(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/13 20060101AFI20230711BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G02B6/13
G02B6/12 371
(21)【出願番号】P 2023507361
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039791
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021212865
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋武
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-341454(JP,A)
【文献】特開2014-199369(JP,A)
【文献】特開2009-276724(JP,A)
【文献】特開2015-87658(JP,A)
【文献】特開2006-39231(JP,A)
【文献】特開2008-12810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0172623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア形成層、
樹脂フィルムである基材
、および
、厚さが0.3mm以上10mm以下の金属板が、積層方向にこの順で積層されている露光前積層体を用意する工程と、
前記コア形成層の面内の一部に対し、前記積層方向に活性放射線を照射し、露光後積層体を得る工程と、
前記露光後積層体を加熱し、前記コア形成層から、コア部および側面クラッド部を含むコア層を得る工程と、
前記露光後積層体が有する前記コア層に接するように第1クラッド層を形成し、第1積層体を得る工程と、
前記第1積層体から前記基材および前記金属板を剥離し、残部を第2積層体とする工程と、
前記第2積層体が有する前記コア層に接するように第2クラッド層を形成する工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記コア形成層は、ポリマーおよびモノマーを含み、
前記活性放射線の照射により、前記モノマーが移動して
、照射領域
と非照射領域との間に屈折率差を生じさせる請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記露光前積層体は、前記基材と前記金属板との間に設けられ、前記活性放射線を吸収する放射線吸収層をさらに含む請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記放射線吸収層は、ポリイミドフィルムである請求項3に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記露光前積層体は、
前記放射線吸収層と前記基材との間に設けられ、粘着性を有する第1粘着層と、
前記放射線吸収層と前記金属板との間に設けられ、前記第1粘着層よりも強い粘着性を有する第2粘着層と、
をさらに含む請求項3または4に記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記露光前積層体は、
前記放射線吸収層と、
前記放射線吸収層を介して積層されている第1粘着層および第2粘着層と、
を備え、
前記第1粘着層および前記第2粘着層の各構成材料は、シリコーン系粘着剤である請求項3または4に記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記金属板は、熱伝導率が50[W/(m・K)]以上の金属材料を含む請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項
7に記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記金属板は、
前記金属材料を含むベース部と、
前記ベース部の前記基材側に少なくとも設けられ、前記ベース部よりも前記活性放射線の反射率が低い低反射部と、
を備える請求項
7または8に記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記金属板の前記基材とは反対側から熱を加えることにより、前記露光後積層体を加熱する請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項11】
前記露光前積層体を用意する工程は、前記基材上に前記コア形成層を形成してコアフィルムを得た後、前記コアフィルムの前記基材を前記金属板に固定する操作を含む請求項1
ないし4のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項12】
前記第1積層体から剥離した前記金属板を、新たな光導波路の製造において再使用する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア層と、コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法が開示されている。この製造方法は、具体的には、コアフィルム支持基材上にコア形成用フィルムを作製する工程と、クラッドフィルム支持基材上にクラッド形成用材料を塗布してクラッドフィルムを作製する工程と、コア形成用フィルムに対し、選択的に光を照射する工程と、光が照射されたコア形成用フィルムをオーブンで加熱し、コアフィルムを得る工程と、コアフィルムにクラッドフィルムを重ねて熱圧着する工程と、を有する。
【0003】
光が照射されたコア形成用フィルムを加熱すると、光が照射された部位と光が照射されなかった部位とで、屈折率の差が大きくなる。これにより、光が照射されなかった部位がコア部となり、光が照射された部位がクラッド部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコア形成用フィルムは、光が照射された後、加熱されることにより、十分な屈折率差が発現するようになっている。
【0006】
しかしながら、コア形成用フィルムを加熱する場合、温度の面内均一性を高めることは容易ではない。面内で温度が不均一になると、コア形成用フィルムに形成したコア部とクラッド部との屈折率差にバラつきが生じ、コア部間で伝送効率に差が生じてしまう。これにより、光導波路の品質の低下を招く。
【0007】
一方、コア形成用フィルムを加熱するとき、ゆっくりと昇温することで、面内均一性を確保することもできる。しかしながら、その場合、コア形成用フィルムを加熱する工程のスループットが低下してしまい、光導波路の製造効率が低下する。
【0008】
本発明の目的は、活性放射線が照射されたコア形成層を加熱するとき、温度の面内均一性を短時間に確保することができ、コア部と側面クラッド部との屈折率差のバラつきが少ない光導波路を効率よく製造することができる光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(12)の本発明により達成される。
(1) コア形成層、樹脂フィルムである基材、および、厚さが0.3mm以上10mm以下の金属板が、積層方向にこの順で積層されている露光前積層体を用意する工程と、
前記コア形成層の面内の一部に対し、前記積層方向に活性放射線を照射し、露光後積層体を得る工程と、
前記露光後積層体を加熱し、前記コア形成層から、コア部および側面クラッド部を含むコア層を得る工程と、
前記露光後積層体が有する前記コア層に接するように第1クラッド層を形成し、第1積層体を得る工程と、
前記第1積層体から前記基材および前記金属板を剥離し、残部を第2積層体とする工程と、
前記第2積層体が有する前記コア層に接するように第2クラッド層を形成する工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【0010】
(2) 前記コア形成層は、ポリマーおよびモノマーを含み、
前記活性放射線の照射により、前記モノマーが移動して、照射領域と非照射領域との間に屈折率差を生じさせる上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【0011】
(3) 前記露光前積層体は、前記基材と前記金属板との間に設けられ、前記活性放射線を吸収する放射線吸収層をさらに含む上記(1)または(2)に記載の光導波路の製造方法。
【0012】
(4) 前記放射線吸収層は、ポリイミドフィルムである上記(3)に記載の光導波路の製造方法。
【0013】
(5) 前記露光前積層体は、
前記放射線吸収層と前記基材との間に設けられ、粘着性を有する第1粘着層と、
前記放射線吸収層と前記金属板との間に設けられ、前記第1粘着層よりも強い粘着性を有する第2粘着層と、
をさらに含む上記(3)または(4)に記載の光導波路の製造方法。
【0014】
(6) 前記露光前積層体は、
前記放射線吸収層と、
前記放射線吸収層を介して積層されている第1粘着層および第2粘着層と、
を備え、
前記第1粘着層および前記第2粘着層の各構成材料は、シリコーン系粘着剤である上記(3)または(4)に記載の光導波路の製造方法。
(7) 前記金属板は、熱伝導率が50[W/(m・K)]以上の金属材料を含む上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0015】
(8) 前記金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である上記(7)に記載の光導波路の製造方法。
【0016】
(9) 前記金属板は、
前記金属材料を含むベース部と、
前記ベース部の前記基材側に少なくとも設けられ、前記ベース部よりも前記活性放射線の反射率が低い低反射部と、
を備える上記(7)または(8)に記載の光導波路の製造方法。
【0017】
(10) 前記金属板の前記基材とは反対側から熱を加えることにより、前記露光後積層体を加熱する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0018】
(11) 前記露光前積層体を用意する工程は、前記基材上に前記コア形成層を形成してコアフィルムを得た後、前記コアフィルムの前記基材を前記金属板に固定する操作を含む上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
(12) 前記第1積層体から剥離した前記金属板を、新たな光導波路の製造において再使用する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、活性放射線が照射されたコア形成層を加熱するとき、温度の面内均一性を短時間に確保することができ、コア部と側面クラッド部との屈折率差のバラつきが少ない光導波路を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法により製造される光導波路を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図7】
図7は、
図4(a)に示す金属板および中間フィルムの部分拡大図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す中間フィルムの一例である3層フィルム、および、比較フィルムとしてのシリコーンゴムシートについて、各種評価試験を行った結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光導波路の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法により製造される光導波路を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0023】
なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、説明の便宜のため、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。なお、以下の説明における「上」および「下」は、光導波路の製造時または使用時において、鉛直方向に対する姿勢を限定するものではない。
【0024】
1.光導波路
図1および
図2に示す光導波路1は、シート状をなしており、下側カバー層18、下側クラッド層11、コア層13、上側クラッド層12および上側カバー層19がこの順で積層されている積層構造を備える。光導波路1が備える各層は、X-Y面に沿って広がっている。光導波路1は、例えば、X軸に長軸を有する長尺状の樹脂フィルムであり、可撓性を有する。このため、光導波路1は、例えば、Y軸まわりの円周に沿って曲げた状態でも使用可能である。
【0025】
コア層13は、
図1に示すように、X軸に沿って延在する9本の長尺状のコア部14と、各コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、を含む。したがって、コア部14のうち、Y軸方向の両側面には、いずれも側面クラッド部15が隣接している。また、
図2に示すように、コア部14の下面には下側クラッド層11が隣接し、コア部14の上面には上側クラッド層12が隣接している。これにより、コア部14とクラッド部(側面クラッド部15、下側クラッド層11および上側クラッド層12)との間には、十分に大きい屈折率差が安定的に維持され、コア部14の伝送効率が高くなる。なお、コア部14は、コア層13中において、途中で分岐していてもよいし、途中で他のコア部14と交差していてもよい。
【0026】
なお、コア層13中に設けられるコア部14の数は、特に限定されず、例えば1~100本程度とされる。また、光導波路1のX軸に沿った全長は、特に限定されないが、10~3000mm程度であるのが好ましい。さらに、光導波路1のY軸に沿った全幅は、特に限定されないが、2~200mm程度であるのがより好ましい。
【0027】
コア層13のZ軸に沿った膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア層13に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0028】
下側クラッド層11および上側クラッド層12のZ軸に沿った膜厚は、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。また、下側クラッド層11および上側クラッド層12をクラッド形成層から形成するとき、クラッド形成層の硬化収縮量が大きくなりすぎるのを抑制し、その影響がコア層13に及ぶのを抑制することができる。
【0029】
光導波路1は、X軸マイナス側の端部に位置する端面101と、X軸プラス側の端部に位置する端面102と、を有する。端面101、102は、それぞれ光入出射面として機能する。
【0030】
光導波路1の両端部の少なくとも一方には、図示しない光コネクターが装着されていてもよい。光コネクターを介して、光導波路1と他の光学部品とを固定するとともに、端面101、102と他の光学部品との間を光学的に接続することができる。また、光導波路1は、コア部14を通過する光の光路を変換するミラーを有していてもよい。ミラーを介して光路を変換することにより、コア部14と、光導波路1の外部に設けられた光学部品と、を光学的に接続することができる。
【0031】
下側カバー層18は、下側クラッド層11の下面に積層されている。上側カバー層19は、上側クラッド層12の上面に積層されている。これにより、光導波路1の機械的特性や耐久性を高めることができる。なお、下側カバー層18および上側カバー層19の少なくとも一方は、省略されていてもよい。
【0032】
光導波路1のZ軸に沿った膜厚は、50~300μmであるのが好ましく、60~200μmであるのがより好ましく、70~150μmであるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の可撓性を高めつつ、光導波路1の機械的強度を十分に確保することができる。
【0033】
以下、光導波路1の各部についてさらに詳述する。
2.光導波路の製造方法
次に、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明する。以下の説明では、
図1および
図2に示す光導波路1の製造方法を例にして説明する。
【0034】
図3は、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明するための工程図である。
図4ないし
図6は、
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【0035】
図3に示す光導波路1の製造方法は、準備工程S102と、露光工程S104と、コア形成工程S106と、上側クラッド積層工程S108と、上側クラッド形成工程S110と、剥離工程S112と、下側クラッド積層工程S114と、下側クラッド形成工程S116と、を有する。
【0036】
準備工程S102では、コアフィルム200、中間フィルム120および金属板110を備える露光前積層体180、および、クラッド形成層170を備えるクラッドフィルム401、402を準備する。露光工程S104では、コア形成層160の面内の一部に活性放射線Rを照射し、露光後積層体190を得る。コア形成工程S106では、露光後積層体190を加熱し、コア形成層160から、コア部14および側面クラッド部15を含むコア層13を得る。上側クラッド積層工程S108では、コア層13の上面とクラッド形成層170とを積層する。上側クラッド形成工程S110では、コア層13とクラッド形成層170との積層体を加熱し、クラッド形成層170から上側クラッド層12を得る。剥離工程S112では、コア層13の下面から基材100を剥離する。下側クラッド積層工程S114では、コア層13の下面とクラッド形成層170とを積層する。下側クラッド形成工程S116では、コア層13とクラッド形成層170との積層体を加熱し、クラッド形成層170から下側クラッド層11を得る。以下、各工程について順次説明する。
【0037】
2.1.準備工程
本実施形態では、
図4(a)に示すように、コアフィルム200、中間フィルム120および金属板110を備える露光前積層体180を用意する。Z軸マイナス側の方向を「積層方向」とするとき、コアフィルム200、中間フィルム120および金属板110は、積層方向にこの順で積層されている。
【0038】
また、本実施形態では、
図5(f)に示すように、上側カバー層19と、上側カバー層19の下面に積層されたクラッド形成層170と、を有するクラッドフィルム402を準備する。同様に、
図6(i)に示すように、下側カバー層18と、下側カバー層18の上面に積層されたクラッド形成層170と、を有するクラッドフィルム401を準備する。
【0039】
2.1.1.コアフィルム
図4(a)に示すコアフィルム200は、基材100とコア形成層160との積層体である。コアフィルム200は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0040】
コア形成層160の形成方法としては、例えば、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を基材100上に塗布した後、乾燥させる方法、基材100上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0041】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0042】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のコア形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0043】
なお、コアフィルム200は、最終的に複数の光導波路1を切り出すことができるように、光導波路1に対応する領域を複数含んでいてもよい。この場合、光導波路1を切り出す工程を追加することにより、光導波路1をより効率よく製造することができる。
【0044】
2.1.1.1.基材
基材100には、例えば、樹脂フィルムが用いられる。基材100の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0045】
なお、基材100には、必要に応じて、コア層13と基材100との剥離を容易にする離型処理等が施されていてもよい。
【0046】
2.1.1.2.コア形成用樹脂組成物
上記のコア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0047】
2.1.1.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0048】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0049】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0050】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む化合物が挙げられる。
【0051】
ポリマーの含有量は、例えば、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、コア層13の機械的特性が向上する。また、コア形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性が向上する。
【0052】
コア形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0053】
2.1.1.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0055】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0056】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0057】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線Rの照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーを用いてもよい。また、モノマーは、活性放射線Rの照射時において、コア形成層160中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られるコア層13において、活性放射線Rの照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせてもよい。
なお、コア層13中におけるコア部14や側面クラッド部15は、構成材料の屈折率差に基づいて形成させている。例えば、コア部14および側面クラッド部15の構成材料を異ならせることでコア層13中に屈折率の分布を形成することができる。また、コア層13の構成材料として、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているポリマーを用いる方法を利用することができる。係る方法では、離脱性基の離脱によりポリマーの屈折率が低下するため、ポリマーは、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成し、コア層13中に屈折率の分布を形成することができる。コア層13中に屈折率の分布を形成する方法としては、様々な方法があるが、本実施形態では、コア層13がポリマーおよびモノマーを含み、モノマーの濃度差またはモノマー由来の構造の濃度差に基づいた屈折率の分布を有している。
【0058】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。これにより、上記の屈折率差の形成、すなわち屈折率変調をより確実に起こすことができる。
【0059】
2.1.1.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0061】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0063】
2.1.1.2.4.その他
コア形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0064】
2.1.1.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のコア形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0065】
コア形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0066】
2.1.2.金属板
図4(a)に示す金属板110は、中間フィルム120を介してコアフィルム200を支持する支持板である。このような金属板110を用いることにより、露光前積層体180のハンドリング性を高めることができる。これにより、露光前積層体180を搬送装置で搬送する操作が容易になる。
【0067】
金属板110は、樹脂板やガラス板等に比べて、剛性および熱伝導性に優れる。このため、金属板110でコアフィルム200を支持することにより、露光前積層体180の平坦性を高めるとともに、温度の面内均一性を短時間で高めることができる。平坦性が高められることにより、後述する工程で露光前積層体180に対して活性放射線Rを照射するとき、照射領域の位置精度を高めやすい。これにより、寸法精度に優れたコア部14を形成することができる。また、温度の面内均一性を短時間で高めることにより、後述する工程で露光後積層体190を加熱するとき、コア形成層160における温度ムラが抑制されるため、形成されるコア部14と側面クラッド部15との屈折率差のバラつきが抑制される。その結果、コア部14同士の間で伝送損失のバラつきが少ない光導波路1を製造することができる。
【0068】
金属板110が含む金属材料としては、あらゆる金属材料が挙げられるが、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、チタン、マグネシウム、亜鉛、スズ、ニッケル等の単体、またはこれらを含む合金もしくは金属間化合物等が挙げられる。このうち、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であるのが好ましい。これらは、軽量であり、かつ、耐薬品性および熱伝導性に優れる。このため、これらのアルミニウム系材料を含む金属板110は、搬送容易性および耐久性が高く、かつ、屈折率差のバラつきが特に少なく高品質なコア層13の形成に寄与する。
【0069】
なお、金属板110は、金属材料以外の材料、例えば、セラミックス材料、ガラス材料、樹脂材料、ケイ素材料、炭素材料等を含んでいてもよい。
【0070】
金属板110が含む金属材料の熱伝導率は、50[W/(m・K)]以上であるのが好ましく、100[W/(m・K)]以上であるのがより好ましい。金属材料の熱伝導率が前記範囲内であれば、金属板110の熱伝導性を特に高めることができる。これにより、後述する工程で露光後積層体190を加熱するとき、コア形成層160の温度を短時間に昇温することができる。その結果、コア形成層160における温度ムラを抑制しつつ、露光後積層体190の熱処理に要する時間を短縮することができる。
【0071】
また、好ましくは、金属板110の熱伝導率も、前記範囲内に設定される。これにより、金属板110が金属材料以外の材料を含んでいる場合も、上記の効果を享受することができる。
【0072】
図7は、
図4(a)に示す金属板110の部分拡大図である。金属板110は、その全体が金属材料を含む単板であってもよいが、
図7に示すように、金属材料を含むベース部112と、ベース部112を覆う被膜114と、を備える複合板であってもよい。被膜114は、ベース部112の全体を覆っていてもよいが、少なくとも基材100側に設けられていればよい。そして、被膜114は、ベース部112よりも活性放射線Rの反射率が低い低反射部である。
【0073】
このような金属板110を用いることにより、被膜114がない場合に比べて、金属板110の活性放射線Rの反射率を低下させることができる。金属板110は、コア形成層160に活性放射線Rを照射するとき、中間フィルム120を介して、コアフィルム200の下地となる。このため、活性放射線Rの反射率が低ければ、コアフィルム200を透過した活性放射線Rが、金属板110で反射し、中間フィルム120を介して再びコアフィルム200に戻ること、つまり、戻り光の発生が抑制される。戻り光は、コア形成層160において、活性放射線Rの照射領域301と非照射領域302との境界が揺らぐ原因となる。境界が揺らぐと、コア形成層160から形成されるコア部14と側面クラッド部15との間で屈折率の勾配が緩くなり、伝送損失が増大する原因となる場合がある。したがって、
図7に示すような金属板110を用いることで、高品質なコア層13を形成することができる。
【0074】
被膜114としては、例えば、塗膜、ラッピングフィルム、めっき膜、蒸着膜等が挙げられる。被膜114は、ベースとなる成分の他、黒色や濃色の顔料、紫外線吸収剤のような活性放射線Rの吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
被膜114における活性放射線Rの反射率は、ベース部112における活性放射線Rの反射率より低ければよい。活性放射線Rとしては、例えば、波長300~400nmの紫外線が用いられる。
【0076】
被膜114における波長365nmの紫外線の反射率は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、被膜114における活性放射線Rの反射率をより低下させることができる。なお、被膜114における紫外線の反射率は、被膜114から7cmの距離において測定した反射紫外線の強度を、線源から直接受けた照射紫外線の強度で割って算出した比率である。
【0077】
金属板110の厚さは、特に限定されないが、10mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上5mm以下であるのがより好ましい。これにより、金属板110が重くなりすぎるのを避けつつ、剛性および面内の熱伝導性を十分に確保することができ、露光前積層体180の平坦性および温度の面内均一性をより高めることができる。
【0078】
2.1.3.中間フィルム
図4(a)に示す中間フィルム120は、コアフィルム200と金属板110との間に設けられ、これらを互いに固定するフィルムである。このような中間フィルム120を用いることにより、金属板110に対するコアフィルム200の固定や解除を容易に行うことができる。
【0079】
図7には、
図4(a)に示す中間フィルム120の部分拡大図も示している。中間フィルム120は、シリコーンゴムシートのような単層の部材であってもよいが、
図7に示すように、第1粘着層122と放射線吸収層124と第2粘着層126とを備える多層になっていてもよい。
【0080】
このうち、放射線吸収層124は、基材100と金属板110との間に設けられ、活性放射線Rを吸収する機能を有する。
図4(a)に示す露光前積層体180が備える中間フィルム120は、このような機能を有する放射線吸収層124を含む多層になっている。
【0081】
放射線吸収層124は、コアフィルム200を透過した活性放射線Rを吸収し、反射量を低下させる。このため、放射線吸収層124は、戻り光の抑制に寄与し、コア形成層160における意図しない光反応を抑制することができる。
【0082】
放射線吸収層124としては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。なお、ベースとなる樹脂に紫外線吸収剤やカーボンブラック等の添加剤を添加することにより、樹脂の活性放射線Rの吸収率を高めるようにしたフィルムを用いるようにしてもよい。
【0083】
このうち、放射線吸収層124は、ポリイミドフィルムであるのが好ましい。ポリイミドフィルムは、添加剤を添加することなく、紫外線等の波長範囲で良好な吸収性を示す。このため、ポリイミドフィルムを用いることで、ムラなく安定した活性放射線Rを吸収する機能を発現する放射線吸収層124が得られる。また、ポリイミドフィルムは、耐熱性に優れる。このため、ポリイミドフィルムを有する露光前積層体180は、加熱処理に供されても、劣化が抑制される。
【0084】
放射線吸収層124の膜厚は、特に限定されないが、30~150μmであるのが好ましく、50~100μmであるのがより好ましい。これにより、放射線吸収層124における活性放射線Rの吸収量を十分に確保しつつ、厚くなりすぎることに伴う、吸収量のバラつきを抑制することができる。
【0085】
また、放射線吸収層124自体が粘着性を有していてもよいが、露光前積層体180が備える中間フィルム120は、
図7に示すように、さらに、第1粘着層122および第2粘着層126を備えている。第1粘着層122は、放射線吸収層124と基材100との間に設けられ、粘着性を有する。第2粘着層126は、放射線吸収層124と金属板110との間に設けられ、第1粘着層122よりも強い粘着性を有する。
【0086】
このような第1粘着層122および第2粘着層126を設けることにより、放射線吸収層124を介して金属板110と基材100とを簡単に積層したり、積層を解除したりすることができる。また、粘着性に上記のような差を設けることで、中間フィルム120からコアフィルム200を剥がすとき、金属板110から中間フィルム120が剥がれてしまうのを抑制することができる。これにより、中間フィルム120からコアフィルム200を剥がす作業を効率よく行うことができる。また、中間フィルム120を金属板110に対して安定的に貼り付けられるため、金属板110とともに中間フィルム120を再使用することができる。つまり、一度使用した中間フィルム120を、金属板110とともに、新たな光導波路1の製造に用いることもできる。
【0087】
なお、上記のような粘着性の差を設けることは必須ではなく、第1粘着層122と第2粘着層126とで粘着性が同じであってもよい。
【0088】
第1粘着層122および第2粘着層126の構成材料としては、例えば、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられるが、特にシリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。シリコーン系粘着剤は、耐熱性に優れるため、加熱処理に伴う不具合が生じにくい。
【0089】
中間フィルム120の厚さは、特に限定されないが、50~400μmであるのが好ましく、100~300μmであるのがより好ましい。これにより、中間フィルム120のハンドリング性が良好になる。
【0090】
また、中間フィルム120には、使用前に脱湿処理を施すようにしてもよい。これにより、中間フィルム120に吸着していた水分を除去することができる。その結果、吸着していた水分が加熱処理によって脱離することに伴う不具合を抑制することができる。
【0091】
ここで、
図8は、
図7に示す中間フィルム120の一例である下記の3層フィルム、および、比較フィルムとしての下記のシリコーンゴムシートについて、各種評価試験を行った結果を示す表である。
【0092】
3層フィルムは、厚さ75μmのシリコーン系粘着層、厚さ75μmのポリイミドフィルム、および、厚さ75μmのシリコーン系粘着層からなる3層構造の多層フィルムである。シリコーンゴムシートは、厚さ225μmのシリコーンゴムシートである。
【0093】
評価試験は、i線透過率の測定、ならびに、3層フィルム(中間フィルム120)およびシリコーンゴムシート(比較フィルム)を用いて製造した光導波路試験片の伝送損失の測定である。i線は、波長365nmの紫外線である。
【0094】
また、光導波路試験片として、コア部14の幅を40μmとし、側面クラッド部15の幅を62.5μmとし、コア部14の線形を直線とした試験片、および、コア部14の線形を曲げ半径10mmの曲線とした試験片、の2種類を作製している。
【0095】
光導波路試験片の製造にあたっては、コアフィルム200、中間フィルム120または比較フィルム、および、ステンレス鋼板からなる試験片に、コアフィルム200側から活性放射線Rとしてi線を照射する。光導波路試験片は、照射領域に対応する側面クラッド部15と、非照射領域に対応するコア部14と、を含むコア層13を備える。なお、ステンレス鋼板は、あえてi線を反射するように構成している。したがって、
図8に示す評価試験は、中間フィルム120を用いる意義を評価することができる試験である。
【0096】
i線透過率は、基材100、中間フィルム120または比較フィルム、および、ガラス基板からなる評価体について、基材100側からi線を照射し、ガラス基板側に透過したi線の強度を測定して算出した透過率である。
【0097】
伝送損失は、JPCA(社団法人 日本電子回路工業会)の規格である「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」に規定された挿入損失の測定方法に準じて測定した値である。なお、光導波路試験片の長さは、7cmである。
【0098】
図8に示すように、3層フィルム(中間フィルム120)を含む評価体のi線透過率は、0%である。これに対し、シリコーンゴムシート(比較フィルム)を含む評価体のi線透過率は、98%である。この評価結果から、中間フィルム120としての3層フィルムは、i線をほぼ遮蔽する程度に、活性放射線Rに対する高い吸収性を示す。
【0099】
また、
図8に示すように、3層フィルム(中間フィルム120)を下地として製造した光導波路試験片では、シリコーンゴムシート(比較フィルム)を下地として製造した光導波路試験片に比べて、伝送損失が小さく抑えられている。したがって、
図8では、活性放射線Rを吸収する放射線吸収層を含む中間フィルム120を用いることで、伝送損失が小さい光導波路を製造可能であることが裏付けられている。
【0100】
2.1.4.クラッドフィルム
クラッドフィルム401は、下側カバー層18とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム402は、上側カバー層19とクラッド形成層170との積層体である。これらのクラッドフィルム401、402は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0101】
クラッド形成層170の形成方法としては、例えば、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物をカバー層上に塗布した後、乾燥させる方法、カバー層上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0102】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0103】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0104】
2.1.4.1.カバー層
下側カバー層18および上側カバー層19の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。各カバー層の膜厚が前記範囲内であれば、下側カバー層18および上側カバー層19によってコア層13等を保護する能力を確保しつつ、光導波路1が厚くなりすぎることの弊害、例えば光導波路1の可撓性が低下すること等を抑制することができる。
【0105】
下側カバー層18および上側カバー層19の膜厚は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、膜厚の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。なお、膜厚が同じとは、膜厚の差が5μm以下であることをいう。
【0106】
下側カバー層18および上側カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0107】
下側カバー層18および上側カバー層19の主材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、主材料の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。
【0108】
下側カバー層18および上側カバー層19の弾性率は、1~12GPaであるのが好ましく、2~11GPaであるのがより好ましく、3~10GPaであるのがさらに好ましい。なお、上記弾性率は、JIS K 7161-1:2014に規定の方法に準じて測定された引張弾性率である。
【0109】
2.1.4.2.クラッド形成用樹脂組成物
上記のクラッド形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0110】
2.1.4.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0111】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0112】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0113】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む化合物が挙げられる。
【0114】
また、ポリマーは、必要に応じて熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0115】
ポリマーの含有量は、例えば、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の機械的特性が向上する。また、クラッド形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の光学的特性が向上する。
【0116】
クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0117】
2.1.4.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0118】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0119】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0120】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0121】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
【0122】
2.1.4.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0123】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0124】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0125】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0126】
2.1.4.2.4.その他
クラッド形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0127】
2.1.4.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0128】
クラッド形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0129】
なお、下側クラッド層11を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物と、上側クラッド層12を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物とは、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0130】
2.2.露光工程
露光工程S104では、露光前積層体180が備えるコア形成層160の面内の一部に対し、露光前積層体180の積層方向に活性放射線Rを照射する。活性放射線Rが照射されたコア形成層160には、照射領域301と非照射領域302との間で屈折率差が形成される。これにより、
図5(d)に示す露光後積層体190が得られる。
【0131】
なお、活性放射線Rの一部は、コアフィルム200を透過した後、前述した中間フィルム120で吸収される。これにより、金属板110で反射してコアフィルム200に至る戻り光を抑制することができる。
【0132】
照射領域301および非照射領域302の設定には、例えば、
図4(b)に示すフォトマスク303を用いる方法が用いられる。フォトマスク303を介して活性放射線Rを照射することにより、フォトマスク303のマスクパターンに対応して照射領域301および非照射領域302を設定することができる。
【0133】
なお、フォトマスク303を用いる方法に代えて、直描露光機304を用いる方法を採用してもよい。
図4(c)では、活性放射線Rを直描露光機304により照射している。直描露光機304としては、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)のような反射型空間光変調素子、液晶表示素子(LCD)のような透過型空間光変調素子といった各種の空間光変調素子を利用して、照射領域を選択し得る露光機が挙げられる。このような直描露光機304を用いることにより、フォトマスク303を用いることなく、照射領域301および非照射領域302の設定が可能になる。これにより、フォトマスク303を作り変えることなく、照射領域301や非照射領域302の大きさを調整することができるので、光導波路1の製造コストの低減および効率化を図ることができる。
【0134】
図4(b)および
図4(c)には、コア形成層160が含むポリマー131およびモノマー132を図示している。活性放射線Rを照射する前のコア形成層160では、ポリマー131中にモノマー132がほぼ均一に分布している。なお、ここでは、モノマー132やモノマー132由来の構造は、ポリマー131よりも屈折率が低い。
【0135】
2.3.コア形成工程
コア形成工程S106では、露光後積層体190を加熱する。この加熱により、照射領域301に存在する重合開始剤が活性化し、モノマー132の反応が進行する。これにより、モノマー132の濃度差が拡大または固定される。その結果、照射領域301におけるモノマー132の濃度がさらに上昇することともに、非照射領域302におけるモノマー132の濃度がさらに低下する。これにより、照射領域301の屈折率は、モノマー132の影響を受けて低くなり、非照射領域302の屈折率は、ポリマー131の影響を受けて高くなる。
【0136】
コア形成層160の加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0137】
露光後積層体190の加熱方法としては、接触式加熱方法(コンタクトベーク)、非接触式加熱方法(プロキシミティーベーク)等が挙げられる。このうち、非接触式加熱方法が好ましく用いられる。非接触式加熱方法によれば、放射熱を金属板110に伝達させることで、コアフィルム200を昇温させることができる。このため、接触式加熱方法に比べて、コアフィルム200の温度の面内均一性を高めやすい。
【0138】
また、露光後積層体190は、金属板110を備えているため、面内方向に優れた熱伝導性を有する。このため、本実施形態では、
図5(e)に示すように、金属板110の下側(金属板110の基材100とは反対側)から熱Hを加えることにより、露光後積層体190を加熱する。これにより、金属板110に対する熱伝達を介してコアフィルム200を昇温させることができる。このため、コアフィルム200の温度の面内均一性をさらに高めることができる。
【0139】
なお、この加熱に伴って、モノマー132が揮発したり、ポリマー131の分子構造が変化したりすることによって屈折率が変化してもよい。
【0140】
以上のようにして、コア形成層160から、
図5(e)に示すように、非照射領域302に対応する複数のコア部14、および、照射領域301に対応する側面クラッド部15、を含むコア層13が得られる。
【0141】
以上、コア形成層160に活性放射線Rを照射してコア層13を形成する方法について説明したが、コア層13の形成方法は、上記の方法に限定されない。例えば、フォトリソグラフィー法、複製法等を用いるようにしてもよい。フォトリソグラフィー法は、露光、現像技術とエッチング技術とを組み合わせて、互いに屈折率が異なる材料でコア部14および側面クラッド部15を形成する方法である。また、複製法は、例えばコアパターンを有する型を樹脂膜に押し付けてコア部14を形成し、その後、側面クラッド部15を形成する方法である。
【0142】
なお、活性放射線Rを照射する前のコア形成層160または活性放射線Rを照射した後のコア形成層160に対し、必要に応じて、表面処理を施すようにしてもよい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等が挙げられる。
【0143】
2.4.上側クラッド積層工程
上側クラッド積層工程S108では、
図5(f)に示すように、コア層13の上面にクラッドフィルム402を積層する。これにより、
図6(g)に示すように、コア層13とクラッドフィルム402との積層体を得る。具体的には、コア層13の上面にクラッド形成層170が接するように、クラッドフィルム402を重ねる操作を行う。この操作は、枚葉式の操作であっても、ロール・ツー・ロール式の操作であってもよい。
【0144】
2.5.上側クラッド形成工程
上側クラッド形成工程S110では、コア層13とクラッドフィルム402との積層体を加熱する。これにより、クラッドフィルム402が備えるクラッド形成層170が硬化する。その結果、クラッド形成層170から上側クラッド層12が得られる。これにより、露光後積層体190と上側クラッド層12との積層体(図示しない第1積層体)が得られる。
【0145】
加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0146】
2.6.剥離工程
剥離工程S112では、第1積層体から基材100を剥離する。基材100を剥離した後の残部を、
図6(h)に示すように、第2積層体500とする。
【0147】
基材100を剥離した後のコア層13に対し、必要に応じて、表面処理を施すようにしてもよい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等が挙げられる。
【0148】
2.7.下側クラッド積層工程
下側クラッド積層工程S114では、クラッドフィルム401を第2積層体500のコア層13の下面に積層する。これにより、
図6(i)に示すように、コア層13とクラッドフィルム401との積層体を得る。具体的には、コア層13の下面にクラッド形成層170が接するように、クラッドフィルム401を重ねる操作を行う。この操作は、枚葉式の操作であっても、ロール・ツー・ロール式の操作であってもよい。
【0149】
2.8.下側クラッド形成工程
下側クラッド形成工程S116では、第2積層体500とクラッドフィルム401との積層体を加熱する。これにより、クラッドフィルム401が備えるクラッド形成層170が硬化する。その結果、クラッド形成層170から下側クラッド層11が得られる。
【0150】
加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられるが、上側クラッド層12を形成するときの加熱条件よりも、高温または長時間に設定されるのが好ましい。
以上のようにして
図2に示す光導波路1が得られる。
【0151】
2.9.実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係る光導波路の製造方法は、準備工程S102と、露光工程S104と、コア形成工程S106と、を有する。準備工程S102では、コア形成層160、基材100および金属板110が、積層方向にこの順で積層されている露光前積層体180を用意する。露光工程S104では、コア形成層160の面内の一部に対し、積層方向に活性放射線Rを照射し、露光後積層体190を得る。コア形成工程S106では、露光後積層体190を加熱し、コア形成層160から、コア部14および側面クラッド部15を含むコア層13を得る。
【0152】
このような構成によれば、コア形成工程S106において、活性放射線Rが照射されたコア形成層160を加熱するとき、温度の面内均一性を短時間で確保することができる。これにより、コア部14と側面クラッド部15との屈折率差のバラつきを抑制することができる。その結果、コア部14同士の間で伝送損失のバラつきが少ない、高品質な光導波路1を製造することができる。
【0153】
また、本実施形態に係る光導波路の製造方法は、上側クラッド形成工程S110と、剥離工程S112と、下側クラッド形成工程S116と、を有する。上側クラッド形成工程S110では、露光後積層体190が有するコア層13に接するように、上側クラッド層12(第1クラッド層)を形成し、第1積層体を得る。剥離工程S112では、第1積層体から基材100を剥離し、残部を第2積層体500とする。下側クラッド形成工程S116では、第2積層体500が有するコア層13に接するように、下側クラッド層11(第2クラッド層)を形成する。
【0154】
このような構成によれば、下側クラッド層11および上側クラッド層12でコア層13を挟んだ構造を有する光導波路1が得られる。このような光導波路1では、コア層13と下側クラッド層11および上側クラッド層12との屈折率差が安定しているため、伝送損失が小さい光導波路1を効率よく製造することができる。
【0155】
以上、本発明の光導波路の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。
【0156】
例えば、本発明の光導波路の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程を追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明によれば、活性放射線が照射されたコア形成層を加熱するとき、温度の面内均一性を短時間に確保することができ、コア部と側面クラッド部との屈折率差のバラつきが少ない光導波路を効率よく製造することができる。したがって、本発明は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0158】
1 光導波路
11 下側クラッド層
12 上側クラッド層
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
18 下側カバー層
19 上側カバー層
100 基材
101 端面
102 端面
110 金属板
112 ベース部
114 被膜
120 中間フィルム
122 第1粘着層
124 放射線吸収層
126 第2粘着層
131 ポリマー
132 モノマー
160 コア形成層
170 クラッド形成層
180 露光前積層体
190 露光後積層体
200 コアフィルム
301 照射領域
302 非照射領域
303 フォトマスク
304 直描露光機
401 クラッドフィルム
402 クラッドフィルム
500 第2積層体
R 活性放射線
S102 準備工程
S104 露光工程
S106 コア形成工程
S108 上側クラッド積層工程
S110 上側クラッド形成工程
S112 剥離工程
S114 下側クラッド積層工程
S116 下側クラッド形成工程
【要約】
本発明の光導波路の製造方法は、コア形成層、基材および金属板が、積層方向にこの順で積層されている露光前積層体を用意する工程と、前記コア形成層の面内の一部に対し、前記積層方向に活性放射線を照射し、露光後積層体を得る工程と、前記露光後積層体を加熱し、前記コア形成層から、コア部および側面クラッド部を含むコア層を得る工程と、を有することを特徴とする。また、前記コア形成層は、ポリマーおよびモノマーを含み、前記活性放射線の照射により、前記モノマーが移動して、前記照射領域と前記非照射領域との間に屈折率差を生じさせるように構成されているのが好ましい。