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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】超音波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020146109
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041084
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-060369(JP,A)
【文献】特開2012-010312(JP,A)
【文献】特開2011-030062(JP,A)
【文献】特開平08-056399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0075571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を画成するケースと、
前記収容空間内に配置されている圧電素子と、
前記圧電素子の主面上に配置され、発泡体からなる吸音材と、
前記吸音材の周囲に配置されている防振材と、を備え、
前記吸音材は、前記主面と対向している第1対向面を有し、
前記第1対向面は、凸部及び凹部が交互に連続する凹凸形状を呈し、前記主面よりも粗い、
超音波デバイス。
【請求項2】
前記第1対向面における前記凸部及び前記凹部の表面には、複数の窪みが設けられている、
請求項1に記載の超音波デバイス。
【請求項3】
前記圧電素子と前記第1対向面との間には、第1空間が形成されている、
請求項1又は2に記載の超音波デバイス。
【請求項4】
前記収容空間内に前記吸音材を挟んで前記圧電素子と対向して配置されており、前記圧電素子と電気的に接続されている基板を更に備え、
前記吸音材は、前記基板と対向している第2対向面を有し、
前記第2対向面は、凸部及び凹部が交互に連続する凹凸形状を呈し、前記主面よりも粗い、
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【請求項5】
前記第2対向面における前記凸部及び前記凹部の表面には、複数の窪みが設けられている、
請求項4に記載の超音波デバイス。
【請求項6】
前記基板と前記第2対向面との間には、第2空間が形成されている、
請求項4又は5に記載の超音波デバイス。
【請求項7】
前記第1対向面は、前記第2対向面よりも粗い、
請求項4~6のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【請求項8】
前記主面上に配置された制振材を更に備え、
前記吸音材は、前記第1対向面における前記凸部が前記制振材と接するように配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【請求項9】
前記圧電素子の厚さ方向から見て、前記圧電素子は、前記吸音材の外縁の内側に位置している、
請求項1~8のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【請求項10】
前記圧電素子の厚さ方向において、前記吸音材は、前記防振材よりも前記圧電素子側に突出している、
請求項1~9のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【請求項11】
前記圧電素子の厚さ方向から見て、前記第1対向面は、前記圧電素子の外側に位置している第1領域と、前記第1領域の内側に位置している第2領域と、を有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりも粗い、
請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収容ケースと、収容ケース内に配置されている圧電振動素子と、圧電振動素子上に配置されているフェルト等の防音用充填材と、収容ケースを密封するシリコン樹脂等の封止用絶縁樹脂と、を備える超音波送受信器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-260239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波デバイスには、超音波成分の残響の更なる低減が求められている。しかしながら、上述されたような超音波デバイスは、超音波成分の残響を十分に低減しがたい。
【0005】
本発明の一つの態様は、超音波成分の残響をより一層低減する超音波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る超音波デバイスは、収容空間を画成するケースと、収容空間内に配置されている圧電素子と、圧電素子の主面上に配置され、発泡体からなる吸音材と、吸音材の周囲に配置されている防振材と、を備え、吸音材は、主面と対向している第1対向面を有し、第1対向面は、凸部及び凹部が交互に連続する凹凸形状を呈し、主面よりも粗い。
【0007】
上記一つの態様では、圧電素子と対向している吸音材の第1対向面は、圧電素子の表面よりも粗い凹凸形状を呈している。これにより、第1対向面の表面積が増えるので、吸音材による吸音効果を高めることができる。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0008】
上記一つの態様では、第1対向面における凸部及び凹部の表面には、複数の窪みが設けられていてもよい。この場合、第1対向面の表面積が更に増えるので、吸音材による吸音効果を更に高めることができる。
【0009】
上記一つの態様では、圧電素子と第1対向面との間には、第1空間が形成されていてもよい。この場合、超音波成分の残響が圧電素子から吸音材の骨格に直接伝わらない。これにより、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0010】
上記一つの態様は、収容空間内に吸音材を挟んで圧電素子と対向して配置されており、圧電素子と電気的に接続されている基板を更に備え、吸音材は、基板と対向している第2対向面を有し、第2対向面は、凸部及び凹部が交互に連続する凹凸形状を呈し、主面よりも粗くてもよい。この場合、第2対向面は、圧電素子の主面よりも粗い凹凸形状を呈している。このため、超音波成分が第2対向面により乱反射される。よって、超音波成分が、第2対向面から外に漏れることが抑制される。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0011】
上記一つの態様では、第2対向面における凸部及び凹部の表面には、複数の窪みが設けられていてもよい。この場合、超音波成分が複数の窪みにより更に乱反射される。
【0012】
上記一つの態様では、基板と第2対向面との間には、第2空間が形成されていてもよい。この場合、超音波成分の残響が吸音材の骨格から基板に直接伝わらない。これにより、超音波成分の残響を更に低減することができる。
【0013】
上記一つの態様では、第1対向面は、第2対向面よりも粗くてもよい。この場合、第1対向面が粗くない場合に比べて、第1対向面の表面積が増えるので、吸音材による吸音効果を高めることができる。
【0014】
上記一つの態様は、主面上に配置された制振材を更に備え、吸音材は、第1対向面における凸部が制振材と接するように配置されていてもよい。この場合、第1対向面が凹凸形状を有しているので、凸部が制振材に接していても、吸音材による吸音効果が発揮される。
【0015】
上記一つの態様では、圧電素子の厚さ方向から見て、圧電素子は、吸音材の外縁の内側に位置していてもよい。この場合、吸音材により超音波成分が吸音され易い。よって、超音波成分の残響が更に低減される。
【0016】
上記一つの態様では、圧電素子の厚さ方向において、吸音材は、防振材よりも圧電素子側に突出していてもよい。この場合、防振材から露出する吸音材の表面積が増えるので、超音波成分の残響が更に低減される。
【0017】
上記一つの態様では、圧電素子の厚さ方向から見て、第1対向面は、圧電素子の外側に位置している第1領域と、第1領域の内側に位置している第2領域と、を有し、第2領域は、第1領域よりも粗くてもよい。この場合、第2領域が粗いことにより、表面積が大きくなるので、音波吸収を効率的に行うことができる。また、第1領域には防音効果があるので、スリーブやピンへの音波伝達を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つの態様によれば、超音波成分の残響をより一層低減する超音波デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る超音波デバイスの斜視図である。
図2図2は、図1の超音波デバイスの分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図5は、ケース及び圧電素子の平面図である。
図6図6は、図3の一部拡大図である。
図7図7は、圧電素子を示す平面図である。
図8図8は、吸音材による音のエネルギー減衰を示す模式図である。
図9図9は、第1変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
図10図10は、第2変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
図11図11は、第3変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
図12図12は、第4変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
図13図13は、第5変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
図14図14は、第6変形例に係る超音波デバイスの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
図1図4を参照して、本実施形態に係る超音波デバイス1の構成を説明する。図1は、一実施形態に係る超音波デバイスの斜視図である。図2は、図1の超音波デバイスの分解斜視図である。図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿っての断面図である。
【0022】
超音波デバイス1は、図1図4に示されるように、ケース10と、圧電素子20と、配線部材30と、複数のピン41,43と、複数のスリーブ46,47と、吸音材50と、基板60と、複数のピン65,67と、防振材70と、を備えている。ケース10は、収容空間S1を画成している。圧電素子20、圧電素子20と、配線部材30と、複数のピン41,43と、吸音材50と、基板60と、複数のピン65,67と、防振材70とは、収容空間S1内に配置されている。本実施形態では、超音波デバイス1は、超音波センサを構成する。超音波デバイス1は、たとえば、超音波を送受信する。
【0023】
ケース10は、底壁11と、側壁13とを有している。側壁13は、底壁11と交差する方向に延在している。底壁11と側壁13とが、収容空間S1を画成している。底壁11と交差する方向は、たとえば、底壁11と直交する方向であってもよい。底壁11と側壁13とは、一体形成されている。ケース10は、一端が開口している有底筒状の部材である。ケース10は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。ケース10は、Al以外の金属からなっていてもよい。ケース10は、たとえば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は銅合金からなっていてもよい。アルミニウム合金は、たとえば、ジュラルミンを含む。銅合金は、たとえば、真鍮を含む。
【0024】
図5は、ケース及び圧電素子の平面図である。図5では、吸音材50が破線で示されている。底壁11は、図5にも示されるように、収容空間に臨む底面12を有している。底面12は、底面12と交差する方向から見て、長径と短径とを有する円形状を呈している。本実施形態では、底面12は、長円形状を呈している。底面12では、長径に沿う方向と短径に沿う方向とが互いに交差している。長径に沿う方向と短径に沿う方向とは、たとえば、直交している。底壁11の厚さは、たとえば、0.7mm以上1.5mm以下である。本実施形態では、底壁11の厚さは、0.9mmである。
【0025】
以下では、底面12の長径に沿う方向をX方向、底面12の短径に沿う方向をY方向、底面12に直交する方向をZ方向とする。
【0026】
底面12は、直線状を呈している一対の縁12aと、円弧状を呈している一対の縁12bとで規定されている。一対の縁12aは、X方向に延在していると共に、Y方向で離間している。一対の縁12aは、互いに略平行である。縁12bは、各縁12aの端同士を接続している。長径と短径とを有する円形状は、楕円形状であってもよい。底面12と交差する方向は、たとえば、底面12と直交する方向であってもよい。底面12と交差する方向は、底壁11と交差する方向と一致してもよい。
【0027】
側壁13は、内側面14を有している。底面12及び内側面14は、ケース10の内面を構成している。内側面14には、複数の段差部15が形成されている。本実施形態では、3つの段差部15が形成されている。一つの段差部15は、一方の縁12aに沿って延在している。残りの二つの段差部15は、他方の縁12aに沿って互いに離間して設けられている。段差部15は、ケース10に対する防振材70の位置決めに用いられる。
【0028】
図6は、図3の一部拡大図である。図7は、圧電素子を示す平面図である。圧電素子20は、図5図7にも示されるように、圧電素体21と、複数の電極23,25とを有している。本実施形態では、圧電素子20は、二つの電極23,25を有している。圧電素子20は、底壁11上に配置されている。圧電素子20は、たとえば、接着により底壁11上に固定されている。
【0029】
圧電素体21は、互いに対向している一対の主面21a,21bと、少なくとも一つの側面21cと、を有している。側面21cは、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向している方向(Z方向)に延在している。主面21bは、底面12と対向している。圧電素子20は、主面21bと底面12とが対向するように、底壁11上に配置されている。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と交差する方向である。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と直交する方向であってもよい。
【0030】
圧電素体21は、直方体形状(矩形板状)を呈している。一対の主面21a,21bは、矩形状を呈している。圧電素体21は、側面21c以外に、三つの側面21dを有している。各側面21dも、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向している方向(Z方向)に延在している。本実施形態では、圧電素体21は、平面視で、正方形状を呈している。圧電素体21は、円板状を呈していてもよい。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
【0031】
圧電素体21は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)を含む。圧電素体21は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体により構成される。圧電素体21の厚さは、たとえば、150~500μmである。本実施形態では、圧電素体21の厚さは、200μmである。
【0032】
電極23は、主面21bと側面21cと主面21aとに設けられている。電極23は、主面21b上に位置している部分23aと、側面21c上に位置している部分23bと、主面21a上に位置している部分23cと、を有している。部分23aと部分23bとは、主面21bと側面21cとの間に位置している稜部で互いに連結されている。部分23bと部分23cとは、主面21aと側面21cとの間に位置している稜部で互いに連結されている。各部分23a,23b,23cは、一体に形成されている。電極23の部分23aが底壁11(底面12)に接合されている。
【0033】
圧電素子20(圧電素体21)の厚さ方向(Z方向)から見て、電極23の部分23aは、側面21cと対向している側面21dと主面21bとの間に位置している稜部から離間している。主面21bは、側面21cと対向している側面21dと主面21bとの間に位置している稜部に沿って、露出している。電極23の部分23bは、側面21c全体を覆っている。各側面21dは、電極23から露出している。
【0034】
電極25は、主面21aに設けられている。電極25は、主面21a上のみに配置されている。電極25は、電極23の部分23cと離間している。主面21aは、電極23の部分23cと電極25との間で露出している。主面21aに直交する方向から見て、電極25は、側面21cと対向している側面21dと主面21aとの間に位置している稜部から離間している。主面21aは、側面21cと対向している側面21dと主面21aとの間に位置している稜部に沿って、露出している。各側面21dは、電極25からも露出している。圧電素体21は、Z方向において電極23の部分23aと電極25とに重なる領域を有している。この領域は、Z方向において、電極23の部分23aと電極25とで挟まれている。圧電素子20では、この領域が、圧電的に活性な領域を構成する。
【0035】
各電極23,25は、圧電素体21の表面と接している。各電極23,25の厚さは、1.5μm以下である。各電極23,25は、たとえば、クロム(Cr)層、ニッケル銅合金(Ni-Cu)層、及び金(Au)層からなる積層体を含む。各電極23,25は、銀(Ag)、チタン(Ti)、白金(Pt)、銀パラジウム合金(Ag-Pd)、又はニッケルクロム合金(Ni-Cr)を含んでいてもよい。各電極23,25は、たとえば、スパッタリング法により圧電素体21の表面に形成される。
【0036】
圧電素子20は、図5にも示されるように、側面21cがY方向に沿うように、底壁11(底面12)上に配置されている。主面21aにおける、各電極23,25から露出している領域は、Y方向に延在している。圧電素子20がケース10に配置されている状態では、電極25と、電極23の部分23cとは、X方向で離間している。本実施形態では、側面21cと側面21dとが対向している方向が、X方向である。圧電素子20は、たとえば、底面12での、X方向及びY方向での略中央に配置されている。圧電素体21は、平面視で、正方形状を呈しているが、圧電素体21は、平面視で長方形状を呈していてもよい。この場合、圧電素体21の長辺に沿う方向が長手方向であり、圧電素体21の短辺に沿う方向が短手方向である。圧電素子20は、圧電素体21の長手方向がX方向に沿うように、底壁11上に配置されていてもよい。
【0037】
配線部材30は、圧電素子20(圧電素体21)の主面21a上に配置されている。配線部材30は、圧電素子20と電気的に接続されている。配線部材30は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。配線部材30は、ベース31と、二つの脚部33,35を有している。
【0038】
ベース31は、平面視で底面12と略同形状を呈する板状部材である。ベース31は、平面視で底面12よりも一回り小さく、内側面14から離間して配置されている。ベース31は、図6にも示されるように、Z方向において互いに対向している一対の主面31a,31bを有している。配線部材30は、主面31bが圧電素体21と対向するように、収容空間S1に配置されている。
【0039】
ベース31には、圧電素子20の一部を露出させる開口31cが形成されている。本実施形態では、開口31cは矩形状を呈している。開口31cの縁部は、X方向で互いに対向する直線状の一対の縁部31dと、Y方向で互いに対向する直線状の一対の縁部31eと、を有している。一方の縁部31dは、電極23の部分23cの全体を覆っている。他方の縁部31dは、電極25の一部を覆っている。
【0040】
ベース31は、たとえば、ポリイミド樹脂等の樹脂からなる樹脂層である。ベース31には、複数の導体層(不図示)が配置されている。複数の導体層は、ベース31に接着されている。本実施形態では、2つの導体層が配置されている。一方の導体層は、電極23とピン41とを接続している。他方の導体層は、電極25とピン43とを接続している。
【0041】
脚部33,35は、主面31b(図6参照)に設けられ、底面12と接している。脚部33,35は、底面12に直交する方向(Z方向)から見て、X方向において圧電素子20を挟むように、圧電素子20の両側に配置されている。脚部33,35は、底面12の一対の縁12b(図5参照)に沿ってY方向に延在している。脚部33は、電極23の部分23b(側面21c)と対向している。脚部35は、側面21cと対向する側面21dと対向している。
【0042】
配線部材30は、絶縁性のホットメルト樹脂37,39によって底壁11(底面12)に固定されている。ホットメルト樹脂37は、主面31bにおいて、脚部33と部分23bとの間に配置されている。ホットメルト樹脂39は、主面31bにおいて、脚部35と側面21dの間に配置されている。ホットメルト樹脂37,39は、主面31bと底面12とに接着されている。
【0043】
ピン41は、ベース31に設けられた一方の導電層にはんだ接続されている。ピン41は、一方の導電層に導電性接着剤により接続されていてもよい。ピン41は、一方の導体層を通じて、電極23と電気的に接続されている。ピン43は、ベース31に設けられた他方の導電層にはんだ接続されている。ピン43は、他方の導電層に導電性接着剤により接続されていてもよい。ピン43は、他方の導体層を通じて、電極25と電気的に接続されている。
【0044】
ピン41,43は、X方向において互いに離間した状態で主面31aに配置されている。ピン41,43は、主面31aからZ方向に延在している。本実施形態では、ピン41,43は、互いに同形状を呈している。各ピン41,43は、たとえば、金属からなる。各ピン41,43は、たとえば、真鍮からなる。各ピン41,43の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は、二層構造である。
【0045】
ピン41は、スリーブ45に保持されている。ピン43は、スリーブ47に保持されている。各スリーブ45,47は、両端にフランジを有する円筒部材である。本実施形態では、スリーブ45,47は、互いに同形状を呈している。各スリーブ45,47は、樹脂からなる。各スリーブ45,47は、たとえば、リン脱酸銅(PDC)、又は黄銅などの金属からなる。スリーブ45,47が金属からなる場合、ピン41,43だけではなくスリーブ45,47も配線部材30の導電層と接合させることができるので、接続信頼性が増す。各スリーブ45,47は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなってもよい。
【0046】
各スリーブ45,47の一端側のフランジは、主面31aと接合されている。スリーブ45は、軸方向(Z方向)から見て、脚部33と重なる位置に配置されている。スリーブ47は、軸方向(Z方向)から見て、脚部35と重なる位置に配置されている。各スリーブ45,47の軸方向の長さは、各ピン41,43の軸方向の長さよりも短い。各ピン41,43は、各スリーブ45,47から突出している。
【0047】
吸音材50は、圧電素子20(圧電素体21)の主面21a上に配置されている。吸音材50は、ピン41,43の間に、ピン41,43から離間して配置されている。吸音材50は、収容空間S1に配置されている。吸音材50は、たとえば、直方体形状を呈している。吸音材50は、Z方向において互いに対向している一対の主面50a,50bと、X方向において互いに対向している一対の側面50cと、Y方向において互いに対向している一対の側面50dとを有している。
【0048】
主面50a(第2対向面)は、基板60と対向している。主面50b(第1対向面)は、圧電素子20(圧電素体21)の主面21aと対向している。本実施形態では、各主面50a,50bは、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状を呈している。各主面50a,50bの長辺は、X方向に延在している。各主面50a,50bの短辺は、Y方向に延在している。各側面50cは、ピン41,43と対向している。各側面50cは、ピン41,43から離間している。各側面50cのY方向の両端部は、防振材70と接している。各側面50dは、防振材70と接している。
【0049】
吸音材50は、図5にも示されるように、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、圧電素子20の全体と重なっている。すなわち、圧電素子20は、Z方向から見て、吸音材50の外縁51の内側に位置している。圧電素子20は、Z方向から見て、吸音材50のX方向及びY方向の略中央に位置している。
【0050】
主面50bは、凸部52及び凹部53が交互に連続する凹凸形状を呈し、主面21aよりも粗い。主面50bの全体が凹凸形状を呈している。凸部52の高さ(凹部53の深さとも言う)は、例えば、0.5mm以上2mm以下である。凸部52の高さは、具体的には、凹部53の底から凸部52の頂部までの高さである。凹凸形状の周期(ピッチ)は、例えば、0.5mm以上1mm以下である。凹凸形状の周期は、具体的には、隣り合う凸部52間の距離、又は、隣り合う凹部53間の距離である。凹凸形状の周期は、例えば、隣り合う凸部52間の距離、又は、隣り合う凹部53間の距離の平均値である。主面50bの凹凸形状は、例えば、モールド成型によって形成される。本実施形態では、吸音材50の主面50a、一対の側面50c、及び一対の側面50dは、主面50bのような凹凸形状を呈していない。
【0051】
吸音材50は、圧電素子20から離間している。吸音材50は、配線部材30からも離間している。吸音材50の凸部52と圧電素子20との間のZ方向における距離は、例えば0.5mm以上2mm以下である。圧電素子20と吸音材50の主面50bとの間には、空間S2が形成されている。空間S2は、収容空間S1の一部である。空間S2は、凹部53内の空間を含む。空間S2の厚さは、例えば、圧電素子20と主面50bとの間のZ方向における距離の最大値である。空間S2の厚さは、例えば、圧電素子20と凹部53の底との間の距離である。空間S2の厚さは、たとえば1mm以上4mm以下である。吸音材50は、凸部52が圧電素子20と接するように配置されていてもよい。この場合であっても、主面50bは凹凸形状を呈しているので、圧電素子20と吸音材50(主面50b)との間には、凹部53内の空間として空間S2が形成されている。
【0052】
吸音材50は、たとえば、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体(気泡構造体)からなる。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。吸音材50は、図4に示されるように、連続気泡54を含む発泡体からなる。連続気泡54は、気泡同士が連続してなる。連続気泡54では、気泡同士が互いに接続されて、三次元的に連続している。連続気泡54は、図4に示される断面において連続しているだけでなく、当該断面に交差する方向にも連続している。吸音材50は、連続気泡54に加えて独立気泡を含んでいてもよい。
【0053】
凸部52及び凹部53の表面には、連続気泡54の形状に対応する複数の窪み55が設けられている。複数の窪み55は、凸部52及び凹部53の表面に露出した連続気泡54の内面からなる。複数の窪み55は、吸音材50の内部の連続気泡54と連結された窪みを含んでいてもよい。複数の窪み55は、独立気泡の形状に対応する窪みを含んでいてもよい。
【0054】
本実施形態では、吸音材50の表面全体に複数の窪み55が設けられている。すなわち、主面50a、一対の側面50c、及び、一対の側面50dにも複数の窪み55が設けられている。窪み55の深さは、凹部53の深さよりも浅い。窪み55の深さは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下である。窪み55の周期(ピッチ)は、凸部52及び凹部53の凹凸形状の周期(ピッチ)よりも小さい。窪み55の周期は、例えば、隣り合う窪み55の間の距離である。窪み55の周期は、例えば、隣り合う窪み55の間の距離の平均値である。
【0055】
主面50bの断面形状は、窪み55による小さな粗さ曲線と、凸部52及び凹部53の凹凸形状による大きな粗さ曲線との合成により形成されている。すなわち、主面50bの断面曲線を周期(波長)又は周波数により分離すれば、2つの粗さ曲線が得られる。凸部52及び凹部53の凹凸形状による大きな粗さ曲線は、うねり曲線に相当する。
【0056】
図8は、吸音材による音のエネルギー減衰を示す模式図である。吸音材50による音のエネルギー減衰には、空気伝搬音のエネルギー減衰と、固体伝搬音のエネルギー減衰とがある。図8(a)には、空気伝搬音のエネルギー減衰が模式的に示されている。図8(a)に示されるように、音波Wが吸音材の連続気泡54又は独立気泡をすり抜ける際、空気の摩擦(または粘性)により音波Wのエネルギーが減衰する。
【0057】
図8(b)には、固体伝搬音のエネルギー減衰が模式的に示されている。図8(b)に示されるように、音波Wが吸音材の骨格56を伝搬する際、骨格56により音波Wのエネルギーが減衰する。空気伝搬音のエネルギー減衰は、固体伝搬音のエネルギー減衰よりも大きい。連続気泡54では、独立気泡よりも空気の通り道が長いので、空気伝搬音のエネルギー減衰が効果的に行われる。なお、図8に示される連続気泡54は、図8に示される断面に交差する方向に連続している。
【0058】
基板60は、吸音材50を挟んで圧電素子20と対向して配置されている。基板60は、主面50a上に配置されている。基板60は、収容空間S1内に配置されている。基板60は、板状部材である。基板60は、Z方向において互いに対向している一対の主面60a,60bを有している。主面60bは、主面50aと対向している。
【0059】
基板60は、吸音材50から離間している。基板60(主面60b)と吸音材50(主面50a)との間には、空間S3が形成されている。空間S3は、収容空間S1の一部である。空間S3は、基板60、吸音材50、及び防振材70によって画成されている。空間S3の厚さは、例えば、基板60(主面60b)と主面50aとの間のZ方向における距離の最大値である。空間S3の厚さは、空間S2の厚さよりも薄い。空間S3の厚さは、たとえば0.2mm以上0.45mm以下である。つまり、基板60と吸音材50とは、Z方向において0.2mm以上0.45mm以下で互いに離間している。なお、空間S3は、形成されていなくてもよい。
【0060】
各主面60a,60bは、長円形状を呈している。各主面60a,60bの長径方向は、Y方向に沿っている。各主面60a,60bの短径方向は、X方向に沿っている。各主面60a,60bの短径方向の一対の縁は、外側に膨らむように湾曲し、円弧状を呈している。基板60には、ピン41,43が挿通される挿通孔61,63が設けられている。挿通孔61,63は、基板60のX方向の両端部に形成され、円形状を呈している。各主面60a,60bの短径方向の一対の縁は、挿通孔61,63に沿って湾曲している。
【0061】
基板60は、圧電素子20と電気的に接続されている。基板60は、たとえば、ガラスエポキシ基板からなる。基板60には、複数の導体層(不図示)が配置されている。複数の導体層は、基板60に接着されている。本実施形態では、2つの導体層が配置されている。一方の導体層は、ピン41とピン65とを接続している。他方の導体層は、ピン43とピン67とを接続している。
【0062】
ピン41,65は、基板60の一方の導電層にはんだ接続されている。ピン41,65は、基板60の一方の導電層に導電性接着剤により接続されていてもよい。ピン41,65は、基板60の一方の導体層を通じて、互いに電気的に接続されている。ピン43,67は、基板60の他方の導電層にはんだ接続されている。ピン43,67は、基板60の他方の導電層に導電性接着剤により接続されていてもよい。ピン43,67は、基板60の他方の導体層を通じて、互いに電気的に接続されている。
【0063】
ピン65,67は、X方向において互いに離間した状態で主面60aに配置されている。ピン65,67は、主面60aからZ方向に延在し、防振材70を貫通している。ピン65,67は、X方向においてピン41,43の間に配置されている。本実施形態では、ピン65,67は、互いに同形状を呈している。
【0064】
ピン65,67は、たとえば、金属からなる。ピン65,67は、たとえば、真鍮からなる。各ピン65,67の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は、二層構造である。
【0065】
防振材70は、ケース10の内面(内側面14)と接して配置され、ケース10の振動を抑制する。防振材70は、吸音材50の周囲に配置されている。防振材70は、ケース10の底壁11と対向している表面70aを有している。表面70aは、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、主面50bと隣り合っている。
【0066】
防振材70は、蓋体71と、枠体73と、を有している。蓋体71は、圧電素子20、配線部材30、ピン41,43、スリーブ45,47、吸音材50、及び基板60がケース10内に収容されている状態で、ケース10の開口を封止している。蓋体71は、収容空間S1を封止している。蓋体71からは、各ピン65,67の先端が突出している。
【0067】
蓋体71の内面71aには、図4に示されるように、基板60が配置される凹部71bが設けられている。基板60は、主面60aを凹部71bの底面と対向させた状態で凹部71b内に配置されている。凹部71bの底面は、主面60aに対応する形状を有している。凹部71bの底面は、主面60aと同形状を呈している。超音波デバイス1が組み立てられる際は、たとえば、凹部71bの底面に基板60が配置された後、内面71aに吸音材50が配置される。凹部71cの深さは、基板60の厚さよりも深いため、基板60と吸音材50との間には空間S3が形成される。
【0068】
凹部71bの底面には、ピン41が収容される凹部71cと、ピン43が収容される凹部71dと、が設けられている。凹部71c,71dは、たとえば断面円形状を呈している。凹部71c,71dの直径は、ピン41,43の直径よりも長い。凹部71c,71dの内面は、ピン41,43から離間している。凹部71c,71dは、凹部71bの底面のX方向における両端部に設けられている。
【0069】
枠体73は、蓋体71と交差する方向に延在している。蓋体71と交差する方向は、たとえば、蓋体71と直交する方向であってもよい。蓋体71と枠体73とは、一体形成されている。防振材70は、軸方向の一端が塞がれ、他端(表面70aに相当)が開口している筒状の部材である。防振材70は、ケース10の内部に嵌め込まれている。防振材70は、ケース10の内部に圧入されている。枠体73は、蓋体71からZ方向に沿ってケース10の内側に延在している。枠体73は、底面12から離間している。枠体73は、ケース10の内側面14と接している。
【0070】
枠体73は、吸音材50の周りを取り囲んでいる。吸音材50は、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)において、防振材70(枠体73)よりも圧電素子20側に突出している。枠体73と圧電素子20との間のZ方向における距離は、吸音材50と圧電素子20との間のZ方向における距離(空間S2の厚さ)よりも長い。
【0071】
枠体73は、一対の側部75と、一対の側部77とを有している。一対の側部75は、吸音材50を挟んでX方向において互いに対向している。一対の側部77は、吸音材50を挟んでY方向において互いに対向している。各側部75は、吸音材50の各側面50cと互いに対向している。各側部75は、吸音材50から離間している。
【0072】
一対の側部77は、吸音材50を挟み込んで保持している。一対の側部77の間には、吸音材50がはめ込まれている。一対の側部77は、吸音材50を圧縮している。吸音材50は、圧縮に対する反発力によって一対の側部77を押圧している。各側部77は、吸音材50の各側面50dと接している。
【0073】
防振材70は、蓋体71から内側面14側に張り出す複数の張出部79を更に有している。張出部79は、蓋体71において、ケース10の段差部15に対応する位置に設けられている。張出部79は、対応する段差部15に配置される。防振材70は、張出部79が段差部15に係止されることで、ケース10に対して位置決めされている。
【0074】
防振材70は、弾性体であり、弾性により残響を抑制する。防振材70は、樹脂からなる。防振材70は、非発泡体であり、吸音材50の密度よりも高い密度を有している。防振材70は、たとえば、シリコーンゴムからなる。防振材70は、たとえば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコーンゴムからなる。
【0075】
超音波センサは、出力波を発信し、検査対象物から跳ね返ってきた出力波を受信する。超音波センサが検査対象物に近接し、超音波センサから検査対象物までの距離がわずかである場合、出力波の発信時に生じる残響成分の電圧と、検査対象物から跳ね返ってきた出力波の受信電圧とが干渉する。これにより、超音波センサでは、受信電圧を検出することが困難になる場合がある。
【0076】
超音波デバイス1では、圧電素子20と対向している吸音材50の主面50bは、主面21aよりも粗い凹凸形状を呈している。これにより、主面50bの表面積が増える。超音波成分は、主面50bから吸音材50に吸収される。このとき、主面50bの表面積が大きくなるほど、超音波成分が吸収され易い。よって、超音波デバイス1では、吸音材50による吸音効果を高めることができる。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0077】
超音波デバイス1では、主面50bの凸部52及び凹部53の表面には、連続気泡54の形状に対応する複数の窪み55が設けられている。これにより、主面50bの表面積が更に増えるので、吸音材50による吸音効果を更に高めることができる。
【0078】
超音波デバイス1では、圧電素子20と吸音材50との間には空間S2が形成されている。このため、超音波成分の残響が圧電素子20から吸音材50の骨格56に直接伝わらない。これにより、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0079】
上述のように、骨格56によっても音波Wのエネルギーは減衰するが、固体伝搬音のエネルギー減衰は、空気伝搬音のエネルギー減衰よりも小さい。したがって、圧電素子20と吸音材50とを互いに接触させた場合よりも、圧電素子20と吸音材50とを互いに離間させた場合の方が、超音波成分の残響が低減され易い。
【0080】
圧電素子20と吸音材50とを互いに接触させた場合、圧電素子20が過度に拘束される結果、圧電素子20の振動特性が低下するおそれもある。本実施形態では、圧電素子20と吸音材50とが互いに離間しているので、圧電素子20がこのように過度に拘束されることがない。よって、良好な振動特性が得られる。なお、超音波デバイス1では、凸部52は圧電素子20に接していてよい。主面50bが凹凸形状を有しているので、凸部52が圧電素子20に接していても、主面50bの凹部53及び窪み55は、圧電素子20と接しない状態に保たれる。よって、吸音材50による吸音効果が発揮される。このように、圧電素子20と吸音材50との間に空間S1を確保しつつ、圧電素子20と吸音材50との間隔を狭めることができるので、省スペース化を図ることができる。
【0081】
超音波デバイス1では、基板60と吸音材50との間には空間S3が形成されている。このため、超音波成分の残響が吸音材50の骨格56から基板60に直接伝わらない。これにより、超音波成分の残響を更に低減することができる。
【0082】
超音波デバイス1では、主面50bは、主面50aよりも粗い。このため、主面50bが粗くない場合に比べて、主面50bの表面積が増えるので、吸音材50による吸音効果を高めることができる。
【0083】
超音波デバイス1では、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、圧電素子20は、吸音材50の外縁51の内側に位置している。このように、吸音材50が圧電素子20の全体を覆うように配置されているので、吸音材50により超音波成分が吸音され易い。よって、超音波成分の残響が更に低減される。
【0084】
超音波デバイス1では、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)において、吸音材50は、防振材70よりも圧電素子20側に突出している。このため、防振材70から露出する吸音材50の表面積が増えるので、吸音材50による吸音効果を高めることができる。この結果、超音波成分の残響が更に低減される。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0086】
図9は、第1変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図9に示されるように、超音波デバイス1Aは、吸音材50(図3参照)の代わりに吸音材50Aを備える点で、超音波デバイス1(図3参照)と相違している。吸音材50Aでは、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、主面50bは、圧電素子20の外側に位置している第1領域R1と、第1領域R1の内側に位置している第2領域R2と、を有している。Z方向から見て、第2領域R2は、圧電素子20と同じか圧電素子20よりも大きく、圧電素子20の全体と重なっている。
【0087】
第2領域R2は、第1領域R1よりも粗い。ここでは、凸部52の高さ(又は凹部53の深さ)は、第1領域R1及び第2領域R2において互いに同等である。第2領域R2における凹凸形状の周期(ピッチ)は、第1領域R1における凹凸形状の周期(ピッチ)よりも小さい。主面50a,50bの対向方向(Z方向)から見た単位面積あたりの第1領域R1における凸部52の数(又は凹部53の数)は、当該単位面積あたりの第2領域R2における凸部52の数(又は凹部53の数)よりも多い。
【0088】
図10は、第2変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図10に示されるように、超音波デバイス1Bは、吸音材50(図3参照)の代わりに吸音材50Bを備える点で、超音波デバイス1(図3参照)と相違している。吸音材50Bでは、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、主面50bは、圧電素子20の外側に位置している第1領域R1と、第1領域R1の内側に位置している第2領域R2と、を有している。Z方向から見て、第2領域R2は、圧電素子20と同じか圧電素子20よりも大きく、圧電素子20の全体と重なっている。
【0089】
第1領域R1は、第2領域R2よりも粗い。ここでは、凸部52の高さ(又は凹部53の深さ)は、第1領域R1及び第2領域R2において互いに同等である。第1領域R1における凹凸形状の周期(ピッチ)は、第2領域R2における凹凸形状の周期(ピッチ)よりも小さい。主面50a,50bの対向方向(Z方向)から見た単位面積あたりの第1領域R1における凸部52の数(又は凹部53の数)は、当該単位面積あたりの第2領域R2における凸部52の数(又は凹部53の数)よりも少ない。
【0090】
超音波デバイス1A,1Bにおいても、主面50bは、凸部52及び凹部53が交互に連続する凹凸形状を有し、主面21aよりも粗い。よって、超音波デバイス1と同等の効果が得られる。超音波デバイス1Aでは、第1領域R1は、第2領域R2よりも粗い。よって、第1領域R1の方が第2領域R2よりも超音波成分を吸収し易い。超音波デバイス1Bでは、第2領域R2は、第1領域R1よりも粗い。よって、第2領域R2の方が第1領域R1よりも超音波成分を吸収し易い。
【0091】
吸音材50に吸収された超音波成分の一部は、防振材70の内面により反射されて主面50bから吸音材50の外に漏れる。このとき、主面50bが粗くなるほど、超音波成分が主面50bにより乱反射されて、吸音材50の外に漏れ難くなる。超音波デバイス1Aでは、第2領域R2は、第1領域R1よりも粗いので、第2領域R2から超音波成分が漏れることが更に抑制される。超音波デバイス1Bでは、第1領域R1は、第2領域R2よりも粗いので、第1領域R1から超音波成分が漏れることが更に抑制される。
【0092】
超音波デバイス1Aでは、仮に吸音材50が圧電素子20に接していても接触面積が少ないので、圧電素子20への負荷が少ない。また、第1領域R1が粗いことにより表面積が大きくなるので、音波吸収を効率的に行うことができる。超音波デバイス1Bでは、第2領域R2が粗いことにより、表面積が大きくなるので、音波吸収を効率的に行うことができる。また、第1領域R1には防音効果があるので、スリーブ45,47やピン41,43への音波伝達を防止することができる。
【0093】
図11は、第3変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図11に示されるように、超音波デバイス1Cは、吸音材50(図3参照)の代わりに吸音材50Cを備える点で、超音波デバイス1(図3参照)と相違している。吸音材50Cでは、主面50bだけでなく、主面50aも凸部52及び凹部53が連続している凹凸形状を呈し、主面21aよりも粗い。主面50aの全体が凹凸形状を呈している。図示を省略するが、吸音材50Cでは、主面50aの凸部52及び凹部53の表面にも、連続気泡54の形状に対応する複数の窪み55が設けられている。
【0094】
主面50aの凹凸形状は、主面50bの凹凸形状と同等である。すなわち、主面50aにおける凸部52の高さ及び凹凸形状の周期(ピッチ)は、主面50bにおける凸部52の高さ及び凹凸形状の周期(ピッチ)と同等である。主面50a,50bの対向方向(Z方向)から見た単位面積あたりの凸部52の数(又は凹部53の数)は、主面50a,50bにおいて同等である。
【0095】
基板60は、吸音材50Cから離間している。主面50aの凸部52と基板60との間のZ方向における距離は、例えば0.5mm以上2mm以下である。空間S3は、凹部53内の空間を含む。吸音材50Cは、凸部52が基板60と接するように配置されていてもよい。この場合であっても、主面50aは凹凸形状を呈しているので、基板60(主面60b)と吸音材50(主面50a)との間には、凹部53内の空間として空間S3が形成されている。
【0096】
図12は、第4変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図12に示されるように、超音波デバイス1Dは、吸音材50C(図11参照)の代わりに吸音材50Dを備える点で、超音波デバイス1C(図11参照)と相違している。吸音材50Dでは、主面50aは、主面50bよりも粗い。主面50aの凹凸形状は、主面50bの凹凸形状と異なる。主面50aにおける凸部52の高さは、主面50a及び主面50bにおいて互いに同等である。主面50aにおける凹凸形状の周期(ピッチ)は、主面50bにおける凹凸形状の周期(ピッチ)よりも小さい。主面50a,50bの対向方向(Z方向)から見た単位面積あたりの主面50aにおける凸部52の数(又は凹部53の数)は、当該単位面積あたりの主面50bにおける凸部52の数(又は凹部53の数)よりも多い。
【0097】
図13は、第5変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図13に示されるように、超音波デバイス1Eは、吸音材50C(図11参照)の代わりに吸音材50Eを備える点で、超音波デバイス1C(図11参照)と相違している。吸音材50Eでは、主面50bは、主面50aよりも粗い。主面50aの凹凸形状は、主面50bの凹凸形状と異なる。主面50aにおける凸部52の高さは、主面50a及び主面50bにおいて互いに同等である。主面50aにおける凹凸形状の周期(ピッチ)は、主面50bにおける凹凸形状の周期(ピッチ)よりも大きい。主面50a,50bの対向方向(Z方向)から見た単位面積あたりの主面50aにおける凸部52の数(又は凹部53の数)は、当該単位面積あたりの主面50bにおける凸部52の数(又は凹部53の数)よりも少ない。
【0098】
超音波デバイス1C,1D,1Eにおいても、主面50bは、凸部52及び凹部53が交互に連続する凹凸形状を有し、主面21aよりも粗い。よって、超音波デバイス1と同等の効果が得られる。超音波デバイス1C,1D,1Eでは、主面50aも、主面21aよりも粗い凹凸形状を呈している。このため、超音波成分が主面50aにより乱反射される。よって、超音波成分が、主面50aから外に漏れることが抑制される。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。主面50aにおける凸部52及び凹部53の表面にも、連続気泡54の形状に対応する複数の窪み55が設けられている。このため、超音波成分が複数の窪み55により更に乱反射される。主面50aが凹凸形状を呈しているので、基板60と吸音材50との間には、空間S3が形成され易い。
【0099】
超音波デバイス1Dでは、主面50aは主面50bよりも粗い。このため、主面50aが主面50bよりも粗くない場合に比べて、超音波成分が主面50aにより乱反射されるので、超音波成分が主面50aから外に漏れることが更に抑制される。
【0100】
超音波デバイス1Eでは、主面50bは主面50aよりも粗い。このため、主面50bが主面50aよりも粗くない場合に比べて、主面50bの表面積が増えるので、吸音材50による吸音効果を高めることができる。
【0101】
図14は、第6変形例に係る超音波デバイスの断面図である。図14に示されるように、超音波デバイス1Fは、制振材40を備える点で、超音波デバイス1(図3参照)と相違している。制振材40は、圧電素子20上に配置されている。制振材40は、電極25上に配置(塗布)されている。制振材40は、配線部材30の開口31c内に配置されている。制振材40は、圧電素子20の厚さ方向(Z方向)から見て、配線部材30から離間している。制振材40は、開口31cの内側面と接していない。制振材40の厚さは、配線部材30のベース31の厚さと同等である。制振材40は、たとえば、ゴムなどの弾性体である。吸音材50は、主面50bにおける凸部52が制振材40及び配線部材30と接するように配置されている。
【0102】
超音波デバイス1Fにおいても、主面50bは、凸部52及び凹部53が交互に連続する凹凸形状を有し、主面21aよりも粗い。よって、超音波デバイス1と同等の効果が得られる。超音波デバイス1Fは、制振材40を備えるので、超音波成分の残響が更に抑制される。主面50bが凹凸形状を有しているので、凸部52が制振材40に接していても、主面50bの凹部53及び窪み55は、制振材40と接しない状態に保たれる。よって、吸音材50による吸音効果が発揮される。このように制振材40と吸音材50との間に空間S1を確保しつつ、制振材40と吸音材50との間隔を狭めることができるので、省スペース化を図ることができる。
【0103】
超音波デバイス1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fは、超音波の送信のみを行ってもよい。超音波デバイス1は、超音波の受信のみを行ってもよい。
【0104】
圧電素子20は、圧電素体21内に配置される一つ又は複数の内部電極を有していてもよい。この場合、圧電素体21は複数の圧電体層を有していてもよく、内部電極と圧電体層とが交互に配置されていてもよい。
【0105】
圧電素子20の厚さ方向(Z方向)において、吸音材50は、防振材70よりも圧電素子20と反対側に凹んでいてもよい。吸音材50は、主面50bにおける凸部52の先端が防振材70のZ方向の先端と同一面内に位置するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…超音波デバイス、10…ケース、20…圧電素子、21a…主面、40…制振材、50…吸音材、50a,50b…主面、51…外縁、52…凸部、53…凹部、54…連続気泡、55…窪み、60…基板、70…防振材、S1…収容空間、S2…空間、S3…空間、R1…第1領域、R2…第2領域。
図1
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図14