特許 7311094 ゲル状組成物を浸漬するための液剤

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-07-10

(45)【発行日】2023-07-19

(54)【発明の名称】ゲル状組成物を浸漬するための液剤

(51)【国際特許分類】

   A61K 8/73 20060101AFI20230711BHJP

   A61K 8/02 20060101ALI20230711BHJP

   A61K 8/34 20060101ALI20230711BHJP

   A61Q 19/00 20060101ALI20230711BHJP

   A61Q 19/10 20060101ALI20230711BHJP

   C11D 3/20 20060101ALI20230711BHJP

   C11D 3/37 20060101ALI20230711BHJP

   C11D 17/08 20060101ALI20230711BHJP

【ＦＩ】

A61K8/73

A61K8/02

A61K8/34

A61Q19/00

A61Q19/10

C11D3/20

C11D3/37

C11D17/08

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2019023074

(22)【出願日】2019-02-12

(65)【公開番号】P2020132525

(43)【公開日】2020-08-31

【審査請求日】2022-02-04

(73)【特許権者】

【識別番号】713001659

【氏名又は名称】株式会社みやびコスメティックス

(72)【発明者】

【氏名】谷口雅幸

(72)【発明者】

【氏名】上路拓子

【審査官】池田 周士郎

(56)【参考文献】

【文献】特開２００９－０２２２５１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特表２０１４－５２８４４３（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１２／１０５６８５（ＷＯ，Ａ１）

【文献】国際公開第２０１５／０２９７５０（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１６－１９３８９２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６０－１７６５６０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ６１Ｋ ８／００－ ８／９９

Ａ６１Ｑ １／００－９０／００

Ａ６１Ｋ ９／００－ ９／７２

Ａ６１Ｋ ４７／００－４７／６９

Ａ２３Ｌ ２／００－３５／００

Ｃ１２Ｇ ３／００－ ３／０８

Ｃ０８Ｌ ５／００－ ５／１６

Ｃ１１Ｄ １／００－１９／００

Ｍｉｎｔｅｌ ＧＮＰＤ

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を浸漬させるための液剤であって、水および1価以上のアルコールを含有することを特徴とする液剤であり、前記キシログルカン含有ゲル状組成物の用途が、医薬品、医薬部外品、皮膚用洗浄剤、皮膚貼り付け用パック剤、入浴剤、化粧品、芳香剤、ホビー用品から選ばれる用途であることを特徴とする液剤。

【請求項2】

液剤全量に対して、１価以上のアルコールの配合量が、５～９５重量％である、請求項１に記載の液剤。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、所望の形に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物において、その型崩れや、溶解による崩壊を抑制し、開封寸前まで目的の形状を保持することを可能とした浸漬用の液剤に関する。

【背景技術】

【0002】

キシログルカンは特定の成分との組み合わせによって、蒟蒻様の弾力があり、自己保形性を持ったゲル状組成物を形成する特徴がある。この特徴を利用して、例えば特許文献１や特許文献２に示されているように自己保形性を持ったゲル状洗浄料やゲル状化粧料が知られており、さらには特許文献３で示されているよう発熱や炎症時の冷却に用いられる冷却シートとしての利用が知られている。

【0003】

しかしながら、自己保形性のあるキシログルカン含有ゲル状組成物は、任意の型を用いて所望の形状に成形した後であっても、型崩れしやすいことが知られている。たとえば型から抜き取った後に、平地面や任意の凹凸面に置き保管すると、キシログルカン含有ゲル状組成物は触れている面に沿って変形してしまうという問題があった。

【0004】

そのため、キシログルカン含有ゲル状組成物を市場へ流通させる方法として、ゼリーカップ容器に流し入れたままの状態で流通させる方法や、特許文献４で示されているようにゴム風船のような型材に封入し成形させ、そのまま流通させて利用者の手元で取り出すことで、形を保ったまま流通させる方法が取られている。

【0005】

しかしながら、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を、ゲルを形成する器など、ゲルの形状を保持するための支持体（または支持材）を必要とせず、成形型から取り外した状態で、型崩れを防止し、安定に形状を保持させる方法については知られていなかった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特願2012-9006

【文献】特願2012-192314

【文献】特願2000-389636

【文献】特願2013-41440

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本願発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、キシログルカン含有ゲル状組成物を、成形型から取り外した状態で、型崩れすることなく、安定に保持させ、開封寸前まで目的の形状を保持することが出来るキシログルカン含有ゲル状組成物の浸漬用の液剤を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、上述したような特性をもつキシログルカン含有ゲル状組成物を型材から取り外した後に、所定の液剤に浸漬させることで、液剤が緩衝材となりキシログルカン含有ゲル状組成物の型崩れを防止し、かつキシログルカン含有ゲル状組成物を溶解、破損、崩壊させることなく長期間安定に保存できることを見いだし、本発明を完成するに至った。

【0009】

すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
項１．所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を浸漬させるための液剤であって、水および1価以上のアルコールを含有することを特徴とする液剤。
項２．液剤全量に対して、１価以上のアルコールの配合量が、５～９５重量％である、前記項１に記載の液剤。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を液剤に浸漬させることで、キシログルカン含有ゲル状組成物の型崩れを防止し、安定に保存、またはその状態で市場流通させる方法が提供される。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】キシログルカン含有ゲル状組成物（実施例18）を液剤（実施例11）で浸漬し1年以上保持したサンプル瓶の写真

【発明を実施するための形態】

【0012】

本発明の所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を浸漬させるための液剤は、水（Ａ）、１価以上のアルコール（Ｂ）を必須成分として含有する。

【0013】

液剤で用いられる水（A）としては、一般的に利用できる水であれば特に制限されず、例えば水道水、日本薬局方常水、イオン交換水、膜処理水、蒸留水、超純水、海洋深層水等が挙げられる。水の含有量は液剤全量に対して、５～９５重量％の範囲が好ましく、２５～７５重量％がより好ましく、更には４０～６０重量％が好ましい。

【0014】

液剤で用いられる１価以上のアルコール（Ｂ）としては、構造上に水酸基を１つ以上有する成分であり、１価アルコール（Ｂ１）、２価以上である多価アルコール（Ｂ２）があり、なかでも水溶性であることが望ましい。

【0015】

液剤で用いられる１価アルコール（Ｂ１）としては、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどがあげられ、中でもエタノールが望ましい。
２価以上である多価アルコール（Ｂ２）としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、イソプレングリコール、１,３-プロパンジオール、１，３-ブチレングリコール、１，２-ペンタンジオール、１,２-ヘキサンジオール、アルカンジオール類、ソルビトール、マンニトール、グルコース、スクロース、フルクトース、キシリトール、乳糖、マルトース、マルチトール、トレハロース、糖アルコール類、があげられる。

【0016】

液剤には、１価のアルコール（Ｂ１）、２価以上である多価アルコール（Ｂ２）の中から、少なくとも１種が配合され、さらには２種以上を組み合わせて配合することができる。１価以上のアルコールの配合量は、液剤全量に対して、５～９５重量％の範囲が好ましく、２５～７５重量％がより好ましく、更には４０～６０重量％が好ましい。前記重量が5％未満であると、キシログルカン含有ゲル状組成物の液剤への溶解性が高まり、溶解による崩壊が起きやすくなる。また、95％よりも多いと、キシログルカン含有ゲル状組成物内の水分が奪われ、キシログルカン含有ゲル状組成物が収縮し、形状が変形しやすくなる。

【0017】

また本発明の液剤における１価以上のアルコールの種類や含有量は、所望の形状に成形されたキシログルカン含有組成物の液剤への溶解や収縮が起こらないように、適宜、調整することができる。

【0018】

さらに、本発明の液剤における１価以上のアルコールの種類や含有量は、所望の形状に成形されたキシログルカン含有組成物が液剤中で適度に浮遊するような比重となるように、適宜、調整することができる。

【0019】

前記液剤の外観は、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物の形状が識別できる程度に、透明であることが美観の点で好適である。

【0020】

前記液剤の性状は、室温において流動性のある液体であればよい。たとえば水のように粘性の低い液性であってもよいし、１価以上のアルコールや増粘剤等の含有量の調整によって、所望の形状に成形されたキシログルカン含有組成物が液剤中で適度に浮遊するような粘性を付与してもよい。

【0021】

本発明の液剤には、上記必須成分の他に、次に示すような添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、防腐剤、殺菌剤、界面活性剤（洗浄剤）、色素、ｐＨ調整剤、金属イオン封鎖剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、高分子、油脂、増粘剤、塩類等があげられる。なかでも界面活性剤、ｐＨ調整剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、塩類の配合は、本発明の、キシログルカン含有ゲル状組成物と液剤の、保存安定性を高める上で有効である。

【0022】

本発明のキシログルカン含有ゲル状組成物とは、流動性がなく蒟蒻様の弾力があり、自己保形性を持ったゲル状組成物であるため、任意の型を用いて所望の形状に成形することができるものである。

【0023】

なお、本発明における「浸漬」とは、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物が、液剤中に半分以上浸っている状態の事である。

【0024】

また、型崩れを防止する為のより効果的な浸漬の程度としては、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物が液剤に２/３以上浸っている状態であり、さらに好ましくは全体が浸っている状態である。

【0025】

本発明のキシログルカン含有ゲル状組成物の用途としては医薬品、医薬部外品、皮膚用洗浄剤、皮膚貼り付け用パック剤、入浴剤、保湿化粧料などの化粧品、芳香剤などの家庭用品、菓子、フィギュア模型などのホビー用品等があげられる。

【0026】

また、本発明のキシログルカン含有ゲル状組成物の外観は、透明、半透明、白濁、2層以上の多層等いかなる外観であってもかまわない。ここで、キシログルカン含有ゲル状組成物を2層以上の多層に着色する場合には、非水溶性性質の色素や油溶性色素、顔料などの不溶性着色成分を利用することで、本発明液剤に浸漬させて保管したときに、キシログルカン含有ゲル状組成物中の着色成分が液剤相に移相（色移り）することなく、安定に保存することができる。

【0027】

さらに、その形状は、楕円、球体、多角形、ハート型、動植物、食べ物、建物、文字、ロゴマーク等を模した形状、シート状、フィルム状等、任意の成形型を使用することにより自由に成形できる。

【0028】

本発明の液剤は、製品の製造過程において、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を型崩れなく保管する為に使用してもよいし、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状組成物を液剤に浸漬させた状態で容器等に封入し、商品としてそのまま市場へ流通させてもよい。

【実施例】

【0029】

以下には、本発明を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、本開示は下記の実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。

【0030】

キシログルカンゲル状組成物の安定性評価にあたり、「表０１」で示す組成にてキシログルカン含有ゲル状組成物を調製した。調製方法としては、次のとおりである。成分１～３を４０～６０℃にて分散し、５０～６０℃に加温した成分４に投入して攪拌溶解を行う（溶解液１とする）。成分５～７を同一容器にて均一混合した後、５５℃～６０℃に加温し、溶解液１に攪拌しながら投入し、均一になるまで混合する（調製液１とする）。得られた調製液１を冷めない内に型に流し入れ、放置冷却させる。２４時間放置後、成形型から取り外し、所望の形状に成形されたキシログルカン含有ゲル状洗浄料を得る。

【0031】

「表０１」で得たキシログルカン含有ゲル状洗浄料を、成形型から取り外し、別の形状の成形型に入れ、２４時間静置した状態を確認した。キシログルカン含有ゲル状組成物は最初の成形型の形状を維持しておらず、型崩れを起こしていた（比較例１）。

【表01】

【0032】

キシログルカン含有ゲル状組成物を浸漬する液剤の評価にあたり、「表０２」「表０３」「表０４」で示す組成にて各液剤（以下保存液と記載）を混合し調製した。「表０１」記載の組成にて調製されたキシログルカン含有ゲル状洗浄料を、各保存液に浸漬させ、２４時間浸漬後の状態を確認した結果を次表に示す。

【表02】

【表03】

【表04】

【0033】

「表０５」で示す組成のキシログルカン含有ゲル状洗浄料を調製し、「表０３」記載の実施例１１の保存液に浸漬させた（実施例１８）。「表０５」で示すように、非水溶性着色成分を利用した3色の異なる色のキシログルカン含有ゲル状組成物を比重差がでるように組成した。比重の重い順から順に適量を型に流し入れ、24時間静置後に型から抜き取り、実施例１１の保存液に浸漬し室温にて保管した。その１年以上経過した状態が「図１」である。浸漬後の保管期間が1年以上であっても、保存液は透明であり、キシログルカン含有ゲル状組成物の崩壊や利用している着色成分の溶出は確認されず安定に保持されていた。

【表05】

【符号の説明】

【0034】

a：キシログルカン含有ゲル状組成物（実施例18）
b：保存液（実施例11）
ｃ：サンプル瓶フタ
ｄ：サンプル瓶容器

【図1】