(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】レーザ刻印装置、レーザ刻印システム及びレーザ刻印方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/02 20060101AFI20230711BHJP
B22C 9/12 20060101ALI20230711BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20230711BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230711BHJP
【FI】
B22C9/02 101Z
B22C9/12 Z
B22D45/00 A
B23K26/00 B
B23K26/00 Q
(21)【出願番号】P 2020067753
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 康明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和憲
(72)【発明者】
【氏名】石川 敏之
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-015395(JP,A)
【文献】特開2003-145284(JP,A)
【文献】特開2016-175124(JP,A)
【文献】特開2002-035984(JP,A)
【文献】特開2010-214437(JP,A)
【文献】実開昭59-167507(JP,U)
【文献】特開平08-238586(JP,A)
【文献】特開2006-263804(JP,A)
【文献】特開2015-110243(JP,A)
【文献】特開2006-007293(JP,A)
【文献】特開2001-136859(JP,A)
【文献】特開平08-309575(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110167689(CN,A)
【文献】特開2009-241149(JP,A)
【文献】特開平04-156601(JP,A)
【文献】実開昭56-009101(JP,U)
【文献】米国特許第05329985(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型を搬送する搬送ラインに設けられ、前記搬送ライン上の鋳型に対して識別子を刻印するレーザ刻印装置であって、
レーザ光を前記鋳型へ照射して前記鋳型に前記識別子を刻印するヘッドと、
内部に前記ヘッドが収容される作業空間を画成し、前記作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有し、前記鋳型が前記搬入口及び前記搬出口を介して前記作業空間に搬入出されるように前記搬送ラインに設けられる遮光ケースと、
前記搬入口及び前記搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートと、
前記ヘッド及び前記遮光ゲートの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記遮光ケースは、前記ヘッドにより照射される前記レーザ光に対して遮光性を有し、
前記制御部は、前記鋳型が前記作業空間に搬入されたことに応じて前記遮光ゲートを閉とするとともに前記ヘッドに前記鋳型への刻印動作を開始させ、前記刻印動作が終了したことに応じて前記遮光ゲートを開とする、
レーザ刻印装置。
【請求項2】
前記遮光ゲートは前記搬入口に設けられ、
前記搬出口に設けられる別の遮光ゲートをさらに備え、
前記制御部は、前記鋳型が前記作業空間に搬入されたことに応じて前記遮光ゲート及び前記別の遮光ゲートを閉とするとともに前記ヘッドに前記鋳型への刻印動作を開始させ、前記刻印動作が終了したことに応じて前記遮光ゲート及び前記別の遮光ゲートを開とする、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項3】
前記搬入口及び前記搬出口が一つの開口で構成され、前記遮光ゲートは前記開口に設けられる、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送ラインの動作を制御するライン制御部と通信可能に構成され、
前記ライン制御部は、前記鋳型が前記作業空間へ搬入された場合に前記制御部へ搬入完了信号を送信し、
前記制御部は、前記ライン制御部から搬入完了信号を受信した後に前記遮光ゲートを閉とする、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項5】
前記制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、
前記ヘッド制御部は、前記刻印動作が完了した場合に前記ゲート制御部へ刻印完了信号を送信し、
前記ゲート制御部は、前記刻印完了信号を受信した後に前記遮光ゲートを開とする、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項6】
前記制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、
前記ヘッド制御部は、前記ヘッドが正常な動作をしない場合に前記ゲート制御部へ異常信号を送信し、
前記ゲート制御部は、前記異常信号を受信した場合に前記遮光ゲートを開とする、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項7】
前記制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、
前記搬送ラインの動作を制御するライン制御部は、前記識別子の刻印が不要な鋳型を搬入する信号を受信した場合に前記制御部へ通過信号を送信し、
前記ヘッド制御部は、前記通過信号を受信した場合には、前記識別子の刻印が不要な鋳型への刻印動作を前記ヘッドに開始させず、
前記ゲート制御部は、前記通過信号を受信した場合には、前記遮光ゲートを開とする、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項8】
前記遮光ケースに設けられる集塵機をさらに備える、請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項9】
前記レーザ刻印装置は、
レーザ光を発生させる光源と、
前記光源から前記ヘッドへレーザ光を伝搬するケーブルと、
前記ケーブルを被覆する被覆部材と、
前記ケーブル及び被覆部材を支持する支持部材と、
をさらに備える、請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項10】
鋳型を搬送する搬送ラインと、
前記搬送ライン上の前記鋳型へレーザ光を照射して前記鋳型に識別子を刻印するヘッドと、
内部に前記ヘッドが収容される作業空間を画成し、前記作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有し、前記鋳型が前記搬入口及び前記搬出口を介して前記作業空間に搬入出されるように前記搬送ラインに設けられる遮光ケースと、
前記搬入口及び前記搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートと、
前記ヘッド及び前記遮光ゲートの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記遮光ケースは、前記ヘッドにより照射される前記レーザ光に対して遮光性を有し、
前記制御部は、前記鋳型が前記作業空間に搬入されたことに応じて前記遮光ゲートを閉とするとともに前記ヘッドに鋳型への刻印動作を開始させ、前記刻印動作が終了したことに応じて前記遮光ゲートを開とする、
レーザ刻印システム。
【請求項11】
鋳型を搬送する搬送ライン上の鋳型に対して識別子を刻印するレーザ刻印方法であって、
前記識別子を刻印するための作業空間を内部に画成した遮光ケースであって前記作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有する遮光ケースの前記作業空間へ前記鋳型を搬入するステップと、
前記鋳型が前記作業空間に搬入されたことに応じて前記搬入口及び前記搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートを閉とするステップと、
前記遮光ゲートが閉とされたことに応じて前記鋳型への刻印動作を開始するステップと、
前記刻印動作が終了したことに応じて前記遮光ゲートを開とするステップと、
を備え
、
前記遮光ケースは、レーザ光に対して遮光性を有する、
レーザ刻印方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ刻印装置、レーザ刻印システム及びレーザ刻印方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、文字や番号などの識別子を鋳型に彫り込むレーザ刻印装置と、鋳型の造型機から鋳型を搬送する搬送装置とを備える鋳造設備を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鋳造設備において、レーザ刻印装置を搬送装置に設け、搬送中の鋳型に対してレーザ刻印装置で識別子を刻印することが考えられる。このとき、レーザ光が周囲環境へ与える影響を考慮し、レーザ刻印装置の作業空間を遮光部材で覆うことが考えられる。しかしながら、レーザ刻印装置の作業空間への鋳型の搬入出口が必要になるため、レーザ刻印装置の作業空間を遮光部材で完全に覆うことは困難である。本開示は、搬送ライン上の鋳型に対してレーザ光で識別子を刻印する場合に、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るレーザ刻印装置は、鋳型を搬送する搬送ラインに設けられ、搬送ライン上の鋳型に対して識別子を刻印するレーザ刻印装置であって、レーザ光を鋳型へ照射して鋳型に識別子を刻印するヘッドと、内部にヘッドが収容される作業空間を画成し、作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有し、鋳型が搬入口及び搬出口を介して作業空間に搬入出されるように搬送ラインに設けられる遮光ケースと、搬入口及び搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートと、ヘッド及び遮光ゲートの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、鋳型が作業空間に搬入されたことに応じて遮光ゲートを閉とするとともにヘッドに鋳型への刻印動作を開始させ、刻印動作が終了したことに応じて遮光ゲートを開とする。
【0006】
このレーザ刻印装置では、鋳型は、搬送ラインによって遮光ケースの搬入口へ搬入される。鋳型が遮光ケースの内部の作業空間へ搬入されると、搬入口及び搬出口の何れか一方に設けられる遮光ゲートが閉にされるとともに鋳型への刻印動作が開始される。刻印動作が終了すると遮光ゲートが開にされる。このように、鋳型が搬送される場合は遮光ゲートが開にされ、レーザ光が照射される場合は遮光ゲートが閉にされる。これにより、レーザ刻印装置は、搬送ライン上の鋳型に対してレーザ光で識別子を刻印する場合に、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを抑制できる。
【0007】
一実施形態においては、遮光ゲートは搬入口に設けられ、搬出口に設けられる別の遮光ゲートをさらに備え、制御部は、鋳型が作業空間に搬入されたことに応じて遮光ゲート及び別の遮光ゲートを閉とするとともにヘッドに鋳型への刻印動作を開始させ、刻印動作が終了したことに応じて遮光ゲート及び別の遮光ゲートを開としてもよい。この場合、搬入口及び搬出口にそれぞれ遮光ゲートが設けられるため、レーザ刻印装置は、搬入口及び搬出口の何れか一方にのみ遮光ゲートが設けられる場合と比べて、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを一層抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、搬入口及び搬出口が一つの開口で構成され、遮光ゲートは開口に設けられてもよい。
【0009】
一実施形態においては、制御部は、搬送ラインの動作を制御するライン制御部と通信可能に構成され、ライン制御部は、鋳型が作業空間へ搬入された場合に制御部へ搬入完了信号を送信し、制御部は、ライン制御部から搬入完了信号を受信した後に遮光ゲートを閉としてもよい。この場合、レーザ刻印装置は、搬送ライン上の鋳型が遮光ゲートと干渉することを回避できる。
【0010】
一実施形態においては、制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、ヘッド制御部は、刻印動作が完了した場合にゲート制御部へ刻印完了信号を送信し、ゲート制御部は、刻印完了信号を受信した後に遮光ゲートを開としてもよい。この場合、レーザ刻印装置は、ヘッドの刻印動作が完了した後に遮光ゲートを開とできる。
【0011】
一実施形態においては、制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、ヘッド制御部は、ヘッドが正常な動作をしない場合にゲート制御部へ異常信号を送信し、ゲート制御部は、異常信号を受信した場合に遮光ゲートを開としてもよい。この場合、レーザ刻印装置は、ヘッドの不具合が鋳型の搬送に影響を与えることを回避できる。
【0012】
一実施形態においては、制御部は、ヘッド制御部とゲート制御部とを有し、ライン制御部は、識別子の刻印が不要な鋳型を搬入する信号を受信した場合に制御部へ通過信号を送信し、ヘッド制御部は、通過信号を受信した場合には、識別子の刻印が不要な鋳型への刻印動作をヘッドに開始させず、ゲート制御部は、通過信号を受信した場合には、遮光ゲートを開としてもよい。この場合、レーザ刻印装置は、識別子の刻印が不要な鋳型に対する刻印動作を省略できるので、レーザ光を発生させる光源及びヘッドの寿命を縮めることを防止できる。
【0013】
一実施形態においては、遮光ケースに設けられる集塵機をさらに備えてもよい。この場合、レーザ刻印装置は、刻印動作で発生する煙などによるレーザ光の減衰を抑制し、刻印の精度が低下することを抑制できる。
【0014】
一実施形態においては、レーザ刻印装置は、レーザ光を発生させる光源と、光源からヘッドへレーザ光を伝搬するケーブルと、ケーブルを被覆する被覆部材と、ケーブル及び被覆部材を支持する支持部材と、をさらに備えてもよい。この場合、被覆部材及び支持部材によりケーブルに発生する曲げ応力が抑制されるので、レーザ刻印装置は、被覆部材及び支持部材を備えない場合と比べて、ケーブルの劣化を抑制できる。
【0015】
本開示の他の側面に係るレーザ刻印システムは、鋳型を搬送する搬送ラインと、搬送ライン上の鋳型へレーザ光を照射して鋳型に識別子を刻印するヘッドと、内部にヘッドが収容される作業空間を画成し、作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有し、鋳型が搬入口及び搬出口を介して作業空間に搬入出されるように搬送ラインに設けられる遮光ケースと、搬入口及び搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートと、ヘッド及び遮光ゲートの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、鋳型が作業空間に搬入されたことに応じて遮光ゲートを閉とするとともにヘッドに鋳型への刻印動作を開始させ、刻印動作が終了したことに応じて遮光ゲートを開とする。
【0016】
このレーザ刻印システムでは、鋳型は、搬送ラインによって遮光ケースの搬入口へ搬入される。鋳型が遮光ケースの内部の作業空間へ搬入されると、搬入口及び搬出口の何れか一方に設けられる遮光ゲートが閉にされ、鋳型への刻印動作が開始される。刻印動作が終了すると遮光ゲートが開にされる。このように、鋳型が搬送される場合は遮光ゲートが開にされ、レーザ光が照射される場合は遮光ゲートが閉にされる。これにより、レーザ刻印システムは、搬送ライン上の鋳型に対してレーザ光で識別子を刻印する場合に、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを抑制できる。
【0017】
本開示の他の側面に係るレーザ刻印方法は、鋳型を搬送する搬送ライン上の鋳型に対して識別子を刻印するレーザ刻印方法であって、鋳型に対して識別子を刻印する作業空間を内部に画成する遮光ケースであって作業空間と連通する搬入口及び搬出口を有する遮光ケースの作業空間へ鋳型を搬入するステップと、鋳型が作業空間に搬入されたことに応じて搬入口及び搬出口の何れか一方に設けられる開閉可能な遮光ゲートを閉とするステップと、遮光ゲートが閉とされたことに応じて鋳型への刻印動作を開始するステップと、刻印動作が終了したことに応じて遮光ゲートを開とするステップと、を備える。
【0018】
このレーザ刻印方法では、鋳型は遮光ケースの搬入口へ搬送される。遮光ゲートは、鋳型が作業空間に搬入されたことに応じて閉とされる。鋳型への刻印動作は、遮光ゲートが閉とされたことに応じて開始される。遮光ゲートは、鋳型への刻印動作が終了したことに応じて開とされる。このように、鋳型が搬送される場合には遮光ゲートは開にされ、レーザ光が照射される場合には遮光ゲートは閉にされる。これにより、レーザ刻印方法は、搬送ライン上の鋳型に対してレーザ光で識別子を刻印する場合に、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、搬送ライン上の鋳型に対してレーザ刻印装置で識別子を刻印する場合に、作業空間から外部へのレーザ光の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るレーザ刻印装置が備わる鋳造システムの一例を概略的に示す構成図である。
【
図2】レーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】レーザ刻印装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】異常信号を受信するレーザ刻印装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】通過信号を受信するレーザ刻印装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】レーザ刻印装置の他の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】遮光ケースに一つの開口が設けられるレーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】遮光ケースに集塵機が設けられるレーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図9】ケーブルを被覆する被覆部材と支持部材の構成の一例を示す概要図である。
【
図10】遮光ゲートが搬入口にのみ設けられるレーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。図中において示されるX方向及びY方向は水平方向を示し、Z方向は鉛直方向を示す。
【0022】
[鋳造システムの一例]
図1は、実施形態に係るレーザ刻印装置が備わる鋳造システムの一例を概略的に示す構成図である。
図1に示される鋳造システム1は、鋳物を製造するためのシステムである。鋳造システム1は、造型機2、搬送ライン3、レーザ刻印装置4、注湯機5、及び、ライン制御部6を備える。
【0023】
造型機2は、鋳型Mを製造する装置である。造型機2は、鋳枠Fを用いて鋳型Mを形成する。造型機2は、ライン制御部6と通信可能に接続される。造型機2は、ライン制御部6から造型開始信号を受信した場合、造型エリアにおいて鋳型Mの製造を開始する。造型機2は、模型が配置された鋳枠F内に砂(生型砂)を投入し、鋳枠F内の砂を加圧して固める。造型機2は、固められた砂から模型を取り出すことにより鋳型Mを形成する。造型機2は、造型結果信号をライン制御部6に送信する。造型結果信号は、造型機2が正常に動作したか否かを示す信号である。
【0024】
搬送ライン3は、鋳型を搬送する設備である。搬送ライン3は、造型機2から鋳型Mを受け取り、注湯機5に向けて鋳型Mを搬送する。搬送ライン3は、例えば、ローラコンベヤ、レール、鋳型M及び鋳枠Fが載置されレール上を走行する台車、造型機2側に配置されたプッシャ装置、及び、注湯機5側に配置されたクッション装置などを有する。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2から注湯機5に向けて直線状に延びる。ローラコンベヤ又はレールは、直線状に延びる場合に限定されず、例えば階段状に延びてもよい。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2と注湯機5との間で一筆書き状に延びてもよい。搬送ライン3は、ローラコンベヤ又はレール上に等間隔で配列された複数の鋳型M及び鋳枠Fを造型機2から注湯機5に向けて順次搬送する。搬送ライン3は、間欠駆動され、鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分ずつ搬送する。所定の枠分は1枠でもよいし複数枠でもよい。搬送ライン3は、ライン制御部6と通信可能に接続される。搬送ライン3は、ライン制御部6から枠送り信号を受信すると、複数の鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分搬送する。搬送ライン3は、所定の枠分の搬送を完了すると、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信する。搬送ライン3は、搬送された鋳型M及び鋳枠Fの位置決めを完了したときに、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信してもよい。
【0025】
レーザ刻印装置4は、搬送ライン3に設けられ、搬送ライン3上の鋳型Mに対してレーザ光を照射して識別子を刻印する。レーザ刻印装置4は、ライン制御部6と通信可能に接続され得る。レーザ刻印装置4、搬送ライン3及びライン制御部6は、協働して動作する場合、レーザ刻印システム7を構成する。レーザ刻印装置4の詳細は後述する。
【0026】
注湯機5は、鋳型Mに溶湯を流し込む装置である。注湯機5は、ライン制御部6と通信可能に接続される。注湯機5は、ライン制御部6から枠送り完了信号を受信した場合、注湯エリアに位置する鋳型Mを注湯対象として、当該鋳型Mに溶湯を流し込む。注湯機5は、ライン制御部6から鋳型情報を受信し、鋳型情報に基づいた条件で注湯を行う。注湯された鋳型Mは、搬送ライン3により後工程を行うエリアへと搬送される。
【0027】
造型機2と注湯機5との間には、中子セット場Wが設けられてもよい。中子セット場Wには、作業者が駐留しており、鋳型Mに中子をセットする。または、装置が鋳型Mに中子を自動でセットしてもよい。
【0028】
ライン制御部6は、鋳造システム1を統括制御するコントローラである。ライン制御部6は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。ライン制御部6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(RandomAccess Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。ライン制御部6は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、ライン制御部6の機能を実現する。
【0029】
[レーザ刻印装置の詳細]
図2は、レーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。
図2に示されるように、レーザ刻印装置4は、ヘッド10、遮光ケース20、遮光ゲート30、遮光ゲート31、及び、制御部40を備える。
【0030】
ヘッド10は、レーザ光Lを鋳型Mへ照射して、鋳型に識別子を刻印する。識別子とは対象物に付与される文字、数字又は記号などのことであり、刻印するとは、文字、数字又は記号などを鋳型に付与することである。以下では、鋳型Mに対して彫り込みをする場合を一例として説明する。
【0031】
ヘッド10は、レーザ光Lを任意の位置で集束させる部品である。ヘッド10は、レーザ光を発生させる光源12(
図9参照)に接続される。ヘッド10は、一例として、ガルバノミラー(不図示)及び集束レンズ(不図示)を有し、レーザ光Lの照射位置及び焦点位置を調整する。ヘッド10は、レーザ光Lの焦点位置を鋳型Mの表面の任意の位置に集束させて識別子を刻印する。
【0032】
ヘッド10は、遮光ケース20の内部に画成される作業空間Sに収容される。ヘッド10は、作業空間Sに配置されたフレーム部材21に支持される。ヘッド10は、三軸駆動機構11によって、XYZの3方向に移動することができる。このため、ヘッド10は、三軸駆動機構11によって作業空間Sに位置決めされ、その位置でレーザ光Lの照射位置及び焦点位置を調整して識別子を刻印することができる。
【0033】
遮光ケース20は、作業空間Sと連通する搬入口22及び搬出口23を有する。遮光ケース20は、搬入口22及び搬出口23を介して作業空間Sに鋳型Mが搬入出されるように搬送ライン3へ設けられる。例えば、搬送ライン3が直線である場合、搬入口22と搬出口23とは、対向するように遮光ケース20に形成される。遮光ケース20は、搬入口22及び搬出口23の対向方向が搬送ライン3の延在方向と一致するように搬送ライン3に設けられる。遮光ケース20は、ヘッド10により照射されるレーザ光Lに対して遮光性を有する。遮光ケース20は、例えば、金属又は樹脂などの材質によって形成される。金属は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅合金又は炭素鋼である。
【0034】
搬入口22及び搬出口23の何れか一方には、開閉可能な遮光ゲート30が設けられる。
図2の例においては、遮光ゲート30は搬入口22に設けられ、遮光ゲート30とは別の遮光ゲート31が搬出口23に設けられる。遮光ゲート30(31)は、ヘッド10により照射されるレーザ光Lに対して遮光性を有する。遮光ゲート30(31)は、例えば、金属又は樹脂などの材質によって形成される。遮光ゲート30(31)は、遮光ケース20と同一の材質で形成されてもよい。
【0035】
遮光ゲート30(31)の開閉とは、遮光ゲート30(31)が開及び閉の何れか一方の位置へ動くことをいう。遮光ゲート30(31)は、駆動部32(33)に接続される。駆動部32(33)は、例えば、電動シリンダ、エアシリンダ、油圧シリンダ、ワイヤ巻上装置、ラックアンドピニオン機構などである。駆動部32(33)の動作により、遮光ゲート30(31)は、Z方向に沿って移動する。これにより、遮光ゲート30(31)は、開位置及び閉位置の何れかに移動する。遮光ゲート30が開の場合、搬送ライン3は、搬入口22を介して鋳型Mを作業空間Sへ搬入することができる。遮光ゲート31が開の場合、搬送ライン3は、搬出口23を介して作業空間Sから鋳型Mを搬出することができる。遮光ゲート30が閉の場合、搬入口22は遮光ゲート30に塞がれる。遮光ゲート31が閉の場合、搬出口23は遮光ゲート31に塞がれる。つまり、遮光ゲート30(31)が閉の場合、遮光ゲート30(31)は、作業空間Sからヘッド10のレーザ光Lが漏れることを抑制する。
【0036】
制御部40は、ヘッド10及び遮光ゲート30(31)を制御する。制御とは、位置及び動作を決定することをいう。制御部40は、一例としてPLCとして構成される。制御部40は、上述したコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部40は、遮光ケース20の外側に配置されてもよいし、遮光ケース20の内側に配置されても構わない。制御部40は、ゲート制御部41及びヘッド制御部42を有する。
【0037】
ヘッド制御部42は、主に、ヘッド10の位置、レーザ光Lの出力、照射位置及び焦点位置などを制御する。ヘッド制御部42は、三軸駆動機構11を動作させて、ヘッド10の作業空間Sにおける位置を制御する。ヘッド制御部42は、レーザ光源、ガルバノミラー及び集束レンズを制御してレーザ光Lの出力、照射位置及び焦点位置を制御する。ヘッド10は、ヘッド制御部42の制御に基づいて、鋳型Mに識別子を刻印する。
【0038】
ゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)の開閉を制御する。ゲート制御部41は、駆動部32(33)を動作させて遮光ゲート30(31)の位置を変化させる。遮光ゲート30(31)の開閉の態様は、上下方向に限定されず、左右方向又は回転方向でもよい。
【0039】
制御部40は、搬送ライン3の動作を制御するライン制御部6と通信可能に構成され得る。ライン制御部6は、搬送ライン3上の鋳型Mの位置を制御する。ライン制御部6は、鋳型Mが作業空間Sへ搬入されたことを制御部40へ通知してもよい。具体的には、ライン制御部6は、鋳型Mの作業空間Sへの搬入が完了したことを通知する搬入完了信号を、制御部40へ送信する。搬入完了信号を受信した制御部40のゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)を閉とする。制御部40のヘッド制御部42は、遮光ゲート30(31)が閉となった後に、ヘッド10を動作させて鋳型Mへ識別子の刻印を開始する。
【0040】
ヘッド制御部42は、ヘッド10によるレーザ光Lの照射が完了したことを通知してもよい。一例として、ヘッド制御部42は、ヘッド10による鋳型Mへ識別子の刻印が終了したことを通知する刻印完了信号を、ゲート制御部41へ送信する。刻印完了信号を受信したゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)を開とする。
【0041】
[レーザ刻印システムの動作]
図3は、レーザ刻印システムの動作を示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートは、例えば作業員の開始指示に基づいて開始される。システム起動時、ゲート制御部41は、駆動部32(33)を動作させて遮光ゲート30(31)を開にする。
図3に示されるフローチャートが開始されると、ライン制御部6は、搬送ライン3を動作させて鋳型Mを作業空間Sへ搬入する(ステップS10)。ライン制御部6は、ゲート制御部41に基づく遮光ゲート30の開閉情報に基づいて鋳型Mを搬入してもよい。
【0042】
次に、ゲート制御部41は、鋳型Mの搬入に応じて、遮光ゲート30(31)を閉とする(ステップS12)。一例として、ライン制御部6は、鋳型Mが作業空間S内の所定位置に位置したときに、鋳型Mの搬入が完了したことを示す搬入完了信号をゲート制御部41へ送信する。ライン制御部6は、所定位置に位置したことをセンサなどで検出してもよいし、搬送された所定の枠分に基づいて所定位置に位置したことを判定してもよい。鋳型Mは、位置決め部材(不図示)と接触して所定の位置に位置決めされてもよい。ゲート制御部41は、ライン制御部6から搬入完了信号を受信した後に、駆動部32(33)を動作させて遮光ゲート30(31)を閉とする。ゲート制御部41は、搬入完了信号に基づいて遮光ゲート30(31)を開閉させることで、レーザ刻印システム7は、搬送ライン3上の鋳型Mと遮光ゲート30(31)との干渉を確実に回避できる。
【0043】
次に、遮光ゲート30(31)が閉とされたことに応じて、ヘッド制御部42は、鋳型Mへの刻印動作を開始する(ステップS14)。一例として、ゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)が閉とされたことを示すゲート閉信号をヘッド制御部42へ出力する。ヘッド制御部42は、ゲート閉信号を受信した場合に、ヘッド10に鋳型Mへの刻印動作を開始させる。
【0044】
最後に、ゲート制御部41は、刻印動作が終了したことに応じて、遮光ゲート30(31)を開とする(ステップS16)。一例として、ヘッド制御部42はヘッド10が鋳型Mへの刻印動作を終了したことを示す刻印完了信号をゲート制御部41へ出力する。ゲート制御部41は、刻印完了信号を受信した場合に、駆動部32(33)を動作させて遮光ゲート30(31)を開とする。ライン制御部6は、搬送ライン3を動作させて鋳型Mをレーザ刻印装置4から搬出する。以上によって、
図3に示されたフローチャートは終了する。
【0045】
図4は、異常信号を受信するレーザ刻印装置の動作を示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、例えばシステム起動時に開始される。
図4に示されるフローチャートは、
図3に示されるフローチャートと同時並行で実行され、
図4に示されるフローチャートの動作が優先される。
【0046】
ゲート制御部41は、異常信号を受信したか否かを判定する(ステップS20)。ヘッド制御部42は、ヘッド10が正常動作しない場合に、ゲート制御部41に異常信号を出力する。ヘッド制御部42は、例えば、ヘッド10の位置、レーザ光Lの出力、照射位置及び焦点位置を制御することができない場合、又は刻印完了信号を発信できない場合に、ゲート制御部41へ異常信号を送信する。異常信号を受信していない場合(ステップS20:NO)、
図4に示されるフローチャートは終了する。これに対して、異常信号を受信した場合(ステップS20:YES)、ゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)を開とする(ステップS22)。あるいは、ゲート制御部41は、遮光ゲート30(31)が開であることを判定し、ステップS22を終了する。
図4のフローチャートによって遮光ゲート30(31)が開とされた場合(開であると判定されたことも含む)、以降のタイミングにおいては
図3のフローチャートの動作は無効となる。つまり、遮光ゲート30(31)は、常時、開となる。以上によって、
図4に示されたフローチャートは終了する。
【0047】
図5は、通過信号を受信するレーザ刻印装置4の動作を示すフローチャートである。
図5に示されるフローチャートは、例えば作業員の開始指示に基づいて開始される。システム起動時、ゲート制御部41は、駆動部32(33)を動作させて遮光ゲート30(31)を開にする。
図5に示されるフローチャートが開始されると、ライン制御部6は、搬送ライン3を動作させて鋳型Mを作業空間Sへ搬入する(ステップS30)。
【0048】
次に、制御部40は、通過信号を受信したか否かを判定する(ステップS32)。ライン制御部6は、識別子の刻印が不要な鋳型Mを搬入する信号を受信した場合に、制御部40に通過信号を送信する。識別子の刻印が不要な鋳型Mは、例えば、上枠(又は下枠)にのみ識別子の刻印が必要な鋳型Mの下枠(又は上枠)、及び鋳型不良が発生した鋳型Mなどである。識別子の刻印が不要な鋳型Mを搬入する信号は、作業者が入力デバイスを介して送信してもよい。搬送ライン3に設けられるセンサ(不図示)が、識別子は不要か否かを判定して、識別子の刻印が不要な鋳型Mを搬入する信号を送信してもよい。
【0049】
通過信号を受信していない場合(ステップS32:NO)、レーザ刻印装置4は、上述のステップS12~ステップS16と同一のステップS34~S38を実行し、
図5に示されたフローチャートは終了する。これに対して、通過信号を受信した場合(ステップS32:YES)、
図5に示されたフローチャートは終了する。つまり、ヘッド制御部42は、刻印動作を実行せず、ゲート制御部41も遮光ゲート30(31)の開を維持する。以上によって、
図5に示されたフローチャートは終了する。
【0050】
[レーザ刻印装置の他の構成例]
図6は、レーザ刻印装置4の他の構成の一例を示す断面図である。
図6では、制御部40は省略される。
図6に示されるように、レーザ刻印装置4Aにおいては、遮光ゲート30(31)は、作業空間S内に配置される。レーザ刻印装置4Aの他の構成は、
図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。この場合、遮光ゲート30と遮光ゲート31とが接続されて構成されてもよい。遮光ゲート30と遮光ゲート31とが接続されて一体に構成される場合、遮光ゲート30及び遮光ゲート31は枠部材として構成され、一体として開閉動作をする。
【0051】
図7は、遮光ケース20に一つの開口24が設けられるレーザ刻印装置4Bの構成の一例を示す断面図である。
図7では、制御部40は省略される。
図7に示されるように、レーザ刻印装置4Bは、搬入口22及び搬出口23が一つの開口24で構成され、遮光ゲート30は一つの開口24に設けられる。レーザ刻印装置4Bの他の構成は、
図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。一つの開口24は、遮光ケース20の内部の作業空間Sと連通する。この場合、レーザ刻印装置4Bは、鋳型Mを作業空間Sへ搬入し、鋳型Mを作業空間Sから搬出する搬入出手段(不図示、例えばトラバーサ)を備える。鋳型Mは、一つの開口24を介して遮光ケース20の内部の作業空間Sへ搬入される。鋳型Mは、また、一つの開口24を介して作業空間Sから外部へ搬出される。
【0052】
図8は、遮光ケース20に集塵機50が設けられるレーザ刻印装置4Cの構成の一例を示す断面図である。
図8では、制御部40は省略される。
図8に示されるように、レーザ刻印装置4Cは、遮光ケース20に設けられる集塵機50をさらに備える。レーザ刻印装置4Cの他の構成は、
図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。集塵機50は、作業空間Sの内気を吸気し、識別子を刻印することによって鋳型Mから発生する煙又は蒸気を取り込み、粉塵などを捕集して、作業空間Sの内気を浄化する。レーザ刻印装置4Cは、集塵機50に向けて気流を発生させる補助装置を有してもよい(不図示)。この場合、補助装置から集塵機50へ向けて気流が発生するため、集塵機50は、効果的に煙又は蒸気を取り込み、作業空間Sの内気を浄化できる。
【0053】
レーザ刻印装置4は、レーザ光を発生させる光源12と、光源12からヘッド10へレーザ光を伝搬するケーブル15と、ケーブル15を被覆する被覆部材13と、ケーブル15及び被覆部材13を支持する支持部材14と、をさらに備えてもよい。
図9は、ケーブル15を被覆する被覆部材13と支持部材14の構成の一例を示す概要図である。ケーブル15は、光源12とヘッド10とを接続して、光源12で発生するレーザ光Lをヘッド10へ伝搬する。三軸駆動機構11によってヘッド10は移動されるため、ヘッド10に接続されるケーブル15には、曲げ応力が発生する。曲げ応力は、ケーブル15の自重によるたわみによっても発生する。大きな曲げ応力が繰り返し発生する場合、ケーブル15は、疲労により断線する。
【0054】
被覆部材13は、例えば、硬質ゴムなどの材質で形成される弾性部材である。被覆部材13は、ケーブル15と一体となって曲げ応力を受けて湾曲する。この場合、ケーブル15の被覆部材に被覆された箇所は、被覆されない個所と比べて、曲げ半径が大きくなる。曲げ半径が大きい場合、曲げ半径が小さい場合と比べて、ケーブル15に発生する曲げ応力は、軽減される。支持部材14は、ケーブル15及び被覆部材13を支持する。支持とは、支持されるものの自重を支えることを意味し、支持されるものの下方から支えてもよく、上方から吊り下げてもよい。一例として、支持部材14の一端は、被覆部材13及びケーブル15を吊り下げて支持し、支持部材14の他端は、上方の部材に固定される。上方の部材とは、例えば、遮光ケース20の筐体など、相対的に位置が安定した部材である。支持部材14により、ケーブル15の自重及び被覆部材13の重さによってケーブル15に発生するたわみは軽減される。よってケーブル15に発生する曲げ応力は、被覆部材13及び支持部材14によって軽減される。
【0055】
[実施形態のまとめ]
レーザ刻印装置4、レーザ刻印システム7、及びレーザ刻印方法によれば、鋳型Mは、搬送ライン3によって遮光ケース20の搬入口22へ搬入される。鋳型Mが遮光ケース20の内部の作業空間Sへ搬入されると、搬入口22(搬出口23)に設けられる遮光ゲート30(31)が閉にされるとともに鋳型Mへの刻印動作が開始される。刻印動作が終了すると、遮光ゲート30(31)が開にされる。このように、鋳型Mが搬送される場合は遮光ゲート30(31)が開にされ、レーザ光Lが照射される場合は遮光ゲート30(31)が閉にされる。これにより、レーザ刻印装置4、レーザ刻印システム7、及びレーザ刻印方法は、搬送ライン3上の鋳型Mに対してレーザ光Lで識別子を刻印する場合に、作業空間Sから外部へのレーザ光Lの漏れを抑制できる。レーザ刻印装置4、レーザ刻印システム7、及びレーザ刻印方法は、連続した搬入出又は間欠的な搬入出を繰り返す、搬送ライン3上の鋳型Mと干渉することなく、レーザ光Lを確実に遮光できる。
【0056】
レーザ刻印装置4は、搬入口22及び搬出口23にそれぞれ遮光ゲート30(31)が設けられるため、レーザ刻印装置4は、搬入口22及び搬出口23の何れか一方にのみ遮光ゲートが設けられる場合と比べて、レーザ光Lの漏れを一層抑制できる。レーザ刻印装置4は、搬送ライン3上の鋳型Mが遮光ゲート30(31)と干渉することを回避できる。レーザ刻印装置4は、ヘッド10の不具合が鋳型Mの搬送に影響を与えることを回避できる。レーザ刻印装置4は、刻印が不要な鋳型Mに対する刻印動作を省略できるので、レーザ光Lを発生させる光源12及びヘッド10の寿命を縮めることを防止できる。レーザ刻印装置4Cは、刻印動作で発生する煙などによるレーザ光Lの減衰を抑制し、刻印の精度が低下することを抑制できる。レーザ刻印装置4は、被覆部材13及び支持部材14によりケーブル15に発生する曲げ応力が抑制されるので、被覆部材13及び支持部材14を備えない場合と比べて、ケーブル15の劣化を抑制できる。
【0057】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0058】
遮光ゲートは、搬入口22及び搬出口23の何れか一方にのみ設けられてもよい。例えば、搬出口23から漏れるレーザ光Lに作業者が晒されない場合は、遮光ゲートは搬入口22にのみ設けられる。同様に、搬入口22から漏れるレーザ光Lに作業者が晒されない場合は、遮光ゲートは搬出口23にのみ設けられる。
【0059】
図10は、遮光ゲート30が搬入口22にのみ設けられるレーザ刻印装置4Dの構成の一例を示す断面図である。レーザ刻印装置4Dでは、遮蔽部材23Aが搬出口23に設けられる。遮蔽部材23Aは、搬出口23から搬出された鋳型Mが通過可能な空間を内部に画成する。この場合、レーザ光Lは、遮蔽部材23Aの内部で反射及び減衰を繰り返すため、搬出口23から漏れるレーザ光Lに作業者が晒されない。よって、遮光ゲート30は、搬入口22にのみ設けられる。レーザ刻印装置4Dの他の構成は、
図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。同様に、搬入口22に遮蔽部材が設けられる場合には、遮光ゲート30は搬出口23にのみ設けられる。
【0060】
レーザ刻印装置4は、砂により形成される鋳型に識別子を刻印する形態に限定されない。レーザ刻印装置4は、自硬性鋳型、熱硬化性鋳型、又はガス硬化性鋳型にも識別子を刻印することができる。レーザ刻印装置4は、鋳型だけでなく中子に識別子を刻印することもできる。本開示で説明された鋳型は、上述した鋳型、自硬性鋳型、熱硬化性鋳型、ガス硬化性鋳型、及び中子を包含する。
【0061】
本開示の実施形態では、造型機2として、上下鋳型を交互に上下鋳枠に造型する枠付鋳型造型機を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。この他に例えば、上下鋳型を同時に造型した後、該上下鋳型を型合わせし、その後、該上下鋳型を上下鋳枠から抜き出し、上下鋳型だけの状態で造型機2から搬出される方式の無枠鋳型造型機に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
3…搬送ライン、4…レーザ刻印装置、7…レーザ刻印システム、10…ヘッド、20…遮光ケース、S…作業空間、22…搬入口、23…搬出口、30,31…遮光ゲート、40…制御部、M…鋳型。