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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ピアノ用アクチュエータ及びピアノ
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/06 20060101AFI20230711BHJP
   G10H 3/22 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G10C3/06
G10H3/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021555687
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2019044498
(87)【国際公開番号】W WO2021095155
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】柘植 秀幸
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特表平4-500735(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046843(WO,A1)
【文献】特開2012-208319(JP,A)
【文献】実開昭60-51599(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 3/06
G10H 3/14-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノの駒と弦との間に挟まれる取付部と、本体と、前記本体に対して所定の振動方向に振動する振動体と、を備え、
前記取付部は、前記振動体から前記振動方向に延びる第一延長部と、前記第一延長部の先端部から前記振動方向に交差する方向に延びて前記駒と前記弦との間に挟まれる第二延長部と、を有するピアノ用アクチュエータ。
【請求項2】
一対の前記第二延長部が、前記第一延長部から互いに逆向きに延びている請求項1に記載のピアノ用アクチュエータ。
【請求項3】
前記第二延長部は、前記弦の長手方向のうち第一方向に向かうにしたがって前記駒と前記弦との間隔が大きくなる前記駒と前記弦との隙間に挟まれ、
前記第二延長部を前記隙間に配した状態で、前記第一方向の逆方向に引っ張る引張部を備える請求項1又は請求項2に記載のピアノ用アクチュエータ。
【請求項4】
前記第二延長部は、前記弦の長手方向のうち第一方向に向かうにしたがって前記駒と前記弦との間隔が大きくなる前記駒と前記弦との隙間に挟まれ、
前記振動方向における前記第二延長部の寸法は、前記隙間の最大の寸法よりも小さい請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のピアノ用アクチュエータ。
【請求項5】
前記第二延長部は、隣り合う二本の前記弦の間に通すことが可能な寸法を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のピアノ用アクチュエータ。
【請求項6】
前記取付部のうち前記駒及び前記弦に対向する面を覆う緩衝材を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のピアノ用アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のピアノ用アクチュエータを備えるピアノ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピアノ用アクチュエータ及びピアノに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピアノの響板を加振することで発音させるピアノ用アクチュエータが開示されている。特許文献1のピアノでは、ピアノ用アクチュエータの振動体に連結された伝達部(駆動ハンマ)の一部を、ピアノの駒の内部に埋めたり固定したりして、ピアノの駒に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平4-500735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、ピアノ用アクチュエータの部位をピアノの駒に埋めたり、固定したりする場合には、駒などのピアノの部品に加工を施したり、接着剤を用いたりする必要がある。このため、ピアノに対するピアノ用アクチュエータの着脱が面倒である、という問題がある。
また、ピアノ用アクチュエータをピアノに取り付けるために、ピアノの部品に加工を施したり、接着剤を用いたりすることは、ピアノの部品を傷つける原因となるため、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ピアノに対して無加工で接着剤を使わずに容易に着脱できるピアノ用アクチュエータ及びこれを備えるピアノを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、ピアノの駒と弦との間に挟まれる取付部と、本体と、前記本体に対して所定の振動方向に振動する振動体と、を備え、前記取付部は、前記振動体から前記振動方向に延びる第一延長部と、前記第一延長部の先端部から前記振動方向に交差する方向に延びて前記駒と前記弦との間に挟まれる第二延長部と、を有するピアノ用アクチュエータである。
【0007】
本発明の第二の態様は、前記ピアノ用アクチュエータを備えるピアノである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ピアノ用アクチュエータをピアノに対して無加工で接着剤を使わずに容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るピアノ用アクチュエータを含むピアノの要部を示す断面図である。
図2図1のピアノにおいて、ピアノ用アクチュエータの取付部がピアノの駒と弦との間に挟まれた状態を示す拡大断面図である。
図3図1,2のピアノ用アクチュエータを示す斜視図である。
図4図3のピアノ用アクチュエータの取付部を駒と弦との間に挟むための工程を上方から見た図である。
図5図3のピアノ用アクチュエータの取付部を駒と弦との間に挟むための工程を上方から見た図である。
図6図3のピアノ用アクチュエータの取付部を駒と弦との間に挟むための工程を上方から見た図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るピアノ用アクチュエータの取付部がピアノの駒と弦との間に挟まれた状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1~6を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のピアノ1は、響板2と、弦3と、駒4と、ピアノ用アクチュエータ5と、を備える。本実施形態におけるピアノ1は、響板2の板厚方向が概ね鉛直方向(Z軸方向)に向くグランドピアノである。図1~6において、X軸方向は主に弦3の長手方向に対応している。また、Y軸方向は複数の弦3が並ぶ方向に対応している。
【0011】
弦3は、ピアノ1のフレーム6のピッチピン61とチューニングピン(不図示)とに引っ掛けられることで、響板2の上面2a上において張られている。弦3は、互いに間隔をあけて複数配列されている(図4参照)。
【0012】
駒4は、響板2の上面2aと弦3との間に挟まれる。図1,2に示すように、駒4は、弦3に接触する駒4の頂面41から弦3の長手方向に向かうにしたがって弦3から離れる方向(Z軸負方向)に延びる傾斜面42を有する。傾斜面42は、弦3の長手方向において頂面41の両側に位置する。これにより、駒4の頂面41の両側には、頂面41から弦3の長手方向に離れるにしたがって駒4と弦3との間隔が大きくなる駒4と弦3との隙間7がある。
駒4の頂面41と各傾斜面42との接続部分には、弦3を引っ掛ける駒釘43が設けられている。駒4は、弦3の長手方向においてチューニングピンよりもピッチピン61に近い位置に配される。駒4は、図4に示すように、複数の弦3が配列される方向(例えばY軸方向)に延びており、複数の弦3を支持する。
【0013】
本実施形態のピアノ1では、弦3がハンマー(不図示)によって打撃されると、弦3は主に響板2の板厚方向に振動する。弦3の振動が駒4を介して響板2に伝達されることで、響板2が振動する。
【0014】
ピアノ用アクチュエータ5は、駒4を加振することで響板2をその板厚方向に振動させて発音させる。図1,3に示すように、ピアノ用アクチュエータ5は、本体51と、本体51に対して所定の振動方向(例えばZ軸方向)に振動する振動体52と、振動体52に設けられ、駒4と弦3との間に挟まれる取付部53と、を備える。本体51の重量は、振動体52及び取付部53の重量と比較して十分に重い。
ピアノ用アクチュエータ5は、例えばボイスコイル型のアクチュエータであってよい。
【0015】
本実施形態の取付部53は、第一延長部531と、第二延長部532と、を有する。
第一延長部531は、振動体52からその振動方向(Z軸負方向)に延びる。図示例の第一延長部531は、四角柱状に形成されているが、例えば円柱など任意の柱状に形成されてもよいし、例えば板状に形成されてもよい。また、第一延長部531は、図示例のように振動体52の軸線上に位置してよいが、例えば振動体52の軸線からずれて位置してもよい。
【0016】
第二延長部532は、第一延長部531の延長方向の先端部から振動体52の振動方向に交差する方向に延びる。第二延長部532は、例えば振動体52の振動方向に対して傾斜する方向に延びてもよいが、本実施形態では振動体52の振動方向に直交する方向(図1,3ではY軸方向)に延びる。
【0017】
第二延長部532は、例えば振動方向に直交する方向において第一延長部531の先端部の片側だけに延びてもよい。すなわち、取付部53は例えばL字状に形成されてよい。本実施形態では、一対の第二延長部532が、第一延長部531の先端部から互いに逆向きに延びている。すなわち、本実施形態の取付部53はT字状に形成されている。本実施形態において、一対の第二延長部532の全体の長さL1は、隣り合う二本の弦3の間隔D1よりも大きい(図6参照)。
図示例の第二延長部532は、円柱状に形成されているが、例えば角柱などの任意の柱状に形成されてもよいし、例えば板状に形成されてもよい。
【0018】
図1,2に示すように、本実施形態では、取付部53のうち第二延長部532が駒4と弦3との間に挟まれる。具体的に、第二延長部532は前述した駒4と弦3との隙間7に挟まれる。このため、振動体52の振動方向における第二延長部532の寸法T1(厚さ寸法T1)は、隙間7の最大の寸法D2よりも小さい。
【0019】
また、第二延長部532は、隣り合う二本の弦3の間に通すことが可能な寸法を有する。具体的には、図4に示すように、第一延長部531の延長方向(Z軸方向)及び第二延長部532の延長方向(図4においてX軸方向)に直交する方向(図4においてY軸方向)における第二延長部532の寸法W1(幅寸法W1)が、隣り合う二本の弦3の間隔D1よりも小さい。
【0020】
本実施形態では、第一延長部531の幅寸法も、第二延長部532の幅寸法W1と同様に、隣り合う二本の弦3の間隔D1よりも小さい。少なくとも第一延長部531のうち二本の弦3の間を通り得る部位(例えば第一延長部531の先端部分)のみにおいて、第一延長部531の幅寸法が二本の弦3の間隔D1よりも小さくなっていればよい。図3,4に例示する取付部53では、第一延長部531全体において、第一延長部531の幅寸法が二本の弦3の間隔D1よりも小さい。すなわち、取付部53の幅寸法が二本の弦3の間隔D1よりも小さい。
【0021】
図1,2に示すように、ピアノ用アクチュエータ5は、第二延長部532が駒4と弦3との隙間7に挟まれた状態で、第一延長部531が第二延長部532から弦3よりも上方(Z軸正方向)に延びるように配される。第一延長部531の延長方向(振動方向)は、響板2、駒4及び弦3の配列方向(Z軸方向)に一致していることが好ましい。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5は、引張部54をさらに備える。
引張部54は、第二延長部532が弦3の長手方向のうち第一方向(図1においてX軸負方向)に向かうにしたがって駒4と弦3との間隔が大きくなる隙間7に配された状態で、第一方向の逆方向(図1においてX軸正方向)に引っ張る。すなわち、引張部54は第二延長部532を隙間7の間隔が小さくなる方向に引っ張る。具体的に、引張部54は、第一延長部531のうち第二延長部532から離れた部位(特に弦3よりも上方に位置する部位)を上記の方向に引っ張る。
【0023】
本実施形態の引張部54は、直線方向に弾性的に伸縮する弾性体であり、第一延長部531とピアノ1に設けられて弦3を引っ掛けるピンとの間にかけ渡される。弾性体である引張部54は、例えばコイルバネなどであってもよいが、本実施形態では弦3との干渉を抑制しやすいゴム紐である。
【0024】
本実施形態では、第二延長部532が弦3の長手方向において駒4の頂面41に対してピッチピン61と反対側に位置する第一の隙間7Aに配された状態で、引張部54が第一延長部531とピッチピン61との間にかけ渡される。これにより、引張部54の弾性力によって第二延長部532を第一の隙間7Aの間隔が小さくなる方向に引っ張ることができる。引張部54を駒4の近くに位置するピッチピン61に引っ掛けることで、引張部54の長さを短く抑えることができる。
【0025】
次に、主に図4~6を参照して、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5の取付部53を駒4と弦3との間に挟む方法の一例について説明する。
はじめに、図4に示すように、第一延長部531が振動体52から下方(Z軸負方向)に延びるように、かつ、第二延長部532の延長方向が弦3の長手方向に向くように、ピアノ用アクチュエータ5を配する。この状態では、幅寸法W1が二本の弦3の間隔D1よりも小さい第二延長部532の幅方向が複数の弦3の配列方向(X軸方向)に向く。これにより、第二延長部532を隣り合う二本の弦3の間に通して、弦3よりも下方(Z軸負方向)に移動させることができる。
【0026】
次いで、図5に示すように、第一延長部531の延長方向を軸として取付部53を90度回転させる。これにより、一対の第二延長部532がそれぞれ弦3の下側に位置する。
最後に、図6に示すように、一対の第二延長部532を各弦3と駒4の傾斜面42との隙間7(第一の隙間7A)に挿入する。これにより、第二延長部532を弦3と駒4との間に挟むことができる。
【0027】
図1,2に示すように、ピアノ用アクチュエータ5の取付部53が駒4と弦3との間に挟まれた状態では、取付部53(特に第二延長部532)が駒4に押し付けられる。このため、ピアノ用アクチュエータ5によって駒4を加振することができる。そして、駒4の振動が響板2に伝達されることで響板2が振動する。ピアノ用アクチュエータ5が駒4を加振する本実施形態のピアノ1では、ピアノ用アクチュエータ5が響板2を直接加振する場合と比較して、ピアノ用アクチュエータ5による発音構造が弦の振動によって駒を加振する通常のピアノの発音構造に近いため、よりピアノらしい音を鳴らすことができる。特に、振動体52の振動方向(第一延長部531の延長方向)が弦3の主な振動方向と同じであることで、ピアノ用アクチュエータ5による発音構造を弦の振動による発音構造にさらに近づけることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5によれば、取付部53を駒4と弦3との間に挟むだけで、ピアノ用アクチュエータ5を簡単にピアノ1に取り付けることができる。このため、ピアノ1に加工を施したり、ピアノ用アクチュエータ5をピアノ1に接着したりすることなく、ピアノ用アクチュエータ5をピアノ1に取り付けることができる。また、取付部53をピアノ1の駒4と弦3との間から取り外すだけで、ピアノ用アクチュエータ5を簡単にピアノ1から取り外すこともできる。
すなわち、ピアノ用アクチュエータ5をピアノ1に対して無加工で接着剤を使わずに容易に着脱することができる。
【0029】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5の取付部53は、振動体52から振動方向に延びる第一延長部531と、第一延長部531の先端部から振動方向に交差する方向に延びて駒4と弦3との間に挟まれる第二延長部532と、を有する。このため、第二延長部532を駒4と弦3との間に挟んだ状態では、第一延長部531を駒4と弦3とが並ぶ方向(駒4及び弦3の配列方向)に延ばすことができる。これにより、本体51及び振動体52を駒4及び弦3の配列方向において弦3から離れた位置に配することができる。したがって、ピアノ用アクチュエータ5の本体51及び振動体52が弦3や駒4に干渉することを防止できる。
【0030】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5では、一対の第二延長部532が第一延長部531の先端部から互いに逆向きに延びている。これにより、一対の第二延長部532を駒4と二本の弦3との間に挟むことができる。このため、一つの第二延長部532を駒4と一本の弦3との間に挟む場合と比較して、弦3の張力によって第二延長部532を駒4に押し付ける力が大きくなる。したがって、第二延長部532を駒4に対してより強固に保持できる。
また、第一延長部531が駒4と弦3との間に挟まれる一対の第二延長部532の間に位置するため、ピアノ用アクチュエータ5をピアノ1に対して安定に取り付けることができる。
【0031】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5では、弦3の長手方向のうち第一方向(例えばX軸負方向)に向けて駒4と弦3との間隔が徐々に大きくなる駒4と弦3との隙間7(例えば第一の隙間7A)に挟まれる第二延長部532の厚さ寸法T1が、当該隙間7の最大の寸法D2よりも小さい。これにより、第二延長部532を簡単かつ確実に駒4と弦3との隙間7に挿入できる。これにより、第二延長部532を簡単かつ確実に駒4と弦3との間に挟むことができる。
【0032】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5は、第二延長部532を上記した駒4と弦3との隙間7に配した状態で、第二延長部532を第一方向と逆方向(例えばX軸正方向)に引っ張る引張部54を備える。このため、第二延長部532は、引張部54によって駒4と弦3との隙間7のうち間隔が小さくなる方向に引っ張られる。これにより、第二延長部532を駒4と弦3との間に挟んだ状態に保持できる、すなわち、第二延長部532が駒4と弦3との隙間7から外れることを防止できる。
【0033】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5では、引張部54が第一延長部531のうち第二延長部532から離れた部位を逆方向(X軸正方向)に引っ張る。このため、ピアノ用アクチュエータ5が、第二延長部532の延長方向を軸としてピアノ1に対して回転(揺動)することを抑制できる。特に、図1に示す方向から見て、ピアノ用アクチュエータ5が反時計回りに回転することを抑制できる。これにより、ピアノ用アクチュエータ5をピアノ1に対して安定に取り付けることができる。すなわち、ピアノ用アクチュエータ5の本体51をピアノ1の筐体(例えばフレーム6や側板、支柱など)に固定することなく、ピアノ用アクチュエータ5を所定の位置に保持できる。ピアノ用アクチュエータ5の本体51をピアノ1の筐体に固定する必要がなくなることで、ピアノ用アクチュエータ5をさらに容易に着脱することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5では、第二延長部532が隣り合う二本の弦3の間に通すことが可能な寸法(幅寸法W1)を有する。これにより、図4~6に示したように、第二延長部532を二本の弦3の間に通した後に、第一延長部531の延長方向を軸として取付部53を90度回転させることで、第二延長部532を駒4と弦3との隙間7に簡単に挿入することができる。
【0035】
また、本実施形態のピアノ用アクチュエータ5では、第二延長部532が円柱状に形成されている。また、第二延長部532を駒4と弦3との間に挟んだ状態では、第二延長部532の外周面が駒4や弦3に接触する。このため、第二延長部532が角柱状に形成される場合と比較して、駒4や弦3が第二延長部532によって傷つけられることを抑制できる。
【0036】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
本発明において、ピアノ用アクチュエータ5は、例えば図7に示すように、取付部53のうち駒4及び弦3に対向する面を覆う緩衝材55を備えてよい。図7において、緩衝材55は、駒4及び弦3に対向する第二延長部532の外周面を覆っている。緩衝材55は、フェルトやゴムなどのように駒4や弦3よりも柔らかく変形しやすい材料によって構成されるとよい。
取付部53と駒4や弦3との間に緩衝材55が介在することで、取付部53が駒4や弦3に接触することで駒4や弦3が傷つくことを防止できる。すなわち、駒4や弦3の保護を図ることができる。
【0038】
本発明において、引張部54は、第一延長部531とピッチピン61との間にかけ渡されることに限らず、例えば第一延長部531とチューニングピンや駒釘43との間にかけ渡されてもよい。例えば、上記実施形態において、ピアノ用アクチュエータ5の第二延長部532が弦3の長手方向において駒4の頂面41に対してピッチピン61側に位置する第二の隙間7B(図1参照)に配される場合、引張部54は第一延長部531とチューニングピンとの間にかけ渡されてよい。
【0039】
本発明において、ピアノ用アクチュエータ5の本体51は、例えばピアノ1の筐体に固定されてもよい。
【0040】
本発明において、同一のピアノ1には複数のピアノ用アクチュエータ5が設けられてよい。この場合、ピアノ用アクチュエータ5は、例えば音域が互いに異なる複数の弦3に対してそれぞれ設けられてよい。また、ピアノ用アクチュエータ5は、例えば低音域、中音域、高音域に対応する各弦3に対してそれぞれ設けられてよい。また、ピアノ用アクチュエータ5は、例えばピアノ1の長駒と短駒とにそれぞれ設けられてもよい。また、複数のピアノ用アクチュエータ5は、同一の駒4に対し駒4の長手方向において互いに異なる位置に設けられてよい。
ピアノ用アクチュエータ5がピアノ1の互いに異なる音域にそれぞれ設けられる場合、各ピアノ用アクチュエータ5は、それぞれの音域に対応する特性の駆動信号に基づいて駒4を加振してよい。
【0041】
本発明のピアノは、例えば、駒4を加振するピアノ用アクチュエータ5の他に、響板2を直接加振するピアノ用アクチュエータを備えてもよい。
【0042】
本発明のピアノ用アクチュエータは、グランドピアノに限らず、例えば響板2の板厚方向が概ね水平方向に向くアップライトピアノに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ピアノ、2…響板、3…弦、4…駒、41…頂面、42…傾斜面、43…駒釘、5…ピアノ用アクチュエータ、51…本体、52…振動体、53…取付部、531…第一延長部、532…第二延長部、54…引張部、55…緩衝材、6…フレーム、61…ピッチピン、7…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7