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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】操向可能なガイドカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20230711BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/092 500
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019570342
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018021418
(87)【国際公開番号】W WO2018165345
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】15/452,675
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523217101
【氏名又は名称】シルカ・サイエンティフィック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダーレン・エドミンスター
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ワーンシャッフェ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・バーホウ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-508675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074625(US,A1)
【文献】特開2013-132432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向可能なガイドカテーテルであって、
偏向可能な遠位端部を有するフレキシブルガイドチューブと、
前記フレキシブルガイドチューブの前記偏向可能な遠位端部に結合された少なくとも第1および第2のテンションラインであって、前記第1のテンションラインは前記フレキシブルガイドチューブの前記遠位端部を第1の方向に偏向させるように構成されており、かつ、前記第2のテンションラインは前記フレキシブルガイドチューブの前記遠位端部を前記第1の方向とは反対の第2の方向に偏向させるように構成されている、少なくとも第1および第2のテンションラインと、
前記フレキシブルガイドチューブに結合された遠位端部を有するハンドルであって、
前記フレキシブルガイドチューブの少なくとも一部分と実質的に平行な長手方向軸線を有する中間部分と、
前記ハンドルの第1の端部に配置された第1のアクチュエータと、
前記第1の端部と反対側の前記ハンドルの第2の端部に配置された第2のアクチュエータと、を具備するハンドルと、
を具備し、
前記第1のアクチュエータは、前記第1のテンションラインおよび前記第2のテンションラインに作用する引っ張り力を発生させるように動作し、かつ、前記第2のアクチュエータは、前記第1のテンションラインおよび前記第2のテンションラインに作用する引っ張り力を発生させるように動作し、
前記第1および第2のアクチュエータはそれぞれ回転可能なギアに結合され、前記回転可能なギアは前記ハンドルの内部キャビティ内に配置されたリニア駆動シャフトに結合され、
前記ガイドカテーテルの前記遠位端部は、前記第1のアクチュエータあるいは前記第2のアクチュエータ、もしくは前記第1および第2のアクチュエータの両方を使用して、同じ偏向面内で屈曲するように構成されている
操向可能なガイドカテーテル。
【請求項2】
前記第1および第2のアクチュエータはいずれも、前記第1のテンションラインを引っ張るように構成された第1の駆動部および前記第2のテンションラインを引っ張るように構成された第2の駆動部に結合される、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項3】
前記第1および第2のテンションラインは、前記フレキシブルガイドチューブの対向する側面の周りで、かつ、前記ハンドルの内部キャビティ内へと長手方向に延びる、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項4】
前記第1および第2のアクチュエータはいずれも、前記第1のテンションラインを引っ張るように構成された第1の駆動部および前記第2のテンションラインを引っ張るように構成された第2の駆動部に結合されると共に、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部は前記リニア駆動シャフトの周りに配置される、請求項3に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項5】
前記第1の駆動部および前記第2の駆動部はそれぞれ、複数のネジ山が配置された貫通孔を有する駆動ナットを備え、第1および第2の駆動ナットの前記ネジ山は、前記リニア駆動シャフトの外面の周囲に配置されたネジ山と噛み合うように構成される、請求項2に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項6】
前記リニア駆動シャフトの遠位部分は、第1の方向に配向された前記リニア駆動シャフトの外面の周りに配置された複数のネジ山を備え、かつ、前記リニア駆動シャフトの近位部分は、第2の方向に配向された前記リニア駆動シャフトの前記外面の周りに配置された複数のネジ山を備え、前記第1の方向は前記第2の方向と反対である、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項7】
前記第1および第2の駆動部はそれぞれ駆動ナットを備え、各駆動ナットは、前記駆動ナットのウイングの周りに配置されたテンションラインカップリングを有する、請求項2に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項8】
前記第1の駆動ナットの前記貫通孔が前記リニア駆動シャフトに結合され、前記第2の駆動ナットの前記貫通孔が前記リニア駆動シャフトに結合され、前記第1の駆動ナットの第2の孔が前記第1のテンションラインに結合され、前記第2の駆動ナットの第2の開口が前記第2のテンションラインに結合される、請求項5に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項9】
請求項5に記載の操向可能なガイドカテーテルであって、
前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータの両方が、前記第1および第2の駆動ナットの両方を反対方向に動かすように構成されている、
操向可能なガイドカテーテル。
【請求項10】
前記第1のアクチュエータは前記ハンドルの遠位端部の周りに配置され、かつ、前記第2のアクチュエータは前記ハンドルの近位端部の周りに配置される、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項11】
前記フレキシブルガイドチューブの近位端部が前記ハンドルを通って延びる、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項12】
前記ハンドルの近位端部の周りに配置されると共に前記フレキシブルガイドチューブの近位端部を取り囲む圧縮フィッティングをさらに備える、請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項13】
前記ハンドルの周りに配置された第3および第4のアクチュエータをさらに備え、前記第3および第4のアクチュエータは、前記ハンドル内に配置された第2の駆動シャフトに結合される共に第3および第4のテンションラインを動作させるように構成され、前記第3および第4のテンションラインは、前記フレキシブルガイドチューブの前記遠位端部をそれぞれ第3および第4の方向に偏向させるように構成される、
請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項14】
請求項に記載の操向可能なガイドカテーテルであって、
第1および第2の駆動ナットを更に備え、
前記第1の駆動ナットは、前記リニア駆動シャフトの第1の端部の第1の複数のネジ山と噛み合うように構成された複数のネジ山を備え、かつ、前記第2の駆動ナットは、前記リニア駆動シャフトの第2の端部の第2の複数のネジ山と噛み合うように構成された複数のネジ山を備える、
操向可能なガイドカテーテル。
【請求項15】
前記リニア駆動シャフトの前記第1の端部の前記第1の複数のネジ山は第1の方向に配向され、かつ、前記リニア駆動シャフトの前記第2の端部の前記第2の複数のネジ山は第2の方向に配向され、
前記第1の方向は前記第2の方向と反対である、
請求項14に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項16】
前記第1の複数のネジ山のピッチは、前記第2の複数のネジ山のピッチと等しい、
請求項15に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項17】
前記第1および第2の駆動ナットのそれぞれが第1の厚みを有する第1の端部を備え、前記第1の端部は、前記第1の厚みよりも小さな第2の厚みを有する第2の端部に向かって先細になる、
請求項14に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項18】
前記第1の駆動ナットの前記第2の端部および前記第2の駆動ナットの前記第2の端部は、前記フレキシブルガイドチューブの対向する側面の周りに配置される、請求項17に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項19】
前記第1および第2のアクチュエータは、回転アクチュエータである
請求項に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項20】
操向可能なガイドカテーテルであって、
偏向可能な遠位端部を有するフレキシブルガイドチューブと、
前記フレキシブルガイドチューブの長手方向長さに沿って下流に延びる前記フレキシブルガイドチューブの前記偏向可能な遠位端部に結合された第1のテンションラインおよび第2のテンションラインであって、前記第1および第2のテンションラインは、前記フレキシブルガイドチューブの前記遠位端部を偏向させるように構成される、第1のテンションラインおよび第2のテンションラインと、
前記フレキシブルガイドチューブに結合されたハンドルであって、
リニア駆動シャフトに結合された第1および第2の回転アクチュエータであって、各回転アクチュエータは前記回転アクチュエータの回転時に前記リニア駆動シャフトの回転を引き起こすように構成された、第1および第2の回転アクチュエータと、
前記リニア駆動シャフトおよび前記第1のテンションラインに結合された第1の駆動ナットならびに前記リニア駆動シャフトおよび前記第2のテンションラインに結合された第2の駆動ナットと、を備えるハンドルと、
を具備し、
前記第1または第2の回転アクチュエータが回転させられたとき、前記第1の駆動ナットは第1の方向に前記リニア駆動シャフトの周りで直線的に変位させられ、かつ、前記第2の駆動ナットは第2の反対方向に前記リニア駆動シャフトの周りで直線的に変位させられる、操向可能なガイドカテーテル。
【請求項21】
前記第1の方向および前記第2の方向は反対方向である、請求項20に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項22】
前記第1の方向および前記第2の方向は実質的に平行である、請求項20に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項23】
前記第1の駆動ナットの直線変位は、前記第2の駆動ナットの直線変位と実質的に等しい、請求項20に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【請求項24】
前記フレキシブルガイドチューブの近位端部内に配置されたバルブをさらに備える、請求項20に記載の操向可能なガイドカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、概して、医療デバイス、システムおよび関連する方法に関する。さらに詳しくは、本技術は、これに限定されないが、心臓の治療に関連した処置において使用されるものを含む、フレキシブルガイドカテーテルまたは導入器を操向するためのデバイス、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置は、カテーテル、拡張器および針などの特殊な医療デバイスを心臓の周囲の領域などの身体の標的領域に導入することを必要とする。そのような医療処置には、カテーテルおよびアクセスシースまたは導入器が使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
導入器およびカテーテルは、医療処置を実施するべく、患者の血管系を介して操作するために、ある程度の柔軟性を呈する必要がある。さらに、さまざまな状態または身体領域の治療のためには、さまざまな形態の導入器が必要である。医師または医療関係者が、カテーテルを患者に挿入して前進させるときにカテーテルを操作できるように、ハンドルがそうしたデバイスに取り付けられることがよくある。だが、医師の多くのさまざまな好みに対応するには、さまざまなハンドルが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は非限定的かつ非網羅的な例示的実施形態を開示する。図面に示されたそうした例示的な実施形態のいくつかを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本技術の一態様による操向可能なガイドカテーテルの斜視図である。
図2A】本技術の一態様によるガイドチューブの断面図である。
図2B】本技術の一態様によるガイドチューブの断面図である。
図3】本技術の一態様による、ハウジングの一部が取り外された状態での操向可能なガイドカテーテルの一部の側面図である。
図4】本技術の一態様による、ハウジングの一部が取り外された状態での操向可能なガイドカテーテルの背面斜視図である。
図5】本技術の一態様による、ハウジングの一部およびバルブが取り外された状態での操向可能なガイドカテーテルの背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明は、例示の目的で多くの詳細を含むが、当業者は、以下の詳細に対して多くの変形および変更を行うことができ、かつ、それが本明細書に含まれると見なされることを理解するであろう。したがって、以下の実施形態は、記載された特許請求の範囲に対する一般性を損なうことなく、かつ、それに制限を課すことなく記載されている。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。別に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0007】
本明細書で使用されるように、単数形「ある」、「一つの」および「その」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の指示対象の明示的なサポートを含む。したがって、例えば、「一つの層」に対する言及は、複数のそうした層を含む。
【0008】
本開示において、「~を備える」、「~を備えている」、「~を包含する」および「~を有する」などは、米国特許法においてそれらに与えられた意味を有することができ、「~を含む」、「~を含んでいる」などを意味することができ、一般に、開放型の用語であると解釈される。「~から構成されている」または「~から構成される」という用語は排他的な用語であり、そのような用語と共に具体的に列挙されたコンポーネント、構造体、ステップなど、および米国特許法に準拠したもののみを含む。「本質的に~から構成されている」または「本質的に~から構成される」は、米国特許法によって、それらに一般に与えられた意味を持つ。特に、そうした用語は、追加のアイテム、材料、コンポーネント、ステップまたは要素の包含を許容することを除いて、それに関連して使用されるアイテムの基本的かつ新規な特徴および機能に実質的に影響を及ぼさない一般に排他的な用語である。例えば、組成物中に存在する微量元素は、組成物の性質や特性に影響を与えない場合、そうした用語に続くアイテムのリストに明示的に列挙されていなくても、「本質的に~から構成されている」という言葉の下で存在するならば許容されるであろう。本明細書において「~を備えている」または「~を含んでいる」のような開放型の用語を使用する場合、「本質的に~から構成されている」という言葉、および「~から構成されている」という言葉にも、明示的に述べられているかのように、直接的なサポートがもたらされるべきであり、逆もまた同様であると理解される。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」などの用語は、(もし存在するならば)類似の要素を区別するために使用されており、必ずしも特定の順次的あるいは経時的順序を説明するためには使用されていない。そのように使用される用語は、本明細書に記載された実施形態が、例えば本明細書に例示または他の方法で記載されたもの以外の順序で動作できるように、適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。同様に、方法が一連のステップを含むものとして本明細書で説明される場合、本明細書で提示されるそのようなステップの順序は、必ずしもそのようなステップが実行され得る唯一の順序であるとは限らず、いくつかの記載されたステップがおそらく省略されることがあり、かつ/または本明細書に記載されていない、いくつかのその他のステップが方法におそらく追加されることがある。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲における「左」、「右」、「前」、「後」、「上端」、「底」、「上」、「下」などの用語は、説明の目的で使用され、必ずしも恒久的な相対位置の説明には使用されない。そのように使用される用語は、本明細書に記載の実施形態が、例えば、本明細書に例示またはその他の方法で説明したもの以外の配向で動作できるように、適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。本明細書で使用される「結合される」という用語は、電気的または非電気的に直接または間接的に接続されると規定される。本明細書において、互いに「隣接する」と記載されている対象物は、語句が使用される文脈に応じて、互いに物理的に接触していても、互いに近接していても、あるいは互いに同じ一般的な領域またはエリアに存在していてもよい。本明細書における「一実施形態では」または「一態様では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態または態様を指すとは限らない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、作用、特性、性質、状態、構造、アイテムまたは結果の完全またはほぼ完全な範囲または程度を指す。たとえば、「実質的に」取り囲まれている対象物は、対象物が完全に取り囲まれているかあるいはほぼ完全に取り囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの正確に許容される逸脱の程度は、特定の文脈に依存する場合がある。ただし、一般的に言えば、完了の近さは、完全かつ完全な完了が得られた場合と同じ全体的な結果が得られるようになる。「実質的に」の使用は、作用、特性、性質、状態、構造、アイテムまたは結果の完全なまたはほぼ完全な欠如を指す否定的な意味合いで使用される場合にも等しく適用できる。たとえば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子を完全に欠いているか、あるいはそれが粒子を完全に欠いている場合と同じ結果が得られるように粒子をほぼ完全に欠いているであろう。言い換えると、ある成分または要素を「実質的に含まない」組成物は、その測定可能な効果がない限り、実際にそうしたアイテムを依然として含むことがある。
【0012】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の値が終点より「少し上」または「少し下」であってもよいことを提示することにより、数値範囲の終点に柔軟性を提供するために使用される。特に明記しない限り、特定の数または数値範囲に従って「約」という用語を使用することもまた、「約」という用語なしで、そのような数値用語または範囲をサポートすると理解されるべきである。例えば、便宜上および簡潔にするために、「約50オングストロームから約80オングストローム」の数値範囲もまた「50オングストロームから80オングストローム」の範囲をサポートすると理解されるべきである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「テンションライン」という用語は、それを用いてガイドチューブの一部に力が加えられる任意の数のデバイスまたは機構を説明するために使用される。この力は、ガイドチューブの遠位端部からガイドチューブの近位端部まで延びるコネクターまたはワイヤに加えられる「引っ張り」力の結果として、「押し込み」力の結果として、温度の変化などによるガイドチューブの遠位端部におけるコネクターまたはワイヤの変形の結果として、またはガイドチューブの遠位端部内に配置されたフレキシブル要素がガイドチューブの一部に曲げまたは引っ張り力を加えるその他の手段によって作用させられ得る。
【0014】
本明細書では、「ガイドカテーテル」という用語は、「治療用カテーテル」または「治療器具」を患者の体内に配置するために使用される任意の数のガイド要素を説明するために使用される。一態様では、患者の治療が開始される前にガイドカテーテルが除去され、治療用カテーテルが患者の体内に留まる。ガイドカテーテルは、その上に治療用カテーテルが配置される中実のガイドワイヤ、またはそれを通って治療用カテーテルが配置される中空のガイドチューブであってもよい。一態様では、治療器具の配置後、ガイドカテーテルは患者から取り外される。しかしながら、別の態様では、ガイドカテーテルは、治療器具が患者の体内のある位置まで前進させられている間、所定の位置に留まり、かつ、一つ以上の治療器具(例えばアブレーションツール、縫合ツールなど)が医師によって使用される間、所定の位置に留まる。処置の終了時に、治療器具およびガイドカテーテルは患者から取り除かれる。本明細書では、患者の脈管構造における本技術の使用について具体的に言及しているが、本技術は、ガイドカテーテルを身体の任意の部分内へと前進させるために採用され得ることが理解される。
【0015】
本明細書で使用されるように、複数のアイテム、構造要素、組成要素および/または材料は、便宜上共通のリストで提示され得る。だが、これらのリストは、リストの各メンバーが別個でかつ独特のメンバーとして個別に識別されるように解釈される必要がある。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、それと反対の示唆がない限り、共通のグループでのプレゼンテーションにのみ基づいて、同じリストの他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書では、濃度、量およびその他の数値データを範囲形式で表現または提示することができる。そのような範囲の形式は、便宜上および簡潔さのためだけに使用されるため、各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのように、範囲の制限として明示的に列挙された数値だけでなく、個々の数値またはその範囲内に含まれる部分範囲を全て含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例として、「約1から約5」の数値範囲は、明示的に列挙された約1から約5の値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値および部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2,3,4などの個々の値、1~3,2~4,3~5などの部分範囲ならびに1,2,3,4および5がそれぞれ含まれる。
【0017】
この同じ原理は、ある最小値または最大値としてただ一つの数値のみを列挙する範囲に適用される。さらに、そのような解釈は、範囲の広さや記述されている特性に関係なく適用されるべきである。
【0018】
本明細書全体にわたる「実施例」への言及は、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな場所での「実施例において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。
【0019】
本明細書における参照は、「改善された」性能を提供するデバイス、構造体、システム、または方法に対してなされ得る。特に明記しない限り、そのような「改善」は、従来技術のデバイス、構造体、システムまたは方法との比較に基づいて得られる利益の尺度であることを理解されたい。さらに、改善された性能の程度は、開示された実施形態間で異なる場合があり、改善された性能の量、程度または実現における同等性または一貫性は普遍的に適用可能であると想定されるべきではないことを理解されたい。
【0020】
例証実施形態
本技術の実施形態の最初の概要について以下に提示し、特定の本技術の実施形態についてさらに詳しく説明する。この最初の要約は、読者が本技術をより迅速に理解するのを支援することを意図しており、本技術の主要なまたは本質的な特徴を特定すること、あるいは特許請求される対象事項の範囲を制限することは意図していない。
【0021】
大まかに言えば、本技術の態様は、患者の腔内でフレキシブルガイドカテーテルを操向するための医療従事者の能力を改善するように動作する。腔は、これらに限定されないが、血管、管、組織開口または患者の体内のその他の開口を含む。血管系を含むがこれに限定されない患者の腔内へとカテーテルを前進させるために、カテーテルは、患者の血管系を通って移動させるために実質的に硬くなければならない。すなわち、カテーテルの近位端部を把持している間、遠位端部は、この遠位端部が抵抗に遭遇した場合に、カテーテルの近位端部を押し込んでいるときに、ねじれないように十分な剛性を持たなければならない。しかしながら、硬いカテーテルは、血管系の遠回り部分を経てカテーテルを前進させようとするときに、患者に不快感を与え、潜在的に危険な状況を作り出す。硬いが操向可能なガイドを使用して血管経路をナビゲートし、その後、より柔軟で快適な治療用カテーテルを操向可能なガイドチューブの上またはその中に配置できる。一態様では、フレキシブルガイドチューブは、偏向可能な遠位端部の対向する側に配置された2本のテンションラインを備えた偏向可能な遠位端部を有する。第1のテンションラインは、フレキシブルガイドチューブの遠位端部を第1の方向に偏向させるように構成され、そして第2のテンションラインは、フレキシブルガイドチューブの遠位端部を第1の方向と反対の第2の方向にかつ第1の方向と同じ平面内で偏向させるように構成される。例えば、テンションラインは、フレキシブルガイドチューブの遠位端部を方向「X」に偏向させるように動作し、そして第2のテンションラインは、フレキシブルチューブの遠位端部を方向「-X」にまたは反対方向に偏向させるように動作する。
【0022】
フレキシブルガイドカテーテルの近位端部および2本のテンションラインは、フレキシブルガイドカテーテルを操向して患者に挿入するために医師により把持されるように構成されたハンドルに結合される。医師は、患者の脈管構造を通してガイドカテーテルを前進および操向している間、ハンドルを保持する。ガイドカテーテルが所望の位置まで前進させられると、医師はガイドカテーテルの内部を経て治療用カテーテルまたは治療器具を前進させる。ハンドルは多くの形態を有し得るが、一態様では、ハンドルは、フレキシブルガイドチューブの遠位部分と実質的に平行な長手方向軸線を備えた中間部分を有する。第1のアクチュエータは、ハンドルの前端部(すなわち中間部分の近く)に配置される。第2のアクチュエータは、ハンドルの後端部(すなわち中間部分の遠方)に配置される。二つのアクチュエータはそれぞれ、第1のテンションラインおよび第2のテンションラインに作用する引っ張り力を発生させるように動作する。有利なことには、医師は、第1のアクチュエータ、第2のアクチュエータまたは両方のアクチュエータを同時に使用して、片手または両手で、同じ偏向面内で、カテーテルの遠位端部を屈曲(すなわち偏向または湾曲)させることができる。これにより、医師の操向オプションを最適化して、同じ移動面内でガイドカテーテルの遠位端部を操向することにより、患者内でガイドカテーテルを効果的に操向する医師の能力が向上する。一態様では、第1および第2のアクチュエータは両方とも、第1のテンションラインを引っ張るように構成された第1の駆動部および第2のテンションラインを引っ張るように構成された第2の駆動部に結合される。
【0023】
大腿動脈、上腕動脈または頸静脈アクセスを含む、患者の腔および/または器官にアクセスする多くの方法があるが、一態様では、ガイドカテーテルを剣状突起下アクセスポイントを経て前進させて胸腔に、そして特に心臓にアクセスすることができる。一般に、切開は入口部位と重なる剣状突起下でなされ、例えば、剣状突起下へのアクセスを得るために白線が切開される。ガイドカテーテルの遠位先端部が心臓の心膜嚢に隣接するまで、ガイドカテーテルを切開部から胸腔内へと上向きに導入してもよい。いったん望ましく配置されると、作業室または手術室が評価され、医師は治療用カテーテルまたはその他の治療用ツールをガイドカテーテルに対して(すなわちガイドの上または内腔を経て)自由に前進させることができる。
【0024】
図1図2Aおよび図2Bは、本技術の一態様による操向可能なガイドカテーテル10を示している。ガイドカテーテル10は、ガイドチューブ12の近位端部の少なくとも一部分をその内部に収容するハンドル40が有する内部ルーメン16を備えた偏向可能なガイドチューブ12を備える。図1に示す態様では、ハンドル40は、以下でより詳細に説明する操向機構を収容するように構成される。遠位(または前方)アクチュエータ18および近位(または後方)アクチュエータ19は、矢印CおよびDで示されるように、反対方向に回転操作できるダイヤルおよび内部コンポーネントを含む。アクチュエータは、ハンドル40の両端部に、ハンドル40の中間部分41の前方あるいは後方のいずれかに配置される。アクチュエータは、当該アクチュエータと操向機構コンポーネントが一緒に操向アセンブリを構成するように操向機構に結合される。一態様では、操向機構は、ハウジング40内に配置された第1および第2のテンションライン20を含み、かつ、例えばコード、ケブラーライン、コントロールワイヤ、あるいは金属または非金属材料で作られたその他のラインを含む。テンションライン20は、テンションラインに作用する緊張力(例えば引っ張り)がガイドチューブ12を屈曲させるように作用するように、ガイドチューブ12に結合される。
【0025】
図2Aは、一態様に従った、ガイドチューブ12がハンドル40内にあるときのガイドチューブ12aの断面を示している。図2Bは、本技術の一態様による、ガイドチューブ12がハンドル40の外側にあるときのガイドチューブ12bの断面を示す。しかしながら、ガイドチューブ12がハンドル40の外側からハンドル40の内側に移行するとき、一部がハンドル内にあってもよい。テンションライン20は、ガイドチューブ12bの実質的に全長にわたって遠位端部28まで移動し、ハンドル40内の操向機構と結合する。さらに詳しく言うと、テンションライン20は、ハンドル40の外側にあるときには、(図2Bに示す)二次ルーメン25aおよび25bあるいはガイドチューブ12bを通る別の専用ルーメンを移動し、そしてハンドル40の内側にあるときには、ガイドチューブ12aの外面の周囲に配置される。すなわち、ガイドチューブ12がハンドル40のノーズ42を通ってハンドル40の外部へと延びるとき、テンションライン20はガイドチューブ12aの外側からガイドチューブ12の内部へと、そして二次ルーメン25a,25b内へと移行する。一態様では、ガイドチューブ12bは、ハンドル40の外側に存在するときには、ガイドチューブ12aがハンドル40の内部に存在するときよりも大きな外径を備え、一方、ガイドチューブ12aおよび12bの内径は、それにかかわらず同じままである。一態様では、フレキシブルガイドチューブ12は、例えば、標準的なフレキシブル医療グレードプラスチック材料を使用する押し出し成形によって、あるいは当技術分野で知られているその他の手段およびその他の材料によって構成されてもよい。ガイドチューブ12は、フレキシブルであるが、ガイドチューブ12の、遠位端部領域28と呼ばれることもある遠位端部分28を本質的に真っ直ぐな形態に常時配向するプラスチックメモリまたはバイアスを有することができる。操向機構は、プラスチックメモリまたはバイアスが偏向した遠位領域に抵抗するために使用される場合でも、遠位端部28の配向のより優れた制御を可能にするために使用される。例えば、一態様では、所望の形態に偏向させられると、アクチュエータ18,19を所定の位置にロックして、特定のガイドチューブ12の形状を維持することができる。
【0026】
ハンドル40は、医師が都合よく保持できる大きさであり、治療の対象となっている体内部位にガイドチューブ12bを導入するための大きさである。ハンドル40は、例えば、成形プラスチックから形成できるが、その他の材料および製造の種類が考えられ、それは当業者にとって公知である。動作時、操向機構はアクチュエータ18および19によって作動させられ、図1に示すように、ガイドチューブ12bの遠位端部分28をその本質的に真っ直ぐな形態から屈曲または偏向形態へと偏向させる。これは、遠位端部28に(またはそれに隣接して)ガイドチューブ12bに結合されかつガイドチューブ12bの遠位端部28を偏向させる力を提供するために操向機構によって引っ張り力が加えられるテンションライン20によって達成される。一態様では、操向機構は、ガイドチューブ12bの遠位端部28をその偏向状態で保持するように構成され、これにより、使用中にガイドチューブ12b内に配置された治療用ツールを所望の関係で維持する。操向可能なガイドチューブ12bは、治療用ツールに、搭載型操向機構またはガイドワイヤルーメンを装備する必要性を除去する。有利なことには、アクチュエータ18および19はそれぞれテンションライン20を制御する。したがって、医師は、ハンドル40の遠位端部または近位端部のいずれかから同じ動作平面内でガイドチューブ12の遠位端部分28を動かすことができる。これは、どちらかの手(左手または右手)でガイドチューブ12を前進/操作するための操作者の能力を最適化する。これは、他方の手でガイドカテーテル10を保持および/または操作しながら、一方の手で治療用カテーテルを前進させたり治療用ツールを操作したりする場合に特に有用である。
【0027】
本技術の一態様において、ガイドチューブ12aの近位端部は、失血および循環系への空気の逆流を防ぐための止血または逆流チェックシールまたはバルブを含む。ハブ14が、ハンドル40の近位端部に配置され、ハブ14はそうした止血シールを備える。シールは、カテーテル、器具およびそれを用いて挿入される拡張器に対するシールを形成する環状の軟質エラストマーガスケットを含む。シールは、器具またはカテーテル10がガイドカテーテルのルーメン16から取り外されたときに著しい失血および空気の侵入を防ぐために、ストップコックなどのバルブ、ダックビルまたはフラップバルブなどの一方向バルブなどをさらに含むことができる。ソフト環状シールは、トゥオイ・ボースト(Tuohy-Borst)バルブに見られる機構など、シールの内径を半径方向内側に圧縮する機構をさらに含むことができる。一態様では、ハブ14はさらに、例えばオムニパーク、レノグラフィンまたはその他のバリウム添加溶液などの造影剤、またはヘパリン、クマジン、ペルサンチンなどの抗凝固剤溶液を注入するための、あるいはガイドカテーテル10の遠位端部28またはその近くの圧力を測定するための一つ以上のサイドポートを含むが、流体はハブ14のバルブを経て直接注入されてもよい。一態様では、複数の止血バルブおよび/または流体投入コネクターまたはポートがハブの周りに配置される。一態様では、ハブ14は、このハブ14と一体に形成されたトゥオイ・ボーストバルブ11に直接結合された中央ルーメン15を備える。ハブ14のルーメンは、ガイドチューブ12のルーメン16に結合され、あるいはガイドチューブ12自体の近位端部を備える。一態様では、止血アダプターがトゥオイ・ボーストバルブを経て挿入される。ハブ14は、(例えば5ないし9フレンチのその他の非常に小さなバルブを使用することができるが)10ないし30フレンチの範囲の容量を有することができる大径トゥオイ・ボーストバルブ11を含む。このような大きなトゥオイ・ボーストバルブは閉鎖時に完全に密閉されない場合があり、あるいは、例えば5または6フレンチよりも大きいチューブをそれが取り囲まない限り、それは全く密閉することはできない。止血アダプターをそのようなトゥオイ・ボーストバルブ11に挿入し、トゥオイ・ボーストバルブ11を締め付けて、直径5~10フレンチの範囲の止血アダプターチューブの周りにシールを得ることができる。一態様では、トゥオイ・ボーストバルブ11は、直径6~18フレンチの範囲の管の周りを密閉し、その通過を可能とすることができる。拡大部は、増大した力によって、トゥオイ・ボーストまたはその他のバルブを通過できるが、この力は拡大部がバルブを通過できれば緩和できる。拡大部はまた、ハブ14からの止血アダプターの不注意な引き抜きを防ぐのに役立つ。一態様では、ストップコックおよびパージラインは、血液または生理食塩水の吸引またはハブルーメンからの空気のパージに使用できる。
【0028】
本技術の一態様では、ガイドチューブ12の遠位端部28は、カテーテルの偏向領域の始まりと終わりを示す放射線不透過性マーカーを含む。ガイドカテーテル10は、金線、白金線、タンタル線などの放射線不透過性材料、または可鍛性のステンレス鋼の変形可能な補強層上の上述したコーティングを含むことができる。放射線不透過性材料は、ハイブリッド金属ポリマー材料を含んでもよい。そのような放射線不透過性マーキングは、ガイドカテーテル10が適切に配置される範囲および/またはガイドチューブ12の遠位端部28が操作者によって偏向される範囲をオペレータがより明確に視覚化できる限り特に有用である。一態様では、放射線不透過性マーカーバンドは、遠位先端部29の位置を観察すると共に、左心房の壁、その他の心臓の組織または身体の他の部分に対して制御できるように、実質的に遠位先端部29の近くでガイドカテーテル10の遠位端部28に固定される。この放射線不透過性マーカーバンドは、ガイドチューブ12に結合された非拡張性の軸線方向に細長い管状構造であってもよい。放射線不透過性マーカーバンドはさらに、異なるバンドに対して異なる形状および/または種類の材料を使用することにより、蛍光透視法の下で異なって見えるように構成することができる。放射線不透過性マーカーバンドのさらに別の形態は、ガイドチューブ12内に埋め込まれる可鍛性ワイヤ巻線または金、タンタル、白金合金などのナノサイズの粒子を用いて実現できる。
【0029】
図3ないし図5は、ハウジングの一部が除去された状態で、本技術の一態様による操向機構のコンポーネントを開示している。ハンドル40内の操向アセンブリの態様を示すために、ハンドル40のさまざまなコンポーネントは示されていない。一態様では、操向アセンブリは、第1および第2のアクチュエータ18,19を含む。アクチュエータはそれぞれ、ギア47の歯46と噛み合うように構成された内歯45を含む。ギア47は、アクチュエータに対して回転および並進するように構成されたリニア駆動シャフト49の対向する側面の周囲に配置されている。駆動シャフト49は、第1の方向に配向されたピッチを有する螺旋状ネジ山50の第1のセットと、第2の方向に配向されたピッチを有する螺旋状ネジ山51の第2のセットと、シャフト49の中心であって螺旋ネジ山の第1および第2のセット間に配置されたシャフトハブ52とを含む。第1の駆動部60(本明細書では駆動ナットとも呼ばれる)および第2の駆動部61は、リニア駆動シャフト49の対向する側面の周囲に配置される。第1および第2の駆動ナットはそれぞれ、シャフト49のネジ山50,51と噛み合うように構成された内ネジを備えた本体62に孔を含む。駆動ナット60,61は、それぞれの駆動ナット60,61のウイング63がハンドル40内でガイドチューブ12の対向する側面上に存在するように、本体62から離れる方向に延びるタブまたはウイング部分63をさらに含む。駆動ナット60,61は、ガイドチューブ12の対向する側面の周囲でガイドチューブ12の遠位端部28までやはり長手方向に延びるテンションライン21および22と噛み合うように構成される。一態様では、テンションライン21,22は、駆動ナット60,61のウイング63に配置される孔65に結合されるが、テンションラインは、ナットの直線運動がテンションライン21,22の直線運動に変換されるならば、駆動ナットにロウ付けされても、接着されても。その他の方法で結合されてもよい。
【0030】
第1のアクチュエータ18または第2のアクチュエータ19が回転させられると、ギア47も同様に回転させられ、リニア駆動シャフト49の回転を生じる。リニア駆動シャフト49の回転運動は、駆動シャフト49の周りでの駆動ナット60,61の直線運動に変換される。一態様では、第1および第2の螺旋ネジ山50,51のそれぞれのピッチは、たとえそれらが異なる方向に配向されていても実質的に同じである。すなわち、駆動シャフト49が回転させられると、駆動ナット60,61はシャフト49の周りを同じ直線距離だけ移動する。しかしながら、第1および第2のネジ山のピッチの方向は反対方向に配向されているので(すなわち一方は左ネジであり、もう一方は右ネジである)、それぞれの駆動ナットの直線移動の方向は反対で、矢印AおよびBで示すように平行方向となる。その結果、アクチュエータ18および19の回転方向に応じて、テンションライン21,21にそれぞれ引っ張り力が作用する。例えば、方向Cに回転させられると、駆動ナット60は方向Bに(すなわちハンドル40の近位端部に向かって)移動し、テンションライン21に作用する引っ張り力を生じる。同時に、駆動ナット61は、方向Aに(すなわち、ハンドル40の近位端部から離れるように)移動させられ、テンションライン22に弛緩をもたらす。同様に、アクチュエータ18および19が方向Dに回転させられたとき、駆動ナット61は方向Bに移動させられ、かつ、駆動ナット60は方向Aに移動させられる。
【0031】
本技術の一態様によれば、第2の駆動シャフトは、ハンドル40のキャビティ内に収容されると共にアクチュエータの第2のセットに結合される。第2の駆動シャフトは、第3および第4のテンションラインに引っ張り力をもたらすように動作する第3および第4の駆動ナットに結合される。一態様では、第3および第4の駆動ナットは、ガイドチューブ12の周面の周りで、90度だけ、第1および第2の駆動ナット60,61からオフセットされる。このようにして、二次ルーメン26aおよび26bを通ってガイドチューブ12の長さを中心として長手方向に延びると共に第3および第4の駆動ナットの動きによって動作させられる第3および第4のテンションラインは、ガイドチューブの遠位端部28をYおよび-Y方向に屈曲させるように機能する。言い換えれば、第1および第2のテンションラインは、単一の運動平面(すなわち仮想Xおよび-X方向)内でガイドチューブ12の遠位28を屈曲させ、第3および第4のテンションラインは、付加的運動平面(すなわち仮想Yおよび-Y方向)内でガイドチューブ12の遠位端部を屈曲させるように機能する。本明細書では90度のオフセットについて言及したが、第3および第4のテンションラインは、第1および第2のテンションラインに関連付けられた動作平面からオフセットされたその他の平面内でガイドチューブ12の遠位端部28を偏向させるように配向できることが理解される。例えば、本技術の一態様では、第3および第4のテンションラインは、第1および第2のテンションラインに関連付けられた動作平面から、15度、30度、45度または60度だけオフセットされる。テンションラインはまた、特定の用途に合わせて、1から89度の間にあるその他の配向でオフセットされてもよい。
【0032】
本技術の別の態様では、第3および第4のテンションラインは、二次ルーメン27aおよび27bを通って導かれる。二次ルーメン27aおよび27b(これはまた三次ルーメンまたは四次ルーメンとも呼ばれることもある)はルーメン25aおよび25bに隣接して配置されるが、ガイドチューブ12の遠位端部28の先端部29から所定の距離だけ離れて終端する。このようにして、第3および第4のテンションラインは、第1および第2のテンションライン50,51と実質的に同じ方向に(したがって同じ動作平面内で)ガイドチューブを屈曲させるように動作する。しかしながら、ルーメン27aおよび27b(したがって第3および第4のテンションライン)は遠位端部28からある距離だけ離れて終端するため、屈曲作用は、第1および第2のテンションラインの動作から生じる屈曲よりも、遠位先端部29からより大きな距離だけ離れて生じる。必要に応じて同じ二次ルーメン(25a,25b,26a,26b,27a,27b)内で多数のテンションラインを使用できること、各二次ルーメン内で単一のテンションラインを使用できること、または一つ以上の二次ルーメン内でテンションラインの一つ以上の対を使用できることが理解される。
【0033】
本技術の一態様によれば、第1のリニア駆動シャフト49と同様、第2の駆動シャフトは、反対方向に配向されたネジ山を備える。同様に、対向するネジ山は類似のピッチを有するため、移動方向が反対方向であっても、関連する駆動ナットの直線移動距離は同等である。しかしながら、一態様では、第2のリニア駆動シャフトのネジ山は、第1のリニア駆動シャフトのネジ山のピッチよりも浅いピッチを有する(すなわち、より小さいかまたはより傾斜の少ないピッチを有する)。ピッチを小さくするか浅くすると、駆動シャフトの同じ回転量で直線移動が小さくなる。このようにして、医師は、アクチュエータ18,19の第1のセットおよび第1のリニア駆動シャフト49を使用して、ガイドチューブ12の遠位端部28を「ラフ」位置に配置し、そしてより正確な動きのために、より小さな間隔でガイドチューブの遠位端部28を屈曲させるためにアクチュエータの第2のセットおよび第2の駆動シャフトへ切り替えることができる。本技術のこの態様では、第3および第4のテンションラインは、第1および第2のテンションラインと同じ長手方向位置で終端することができる。
【0034】
本明細書では、第3および第4のアクチュエータが第2のリニア駆動シャフトを動作させる技術の態様について言及した。しかしながら、本技術の一態様では、第1のリニア駆動シャフト49および第2のリニア駆動シャフトを動作させるように第1のアクチュエータ18および第2のアクチュエータ19が構成される。図3ないし図5に示されるように、アクチュエータ18および19は、駆動シャフト49のギア47の歯46と噛み合う複数の内歯を備える。アクチュエータ18または19のいずれかが回転させられると、駆動シャフト49もまた回転させられる。本技術の一態様では、第2の駆動シャフトはまた、アクチュエータ18および19と噛み合うように構成された歯を備えたギアを含む。しかしながら、第2の駆動シャフトのギアは、アクチュエータ18および19から長手方向にオフセットされている。すなわち、一態様では、第2の駆動シャフトに関連付けられたギアは、第1の駆動シャフトに配置されたギア47よりも、第2の駆動シャフトの中心にわずかに近い。アクチュエータ18および19は、それらが駆動シャフト49のギア47と係合するように長手方向に付勢されるようにハンドルの周囲に配置される。しかしながら、アクチュエータは、ハンドル40の中間部分41に向かってハンドル上で長手方向内側にスライドし、これによって第2の駆動シャフトのギアと係合することができる。このようにして、異なる(例えば第3および第4の)テンションラインが第1および第2のテンションラインと同じ平面内で動作するか、あるいは異なる平面(例えばYおよび-Y平面など)内で動作するかにかかわらず、複数の異なるテンションラインを駆動するためにアクチュエータの同じセットを使用できる。
【0035】
本明細書では、テンションラインの引っ張り力について言及した。しかしながら、開示された技術の範囲から逸脱することなく、多くの異なる機構を用いてテンションラインに引っ張り力を発生させることができることが理解される。例えば、テンションラインは、形状記憶合金(例えばニチノール)を含むことができ、これは、直線またはリニア形態に付勢されるが、電気信号または電荷にさらされると所定の形態へと屈曲する。この態様では、ハンドル40の近位端部に配置されたアクチュエータは、ガイドチューブ12の遠位端部28をX方向および-X方向の両方に曲げるように機能するであろう。同様に、ハンドル40の遠位端部に配置された第2のアクチュエータは、近位アクチュエータに関連する同じテンションラインを作動させ、ガイドチューブ12の遠位端部28をX方向および-X方向の両方に曲げるように機能するであろう。
【0036】
本技術の特定の態様は、ガイドチューブの遠位端部28を屈曲させる方法を含み、医師は、操向可能なガイドカテーテル10のハンドル40の周りに配置された第1または第2のアクチュエータ18,19のいずれか(または両方)を変位させる。操向可能なガイドカテーテル10は、ハンドル40のキャビティ内に収容された偏向可能な遠位端部28および近位端部を有するフレキシブルガイドチューブ12を備える。第1および第2の駆動ナット60,61は、ハンドル40内でリニア駆動シャフト49の周りに配置され、第1の駆動ナット60は第1のテンションライン22に結合され、かつ、第2の駆動ナット61は第2のテンションライン22に結合される。第1および第2のテンションラインは、フレキシブルガイドチューブ12の対向する側面上に配置され、かつ、ガイドチューブ12に沿って、その遠位端部28まで長手方向に延びる。当該方法は、第1の方向に第1の駆動ナット60を変位させると同時に第2の方向に第2の駆動ナット61を変位させることをさらに含み、第1の方向は第2の方向と逆であってかつ平行である。本技術の一つの態様では、第1の駆動ナット60の変位の直線距離は、第2の駆動ナット61の直線変位に実質的に等しい。本方法は、第1の駆動ナット60が第1の方向に変位させられるときに第1のテンションライン21を変位させると共に、第2の駆動ナット62が第1の方向に変位させられるときに第2のテンションライン22を第1の方向に変位させ、これによってフレキシブルガイドチューブ12の遠位端部を偏向させることをさらに含む。一態様において、第1および第2の駆動ナット60,61は両方とも、第1のアクチュエータ18または第2のアクチュエータ19のいずれかを変位させることにより、リニア駆動シャフト49の周りで直線的に変位させられる。
【0037】
本明細書に記載の特許請求の範囲によって必要とされない限り、上記方法において特定の順序は必要とされないが、一般にいくつかの実施形態では、上記方法ステップは連続的に実施できることに留意されたい。
【0038】
もちろん、上記の構成は、本発明の原理の適用の例示に過ぎないことを理解されたい。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の変更および代替構成を案出することができ、添付の特許請求の範囲は、そのような変更および構成を網羅するものとする。したがって、本発明について、その最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられるものに関連して特に詳細に説明したが、本明細書に記載の原理および概念から逸脱することなく、これらに限定されるものではないが、サイズ、材料、形状、形態、機能および動作様式、アセンブリおよび使用法の変更を含む数多くの変更をなし得ることは当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0039】
10 操向可能なガイドカテーテル
11 トゥオイ・ボーストバルブ
12 フレキシブルガイドチューブ
12a,12b ガイドチューブ
14 ハブ
15 中央ルーメン
16 内部ルーメン
18 遠位アクチュエータ(第1のアクチュエータ)
19 近位アクチュエータ(第2のアクチュエータ)
20,21,22 テンションライン
25a,25b 二次ルーメン
26a,26b 二次ルーメン
27a,27b 二次ルーメン
28 遠位端部
29 遠位先端部
40 ハンドル
41 中間部分
42 ノーズ
45 内歯
46 歯
47 ギア
49 第1のリニア駆動シャフト
50 第1の螺旋ネジ山
51 第2の螺旋ネジ山
52 シャフトハブ
60 第1の駆動ナット
61 第2の駆動ナット
62 本体
63 ウイング
65 孔
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5