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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】クロマトグラフシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20230711BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01N30/86 Q
G01N30/86 V
G01N30/04 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021563550
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048827
(87)【国際公開番号】W WO2021117204
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-516219(JP,A)
【文献】特開2019-101923(JP,A)
【文献】特開2014-178135(JP,A)
【文献】特表2004-531688(JP,A)
【文献】国際公開第19/38924(WO,A1)
【文献】特表2001-515216(JP,A)
【文献】村瀬 辰史,原薬製造工程におけるQuality by Designの実践,ファルマシア,日本,公益社団法人日本薬学会,2017年05月01日,Vol.53 No.5,420-424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
G01N 27/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体原料と第2の液体原料とを反応させることにより反応生成物を生成する反応器を含む反応装置に接続され、前記反応装置により生成された前記反応生成物を分析する分析装置と、
前記反応装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記分析装置による分析結果から得られたクロマトグラムから基準値を取得する基準値取得部と、
前記基準値についての上限値と下限値とを設定する許容範囲設定部と、
前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の少なくとも1つを制御対象として動的に変化させる反応制御部とを含む、クロマトグラフシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記反応生成物についての過去の分析結果を取得する結果取得部と、
前記結果取得部により取得された前記分析結果に基づいて前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力のうち前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定する第1の決定部とをさらに含む、請求項1記載のクロマトグラフシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記反応装置の使用状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部をさらに含み、
前記第1の決定部は、前記状態情報取得部により取得された状態情報にさらに基づいて前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定する、請求項2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記反応生成物についての品質を示す評価値と第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを探索する探索部と、
前記探索部により探索された前記デザインスペースにおいて示された関係に基づいて前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力のうち前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定する第2の決定部とをさらに含む、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項5】
前記反応制御部は、前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応装置の設置環境の状態をさらに変化させる、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項6】
前記反応制御部は、前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の全てを制御対象として動的に変化させる、請求項1記載のクロマトグラフシステム。
【請求項7】
前記基準値は、前記クロマトグラムにおけるいずれかのピークの大きさである、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項8】
前記基準値は、前記クロマトグラムにおけるいずれかのピークの大きさと他のピークの大きさとの比である、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項9】
前記基準値は、前記クロマトグラムから算出される前記反応生成物の平均分子量である、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項10】
前記分析装置は、
前記反応装置により生成された前記反応生成物の一部が分析対象の試料として流れるフローバイアルと、
前記フローバイアルを流れる試料を抽出する試料抽出部と、
前記試料抽出部により抽出された試料の成分を分離する分離カラムと、
前記分離カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項11】
前記フローバイアルよりも上流において前記第1の液体原料、前記第2の液体原料または前記反応生成物が流れる第1の流路と、
前記反応生成物を溶離するための溶離液が流れる第2の流路とをさらに備え、
前記第2の流路の断面積は、前記第1の流路の断面積よりも小さい、請求項10記載のクロマトグラフシステム。
【請求項12】
前記反応器と前記フローバイアルとの間における前記第1の流路に設けられ、前記反応生成物に含まれる不要成分を除去するフィルタをさらに備える、請求項11記載のクロマトグラフシステム。
【請求項13】
前記フィルタを洗浄する洗浄装置をさらに備える、請求項12記載のクロマトグラフシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モニタリング用クロマトグラフシステムにおいては、反応により得られた薬品、食品または化学物質等の生成物(以下、反応生成物と呼ぶ。)の一部が試料として生産ライン等から抽出される。抽出された試料は、分析室に移送され、例えば液体クロマトグラフにより分析される。これにより、反応生成物について所定の品質が担保されているか否かを確認することが可能になる。近年、反応生成物の品質を管理するために、上記の工程を自動化する研究が行われている。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されたマイクロ流体システムにおいては、マイクロリアクタにより複数の試薬が反応される。反応により生成された試料は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)に注入され、分析されることにより、試料中の所定の成分の収率が評価される。最適化アルゴリズムに従って、収率が最大になるように試薬の滞留時間および濃度等のパラメータが変化されつつ、同様の分析が繰り返される。
【0004】
特許文献1または特許文献2にも、液体クロマトグラフによる分析結果に基づいて同様の制御を行うシステムが記載されている。なお、クロマトグラフではなく、赤外線分光法等による分析結果に基づいて反応を最適または最大にするようにパラメータの最適化を行うシステムの研究も行われている。このようなシステムは、非特許文献2、非特許文献3または特許文献3に記載されている。
【文献】特表2008-516219号公報
【文献】特表2015-520674号公報
【文献】国際公開第2018/187745号
【文献】Jonathan P. McMullen and Klavs F. Jansen, "An Automated Microfluidic System for Online Optimization in Chemical Synthesis", Organic Process Research & Development, 2010, Volume 14, pp. 1169-1176
【文献】Jason S. Moore and Klavs F. Jansen, "Automated Multitrajectory Method for Reaction Optimization in a Microfluidic System using Online IR Analysis", Organic Process Research & Development, 2012, Volume 16, pp. 1409-1415
【文献】Ryan A. Skilton, Andrew J. Parrott, Michael W. George, Martyn Poliakoff and Richard A. Bourne, "Real-Time Feedback Control Using Online Attenuated Total Reflection Fourier Transform Infrared (ATR FT-IR) Spectroscopy for Continuous Flow Optimization and Process Knowledge", APPLIED SPECTROSCOPY, 2013, Volume 67, pp. 1127-1131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研究の段階では、特許文献1~3に記載されたシステムを用いることにより、比較的短い期間の間、最適化された反応生成物を生成することが可能であると考えられる。しかしながら、長期間にわたって反応生成物を連続的に安定して生成し続けることができなければ、システムを実用化することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが可能なクロマトグラフシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の液体原料と第2の液体原料とを反応させることにより反応生成物を生成する反応器を含む反応装置に接続され、前記反応装置により生成された前記反応生成物を分析する分析装置と、前記反応装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記分析装置による分析結果から得られたクロマトグラムから基準値を取得する基準値取得部と、前記基準値についての上限値と下限値とを設定する許容範囲設定部と、前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の少なくとも1つを制御対象として動的に変化させる反応制御部とを含む、クロマトグラフシステムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応生成物を連続的に安定して生成し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図2図2図1の制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は制御装置により実行される生成分析処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図4図4は第1の変形例に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図5図5図4の制御装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は第2の変形例に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図7図7は洗浄装置の一例を示す模式図である。
図8図8は洗浄装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)クロマトグラフシステムの構成
以下、本発明の実施の形態に係るクロマトグラフシステムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。図1に示すように、クロマトグラフシステム500は、制御装置100、反応装置200および分析装置300を備える。本実施の形態においては、分析装置300は溶離液を用いて試料の分離を行う液体クロマトグラフである。
【0011】
制御装置100は、例えばコンピュータにより構成され、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含む。制御装置100は、反応装置200から各種の検出結果を取得するとともに、分析装置300から分析結果を取得し、取得された結果に基づいて反応装置200の動作を制御する。制御装置100の詳細については後述する。
【0012】
反応装置200は、例えば製薬、食品または化学における製品を生産するバッチ生産工場等に設けられ、送液部210,220および反応器230を含む。送液部210,220には、工場設備等からそれぞれ第1および第2の液体原料が供給される。送液部210,220は、例えば送液ポンプであり、第1および第2の液体原料を流路501を通して反応器230にそれぞれ圧送する。流路501には、第1および第2の液体原料の送液量をそれぞれ検出する流量センサ211,221が設けられる。
【0013】
反応器230は、例えばCSTR(連続槽型反応器)またはプラグフロー反応器を含み、第1の液体原料と第2の液体原料とを反応させることにより所定の生成物(以下、反応生成物と呼ぶ。)を連続的に生成する。反応器230には、内部の温度を調整する温調装置231が設けられるとともに、内部の圧力を調整する圧力調整弁232が設けられる。また、反応器230には、内部の温度および圧力をそれぞれ検出する温度センサ233および圧力センサ234が設けられる。
【0014】
反応器230により生成される反応生成物の収率または純度等の品質を示す評価値は、反応器230における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度または反応圧力により変化する。なお、反応器230における第1の液体原料の滞留時間は、第1の液体原料の送液量および反応器230の流路形状(体積)により定まる。同様に、反応器230における第2の液体原料の滞留時間は、第2の液体原料の送液量および反応器230の流路形状により定まる。
【0015】
反応器230の下流部には、主管502aおよび枝管502b,502cを含む流路502が接続される。反応器230により生成された反応生成物の大部分は、製品または製造途中の半製品として主管502aから分岐した枝管502bを通して工場の生産ラインの下流に送られる。一方、反応器230により生成された反応生成物の一部は、分析対象の試料として主管502aから分岐した枝管502cを通して分析装置300に導かれる。なお、反応器230から流路502に反応生成物を導くためのポンプが設けられてもよい。
【0016】
本実施の形態では、第1または第2の液体原料が流れる流路501の断面積、および反応生成物が流れる流路502の断面積は、分析装置300において溶離液が流れる後述の流路503の断面積よりも大きい。この場合、反応装置200において、反応生成物を大量に生成するとともに、生成された反応生成物を下流に送ることができる。一方、分析装置300においては、流路503内で試料が拡散することを抑制し、試料の分離性能を向上させることができる。
【0017】
分析装置300は、溶離液供給部310、試料供給部320、分離カラム330、検出器340および処理部350を含む。分析装置300は、反応装置200が設けられた工場と同じ工場に設けられてもよいし、反応装置200が設けられた工場とは異なる研究施設等に設けられてもよい。また、制御装置100が処理部350の機能と同様の機能を有する場合には、分析装置300に処理部350が設けられなくてもよい。
【0018】
溶離液供給部310は、ボトル311,312、送液部313,314および混合部315を含む。ボトル311,312は、例えば水溶液および有機溶媒を溶離液としてそれぞれ貯留する。送液部313,314は、例えば送液ポンプであり、ボトル311,312に貯留された溶離液を流路503を通してそれぞれ圧送する。混合部315は、例えばグラジエントミキサである。混合部315は、送液部313,314によりそれぞれ圧送された溶離液を任意の割合で混合し、混合比を変化させつつ、混合された溶離液を供給する。
【0019】
試料供給部320は、例えばオートサンプラであり、フローバイアル321およびサンプリングニードル322を含む。反応装置200により生成された試料は、流路502を通してフローバイアル321に導かれた後、図示しない廃液部へ廃棄される。サンプリングニードル322は、フローバイアル321内の試料を吸引し、吸引された試料を溶離液供給部310により供給される溶離液とともに分離カラム330に注入する。サンプリングニードル322は、試料抽出部の例である。分離カラム330に注入される試料は、試料供給部320において適宜希釈されてもよい。
【0020】
分離カラム330は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に調整される。分離カラム330は、試料供給部320により注入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。検出器340は、例えば吸光度検出器またはRI(Refractive Index)検出器を含み、分離カラム330により分離された試料の成分を検出する。検出器340を通過した試料は廃棄される。反応装置200に溶離液が混入してもよい場合には、検出器340を通過した試料は反応装置200に戻されてもよい。
【0021】
処理部350は、CPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータ等を含み、溶離液供給部310、試料供給部320、分離カラム330(カラム恒温槽)および検出器340の各々の動作を制御する。また、処理部350は、検出器340による検出結果を処理することにより、各成分の保持時間と検出強度との関係を示すクロマトグラム等を生成する。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)分析が行われる場合には、処理部350は、生成されたクロマトグラムを解析することにより反応生成物の平均分子量を算出してもよい。
【0022】
(2)制御装置
図2は、図1の制御装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置100は、機能部として基準値取得部10、許容範囲設定部20、結果取得部30、探索部40、決定部50および反応制御部60を含むとともに、データベース記憶装置110を含む。制御装置100のCPUがメモリに記憶された生成分析プログラムを実行することにより、制御装置100の機能部が実現される。制御装置100の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0023】
データベース記憶装置110は、データベースを記憶する大容量のデータサーバ等を含む。データベースは、反応生成物についての過去の分析結果を含んでもよい。過去の分析結果は、図1の分析装置300により得られた過去の分析結果を含んでもよいし、他の分析装置により得られ、文献に掲載された過去の分析結果を含んでもよい。また、データベースは、反応生成物についての品質を示す評価値と第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを含んでもよい。
【0024】
基準値取得部10は、処理部350により生成されたクロマトグラムから基準値を所定の時間間隔で繰り返し取得する。ここで、使用者は、クロマトグラムにおける所望のピークを基準値取得部10に指定することができる。基準値は、指定されたピークの大きさであってもよい。ピークの大きさとは、ピークの面積であってもよいし、ピークの高さであってもよい。以下の説明においても同様である。
【0025】
基準値は、指定されたピークの大きさと他のピークの大きさとの比であってもよい。他のピークは、指定されたピークに隣接するピークであってもよい。あるいは、他のピークも使用者により指定されてもよい。また、基準値は、処理部350により算出された平均分子量であってもよい。平均分子量は、数平均分子量、重量平均分子量またはZ平均分子量のいずれか一部または全部を含む。
【0026】
許容範囲設定部20は、基準値取得部10により取得される基準値についての上限値および下限値を設定する。使用者は、反応生成物が所定の品質を満たすために設定すべき基準値についての上限値および下限値を許容範囲設定部20に指定することができる。
【0027】
結果取得部30は、指定された反応生成物についての過去の分析結果をデータベース記憶装置110から取得する。使用者は、所望の反応生成物を結果取得部30に指定することができる。制御装置100がインターネット等に接続されている場合には、結果取得部30は、指定された反応生成物についての過去の分析結果を外部のサーバ等から取得してもよい。
【0028】
なお、結果取得部30は、取得された過去の分析結果における分析条件または反応生成物の種類等に基づいて、クロマトグラムにおいて指定されるべきピークを使用者に提示してもよい。この場合、使用者は、クロマトグラムにおける所望のピークを基準値取得部10に容易に指定することができる。あるいは、結果取得部30は、取得された過去の分析結果に基づいて、基準値について指定されるべき上限値および下限値を使用者に提示してもよい。この場合、使用者は、基準値についての適切な上限値および下限値を許容範囲設定部20に容易に指定することができる。
【0029】
探索部40は、指定された反応生成物に関するデザインスペースをデータベース記憶装置110上で探索する。使用者は、所望の反応生成物を探索部40に指定することができる。制御装置100がインターネット等に接続されている場合には、探索部40は、指定された反応生成物に関するデザインスペースを外部のサーバ等上で探索してもよい。
【0030】
決定部50は、流量センサ211、流量センサ221、温度センサ233および圧力センサ234から第1の液体原料の送液量、第2の液体原料の送液量、反応温度および反応圧力をそれぞれ取得する。また、決定部50は、第1および第2の液体原料の送液量に基づいて、反応器230における第1のおよび第2の液体原料の滞留時間をそれぞれ算出する。
【0031】
さらに、決定部50は、反応器230における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力のうち反応制御部60により変化されるべき少なくとも1つの制御対象を決定する。ここで、制御対象は、結果取得部30により取得された分析結果と、探索部40により探索されたデザインスペースとの少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。あるいは、制御対象は、使用者により設定されたアルゴリズムに基づいて決定されてもよい。
【0032】
反応制御部60は、基準値取得部10により取得された基準値が許容範囲設定部20により設定された上限値と下限値との間に収まるように、決定部50により決定された制御対象を動的に変化させる。なお、第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力は、それぞれ送液部210、送液部220、温調装置231および圧力調整弁232を制御することにより変化させることができる。
【0033】
(3)生成分析処理
図3は、制御装置100により実行される生成分析処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、図2の制御装置100および図3のフローチャートを用いて生成分析処理を説明する。まず、許容範囲設定部20は、基準値についての上限値および下限値が指定されたか否かを判定する(ステップS1)。上限値および下限値が指定されていない場合には、許容範囲設定部20は、上限値および下限値が指定されるまで待機する。上限値および下限値が指定された場合には、許容範囲設定部20は、上限値および下限値を設定する(ステップS2)。以降、上限値および下限値の両方が指定される例を説明するが、上限値のみ、または下限値のみが指定されてもよい。
【0034】
次に、結果取得部30または探索部40は、反応生成物が指定されたか否かを判定する(ステップS3)。反応生成物が指定されていない場合には、結果取得部30および探索部40は、反応生成物が指定されるまで待機する。反応生成物が指定された場合には、結果取得部30は指定された反応生成物についての過去の分析結果を取得する(ステップS4)。探索部40は、指定された反応生成物に関するデザインスペースを探索する(ステップS5)。ステップS4とステップS5とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0035】
図3の例では、ステップS1,S2が実行された後にステップS3が実行されるが、実施の形態はこれに限定されない。ステップS3~S5が実行された後にステップS1が実行されてもよい。あるいは、ステップS1,S2とステップS3~S5とが並列的に実行されてもよい。この場合、ステップS1~S5が終了した後に、処理がステップS6に進む。
【0036】
ステップS6において、基準値取得部10は、処理部350により生成されたクロマトグラムから基準値を取得する(ステップS6)。ここで、クロマトグラムにおけるいずれかのピークの大きさを基準値とする場合には、使用者は、クロマトグラムにおける当該ピークを指定することができる。いずれかのピークの大きさと他のピークの大きさとの比を基準値とする場合でも同様である。
【0037】
続いて、反応制御部60は、ステップS6で取得された基準値がステップS2で設定された下限値以上でかつ上限値以下であるか否かを判定する(ステップS7)。基準値が下限値より小さい場合、または基準値が上限値より大きい場合、決定部50は、変化されるべき少なくとも1つの制御対象を決定する(ステップS8)。当該決定は、ステップS4で取得された分析結果およびステップS5で探索されたデザインスペースの少なくとも一方と、流量センサ211,221、温度センサ233および圧力センサ234による検出結果とに基づいて行われる。
【0038】
その後、反応制御部60は、ステップS8で決定された制御対象を変化させる(ステップS9)。ステップS7で基準値が下限値以上でかつ上限値以下であると判定された場合、またはステップS9が実行された場合、処理はステップS6に戻る。この場合、ステップS6,S7またはステップS6~S9が繰り返される。これにより、基準値が上限値と下限値との間に収まるように制御対象が動的に変化されることとなる。なお、処理がステップS6に戻った後には、クロマトグラムにおけるピークの指定は行われなくてもよい。
【0039】
生成分析処理における反応生成物の種類、制御対象の決定の履歴、制御対象の制御量、分析条件、基準値、上限値および下限値等の種々の情報は、互いに対応付けられた1つの分析結果としてデータベース記憶装置110に記憶されてもよい。あるいは、当該分析結果は、外部のサーバ等に記憶されてもよい。これにより、当該分析結果を過去の分析結果として利用することが可能になる。
【0040】
(4)第1の変形例
第1の変形例に係るクロマトグラフシステム500について、図1のクロマトグラフシステム500と異なる点を説明する。図4は、第1の変形例に係るクロマトグラフシステム500の構成を示す図である。図4に示すように、本例における反応装置200には、当該反応装置200の設置施設内の室温および湿度を設置環境の状態としてそれぞれ検出する温度センサ201および湿度センサ202がさらに設けられる。また、反応装置200には、設置施設内の室温および湿度の少なくとも一方を調整する空調装置203がさらに設けられる。
【0041】
図5は、図4の制御装置100の構成を示すブロック図である。図5に示すように、制御装置100は、機能部として状態情報取得部70をさらに含む。状態情報取得部70は、反応装置200の使用状態を示す状態情報を取得する。状態情報は、設置施設の室温、設置施設の湿度、天気、使用者、反応装置200の稼働率、反応器230の使用期間または反応器230による直前の反応生成物等を含む。
【0042】
ここで、状態情報は、データベース記憶装置110から取得されてもよい。制御装置100がインターネット等に接続されている場合には、状態情報は、外部のサーバ等から取得されてもよい。状態情報のうち、室温および湿度は、温度センサ201および湿度センサ202からそれぞれ取得されてもよい。あるいは、状態情報は、使用者により状態情報取得部70に入力されてもよい。
【0043】
決定部50は、状態情報取得部70により取得された状態情報を結果取得部30により取得された過去の分析結果における状態情報と照合することにより、制御対象を決定する。この場合、より適切な制御対象を決定することが可能になる。また、決定部50は、温度センサ201および湿度センサ202から室温および湿度をそれぞれ取得し、室温および湿度の少なくとも一方を制御対象の1つとして決定してもよい。
【0044】
反応制御部60は、決定部50により決定された制御対象を変化させる。また、決定部50により室温または湿度が制御対象として決定された場合には、反応制御部60は、基準値取得部10により取得された基準値が許容範囲設定部20により設定された上限値と下限値との間に収まるように室温または湿度をそれぞれ変化させる。この場合、第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度または反応圧力をより高い再現性で制御することが容易になる。なお、室温または湿度は、空調装置203を制御することにより変化させることができる。
【0045】
(5)第2の変形例
第2の変形例に係るクロマトグラフシステム500について、図1のクロマトグラフシステム500と異なる点を説明する。図6は、第2の変形例に係るクロマトグラフシステム500の構成を示す図である。図6に示すように、本例では、フィルタ504が反応器230とフローバイアル321との間における流路502に設けられる。この場合、流路502を流れる反応生成物に含まれる不要成分がフィルタ504により除去される。不要成分は、夾雑物および再析出物を含む。
【0046】
本例の構成によれば、反応生成物が高濃度または高粘度を有する場合、または流路503の断面積(内径)が小さい場合でも、反応生成物に含まれる不要成分により流路503が閉塞されることが防止される。図6の例では、フィルタ504は流路502の枝管502cに設けられるが、流路502の主管502aに設けられてもよい。また、フィルタ504および後述する洗浄装置は、図4の第1の変形例に係るクロマトグラフシステム500に設けられてもよい。
【0047】
本例に係るクロマトグラフシステム500は、フィルタ504を洗浄するための洗浄装置をさらに備えてもよい。図7および図8は、洗浄装置の一例を示す模式図である。図7および図8に示すように、洗浄装置400は、流路切替バルブ410,420および洗浄液供給ポンプ430を含む。流路切替バルブ410は6個のポート411~416を有し、流路切替バルブ420は6個のポート421~426を有する。流路切替バルブ410,420は、第1の流路状態と第2の流路状態との間で切り替え可能であり、流路502の枝管502cに介挿される。
【0048】
第1の流路状態においては、ポート411,412間が連通し、ポート413,414間が連通し、ポート415,416間が連通する。また、ポート421,422間が連通し、ポート423,424間が連通し、ポート425,426間が連通する。第2の流路状態においては、ポート412,413間が連通し、ポート414,415間が連通し、ポート416,411間が連通する。また、ポート422,423間が連通し、ポート424,425間が連通し、ポート426,421間が連通する。
【0049】
ポート411は、フィルタ504の上流部に接続される。ポート412は、主管502aを介して反応装置200に接続される。ポート421は、分析装置300に接続される。ポート422は、フィルタ504の下流部に接続される。ポート423は、洗浄液供給ポンプ430に接続される。ポート413,416,424は、図示しない廃液装置に接続される。ポート414,415,425,426は、いずれにも接続されない。洗浄液供給ポンプ430は、洗浄液を圧送可能に構成される。
【0050】
図7に示すように、試料の分析時には、流路切替バルブ410、420が第1の流路状態になる。この場合、反応装置200からの反応生成物は、試料として流路切替バルブ410のポート412,411を通してフィルタ504に導かれる。フィルタ504を通過した試料は、流路切替バルブ420のポート422,421を通して分析装置300に導かれる。これにより、分析装置300において試料の分析が行われる。一方、洗浄液供給ポンプ430により圧送される洗浄液は、流路切替バルブ420のポート423,424を通して廃液装置に導かれる。なお、試料の分析時には、洗浄液供給ポンプ430は動作しなくてもよい。
【0051】
図8に示すように、フィルタ504の洗浄時には、流路切替バルブ410,420が第2の流路状態になる。この場合、洗浄液供給ポンプ430からの洗浄液は、流路切替バルブ420のポート423,422を通してフィルタ504に導かれる。洗浄液がフィルタ504を通過することにより、フィルタ504が洗浄される。フィルタ504を通過した洗浄液は、流路切替バルブ410のポート411,416を通して廃液装置に導かれる。一方、反応装置200からの試料は、流路切替バルブ410のポート412,413を通して廃液装置に導かれる。
【0052】
この構成によれば、フィルタ504が洗浄されることによりフィルタ504が再生される。そのため、フィルタ504の消耗を低減し、フィルタ504の交換周期を延ばすことができる。これにより、クロマトグラフシステム500のランニングコストを削減することができる。
【0053】
流路切替バルブ410,420の流路状態は、使用者の指示に応答して切り替えられてもよいし、自動的に切り替えられてもよい。例えば、クロマトグラフシステム500の運転が開始されてから所定の時間が経過した場合に、フィルタ504の洗浄が行われるように流路切替バルブ410,420の流路状態が自動的に切り替えられてもよい。あるいは、フィルタ504の背圧が所定の値まで上昇した場合に、フィルタ504の洗浄が行われるように流路切替バルブ410,420の流路状態が自動的に切り替えられてもよい。
【0054】
(6)効果
本実施の形態に係るクロマトグラフシステム500においては、反応装置200の反応器230により第1の液体原料と第2の液体原料とが反応されることにより反応生成物が生成される。反応装置200により生成された反応生成物が分析装置300により分析される。
【0055】
制御装置100において、分析装置300による分析結果から得られたクロマトグラムから基準値取得部10により基準値が取得される。基準値についての上限値と下限値とが許容範囲設定部20により設定される。基準値取得部10により取得された基準値が許容範囲設定部20により設定された上限値と下限値との間に収まるように反応器230における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の少なくとも1つが制御対象として反応制御部60により動的に変化される。
【0056】
この構成によれば、反応器230における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度または反応圧力が変動した場合、または反応装置200に外乱が発生した場合でも、基準値が上限値と下限値との間に収まるように制御対象が動的に変化される。そのため、検量線を作成するための所定の濃度を有する標準試料等、所定の品質を満たす反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが可能になる。
【0057】
ここで、基準値としてクロマトグラムにおけるピークの大きさを用いる場合には、例えば所定の収率を有する反応生成物を連続的に安定して生成し続けることができる。基準値としてクロマトグラムにおけるピークの大きさの比を用いる場合には、例えば所定の純度を有する反応生成物を連続的に安定して生成し続けることができる。基準値として反応生成物の平均分子量を用いる場合には、例えば定性的な品質が担保された反応生成物を連続的に安定して生成し続けることができる。
【0058】
(7)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、制御装置100はデータベース記憶装置110を含むが、実施の形態はこれに限定されない。反応生成物についての過去の分析結果または反応生成物に関するデザインスペースを外部のサーバ等から取得可能である場合には、制御装置100はデータベース記憶装置110を含まなくてもよい。
【0059】
(b)上記実施の形態において、制御装置100は結果取得部30および探索部40を含むが、実施の形態はこれに限定されない。反応生成物についての過去の分析結果に基づかずに制御対象が決定される場合には、制御装置100は結果取得部30を含まなくてもよい。また、反応生成物に関するデザインスペースに基づかずに制御対象が決定される場合には、制御装置100は探索部40を含まなくてもよい。
【0060】
制御対象が使用者により設定されたアルゴリズムに基づいて決定される場合には、制御装置100は、結果取得部30および探索部40の両方を含まなくてもよい。あるいは、メソッドスカウティングと同様に、反応生成物の生成条件の組み合わせが網羅的に変化されるように制御対象が順次決定される場合にも、制御装置100は、結果取得部30および探索部40の両方を含まなくてもよい。
【0061】
(8)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0062】
(第1項)一態様に係るクロマトグラフシステムは、
第1の液体原料と第2の液体原料とを反応させることにより反応生成物を生成する反応器を含む反応装置に接続され、前記反応装置により生成された前記反応生成物を分析する分析装置と、
前記反応装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記分析装置による分析結果から得られたクロマトグラムから基準値を取得する基準値取得部と、
前記基準値についての上限値と下限値とを設定する許容範囲設定部と、
前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の少なくとも1つを制御対象として動的に変化させる反応制御部とを含んでもよい。
【0063】
このクロマトグラフシステムにおいては、反応装置の反応器により第1の液体原料と第2の液体原料とが反応されることにより反応生成物が生成される。反応装置により生成された反応生成物が分析装置により分析される。制御装置において、分析装置による分析結果から得られたクロマトグラムから基準値取得部により基準値が取得される。基準値についての上限値と下限値とが許容範囲設定部により設定される。基準値取得部により取得された基準値が許容範囲設定部により設定された上限値と下限値との間に収まるように反応器における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の少なくとも1つが制御対象として反応制御部により動的に変化される。
【0064】
この構成によれば、反応器における第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度または反応圧力が変動した場合、または反応装置に外乱が発生した場合でも、基準値が上限値と下限値との間に収まるように制御対象が動的に変化される。そのため、所定の品質を満たす反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが可能になる。
【0065】
(第2項)第1項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記制御装置は、
前記反応生成物についての過去の分析結果を取得する結果取得部と、
前記結果取得部により取得された前記分析結果に基づいて前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力のうち前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定する第1の決定部とをさらに含んでもよい。
【0066】
この場合、反応生成物についての過去の分析結果に基づいて、反応制御部により変化されるべき適切な制御対象を容易に決定することができる。
【0067】
(第3項)第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記制御装置は、前記反応装置の使用状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部をさらに含み、
前記第1の決定部は、前記状態情報取得部により取得された状態情報にさらに基づいて前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定してもよい。
【0068】
この場合、反応装置の使用状態にさらに基づいて、反応制御部により変化されるべきより適切な制御対象を容易に決定することができる。
【0069】
(第4項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記制御装置は、
前記反応生成物についての品質を示す評価値と第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の組み合わせとの関係を示すデザインスペースを探索する探索部と、
前記探索部により探索された前記デザインスペースにおいて示された関係に基づいて前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力のうち前記反応制御部により変化されるべき制御対象を決定する第2の決定部とをさらに含んでもよい。
【0070】
この場合、デザインスペースにおいて示された関係に基づいて、反応制御部により変化されるべき適切な制御対象を容易に決定することができる。
【0071】
(第5項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記反応制御部は、前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応装置の設置環境の状態をさらに変化させてもよい。
【0072】
この場合、第1の液体原料の滞留時間、第2の液体原料の滞留時間、反応温度または反応圧力をより高い再現性で制御することができる。
【0073】
(第6項)第1項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記反応制御部は、前記基準値取得部により取得された前記基準値が前記許容範囲設定部により設定された前記上限値と前記下限値との間に収まるように前記反応器における前記第1の液体原料の滞留時間、前記第2の液体原料の滞留時間、反応温度および反応圧力の全てを制御対象として動的に変化させてもよい。
【0074】
この場合、所定の品質を満たす反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが可能になる。
【0075】
(第7項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記基準値は、前記クロマトグラムにおけるいずれかのピークの大きさであってもよい。
【0076】
この場合、基準値を用いることにより、所定の収率等を有する反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが容易になる。
【0077】
(第8項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記基準値は、前記クロマトグラムにおけるいずれかのピークの大きさと他のピークの大きさとの比であってもよい。
【0078】
この場合、基準値を用いることにより、所定の純度等を有する反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが容易になる。
【0079】
(第9項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記基準値は、前記クロマトグラムから算出される前記反応生成物の平均分子量であってもよい。
【0080】
この場合、基準値を用いることにより、定性的な品質が担保された反応生成物を連続的に安定して生成し続けることが容易になる。
【0081】
(第10項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記分析装置は、
前記反応装置により生成された前記反応生成物の一部が分析対象の試料として流れるフローバイアルと、
前記フローバイアルを流れる試料を抽出する試料抽出部と、
前記試料抽出部により抽出された試料の成分を分離する分離カラムと、
前記分離カラムを通過した試料を検出する検出器とを含んでもよい。
【0082】
この場合、反応生成物の一部を分析対象の試料として容易に分析することが可能になる。
【0083】
(第11項)第10項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記クロマトグラフシステムは、
前記フローバイアルよりも上流において前記第1の液体原料、前記第2の液体原料または前記反応生成物が流れる第1の流路と、
前記反応生成物を溶離するための溶離液が流れる第2の流路とをさらに備え、
前記第2の流路の断面積は、前記第1の流路の断面積よりも小さくてもよい。
【0084】
この場合、フローバイアルよりも上流において、反応装置により反応生成物を大量に生成することができる。また、分析装置による試料の分離性能を向上させることができる。
【0085】
(第12項)第11項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記クロマトグラフシステムは、前記反応器と前記フローバイアルとの間における前記第1の流路に設けられ、前記反応生成物に含まれる不要成分を除去するフィルタをさらに備えてもよい。
【0086】
この構成によれば、反応生成物が高濃度または高粘度を有する場合、第2の流路の断面積が小さい場合でも、反応生成物に含まれる不要成分により第2の流路が閉塞されることが防止される。
【0087】
(第13項)第12項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記クロマトグラフシステムは、前記フィルタを洗浄する洗浄装置をさらに備えてもよい。
【0088】
この場合、フィルタが洗浄されることによりフィルタが再生される。そのため、フィルタの消耗を低減し、フィルタの交換周期を延ばすことができる。これにより、クロマトグラフシステムのランニングコストを削減することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8