(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01R15/20 D
G01R15/20 B
(21)【出願番号】P 2019038019
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満男
(72)【発明者】
【氏名】森上 陽介
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090168(JP,A)
【文献】特開2017-215200(JP,A)
【文献】特開2013-122400(JP,A)
【文献】特開2015-135239(JP,A)
【文献】特開2017-090312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非可とう性導体に流れる電流を検出する電流センサであって、
被検出電流により生じる磁束を集める
磁性材料からなるコアを備え、前記コアは前記非可とう性導体の水平方向と垂直方向を取り囲むように配置され、水平方向の一部に空気からなる間隙部を設け、
前記間隙部に挿入された前記磁束を検出する磁気検出素子を備え、前記コアと前記磁気検出素子は前記非可とう性導体1本当たりに1つずつ配置され、前記複数の非可とう性導体は水平方向に配置され、
前記コアは、前記非可とう性導体毎で前記コアの水平方向の寸法と前記間隙部
の水平方向の寸法が異なる形状であり、前記コアの水平方向の寸法が他より長い場合、前記間隙部の水平方向の寸法は、他より長いことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記複数の非可とう性導体は同一面上に
水平方向に配置された3本のバスバーであり、中央に配置された前記コアの
前記水平方向の寸法よりも、その外両側に配置された前記コアの
前記水平方向の寸法が長いことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数相の電流を検出する複数相一体型電流センサの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流センサは、バスバーの電流を検出するために、電流により生じる磁束を間隙部に集めるC形形状のコアと、コアの間隙部に挿入され磁束密度を検出する感磁素子と、それらを保持し、且つ、バスバーを通す開口部を設けたケースで構成される。
【0003】
3相モータ等の電流を検出する3相一体型の電流センサにおいては、通常、水平方向に3本並んでいるバスバーの電流を同時に検出できるように、前記C形形状コアと感磁素子及びケースの開口部が水平方向に3個横並びに構成されており開口部は所定のバスバーが貫通できるように3個が同一の大きさとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-139556号公報(第10頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の電流センサにおいて水平方向に並んでいるバスバーは、電流センサで検出する電流を発生させる電力変換装置の端子ピッチ寸法に合わせて配置されるのが望ましいが、電力変換装置の端子ピッチ寸法は統一されていない。例えば所定同一定格品の端子ピッチは、A社が47mm、B社が48mm、C社が41mmと31mmと異なっている。よって、同一ピッチの開口部を備えた電流センサがない場合は、直線のバスバーで電力変換装置から電流センサへの電流経路を形成することができない。
この場合は、電力変換装置から電流センサの開口部までの電流経路を形成するため、クランク形状のバスバーを使用するなど、直線のバスバーを使用することに比べて経済的でない方法をとる必要がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、バスバーピッチの異なる直線バスバーの電流を1種類の電流センサで検出することが可能となる複数相一体型電流センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電流センサは、複数の非可とう性導体に流れる電流を検出する電流センサであって、
被検出電流により生じる磁束を集める磁性材料からなるコアを備え、前記コアは前記非可とう性導体の水平方向と垂直方向を取り囲むように配置され、水平方向の一部に空気からなる間隙部を設け、
前記間隙部に挿入された前記磁束を検出する磁気検出素子を備え、前記コアと前記磁気検出素子は前記非可とう性導体1本当たりに1つずつ配置され、前記複数の非可とう性導体は水平方向に配置され、
前記コアは、前記非可とう性導体毎で前記コアの水平方向の寸法と前記間隙部の水平方向の寸法が異なる形状であり、前記コアの水平方向の寸法が他より長い場合、前記間隙部の水平方向の寸法は、他より長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の導体ピッチを1種類の電流センサで検出することが可能となり、導体の所定ピッチへの調整加工が不要となる。また、使用するピッチに合わせた電流センサを新規開発する必要がないため、安価に電力変換装置と電流センサを使用した装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1の電流センサにおいて、バスバーピッチが狭い時に使用した場合の外観図。
【
図2】本発明の実施の形態1の電流センサにおいて、バスバーピッチが広い時に使用した場合の外観図。
【
図3】本発明の実施の形態1の電流センサにおいて、バスバーピッチが狭い時に使用した場合の斜視図。
【
図4】本発明の実施の形態1の電流センサにおいて、バスバーピッチが広い時に使用した場合の斜視図。
【
図5】本発明の実施の形態1の電流センサの内部構造図。バスバーは、コア開口部中心を通した時の状態。
【
図6】本発明の実施の形態1の電流センサのコアの間隙寸法を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1における電流センサ1において、ピッチP1が狭いバスバー2a,2b,2cを電流センサ1の開口部6a、6b、6cに貫通させた場合の外観図であり、
図3はその斜視図である。
図2は、ピッチP2が広いバスバー2a,2b,2cを電流センサ1の開口部6a、6b、6cに貫通させた場合の外観図であり、
図4はその斜視図である。
図3において、電力変換装置7は3相電圧、電流の周波数、大きさを制御し出力端子8a、8b、8cに出力し、それらに接続されたバスバー2a、2b、2cを介して3相モータ(図示せず)に接続されている。電流センサ1の中央の開口部6bは、バスバー2bが貫通できる四角形状であり、左右の開口部6a、6cは水平方向に長い四角形状である。電力変換装置7の出力端子8a、8b、8cはピッチP1が狭く、バスバー2a、2cは開口部6a、6cの枠中の開口部6b側に偏って配置されている。
図4において、電力変換装置9の出力端子10a、10b、10cのピッチP2が広く、バスバー2a、2cは、開口部6a、6cの枠中の外側に偏って配置されている。
【0011】
図5は、電流センサ1の内部構造図である。コア3a、3b、3cは開口部6a、6b、6cの周囲を取り巻くように配置されたC形形状を有し、左右に配置されたコア3a,3cは、中央に配置されたコア3bよりも水平方向に長くなっている。感磁素子4a、4b、4cは、コア3a、3b、3cの間隙部に挿入する形でプリント基板5に固定され、その出力信号は電子回路(図示せず)により検出され出力される。
【0012】
図6は、コアの間隙寸法を示したものである。左右のコア3a、3cの間隙寸法はW2、中央のコア3bの間隙寸法はW1で、W1<W2の関係となっている。
【0013】
本実施の形態によれば、中央のコア3bよりも水平方向に広い空間をもたせる為に、左右のコア3a、3cのコア磁路長を長くすることにより生じるコア3a、3c磁気飽和特性悪化を、間隙寸法W2を広くすることでコア3a、3c磁気抵抗を増加させることで改善し、感磁素子4a、4cの検出誤差を低減することができる。
【0014】
磁路長の短い中央のコア3bには、間隙寸法W2より狭い間隙寸法W1にすることで間隙部に発生する磁束密度を大きく得ることができる。感磁素子4bは、間隙部に発生した磁束密度に比例した電圧を出力し、感磁素子と同一集積回路内又はプリント基板上に構成された電子回路により所望の電圧に増幅して使用されるが、磁束密度を大きくすることで感磁素子4bが発生する電圧を大きくすることができるため、電子回路の増幅率を下げることができる。これにより、感磁素子及び電子回路から発生する誤差の増幅も低減させることができるため、電子回路の設計、部品選定、調整を簡易化、低コスト化することができる。
【0015】
本実施の形態では、3本のバスバー2a、2b、2cのピッチは同一の場合を示したが、P1とP2の寸法を組み合わせた違うピッチ同士でも構わない。また、開口部6a、6b、6cは四角形状としたが、バスバーが貫通できれば円形状でも楕円形状でもよい。また、電流センサ1は3相一体型を示したが、開口部が6a、6bのみの2相一体型でもよい。
【符号の説明】
【0016】
1:電流センサ
2a~2c:バスバー
3a~3c:コア(磁性体)
4a~4c:感磁素子
5:プリント基板
6a~6c:開口部
7:出力端子ピッチが狭い電力変換装置
8a~8c:電力変換装置7の出力端子
9:出力端子ピッチが広い電力変換装置
10a~10c:電力変換装置9の出力端子
P1、P2:バスバーピッチ
W1、W2:コアの間隙寸法