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特許7311101段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法とその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法とその装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230711BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20230711BHJP
   B65G 47/90 20060101ALI20230711BHJP
   B65G 59/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B25J15/00 Z
B65G47/90 A
B65G59/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160797
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037592
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 庸一
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松永 怜也
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】山内 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 達郎
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-219192(JP,A)
【文献】特開2013-154457(JP,A)
【文献】特開平04-082686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
B25J 15/00
B65G 47/90
B65G 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に取り付けられた把持ヘッドを、段積みされた上面開放型の箱の直上位置に移動させ、前記把持ヘッドの下部の両側に設けられた一対の伸縮パッドを外側に拡げて箱の対向する2辺の口部内面に押し付けて箱を固定したうえ、前記把持ヘッドの両側に搭載された一対のハンガーを振り下して箱の前記対向する2辺の口部周面のフランジの下面に係合させて箱を把持し、ロボットアームにより箱を移動させる工程からなり、サイズの異なる箱を把持可能としたことを特徴とする段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法。
【請求項2】
前記一対のハンガーのうち、片側のハンガーで箱の片側口部を把持し、箱の片側を持ち上げることにより、箱の底部が下側の箱の口部にはまり込んだ部分のうち片側のみをはめ込んだ状態から開放し、箱を斜めにしたままロボットアームによりこの箱を水平方向に移動させたうえ、反対側のハンガーで箱の反対側の口部を把持することを特徴とする請求項1に記載の段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法。
【請求項3】
ロボットアームの先端に取り付けられた把持ヘッドを備え、この把持ヘッドの下部の両側に、外側に拡げて箱の対向する2辺の口部内面に押し付けられて箱を固定する一対の伸縮パッドと、前記把持ヘッドの両側に搭載されて振り下され、箱の前記対向する2辺の口部周面のフランジの下面に係合する爪を備えた一対のハンガーと、これらのハンガーを伸縮することでサイズの異なる箱を把持可能とする駆動機構を搭載したことを特徴とする段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング装置。
【請求項4】
各ハンガーはその伸縮方向と直交する方向に分割されており、把持ヘッドは、各ハンガーの伸縮方向と直交する方向の幅調整機構を備えることを特徴とする請求項に記載の段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状の物流の業界では、上面が密閉された段ボール箱が主として用いられている。このように上部が密閉された段ボール箱は、上部より吸着パッドで吸着して移動させることができるので、密着状態で積み上げられた状態であっても、真上に引き抜いて運搬することが可能である。
【0003】
しかし小型の機械部品などの物流には、上面のない上面開放型の樹脂製の箱が主として用いられている。この上面開放型の箱は口部周縁に短いフランジが設けられている。このような上面開放型の箱は吸着パッドが使えないため、ほとんどの場合には人がフランジ部分に手を掛けてハンドリングしている。この人手による作業は、箱の重量によっては作業者の負担が大きくなる。
【0004】
そこで特許文献1には、段積みされた上面開放型の箱のハンドリング装置が提案されている。このハンドリング装置は、爪を楕円軌道で箱の上面のフランジの下側に差し込み、少し持ち上げながら水平方向に引きずる動きをする。しかしそのためにはフランジの端部に爪を引っ掛かるための下向きの折り返しが付いている必要があり、折り返しなしのフランジだけの箱には適用することができなかった。
【0005】
またこのハンドリング装置は、爪をスイングさせる回転中心となるポイントが固定されているため、一定サイズの箱であればハンドリングが可能であるが、サイズの異なる箱については用いることができなかった。このように、特許文献1のハンドリング装置は、フランジの端部に爪を引っ掛かるための下向きの折り返しが付いている一定サイズの箱にしか適用できないという問題があった。実際の物流においては、フランジの端部に下向きの折り返しがなく、しかもサイズの異なる上面開放型の箱が用いられているため、多くの場合には人手によるハンドリングが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-206634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、フランジの端部に下向きの折り返しがなく、しかもサイズの異なる上面開放型の箱を人手に頼らずにハンドリングすることができる、段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法とその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング方法は、ロボットアームの先端に取り付けられた把持ヘッドを、段積みされた上面開放型の箱の直上位置に移動させ、前記把持ヘッドの下部の両側に設けられた一対の伸縮パッドを外側に拡げて箱の対向する2辺の口部内面に押し付けて箱を固定したうえ、前記把持ヘッドの両側に搭載された一対のハンガーを振り下して箱の前記対向する2辺の口部周面のフランジの下面に係合させて箱を把持し、ロボットアームにより箱を移動させる工程からなり、サイズの異なる箱を把持可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記一対のハンガーのうち、片側のハンガーで箱の片側口部を把持し、箱の片側を持ち上げることにより、箱の底部が下側の箱の口部にはまり込んだ部分のうち片側のみをはめ込んだ状態から開放し、箱を斜めにしたままロボットアームによりこの箱を水平方向に移動させたうえ、反対側のハンガーで箱の反対側の口部を把持することができる。
【0010】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の段積みされた上面開放型の箱の把持ハンドリング装置は、ロボットアームの先端に取り付けられた把持ヘッドを備え、この把持ヘッドの下部の両側に、外側に拡げて箱の対向する2辺の口部内面に押し付けられて箱を固定する一対の伸縮パッドと、前記把持ヘッドの両側に搭載されて振り下され、箱の前記対向する2辺の口部周面のフランジの下面に係合する爪を備えた一対のハンガーと、これらのハンガーを伸縮することでサイズの異なる箱を把持可能とする駆動機構を搭載したことを特徴とするものである。
【0011】
なお、各ハンガーはその伸縮方向と直交する方向に分割されており、把持ヘッドは、各ハンガーの伸縮方向と直交する方向の幅調整機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フランジの端部に下向きの折り返しがない上面開放型の箱を、確実に把持して移動させることができる。また、一対の伸縮パッドを箱の対向する2辺の口部内面に接触するまで拡げて箱を固定したうえ、一対のハンガーを用いて箱を把持するため、箱のサイズが一定でない場合にも確実なハンドリングが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す全体図である。
図2】上面開放型の箱の斜視図である。
図3】多段に積み上げられた箱とカメラを示す斜視図である。
図4】把持ヘッドを斜め下方から見た斜視図である。
図5】把持ヘッドの正面図である。
図6】把持ヘッドの側面図である。
図7】箱を把持する手順の説明図である。
図8】箱を把持する他の手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態を示す模式的な全体図であり、10はパレット上に多段に積み上げられた直方体状の箱である。図1では箱10は単なる四角形で表示されているが、本実施形態でハンドリングされるのは図2に示すように、口部周縁に外向きの短いフランジ11を備えた上面開放型の樹脂製の箱である。積み上げを容易にするため、箱10の底は凸部になっていて一段下の箱10の開放部にはまり込んでいる。これは10mm程度の場合が多い。箱10の内部には機械部品などが収納されるが、収納物の最高高さは箱の上面よりも例えば20mm程度低く設定されている。多段に積み上げられた箱10の上方には照明装置12とカメラ13が設置されている。図3に示すようにカメラ13は異なる位置に複数台が設置されており、箱10の積み上げ状態を異なる方向から撮影している。
【0015】
これらのカメラ13の画像は図1に示される座標演算装置14に入力され、多段に積み上げられた多数の箱10の全体座標、及び移動対象となる最上部の箱10の座標が演算される。この座標の演算方法としては、画像から箱10の四隅の位置を定義し、それらを通る長方形を定義し、その各辺の中心点を求める方法や、画像解析のプログラムからフランジ11の輪郭を求める方法、さらにディープラーンニングを利用して箱10のフランジ11の角の形状を学習させる方法など、各種方法を用いることができる。しかしこれらの座標算出方法は公知の技術であり、市販のソフトを利用して実施できるので、説明を省略する。なお、移動対象となる最上部の箱10の座標とともに、その箱10を移動させる方向も自動的に決定することができる。
【0016】
図1に示すように、多段に積み上げられた箱10の近傍には多軸ロボット20が設置され、そのロボットアーム21の先端に取り付けられた把持ヘッド30を用いて、箱10の把持ハンドリングを行う。四方が密着状態で囲まれた箱10を抜き取ることはできないため、箱10のハンドリングは最上段であり、かつ少なくとも一側方に空間がある位置の箱10から順に行うものとする。図1に示すように座標演算結果はPLC15を介してロボット制御盤22に入力され、ロボットアーム21が把持ヘッド30を移動させようとする箱10の直上位置に移動させる。この位置をロボットの第2原点とする。PLC15はアンプ16を介して把持ヘッド30に搭載されたモータ17等を駆動する。18は把持ヘッド30に搭載されたセンサである。
【0017】
次に図4以下を参照しつつ、把持ヘッド30の構造を説明する。図4は把持ヘッドを斜め下方から見た斜視図であり、図5はその正面図である。これらの図において、31は上部ベースであり、その上部にロボットアーム21の先端が接続されている。32は上部ベース31の下方に支柱33を介して平行に取り付けられた下部ベースである。下部ベース32の下面には前後2本のガイドロッド34が紙面の左右方向に設けられており、これらのガイドロッド34上に、左右一対の伸縮パッド35がスライド可能に支持されている。
【0018】
伸縮パッド35は平板36とその端部に設けられた垂下片37とを備え、下部ベース32の下面に設けられた一対の電動アクチュエータ38により左右方向にスライドできるようになっている。この平板36は箱10の上面と接触するものであり、垂下片37は箱10の口部内面に押し付けられるものである。その作用については後述する。
【0019】
上部ベース31の左右の端部には、左右一対のハンガー40とその駆動機構41が搭載されている。これらは図4に示すように伸縮パッド35の平板36と連結された上部平板44上に搭載されており、伸縮パッド35とともに下部ベース32上を左右方向にスライドするものである。
【0020】
ハンガー40は図5に示す上方位置から図4に示す下方位置まで、駆動機構41によって振り降ろされる。ハンガー40は先端に屈曲させた爪42を備えており、この爪42は図4のように振り下ろされたときに、箱10の口部周面のフランジ11の下面に係合するものである。
【0021】
なお、図4図6に示されるようにハンガー40は前後に分割されており、図5に示される適宜の幅調整機構43によって伸縮方向と直交する方向にスライドできるようにしておくことが好ましい。これは箱10のサイズの大小に対応させるためであるが、幅調整機構43は本発明の必須要件ではなく、省略することも可能である。図6の右図にハンガー40を前後に開いた状態を示す。
【0022】
図7に把持ヘッド30の動作を示す。先ず(A)のように把持ヘッド30を移動対象となる箱10の直上位置に移動させ、停止させる。次に(B)のように左右一対の伸縮パッド35を外側に移動させて開きながら(C)のように箱10の上面に向けて把持ヘッド30の全体を降下させる。この降下の動きはロボットアーム21により行われる。
【0023】
把持ヘッド30を降下させると伸縮パッド35の平板36が箱10の上面に当たり、その状態でさらに左右一対の伸縮パッド35を外側に開くと、伸縮パッド35の垂下片37が箱10の対向する2辺の口部内面に押し付けられる。なお、押し付け状態となったことは、電動アクチュエータ38の負荷電流により検出可能であるから、左右一対の伸縮パッド35を箱10の口部内面に接触するまで拡げることができる。このようにして左右の伸縮パッド35を箱10の左右の口部内面に押し付けることにより、箱10は把持ヘッド30に対してセンタリングされた状態で固定される。なお、所定距離だけ伸縮パッド35を開いても負荷電流に変化がない場合には、異常が発生している可能性があるため、装置を停止させる。これにより搬送中に箱10を落下させるなどの危険を防止することができる。
【0024】
その後、図7の(E)に示すようにハンガー40を駆動機構41によって振り降ろせば、ハンガー40の先端の爪42が箱10の対向する2辺の口部周面のフランジ11の下面に係合する。この結果、箱10は伸縮パッド35とハンガー40とによって、確実に把持される。その後に、ロボットアーム21により任意の位置に移動させることができる。なお、ハンガー40の振り下しの際にも駆動機構の負荷電流を監視し、箱10に当たるべき位置まで振り下しても負荷電流が変化しない場合には、異常が発生している可能性があるため、装置を停止させるものとする。
【0025】
このように本発明によれば、フランジの端部に下向きの折り返しがない上面開放型の箱を、確実に把持して移動させることができる。また、左右一対の伸縮パッドを箱の口部内面に接触するまで拡げて箱を固定したうえ、左右一対のハンガー40を用いて箱を把持するため、箱10のサイズが一定でない場合にも確実なハンドリングが可能である。
【0026】
次に図8により、具体的な動作の一例を説明する。ここに示されるのは、密着状態で多段に積み上げられた箱10のうち、一側方に空間がある位置の箱10を移動させる手順である。
【0027】
先ず図8の(A)のように、側方に空間がある右側のハンガー40を振り下して、箱の右側の口部を把持する。次に(B)のように把持ヘッド30を傾けて右側を少し持ち上げながら、(C)のように水平方向に箱10を移動させる。最初に右側を持ち上げる理由は、箱10の底は凸部になっていて、一段下の箱10の開放部にはまり込んでいる事が一般的であるからである。これは箱を段積みしやすくするためである。そのはまり込みがあると水平に移動できないため、箱10の片側を持ち上げてこのはまり込み部分を片側のみはめ込んだ状態から開放する事で、この持ち上げた方向に向けて水平にずらせることができる。なお、箱10の反対側の凸部は一段下の箱の開放部にまだはまり込んではいるが、水平方向にはフランジ11に沿って滑っていくので、重量は半減されて水平移動が可能になる。その結果、箱10の左側にも空間ができるので、(D)のように左側のハンガー40を振り下して、箱の左側の口部を把持することができる。その後は(E)、(F)のように任意の位置に移動させることができる。この方法によれば、隣接する箱の間に隙間がない場合にも、箱10の把持ハンドリングが可能となる。
【0028】
以上に説明したように、本発明によれば多段に積み上げられた上面開放型の箱10を、確実に把持して移動させることができる。また、箱10のサイズが一定でない場合にも確実なハンドリングが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 上面開放型の箱
11 フランジ
12 照明装置
13 カメラ
14 座標演算装置
15 PLC
16 アンプ
17 モータ
18 センサ
20 多軸ロボット
21 ロボットアーム
22 ロボット制御盤
30 把持ヘッド
31 上部ベース
32 下部ベース
33 支柱
34 ガイドロッド
35 伸縮パッド
36 平板
37 垂下片
38 電動アクチュエータ
40 ハンガー
41 駆動機構
42 爪
43 幅調整機構
44 上部平板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8