(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ナット及びボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20230711BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 C
(21)【出願番号】P 2023518389
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2022038134
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022010680
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰明
(72)【発明者】
【氏名】弓場 秀平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 靖巳
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-188687(JP,A)
【文献】特開2021-032364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状を成し、ねじ軸に貫通されるナット本体と、
前記ナット本体に組み付けられる循環部品と、
を備え、
前記ナット本体は、
前記ナット本体の外周面に設けられた窪みであり、前記ねじ軸と平行な軸方向から視て弓形状の収容部と、
前記収容部の底面を成す座面と、
前記座面と前記ナット本体の内周面を貫通する貫通孔と、
前記収容部に対し、前記ねじ軸と平行な軸方向の両側に配置され、互いに対向する一対の側面と、
を有し、
前記軸方向から視て前記座面と平行な方向は、座面方向であり、
前記座面に対し垂直な方向であり、かつ前記座面が向く方向は、第1垂直方向であり、
前記循環部品は、
前記収容部及び前記貫通孔に配置される循環部品本体と、
前記循環部品本体から前記座面方向の両側に延び、前記座面と当接する2つの腕部と、
2つの前記腕部のそれぞれから前記第1垂直方向に突出し、前記側面に沿って前記座面方向に延びるリブと、
前記リブの少なくとも一部が前記側面に向かって加締められて成る加締め部と、
を有し、
前記一対の側面には、前記座面方向に延びる溝であり、前記リブと前記軸方向に対向し、かつ前記加締め部が入り込む凹部が設けられ、
前記循環部品本体には、ボールの軌道に対し接線方向に延びるボール通路が設けられ、
前記循環部品は、前記軸方向から視て前記ボール通路に沿って延在する分割面で分割された内周側部品と外周側部品を接合して成り、
前記内周側部品は、
前記軌道から前記ボールを掬い上げるタングと、
前記ボール通路の内周側を囲む内周側転動面と、
2つの前記腕部のうちの一方と、
を有し、
前記外周側部品は、
前記ボール通路の外周側を囲む外周側転動面と、
2つの前記腕部のうちの他方と、
を有している
ナット。
【請求項2】
円筒状を成し、ねじ軸に貫通されるナット本体と、
前記ナット本体に組み付けられる循環部品と、
を備え、
前記ナット本体は、
前記ナット本体の外周面に設けられた窪みであり、前記ねじ軸と平行な軸方向から視て弓形状の収容部と、
前記収容部の底面を成す座面と、
前記座面と前記ナット本体の内周面を貫通する貫通孔と、
前記収容部に対し、前記ねじ軸と平行な軸方向の両側に配置され、互いに対向する一対の側面と、
を有し、
前記軸方向から視て前記座面と平行な方向は、座面方向であり、
前記座面に対し垂直な方向であり、かつ前記座面が向く方向は、第1垂直方向であり、
前記循環部品は、
前記収容部及び前記貫通孔に配置される循環部品本体と、
前記循環部品本体から前記座面方向の両側に延び、前記座面と当接する2つの腕部と、
2つの前記腕部のそれぞれから前記第1垂直方向に突出し、前記側面に沿って前記座面方向に延びるリブと、
前記リブの少なくとも一部が前記側面に向かって加締められて成る加締め部と、
を有し、
前記一対の側面には、前記座面方向に延びる溝であり、前記リブと前記軸方向に対向し、かつ前記加締め部が入り込む凹部が設けられ、
前記循環部品本体には、ボールの軌道に対し接線方向に延びるボール通路が設けられ、
前記循環部品は、前記軸方向から視て前記ボール通路に沿って延在する分割面で分割された内周側部品と外周側部品を接合して成り、
前記内周側部品は、
前記軌道から前記ボールを掬い上げるタングと、
前記ボール通路の内周側を囲む内周側転動面と、
前記分割面に沿って延在する内周側分割面と、
を有し、
前記外周側部品は、
前記ボール通路の外周側を囲む外周側転動面と、
2つの前記腕部と、
前記分割面に沿って延在する外周側分割面と、
を有し、
前記内周側分割面と前記外周側分割面のうち一方には、前記座面方向に突出し、かつ前記軸方向に延びる突条が設けられ、
前記内周側分割面と前記外周側分割面のうち他方には、前記座面方向に窪み、かつ前記軸方向に延びて前記突条が嵌合する溝部が設けられている
ナット。
【請求項3】
前記分割面は、
前記軸方向から視て、前記接線方向と平行な方向であり、前記第1垂直方向に向かうにつれて前記座面方向の一方に位置する斜面と、
前記斜面よりも前記座面方向の一方に配置され、前記第1垂直方向に延びる縦面と、
を有し、
前記縦面に、前記突条と前記溝部が設けられ、
前記内周側部品は、前記斜面によって、前記突条と前記溝部の嵌合が解除される方向への移動が規制されている
請求項2に記載のナット。
【請求項4】
前記一対の側面は、
前記循環部品よりも前記軸方向の一方に配置された第1側面と、
前記循環部品よりも前記軸方向の他方に配置された第2側面と、
を有し、
前記リブは、
前記第1側面に沿って延在する第1リブと、
前記第2側面に沿って延在する第2リブと、
を有し、
前記加締め部は、
前記第1リブの一部であり、前記第1側面の方に加締められた第1加締め部と、
前記第2リブの一部であり、前記第2側面の方に加締められた第2加締め部と、
を有している
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のナット。
【請求項5】
前記座面は、前記貫通孔の縁部であり、前記貫通孔に対し前記軸方向に配置された拡張座面を有し、
前記内周側部品は、前記拡張座面に当接する拡張着座面を有している
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のナット。
【請求項6】
前記内周側転動面と前記外周側転動面は、それぞれ溝面となっている
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のナット。
【請求項7】
前記外周側転動面は、平面となっている
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のナット。
【請求項8】
前記ナット本体は、前記側面から前記軸方向に窪み、かつ前記ナット本体の外周面に開口する位置決め穴を有し、
前記循環部品本体は、前記軸方向に突出し、前記位置決め穴に挿入される位置決め突起を有している
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のナット。
【請求項9】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のナットと、
前記ナットを貫通するねじ軸と、
前記ナットと前記ねじ軸の間に配置された複数のボールと、
を備えたボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナット及びボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、ナットと、ナットを貫通するねじ軸と、ナットとねじ軸の間の軌道を転動する複数のボールと、を備えている。ナットは、ナット本体と、循環部品と、を備えている。循環部品は、軌道の一端から軌道の他端に移動したボールを軌道の一端に循環させる部品である。
【0003】
循環部品の1つとして、ミドルデフレクタが挙げられる。ミドルデフレクタは、一般に、ナット本体の外周面に設けられた凹部に配置される。このようなミドルデフレクタの固定方法として、下記特許文献では、ナット本体とミドルデフレクタのそれぞれに、ナット本体の端面から軸方向に延びる貫通孔を設けている。そして、貫通孔にピンを挿入している。よって、ミドルデフレクタは、ピンに引っ掛かり、ナット本体から離脱しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピンによる固定方法は、部品点数が増加してしまう。また、ナット本体と循環部品に貫通孔が必要となり、レイアウトに制限が生じてしまう。よって、ピン以外の方法で循環部品を固定できるナットの開発が望まれている。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加を抑制できるナット及びボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の第1態様に係るナットは、円筒状を成し、ねじ軸に貫通されるナット本体と、前記ナット本体に組み付けられる循環部品と、を備えている。前記ナット本体は、前記ナット本体の外周面に設けられた窪みであり、前記ねじ軸と平行な軸方向から視て弓形状の収容部と、前記収容部の底面を成す座面と、前記座面と前記ナット本体の内周面を貫通する貫通孔と、前記収容部に対し、前記ねじ軸と平行な軸方向の両側に配置され、互いに対向する一対の側面と、を有している。前記軸方向から視て前記座面と平行な方向は、座面方向である。前記座面に対し垂直な方向であり、かつ前記座面が向く方向は、第1垂直方向である。前記循環部品は、前記収容部及び前記貫通孔に配置される循環部品本体と、前記循環部品本体から前記座面方向の両側に延び、前記座面と当接する2つの腕部と、2つの前記腕部のそれぞれから前記第1垂直方向に突出し、前記側面に沿って前記座面方向に延びるリブと、前記リブの少なくとも一部が前記側面に向かって加締められて成る加締め部と、を有している。前記一対の側面には、前記座面方向に延びる溝であり、前記リブと前記軸方向に対向し、かつ前記加締め部が入り込む凹部が設けられている。前記循環部品本体には、ボールの軌道に対し接線方向に延びるボール通路が設けられている。前記循環部品は、前記軸方向から視て前記ボール通路に沿って延在する分割面で分割された内周側部品と外周側部品を接合して成る。前記内周側部品は、前記軌道から前記ボールを掬い上げるタングと、前記ボール通路の内周側を囲む内周側転動面と、2つの前記腕部のうちの一方と、を有している。前記外周側部品は、前記ボール通路の外周側を囲む外周側転動面と、2つの前記腕部のうちの他方と、を有している。
【0008】
前記構成によれば、循環部品に第1垂直方向の荷重が作用すると、加締め部が凹部に引っ掛かる。よって、循環部品は第1垂直方向に位置ずれしない。つまり、循環部品は、ナット本体から離脱しない。仮に内周側部品と外周側部品との接合が解除されたとしても、内周側部品と外周側部品は、それぞれ腕部を1つずつ有している。よって、内周側部品と外周側部品は、それぞれ、貫通孔に脱落しないし、ナット本体から離脱もしない。また、本開示の循環部品は、2つの部品(内周側部品と外周側部品)とから成るものの、2つの部品の分割面は、軸方向と直交する方向になっていない。仮に、循環部品の分割面が軸方向に直交する方向とした場合、タングが軸方向に分割され、タングの強度が低下する。一方、本開示のタングは、分割されることなく、内周側部品に一体に設けられている。よって、タングの強度が保持され、ボールの掬い上げを円滑に行うことができる。
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示の第2態様に係るナットは、円筒状を成し、ねじ軸に貫通されるナット本体と、前記ナット本体に組み付けられる循環部品と、を備えている。前記ナット本体は、前記ナット本体の外周面に設けられた窪みであり、前記ねじ軸と平行な軸方向から視て弓形状の収容部と、前記収容部の底面を成す座面と、前記座面と前記ナット本体の内周面を貫通する貫通孔と、前記収容部に対し、前記ねじ軸と平行な軸方向の両側に配置され、互いに対向する一対の側面と、を有している。前記軸方向から視て前記座面と平行な方向は、座面方向である。前記座面に対し垂直な方向であり、かつ前記座面が向く方向は、第1垂直方向である。前記循環部品は、前記収容部及び前記貫通孔に配置される循環部品本体と、前記循環部品本体から前記座面方向の両側に延び、前記座面と当接する2つの腕部と、2つの前記腕部のそれぞれから前記第1垂直方向に突出し、前記側面に沿って前記座面方向に延びるリブと、前記リブの少なくとも一部が前記側面に向かって加締められて成る加締め部と、を有している。前記一対の側面には、前記座面方向に延びる溝であり、前記リブと前記軸方向に対向し、かつ前記加締め部が入り込む凹部が設けられている。前記循環部品本体には、ボールの軌道に対し接線方向に延びるボール通路が設けられている。前記循環部品は、前記軸方向から視て前記ボール通路に沿って延在する分割面で分割された内周側部品と外周側部品を接合して成る。前記内周側部品は、前記軌道から前記ボールを掬い上げるタングと、前記ボール通路の内周側を囲む内周側転動面と、前記分割面に沿って延在する内周側分割面と、を有している。前記外周側部品は、前記ボール通路の外周側を囲む外周側転動面と、2つの前記腕部と、前記分割面に沿って延在する外周側分割面と、を有している。前記内周側分割面と前記外周側分割面のうち一方には、前記座面方向に突出し、かつ前記軸方向に延びる突条が設けられている。前記内周側分割面と前記外周側分割面のうち他方には、前記座面方向に窪み、かつ前記軸方向に延びて前記突条が嵌合する溝部が設けられている。
【0010】
前記構成によれば、循環部品に第1垂直方向の荷重が作用すると、加締め部が凹部に引っ掛かる。よって、循環部品は第1垂直方向に位置ずれしない。つまり、循環部品は、ナット本体から離脱しない。また、仮に内周側部品と外周側部品との接合が解除された場合、外周側部品は2つの腕部を有している。よって、外周側部品は、貫通孔に脱落せず、かつナット本体から離脱しない。一方、内周側部品は、突条が溝部に引っ掛かり、座面に対する垂線と平行な方向へ位置ずれしない。よって、内周側部品は、貫通孔に脱落しない。また、本開示のタングは、分割されることなく、内周側部品に一体に設けられている。よって、タングの強度が保持され、ボールの掬い上げを円滑に行うことができる。
【0011】
前記するナットの好ましい態様として、前記分割面は、前記軸方向から視て、前記接線方向と平行な方向であり、前記第1垂直方向に向かうにつれて前記座面方向の一方に位置する斜面と、前記斜面よりも前記座面方向の一方に配置され、前記第1垂直方向に延びる縦面と、を有している。前記縦面に、前記突条と前記溝部が設けられている。前記内周側部品は、前記斜面によって、前記突条と前記溝部の嵌合が解除される方向への移動が規制されている。
【0012】
前記構成によれば、仮に内周側部品と外周側部品との接合が解除されたとしても、突条と溝部の嵌合が解除されない。よって、内周側部品は、貫通孔に脱落しない。
【0013】
前記するナットの好ましい態様として、前記一対の側面は、前記循環部品よりも前記軸方向の一方に配置された第1側面と、前記循環部品よりも前記軸方向の他方に配置された第2側面と、を有している。前記リブは、前記第1側面に沿って延在する第1リブと、前記第2側面に沿って延在する第2リブと、を有している。前記加締め部は、前記第1リブの一部であり、前記第1側面の方に加締められた第1加締め部と、前記第2リブの一部であり、前記第2側面の方に加締められた第2加締め部と、を有している。
【0014】
前記構成によれば、ナット本体に引っ掛かる加締め部が多いため、循環部品の抜け止めを強固とすることができる。
【0015】
前記するナットの好ましい態様として、前記座面は、前記貫通孔の縁部であり、前記貫通孔に対し前記軸方向に配置された拡張座面を有している。前記内周側部品は、前記拡張座面に当接する拡張着座面を有している。
【0016】
前記構成によれば、座面に当接する部位が増える。よって、循環部品の姿勢がより安定し、ボールの掬い上げが円滑に行われる。また、仮に内周側部品と外周側部品との接合が解除されたとしても、拡張着座面が拡張座面に引っ掛かり、内周側部品が貫通孔に脱落しない。
【0017】
前記するナットの好ましい態様として、前記循環部品の前記内周側部品の前記内周側転動面と、前記外周側部品の前記外周側転動面は、それぞれ溝面となっている。
【0018】
前記構成によれば、ボールは、ボール通路を円滑に転動する。
【0019】
前記するナットの好ましい態様として、前記外周側転動面は、平面となっている。
【0020】
前記構成によれば、外周側部品の製造が容易となる。
【0021】
前記するナットの好ましい態様として、前記ナット本体は、前記側面から前記軸方向に窪み、かつ前記ナット本体の外周面に開口する位置決め穴を有している。前記循環部品本体は、前記軸方向に突出し、前記位置決め穴に挿入される位置決め突起を有している。
【0022】
前記構成によれば、循環部品が座面方向に位置ずれしない。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るボールねじ装置は、上記したナットと、前記ナットを貫通するねじ軸と、前記ナットと前記ねじ軸の間に配置された複数のボールと、を備えている。
【0024】
前記ボールねじ装置によれば、循環部品がナット本体から離脱しない。
【発明の効果】
【0025】
本開示のナット及びボールねじ装置によれば、循環部品を固定するピンが不要となり、部品点数の増加が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態1のボールねじ装置を軸方向と直交する方向から視た側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のナットを軸方向に切った断面図である。
【
図3】
図3は、ナット本体を
図1のIII-III線で切り、その断面を矢印方向から視た断面図である。
【
図6】
図6は、
図1のミドルデフレクタとその周辺を拡大した拡大図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の加締め前のミドルデフレクタを第1垂直方向から斜視した斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の加締め前のミドルデフレクタを第2垂直方向から斜視した斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態1の組み付け方法の準備工程を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態1の組み付け方法の加締め工程において、加締め前の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図15】
図15は、実施形態1の組み付け方法の加締め工程において、加締め後の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図16】
図16は、実施形態1の加締め工程を第1垂直方向から視た平面図である。
【
図17】
図17は、実施形態1の加締め工程において2つの治具で加締めている状態を斜視した斜視図である。
【
図18】
図18は、実施形態2のナットにおいて、リブを加締める前の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図19】
図19は、実施形態2のナットにおいて、リブを加締めた後の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図20】
図20は、実施形態3のナットにおいて、リブを加締める前の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図21】
図21は、実施形態3のナットにおいて、リブを加締めた後の状態を第2座面方向から視た側面図である。
【
図22】
図22は、実施形態4のミドルデフレクタを第2軸方向から視た斜視図である。
【
図23】
図23は、実施形態4のナットにおいて第2側面と第2対向面との隙間を第1垂直方向から視た拡大図である。
【
図24】
図24は、実施形態5のミドルデフレクタを斜視した斜視図である。
【
図25】25は、実施形態6のミドルデフレクタを第1軸方向から視た側面図である。
【
図26】
図26は、実施形態6のミドルデフレクタを、座面方向及び垂直方向に延びる平面で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のボールねじ装置を軸方向と直交する方向から視た側面図である。
図1に示すように、ボールねじ装置100は、ナット101と、ナット101を貫通するねじ軸102と、ナット101とねじ軸102の間に配置された複数のボール103(
図2参照)と、を備えている。ねじ軸102は、鋼材により製造された円柱状の部品である。ねじ軸102の外周面には、螺旋状の外周軌道面102aが設けられている。以下、ねじ軸102の軸心Oと平行な方向を軸方向と称する。
【0029】
ボールねじ装置100は、回転運動を直線運動に変換したり、直線運動を回転運動に変換したりする装置である。本実施形態において、ナット101の外周面に内輪104が設けられている。また、内輪104は、ナット101の外周面のうち、軸方向の端寄りに配置されている。以下、ナット101の軸方向の中央部から視て、内輪104が配置される方向を第1軸方向(軸方向の一方)X1と称する。また、第1軸方向X1の反対方向を第2軸方向(軸方向の他方)X2と称する。
【0030】
内輪104は、ナット101を回転自在に支持する軸受の一部品である。内輪104の外周面に、ボールが転動する外周軌道面105が設けられている。よって、本実施形態においては、図示しないハウジング等にナット101が回転自在に支持され、ねじ軸102が軸方向に直線運動する。つまり、本実施形態のボールねじ装置100は、回転運動を直線運動に変換するための仕様となっている。なお、本実施形態では、内輪が一体に形成されたナットを例示しているが、本開示は、内輪が一体に形成されていないナットであってもよい。また、本開示は、直線運動を回転運動に変換するボールねじ装置に適用してもよい。
【0031】
図2は、実施形態1のナットを軸方向に切った断面図である。
図2に示すように、ナット101は、ナット本体1と、ナット本体1に組み付けられたミドルデフレクタ(循環装置)30及びエンドデフレクタ110と、を備えている。
【0032】
ナット本体1は、鋼材により製造された円筒形状の部品である。ナット本体1の内周面2には、螺旋状の内周軌道面3が設けられている。内周軌道面3と外周軌道面102aとの間は、螺旋状の軌道106となっている。この軌道106に複数のボール103が配置されている。ナット101が回転すると、ボール103が内周軌道面3と外周軌道面102aを転動し、軌道106に沿って螺旋方向に移動する。
【0033】
ナット本体1の外周面4であって第2軸方向X2の端寄りに、ナット本体1の外周面4から径方向内側に窪む第1収容部(収容部)5が設けられている。ナット本体1の第1軸方向X1の端面6に、第2軸方向X2に窪む第2収容部7が設けられている。また、ナット本体1には、軸方向に貫通し、第1収容部5と第2収容部7を連通するする戻り路8が設けられている。ミドルデフレクタ30は、第1収容部5に収容されている。また、エンドデフレクタ110は、第2収容部7に収容されている。
【0034】
ボールねじ装置100の駆動時、軌道106に沿って第2軸方向X2に移動したボール103は、ミドルデフレクタ30に掬い上げられ、戻り路8に案内される。ボール103は、戻り路8を第1軸方向X1に転動し、エンドデフレクタ110の内部に入る。そして、エンドデフレクタ110は、ボール103を軌道106の第1軸方向X1の端に循環する。また、ナット101の回転方向が逆方向となった場合、エンドデフレクタ110が軌道106からボール103を掬い上げ、ミドルデフレクタ30が転動路にボール103を循環する。これにより、ボール103が軌道106を転動し続ける。
【0035】
なお、本実施形態では、2つの循環部品としてミドルデフレクタ30とエンドデフレクタ110とを備えているが、本開示は、2つともミドルデフレクタ(循環部品)であってもよい。次に、ナット本体1とミドルデフレクタ30の詳細を説明する。
【0036】
図3は、ナット本体を
図1のIII-III線で切り、その断面を矢印方向から視た断面図である。
図3に示すように、ナット本体1は、第1収容部5と、第1収容部5の底面を成す座面10と、座面10を貫通する貫通孔17と、第1収容部5に対し軸方向の両側に配置された一対の側面20(
図3で一方のみを図示)と、を有している。
【0037】
第1収容部5は、軸方向から視て、弓形状を成す空間である。なお、弓形状とは、軸方向から視て、ナット本体1の外周面4と重なる円弧部と、座面10と重なる直線部(円弧部の両端を結ぶ直線部)と、を組み合わせてなる形状である。
【0038】
座面10は、ミドルデフレクタ30が当接(着座)する面である。また、座面10は、軸方向から視て、軸心Oから径方向に延びる仮想線K1に対して直交する平面となっている。以下、軸方向から視て、座面10が延在する方向(仮想線K1と軸方向のそれぞれに直交する方向)を座面方向と称する。一方で、仮想線K1と平行な方向(座面に対し垂直な方向)を垂直方向と称する。また、垂直方向のうち、座面10が向く方向を第1垂直方向Z1と称する。第1垂直方向Z1と反対方向を第2垂直方向Z2と称する。なお、本実施形態において、座面10(第1収容部5)は、外周側から視て軸心Oと直交する方向に延びている(
図4参照)。
【0039】
貫通孔17は、垂直方向に延び、座面10とナット本体1の内周面2を貫通している。また、貫通孔17は、座面10の座面方向の中央部を貫通している。このため、座面10は、貫通孔17よりも座面方向の一方に配置される第1座面11と、貫通孔17よりも座面方向の他方に配置される第2座面12と、に区分けされる。以下、座面方向に関し、貫通孔17から視て第1座面11が配置される方向を第1座面方向Y1と称する。また、第1座面方向Y1の反対方向を第2座面方向Y2と称する。
【0040】
図4は、
図3の矢印IV方向から視た側面図である。
図4に示すように、貫通孔17は、第1垂直方向Z1方向から視て、矩形状を成している。貫通孔17は、座面10の軸方向の中央部を貫通している。また、貫通孔17の軸方向の長さL1は、座面10の軸方向の長さL2よりも短い。よって、座面10は、貫通孔17の縁部17aを成し、かつ貫通孔17に対し軸方向の両側に隣接する拡張座面13を有している。なお、本実施形態の貫通孔17の4つの隅部は直角形状となっているが、隅R部になっていてもよい。また、貫通孔17は、矩形状に限らない。
【0041】
拡張座面13は、貫通孔17に対し第1軸方向X1に配置された第1拡張座面14と、貫通孔17に対し第2軸方向X2に配置された第2拡張座面15と、を有している。第1拡張座面14と第2拡張座面15は、それぞれ、座面方向に延在し、両端が第1座面11と第2座面12と接続している。
【0042】
なお、拡張座面13は、ミドルデフレクタ30が当接(着座)できればよく、実施形態のように座面方向に連続している必要はない。よって、本開示は、座面方向の一部が切り欠かれ、座面方向に連続していない拡張座面であってもよい。
【0043】
図4に示すように、一対の側面20は、座面10に対し第1軸方向X1に配置された第1側面20aと、座面10に対し第2軸方向X2に配置された第2側面20bと、を有している。第1側面20aと第2側面20bは、互いに軸方向に対向している。以下、一対の側面20の詳細を説明するが、第1側面20aと第2側面20bのそれぞれに共通する技術的内容については、説明の主体を「側面20」とする。第1側面20a又は第2側面20bに設けられた技術的内容については、それぞれを説明の主体とする。
【0044】
図3に示すように、側面20は、弓形状を成している。よって、側面20は、円弧状の外周縁部21を有している。側面20には、側面20から軸方向に窪み、かつ座面方向に延びる凹部22が設けられている。凹部22の一端は、外周縁部21まで延びている。よって、凹部22は、第1収容部5の方とナット本体1の外周側の方に開口している。
【0045】
凹部22は、1つの側面20に対し、2つ設けられている。2つの凹部22のうち一方は、貫通孔17よりも第1座面方向Y1に配置され、外周縁部21を切り欠いて第1座面方向Y1に開口している。また、2つの凹部22のうち他方は、貫通孔17よりも第2座面方向Y2に配置され、外周縁部21を切り欠いて第2座面方向Y2に開口している。つまり、1つの側面20に設けられる2つの凹部22は、貫通孔17を境界として、座面方向の一方と他方に振り分けられている。
【0046】
図5は、
図3の矢印V方向から視た側面図である。凹部22は、座面10から第1垂直方向Z1に離隔している。凹部22の断面形状は、三角形状となっている。よって、凹部22の内面は、第1垂直方向Z1に向かうにつれて第1収容部5から離隔する第1斜面23と、第1垂直方向Z1に向かうにつれて第1収容部5に近づく第2斜面24と、を有している。
【0047】
以下、第1側面20aに設けられた凹部22を第1凹部22aと称し、第2側面20bに設けられた凹部22を第2凹部22bと称する。また、第1凹部22aに設けられた第1斜面23と第2斜面24は、第1斜面23a、第2斜面24aとする。第1凹部22aに設けられた第1斜面23と第2斜面24は、第1斜面23b、第2斜面24bとする。
【0048】
図3に示すように、第1側面20aに、戻り路8の出入り口である開口8aと、位置決め穴26と、が設けられている。位置決め穴26は、第1側面20aから第1軸方向X1に窪む穴である。また、位置決め穴26は、ナット本体1の外周面4の方にも開口している。位置決め穴26の内面は、位置決め穴26を座面方向から挟む一対の対向面26aと、位置決め穴26に対し第1軸方向X1に配置された側面26bと、位置決め穴26に対し第2垂直方向Z2に配置された底面26cと、を有している。次に、ミドルデフレクタ30について説明する。
【0049】
図6は、
図1のミドルデフレクタとその周辺を拡大した拡大図である。ミドルデフレクタ30は、金属粉末射出成型法、切削加工、又は鍛造などの方法により製造された金属製の部品である。
図6に示すように、ミドルデフレクタ30は、第1収容部5に配置される。よって、外周側から視ると、ミドルデフレクタ30は、第1収容部5(座面10)と同方向(軸心Oと直交する方向。
図4参照)に延在している。ミドルデフレクタ30は、デフレクタ本体(循環部品本体)31と、デフレクタ本体31から座面方向に突出する腕部50と、腕部50から第1垂直方向Z1に突出するリブ60と、リブ60の一部を加締めてなる加締め部70と、を備えている。なお、加締め部70は、ミドルデフレクタ30をナット本体1への組み付けの際、リブ60を加締めることで生成される。よって、組み付け前のミドルデフレクタ30を示す図面には、加締め部70が図示されていない。
【0050】
図7は、
図6のVII-VII線矢視断面図である。
図7に示すように、デフレクタ本体31の内部には、ボール103が通過するボール通路34が設けられている。また、デフレクタ本体31は、第1収容部5に配置される本体部32と、貫通孔17に配置される掬い上げ部33と、を有している。ボール通路34は、軌道106上のボール103の中心同士を結んで成る仮想円Cの接線方向(仮想線K2参照)に延びている。掬い上げ部33には、軌道106からボール103を掬い上げるタング35が設けられている。
【0051】
本体部32の第1垂直方向Z1の外周面32aは、円弧状と成している。また、軸方向から視て、本体部32の外周面32aは、ナット本体1の外周面4と重なっている。つまり、軸心Oからミドルデフレクタ30の外周面32aまでの距離は、ナット本体1の外径と同じとなっている。よって、ミドルデフレクタ30は、第1収容部5から突出していない。
【0052】
図8は、実施形態1の加締め前のミドルデフレクタを第1垂直方向から斜視した斜視図である。
図9は、実施形態1の加締め前のミドルデフレクタを第2垂直方向から斜視した斜視図である。
図10は、
図6のX-X線矢視断面図である。
図11は、
図6のXI-XI線矢視断面図である。
図12は、
図6の矢印XIIの方向から視た側面図である。
【0053】
図8、
図9に示すように、本体部32は、第1軸方向X1を向く側面として、第1対向面36を有している。第1対向面36は、第1側面20aと対向する。また、第1対向面36には、ボール通路34の出入り口である開口37が設けられている。
図10に示すように、開口37は、戻り路8の開口8aと軸方向に連続(隣接)している。これにより、ボール103は、ボール通路34から戻り路8に移動したり、又は戻り路8からボール通路34に移動したりすることができる。また、ボール103の受け渡しを円滑とするため、開口8aと開口37は、R面取りが行われている(
図2、
図10参照)。なお、本開示は、開口8aと開口37の面取りに関し、R面取りに代えて角面取りであってもよい。
【0054】
図8、
図9に示すように、第1対向面36には、第1軸方向X1に突出する位置決め突起38が設けられている。位置決め突起38は、四角柱状を成している。
図6に示すように、位置決め突起38は、位置決め穴26に挿入される。そして、位置決め突起38は、位置決め穴26の一対の対向面26aと当接している。このため、ミドルデフレクタ30は、所定の組み付け位置から座面方向に位置ずれしないように規制されている。
【0055】
図11に示すように、位置決め突起38の先端面38aは、位置決め穴26の側面26bと離隔している。つまり、先端面38aと側面26bの間に、隙間S10が生じている。これによれば、位置決め突起38が所定の突出量よりも大きく製造された場合、その製造誤差が隙間S10により吸収される。言い換えると、位置決め突起38が位置決め穴26の側面26bに当たり、第1側面20aと第1対向面36とが離隔してしまう、ということが回避される。
【0056】
なお、第1側面20aと第1対向面36との離隔は、戻り路8の開口8aとボール通路34の開口37の離隔を招き、ボール103の受け渡しが円滑に行われない。よって、ボール103の受け渡しを円滑に行うため、第1側面20aと第1対向面36とが当接していることが望ましい。
【0057】
また、位置決め突起38の底面38bは、位置決め穴26の底面26cと離隔している。つまり、底面38bと底面26cとの間に、隙間S11が生じている。これによれば、位置決め突起38が垂直方向の厚みが所定量よりも大きく製造された場合、その製造誤差が隙間S11により吸収される。よって、位置決め突起38が位置決め穴26の底面26dに当接し(引っ掛かり)、ミドルデフレクタ30が座面10に着座(当接)しない、ということが回避される。
【0058】
そのほか、位置決め突起38と位置決め穴26は、ミドルデフレクタ30に対し第1軸方向X1にのみ設けられている。このため、ミドルデフレクタ30を第1収容部5に配置する際、誤って位置決め突起38が第2軸方向X2を向いて(開口37が第2軸方向を向いて)配置される、ということが回避される。
【0059】
図7に示すように、本体部32の座面方向の長さL3は、掬い上げ部33の座面方向の長さL4よりも長い。このため、本体部32は、第2垂直方向Z2を向き、座面10に当接(着座)する着座面40を有している。また、着座面40は、第1座面11に当接する第1着座面41と、第2座面12に当接する第2着座面42と、を有している。つまり、ミドルデフレクタ30は、貫通孔17を挟んで座面方向の両側に着座面40を有している。
【0060】
図11に示すように、本体部32の軸方向の長さL5は、掬い上げ部33の軸方向の長さL6よりも長い。このため、着座面40は、掬い上げ部に33対し軸方向に配置された拡張着座面43を有している。拡張着座面43は、掬い上げ部33に対し第1軸方向X1に配置された第1拡張着座面44と、掬い上げ部33に対し第2軸方向X2に配置された第2拡張着座面45と、を有している。第1拡張着座面44は、座面10の第1拡張座面14に当接している。第2拡張着座面45は、第2拡張座面15に当接している。
【0061】
図11に示すように、本体部32は、第2軸方向X2を向く側面として、第2対向面46を有している。第2対向面46は、第2側面20bと対向している。また、第2対向面46は平面となっている。また、公差により、本体部32の軸方向の長さL5は、第1収容部5の軸方向の幅L7よりも僅かに小さい。つまり、第1側面20aと第1対向面36との間、又は第2側面20bと第2対向面46との間、若しくは、両方の間に微小な隙間(不図示)が生じている。このため、第1収容部5にミドルデフレクタ30を確実に収容することができる。
【0062】
図7に示すように、腕部50は、本体部32から第1座面方向Y1に延びる第1腕部51と、本体部32から第2座面方向Y2に延びる第2腕部52と、を有している。第1腕部51は、第2垂直方向Z2を向く側面として、腕部用第1着座面53を有している。第2腕部52は、第2垂直方向Z2を向く側面として、腕部用第2着座面54を有している。そして、腕部用第1着座面53は、第1座面11に当接している。腕部用第2着座面54は、第2座面12に当接している。
【0063】
次にリブ60について説明するが、
図6に示すように、リブ60は、第1腕部51及び第2腕部52のそれぞれに設けられている。よって、以下の説明では、第2腕部52に設けられた方のリブ60を説明し、第1腕部51の方の説明を省略する。
【0064】
図8に示すように、リブ60は、第2腕部52の第1垂直方向Z1を向く平面55から突出し、かつ座面方向に直線状に延びる突条である。リブ60の座面方向の長さは、第2腕部52と同じである。リブ60の第1座面方向Y1の端部は、本体部32(デフレクタ本体31)に接続している。以下、リブ60のうち本体部32と接続している端部を基部60aと称し、反対側の端部を先端部60bと称する。
【0065】
リブ60は、平面55の第1軸方向X1の縁部に沿って延在する第1リブ61と、平面55の第2軸方向X2の縁部に沿って延在する第2リブ62と、を有している。第1リブ61は、第1側面20aに沿って延在し、かつ第1凹部22aに対し軸方向に隣接している(
図14参照)。また、第2リブ62は、第2側面20bに沿って延在し、かつ第2側面20bの第2凹部22bに対し軸方向に隣接している(
図14参照)。
【0066】
図6に示すように、加締め部70は、側面20に沿って延在しているリブ60を、その側面20に加締めることで形成されている。リブ60のうち先端部60bにのみ、加締め部70が設けられている。加締め部70は、第1リブ61に設けられた第1加締め部71と、第2リブ62に設けられた第2加締め部72と、を有している。
【0067】
図12に示すように、第1加締め部71は、第1凹部22aに入り込んでいる。また、第1加締め部71は、第1凹部22aの内面に沿った形状となっている。詳細には、第1加締め部71は、平面55から第1垂直方向Z1に向かうにつれて、第1軸方向X1に位置するように傾斜している。そして、第1加締め部71のうち第1軸方向X1を向く側面71aは、第1斜面23aと当接している。また、第1加締め部71のうち第1垂直方向Z1を向く端面71bは、第2斜面24aと当接している。
【0068】
第2加締め部72は、第2凹部22bに入り込んでいる。第2加締め部72は、第2凹部22bの内面に沿った形状となっている。具体的には、第2加締め部72は、平面55から第1垂直方向Z1に向かうにつれて、第2軸方向X2に位置するように傾斜している。そして、第2加締め部72のうち第2軸方向X2を向く側面72aは、第1斜面23bと当接している。また、第2加締め部72のうち第1垂直方向Z1を向く端面72bは、第2斜面24bと当接している。以上から、第1加締め部71と第2加締め部72は、第1垂直方向Z1に向かうにつれて互いに軸方向に離隔するように傾斜している。
【0069】
図8、
図9に示すように、本実施形態のミドルデフレクタ30は、分割面80に沿って分割された2つの部品(内周側部品81と外周側部品82)を組み合わせて成る。
図7に示すように、分割面80は、軸方向に延びている。分割面80は、軸方向から視て、仮想円Cに対する接線(仮想線K2参照)と平行となっている。つまり、分割面80は、第1座面方向Y1に向かうにつれて第1垂直方向Z1に位置するように傾斜している。以下、ミドルデフレクタ30を構成する2つの部品のうち分割面80の内周側に配置される方を内周側部品81と称し、分割面80の外周側に配置される外周側部品82と称する。
【0070】
また、ミドルデフレクタ30の各構成は、分割面80を境界線として、内周側部品81と外周側部品82に振り分けられている。本実施形態においては、内周側部品81は、第1腕部51と、タング35と、拡張着座面43(
図9参照)と、を有している。一方、外周側部品82は、第2腕部52を有している。以下、分割面80に沿って延在する内周側部品81の端面を内周側分割面83と称する。また、分割面80に沿って延在する外周側部品82の端面を外周側分割面84と称する。
【0071】
分割面80は、ボール通路34の外周側と重なっている。このため、
図11に示すように、内周側部品81の内周側分割面83には、第1垂直方向Z1に開口するC字状又はU字状の溝である内周側転動面85が設けられている。一方で、外周側部品82の外周側分割面84は、平面となっている。そして、外周側分割面84の一部は、内周側転動面85を第1垂直方向Z1から覆う外周側転動面86を成している。なお、外周側分割面84が平面となっているため、外周側部品82の製造が容易となっている。
【0072】
内周側部品81と外周側部品82とは、それぞれ別個に製造されている。そして、内周側分割面83と外周側分割面84とが接合され、内周側部品81と外周側部品82が一体化している。なお、接合方法は、熱溶着や接着などが挙げられる。
【0073】
そのほか、
図7に示すように、分割面80の第1座面方向Y1の端部は、第1垂直方向Z1に延びている。言い換えると、内周側分割面83の第1座面方向Y1の端部に、第1垂直方向Z1に延び、かつ第2座面方向を向く段差面87が設けられている。一方、外周側分割面84の第1座面方向Y1の端部に、第1垂直方向Z1に延び、かつ第1座面方向Y1を向く端面88が設けられている。段差面87と端面88は当接している。よって、内周側部品81と外周側部品82を接合する際、座面方向に位置ずれしないように規制されている。
【0074】
次に、ナット本体1にミドルデフレクタ30を組み付ける組み付け方法Sについて説明する。組み付け方法Sは、準備工程S1と、加締め工程S2と、を含む。
【0075】
図13は、実施形態1の組み付け方法の準備工程を示す斜視図である。準備工程S1は、ナット本体1の座面10にミドルデフレクタ30を着座させる工程である。具体的には、
図13に示すように、最初に、ナット本体1の第1収容部5の第1垂直方向Z1に、ミドルデフレクタ30を配置する。ミドルデフレクタ30の姿勢は、着座面40(
図13で不図示)及び掬い上げ部33が第1収容部5の方を向くようにする。また、ミドルデフレクタ30の位置決め突起38が第1軸方向X1を指すようにする。なお、本実施形態のミドルデフレクタ30は位置決め突起38を有しているが、ミドルデフレクタ30が位置決め突起38を有していない場合、位置決め突起38に代えて開口37が第1軸方向X1を向いているかを確認する。
【0076】
次に、ミドルデフレクタ30を第2垂直方向Z2に移動し(
図13の矢印A1参照)、ミドルデフレクタ30を第1収容部5に挿入する。また、ミドルデフレクタ30を軸方向及び座面方向に位置調整し、掬い上げ部33が貫通孔17に挿入し、かつ位置決め突起38が位置決め穴26に挿入するようにする。そして、掬い上げ部が貫通孔17に挿入され、かつ位置決め突起38が位置決め穴26に挿入された後、さらにミドルデフレクタ30を第2垂直方向Z2に移動すると、ミドルデフレクタ30の着座面40が座面10に当接する。これにより、ミドルデフレクタ30が座面10に着座し、準備工程S1が終了となる。
【0077】
図14は、実施形態1の組み付け方法の加締め工程において、加締め前の状態を第2座面方向から視た側面図である。加締め工程S2は、治具120でリブ60を加締める工程である。なお、
図14に示すように、第1リブ61と第2リブ62との間における軸方向の隙間量はL8となっている。
【0078】
治具120は、第1リブ61と第2リブ62との間に挿入される頭部121と、頭部121の第1垂直方向Z1に配置された把持部122と、を備えている。頭部121の第2垂直方向Z2の端部に、先端部123が設けられている。先端部123の軸方向の幅は、第2垂直方向Z2に向かうにつれて幅狭となっている。
【0079】
先端部123は、第2垂直方向Z2を向く先端面124と、第1軸方向X1を向く第1押圧面125と、第2軸方向X2を向く第2押圧面126と、を有している。先端面124の軸方向の幅L9は、第1リブ61と第2リブ62との離間距離L8よりも小さい。
【0080】
また、第1押圧面125と第2押圧面126における軸方向の幅は、第1垂直方向Z1に向かうにつれて次第に大きくなり、最大でL10となっている。そして、第1押圧面125と第2押圧面126における軸方向の最大幅L10は、第1リブ61と第2リブ62との離間距離L8よりも大きい。
【0081】
治具120による加締め方法は、最初に、第1垂直方向Z1から治具120の先端部123を第1リブ61と第2リブ62との間に挿入する(
図14の矢印A2参照)。これによれば、特に図示しないが、先端面124が第1リブ61と第2リブ62の間に挿入され、第1押圧面125が第1リブ61に当接し、第2押圧面126が第2リブ62に当接する。また、先端面124は、腕部50の平面55から浮いた(離間した)状態となる。
【0082】
図15は、実施形態1の組み付け方法の加締め工程において、加締め後の状態を第2座面方向から視た側面図である。そして、
図15に示すように、治具120を第2垂直方向Z2に押し込み、先端面124が平面55に当接させる。これにより、第1リブ61は、第1押圧面125により、第1軸方向X1に加締められる。また、第2リブ62は、第2押圧面126により、第2軸方向X2に加締められる。
【0083】
そして、第1リブ61のうち加締められた部分は、第1軸方向X1に配置された第1凹部22aに向かって傾倒し、第1加締め部71と成る。また、第1加締め部71は、第1凹部22aの内面と第1押圧面125との間で軸方向に圧縮され、第1凹部22aの内面に沿った形状となる。つまり、第1加締め部71は、第1斜面23aに沿って延在する側面71aと、第2斜面24aに沿って延在する端面71bと、を有している。
【0084】
同様に、第2リブ62のうち加締められた部分は、第2軸方向X2に配置された第2凹部22bに向かって傾倒し、第2加締め部72と成る。また、第2加締め部72は、第2凹部22bの内面と第2押圧面126との間で軸方向に圧縮され、第1凹部22aの内面に沿った形状となる。つまり、第2加締め部72は、第1斜面23bに沿って延在する側面72aと、第2斜面24bに沿って延在する端面72bと、を有している。
【0085】
そして、第1加締め部71と第2加締め部72が生成されたら、治具120を第1垂直方向Z1に離脱させ、加締め工程S2が終了となる。
【0086】
図16は、実施形態1の加締め工程を第1垂直方向から視た平面図である。
図16に示すように、加締め工程S2において、治具120で加締める部位は、リブ60全体でなく、リブ60の先端部60bとする。リブ60の基部60aは、デフレクタ本体31と接続して傾倒し難いからである。また、リブ60の基部60aを無理に加締めると、デフレクタ本体31が変形する可能性がある。
【0087】
そして、リブ60の先端部60bを加締めると、第1垂直方向Z1から視て、第1加締め部71と第2加締め部72は、略ハ字状を成している。つまり、第1加締め部71と第2加締め部72は、先端部60b側に向かうにつれて、軸方向に傾倒する量が増加している。なお、加締めた先端部60bだけでなく、リブ60のうち座面方向の中央部も軸方向へ僅かに傾倒する。
【0088】
一方で、加締作業中、ミドルデフレクタ30には、リブ60が治具120からの荷重に対し、逃げる方向に向かう荷重が作用する(矢印A3、A4参照)。詳細には、第1腕部51のリブ60を加締める場合、ミドルデフレクタ30には、第2座面方向Y2の荷重が作用する(矢印A3参照)。一方、第2腕部52のリブ60を加締める場合、ミドルデフレクタ30には、第1座面方向Y1の荷重が作用する(矢印A4参照)。よって、位置決め突起38が変形し、ミドルデフレクタ30が位置ずれしてしまう可能性がある。
【0089】
図17は、実施形態1の加締め工程において2つの治具で加締めている状態を斜視した斜視図である。よって、加締め工程S2においては、
図17に示すように、治具120を2つ用意し、第1腕部51のリブ60と第2腕部52のリブ60を同時に加締めることが望ましい。これによれば、第1腕部51に作用する荷重(
図16の矢印A3参照)と、第2腕部52に作用する荷重(
図16の矢印A4参照)と、が対向して相殺される。よって、位置決め突起38の変形が回避される。
【0090】
また、第1腕部51を有する内周側部品81と、第2腕部52を有する外周側部品82は、段差面87と端面88とが当接している(
図7参照)。よって、2つの治具120で第1腕部51と第2腕部52を同時に加締めても、内周側部品81と外周側部品82との接合が解除されないようになっている。
【0091】
次に、実施形態1のボールねじ装置100の作用効果について説明する。実施形態1において、ミドルデフレクタ30に第1垂直方向Z1に荷重が作用した場合、加締め部70が凹部22に引っ掛かる。よって、ミドルデフレクタ30は、第1垂直方向Z1に位置ずれしない。つまり、ミドルデフレクタ30は、ナット本体1から離脱しない。また、本実施形態において、リブ60の基部60aがデフレクタ本体31に接続しており、リブ60及び加締め部70は、剛性が高く、傾倒し難い。よって、ミドルデフレクタ30に第1垂直方向Z1に荷重が作用し、加締め部70が第2斜面24に引っ掛かったとしても、加締め部70が変形し難い(さらに傾倒し難い)。このことからも、ミドルデフレクタ30が第1垂直方向Z1に位置ずれしないようになっている。
【0092】
また、加締め部70は、第1腕部51及び第2腕部52のそれぞれに設けられている。つまり、実施形態1によれば、2つの腕部50のうち一方にのみ、加締め部70が設けられている場合よりも、加締め個所(加締め部70)が多い。よって、ミドルデフレクタ30の抜け止めが強固となっている。また、2つの腕部50は、一方が内周側部品81に設けられ、他方が外周側部品82に設けられている。このため、仮に内周側部品81と外周側部品82との接合が解除された場合であっても、内周側部品81と外周側部品82のそれぞれは、ナット本体1から離脱しない。
【0093】
また、加締め部70は、1つの腕部50に対し、第1加締め部71と第2加締め部72を有している。つまり、1つの腕部50に対し加締め部70が1つ設けられている場合よりも、加締め個所(加締め部70)が多い。よって、ミドルデフレクタ30の抜け止めがより強固となっている。
【0094】
なお、ミドルデフレクタ30は、座面10に当接する個所が貫通孔17に対し座面方向の軸方向の一方だけとなっている場合、デフレクタ本体31が貫通孔17に落ち、ミドルデフレクタ30が傾いてしまう可能性がある。この結果、タング35が位置ずれし、ボール103の掬い上げが円滑に行われない。一方、本実施形態のミドルデフレクタ30は、着座面40として、貫通孔17に対し第1座面方向Yに配置される第1着座面41及び腕部用第1着座面53と、貫通孔17に対し第2座面方向Y2に配置される第2着座面42及び腕部用第2着座面54と、を有している。つまり、ミドルデフレクタ30は、貫通孔17を挟んで座面方向の両側に着座面40を有している。よって、デフレクタ本体31が貫通孔17に脱落せず、ミドルデフレクタ30の姿勢が安定している。この結果、ボール103の掬い上げが円滑に行われる。
【0095】
また、ミドルデフレクタ30は、座面10の拡張座面13に当接する拡張着座面43を有している。よって、ミドルデフレクタ30の姿勢がより安定化する。また、拡張着座面43は、内周側部品81に設けられている。よって、内周側部品81と外周側部品82との接合が仮に解除されても、拡張着座面43が拡張座面13に引っ掛かり、内周側部品81による貫通孔17への脱落が回避される。
【0096】
また、内周側部品81と外周側部品82との分割面80は、ボール通路34に沿って軸方向に延びている。仮に、分割面が軸方向に直交する方向(座面方向と垂直方向の両方に延びる平面)とした場合、タングが軸方向に分割され、タングの強度が低下してしまう。つまり、本実施形態では、ボール通路34を軸方向から切ることで、タング35を分割することなく、内周側部品81の構成としている。このため、タング35の強度が保持されている。
【0097】
以上、実施形態1のボールねじ装置100は、ナット101と、ナット101を貫通するねじ軸102と、ナット101とねじ軸102の間に配置された複数のボール103と、を備えている。ナット101は、円筒状を成し、ねじ軸102に貫通されるナット本体1と、ナット本体1に組み付けられる循環部品(ミドルデフレクタ30)と、を備えている。ナット本体1は、ナット本体1の外周面4に設けられた窪みであり、ねじ軸102と平行な軸方向から視て弓形状の収容部(第1収容部5)と、収容部の底面を成す座面10と、座面10とナット本体1の内周面2を貫通する貫通孔17と、収容部(第1収容部5)に対し、ねじ軸102と平行な軸方向の両側に配置され、互いに対向する一対の側面20と、を有している。軸方向から視て座面と平行な方向は、座面方向である。座面に対する垂線(仮想線K2)と平行な方向であり、座面10が向く方向は、第1垂直方向Z1である。循環部品(ミドルデフレクタ30)は、収容部及び貫通孔17に配置される循環部品本体(デフレクタ本体31)と、循環部品本体から座面方向の両側に延び、座面と当接する2つの腕部50と、2つの腕部50のそれぞれから第1垂直方向Z1に突出し、側面20に沿って座面方向に延びるリブ60と、リブ60の少なくとも一部が側面に向かって加締められて成る加締め部70と、を有している。一対の側面20には、座面方向に延びる溝であり、リブ60と軸方向に対向し、かつ加締め部70が入り込む凹部22が設けられている。循環部品本体(デフレクタ本体31)には、ボール103の軌道106に対し接線方向(仮想線K1)に延びるボール通路34が設けられている。循環部品(ミドルデフレクタ30)は、軸方向から視てボール通路34に沿って延在する分割面80で分割された内周側部品81と外周側部品82Eを接合して成る。内周側部品81は、軌道106からボール103を掬い上げるタング35と、ボール通路34の内周側を囲む内周側転動面85と、2つの腕部50のうちの一方と、を有している。外周側部品82は、ボール通路34の外周側を囲む外周側転動面86と、2つの腕部50のうちの他方と、を有している。
【0098】
実施形態1によれば、循環部品(ミドルデフレクタ30)は、ナット本体1から離脱しない。また、循環部品(ミドルデフレクタ30)を固定するピンが不要となり、部品点数の増加が抑制される。また、仮に内周側部品81と外周側部品82との接合が解除されたとしても、内周側部品81と外周側部品82は、それぞれ腕部50を1つずつ有している。よって、内周側部品81と外周側部品82は、それぞれ貫通孔17に脱落しないし、ナット本体1から離脱もしない。また、タング35は、分割されることなく、内周側部品81に一体に設けられている。よって、タング35の強度が保持され、ボール103の掬い上げが円滑に行われる。
【0099】
また、実施形態1において、一対の側面20は、循環部品(ミドルデフレクタ30)よりも軸方向の一方に配置された第1側面20aと、循環部品よりも軸方向の他方に配置された第2側面20bと、を有している。リブ60は、第1側面20aに沿って延在する第1リブ61と、第2側面20bに沿って延在する第2リブ62と、を有している。加締め部70は、第1リブ61の一部であり、第1側面20aの方に加締められた第1加締め部71と、第2リブ62の一部であり、第2側面20bの方に加締められた第2加締め部72と、を有している。
【0100】
実施形態1によれば、加締め個所(加締め部70)が多く、ミドルデフレクタ30の抜け止めをより強固となる。
【0101】
また、実施形態1のナット本体1は、側面20から軸方向に窪み、かつナット本体1の外周面4に開口する位置決め穴26を有している。循環部品本体(デフレクタ本体31)は、軸方向に突出し、位置決め穴26に挿入される位置決め突起38を有している。
【0102】
実施形態1によれば、ミドルデフレクタ30の座面方向の位置ずれが規制される。よって、タング35が所定の位置に配置され、ボール103の掬い上げが円滑に行われる。
【0103】
また、実施形態1の座面10は、貫通孔17の縁部17aであり、貫通孔17に対し軸方向の両側に配置された拡張座面13を有している。内周側部品81は、拡張座面13に当接する拡張着座面43を有している。
【0104】
実施形態1によれば、座面10に当接する部位が増え、ミドルデフレクタ30の姿勢がさらに安定する。また、内周側部品81による貫通孔17への脱落を回避できる。
【0105】
以上、実施形態1のボールねじ装置100について説明した。次に、実施形態1のナットの一部を変形した他の実施形態を説明する。実施形態1のナット101は、公差の観点から、第1側面20aと第1対向面36との間、又は第2側面20bと第2対向面46の間、若しくは両方の間で、微小な隙間(不図示)が生じている。仮に、第1側面20aと第1対向面36との隙間が大きいと、ボール通路34の開口37と戻り路8の開口8aが離隔し、ボール103の受け渡しが円滑とならない。以下、この点を改良した第2実施形態から第4実施形態について説明する。なお、以下の説明では、実施形態1からの変更点に絞って説明する。
【0106】
(実施形態2)
図18は、実施形態2のナットにおいて、リブを加締める前の状態を第2座面方向から視た側面図である。
図19は、実施形態2のナットにおいて、リブを加締めた後の状態を第2座面方向から視た側面図である。
図18に示すように、実施形態2のミドルデフレクタ30Aは、軸方向の厚みが互い異なる第1リブ61Aと第2リブ62Aを備えている点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。なお、
図18では、第2腕部のリブのみを図示しているが、第1腕部51にも第1リブ61Aと第2リブ62Aが設けられている。
【0107】
第2リブ62Aの軸方向の厚みL12は、第1リブ61Aの軸方向の厚みL11よりも小さい。第1リブ61Aを治具120(
図14等参照)で加締めると、
図19に示すように、第1加締め部71Aが生成される。また、第2リブ62Aを治具120(
図14等参照)で加締めると、第2加締め部72Aが生成される。
【0108】
治具120で第1リブ61A及び第2リブ62Aを同時に加締めると、軸方向の厚みが小さい剛性の小さい第2リブ62Aは、第1リブ61Aよりも早く倒れ始める(変形し始める)。そして、第2リブ62Aの加締められている部分(第2加締め部72A)は、第1リブ61Aの加締められている部分(第1加締め部71A)よりも、早く凹部22の内面に当接し、凹部22の内面を押圧する。このため、ミドルデフレクタ30Aには、第2加締め部72Aの押圧に対抗する反力(矢印A5参照)が作用する。そして、ミドルデフレクタ30Aが第1軸方向X1に移動し、第1対向面36は第1側面20aに当接した状態になる。
【0109】
以上、実施形態2によれば、ボール通路34の開口37と戻り路8の開口8aが連続(隣接)し、ボール103の受け渡しが円滑となる。
【0110】
(実施形態3)
図20は、実施形態3のナットにおいて、リブを加締める前の状態を第2座面方向から視た側面図である。
図21は、実施形態3のナットにおいて、リブを加締めた後の状態を第2座面方向から視た側面図である。
図20に示すように、実施形態3のミドルデフレクタ30Bは、第1リブ61と第2リブ62に代えて第1リブ61Bと第2リブ62Bを備えている点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。
【0111】
第1リブ61Bは、第2軸方向X2を向く第1加締め面61aを有している。第2リブ62Bは、第1軸方向X1を向く第2加締め面62aを有している。第1加締め面61a及び第2加締め面62aは、互いに対向している。第1加締め面61aは、第1垂直方向Z1に向かうにつれて第1側面20aに近づくように(第1軸方向X1の方に)傾斜した傾斜面となっている。
【0112】
治具120で第1加締め面61aを加締めると、第1加締め面61aに作用する加締め荷重(第1軸方向X1の荷重)の一部は、第2垂直方向Z2の荷重に変換される。つまり、第1リブ61Bに作用する第1軸方向X1の荷重が低減する。また、第1リブ61Bの基部側(腕部50寄りの部分)は、軸方向の厚みが大きく、剛性が高い。以上から、第1リブBは、第2リブ62Bよりも変形し難い。よって、第1リブ61Bと第2リブ62Bを治具120で同時に加締めた場合、第1リブ61Bは、第2リブ62Bよりも遅く倒れる。よって、第2リブ62Bの加締められている部分(第2加締め部72B)は、第1リブ61Bよりも先に凹部22の内面に当接し、さらに凹部を22の内面を押圧する。この結果、第2加締め部72Bが凹部22の内面から反力(矢印A7参照)を受け、ミドルデフレクタ30Bが第1軸方向X1に移動し、第1対向面36は第1側面20aに当接した状態になる。
【0113】
以上、実施形態3によれば、ボール通路34の開口37と戻り路8の開口8aが連続(隣接)し、ボール103の受け渡しが円滑となる。
【0114】
(実施形態4)
図22は、実施形態4のミドルデフレクタを第2軸方向から視た斜視図である。
図23は、実施形態4のナットにおいて第2側面と第2対向面との隙間を第1垂直方向から視た拡大図である。
図22に示すように、実施形態4のミドルデフレクタ30Cは、第2対向面46に複数の凸部47が設けられている点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。
【0115】
凸部47は、ミドルデフレクタ30Cに一体に形成された突起である。凸部47は、半球状を成している。よって、凸部47を座面方向と垂直方向とに延在する平面で切った断面は円形状を成している。凸部47の軸方向の突出量は、第1収容部5とミドルデフレクタ30Cとの間で発生する軸方向の微小隙間(公差)よりも大きい。
【0116】
図23に示すように、実施形態4のミドルデフレクタ30Cを第1収容部5に挿入すると、凸部47が第2側面20bに押圧され、凸部47の先端部が潰れる。これにより、ミドルデフレクタ30Cは、第1軸方向X1に押圧され(
図23の矢印A8を参照)、第1対向面36が第1側面20aに当接する。以上、実施形態4によっても、ボール通路34の開口37と戻り路8の開口8aが連続(隣接)し、ボール103の受け渡しが円滑となる。なお、本実施形態では、凸部47を複数有しているが、本開示は、凸部47が少なくとも1つ以上有していればよい。また、凸部47の形状は半球状に限定されず、円柱、角柱、錐体、及び錐台であってもよく、特に限定されない。
【0117】
以上、実施形態2から実施形態4について説明したが、本開示は、実施形態2から実施形態4の技術的内容を組み合わせてもよい。つまり、本開示は、実施形態2から実施形態4の全てを適用してもよい。若しくは、実施形態2から実施形態4のうち2つを選択して適用してもよい。
【0118】
(実施形態5)
図24は、実施形態5のミドルデフレクタを斜視した斜視図である。実施形態5のミドルデフレクタ30Dは、腕部50Dの座面方向の長さがリブ60の座面方向の長さよりも長くなっている点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。つまり、実施形態5の腕部50Dの先端部50aは、リブ60の先端部60bよりも座面方向の外側に突出している。このミドルデフレクタ30Dによれば、座面10との当接面積が増加し、ミドルデフレクタ30Dの姿勢がより安定する。
【0119】
また、実施形態5のミドルデフレクタ30Dは、位置決め突起38が第1対向面36と第2対向面46(
図24で不図示、
図11、
図12参照)との両方に設けられている点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。なお、特に図示しないが、ナット本体1の第1側面20aと第2側面20bのそれぞれにも位置決め穴26が設けられている。これによれば、ミドルデフレクタ30Dによる座面方向への位置決めを強固とすることができる。そのほか、本開示は、実施形態5のミドルデフレクタ30Dのように拡張着座面43(
図9参照)を有していなくてもよい。
【0120】
また、実施形態5によれば、位置決め突起38が第1対向面36と第2対向面46との両方に設けられ、ミドルデフレクタ30の向きを誤った状態で第1収容部5に配置する可能性がある。よって、実施形態5のミドルデフレクタ30Dにおいては、デフレクタ本体(循環部品本体)31の外周面に、第1収容部(収容部)5に対するデフレクタ本体(循環部品本体)31の組み付け方向を示す標識を付することが好ましい。
【0121】
(実施形態6)
図25は、実施形態6のミドルデフレクタを第1軸方向から視た側面図である。
図26は、実施形態6のミドルデフレクタを、座面方向及び垂直方向に延びる平面で切った断面図である。
図25に示すように、実施形態6のミドルデフレクタ30Eは、内周側部品81と外周側部品82とに代えて、内周側部品81Eと外周側部品82Eを有している点で、実施形態1のミドルデフレクタ30と相違する。
【0122】
内周側部品81Eと外周側部品82Eとの分割面90は、軸方向から視て、ボール通路34に沿って延在する斜面91と、斜面91の両端部のうち径方向外側の端部から第1座面方向Y1に延びる横面92と、横面92の第1座面方向Y1から第2垂直方向Z2に延びる縦面93と、を備えている。また、縦面93には嵌合部94が設けられている。
【0123】
以下、内周側部品81Eの内周側分割面83Eのうち、斜面91に位置する部分を内周側斜面91a、横面92に位置する部分を内周側横面92a、縦面93に位置する部分を内周側縦面93aと称する。また、外周側部品82Eの外周側分割面84Eのうち、斜面91に位置する部分を外周側斜面91b、横面92に位置する部分を外周側横面92b、縦面93に位置する部分を外周側縦面93bと称する。
【0124】
斜面91は、第1垂直方向Z1に向かうにつれて第1座面方向Y1に位置するように傾斜している。また、斜面91は、軸方向から視て、ボール通路34の中央部と重なっている。よって、
図26に示すように、内周側部品81Eの内周側斜面91aには、第1垂直方向Z1に開口するC字状の内周側転動面85が設けられている。また、外周側部品82Eの外周側斜面91bには、第2垂直方向Z2に開口するC字状の外周側転動面86が設けられている。よって、内周側分割面83Eと外周側分割面84Eのそれぞれには、溝面(内周側転動面85と外周側転動面86)が設けられている。よって、実施形態1よりもボール103はボール通路34を円滑に転動する。
【0125】
横面は92、座面10と平行となっている。縦面93は、垂直方向と平行となっている。嵌合部94は、突条95と、溝部96と、を有している。突条95は、内周側縦面93aから第1座面方向Y1に突出している。溝部96は、外周側縦面93bから第1座面方向Y1に窪んでいる。突条95と溝部96は、それぞれ、軸方向に延びている。そして、突条95は、溝部96に対して軸方向から挿入されて嵌合している。
【0126】
また、実施形態6の内周側部品81Eは、タング35と、内周側転動面85を有している。外周側部品82Eは、外周側転動面86と、2つの腕部50を有している。
【0127】
以上、実施形態6のミドルデフレクタ30Eのミドルデフレクタ(循環部品)30Eは、軸方向から視てボール通路34に沿って延在する分割面90で分割された内周側部品81Eと外周側部品82Eを接合して成る。内周側部品81Eは、軌道106からボール103を掬い上げるタング35と、ボール通路34の内周側を囲む内周側転動面85と、分割面に沿って延在する内周側分割面83Eと、を有している。外周側部品82Eは、ボール通路34の外周側を囲む外周側転動面86と、2つの腕部50と、分割面90に沿って延在する外周側分割面84Eと、を有している。内周側分割面83Eと外周側部品82Eの外周側分割面84Eのうち一方には、座面方向に突出し、かつ軸方向に延びる突条95が設けられている。内周側分割面83Eと外周側部品82Eの外周側分割面84Eのうち他方には、座面方向に窪み、かつ軸方向に延びて突条95が嵌合する溝部96が設けられている。
【0128】
以上、実施形態6のミドルデフレクタ30Eによれば、実施形態1と同様に加締め部(
図25、
図26で不図示)を有し、第1垂直方向Z1に位置ずれしない。また、仮に内周側部品81Eと外周側部品82Eとの接合が解除された場合、外周側部品82Eは、2つの腕部50を有しており、垂直方向に位置ずれしない。一方で、内周側部品81Eは、腕部50を有していないものの、突条95が溝部96に引っ掛かり、第2垂直方向Z2に位置ずれしない。つまり、内周側部品81Eによる貫通孔17への脱落が回避される。また、タング35は、分割されることなく一体に内周側部品81Eに設けられている。よって、タング35の強度が保持されており、ボール103の掬い上げが円滑に行われる。
【0129】
また、内周側部品81Eと外周側部品82Eとの接合が解除され、内周側部品81Eが軸方向にスライドすると、貫通孔17の縁部17a(
図4参照)に接触する。よって、突条95が軸方向にスライドして溝部96との嵌合が解除される、ということが生じないようになっている。また、溝部96の第2座面方向Y2に、外周側斜面91bが配置されている。よって、内周側部品81Eは、第2座面方向Y2への移動が規制されている。このため、突条95が第2座面方向Y2に移動して溝部96との嵌合が解除される、ということが生じないようになっている。以上から、内周側部品81Eは、嵌合が解除される方向への移動が規制されている。このため、内周側部品81Eは、外周側部品82Eから分離しないため、貫通孔17にも脱落しない。
【0130】
以上、各実施形態について説明したが、本開示は、ミドルデフレクタ30と第1収容部5(座面10)を外周側から視た場合、軸心Oと直交する方向(
図4参照)に延在しているものに限定されない。例えば、ミドルデフレクタ30及び第1収容部5(座面10)は、軌道106と平行な方向に延在してもよい。つまり、外周側から視て、軸心Oに対し直交する方向以外に傾斜していてもよく、特に限定されない。また、ミドルデフレクタ30及び座面10を傾斜して配置する場合、座面10と同じ方向に貫通孔17を傾斜させてもよい。
【0131】
また、実施形態では、腕部50の軸方向両側に、加締め部70(第1加締め部71、第2加締め部72)が設けられているが、本開示は、腕部50の軸方向の一方にのみ、加締め部70を設けるようにしてもよい。また、実施形態では、第1腕部51と第2腕部52の両方に加締め部70が設けられているが、第1腕部51と第2腕部52のうち一方にのみ、加締め部70を設けるようにしてもよい。
【0132】
また、実施形態のミドルデフレクタ30の外周面32aが円弧状となっているが、本開示はミドルデフレクタ30の外周面32aが円弧状でなくてもよい。また、本開示は、軸心Oからミドルデフレクタ30の外周面32aまでの距離は、ナット本体1の外径よりも小径となっていてもよい。
【0133】
また、実施形態の拡張座面13は、第1拡張座面14と第2拡張座面15を有しているが、本開示は、第1拡張座面14又は第2拡張座面15からなる拡張座面13であってもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 ナット本体
5 第1収容部(収容部)
8 戻り路
10 座面
11 第1座面
12 第2座面
13 拡張座面
14 第1拡張座面
15 第2拡張座面
17 貫通孔
20 側面
20a 第1側面
20b 第2側面
22 凹部
22a 第1凹部
22b 第2凹部
23、23a、23b 第1斜面
24、24a、24b 第2斜面
26 位置決め穴
30、30A、30B、30C、30D、30E ミドルデフレクタ(循環装置)
31 デフレクタ本体(循環部品本体)
32 本体部
33 掬い上げ部
34 ボール通路
36 第1対向面
38 位置決め突起
40 着座面
41 第1着座面
42 第2着座面
43 拡張着座面
44 第1拡張着座面
45 第2拡張着座面
46 第2対向面
47 凸部
50、50D 腕部
51 第1腕部
52 第2腕部
53 腕部用第1着座面
54 腕部用第2着座面
60 リブ
61、61A、61B 第1リブ
61a 第1加締め面
62、62A、62B 第2リブ
62a 第2加締め面
70 加締め部
71、71A、71B 第1加締め部
72、72A、72B 第2加締め部
80、90 分割面
81、81E 内周側部品
82、82E 外周側部品
83、83E 内周側分割面
84、84E 外周側分割面
85 内周側転動面
86 外周側転動面
87 段差面
88 端面
91 斜面
91a 内周側斜面
91b 外周側斜面
92 横面
92a 内周側横面
92b 外周側横面
93 縦面
93a 内周側縦面
93b 外周側縦面
94 嵌合部
95 突条
96 溝部
100 ボールねじ装置
101 ナット
102 ねじ軸
103 ボール
120 治具
【要約】
部品点数の増加を抑制できるナットを提供する。本開示のナットは、ナット本体と循環部品を備える。ナット本体は、軸方向から視て弓形状の収容部と、座面と、貫通孔と、一対の側面を有する。循環部品は、循環部品本体と、循環部品本体から座面方向の両側に延びる2つの腕部と、2つの腕部のそれぞれから突出するリブと、リブが加締められて成る加締め部を有する。一対の側面には、加締め部が入り込む凹部が設けられている。循環部品本体には、ボール通路が設けられている。循環部品は、軸方向から視てボール通路に沿って分割された内周側部品と外周側部品を接合して成る。内周側部品は、ボールを掬い上げるタングと、ボール通路の内周側を囲む内周側転動面と、2つの腕部のうちの一方と、を有している。外周側部品は、ボール通路の外周側を囲む外周側転動面と、2つの腕部のうちの他方と、を有している。