(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】プラント監視制御システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G05B23/02 301S
(21)【出願番号】P 2022539081
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043655
(87)【国際公開番号】W WO2022113168
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオ ヴィッタル
(72)【発明者】
【氏名】野島 章
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-8434(JP,A)
【文献】特開2018-25999(JP,A)
【文献】特許第6323841(JP,B2)
【文献】特許第6552775(JP,B1)
【文献】特開2018-46726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プラントを構成するフィールド機器を制御するための制御信号を出力するハードウェアスイッチと、
前記フィールド機器および前記ハードウェアスイッチに接続し、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとの関連付け状態情報を管理し、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとが関連付けられた関連付け状態である場合に、前記ハードウェアスイッチから出力された前記制御信号に基づき前記フィールド機器を制御するプログラマブルロジックコントローラと、
前記プログラマブルロジックコントローラに接続し、前記関連付け状態情報を表示する第1ソフトウェアパーツと表示位置を変更可能な第2ソフトウェアパーツとを画面に表示するヒューマンマシンインターフェースサブシステムと、を備え、
前記プログラマブルロジックコントローラは、前記画面上で前記第2ソフトウェアパーツが、前記第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、前記関連付け状態を解除すること、
を特徴とするプラント監視制御システム。
【請求項2】
前記プログラマブルロジックコントローラは、
前記ヒューマンマシンインターフェースサブシステムから、ヘルスチェック信号を定期的に受信している間、前記関連付け状態を維持し、
前記ヘルスチェック信号の定期的な受信が途絶えた場合に、前記関連付け状態を解除し、
前記ヒューマンマシンインターフェースサブシステムは、前記画面上で前記第2ソフトウェアパーツが前記第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、前記ヘルスチェック信号の送信を停止すること、
を特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御システム。
【請求項3】
前記プログラマブルロジックコントローラは、前記ヒューマンマシンインターフェースサブシステムとの通信が遮断された場合に、前記関連付け状態を解除すること、
を特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラント(鉄鋼プラント、製紙プラント、発電プラント、石油プラント、化学プラント、水処理設備プラント等)は、工業活動に必要な素材や資源を生産する。近年、産業プラントを監視および制御するプラント監視制御システムでは、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)システムが用いられている。HMIシステムは、コンピュータネットワークを介して、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)および産業プラントを構成する多数のフィールド機器に接続する。オペレータは、モニター、キーボード、マウスなどを用いて産業プラントの監視および制御のための操作を行う。
【0003】
従来、オペレータの操作は、デスクに配置されたハードウェアスイッチで実施されてきた。ハードウェアスイッチは、レバーコントローラ、プッシュボタン、ロータリースイッチ、トグルスイッチなどである。しかしながら、操業監視機能の拡充や、パーツ追加などの改造の容易性や、有寿命部品の経年劣化による操業トラブルの解決などを目的に、オペレータの操作は、HMIシステム上のパーツによる操作に置き換えられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特許第6552775号公報
【文献】日本特開2018-46726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアルタイム性の高い電気制御を行う産業プラントでは、製品品質と安全の確保のために、オペレータによる操作に対して高速な応答が求められる。HMIシステムの高応答性に関して特許文献1がある。
【0006】
特許文献1では、Webブラウザ上でHMI画面を動作させるSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition) HMIを構築する際のDOM GC(Garbage Collection)による表示遅延に対し、Web GL(Web Graphics Library)レンダリングとSVGレンダリングをハイブリッドすることで、PLC(Programmable Logic Controller)がHMIに出力した信号の表示を高速化している。
【0007】
特許文献1の方法により、HMIシステム上の多くのパーツについて、製品品質と安全の確保のために必要とされている高速な応答を実現できる。しかしながら、オペレータが操作している間だけフィールド機器を動かす機能を持つパーツについては、さらに高速な応答が求められる。
【0008】
このため、オペレータが操作している間だけフィールド機器を動かす機能を持つパーツについては、HMIシステム上のパーツではなく、従来通りハードウェアスイッチが使用される。
【0009】
オペレータがパーツを操作している間だけ動かすフィールド機器はプラント内に数多くある。そのため、共通のハードウェアスイッチをデスク上に配置し、共通のハードウェアスイッチと関連付けるフィールド機器をHMIシステム上のパーツで選択する方法を用いる。
【0010】
共通のハードウェアスイッチとフィールド機器とを関連付けるHMIシステム上のパーツを汎用操作パーツ(general purpose part)と称する。
【0011】
汎用操作パーツにより誤ったフィールド機器が選択された状態で共通のハードウェアスイッチが操作されれば、オペレータの意図と異なるフィールド機器が動作し危険である。そのため、ヒューマンエラーを防止する必要がある。
【0012】
ヒューマンエラーを防止する方法として、例えば特許文献2の方法が提案されている。しかしながら、特許文献2の方法では汎用操作パーツが他のパーツ(例えばウィンドウパーツ)により隠れてしまい、オペレータがフィールド機器とハードウェアスイッチの関連付け状態を視認することが困難な状態において、ヒューマンエラーを防止できない。
【0013】
本発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、フィールド機器とハードウェアスイッチとの関連付け状態をオペレータが視認することが困難な状態において、ヒューマンエラーを防止できるプラント監視制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的の達成のため、本発明に係るプラント監視制御システムは以下のように構成される。
【0015】
本発明に係るプラント監視制御システムは、ハードウェアスイッチと、プログラマブルロジックコントローラと、HMIサブシステムとを備える。
【0016】
前記ハードウェアスイッチは、産業プラントを構成するフィールド機器を制御するための制御信号を出力する。このフィールド機器は、オペレータがハードウェアスイッチを操作している間だけ動作すべきアクチュエータである。
【0017】
前記プログラマブルロジックコントローラは、前記フィールド機器および前記ハードウェアスイッチに接続する。当該プログラマブルロジックコントローラは、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとの関連付け状態情報を管理する。当該プログラマブルロジックコントローラは、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとが関連付けられた関連付け状態である場合に、前記ハードウェアスイッチから出力された前記制御信号に基づき前記フィールド機器を制御する。
【0018】
前記HMIサブシステムは、前記プログラマブルロジックコントローラに接続する。前記HMIサブシステムは、第1ソフトウェアパーツと第2ソフトウェアパーツとをHMI画面に表示する。第1ソフトウェアパーツは、前記関連付け状態情報を画面に表示する上述の汎用操作パーツである。第2ソフトウェアパーツは前記HMI画面内において表示位置を自由に変更可能なウィンドウパーツである。
【0019】
また、当該プログラマブルロジックコントローラは、前記HMI画面上で前記第2ソフトウェアパーツが、前記第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、前記関連付け状態を解除する。前記関連付け状態が解除されることで、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとが関連付けられていない非関連付け状態になる。そのため、前記ハードウェアスイッチから出力された前記制御信号は、前記プログラマブルロジックコントローラから前記フィールド機器へ送信されない。
【0020】
好ましくは、前記プログラマブルロジックコントローラは、前記HMIサブシステムから、ヘルスチェック信号を定期的に受信している間、前記関連付け状態を維持する。前記プログラマブルロジックコントローラは、前記ヘルスチェック信号の定期的な受信が途絶えた場合に、前記関連付け状態を解除する。前記HMIサブシステムは、前記第2ソフトウェアパーツが前記第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、前記ヘルスチェック信号の送信を停止する。
【0021】
好ましくは、前記プログラマブルロジックコントローラは、前記HMIサブシステムとの通信が遮断された場合に、前記関連付け状態を解除する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、HMI画面上で第2ソフトウェアパーツが、フィールド機器とハードウェアスイッチとの関連付け状態情報を表示する第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、プログラマブルロジックコントローラは、関連付け状態を解除する。そのため、フィールド機器とハードウェアスイッチとの関連付け状態をオペレータが視認することが困難な状態において、ヒューマンエラーを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るプラント監視制御システムの構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るプラント監視制御システムの構成を説明するための図である。
【
図3】ハードウェアスイッチとフィールド機器とを関連付ける処理について説明するためのフローチャートである。
【
図4】ハードウェアスイッチ操作時の処理について説明するためのフローチャートである。
【
図5】ヘルスチェックによる関連付け解除処理について説明するためのフローチャートである。
【
図6】パーツの重なりによる関連付け解除処理について説明するためのフローチャートである。
【
図7】汎用操作パーツとウィンドウパーツとの重なりについて説明するための図である。
【
図8】HMIクライアント、HMIサーバー、PLCそれぞれのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
実施の形態1.
図1および
図2は、本発明の実施の形態1に係るプラント監視制御システムの構成を説明するための図である。
プラント監視制御システムは、監視装置1、制御ネットワークHUB4、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)サーバー5、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)6、I/O装置7、フィールドネットワークHUB8、ドライブ装置9、複数のフィールド機器10を備える。監視装置1は、HMIクライアント2、ハードウェアスイッチ3を備える。
【0026】
図1を参照して、各装置の接続関係について説明する。HMIクライアント2は、制御ネットワークHUB4を介して、HMIサーバー5に接続する。ハードウェアスイッチ3は、I/O装置7およびフィールドネットワークHUB8を介して、PLC6に接続する。HMIサーバー5は、制御ネットワークHUB4を介して、PLC6に接続する。ドライブ装置9は、フィールドネットワークHUB8を介して、PLC6に接続する。複数のフィールド機器10は、ドライブ装置9に接続する。
【0027】
図2に示すように、PLC6は、ハードウェアスイッチ3、HMIサブシステム30、複数のフィールド機器10に電気的に接続する。HMIサブシステム30は、HMIクライアント2とHMIサーバー5とを含む。
【0028】
図2を参照して、ハードウェアスイッチ3、HMIサブシステム30(HMIクライアント2、HMIサーバー5)、PLC6について説明する。特に、汎用操作パーツとフィールド機器10とハードウェアスイッチ3との関係について説明する。
【0029】
(ハードウェアスイッチ3)
ハードウェアスイッチ3は、オペレータに操作されると、産業プラントを構成するフィールド機器10を制御するための制御信号を出力する。フィールド機器10は、モーター、電磁弁などのアクチュエータである。制御信号は、I/O装置7およびフィールドネットワークHUB8を経由してPLC6に入力される。
【0030】
(HMIクライアント2)
HMIクライアント2は、HMI画面21をモニターに表示する。HMIクライアント2は、表示ソフトウェアとして例えばウェブブラウザ20を実行し、ウェブブラウザ20上にHMI画面21を表示する。
【0031】
HMI画面21には、汎用操作パーツ22と汎用操作パーツ23が配置される。汎用操作パーツ22は、選択される度に、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を変更するためのパーツである。また、汎用操作パーツ22は、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3との関連付け設定情報を表示する第1ソフトウェアパーツである。同様に、汎用操作パーツ23は、選択される度に、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を変更するためのパーツである。また、汎用操作パーツ23は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け設定情報を表示する第1ソフトウェアパーツである。関連付け設定情報は、フィールド機器10とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた「関連付け状態」であるか、フィールド機器10とハードウェアスイッチ3とが関連付けられていない「非関連付け状態」であるかを示す情報である。
【0032】
また、HMI画面21には、オペレータの操作により、HMI画面21内において表示位置を自由に変更可能なウィンドウパーツ24が配置される。ウィンドウパーツ24は、第2ソフトウェアパーツである。
【0033】
オペレータがHMI画面21上のパーツをマウスやタッチパネルなどの入力装置を用いて操作すると、HMIの操作信号はHMIサーバー5へ送信される。HMIの操作信号は、HMI画面21のパーツごとにユニークなアイテム名と、操作値とを含む。アイテム名は、たとえば当該パーツが配置されているHMI画面21の画面名称と、当該HMI画面21内のパーツに順に割り付けられる番号とを組み合わせて、HMIシステム内でユニークに定められる。
【0034】
オペレータが汎用操作パーツ22または23を操作すると、HMIの操作信号として関連付け変更信号がHMIサーバー5へ送信される。関連付け変更信号には、当該汎用操作パーツのアイテム名と操作値が含まれる。また、HMIクライアント2は、関連付け変更信号の応答として、HMIサーバー5からフィードバック信号を受信する。フィードバック信号には、上述の関連付け設定情報が含まれる。例えば、関連付け設定情報が、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態を示す情報である場合、HMIクライアント2は、フィールド機器A(10A)に関する汎用操作パーツ22をブリンクさせる。ブリンクすることでオペレータはフィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とが関連付け状態であることを認識できる。汎用操作パーツ23についても同様である。
【0035】
また、HMIクライアント2は、ウィンドウパーツ24が汎用操作パーツ22の少なくとも一部に重なった場合に、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態を解除するための関連付け解除信号をHMIサーバー5へ送信する。同様に、ウィンドウパーツ24が汎用操作パーツ23の少なくとも一部に重なった場合に、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態を解除するための関連付け解除信号をHMIサーバー5へ送信する。
【0036】
(HMIサーバー5)
HMIサーバー5は、HMIクライアント2のアイテム名とPLC6のPLCアドレスとを変換する変換テーブルを予め記憶している。HMIサーバー5は、HMIクライアント2から関連付け変更信号を受信すると、関連付け変更信号に含まれる汎用操作パーツ(22または23)のアイテム名に基づいて、変換テーブルからPLCアドレスを取得し、当該PLCアドレスを送信先として操作値をPLC6へ送信する。
【0037】
また、HMIサーバー5は、関連付け変更信号の応答として、PLC6からフィードバック信号を受信する。フィードバック信号には、上述の関連付け設定情報が含まれる。関連付け設定情報が、フィールド機器10(10Aまたは10B)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態を示す情報である場合、HMIサーバー5は、当該フィールド機器A(10Aまたは10B)に関するヘルスチェック信号のPLC6への定期的な送信を開始する。ヘルスチェック信号は、定期的に値が変化する信号である。ヘルスチェック信号として、例えば制御周期毎に数値をインクリメントするヘルシーカウンターや、制御周期毎に0と1を交互に変更するハートビートが用いられる。
【0038】
また、HMIサーバー5は、HMIクライアント2からフィールド機器10(10Aまたは10B)に関する関連付け解除信号を受信すると、当該フィールド機器10に関するヘルスチェック信号のPLC6への送信を停止する。
【0039】
(PLC6)
PLC6は、HMIサブシステム30およびハードウェアスイッチ3からの信号を、PLC6のプロセッサが定周期で実行しているPLCソフトウェアで演算する。
【0040】
PLC6は、フィールド機器10とハードウェアスイッチ3との関連付け状態情報を管理する。PLC6は、関連付け変更信号に対応するPLCアドレスに操作値が入力されると、対象フィールド機器の関連付け設定情報を変更する。例えば、対象フィールド機器をフィールド機器A(10A)とする。フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態である場合、PLC6は、関連付け状態を解除する。一方、フィールド機器10Aとハードウェアスイッチ3とが関連付けられていない非関連付け状態である場合、PLC6は、フィールド機器10Aとハードウェアスイッチ3とを関連付ける。
【0041】
また、PLC6がヘルスチェック信号を受信すると、この信号に対応するPLCアドレスのメモリー値が変化する。PLC6は、当該メモリー値を参照して演算を行う。PLC6は、HMIサブシステム30から、ヘルスチェック信号を定期的に受信している間、対象フィールド機器とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態を維持する。
【0042】
また、PLC6がハードウェアスイッチ3の制御信号を受信すると、この信号に対応するPLCアドレスのメモリー値が変化する。PLC6は、当該メモリー値を参照して演算を行う。PLC6は、対象フィールド機器とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態である場合に、ハードウェアスイッチ3から出力された制御信号に基づいてドライブ装置9を制御する。ドライブ装置9は、PLC6からの信号に基づいて、対象フィールド機器を制御する。一方、非関連付け状態である場合は、PLC6はドライブ装置9を制御しない。
【0043】
また、PLC6は、ヘルスチェック信号の定期的な受信が途絶えた場合に、対象フィールド機器とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を解除する。
【0044】
(フローチャート)
以下、
図3~
図7のフローチャートを参照して下記の処理について具体例を説明する。
(1)ハードウェアスイッチとフィールド機器とを関連付ける処理
(2)ハードウェアスイッチ操作時の処理
(3)ヘルスチェックによる関連付け解除処理
(4)パーツの重なりによる関連付け解除処理
(5)通信不良による関連付け解除処理
【0045】
(1)ハードウェアスイッチとフィールド機器とを関連付ける処理
図3は、ハードウェアスイッチ3とフィールド機器10とを関連付ける処理について説明するためのフローチャートである。一例として、汎用操作パーツ23を操作した場合について説明する。
【0046】
まず、ステップS100において、オペレータは、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3とを関連付けるための汎用操作パーツ23を押下する。汎用操作パーツ23が押下されると、HMIクライアント2からHMIサーバー5へ関連付け変更信号が送信される。関連付け変更信号には、汎用操作パーツ23のアイテム名と操作値が含まれる。
【0047】
ステップS110において、HMIサーバー5は、変換テーブルからアイテム名に対応するPLCアドレスを取得し、当該PLCアドレスを送信先として操作値をPLC6へ送信する。
【0048】
ステップS120において、PLC6は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態情報を確認し、関連付け状態か非関連付け状態かを判定する。現在、非関連付け状態である場合は、PLC6は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3とを関連付ける(ステップS130)。
【0049】
一方、現在、関連付け状態である場合は、PLC6は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付けを解除する(ステップS140)。PLC6は、ステップS130又はS140の処理結果である関連付け状態情報を記憶する。
【0050】
ステップS150において、PLC6は、関連付け状態情報を含むフィードバック信号をHMIサーバー5へ送信する。HMIサーバー5は、フィードバック信号を受信する。
【0051】
次にステップS160において、HMIサーバー5は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態情報が、関連付け状態か、非関連付け状態か、を判定する。
【0052】
関連付け状態である場合には、HMIサーバー5は、ヘルスチェック信号のPLC6への定期的な送信を開始する(ステップS170)。例えば、信号値は送信周期ごとにカウントアップされる。
【0053】
一方、非関連付け状態である場合には、HMIサーバー5は、ヘルスチェック信号の送信を停止する(S180)。
【0054】
ステップS190において、HMIサーバー5は、HMIクライアント2へフィードバック信号を送信する。HMIクライアント2は、フィードバック信号に含まれる関連付け状態情報が関連付け状態である場合、ステップS110で押下された汎用操作パーツ23をブリンクさせる。一方、非関連付け状態である場合、汎用操作パーツ23のブリンクを停止させる。
【0055】
以上、
図3の処理について汎用操作パーツ23を例に説明したが、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とを関連付けるための汎用操作パーツ22を操作した場合も同様に処理される。
【0056】
(2)ハードウェアスイッチ操作時の処理
図4は、ハードウェアスイッチ操作時の処理について説明するためのフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS200において、PLC6は、ハードウェアスイッチ3から制御信号を受信する。
【0058】
ステップS210において、PLC6は、制御信号に対応するPLCアドレスに記憶されたメモリー値を確認する。
【0059】
ステップS220において、PLC6は、関連付け状態情報を確認し、ハードウェアスイッチ3との関連付けられているフィールド機器10の有無を確認する。ハードウェアスイッチ3と関連付けられているフィールド機器10がない場合は、いずれのフィールド機器10も制御されることなく、ステップS200に戻り処理が継続される。
【0060】
一方、ハードウェアスイッチ3と関連付けられているフィールド機器10がある場合、PLC6は、制御信号に基づきドライブ装置9を介して、当該フィールド機器を制御する(ステップS230)。
【0061】
(3)ヘルスチェックによる関連付け解除処理
図5は、ヘルスチェックによる関連付け解除処理について説明するためのフローチャートである。
【0062】
まず、ステップS300において、PLC6は、フィールド機器A(10A)およびフィールド機器B(10B)それぞれのヘルスチェック信号に対応するPLCアドレスに記憶されたメモリー値を定期的に確認する。
【0063】
ステップS310において、PLC6は、一定時間内にヘルスチェック信号のメモリー値が変更されている場合は、ステップS300に戻り処理を継続する。
【0064】
一方、一定時間ヘルシーカウンターの値に変化がない場合は、PLC6は、当該フィールド機器とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を強制解除する(ステップS320)。
【0065】
(4)パーツの重なりによる関連付け解除処理
前記プログラマブルロジックコントローラは、前記画面上で前記第2ソフトウェアパーツが、前記第1ソフトウェアパーツの少なくとも一部に重なった場合に、前記フィールド機器と前記ハードウェアスイッチとが関連付けられた前記状態を解除する。
【0066】
図6は、汎用操作パーツがウィンドウパーツにより隠れた場合の関連付け解除処理について説明するためのフローチャートである。一例として、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3とが関連付けられた関連付け状態である場合について説明する。
【0067】
まず、ステップS400において、HMIクライアント2は、例えばウェブブラウザ20上で動作するスクリプトによって、パーツの座標やサイズが変更されるたびにパーツの位置とサイズを検出する。
【0068】
ステップS410において、HMIクライアント2は、ウィンドウパーツ24が、汎用操作パーツ23の少なくとも一部に重なっているか否かを判定する。
図7を参照してパーツの重なりについて説明する。
図7の(A)に示すパーツC(25)が押下されると、(B)に示すようにウィンドウパーツ24が表示される。オペレータの操作によりウィンドウパーツ24の位置が変更されて、
図7の(C)に示すように汎用操作パーツ23の一部に重なる場合がある。ステップS410では、各パーツの座標およびサイズからパーツの重なりの有無が判定される。パーツの重なりがない場合は、
図6のステップS400に戻り、いずれかのパーツに座標変更があった時に処理が再開される。
【0069】
一方、パーツの重なりがある場合は、HMIクライアント2は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を解除するための関連付け解除信号をHMIサーバー5へ出力する。HMIサーバー5は、フィールド機器B(10B)に関するヘルスチェック信号の送信を停止する(ステップS420)。
【0070】
ステップS430において、PLC6は、フィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3との関連付け状態を強制解除する。
【0071】
以上、
図6の処理についてフィールド機器B(10B)とハードウェアスイッチ3とが関連付け状態である場合を例に説明したが、フィールド機器A(10A)とハードウェアスイッチ3とが関連付け状態である場合も同様に処理される。
【0072】
(5)通信不良による関連付け解除処理
HMIサーバー5とPLC6との間で通信が遮断された場合、PLC6はヘルスチェック信号を受信できない。その結果、上述した
図5のワークフローと同様の処理が実行されることになる。すなわち、PLC6は、ヘルスチェック信号の定期的な受信が途絶えた場合に、ハードウェアスイッチ3とすべてのフィールド機器10との関連付けを解除する。これにより、HMIサブシステム30とPLC6の通信状態が悪化したことによる誤動作を防止できる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るプラント監視制御システムによれば、HMI画面21上でウィンドウパーツ24が、フィールド機器10とハードウェアスイッチ3との関連付け状態情報を表示する汎用操作パーツの少なくとも一部に重なったことを検出できる。そして、パーツの重なりが検出された場合に、ヘルスチェック信号の送信が停止されることで、HMIサーバー5とPLC6間の通信が遮断された時と同様に、関連付け状態が解除される。そのため、フィールド機器10とハードウェアスイッチ3との関連付け状態をオペレータが視認することが困難な状態において、ヒューマンエラーを防止できる。
【0074】
(変形例)
ところで、上述した実施の形態1のシステムにおいては、HMIサブシステム30は、HMIクライアント2用のコンピュータ、およびHMIサーバー5用のコンピュータの2台で構成されている。しかし、HMIサブシステム30を構成するコンピュータの台数はこれに限定されるものではなく3台以上であってもよい。また、HMIサブシステム30は、HMIクライアント2の機能およびHMIサーバー5の機能を備える1台のコンピュータで構成されてもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態1のシステムにおいては、1つのハードウェアスイッチ3が、フィールド機器AおよびBの両方に関連付けられる状態を許容している。すなわち、フィールド機器Aおよびフィールド機器Bを連動して制御できるようにPLCソフトウェアは設計されている。しかし、PLCソフトウェアの設計はこれに限定されるものではない。フィールド機器Aとフィールド機器Bのいずれか一方にのみハードウェアスイッチ3を関連付けることとしてもよい。すなわち、一方のフィールド機器(例えばA)の関連付けを強制解除して、他方のフィールド機器(例えばB)を関連付けることとしてもよい。
【0076】
(ハードウェア構成例)
図8は、HMIクライアント2、HMIサーバー5、PLC6それぞれのハードウェア構成例を示すブロック図である。各装置は、少なくともプロセッサ71、メモリー72、ネットワークインタフェース73を備える。加えて、HMIクライアント2は、入出力インタフェース74、モニター75を備える。
【0077】
メモリー72は、ROM、RAMなどの主記憶装置、およびHDD、SSDなどの補助記憶装置を含む。ネットワークインタフェース73は、外部と信号を送受信可能なデバイスである。入出力インタフェース74は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイスを含む。各装置は、プロセッサ71がメモリー72に記憶された各種プログラムを実行することにより、上述した処理を実現する処理回路として機能する。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 監視装置
2 HMIクライアント
3 ハードウェアスイッチ
4 制御ネットワークHUB
5 HMIサーバー
6 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
7 I/O装置
8 フィールドネットワークHUB
9 ドライブ装置
10、10A、10B フィールド機器
20 ウェブブラウザ
21 HMI画面
22、23 汎用操作パーツ
24 ウィンドウパーツ
30 HMIサブシステム
71 プロセッサ
72 メモリー
73 ネットワークインタフェース
74 入出力インタフェース
75 モニター