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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】物品搬送車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
B61B13/00 M
B61B13/00 F
B61B13/00 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021007748
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112099
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岸 遼司
(72)【発明者】
【氏名】森川 靖志
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196359(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/128878(JP,A1)
【文献】特開2013-99990(JP,A)
【文献】特開2012-40961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐区間又は合流区間である交差区間を複数備えた走行経路に沿って物品を搬送する物品搬送車であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向に沿う上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記走行経路に沿って移動する車両本体と、前記車両本体に連結された第1車体部と、前記第1車体部よりも前記走行方向の上流側に規定の車体部間距離離れた位置において前記車両本体に連結された第2車体部と、前記第1車体部及び前記第2車体部を制御する制御部と、を備え、
前記第1車体部は、前記走行経路に沿って配置された走行面上を転動する第1走行車輪と、前記交差区間において前記走行経路に沿って配置された案内レールを転動する第1案内車輪と、前記第1案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第1案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第1切替動作を行う第1案内切替機構と、を備え、
前記第2車体部は、前記走行面上を転動する第2走行車輪と、前記案内レールを転動する第2案内車輪と、前記第2案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第2切替動作を行う第2案内切替機構と、を備え、
前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間と、前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第2側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間とが、前記走行経路に沿って隣り合う場合に、これら2つの前記交差区間に挟まれた区間であって、前記第1切替動作及び前記第2切替動作を実行可能な区間を移行区間として、
前記制御部は、前記移行区間において、前記第1案内切替機構及び前記第2案内切替機構に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを時期をずらして行わせるずらし切替制御を実行可能であり、
前記移行区間の前記走行経路に沿った長さを移行区間長として、
前記ずらし切替制御では、前記第1案内車輪が前記移行区間内にある状態で前記第1案内切替機構に前記第1切替動作を行わせ、前記第1案内車輪の全体が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離移動した位置を始点とし、前記第1案内車輪の下流側端部が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離と前記移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、前記第2案内車輪の移動範囲内で、前記第2案内切替機構に前記第2切替動作を行わせる、物品搬送車。
【請求項2】
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記第1案内車輪が前記移行区間にあり、且つ、前記第2案内車輪が前記移行区間に対して上流側に隣接する前記交差区間にある状態で、前記第1案内切替機構に前記第1切替動作を行わせる、請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項3】
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の走行中に行わせる、請求項1又は2に記載の物品搬送車。
【請求項4】
前記第1案内車輪の全体が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離移動した位置を始点とし、前記第1案内車輪の下流側端部が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離と前記移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、前記第2案内車輪の移動範囲を移行区間相当範囲として、
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記移行区間内において前記第1切替動作を完了できるように、前記第1案内車輪の前記走行方向における移動速度を制御する第1速度制御を実行し、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する間に前記第2切替動作を完了できるように、前記第2案内車輪の前記走行方向における移動速度を制御する第2速度制御を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1案内車輪が前記移行区間に進入する前に前記第1速度制御を開始し、前記第2案内車輪が前記移行区間に進入する前に前記第2速度制御を開始する、請求項4に記載の物品搬送車。
【請求項6】
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記移行区間内において前記第1案内車輪を前記走行方向に移動させながら前記第1切替動作を完了できない場合には、前記第1案内車輪が前記移行区間内となる範囲で当該第1案内車輪の前記走行方向の移動を停止させて前記第1切替動作を完了させ、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する間に前記第2切替動作を完了できない場合には、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する前に当該第2案内車輪の前記走行方向の移動を停止させて前記第2切替動作を完了させる、請求項4又は5に記載の物品搬送車。
【請求項7】
前記制御部は、前記移行区間長が前記車体部間距離に基づいて設定された規定の閾値未満である場合に前記ずらし切替制御を実行し、前記移行区間長が前記閾値以上である場合に、前記第1案内切替機構及び前記第2案内切替機構に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを同時期に行わせる同時切替制御を実行する、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項8】
前記移行区間の開始地点又は当該開始地点よりも上流側の地点に、前記移行区間の情報である移行区間情報を保持した情報保持体が設けられ、
前記移行区間情報には、前記移行区間の前記走行方向の長さである移行区間長の情報、及び、前記移行区間の前記開始地点を示す情報の少なくとも一方が含まれ、
前記車両本体は、前記情報保持体から前記移行区間情報を取得する情報取得部を備え、
前記制御部は、前記情報取得部によって取得された前記移行区間情報に基づいて、前記第1切替動作及び前記第2切替動作を行わせる、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐区間又は合流区間である交差区間を複数備えた走行経路に沿って物品を搬送する物品搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送車の一例が、特開2008-126743号公報(特許文献1)に開示されている。以下の背景技術の説明において括弧内に示される符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、搬送台車(30)の走行経路が交差する分岐区間や合流区間などの交差区間に、方向制御ガイド(14~17)が設けられている。そして、搬送台車(30)に備えられた案内車輪(41~44)の位置を幅方向に切り替えることで、方向制御ガイド(14~17)に当接して案内される案内車輪(41~44)の組み合わせを変更し、搬送台車(30)を所望の進行方向に向けて走行させている。搬送台車(30)は、前後に離間して配置された一対の走行ユニット(40)を備え、これら一対の走行ユニット(40)のそれぞれに案内車輪(41~44)が設けられている。上記の案内車輪(41~44)の位置の切り替えは、各走行ユニット(40)において別々に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-126743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、走行方向に沿って並ぶ2つの交差区間に挟まれた区間において、前後の各走行ユニット(40)で案内車輪(41~44)の位置を切り替える場合に、前側の走行ユニット(40)の案内車輪(42,44)の位置の切り替えと、後側の走行ユニット(40)の案内車輪(42,44)の位置の切り替えとを、時期をずらして行う点が示唆されている(特許文献1の段落0048参照)。しかしながら、特許文献1には、案内車輪(41~44)の位置の切り替えのタイミングをどのように制御するかについては特に開示が無い。
【0006】
上記実状に鑑みて、2つの交差区間に挟まれた区間において、適切なタイミングで案内車輪の幅方向の位置の切り替えを行うことができる物品搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
分岐区間又は合流区間である交差区間を複数備えた走行経路に沿って物品を搬送する物品搬送車であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向に沿う上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記走行経路に沿って移動する車両本体と、前記車両本体に連結された第1車体部と、前記第1車体部よりも前記走行方向の上流側に規定の車体部間距離離れた位置において前記車両本体に連結された第2車体部と、前記第1車体部及び前記第2車体部を制御する制御部と、を備え、
前記第1車体部は、前記走行経路に沿って配置された走行面上を転動する第1走行車輪と、前記交差区間において前記走行経路に沿って配置された案内レールを転動する第1案内車輪と、前記第1案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第1案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第1切替動作を行う第1案内切替機構と、を備え、
前記第2車体部は、前記走行面上を転動する第2走行車輪と、前記案内レールを転動する第2案内車輪と、前記第2案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第2切替動作を行う第2案内切替機構と、を備え、
前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間と、前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第2側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間とが、前記走行経路に沿って隣り合う場合に、これら2つの前記交差区間に挟まれた区間であって、前記第1切替動作及び前記第2切替動作を実行可能な区間を移行区間として、
前記制御部は、前記移行区間において、前記第1案内切替機構及び前記第2案内切替機構に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを時期をずらして行わせるずらし切替制御を実行可能であり、
前記移行区間の前記走行経路に沿った長さを移行区間長として、
前記ずらし切替制御では、前記第1案内車輪が前記移行区間内にある状態で前記第1案内切替機構に前記第1切替動作を行わせ、前記第1案内車輪の全体が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離移動した位置を始点とし、前記第1案内車輪の下流側端部が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離と前記移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、前記第2案内車輪の移動範囲内で、前記第2案内切替機構に前記第2切替動作を行わせる。
【0008】
本構成によれば、第1案内車輪が移行区間内にある状態で第1案内切替機構に第1切替動作を行わせる。そのため、第1案内車輪が、移行区間に対して上流側及び下流側のそれぞれにある交差区間に配置された案内レールに干渉することなく、且つ、下流側の交差区間に配置された案内レールに対して物品搬送車の進行方向に応じた適切な位置となるように、当該第1案内車輪の幅方向の位置を切り替えることができる。また、本構成によれば、第1案内車輪の全体が移行区間に進入してから車体部間距離移動した位置を始点とし、第1案内車輪の下流側端部が移行区間に進入してから車体部間距離と移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、第2案内車輪の移動範囲内で、第2案内切替機構に第2切替動作を行わせる。そのため、第2案内車輪が、移行区間に対して上流側及び下流側のそれぞれにある交差区間に配置された案内レールに干渉することなく、且つ、下流側の交差区間に配置された案内レールに対して物品搬送車の進行方向に応じた適切な位置となるように、当該第2案内車輪の幅方向の位置を切り替えることができる。このように、本構成によれば、2つの交差区間に挟まれた区間において、適切なタイミングで案内車輪の幅方向の位置の切り替えを行うことができる。また、ずらし切替制御において第2切替動作を行わせるタイミングは、第1案内車輪が移行区間に進入してからの走行方向における移動距離に基づいて制御される。このため、移行区間に対する第2案内車輪の実際の位置を検出しなくても、ずらし切替制御を実行する場合の第2切替動作のタイミングを適切に制御することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物品搬送車を備えた物品搬送設備の一部を示す平面図
図2】物品搬送車の平面図
図3】物品搬送車の走行方向視図
図4】走行経路の要部を示す平面図
図5】物品搬送車が2つの交差区間に亘って走行する場合の説明図
図6】制御ブロック図
図7】ずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
図8】ずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
図9】ずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
図10】ずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
図11】ずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
図12】同時切替制御を実行する場合の物品搬送車の動作を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、物品搬送車の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、物品搬送車100は、分岐区間又は合流区間である交差区間Cを複数備えた走行経路Rに沿って物品を搬送する。このような物品搬送車100は、例えば、半導体の製造工程に用いられるガラス基板等を物品として搬送するために利用することができる。この場合、物品搬送車100は、半導体製造工場に設けられた物品搬送設備において利用される。なお図1では、2つの交差区間Cを示しており、詳細には、2つの交差区間Cの何れもが分岐区間である例を示している。
【0013】
以下では、走行経路Rに沿う方向を走行方向Xとし、上下方向に沿う上下方向視で走行方向Xに直交する方向を幅方向Yとする。そして、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、幅方向Yの他方側を幅方向第2側Y2とする。ここでは、図2等に示すように、物品搬送車100の進行方向を基準として、左側を幅方向第1側Y1とし、右側を幅方向第2側Y2とする。また、図中では、走行方向Xにおける下流側を「X1」で表し、上流側を「X2」で表す。
【0014】
図2及び図3に示すように、物品搬送車100は、走行経路Rに沿って移動する車両本体40と、車両本体40に連結された第1車体部10と、第1車体部10よりも走行方向Xの上流側X2に規定の車体部間距離D離れた位置において車両本体40に連結された第2車体部20と、を備えている。車体部間距離Dは、第1車体部10と第2車体部20との、車両本体40に対する取付ピッチに相当する。本例では、車体部間距離Dは、第1車体部10において設定された基準位置と第2車体部20において設定された基準位置との走行方向Xにおける距離である。ここでは、基準位置は、第1車体部10及び第2車体部20それぞれの走行方向Xにおける中心位置に設定されている。
【0015】
本実施形態では、物品搬送車100は、車両本体40に対して、第1車体部10及び第2車体部20のそれぞれを連結する本体連結部50(図3参照)と、第1車体部10と第2車体部20とを連結する車体連結部30(図2参照)と、を備えている。本体連結部50は、車両本体40に対して、第1車体部10及び第2車体部20のそれぞれを上下方向に連結している。車体連結部30は、第1車体部10と第2車体部20とを走行方向Xに連結している。なお、本実施形態では第1車体部10と第2車体部20とは同等の構造であるため、図3では第2車体部20を省略している。ここでは、第1車体部10と車両本体40とを連結する本体連結部50の中心軸の位置が第1車体部10の基準位置に一致し、第2車体部20と車両本体40とを連結する本体連結部50の中心軸の位置が第2車体部20の基準位置に一致している。また、図示の例では、第1車体部10の基準位置は第1走行車輪11の回転軸の位置と一致し、第2車体部20の基準位置は第2走行車輪21の回転軸の位置と一致している。
【0016】
本実施形態では、物品搬送車100が走行するための走行レール9が、走行経路Rに沿って設けられている。走行レール9は、幅方向Yに離間した位置において一対設けられている。図3に示すように、一対の走行レール9のそれぞれは、上方を向く走行面9faと、幅方向Yを向く側面9fbと、を備えている。図示の例では、側面9fbは、走行面9faにおける幅方向Yの外側の端部に連続すると共に、幅方向Yの内側を向くように形成されている。
【0017】
図4に示すように、2つの走行経路Rが交差する交差区間Cには、物品搬送車100が所望の進行方向に走行するための案内レール8が設けられている。複数の交差区間Cのそれぞれには、2つの案内レール8が設けられている。詳細には、交差区間Cにおいて交差する2つの走行経路Rのそれぞれに沿うように、2つの案内レール8が設けられている。走行経路Rが左右に分岐する交差区間Cでは、2つの案内レール8のうち一方の案内レール8が、走行経路Rにおける幅方向Yの中心位置よりも左側(幅方向第1側Y1)に配置されており、他方の案内レール8が、走行経路Rにおける幅方向Yの中心位置よりも右側(幅方向第2側Y2)に配置されている。以下では、説明の便宜上、進行方向に向かって左側に配置された案内レール8を左側案内レール8Lと称し、右側に配置された案内レール8を右側案内レール8Rと称する場合がある。
【0018】
図3に示すように、本実施形態では、案内レール8は、幅方向Yの外側を向く案内面8fを備えている。案内面8fは、案内レール8の延在方向に沿って延在している。本例では、左側案内レール8Lは左側(幅方向第1側Y1)を向く案内面8fを備えており、右側案内レール8Rは右側(幅方向第2側Y2)を向く案内面8fを備えている。
【0019】
図2及び図3に示すように、第1車体部10は、走行経路Rに沿って配置された走行面9fa上を転動する第1走行車輪11と、交差区間Cにおいて走行経路Rに沿って配置された案内レール8を転動する第1案内車輪12と、第1案内車輪12の幅方向Yの位置を、当該第1案内車輪12が案内レール8に対して幅方向第1側Y1(本例では左側)から当接する位置と幅方向第2側Y2(本例では右側)から当接する位置とに移動させる第1切替動作を行う第1案内切替機構13と、を備えている。
【0020】
本実施形態では、複数の第1走行車輪11が、第1車体部10に設けられている。第1車体部10は、複数の第1走行車輪11のそれぞれに対応して設けられた第1走行モータ11mを備えている。本例では、一対の第1走行車輪11が第1車体部10に設けられており、一対の第1走行車輪11のそれぞれは、幅方向Yに離間して配置された一対の走行面9faのそれぞれを転動するように構成されている。また、図3に示すように、本例では、第1車体部10は、一対の走行レール9それぞれの側面9fbに対して幅方向Yの内側から当接して転動する下側案内車輪Wgを備えている(図2では省略)。これにより、第1車体部10が走行経路Rに沿って適切に案内される。
【0021】
本実施形態では、一対の第1案内車輪12が、互いに幅方向Yに離間した状態で第1車体部10に設けられている。一対の第1案内車輪12は、連結部材120によって互いに連結されている。本例では、第1案内切替機構13は、連結部材120を幅方向Yに沿って移動させるための駆動力を発生する第1切替モータ13mと、第1切替モータ13mによって駆動する不図示の移動機構(本例では直動機構)と、を備えている。移動機構が第1切替モータ13mによって駆動されることで、連結部材120が幅方向Yに沿って移動すると共に、連結部材120に連結された第1案内車輪12の幅方向Yの位置が切り替わる。これにより、第1案内車輪12が、案内レール8に対して幅方向第1側Y1から当接する位置と幅方向第2側Y2から当接する位置とに移動可能となっている。本実施形態では、上記のような一対の第1案内車輪12と1つの第1案内切替機構13とから成る組が、互いに走行方向Xに離間した状態で、第1車体部10に対して2組設けられている。以下では、説明の便宜上、1つの組を構成する一対の第1案内車輪12のうち左側(幅方向第1側Y1)に配置された第1案内車輪12を左側第1案内車輪12Lと称し、右側(幅方向第2側Y2)に配置された第1案内車輪12を右側第1案内車輪12Rと称する場合がある。
【0022】
図3に示すように、第1案内車輪12は、第1案内切替機構13の第1切替動作によって、左側案内レール8Lの案内面8fに対して幅方向Yの外側(左側)から当接する位置と、右側案内レール8Rの案内面8fに対して幅方向Yの外側(右側)から当接する位置とに、切り替わるように構成されている。本例では、左側第1案内車輪12Lが、左側案内レール8Lの案内面8fに対して当接するように構成され、右側第1案内車輪12Rが、右側案内レール8Rの案内面8fに対して当接するように構成されている。左側第1案内車輪12Lが左側案内レール8Lの案内面8fに当接して案内された状態で物品搬送車100が走行することにより、物品搬送車100は、交差区間Cを左側(幅方向第1側Y1)の経路に沿って走行する(図5も参照)。一方で、右側第1案内車輪12Rが右側案内レール8Rの案内面8fに当接して案内された状態で物品搬送車100が走行することにより、物品搬送車100は、交差区間Cを右側(幅方向第2側Y2)の経路に沿って走行する(図5も参照)。
【0023】
第2車体部20は、走行面9fa上を転動する第2走行車輪21と、案内レール8を転動する第2案内車輪22と、第2案内車輪22の幅方向Yの位置を、当該第2案内車輪22が案内レール8に対して幅方向第1側Y1(本例では左側)から当接する位置と幅方向第2側Y2(本例では右側)から当接する位置とに移動させる第2切替動作を行う第2案内切替機構23と、を備えている。
【0024】
第2車体部20は、上述した第1車体部10と同様の構成となっている。すなわち、第2車体部20は、各第2走行車輪21に対応して設けられた第2走行モータ21mと、左側案内レール8Lの案内面8fに対して当接するように構成された左側第2案内車輪22Lと、右側案内レール8Rの案内面8fに対して当接するように構成された右側第2案内車輪22Rと、左側第2案内車輪22Lと右側第2案内車輪22Rとを連結する連結部材220と、連結部材220を幅方向Yに沿って移動させるための駆動力を発生する第2切替モータ23mと、第2切替モータ23mによって駆動する不図示の移動機構(本例では直動機構)と、を備えている。そして、本実施形態では、一対の第2案内車輪22と1つの第2案内切替機構23とから成る組が、互いに走行方向Xに離間した状態で、第2車体部20に対して2組設けられている。
【0025】
図5に示すように、物品搬送車100が交差区間Cを左側(幅方向第1側Y1)の経路に沿って走行する場合には、第1切替動作と第2切替動作とが行われ、左側第1案内車輪12L(第1案内車輪12)及び左側第2案内車輪22L(第2案内車輪22)の双方が左側案内レール8L(案内レール8)に対して左側(幅方向第1側Y1)から当接する位置に配置される。物品搬送車100は、左側第1案内車輪12L及び左側第2案内車輪22Lが左側案内レール8Lに案内されることによって交差区間Cを左側の経路に沿って走行する。
【0026】
一方で、物品搬送車100が交差区間Cを右側(幅方向第2側Y2)の経路に沿って走行する場合には、第1切替動作と第2切替動作とが行われ、右側第1案内車輪12R(第1案内車輪12)及び右側第2案内車輪22R(第2案内車輪22)の双方が右側案内レール8R(案内レール8)に対して右側(幅方向第2側Y2)から当接する位置に配置される。物品搬送車100は、右側第1案内車輪12R及び右側第2案内車輪22Rが右側案内レール8Rに案内されることによって交差区間Cを右側の経路に沿って走行する。
【0027】
図1及び図4に示すように、走行経路Rは、当該走行経路Rに沿って隣り合う2つの交差区間Cを備える場合がある。図4に示すように、走行経路Rは、上記2つの交差区間Cの間に挟まれた移行区間Bを備えている。移行区間Bは、第1案内車輪12及び第2案内車輪22が案内レール8に対して幅方向第1側Y1(本例では左側)から当接した状態で走行方向Xに沿って移動する交差区間Cと、第1案内車輪12及び第2案内車輪22が案内レール8に対して幅方向第2側Y2(本例では右側)から当接した状態で走行方向Xに沿って移動する交差区間Cとが、走行経路Rに沿って隣り合う場合に、これら2つの交差区間Cに挟まれた区間であって、第1切替動作及び第2切替動作を実行可能な区間である。移行区間Bは、案内レール8が設けられていない区間である。一方、交差区間Cは、案内レール8が設けられた区間である。以下では、走行経路Rに沿って隣り合う2つの交差区間Cのうち上流側X2に配置された交差区間Cを上流側交差区間Cuと称し、下流側X1に設けられた区間を下流側交差区間Cdと称する場合がある。すなわち本例では、移行区間Bは、走行方向Xに沿って上流側交差区間Cuと下流側交差区間Cdとに挟まれた区間である。
【0028】
本実施形態では、移行区間Bの開始地点Bs又は当該開始地点Bsよりも上流側X2の地点に、移行区間Bの情報である移行区間情報Inを保持した情報保持体7が設けられている。図7等に示す例では、情報保持体7は、移行区間Bの開始地点Bsに設けられている。例えば、情報保持体7は、ICタグやバーコード(二次元バーコード)等の周知の情報記憶手段を用いて構成されている。図中では1つの移行区間Bしか示していないが、走行経路Rは、複数の移行区間Bを備えている。そして、情報保持体7は、走行経路Rに存在する全ての移行区間Bに対応して設けられている。
【0029】
図7図13に示すように、移行区間Bの走行経路Rに沿った長さを移行区間長BDとして、移行区間情報Inには、移行区間長BDの情報、及び、移行区間Bの開始地点Bsを示す情報の少なくとも一方が含まれている。本実施形態では、移行区間情報Inには、移行区間長BDの情報、及び、移行区間Bの開始地点Bsを示す情報の双方が含まれている。本実施形態では、移行区間長BDは、上流側交差区間Cuに設けられた案内レール8の下流側端部8Edと、下流側交差区間Cdに設けられた案内レール8の上流側端部8Euとの間の走行方向Xに沿った距離である。
【0030】
本実施形態では、車両本体40は、情報保持体7から移行区間情報Inを取得する情報取得部60を備えている(図6参照)。例えば、情報保持体7がICタグを用いて構成される場合には、情報取得部60はICタグリーダにより構成されると良い。また、情報保持体7がバーコード(二次元バーコード)を用いて構成される場合には、情報取得部60はバーコードリーダにより構成されると良い。
【0031】
図6に示すように、物品搬送車100は、第1車体部10及び第2車体部20を制御する制御部Hを備えている。制御部Hは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0032】
本実施形態では、制御部Hは、第1走行車輪11及び第2走行車輪21の走行動作、第1案内切替機構13による第1切替動作及び第2案内切替機構23による第2切替動作、を制御するように構成されている。本実施形態では、制御部Hは、第1走行モータ11m、第2走行モータ21m、第1切替モータ13m、及び第2切替モータ23mを制御することにより、上記の走行動作及び切替動作を各機能部に実現させる。
【0033】
制御部Hは、第1案内切替機構13及び第2案内切替機構23に第1切替動作及び第2切替動作を行わせる制御として、後述するように、ずらし切替制御と同時切替制御とを実行可能に構成されている。本実施形態では、制御部Hは、情報取得部60によって取得された移行区間情報Inに基づいて、第1案内切替機構13及び第2案内切替機構23に、第1切替動作及び第2切替動作を行わせる。ここでは、制御部Hは、情報取得部60によって取得された移行区間情報Inに含まれる移行区間長BDの情報に基づいて、移行区間Bにおいてずらし切替制御を行うか同時切替制御を行うかを判断する。詳細は後述する。
【0034】
制御部Hは、ずらし切替制御では、移行区間Bにおいて、第1案内切替機構13及び第2案内切替機構23に、第1切替動作と第2切替動作とを時期をずらして行わせる。制御部Hは、同時切替制御では、移行区間Bにおいて、第1案内切替機構13及び第2案内切替機構23に、第1切替動作と第2切替動作とを同時期に行わせる。
【0035】
本実施形態では、制御部Hは、移行区間長BDが車体部間距離Dに基づいて設定された規定の閾値T未満である場合にずらし切替制御を実行し、移行区間長BDが閾値T以上である場合に、同時切替制御を実行する。閾値Tは、車体部間距離Dよりも大きな値に設定される。本例では、閾値Tは、第1車体部10が備える複数の第1案内車輪12及び第2車体部20が備える複数の第2案内車輪22のうち、最も下流側X1に配置される第1案内車輪12と最も上流側X2に配置される第2案内車輪22との走行方向Xの距離と同等の値、或いは当該距離よりも大きな値に設定されている。好ましくは、閾値Tは、最も下流側X1に配置される第1案内車輪12と最も上流側X2に配置される第2案内車輪22との走行方向Xの距離に、物品搬送車100が移行区間Bを走行する際の平均走行速度と第1切替動作及び第2切替動作の動作時間とに基づいて算出される、第1切替動作及び第2切替動作の動作開始から完了までに要する時間で第1案内車輪12及び第2案内車輪22が進む距離を加えた値に設定されると良い。
【0036】
図7図11は、制御部Hがずらし切替制御を実行する場合の物品搬送車100の動作を示す模式図であり、実際には分岐(または合流)により湾曲する走行経路Rを、直線的に表わしたものである。また、図7図11では、案内レール8に対する、第1案内車輪12及び第2案内車輪22の当接の有無並びに幅方向Yの位置を分かり易くするため、案内レール8も直線的に表わしている。
【0037】
図7図11に示すように、第1案内車輪12の全体が移行区間Bに進入してから車体部間距離D移動した位置を始点S1とし、第1案内車輪12の下流側端部12Edが移行区間Bに進入してから車体部間距離Dと移行区間長BDとを加えた距離移動した位置を終点E1とする、第2案内車輪22の移動範囲を移行区間相当範囲BAとする。本例では、第1案内車輪12の上流側端部12Euが始点S1に位置しているときの第2案内車輪22の上流側端部の位置を第2始点S2とし、第1案内車輪12の下流側端部12Edが終点E1に位置しているときの第2案内車輪22の下流側端部の位置を第2終点E2として図示している。従って、図10は、第1案内車輪12が始点S1に位置すると共に第2案内車輪22が第2始点S2に位置する状態を示し、図11は、第1案内車輪12が終点E1に位置すると共に第2案内車輪22が第2終点E2に位置する状態を示している。また、図8は、第1案内車輪12の下流側端部12Edが移行区間Bに進入する瞬間の状態を示し、図9は、第1案内車輪12の全体が移行区間Bに進入した状態を示している。なお、図7図11は、時系列に沿った物品搬送車100の移動を示しているが、上記の始点S1、終点E1、第2始点S2、及び第2終点E2の説明は、これらの位置を定義すると共に、これらに基づいて移行区間相当範囲BAを定義しているだけであり、時系列に沿った処理の順序を定義するものではない。
【0038】
ここで、「第1案内車輪12の下流側端部12Ed」とは、第1案内車輪12の配置領域12Aの全体における最も下流側X1の端部である。第1案内車輪12の配置領域12Aとは、第1案内車輪12が配置されている領域のことであり、本例のように複数の第1案内車輪12を備える場合には、それら複数の第1案内車輪12の全てが収まる領域のことである。「第1案内車輪12の全体」とは、第1案内車輪12の配置領域12Aの全体のことである。また、第1案内車輪12の下流側端部12Edから上流側端部12Euまでの距離を案内車輪全長GLとすると、案内車輪全長GLは、第2案内車輪22の下流側端部から上流側端部までの距離でもある。そして、上記の移行区間相当範囲BAは、移行区間長BDから案内車輪全長GLを引いた長さに等しい。換言すれば、移行区間相当範囲BAの走行方向Xの長さは、第2始点S2から第2終点E2までの距離に相当する。なお、「第1案内車輪12の上流側端部12Eu」とは、第1案内車輪12の配置領域12Aの全体における最も上流側X2の端部である。従って、案内車輪全長GLは、第1案内車輪12の配置領域12Aの全体における最も上流側X2の端部から最も下流側X1の端部までの長さに相当する。また、案内車輪全長GLは、第2案内車輪22の配置領域の全体における最も上流側X2の端部から最も下流側X1の端部までの長さに相当する。
【0039】
図10に示すように、制御部Hは、ずらし切替制御では、第1案内車輪12が移行区間B内にある状態で第1案内切替機構13に第1切替動作を行わせる。そして、図11に示すように、制御部Hは、第2案内車輪22(詳細には第2案内車輪22における上流側端部)が移行区間相当範囲BA移動する間に、第2案内切替機構23に第2切替動作を行わせる。
【0040】
このような、第1切替動作と第2切替動作とを時期をずらして行わせるずらし切替制御は、移行区間長BDが車体部間距離Dよりも十分に長くない場合、すなわち第1切替動作と第2切替動作とを同時期に行えるほど移行区間長BDが長くない場合に好適である。
【0041】
本実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、第1案内車輪12が移行区間Bにあり、且つ、第2案内車輪22が移行区間Bに対して上流側X2に隣接する交差区間C(上流側交差区間Cu)にある状態で、第1案内切替機構13に第1切替動作を行わせる(図10参照)。これにより、移行区間長BDが、車体部間距離Dと同等の長さ、或いは車体部間距離Dよりも短い場合において、第1切替動作と第2切替動作とを適切なタイミングで行うことができる。
【0042】
本実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、第1切替動作と第2切替動作とを第1走行車輪11及び第2走行車輪21の走行中(物品搬送車100の走行中)に行わせる。そして、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、移行区間B内において第1切替動作を完了できるように、第1案内車輪12の走行方向Xにおける移動速度を制御する第1速度制御を実行し、第2案内車輪22が移行区間相当範囲BA移動する間に第2切替動作を完了できるように、第2案内車輪22の走行方向Xにおける移動速度を制御する第2速度制御を実行する。これにより、第1切替動作と第2切替動作とを、移行区間内において適切に行うことができる。本実施形態では、制御部Hは、第1走行車輪11及び第2走行車輪21(図2等参照)の走行速度を制御することにより、第1案内車輪12の走行方向Xにおける移動速度及び第2案内車輪22の走行方向Xにおける移動速度を制御する。
【0043】
本実施形態では、制御部Hは、第1案内車輪12が移行区間Bに進入する前に第1速度制御を開始し、第2案内車輪22が移行区間Bに進入する前に第2速度制御を開始する。本例では、移行区間Bよりも上流側X2の地点に、第1速度制御及び第2速度制御のそれぞれを開始するための地点である速度制御開始地点Paが設定されている。制御部Hは、速度制御開始地点Paを予め学習しており、第1案内車輪12が速度制御開始地点Paを通過する際に第1速度制御を開始し、第2案内車輪22が速度制御開始地点Paを通過する際に第2速度制御を開始する。但し、第1案内車輪12や第2案内車輪22が速度制御開始地点Paを通過することが、速度制御を開始するための判断基準でなくても良い。例えば、制御部Hは、第1案内車輪12や第2案内車輪22以外の物品搬送車100の一部が速度制御開始地点Paを通過する際に、第1速度制御又は第2速度制御を開始するようにしても良い。なお、本実施形態では、速度制御開始地点Paの学習は、情報保持体7の位置を基準とし、そこから速度制御開始地点Paまでの物品搬送車100の走行距離を学習することにより行う。
【0044】
本実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、移行区間B内において第1案内車輪12を走行方向Xに移動させながら第1切替動作を完了できない場合には、第1案内車輪12が移行区間B内となる範囲で当該第1案内車輪12の走行方向Xの移動(第1走行車輪11の走行)を停止させて第1切替動作を完了させ、第2案内車輪22が移行区間相当範囲BA移動する間に第2切替動作を完了できない場合には、第2案内車輪22が移行区間相当範囲BA移動する前に当該第2案内車輪22の走行方向Xの移動(第2走行車輪21の走行)を停止させて第2切替動作を完了させる。これにより、第1切替動作と第2切替動作とを、移行区間B内において確実に行うことができる。本実施形態では、移行区間B内における下流側交差区間Cdよりも上流側X2に規定距離離れた位置に、第1案内車輪12及び第2案内車輪22それぞれの走行方向Xの移動を停止させる目標地点となる目標停止地点Pbが設定されている。制御部Hは、第1案内車輪12の走行中に第1切替動作を完了できない場合には、目標停止地点Pbを基準として第1案内車輪12の走行方向Xの移動を停止させる。また同様に、制御部Hは、第2案内車輪22の走行中に第2切替動作を完了できない場合には、目標停止地点Pbを基準として第2案内車輪22の走行方向Xの移動を停止させる。上記のような構成により、制御遅れ等によって第1切替動作又は第2切替動作が完了していない状態で、第1案内車輪12又は第2案内車輪22が下流側交差区間Cdに進入することを回避し易くなる。
【0045】
図12は、制御部Hが同時切替制御を実行する場合の物品搬送車100の動作を示す模式図である。図12では、図7図11と同様に、走行経路R及び案内レール8を直線的に表している。
【0046】
制御部Hは、同時切替制御では、第1案内車輪12及び第2案内車輪22の双方が移行区間Bにある状態で、第1案内切替機構13に第1切替動作を行わせるのと同時期に第2案内切替機構23に第2切替動作を行わせる。詳細には、制御部Hは、第1車体部10に設けられた複数の第1案内車輪12の全体が移行区間B内にあり、且つ、第2車体部20に設けられた複数の第2案内車輪22の全体が移行区間B内にある状態で、第1案内切替機構13に第1切替動作を行わせるのと同時期に第2案内切替機構23に第2切替動作を行わせる。
【0047】
本実施形態では、制御部Hは、同時切替制御では、第1案内車輪12の全体が移行区間Bに進入してから車体部間距離D移動した位置を始点S1とし、第1案内車輪12の下流側端部12Edが移行区間Bに進入してから移行区間長BD移動した位置を終点E1とする、第1案内車輪12の移動範囲内で、第1案内切替機構13に第1切替動作を行わせるのと同時期に第2案内切替機構23に第2切替動作を行わせる。
【0048】
このような、第1切替動作と第2切替動作とを同時期に行わせる同時切替制御は、移行区間長BDが車体部間距離Dよりも十分に長い場合に好適である。同時切替制御の実行によって、第1切替動作の動作時間と第2切替動作の動作時間との合計の動作時間を、ずらし切替制御を実行する場合に要する動作時間よりも短くすることができる。これにより、第1切替動作及び第2切替動作が行われている期間に物品搬送車100が走行する距離を短くすることができる。また、同時切替制御では、ずらし切替制御よりも、第1案内切替機構13及び第2案内切替機構23の制御を簡略化することができる。上述のように本実施形態では、制御部Hは、移行区間長BDに応じて、ずらし切替制御を実行するか同時切替制御を実行するかを判断する。これにより、走行経路Rのレイアウトに応じて、適切なタイミングで第1切替動作と第2切替動作とを行うことができる。
【0049】
本実施形態では、制御部Hは、同時切替制御を実行する場合に、第1切替動作と第2切替動作とを、第1走行車輪11及び第2走行車輪21の走行中(物品搬送車100の走行中)に同時期に行わせる。また本例では、制御部Hは、同時切替制御を実行する場合には、第1速度制御及び第2速度制御の双方を実行しない。詳細には、制御部Hは、同時切替制御を実行する場合には、第1案内車輪12の走行方向Xの移動速度(第1走行車輪11の走行速度)及び第2案内車輪22の走行方向Xの移動速度(第2走行車輪21の走行速度)を減少させない。すなわち、制御部Hは、第1切替動作及び第2切替動作を行うための減速は行わない。但し、増速することは問題ない。上記のような構成により、同時切替制御では、ずらし切替制御よりも、制御を更に簡略化することができる。
【0050】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送車のその他の実施形態について説明する。
【0051】
(1)上記の実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、第1案内車輪12が移行区間Bにあり、且つ、第2案内車輪22が移行区間Bに対して上流側X2に隣接する交差区間C(上流側交差区間Cu)にある状態で、第1案内切替機構に第1切替動作を行わせる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合において、第1案内車輪12及び第2案内車輪22の双方が移行区間Bにある状態で、第1案内切替機構に第1切替動作を行わせても良い。
【0052】
(2)上記の実施形態では、制御部Hは、移行区間Bよりも上流側X2において第1速度制御又は第2速度制御を開始するために、移行区間Bよりも上流側X2に設定された速度制御開始地点Paを予め学習している例について説明した。しかし、このような例に限定されない。他の例として、制御部Hは、走行経路Rのマップ情報を記憶しており、当該マップ情報に基づいて、移行区間Bよりも上流側X2に設定された速度制御開始地点Paにおいて、第1速度制御及び第2速度制御のそれぞれを開始するようにしても良い。また、他の例として、情報保持体7を移行区間Bに対して上流側X2の速度制御開始地点Paに相当する位置に設けておき、制御部Hは、情報取得部60が情報保持体7から移行区間情報Inを取得したタイミングで、第1速度制御及び第2速度制御のそれぞれを開始するようにしても良い。
【0053】
(3)上記の実施形態では、制御部Hは、第1案内車輪12が移行区間Bに進入する前に第1速度制御を開始し、第2案内車輪22が移行区間Bに進入する前に第2速度制御を開始する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部Hは、第1案内車輪12が移行区間Bに進入するのと同時に又は進入した後に、第1速度制御を開始しても良い。また同様に、制御部Hは、第2案内車輪22が移行区間相当範囲BAに進入するのと同時に又は進入した後に、第2速度制御を開始しても良い。
【0054】
(4)上記の実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御を実行する場合に、第1速度制御と第2速度制御とを実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部Hは、ずらし切替制御を行う場合であっても、第1速度制御及び第2速度制御の一方あるいは双方を行わなくても良い。
【0055】
(5)上記の実施形態では、制御部Hは、同時切替制御を実行する場合には、第1速度制御及び第2速度制御の双方を実行しない例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部Hは、同時切替制御を実行する場合において、第1速度制御を実行するようにしても良い。
【0056】
(6)上記の実施形態では、制御部Hは、ずらし切替制御及び同時切替制御を実行可能に構成されている例について説明した。しかし、制御部Hは、同時切替制御は実行しなくても良い。
【0057】
(7)上記の実施形態では、情報保持体7が、走行経路Rに存在する全ての移行区間Bに対応して設けられている例について説明した。しかし、情報保持体7は、走行経路Rに存在する全ての移行区間Bに対応して設けられていなくても良く、特定の移行区間Bのみに対応して設けられていても良い。
【0058】
(8)上記で説明した物品搬送車100は、走行レール9を有さない床面又は当該床面付近を走行する無人搬送車として構成されていても良く、或いは、天井付近を走行する天井搬送車として構成されていても良い。
【0059】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0060】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送車について説明する。
【0061】
分岐区間又は合流区間である交差区間を複数備えた走行経路に沿って物品を搬送する物品搬送車であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向に沿う上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記走行経路に沿って移動する車両本体と、前記車両本体に連結された第1車体部と、前記第1車体部よりも前記走行方向の上流側に規定の車体部間距離離れた位置において前記車両本体に連結された第2車体部と、前記第1車体部及び前記第2車体部を制御する制御部と、を備え、
前記第1車体部は、前記走行経路に沿って配置された走行面上を転動する第1走行車輪と、前記交差区間において前記走行経路に沿って配置された案内レールを転動する第1案内車輪と、前記第1案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第1案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第1切替動作を行う第1案内切替機構と、を備え、
前記第2車体部は、前記走行面上を転動する第2走行車輪と、前記案内レールを転動する第2案内車輪と、前記第2案内車輪の前記幅方向の位置を、当該第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接する位置と前記幅方向第2側から当接する位置とに移動させる第2切替動作を行う第2案内切替機構と、を備え、
前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第1側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間と、前記第1案内車輪及び前記第2案内車輪が前記案内レールに対して前記幅方向第2側から当接した状態で前記走行方向に沿って移動する前記交差区間とが、前記走行経路に沿って隣り合う場合に、これら2つの前記交差区間に挟まれた区間であって、前記第1切替動作及び前記第2切替動作を実行可能な区間を移行区間として、
前記制御部は、前記移行区間において、前記第1案内切替機構及び前記第2案内切替機構に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを時期をずらして行わせるずらし切替制御を実行可能であり、
前記移行区間の前記走行経路に沿った長さを移行区間長として、
前記ずらし切替制御では、前記第1案内車輪が前記移行区間内にある状態で前記第1案内切替機構に前記第1切替動作を行わせ、前記第1案内車輪の全体が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離移動した位置を始点とし、前記第1案内車輪の下流側端部が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離と前記移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、前記第2案内車輪の移動範囲内で、前記第2案内切替機構に前記第2切替動作を行わせる。
【0062】
本構成によれば、第1案内車輪が移行区間内にある状態で第1案内切替機構に第1切替動作を行わせる。そのため、第1案内車輪が、移行区間に対して上流側及び下流側のそれぞれにある交差区間に配置された案内レールに干渉することなく、且つ、下流側の交差区間に配置された案内レールに対して物品搬送車の進行方向に応じた適切な位置となるように、当該第1案内車輪の幅方向の位置を切り替えることができる。また、本構成によれば、第1案内車輪の全体が移行区間に進入してから車体部間距離移動した位置を始点とし、第1案内車輪の下流側端部が移行区間に進入してから車体部間距離と移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、第2案内車輪の移動範囲内で、第2案内切替機構に第2切替動作を行わせる。そのため、第2案内車輪が、移行区間に対して上流側及び下流側のそれぞれにある交差区間に配置された案内レールに干渉することなく、且つ、下流側の交差区間に配置された案内レールに対して物品搬送車の進行方向に応じた適切な位置となるように、当該第2案内車輪の幅方向の位置を切り替えることができる。このように、本構成によれば、2つの交差区間に挟まれた区間において、適切なタイミングで案内車輪の幅方向の位置の切り替えを行うことができる。また、ずらし切替制御において第2切替動作を行わせるタイミングは、第1案内車輪が移行区間に進入してからの走行方向における移動距離に基づいて制御される。このため、移行区間に対する第2案内車輪の実際の位置を検出しなくても、ずらし切替制御を実行する場合の第2切替動作のタイミングを適切に制御することができる。
【0063】
ここで、
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記第1案内車輪が前記移行区間にあり、且つ、前記第2案内車輪が前記移行区間に対して上流側に隣接する前記交差区間にある状態で、前記第1案内切替機構に前記第1切替動作を行わせる、と好適である。
【0064】
本構成によれば、移行区間長が、車体間距離と同等の長さ、或いは車体間距離よりも短い場合において、第1切替動作と第2切替動作とを適切なタイミングで行うことができる。
【0065】
また、
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の走行中に行わせる、と好適である。
【0066】
本構成によれば、物品搬送車を停止させることなく第1切替動作と第2切替動作とを行うことができる。そのため、物品搬送時間の短縮を図ることができる。
【0067】
また、
前記第1案内車輪の全体が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離移動した位置を始点とし、前記第1案内車輪の下流側端部が前記移行区間に進入してから前記車体部間距離と前記移行区間長とを加えた距離移動した位置を終点とする、前記第2案内車輪の移動範囲を移行区間相当範囲として、
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記移行区間内において前記第1切替動作を完了できるように、前記第1案内車輪の前記走行方向における移動速度を制御する第1速度制御を実行し、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する間に前記第2切替動作を完了できるように、前記第2案内車輪の前記走行方向における移動速度を制御する第2速度制御を実行する、と好適である。
【0068】
本構成によれば、第1切替動作と第2切替動作とを、移行区間内において適切に行うことができる。
【0069】
また、前記制御部が、前記第1速度制御及び前記第2速度制御を実行する構成において、
前記制御部は、前記第1案内車輪が前記移行区間に進入する前に前記第1速度制御を開始し、前記第2案内車輪が前記移行区間に進入する前に前記第2速度制御を開始する、と好適である。
【0070】
本構成によれば、第1切替動作と第2切替動作とを、移行区間内において更に適切に行うことができる。また、本構成は、移行区間長が比較的短い場合に好適である。
【0071】
また、前記制御部が、前記第1速度制御及び前記第2速度制御を実行する構成において、
前記制御部は、前記ずらし切替制御を実行する場合に、前記移行区間内において前記第1案内車輪を前記走行方向に移動させながら前記第1切替動作を完了できない場合には、前記第1案内車輪が前記移行区間内となる範囲で当該第1案内車輪の前記走行方向の移動を停止させて前記第1切替動作を完了させ、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する間に前記第2切替動作を完了できない場合には、前記第2案内車輪が前記移行区間相当範囲移動する前に当該第2案内車輪の前記走行方向の移動を停止させて前記第2切替動作を完了させる、と好適である。
【0072】
本構成によれば、第1切替動作と第2切替動作とを、移行区間内において確実に行うことができる。
【0073】
また、
前記制御部は、前記移行区間長が前記車体部間距離に基づいて設定された規定の閾値未満である場合に前記ずらし切替制御を実行し、前記移行区間長が前記閾値以上である場合に、前記第1案内切替機構及び前記第2案内切替機構に、前記第1切替動作と前記第2切替動作とを同時期に行わせる同時切替制御を実行する、と好適である。
【0074】
本構成によれば、走行経路のレイアウトに応じて、適切なタイミングで第1切替動作と第2切替動作とを行うことができる。また、同時切替制御では、ずらし切替制御よりも、第1案内切替機構及び第2案内切替機構の制御を簡略化することができる。
【0075】
また、
前記移行区間の開始地点又は当該開始地点よりも上流側の地点に、前記移行区間の情報である移行区間情報を保持した情報保持体が設けられ、
前記移行区間情報には、前記移行区間の前記走行方向の長さである移行区間長の情報、及び、前記移行区間の前記開始地点を示す情報の少なくとも一方が含まれ、
前記車両本体は、前記情報保持体から前記移行区間情報を取得する情報取得部を備え、
前記制御部は、前記情報取得部によって取得された前記移行区間情報に基づいて、前記第1切替動作及び前記第2切替動作を行わせる、と好適である。
【0076】
本構成によれば、車両本体が移行区間に進入する前に取得した移行区間情報を用いることにより、車両本体がこれから進入する移行区間において第1切替動作と第2切替動作とを行うタイミングを適切に制御し易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示に係る技術は、分岐区間又は合流区間である交差区間を複数備えた走行経路に沿って物品を搬送する物品搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
100 :物品搬送車
10 :第1車体部
11 :第1走行車輪
12 :第1案内車輪
12Ed :下流側端部
13 :第1案内切替機構
20 :第2車体部
21 :第2走行車輪
22 :第2案内車輪
23 :第2案内切替機構
40 :車両本体
60 :情報取得部
C :交差区間
B :移行区間
BD :移行区間長
Bs :開始地点
In :移行区間情報
D :車体部間距離
BA :移行区間相当範囲
S1 :始点
E1 :終点
H :制御部
7 :情報保持体
8 :案内レール
8Ed :下流側端部
9fa :走行面
R :走行経路
T :閾値
X :走行方向
X1 :下流側
X2 :上流側
Y :幅方向
Y1 :幅方向第1側
Y2 :幅方向第2側
図1
図2
図3
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図12