の第2インダクタ25bによって接続されている。このため、基準電位が所定電位である第2導体G2の電圧が変動した場合であっても、基準電位が所定電位である第1導体G1の電圧は殆ど変動しない。
【0073】
また、アナログ回路21及び通信回路23間を接続する一方の導線の中途に、コモンモードチョークコイル30の第1インダクタ30aが配置されている。アナログ回路21及び通信回路23間を接続する他方の導線の中途に、コモンモードチョークコイル30の第2インダクタ30bが配置されている。このため、コモンモードチョークコイル30の通信回路23側において、2つの導線の電圧が変動した場合であっても、コモンモードチョークコイル30のアナログ回路21側において、2つの導線の電圧は殆ど変動することはない。
【0074】
以上のように、コモンモードチョークコイル25,30それぞれは、自身を介した高周波ノイズの伝播を抑制する。通信回路23からアナログ回路21に入る高周波ノイズは小さい。
なお、前述したように、収容箱4は第2導体G2と導通している。このため、収容箱4に高周波ノイズが入ることは、第2導体G2に高周波ノイズが入ることと等価である。しかしながら、収容箱4及び第2導体G2によって構成される導体の体積は大きい。このため、収容箱4及び第2導体G2によって構成される導体のインピーダンスは小さい。結果、収容箱4に高周波ノイズが入った場合、又は、第2導体G2に高周波ノイズが入った場合に生じる第2導体G2の電圧の変動は小さい。
【0075】
<検知回路27の構成>
図10は検知回路27の説明図である。検知回路27は、抵抗80,81,82、キャパシタ83,84及び入力回路85を有する。入力回路85は、NPN型のバイポーラトランジスタ90及び抵抗91を有する。抵抗80の一端は、コネクタ20と、抵抗81及びキャパシタ83の一端とに接続されている。抵抗81及びキャパシタ83の他端は第1導体G1に接続されている。抵抗80の他端は、入力回路85が有するバイポーラトランジスタ90のベースと、抵抗82及びキャパシタ84の一端とに接続されている。抵抗82及びキャパシタ84の他端は第2導体G2に接続されている。
【0076】
以上のように、キャパシタ83は抵抗80の一端及び第1導体G1間に接続されている。キャパシタ84は、抵抗80の他端及び第2導体G2間に接続されている。キャパシタ83,84それぞれは、第1キャパシタ及び第2キャパシタとして機能する。
【0077】
入力回路85では、バイポーラトランジスタ90のコレクタは、抵抗91の一端に接続されている。抵抗91の他端には、所定電圧Vcが印加されている。所定電圧Vcは、基準電位が第2導体G2の電位である一定の電圧である。所定電圧Vcは、例えば、レギュレータ26が出力する設定電圧であってもよい。この場合、レギュレータ26が所定電圧Vcを抵抗91の他端に印加する。バイポーラトランジスタ90のコレクタは、更に、マイコン24に接続されている。バイポーラトランジスタ90のエミッタは第2導体G2に接続されている。
【0078】
バイポーラトランジスタ90はスイッチとして機能する。バイポーラトランジスタ90において電流がベース及びエミッタの順に流れた場合、バイポーラトランジスタ90はオンに切替わる。バイポーラトランジスタ90がオンである場合、コレクタ及びエミッタ間の抵抗値が十分に小さく、電流が抵抗91及びバイポーラトランジスタ90の順に流れる。バイポーラトランジスタ90において、ベース及びエミッタを介した電流の通流が停止した場合、バイポーラトランジスタ90はオフに切替わる。バイポーラトランジスタ90がオフである場合、コレクタ及びエミッタ間の抵抗値が十分に大きく、電流が抵抗91及びバイポーラトランジスタ90の順に流れることはない。
【0079】
コネクタ20から入力される電圧が前述した閾値電圧以上である場合、バイポーラトランジスタ90において電流がベース及びエミッタの順に流れ、バイポーラトランジスタ90はオンである。コネクタ20から入力される電圧は、基準電位が第1導体G1の電位である電圧である。コネクタ20から入力された電圧が前述した閾値電圧未満である場合、バイポーラトランジスタ90において電流がベース及びエミッタの順に流れず、バイポーラトランジスタ90はオフである。
【0080】
前述したように、ダイアグツール12のコネクタ12aがコネクタ20に接続された場合、ダイアグツール12は、基準電位が第1導体G1の電位であって、かつ、閾値電圧以上である電圧を検知回路27に出力する。このとき、電流は、ダイアグツール12のプラス端子から、抵抗80、バイポーラトランジスタ90のベース及びエミッタ、第2導体G2、第2インダクタ25b及び第1導体G1の順に流れ、ダイアグツール12のマイナス端子に戻る。これにより、バイポーラトランジスタはオンに切替わり、入力回路85において、電流が抵抗91、バイポーラトランジスタ90及び第2導体G2の順に流れる。結果、入力回路85は、マイコン24にゼロVを出力する。ゼロVは、基準電位が第2導体G2の電位である電圧である。
【0081】
以上のように、ダイアグツール12は、コネクタ20に接続された場合、直流の電圧をコネクタ20及び抵抗80を介して入力回路85のバイポーラトランジスタ90のベースに出力する。このとき、入力回路85はゼロVをマイコン24に出力する。
【0082】
前述したように、ダイアグツール12のコネクタ12aがコネクタ20に接続されていない場合、ゼロVが検知回路27に出力される。ここで、ゼロVは、基準電位が第1導体G1の電位である電圧であり、閾値電圧未満である。ゼロVが検知回路27に出力された場合、バイポーラトランジスタ90において、ベース及びエミッタを介した電流の通流が停止し、バイポーラトランジスタ90はオフに切替わる。このとき、抵抗91を電流が流れないので、所定電圧Vcがマイコン24に入力される。
【0083】
以上のように、閾値電圧以上である電圧、又は、ゼロVが抵抗80を介して入力回路85のバイポーラトランジスタ90のベースに入力される。閾値電圧以上である電圧が入力回路85に入力された場合、入力回路85はゼロVをマイコン24に出力する。ゼロVが入力回路85に入力された場合、入力回路85は所定電圧Vcをマイコン24に出力する。
【0084】
マイコン24は、入力回路85から入力される電圧、即ち、コネクタ20及び抵抗80を介して入力回路85に入力される電圧に基づいて、コネクタ20へのダイアグツール12の接続を検知する。具体的には、マイコン24は、入力回路85に入力された電圧が閾値電圧以上である場合、ダイアグツール12の接続を検知する。ダイアグツール12及びマイコン24それぞれは、外部装置及び検知部として機能する。
【0085】
抵抗80は、バイポーラトランジスタ90において、ベース及びエミッタの順に流れる電流の大きさを制限する。このため、抵抗80の抵抗値は比較的に大きい。抵抗81はコネクタ20から入力される電圧を安定させる。抵抗82は、バイポーラトランジスタ90において、エミッタ及びベース間の電圧を安定させる。キャパシタ83は、コネクタ20から抵抗80に向けて出力された電圧を平滑する。キャパシタ84は、コネクタ20から抵抗80を介して出力された電圧を平滑する。
【0086】
<コモンモードチョークコイル25及び抵抗80の効果>
前述したように、通信装置10には、高周波ノイズが入る可能性がある。第1導体G1に高周波ノイズが入力した場合、基準電位が所定電位である第1導体G1の電圧が高速に変動する。キャパシタ83を介して流れる電流は、第1導体G1の電圧の変動に追随することができない。このため、抵抗80のコネクタ20側の一端では、第1導体G1の電圧の変動に伴って、基準電位が第1導体G1の電位である電圧が高速に変動する。
【0087】
前述したように、第1導体G1及び第2導体G2は、コモンモードチョークコイル25の第2インダクタ25bによって接続されている。このため、基準電位が所定電位である第1導体G1の電圧が変動した場合であっても、基準電位が所定電位である第2導体G2の電圧は殆ど変動しない。
【0088】
また、抵抗80のコネクタ20側の一端が抵抗81を介して第1導体G1に接続されている。抵抗80の入力回路85側の一端が抵抗82を介して第2導体G2に接続されている。このため、抵抗80のコネクタ20側の一端の電圧が変動した場合であっても、抵抗80の入力回路85側の一端の電圧は殆ど変動することはない。
【0089】
第2導体G2に高周波ノイズが入力した場合、基準電位が所定電位である第2導体G2の電圧が高速に変動する。キャパシタ84を介して流れる電流は、第2導体G2の電圧の変動に追随することができない。このため、抵抗80のコネクタ20側の一端では、第2導体G2の電圧の変動に伴って、基準電位が第2導体G2の電位である電圧が高速に変動する。
【0090】
前述したように、第1導体G1及び第2導体G2は、コモンモードチョークコイル25の第2インダクタ25bによって接続されている。このため、基準電位が所定電位である第2導体G2の電圧が変動した場合であっても、基準電位が所定電位である第1導体G1の電圧は殆ど変動しない。
【0091】
前述したように、抵抗80のコネクタ20側の一端が抵抗81を介して第1導体G1に接続されている。抵抗80の入力回路85側の一端が抵抗82を介して第2導体G2に接続されている。このため、抵抗80の入力回路85側の一端の電圧が変動した場合であっても、抵抗80のコネクタ20側の一端の電圧は殆ど変動することはない。
【0092】
以上のように、コモンモードチョークコイル25及び抵抗80それぞれは、自身を介した高周波ノイズの伝播を抑制する。このため、高周波ノイズが第1導体G1に入った場合において、キャパシタ83及び抵抗80の順に伝播する高周波ノイズは小さく、第1導体G1から第2導体G2に入る高周波ノイズも小さい。また、高周波ノイズが第2導体G2に入った場合において、キャパシタ84及び抵抗80の順に伝播する高周波ノイズは小さく、第2導体G2から第1導体G1に入る高周波ノイズも小さい。
【0093】
<検知回路27の抵抗80の配置>
図11は抵抗80の配置の説明図である。図11の上側は、回路基板Bの板面の一部分を示す。図11の下側は、回路基板Bの断面の一部分を示す。抵抗80は、直方体状をなし、平面視において、抵抗80は第1導体G1及び第2導体G2の中央に配置されている。抵抗80の長手方向に沿って、第1導体G1及び第2導体G2の端面は互いに対向している。平面視において、抵抗80及び第1導体G1間の距離は、抵抗80及び第2導体G2間の距離は一致している。ここで、「一致」は、完全な一致を意味せず、実質的な一致を意味する。
【0094】
また、図11の下側に示すように、断面において、抵抗80及び第1導体G1間の距離は、抵抗80及び第2導体G2間の距離に一致している。ここでも、「一致」は、完全な一致を意味せず、実質的な一致を意味する。
【0095】
以上のように、第1導体G1との距離と、第2導体G2との距離が一致するように抵抗80が配置される。このため、第1導体G1及び第2導体G2間の距離が長く、第1導体G1及び第2導体G2間において形成される浮遊容量は更に小さい。
【0096】
(実施形態2)
実施形態1では、回路基板Bの上側及び下側に露出した第2導体G2が収容箱4に接触している。収容箱4に接触する第2導体G2の部分は、回路基板Bの上側及び下側に露出した部分に限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には、実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0097】
<第2導体G2の説明>
図12は実施形態2における回路基板Bの平面図である。図13は実施形態2における通信装置10の断面図である。図13が示す断面は、左右方向の断面である。図12及び図13に示すように、回路基板Bにおいて、第2導体G2の右側端面及び左側端面は露出している。第2導体G2の右側端面及び左側端面は、収容箱4を構成する上側覆い体4aに接触している。これにより、第2導体G2の収容箱4への導通が強化されている。
実施形態2における通信装置10は、実施形態1における通信装置10が奏する効果を同様に奏する。
【0098】
なお、実施形態2では、第2導体G2の右側端面及び左側端面が収容箱4に接触しているので、回路基板Bにおいて、上側及び下側に露出している第2導体G2の面を収容箱4に接触させなくてもよい。この場合、第2導体G2を回路基板Bの上側及び下側に露出する必要はない。実施形態1,2において、収容箱4は第2導体G2に接触していればよい。このため、第2導体G2に収容箱4を接触させる方法は、上側及び下側に露出している第2導体G2の面に収容箱4を接触される方法、又は、第2導体G2の端面に収容箱4を接触させる方法に限定されない。
【0099】
<変形例>
実施形態1,2において、収容箱4の構成は、上側覆い体4aの開口面の縁部が下側覆い体4bの開口面の縁部に接触する構成に限定されない。収容箱4では、例えば、上側覆い体4aが、下側覆い体4bの外面の上側を覆い、上側覆い体4aの内面が下側覆い体4bの外面に接触してもよい。更に、収容箱4は、上側覆い体4a及び下側覆い体4bによって構成される箱に限定されない。
また、実施形態1,2では、第1導体G1の表面積が第2導体G2の表面積よりも大きい場合、第2導体G2ではなく、第1導体G1と収容箱4とを導通させてもよい。
【0100】
実施形態1,2では、ケーブル11がコネクタ20に接続された場合だけではなく、ダイアグツール12がコネクタ20に接続された場合においても、通信回路23が差動信号の送受信を行う。しかしながら、ダイアグツール12がコネクタ20に接続された場合に送受信を行う通信回路は、通信回路23とは異なる通信回路であってもよい。この場合、通信回路は、アナログ回路21、接続回路22及び通信回路23と同様の構成を更に有する。この場合、ダイアグツール12が行う通信の通信規格は、ケーブル11を介して行われる通信の通信規格と異なっていてもよい。
【0101】
接続回路22が有する回路素子は、コモンモードチョークコイル30に限定されず、キャパシタとは異なる回路素子であればよい。例えば、接続回路22では、アナログ回路21及び通信回路23を接続する2つの導線それぞれの中途に2つの抵抗が配置されてもよい。また、第1導体G1及び第2導体G2間に接続される接続素子は、第2インダクタ25bに限定されず、キャパシタと異なる回路素子であればよい。例えば、抵抗が第1導体G1及び第2導体G2間に接続されてもよい。この場合、レギュレータ26は、インダクタを介してコネクタ20に接続される。このインダクタは、電圧からノイズを除去する。
【0102】
ダイアグツール12が抵抗80を介して入力回路85に出力する電圧は、接続を示す直流の電圧に限定されず、通信信号に係る電圧であってもよい。即ち、ダイアグツール12が、入力回路85を介してマイコン24に通信信号を送信してもよい。
アナログ回路21が行うアナログ処理は、第1導体G1の電位を基準としたアナログ処理であればよいので、差動信号の反射を防止する処理に限定されない。アナログ回路21が行うアナログ処理は、例えばノイズを除去する処理であってもよい。この場合、例えば、アナログ回路21内において、差動信号が伝播する2つの導線それぞれの中途に2つのキャパシタの一端が接続され、2つのキャパシタの他端が第1導体G1に接続される。
【0103】
開示された実施形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
4 収容箱
4a 上側覆い体
4b 下側覆い体
10 通信装置
11 ケーブル
12 ダイアグツール(外部装置)
12a,20 コネクタ
21 アナログ回路
22 接続回路
23 通信回路
24 マイコン(検知部)
25 コモンモードチョークコイル(除去器)
25a 第1インダクタ
25b 第2インダクタ(接続素子)
26 レギュレータ
27 検知回路
30 コモンモードチョークコイル
30a 第1インダクタ
30b 第2インダクタ
40a,40b,41a,41b 凹部
42a,42b 貫通孔
50 螺子
51 ナット
52 螺子孔
60 終端回路
61,62,73 キャパシタ
70,71,72,80,81,82,91 抵抗
83 キャパシタ(第1キャパシタ)
84 キャパシタ(第2キャパシタ)
85 入力回路
90 バイポーラトランジスタ
B 回路基板
G1 第1導体
G2 第2導体
図1
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図13