(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】接着剤樹脂組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230711BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20230711BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20230711BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/62 016
C08G18/72
B32B27/00 D
B32B27/30 A
B32B27/26
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2023026828
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2022130011
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】品川 由衣
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-102711(JP,A)
【文献】特開2021-80391(JP,A)
【文献】特開2017-171735(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1850877(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101633718(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)、ポリオール(B)(ただし前記アクリルポリオール(A)を除く)、およびジイソシアネート(C)に由来する残基を有する櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と、液状エポキシ樹脂(E)、及び硬化剤(F)とを含有する接着剤樹脂組成物。
【請求項2】
前記液状エポキシ樹脂(E)が分子内にエポキシ基を2つ以上有することを特徴とする、請求項1に記載の接着剤樹脂組成物。
【請求項3】
櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)100質量%中、前記アクリルポリオール(A)を5~80質量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリルポリオール(A)100質量%中、分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)を5質量%以上100質量%未満含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤樹脂組成物。
【請求項5】
前記櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と液状エポキシ樹脂(E)の合計100質量%中、液状エポキシ樹脂(E)を20~80質量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1~5いずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物からなる硬化物。
【請求項7】
基材上に、請求項6に記載の硬化物からなる層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤樹脂組成物とその硬化物、及び当該硬化物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機等の分野において、燃費向上のために車体軽量化が進められており、アルミニウムやマグネシウム等の軽金属や繊維強化プラスチック材料(以下、FRPと略する)等の軽量化素材の使用比率が高まっている。また、その組み立てにおいても、溶接による接合に替えて、接着剤の利用が増加している。中でも、2液硬化型エポキシ接着剤は、各種部材に対する接着力や耐久性が高く、又混合後の粘度上昇が緩やかであり作業性にも優れることから、構造用接合剤として広範囲に使用されている。
【0003】
しかしながら、例えば、アルミニウム等の金属とFRPのような線膨張係数が異なる材料とを接着する場合、製造過程又は使用温度環境における温度変化によって生じる材料間の膨張率差により接着剤層に高い応力がかかり、従来のエポキシ接着剤はその硬さと脆さから、衝撃により簡単に破壊してしまうという課題がある。
【0004】
この様な課題に対し、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するため、例えば特許文献1では、エポキシ樹脂を主成分とする硬化性樹脂組成物に、ゴム状ポリマー微粒子を分散させることにより柔軟性を付与している。また、特許文献2~4では高分子エポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂を比較的多量に使用して、前記課題を解決している。
【0005】
しかしながら、エポキシ樹脂組成物の柔軟性を向上させるために、ゴム状ポリマー微粒子や高分子エポキシ樹脂成分を増加させると、高粘度化により作業性が低下するため、添加量が制限されることや、溶媒の添加が必要になる。すなわち、柔軟成分を添加する方法では十分な柔軟性が付与できず、依然として硬脆く衝撃に弱くなることや、溶媒添加による環境負荷がかかることから改良が求められている。また、エポキシ樹脂を変性することで柔軟性骨格を導入する場合には、他材料との相溶性が悪化し、硬化温度によって物性が大きく変わることや、取り扱いが困難になることが欠点として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-182248号公報
【文献】特開2015-063595号公報
【文献】特開2017-002130号公報
【文献】特開2018-002766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い柔軟性、耐衝撃性及び接着力を有し、また硬化温度による物性の差異が小さい、自動車、建材、船舶、航空機等の分野に特に適した、無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)、ポリオール(B)(ただし前記アクリルポリオール(A)を除く)、およびジイソシアネート(C)に由来する残基を有する櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と、液状エポキシ樹脂(E)、及び硬化剤(F)とを含有する接着剤樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明は、液状エポキシ樹脂(E)が分子内にエポキシ基を2つ以上有することを特徴とする、前記接着剤樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)100質量%中、前記アクリルポリオール(A)を5~80質量%含むことを特徴とする、前記接着剤樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明は、アクリルポリオール(A)100質量%中、分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)を5質量%以上100質量%未満含むことを特徴とする、前記接着剤樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と液状エポキシ樹脂(E)の合計100質量%中、液状エポキシ樹脂(E)を20~80質量%含むことを特徴とする、前記接着剤樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、前記接着剤樹脂組成物からなる硬化物に関する。
【0015】
本発明は、基材上に、前記硬化物からなる層を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高い柔軟性、耐衝撃性及び接着力を有し、また硬化温度による物性の差異が小さい、自動車、建材、船舶、航空機等の分野に特に適した無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
本明細書において、分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)をアクリルポリオール(A)、ポリオール(B)(ただしアクリルポリオール(A)を除く)をポリオール(B)と略記することがある。
【0018】
本発明の接着剤樹脂組成物は、分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)、ポリオール(B)、およびジイソシアネート(C)に由来する残基を有する櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と、液状エポキシ樹脂(E)、及び硬化剤(F)とを含有する。
分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)をウレタン樹脂に櫛型に組み込むことで、エポキシ基の架橋が柔軟なウレタン主鎖から離れて形成されるため、直鎖型のブロック構造と比較して、強度を維持したまま優れた柔軟性を発揮する。また、ゴム粒子と比較して、低分子量で柔軟な骨格であるため、粘度が低く作業性を向上できる。更に、アクリル樹脂とウレタン樹脂の複合により他材料との相溶性が良好になることで、硬化温度の違いによる物性の差異を小さくすることできる。
したがって、本発明の接着剤樹脂組成物は自動車、建材、船舶、航空機等の分野で、構造用接着剤として好適に用いられる。また、本発明の接着剤樹脂組成物は、液状の無溶媒型接着剤として用いることができ、安全性や環境対応の観点からも優れるものである。
【0019】
≪櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)≫
本発明における櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)は、アクリルポリオール(A)からなる(メタ)アクリルユニットを側鎖に有し、ポリオール(B)と、ジイソシアネート(C)を含むウレタンユニットを主鎖とする櫛型構造であればよく、その製造方法は制限されないが、好ましくは下記の方法で製造することができる。
工程1:分子内に2つの水酸基とメルカプト基を有する連鎖移動剤を起点とした、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)と、その他エチレン性不飽和単量体(a-2)の重合により、分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)を合成する。
工程2:アクリルポリオール(A)中の水酸基およびポリオール(B)中の水酸基と、ジイソシアネート(C)中のイソシアネート基とを反応させて、(メタ)アクリルユニットとウレタンユニットを櫛型に連結させる。
【0020】
工程1、2の反応は、いずれも溶媒を用いて行ってもよく、また溶媒を用いずに行ってもよい。また、溶媒の一部あるいは全部を、液状エポキシ樹脂(E)に置換してもよい。この場合において、液状エポキシ樹脂(E)は反応性希釈剤として機能する。
工程1、2において溶媒を用いる場合は、反応の途中段階又は反応終了後に、減圧下又は常圧下で溶媒を除去することで無溶媒型の櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)を得ることができる。
【0021】
本発明における反応性希釈剤とは、反応系内の物質濃度や、反応液の粘度を適切な範囲に希釈するための物質であり、接着剤樹脂組成物を製造し、硬化物へと硬化させる過程において、蒸発せずに硬化反応に関与する物質と定義される。一方、溶媒とは、反応系内の物質濃度や、反応液の粘度を適切な範囲に希釈する機能を担うものの、接着剤樹脂組成物を製造し、硬化物へと硬化させるいずれかの過程において留去や乾燥によって蒸発し、除去される物質と定義される。
【0022】
工程2の反応は、公知のウレタン化反応を用いて行い、反応性を調整する目的で触媒を用いてもよい。
【0023】
<触媒>
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒等が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としては、テトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。触媒の使用量は、アクリルポリオール(A)とポリオール(B)の合計質量を基準として、0.01~0.05質量%の範囲が好ましい。
【0024】
櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の数平均分子量は、特に制限されないが、5,000~100,000であると好ましい。5,000以上であると凝集力が良好になるため接着力に優れ、100,000以下であると低粘度であるため、無溶媒下での粘度の調整が容易である。
【0025】
<アクリルポリオール(A)>
【0026】
アクリルポリオール(A)は、分子内にエポキシ基を含有し、ポリオール(B)と、ジイソシアネート(C)からなるウレタンユニットと櫛型に連結するために片末端に水酸基を有する。
【0027】
アクリルポリオール(A)を製造する方法は、片末端に水酸基を導入することができれば特に制限されず、例えば水酸基を有するフリーラジカル重合開始剤、リビングラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を用いた公知の重合方法を用いることができる。
【0028】
アクリルポリオール(A)を製造する方法は、公知の方法を用いることができるが、分子内に2つの水酸基と1つのメルカプト基を有する連鎖移動剤の存在下、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)を重合する方法が簡便であり好ましい。また相溶性や凝集力の調整を目的として、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)以外に、その他エチレン性不飽和単量体(a-2)を含んでも良い。
【0029】
<分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)>
分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)としては、以下の例には限定されないが、分子内に1つの重合性不飽和二重結合と1つ以上のエポキシ基とを有する化合物を使用することができ、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。
【0030】
<その他エチレン性不飽和単量体(a-2)>
その他エチレン性不飽和単量体(a-2)としては、以下の例には限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキルエチレン性不飽和単量体類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキルエチレン性不飽和単量体類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有するエチレン性不飽和単量体類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;
3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等のオキセタニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;
スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、又は(メタ)アクリル酸アリル等のビニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体類;
アクロレイン、メタクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ホルミルスチロール等のケト基を有するエチレン性不飽和単量体類等が挙げられる。
【0031】
アクリルポリオール(A)を構成するエチレン性不飽和単量体の合計100質量%中、分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)の含有率は5質量%以上100質量%未満が好ましい。
なお、分子内に2つの水酸基と1つのメルカプト基を有する連鎖移動剤の存在下、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)を含むエチレン性不飽和単量体を重合する方法でアクリルポリオール(A)を製造する場合は、5質量%以上100質量%未満が好ましく、10質量%以上70質量%以下であるとより好ましい。分子内にエポキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a-1)の含有率が5質量%以上100質量%未満であると、硬化により液状エポキシ樹脂(E)と硬化剤(F)からなる強固な架橋構造に十分に組み込まれるため、接着力と柔軟性に優れた架橋構造を形成できる。
【0032】
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤としては、分子内にイソシアネート基と反応し得る官能基とメルカプト基とを有する化合物であれば特に限定されないが、分子内に2つの水酸基と1つのメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基が連鎖移動剤となることで、片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)を効率的に合成できる。
【0033】
分子内に2つの水酸基と1つのメルカプト基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1-メルカプト-1,1-メタンジオール、1-メルカプト-1,1-エタンジオール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(チオグリセリンあるいは1-チオグリセロール)、2-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-メルカプト-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メルカプト-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2,2-プロパンジオール、2-メルカプトエチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、又は2-メルカプトエチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好であり合成が簡便であるため、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールが好ましい。
【0034】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができ、アゾ系化合物としては、以下の例には限定されないが、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられ、有機過酸化物としては、以下の例には限定されないが、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0035】
重合開始剤は、アクリルポリオール(A)の全質量に対して、0.001~15質量%の範囲で使用することが好ましい。0.001~15質量%の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するためより好ましい。
【0036】
櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)は、その全質量(100質量%)中、アクリルポリオール(A)を5~80質量%含むことが好ましく、15~60質量%であるとより好ましい。5~80質量%含むと、柔軟性に優れたウレタン主鎖から離れた部位で十分な架橋構造を形成できるため、柔軟性と破断強度に優れ、また、相溶性が良好となるため、硬化時の相分離を抑制することができる。
【0037】
アクリルポリオール(A)の数平均分子量は特に限定されないが、1,000~10,000が好ましい。
【0038】
<ポリオール(B)>
ポリオール(B)はアクリルポリオール(A)を除く分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、代表的なものとしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物由系ポリオール等が挙げられる。
【0039】
更に前記分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類又はビスフェノール類のような少なくとも2個の活性水酸基を有する化合物を出発原料として、これに酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン、もしくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0040】
前記低分子ポリオールとしては、例えば、2官能の低分子ポリオール又は3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0041】
2官能の低分子ポリオールとしては、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0042】
3官能以上の低分子ポリオールとしては、特に制限されず、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-sec-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトール等が挙げられる。
【0043】
脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパンが挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタン-4,4-ジアミンが挙げられる。アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン及びジエタノールアミンが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール等のグリコール類等が挙げられる。また、ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいは、これらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0045】
ポリエステルポリオールとしては、例えば上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0046】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、及びそれらの無水物等が挙げられる。
また、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0047】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。
また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0048】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0049】
植物油系ポリオールとしては、植物由来のひまし油、ダイマー酸、もしくは大豆油を原料としたポリオール等が挙げられる。
【0050】
これらの中でもポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、柔軟性に優れるためポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等がより好ましい。
【0051】
上記ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物油系ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~5,000であり、700~3,500であるとより好ましい。数平均分子量が500~5,000であると、得られる硬化物の接着力、柔軟性により優れるため好ましい。
【0052】
さらに、ポリオール(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として上述の低分子ポリオールを併用してもよい。
【0053】
<ジイソシアネート(C)>
ウレタンユニットを構成するジイソシアネート(C)は、分子内にイソシアネート基を2つ有する化合物であればよく、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環式のジイソシアネートが挙げられる。
【0054】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
≪液状エポキシ樹脂(E)≫
本発明における液状エポキシ樹脂(E)は、硬化時の架橋構造に組み込まれることで、優れた接着力を発現する。液状エポキシ樹脂(E)を、前記櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の製造工程1及び2における反応性希釈剤として用いると、無溶媒下での合成が可能となる。また、接着剤樹脂組成物製造後は反応成分となる。
【0058】
液状エポキシ樹脂(E)としては、常温で液体の化合物であれば、特に限定されないが、分子内にエポキシ基を2つ以上有することが好ましい。また、エポキシ当量が200g/eq以下であることが好ましく、150~200g/eqがより好ましい。液状エポキシ樹脂(E)のエポキシ当量は、JIS K-7236に準拠して測定することにより求めることができる。
【0059】
液状エポキシ樹脂(E)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易であり、粘度と接着力が良好であることからビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0060】
本発明の接着剤樹脂組成物は、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と液状エポキシ樹脂(E)の合計100質量%中、液状エポキシ樹脂(E)を20~80質量%含むことが好ましく、30~70質量%がより好ましい。液状エポキシ樹脂(E)を20質量%以上含むと、接着剤樹脂組成物の硬化物が強固な架橋構造を形成することで破断強度が良好となり、また高凝集力化に伴う高接着性を発現することができる。また、液状エポキシ樹脂(E)が低粘度であるため粘度の調整が容易である。一方、液状エポキシ樹脂(E)の含有量が80質量%以下であると、接着剤樹脂組成物に占める櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の存在割合が高まり、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)由来の高柔軟性を発現できる。
【0061】
≪硬化剤(F)≫
硬化剤(F)は特に限定されず、エポキシ樹脂を硬化させる公知の硬化剤を使用することができる。例えば、アミン化合物、アミド化合物、ウレア化合物、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられる。硬化速度やアミン価の調整のため、2種以上を併用しても良い。
【0062】
アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミンポリエチレンイミンのダイマー酸エステル等の脂肪族アミン類;
イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式アミン類;
テトラクロロ-p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノアニゾール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、2,4-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-アミノフェノール、m-アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α-(m-アミノフェニル)エチルアミン、α-(p-アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン類;
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール誘導体類;
三フッ化ホウ素-モノエチルアミン,三フッ化ホウ素-ピペリジン、三フッ化ホウ素-トリエチルアミン、三フッ化ホウ素-アニリン錯体等の三フッ化ホウ素-アミン錯体類;
ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン、2,3-グアニルウレア、ベンゾイルジシアンジアミド、2,6-キシレニルビグアニド、フェニルビグアニド等のグアニジン誘導体類;
トリエチレングリコ-ルジアミン、テトラエチレングリコ-ルジアミン、ジエチレングリコ-ルビス(プロピルアミン)、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレングリコール)トリアミン、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)トリアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)ジアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)トリアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)トリアミン、等のポリエーテルポリアミン類;
アミン変性ポリプロピレン、アミン変性ポリエチレン、アミン変性ポリブタジエン、アミン変性ブタジエンアクリロニトリル共重合体等のアミノ基を有するポリオレフィン化合物類等を挙げることができる。
【0063】
アミド化合物としては、リノレン酸やオレイン酸の2量体(ダイマー酸)とジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのポリアミンとを反応させて成る、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミン等が挙げられる。
【0064】
ウレア化合物としては、分子構造中にアミノ基とウレア基を有する構造であれば特に限定されないが、例えば、上述のアミン化合物とジイソシアネートまたはイソシアネート基末端プレポリマーとをアミノ基過剰下で反応させることで得ることができる。イソシアネート基末端プレポリマーは、例えば上述のポリオールとジイソシアネートとをポリオールの水酸基に対してイソシアネート基過剰下で反応させることで得ることができる。
【0065】
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0066】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの中でも、可使時間と硬化速度の調整が容易であることから、アミン化合物やアミド化合物、ウレア化合物が好ましい。アミン化合物としては、接着力の点でポリエーテルポリアミン類が好ましく、ポリエーテルポリアミン類と、ウレア化合物またはアミノ基を有するポリオレフィン化合物とを併用すると、耐衝撃性に優れるため更に好ましい。硬化剤(F)のアミン価は20~800mgKOH/gが好ましく、180~600mgKOH/gであるとより好ましい。アミン価が20~800mgKOH/gの範囲にあると十分に硬化反応が進行し、良好な架橋密度を形成するため、優れた接着力及び柔軟性を発現できる。なお、アミン価は、JIS K-7237に準拠して測定することにより求めることができる。
【0068】
接着剤樹脂組成物に含まれる、全てのエポキシ基の合計のモル数と、エポキシ基との反応に関与する硬化剤(F)中の活性水素基の合計のモル数の比(エポキシ基/硬化剤中の活性水素基)は、0.5~2.0の範囲が好ましく、0.6~1.5であるとより好ましい。0.5~2.0の範囲であると未反応の官能基が残らず、良好な架橋密度を形成することで優れた接着力及び柔軟性を発現できる。
【0069】
≪接着剤樹脂組成物≫
本発明における、接着剤樹脂組成物は、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と、液状エポキシ樹脂(E)、及び硬化剤(F)とを公知の方法により混合することで得られる。これらの他に、硬化促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を配合して使用してもよい。このような添加剤は、好ましくは以下の化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0070】
硬化促進剤としては、3級アミン及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、尿素系化合物、リン化合物、有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの金属塩、フェノール類やアルコール類等の水酸基を有する化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0071】
硬化促進剤の添加量は、接着剤樹脂組成物中の櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の全質量に対し、0.01~10質量%含むことが好ましい。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の合計質量を基準として、0.05~10質量%が好ましい。
【0073】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリ
エステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
【0074】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等、公知のものが挙げられる。
【0075】
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、接着剤樹脂組成物を硬化したものであり、上記櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)、液状エポキシ樹脂(E)、硬化剤(F)、及びその他の成分を公知の方法で混合し、20~200℃の条件で硬化させることで得ることができる。
≪積層体≫
本発明の積層体は、基材上に上記硬化物からなる層を有するものである。積層体は、公知の積層方法を用いて形成することができる。例えば、基材の一方の面に接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成し、次いで、硬化処理前の接着剤層に他の基材を重ね、20~200℃の条件で接着剤層を硬化させることで、基材と接着剤樹脂組成物からなる硬化物の層を有する積層体を得ることができる。
【0076】
積層体に用いられる基材は特に限定されない。好適な基材としては、例えば、ステンレス等の金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレート及びポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0077】
本発明の接着剤樹脂組成物は、多種の基材間の接着に用いることができる。接着される基材は、同一であってもよいし異なっていてもよい。接着剤樹脂組成物の膜厚は0.1μm~300mmであることが望ましい。
【0078】
本発明の接着剤樹脂組成物は、優れた柔軟性及び接着力を有しており、該接着剤樹脂組成物を用いた積層体は、自動車、建材、船舶、航空機等の輸送機器の構造部材(パネル部品、骨格部品、足回り部品等)として有用である。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0080】
<数平均分子量>
アクリルポリオール(A)およびウレタン・アクリル複合樹脂(D)の数平均分子量の算出は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、標準ポリスチレンによる換算値として求めた。測定は、GPC装置としてGPC-8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6mL/分、注入量10μL、カラム温度40℃の条件で行った。また、ウレア化合物およびポリオレフィン化合物の数平均分子量の算出は、同様にACQUITY UPLC(Waters社製)、溶離液として3mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6mL/分、注入量10μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0081】
本明細書における化合物の略称を以下に示す。
<分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)>
・GMA:グリシジルメタクリレート
<その他エチレン性不飽和単量体(a-2)>
・BMA:n-ブチルメタクリレート
・MMA:メチル(メタ)アクリレート
<ポリオール(B)>
・P-2000:2官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量2,000、ADEKA社製
・C-1090:2官能ポリカーボネートポリオール、数平均分子量1,000、クラレ社製
<ジイソシアネート(C)>
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
<液状エポキシ樹脂(E)>
・jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq、三菱ケミカル社製
・EX-141:フェニルグリシジルエーテル、エポキシ当量151g/eq、ナガセケムテックス社製
<硬化剤(F)>
・D-400:ポリオキシプロピレンジアミン、重量平均分子量430、アミン価520mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・EH-4024W:ポリアミドアミン樹脂、アミン価200mgKOH/g、ADEKA社製
・D-2000:ポリオキシプロピレンジアミン、重量平均分子量2000、アミン価56.1mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・Krasol LBH-P3000:末端水酸基変性液状ポリブタジエン、重量平均分子量3000、CRAYVALLEY社製
【0082】
(製造例1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、まずメルカプト基を有する連鎖移動剤として、1-チオグリセロール1.15部、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体(a-1)としてグリシジルメタクリレート1.6部、その他エチレン性不飽和単量体(a-2)としてn-ブチルメタクリレート29.0部、メチルエチルケトンをエチレン性不飽和単量体の全質量に対して50%加え、窒素雰囲気下で75℃に昇温し、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2’4-ジメチルバレロニトリル)を連鎖移動剤とエチレン性不飽和単量体の合計質量に対して、0.7%を7回に分割して1時間毎に加え、重合開始剤の添加後更に2時間反応させてアクリルポリオール(A-1)を得た。続いて、ポリオール(B)として、P-2000を5.1部、ジイソシアネート(C)としてイソホロンジイソシアネートを2.9部、触媒としてブチル錫ジラウレートをアクリルポリオール(A-1)とポリオール(B)とジイソシアネート(C)の全質量に対して0.01%仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で4時間半させ、液状エポキシ樹脂(E)として、jER828を60部加え均一に攪拌した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去して、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D-1)と液状エポキシ樹脂(E―1)とからなる組成物(DE-1)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたアクリルポリオール(A-1)と櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D-1)の数平均分子量、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D-1)中のアクリル部位の割合(%)、アクリルポリオール(A-1)中のエポキシ基を有する単量体の割合(%)、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D-1)と液状エポキシ樹脂(E―1)の全質量に対する液状エポキシ樹脂(E-1)の割合(%)は表1の通りである。
【0083】
(製造例2~26)
表1~3に示す化合物、及び配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、製造例2~26の、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と液状エポキシ樹脂(E)とからなる組成物(DE―2~26)を得た。得られたアクリルポリオール(A)と櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)の数平均分子量、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)中のアクリル部位の割合(%)、アクリルポリオール(A)中のエポキシ基を有する単量体の割合(%)、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と液状エポキシ樹脂(E)の全質量に対する液状エポキシ樹脂(E)の割合(%)は表1~3の通りである。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
(比較製造例1)
表4に示す化合物、及び配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂と液状エポキシ樹脂とからなる組成物(U-1)を得た。得られたアクリルポリオールと櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂の数平均分子量、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂中のアクリル部位の割合(%)、アクリルポリオール中のエポキシ基を有する単量体の割合(%)、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂と液状エポキシ樹脂の全質量に対する液状エポキシ樹脂の割合(%)は表3の通りである。
【0088】
(比較製造例2)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、まずメルカプト基を有する連鎖移動剤として、1-チオグリセロール1.4部、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体としてグリシジルメタクリレート4.0部、その他エチレン性不飽和単量体としてn-ブチルメタクリレート34.3部、メチルエチルケトンを連鎖移動剤とエチレン性不飽和単量体の全質量に対して50%加え、窒素雰囲気下で75℃に昇温し、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2’4-ジメチルバレロニトリル)をエチレン性不飽和単量体の全質量に対して0.7%を1時間毎に7回分割して加え、重合開始剤の添加後更に2時間反応させ、アクリルポリオールを得た。続いて、液状エポキシ樹脂として、jER828を60部加え均一に攪拌した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去して、アクリルポリオールと液状エポキシ樹脂とからなる組成物(U-2)を得た。得られたアクリルポリオールの数平均分子量、アクリル樹脂中のアクリルポリオールの割合(%)、アクリルポリオール中のエポキシ基を有する単量体の割合(%)、アクリルポリオールと液状エポキシ樹脂の全質量に対する液状エポキシ樹脂の割合(%)は表3の通りである。
【0089】
(比較製造例3)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、まずポリオールとして、P-2000を36.8部、ジイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを3.2部、触媒としてブチル錫ジラウレートをとポリオールとジイソシアネートの全質量に対して0.01%、メチルエチルケトンを単量体の全質量に対して50%仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で4時間半させ、液状エポキシ樹脂として、jER828を60部加え均一に攪拌した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去して、ウレタン樹脂と液状エポキシ樹脂とからなる組成物(U-3)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたウレタン樹脂の数平均分子量、ウレタン樹脂と液状エポキシ樹脂の全質量に対する液状エポキシ樹脂の割合(%)は表3の通りである。
【0090】
(比較製造例4)
表3記載の液状エポキシ樹脂のみからなる組成物を、組成物(U-4)とした。
【0091】
(比較製造例5)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、まずメルカプト基を有する連鎖移動剤として、1-チオグリセロール0.7部、分子内にエポキシ基を1つ以上含有するエチレン性不飽和単量体としてグリシジルメタクリレート2.0部、その他エチレン性不飽和単量体としてn-ブチルメタクリレート17.1部、メチルエチルケトンを単量体の全質量に対して50%加え、窒素雰囲気下で75℃に昇温し、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2’4-ジメチルバレロニトリル)を連鎖移動剤とエチレン性不飽和単量体の全質量に対して0.7%1時間毎に7回分割して加え、重合開始剤の添加後更に2時間反応させ、アクリルポリオールを得た。続いて、窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた先と異なる反応容器に、ポリオールとして、P-2000を18.4部、ジイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを1.6部、触媒としてブチル錫ジラウレートをとポリオールとジイソシアネートの全質量に対して0.01%、メチルエチルケトンを単量体の全質量に対して50%仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で4時間半させウレタン樹脂を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。先のアクリルポリオールとウレタン樹脂を混合し、液状エポキシ樹脂として、jER828を60部加え均一に攪拌した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去して、アクリルポリオールとウレタン樹脂と液状エポキシ樹脂の混合物(U-5)を得た。得られたアクリルポリオールとウレタン樹脂の数平均分子量、アクリルポリオール中のエポキシ基を有する単量体の割合(%)、アクリルポリオールとウレタン樹脂と液状エポキシ樹脂の全質量に対する液状エポキシ樹脂の割合(%)は表3の通りである。
【0092】
(比較製造例6)
比較製造例6は、特開2017-2130号公報に記載のポリウレタン変性エポキシ樹脂の製造方法に基づいて、以下の通りに合成した。
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリカプロラクトンジオール[株式会社ダイセル製「プラクセル230」重量平均分子量(Mw)3,000]87質量部、イソホロンジイソシアネート13質量部を混合し、触媒としてジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU-820」)0.1質量部を添加し、70℃で3時間反応させて、イソシアネート基含有ウレタン樹脂を得た。イソシアネート基含有ウレタン樹脂のイソシアネート基含有量は2.4質量%であった。続いて、窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた別の反応容器に、イソシアネート基含有ウレタン樹脂30質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON850」エポキシ当量188g/eq、水酸基価20mgKOH/g)70質量部を混合、70℃まで昇温して、ポリウレタン変性エポキシ樹脂(U-6)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたポリウレタン変性エポキシ樹脂(U-6)のエポキシ当量は255g/eqであった。
【0093】
【0094】
<硬化剤の製造例>
(製造例I)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、D-400を15.8部、D-2000を73.4部、イソプロピルアルコールを208部仕込み、窒素雰囲気下40℃で均一に攪拌しながら、イソホロンジイソシアネートを10.9部、酢酸エチル35.2部からなる混合溶液を30分かけて滴下した後、1時間攪拌反応させて、ウレア化合物溶液を得た。得られたウレア化合物溶液を減圧条件下で脱溶剤し、ウレア化合物(UR-1)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたウレア化合物(UR-1)の数平均分子量は3100、アミン価は27.4mgKOH/gであった。
【0095】
(製造例II)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた滴下容器に、P-2000を46.6部、C-1090を22.7部、イソホロンジイソシアネートを20.2部、触媒としてブチル錫ジラウレートをポリオールとジイソシアネートの全質量に対して0.01%を仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で4時間半させイソシアネート基末端プレポリマーを合成した後、酢酸エチルを51.1部加え、イソシアネート基末端プレポリマー溶液とした。続いて、ヘキサメチレンジアミンを10.5部、イソプロピルアルコールを48.9部仕込み、窒素雰囲気下40℃で均一に攪拌しながら、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を30分かけて滴下した後、1時間攪拌反応させて、ウレア化合物溶液を得た。得られたウレア化合物溶液を減圧条件下で脱溶剤し、ウレア化合物(UR-2)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたウレア化合物(UR-2)の数平均分子量は3900、アミン価は50.9mgKOH/gであった。
【0096】
(製造例III)
アミノ基を有するポリオレフィンは、古くから知られるガブリエル反応に基づいて、以下の通り合成した。窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、KrasolLBH-P3000を77.3部、塩化パラトルエンスルホニルを14.9部、ピリジンを7.9部、クロロホルムを100部仕込み、窒素雰囲気下室温で6時間攪拌反応させた。反応後、1Mの塩酸水溶液を200mL加えて酸性にした後、クロロホルムで抽出し、有機層を分離、乾燥することでトシル化ポリブタジエンを得た。続いて、反応容器に、得られたトシル化ポリブタジエン81.3部とフタルイミドカリウム21.7部、N,N-ジメチルホルムアミド80部を仕込み、窒素雰囲気下140℃で8時間還流した。反応溶液に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、ヘキサンで抽出した後、有機層を分離、乾燥することでフタルイミド化ポリブタジエンを得た。続いて、反応容器に得られたフタルイミド化ポリブタジエン42.0部、ヒドラジン一水和物6.75部、エタノール50部を仕込み、窒素雰囲気下室温で2時間攪拌反応させた。反応後、水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にした後、ヘキサンで抽出し、有機層を分離、乾燥することでアミノ基を有するポリオレフィン化合物(UR-3)を得た。得られたポリオレフィン化合物(UR-3)の数平均分子量は3000、アミン価は34.0mgKOH/gであった。
【0097】
【表5】
<接着剤樹脂組成物の調製>
[実施例1]
製造例1で得られた、櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D-1)と液状エポキシ樹脂(E)からなる組成物(DE-1)を10部、硬化剤(F)としてD-400を3.1部、トリエチレンテトラミンを0.1部室温で撹拌混合し、実施例1の接着剤樹脂組成物を調製した。
【0098】
[実施例2~32及び比較例1~4]
表6~9に示す配合組成に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2~32、及び比較例1~6の接着剤樹脂組成物を調製した。
【0099】
<接着剤樹脂組成物の評価1>
実施例及び比較例で調製した接着剤樹脂組成物について、以下の試験を行った。判定結果を表6~9に記載した。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
[外観]
厚さ2mmのシート状型枠に各接着剤樹脂組成物を充填し、表面を整えて、25℃7日硬化させ、得られた試験片を温度25℃、相対湿度50%の条件下以下の評価基準で判定した。
(評価基準)
○:目視で透明かつ相分離がない(良好)
△:目視で僅かに不透明又は僅かに相分離が確認できる(使用可能)
×:目視で明らかに不透明又は明らかな相分離が確認できる(使用不可)
【0105】
[せん断接着力]
各接着剤樹脂組成物を、炭素繊維強化プラスチック基板(長さ100mm、幅25mm、厚み2mm)上に長さ10mm、幅25mm、厚み0.1mmとなるよう塗布し、炭素繊維強化プラスチック基板と貼りあわせ、厚み0.1mmを保持するよう圧着した状態で25℃7日硬化させて、試験片を得た。得られた試験片を温度25℃、相対湿度50%の条件下、引張り速度1mm/分で引張り試験機を用いてせん断接着力を測定し、以下の評価基準で判定した。
(評価基準)
◎:せん断接着力が、20MPa以上(非常に良好)
○:せん断接着力が、15MPa以上、20MPa未満(良好)
△:せん断接着力が、10MPa以上、15MPa未満(使用可能)
×:せん断接着力が、10MPa未満(使用不可)
【0106】
[破断応力・破断伸度]
厚さ2mmのシート状型枠に各樹脂組成物接着剤を充填し、表面を整えて、25℃7日の硬化後、3号ダンベル型で打ち抜き、評価用のダンベル型試験片を作製した。このダンベル型試験片を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断応力(MPa)と破断伸度(%)を測定し、以下の基準で判定した。
(破断応力の評価基準)
◎:破断応力が、20MPa以上(非常に良好)
○:破断応力が、15MPa以上、20MPa未満(良好)
△:破断応力が、10MPa以上、15MPa未満(使用可能)
×:破断応力が、10MPa未満(使用不可)
(破断伸度の評価基準)
◎:破断伸度が、100%以上(非常に良好)
○:破断伸度が、80%以上、100%未満(良好)
△:破断伸度が、60%以上、80%未満(使用可能)
×:破断伸度が、60%未満(使用不可)
【0107】
[耐衝撃性]
各接着剤樹脂組成物を、ステンレス基板(長さ100mm、幅25mm、厚み2mm)上に長さ10mm、幅25mm、厚み0.1mmとなるよう塗布し、ステンレス基板と貼りあわせ、厚み0.1mmを保持するよう圧着した状態で25℃7日硬化させて、試験片を得た。温度25℃、相対湿度50%の条件下、得られた試験片がデュポン式衝撃試験によって破断するまでの回数を測定し、以下の基準で判定した。デュポン式衝撃試験は先端に1/2インチの丸みをもつ撃ち型を使用し、500gの重りを5cmの高さから自由落下させて行った。
(評価基準)
◎:10回試験しても破断しない。(非常に良好)
○:5~9回目で破断(良好)
△:2~4回目で破断(使用可能)
×:1回目で破断(使用不可)
【0108】
<接着剤樹脂組成物の評価2>
実施例及び比較例で調製した接着剤樹脂組成物について、硬化条件を80℃1日に変更した以外は評価1と同様の試験を行った。判定結果を表5~7に記載した。
【0109】
<総合評価>
実施例及び比較例で調製した接着剤樹脂組成物について、以下の判定基準で総合評価を行った。判定結果を表6~9に記載した。
【0110】
(総合評価基準)
◎:評価1、評価2のすべての試験項目において、判定が〇以上かつ評価結果に差異がなく、耐衝撃性が◎である。(非常に良好)
〇:評価1、評価2のすべての試験項目において、判定が〇以上かつ評価結果に差異がない。(良好)
△:評価1、評価2のすべての試験項目において、判定が〇以上であるが評価結果に差異がある、又は、評価1、評価2のいずれかの評価項目において、評価結果の差異にかかわらず、×判定はないが△判定がある。(使用可能)
×:評価1、評価2のいずれかの評価項目において、×以下の判定がある。(使用不可)
【0111】
本発明の接着剤樹脂組成物は、接着力、耐衝撃性、破断応力、破断伸度のいずれにおいても良好な結果が得られた。一方で、比較例の接着剤樹脂組成物は、接着力、破断応力、破断伸度の一部又は全てが、実施例よりも劣る結果であった。
【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、高い柔軟性、耐衝撃性及び接着力を有し、また硬化温度による物性の差異が小さい、自動車、建材、船舶、航空機等の分野に特に適した無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の課題は、分子内にエポキシ基を含有し、かつ片末端に水酸基を有するアクリルポリオール(A)、ポリオール(B)(ただし前記アクリルポリオール(A)を除く)、およびジイソシアネート(C)に由来する残基を有する櫛型ウレタン・アクリル複合樹脂(D)と、液状エポキシ樹脂(E)、及び硬化剤(F)とを含有する接着剤樹脂組成物によって解決される。
【選択図】なし