(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】相変化材料蓄熱システムの能動結晶化制御
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20230711BHJP
F25B 21/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F28D20/02 Z
F25B21/02 N
(21)【出願番号】P 2019564400
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 GB2018051483
(87)【国際公開番号】W WO2018220378
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518455088
【氏名又は名称】サンアンプ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッセル、アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ザグリオ、マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ガタオラ、サントク シン
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-302099(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10303498(DE,A1)
【文献】特開平02-122197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱システムであって、
格納容器と、
前記格納容器内に配置された相変化材料と、
前記格納容器内に配置され
た、前記相変化材料に対して添加され、前記相変化材料とは異なる材料である核形
成添加剤と、
前記格納容器の内部に配置され、前記相変化材料に浸漬される熱交換器であって、熱伝達流体が入力および出力される、熱交換器と、
前記格納容器の内部の熱を前記格納容器の外部に放熱して、前記格納容器内の前記相変化材料の一部の温度を前記核形
成添加剤の不活性化温度未満に維持するようにして前記核形
成添加剤の機能を維持するための冷却スポットを、前記格納容器内に維持するヒートシンクと
を備え
、
前記ヒートシンクの前記格納容器の内部側の表面の上に断熱領域が配置され、前記冷却スポットは、前記ヒートシンクの前記格納容器の内部側の表面の上であって、前記断熱領域の間に維持され、
前記冷却スポットを維持することは、核形成の制御をもたらし、結果として、前記相変化材料の一貫した予測可能な選択可能な結晶化をもたらす、
蓄熱システム。
【請求項2】
前記冷却スポットは前記格納容器の底部に配置される、請求項
1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の蓄熱システムに冷却スポットを提供するための方法であって、
前記格納容器を提供する段階と、
前記格納容器に前記相変化材料を配置する段階と、
前記格納容器
に、前記相変化材料に対して添加され、前記相変化材料とは異なる材料である前記核形
成添加剤を配置する段階と、
前記格納容器の内部に前記熱交換器を配置し、前記相変化材料に前記熱交換器を浸漬させる段階と、
前記格納容器の内部の熱を前記格納容器の外部に放熱して、前記格納容器内の前記相変化材料の一部の温度を前記核形
成添加剤の不活性化温度未満に維持するようにして前記核形
成添加剤の機能を維持するための前記冷却スポットを、前記格納容器内に維持するための前記ヒートシンクを配置する段階と
を備え
、
前記ヒートシンクの前記格納容器の内部側の表面の上に断熱領域が配置され、前記冷却スポットは、前記ヒートシンクの前記格納容器の内部側の表面の上であって、前記断熱領域の間に維持され、
前記冷却スポットを維持することは、核形成の制御をもたらし、結果として、前記相変化材料の一貫した予測可能な選択可能な結晶化をもたらす、
方法。
【請求項4】
前記格納容器内に配置される前記熱交換器は、前記相変化材料の内外への熱エネルギーの伝達を可能にする、請求
項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融/結晶化サイクルを経ることにより熱エネルギーを貯蔵および放出する相変化材料(PCM)に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化材料(PCM)は、溶融/結晶化サイクルを経ることにより熱エネルギーを貯蔵および放出する。
【0003】
PCMの問題の1つは、核形成温度は、一貫性がないことである。結晶化プロセスの最初のステップである核形成は、PCMサブクール(融点以下のままだが結晶化しない)により発生しないか、異なる温度、異なる時間、または冷却速度間で異なって自然に発生する可能性がある。
【0004】
この問題は、PCM格納内に制御された温度領域を作成することで克服され、利用され、これにより、核形成が制御され、一貫した予測可能な選択可能な結晶化が実現する。
【0005】
核形成は、種結晶の追加によって開始することもできる。例えば、これは、機械的手段、すなわち結晶点滴器または類似物を介して種結晶を追加することにより行うことができる(すなわち、種結晶をサブクール溶液または液体に滴下してバルクで結晶化を開始することに似ている)、または、一部の材料が結晶化する領域を有することによってできる。結晶化した材料とバルクのサブクール溶液/液体との接触を行い、その後、非接触にすることができ、または、制限されたジオメトリから種結晶を放出し、種結晶は存在するが、バルクのサブクール溶液または液体と十分に直接接触していないため、放出の瞬間までバルクの結晶化を引き起こさず、つまり、打ち抜きされた金属プレート/ディスクなどの亀裂のある材料が有することができる。例えば、これらは、種結晶がそれらの通常の融点よりも上に存在できる微視的な亀裂であり得、これらが起動される場合、例えば屈曲すると、亀裂が開いて種結晶が放出され、バルク溶液/液体が結晶化する。
【0006】
種結晶を利用して結晶化を開始する方法は、主に2つの方法、すなわち能動的および受動的方法に適用できる。能動的方法では、種結晶がバルク溶液/液体に放出または追加され、バルク結晶化が起こる機構が起動される(例えば、電子信号、水流の存在、機械的ボタン、外部圧力差など)。物理的な実施形態では、これは、例えば、結晶滴下機構、機械的手段により変形/屈曲する、または電気/電界が通過/適用される場合、ジオメトリ/形状が変化する金属のプレート/ディスク、または結晶化された材料のサンプルとバルクのサブクール溶液/液体との間で接触して開くことができるバルブであってもよく、またはバルブとは対照的に、結晶化された材料のサンプルはサブクール溶液/液体に「浸漬」され、その後「非浸漬」される。例えば、これは針/細い棒の先端などにあってもよい。受動的な実施形態では、種結晶は外部機構なしで生成されるが、バルク材料の温度によって開始され、つまり、サブクール溶液/液体が設定温度を下回る場合、種結晶を放出するプロセスが開始される。例えば、これは、水没した金属プレート/ディスクであってもよく、例えば、バイメタルであり、設定温度で必要に応じて屈曲し、その後、種結晶を放出し、バルク結晶化を開始する。この効果は、サブクールの効果が著しく観察され得ない材料を有することである。
【0007】
関連する問題は、サブクールを受動的に防止するために使用される核形成添加剤が、熱で駆動される「不活性化プロセス」によって核形成特性を失う場合があることである。この一例は、核形成剤が特定の水和物である必要がある場合、この水和物は溶解/脱水する可能性がある。したがって、PCM格納内の能動的に制御された温度領域を使用して、核形成剤の機能を維持することもできる。
【0008】
単一のシステム内で複数の同じ方法または異なる方法を使用すると、複数の場所から開始される核形成の結果として、結晶化速度の向上など、大きな利点が得られる場合がある。
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態の目的は、サブクール相変化材料(PCM)が制御された温度領域を介して核形成される改良された相変化材料を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、サブクール相変化材料(PCM)が制御された温度領域を介して核形成される蓄熱システムが提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、低温衝撃の生成によってサブクールPCMが核形成されるシステムが提供される。低温衝撃は、核形成を開始するのに十分に冷たいサブクールPCM内の小さな領域として説明できる。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、PCMが格納容器に収容され、内部に熱交換器を有するPCMを使用する方法が提供され、PCMの内外への熱または冷気(熱エネルギー)の伝達が可能になる。
【0013】
低温衝撃は、熱電デバイスや圧縮蒸気サイクルデバイス、またはヒートパイプ、あるいは切り替え可能なヒートパイプ、またはPCMと熱接触している領域を冷材で冷却することで生成でき、すなわち、ドライアイス、液体窒素、または非常に吸熱的に蒸発する材料の急速な拡張である。
【0014】
熱電的に、または圧縮蒸気サイクルによって、またはヒートパイプによって、または切り替え可能なヒートパイプによって維持される、常に一部のPCM結晶を能動的に維持する冷却スポットの存在により、放熱時にサブクールを示さないPCMシステムも説明されている。
【0015】
また、熱電的に、または圧縮蒸気サイクルによって、またはヒートパイプによって、または切り替え可能なヒートパイプによって維持される、PCMが融点に近づく場合に一部のPCM結晶を能動的に維持する冷却スポットの存在により、放熱時にサブクールを示さないPCMシステムについても説明している。
【0016】
また、熱電的に、または圧縮蒸気サイクルによって、またはヒートパイプによって、または切り替え可能なヒートパイプによって、PCMが核形成剤の不活性化温度より上または近くにある場合に、一部の核形成剤をその不活性化温度以下に能動的に維持する冷却スポットの存在により、放熱時にサブクールを示さないPCMシステムであるシステムについても説明している。
【0017】
また、熱電デバイスが任意選択で熱電界面間に1つまたは複数の熱拡散器がある1つまたは複数の積層された熱電デバイス、冷却濃縮器を生じさせるための断熱材を備えた熱拡散器がある最終冷却面からなるシステムについても説明する。
【0018】
また、熱電デバイスの低温側がPCMと接触し、熱電デバイスの高温側が周囲、PCM熱交換器、または別のPCM貯蔵システムのいずれかと熱接触するシステムについても説明する。
【0019】
また、熱電デバイスの冷却面に冷却濃縮器があるシステムについても説明している。
【0020】
また、熱電デバイス、または圧縮蒸気サイクルデバイス、あるいはヒートパイプ、または切り替え可能なヒートパイプの高温側が、周囲、PCM熱交換器、別のPCM貯蔵器のいずれかと熱接触するシステムについても説明する。
【0021】
また、電気貯蔵器が熱電デバイスによって充電され、その後同じ熱電デバイスが同じ電気貯蔵器を利用して、後で機能するように冷気を生成するシステムについても説明している。
【0022】
また、熱電デバイスまたは圧縮蒸気サイクルデバイスが電気貯蔵器から電力を供給されるシステムについても説明し、前記電気貯蔵器はローカル電源から充電される(例えば、ネットワーク電気、12v/24v/48v車両システム)。
【0023】
熱電デバイスがPWMまたは好ましくは直接駆動を介して制御されるシステムも説明されている。
【0024】
また、熱電デバイス、または圧縮蒸気サイクルデバイス、あるいはヒートパイプ、または切り替え可能なヒートパイプ内またはそれにローカルな温度センサが、例えば電力エレクトロニクスに情報フィードバックを提供するシステムについても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、以下の図面を参照してここに説明される。
【0026】
【
図1】格納容器内のPCM内の熱交換器を備える蓄熱システムの図であり、
ヒートシンクが、PCM格納システムの熱交換器である、低温衝撃
の設定を示
す。
【0027】
【
図2】格納容器内のPCM内の熱交換器を備える蓄熱システムの図であり、ヒートシンクが格納容器外のヒートシンクを通る周囲である冷却スポット設定を示している。
【0028】
【
図3】冷却スポットの使用が達成する効果を示す図である。コールドフィンガーを備えたシステム
(実線)の冷却曲線は、冷却中に結晶化を経るが、冷却スポットがない
システム(破線)では結晶化を経
ず、結晶化の安定性の欠如が表される。そ
の効果は、冷却スポットを備えたシステムが
、はるかに優れたエネルギー貯蔵能力を持つことである。
【0029】
【
図4】低温衝撃を提供できる積層型熱電デバイスの設定を表し、冷却濃縮器として機能する熱電デバイス(TEG、A)、熱拡散器(B)、および断熱材(C)を備える。
【0030】
【
図5】低温衝撃アクティベーターを備えたサブクールPCM貯蔵器の使用の図である。PCMは結晶化せずに周囲温度まで冷却され、一定期間その温度にとどまり、次いで、低温衝撃が起動され、結晶化が始まり、PCMが加熱され、
【0031】
【
図6】冷却濃縮器として機能する単一の熱電デバイス(TEG、A)、熱拡散器(B)、および断熱材(C)を備えた冷却スポットを表している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
a.PCM蓄熱システム PCMを使用する方法は、格納容器にPCMを収容し、内部に熱交換器を有して、PCMの内外への熱または冷気(熱エネルギー)の伝達を可能にすることである。
【0033】
図1は、格納容器12内に配置された熱交換器18を備える蓄熱システム10の図である。熱交換器18は、格納容器12内に含まれるPCM11に浸漬される。熱交換器18は、入力14および出力16を有する。熱交換器18は、蓄熱システムに熱を出し入れする機能を果たす。任意の数とタイプの熱交換器を使用できる。
【0034】
図1は、参照番号20で一般的に表される低温衝撃領域の設定も示している。低温衝撃領域20は拡張されて格納容器10の上部に配置されている。拡張領域に示されるように、低温衝撃22は、熱電デバイス(TEG)24、26および熱交換パイプ(HXパイプ)28に隣接して配置されている。導線30も、熱電デバイス24、26に取り付けられて示されている。
【0035】
図2は、さらなる蓄熱システム100の図である。蓄熱システム100は、格納容器112内にPCM111を含む。熱交換器118は、PCM111に浸漬される。熱交換器118は、入力114および出力116を有する。熱交換器118は、蓄熱システム100のために熱を出し入れするように機能する。任意の数およびタイプの熱交換器を使用することができる。
【0036】
図2に示す蓄熱システム100では、格納容器112の底部に低温衝撃領域120が配置される。低温衝撃領域120は、冷却スポット128があることが分かるサイズに拡張されている。冷却スポット128付近には、断熱領域124、126がある。断熱領域124、126の下に配置されるのは、ヒートシンク122である。
【0037】
図2に示されるように、蓄熱システム100において、ヒートシンクは、格納容器112の外部のヒートシンクを通る周囲である。
【0038】
b.熱電デバイス
b1.熱電デバイス 熱電デバイスはペルチェ効果を使用して動作し、小型の固体スケールでのヒートポンプタイプの効果をもたらす。熱電デバイスは通常、2つの大きな面にセラミックコーティングが施された10mm未満の厚さの長方形のプレートである。熱電デバイスに電流が流れる場合、一方の面で熱が発生し、もう一方の面で冷却される。そのような熱電デバイスは、
図1に示される蓄熱システム10で使用される。
【0039】
b2.圧縮蒸気サイクルデバイス 圧縮蒸気サイクルデバイスは、流体の沸騰(または蒸発)を利用して、一般に、異なる位置(または同じ)で逆プロセス(凝縮)も発生する閉ループで、冷却を提供する。
【0040】
b3.ヒートパイプ、または切り替え可能なヒートパイプ ヒートパイプ、または切り替え可能なヒートパイプは、内部に液体または気体が封入されている物体であり、物体の1つまたは複数の領域に熱または冷気が加えられる場合、相が変化する。
【0041】
切り替え可能なヒートパイプでは、追加の制御が提供される。効果は、特定の温度または温度範囲で高レベルの熱伝導率を表示できる(任意選択で切り替え可能な場合)物体である。
【0042】
c.サブクール PCMをサブクールするには、材料全体が溶融している必要があり、つまり、未溶融材料が存在してはならず、そうでない場合、未溶融材料は結晶成長の領域になる。
【0043】
これには次のような影響がある。サブクールする場合は、PCMを完全に溶解する必要がある。材料が完全に溶融していない場合、材料はサブクールしない。
【0044】
核形成剤(結晶成長のための面積/表面を提供することによりサブクールを防ぐ添加剤)が使用される場合、サブクールは受動的に回避することができる。核形成剤の使用は、それらが配置される場所とそれらがどのように含まれるかを制御することにより、つまりメッシュまたは多孔質材料内で、最適化できる。
【0045】
d.冷却スポット PCMに一貫した核形成を保証するための既知の十分な方法(添加剤など)がない場合、その使用を妨げる可能性がある。これを克服する方法は、バルクPCMの結晶(または他の関連する結晶)が未溶融状態に保たれる、熱電駆動の「冷却スポット」を有する格納容器を設計することである。これは、現在の用途の焦点である。
【0046】
これらの結晶の塊は非常に小さい場合があり、それらは成長ポイントを提供する種結晶である。この結晶の塊を小さく保つことは利点である。この結晶の塊は、バルクPCMがチャージされた(溶融)状態にある場合に連続的に冷却する必要があるため、最小限に抑えることが好ましい。
【0047】
この技術的効果を
図3に示す。冷却スポットの使用が達成する効果を示す
。冷却スポットのあるシステムの冷却曲線は、冷却中に結晶化を経るが、冷却スポットがない
システムでは結晶化を経
ず、結晶化の安定性の欠如が表される。その結果、冷却スポットを備えたシステムは、はるかに優れたエネルギー貯蔵能力を持ち、より高い温
度(より高いエクセルギー)
で動作する。これは、本発明および本明細書に記載の蓄熱システムの利点の1つである。
【0048】
冷却スポットを生成および維持するには、複数の方法がある。これらは本明細書に記載されており、本発明の一部である。
【0049】
(i)実装 冷却スポットの消費電力は、バルクPCMから冷却スポットへの熱伝達率に比例する。したがって、結晶を含む冷却スポットとPCMのバルクとの間の断熱を測定することが望ましいことがわかった。
【0050】
断熱材を使いすぎると、冷却スポットの応答時間が短くなる。これは、内部熱交換器と冷たい結晶の塊との間の「熱橋」の必要性によるものである。この「熱橋」は、冷却スポットと内部熱交換器との間の結晶化経路である。
【0051】
別の方法は、PCMとは対照的に、冷却スポットを使用して核形成剤を保護することである。サブクールを受動的に防止するために使用される核形成添加剤は、熱駆動の「不活性化プロセス」により核形成特性を失う場合がある。
【0052】
この一例は、核形成剤が特定の水和物である必要がある場合、この水和物は溶解/脱水する可能性がある。したがって、PCM格納内の能動的に制御された温度領域を使用して、核形成剤の機能を保つことができる。
【0053】
これの利点は、熱電デバイス、または圧縮蒸気サイクルデバイス、あるいはヒートパイプ、または切り替え可能なヒートパイプがそれほど頻繁に動作させる必要がないことである。冷却スポットの温度はPCMのバルク温度よりも高いため、これによりランニングコストが削減され、耐用期間が延びる。
【0054】
(ii)最適化
図6に示されるように、冷熱電面316は、
図6で熱拡散器312としてラベル付けされた高熱伝導率界面材料を有する。
【0055】
図6に示されるように、冷却濃縮器として機能する単一の熱電デバイス310(TEG、A)、熱拡散器312(B)および断熱材314(C)を備えた冷却スポットがある。熱拡散器は、グラファイトのシート、または銅もしくはアルミニウムなどの金属であり得る。断熱材は、ペーストまたは接着剤ベースであり得る。
【0056】
高熱伝導率界面材料310は、露出されたままになっている非常に小さな領域(例えば、約0.01mm~5mm、約0.1mm~2mm、約0.1mm~1mm)を除いて、すべての高熱伝導率界面材料を覆う断熱材310の使用により補足される。これにより、1つの小さなセクションに向かって冷気が集中し、温度が低くなるか、または消費電力が削減される(つまり、冷却濃縮器316)。
【0057】
熱電デバイス310の高温側318は、放熱するヒートシンクを必要とする。これは、
図2に示されるPCMそれ自体、PCMシステムの内部熱交換器、または好ましくは周囲であり得る。
図2は、格納容器112内のPCM111内の熱交換器118の表示である。
【0058】
図2は、ヒートシンクは、格納容器112の外部のヒートシンクを通る周囲である冷却スポットの設定を示している。
【0059】
これの拡張が
図2に示されており、熱電デバイス118の高温側が第2のPCM貯蔵器(PCMまたは内部熱交換器、好ましくは熱交換器)に熱的に接続されている。これには、熱エネルギーが保存され、隣接する蓄熱器を加熱するために利用されるという追加の利点がある。このプロセスはまた、ある蓄熱器から別の蓄熱器に熱をポンプ輸送するために使用することができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる特許WO 2011/058383に含まれる。
【0060】
温度センサが熱電デバイスとPCMの界面の近く配置され、熱電デバイスの冷却要件を決定できる。あるいは、温度センサは、熱電デバイスの内部にあっても、熱界面材料の一部を形成しても、断熱材料内にあってもよい。
【0061】
最適化は、圧縮蒸気サイクルデバイスにも適用できる。
【0062】
最適化は、ヒートパイプまたは切り替え可能なヒートパイプにも適用できる。熱電デバイス(TEGまたはTED)の高温側または低温側のいずれかで1つまたは複数のヒートパイプを使用すると、熱領域の制御がさらに強化される。
【0063】
e.電池電力 スタンドアロンシステム、つまり主電源に接続されていないことが有利である用途が存在するが、代わりに、すべての電力はコンデンサーや電池などの蓄電デバイスから供給される。
【0064】
熱電デバイスの2つの面の間に温度差がある場合、「実際に」-電気から温度差を作るのではなく、熱電デバイスを逆方向に稼働し、この温度差から電気を生成できる。これは、前記電気貯蔵器を充電するために使用できる。
【0065】
(i)実装 PCMのチャージ段階では、内部熱交換器には高温の熱伝達流体が流れる。熱電システムが熱交換器に取り付けられている用途では、これにより、熱電デバイスの片側が高温になり、一方、反対側は、例えば材料の温度になり、つまり、温度差が存在する。
【0066】
熱電システムが周囲に熱的に接続されている用途では、これにより、熱電デバイスの片側が低温なり、一方、反対側は、例えば材料の温度になる。材料は周囲温度より高い温度にある可能性があり、つまり、温度差が存在する。
【0067】
PCM貯蔵器は完全に溶解しており、高温である。1つの面が周囲に熱的に接続され、1つの面がPCMに熱的に接続されている熱電デバイスが存在する。したがって、温度差が存在する可能性がある。さらに、材料がサブクールされる場合、熱電デバイスからの発電による冷却効果は、PCMに向けられ、PCMはいずれにせよ周囲温度まで冷却される。
【0068】
(ii)用途 スタンドアロンシステムが有利な用途の例を以下に示す。
【0069】
小型で耐冷性のある電気貯蔵器は、燃料電池の動作に許容されない周囲温度で使用されている燃料電池車両に組み込まれたPCMへの低温衝撃を引き起こす。したがって、燃料電池は使用前に予熱が必要である。これは、低温衝撃を介してPCM貯蔵器を起動することで実現できる。
【0070】
あるいは、燃料電池車両は、リチウムイオン電池、燃焼機関;または緊急熱源(サバイバルスーツ)などの電池ベースのシステムであってもよい。
【0071】
例えば、車両には、耐冷性の電気貯蔵器を充電するために使用できる電源が時々用意されている。この電気貯蔵器は、利用可能な電源がない場合(例えば、他のシステムが最低動作温度範囲を下回っているために動作できない場合)、熱電デバイスを稼働して熱を生成するPCMシステムを開始するために後で使用でき、熱は他のシステムに伝達され、これらの他のシステムが動作可能になる。
【0072】
f.電力管理 熱電デバイスにはDC電源が必要である。一般に、熱電デバイスには、比較的高いアンペア数の低電圧DC電源が必要である。熱電デバイスの電力を調整することは有益である。
【0073】
(i)実装 熱起電力の変調には2つの一般的な方法が知られている。パルス波修正(PWM)または直接駆動。消費電力を削減するには、直接駆動が望ましい。
【0074】
g.熱電デバイスまたは圧縮蒸気サイクルデバイスとPCM蓄熱器の統合 熱電デバイスまたは圧縮蒸気サイクルデバイスの内部電気部品の汚染を防ぐために、熱電デバイスまたは圧縮蒸気サイクルデバイスの電気部品を防水/PCM耐性材料で保護することが望ましい場合がある。そのような非限定的な例は次のとおりである。シリコーンシーリング材;接着剤など
【0075】
以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明した実施形態からの逸脱は依然として本発明の範囲内に含まれ得ることが理解されよう。
[項目1]
サブクール相変化材料(PCM)が、制御された熱領域を介して核形成される、
蓄熱システム。
[項目2]
前記制御された熱領域は低温衝撃であり、前記PCMの核形成を開始する、
項目1に記載の蓄熱システム。
[項目3]
低温衝撃は、蒸気圧縮デバイスを介して生成され、前記PCMの核形成を開始する、
項目2に記載の蓄熱システム。
[項目4]
低温衝撃は、熱電デバイスを介して生成され、前記PCMの核形成を開始する、
項目2に記載の蓄熱システム。
[項目5]
低温衝撃は、切り替え可能なヒートパイプを介して生成され、前記PCMの核形成を開始する、
項目2に記載の蓄熱システム。
[項目6]
前記制御された熱領域は、冷却スポットであり、結晶成長のための領域を提供する、
項目1に記載の蓄熱システム。
[項目7]
前記制御された熱領域は、常に一部のPCM結晶を能動的に保持する冷却スポットである、
項目6に記載の蓄熱システム。
[項目8]
前記制御された熱領域は、常に一部のPCM結晶を能動的に保持し、熱電デバイスによって維持される冷却スポットである、
項目7に記載の蓄熱システム。
[項目9]
前記制御された熱領域は、常に一部のPCM結晶を能動的に保持し、蒸気圧縮デバイスによって維持される冷却スポットである、
項目7に記載の蓄熱システム。
[項目10]
前記制御された熱領域は、常に一部のPCM結晶を能動的に保持し、ヒートパイプによって維持される冷却スポットである、
項目7に記載の蓄熱システム。
[項目11]
前記制御された熱領域は、常に一部のPCM結晶を能動的に保持し、前記PCMよりも低い温度の領域への熱伝導経路によって維持される冷却スポットである、
項目7に記載の蓄熱システム。
[項目12]
PCMシステムは、前記PCMがその融点に近づく場合、一部のPCM結晶を能動的に保持する維持された冷却スポットの存在により、放電時にサブクールを示さない、
項目1から11のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目13]
PCMシステムは、前記PCMがこれより上/近くにある場合に不活性化温度以下に一部の核形成剤を能動的に保持する維持された冷却スポットの存在により、放電時にサブクールを示さない、
項目1から12のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目14]
熱電デバイスは、任意選択で熱電界面間に熱拡散器がある1つまたは複数の積層された熱電デバイスと、冷却濃縮器を生じさせるための断熱材を含む熱拡散器がある最終冷却面からなる、
項目1から13のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目15]
前記最終冷却面は前記PCMと接触し、高温面が周囲、PCM熱交換器、または別のPCM貯蔵システムのいずれかと熱接触する、
項目14に記載の蓄熱システム。
[項目16]
冷却面は冷却濃縮器を有する、
項目14または15に記載の蓄熱システム。
[項目17]
前記熱電デバイスまたは蒸気圧縮デバイスの高温側は、周囲、PCM熱交換器または別のPCM貯蔵器のいずれかと熱接触している、
項目14から16のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目18]
電気貯蔵器は、熱電デバイスによって充電され、次に、同じ熱電デバイスが同じ電気貯蔵器を利用して、後で前の項目と同様に機能するように冷気を生成する、
項目1から17のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目19]
前記熱電デバイスは、電気貯蔵器から電力を供給され、前記電気貯蔵器はローカル電源(例えば、ネットワーク電気、12v/24v/48v車両システム)から充電される、
項目14から18のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目20]
前記熱電デバイスは、パルス幅変調(PWM)または直接駆動を介して制御される、
項目4、14から19のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目21]
温度センサは情報フィードバックを提供する、
項目1から20のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目22]
前記PCMが格納容器に収容され、前記格納容器内に配置された熱交換器があり、前記PCMの内外への熱または冷気(熱エネルギー)の伝達を可能にする、
項目1から21のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目23]
前記蓄熱システムは、格納容器内に配置された熱交換器を備え、前記熱交換器は前記格納容器内に含まれるPCMに浸漬され、前記熱交換器は入力および出力を有し、前記熱交換器は前記蓄熱システム用のヒートシンクとして機能する、
項目1から22のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
[項目24]
低温衝撃領域は、前記格納容器の上部に向かって配置され、熱電デバイスおよびヒートパイプに隣接している、
項目23に記載の蓄熱システム。
[項目25]
前記熱交換器は、前記蓄熱システムのヒートシンクとして機能し、低温衝撃領域が前記格納容器の底部に向かって配置される、
項目23に記載の蓄熱システム。
[項目26]
前記低温衝撃領域は、冷却スポットを含み、前記冷却スポットの両側には断熱領域が配置され、前記断熱領域に隣接してその下に配置されるのは、前記格納容器外部のヒートシンクを通じて周囲にあるヒートシンクである、
項目25に記載の蓄熱システム。
[項目27]
前記冷却スポットの消費電力は、バルクPCMから前記冷却スポットへの熱伝達率に比例し、したがって、結晶を有する前記冷却スポットと前記バルクPCMとの間に断熱が必要である、
項目26に記載の蓄熱システム。
[項目28]
前記冷却スポットの冷熱電面は、冷却濃縮器として機能するために、熱拡散器および断熱材などの高熱伝導率界面材料を有する、
項目27に記載の蓄熱システム。
[項目29]
断熱材は、小さなセクション(例えば、約0.01mm~5mm、約0.1mm~2mm、約0.1mm~1mm)を除き、前記高熱伝導率界面材料を覆っていて、これは露出されたままであり、これにより1つの小さなセクションに向かって冷気が集中するため、温度が低くなるか、または消費電力が削減される、
項目28に記載の蓄熱システム。
[項目30]
熱電デバイスの高温側は、前記PCMそれ自体、PCMシステムの内部熱交換器または周囲の形で放熱するヒートシンクを有する、
項目29に記載の蓄熱システム。
[項目31]
電気貯蔵器は、燃料電池車両に組み込まれた低温衝撃を引き起こし、燃料電池の動作に許容されない周囲温度で使用されているため、使用前に前記燃料電池を予熱する必要があり、これは低温衝撃を介してPCM貯蔵器を起動することで実現できる、
項目1から30のいずれか一項に記載の蓄熱システムの使用。
[項目32]
電池ベースのシステムの形の新しい卸売車両であって、電源は耐冷性の電気貯蔵器を充電するために使用され、この電気貯蔵器は後日、PCMシステムを開始するために熱電デバイスを動作させるために利用可能な電源がない場合に使用され、他のシステムに伝達できる熱を生成し、これらの他のシステムを動作可能にする、
項目1から30のいずれか一項に記載の蓄熱システムの使用。