(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230711BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20230711BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61B6/03 371
A61N5/10 M
A61N5/10 T
G06T1/00 290A
G06T1/00 290B
(21)【出願番号】P 2019091410
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 昭行
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-198893(JP,A)
【文献】特開2010-246883(JP,A)
【文献】特表2010-500151(JP,A)
【文献】特開2009-082471(JP,A)
【文献】特表2007-530122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
A61N 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の第1透視画像を取得する第1画像取得部と、
照射した放射線を検出器によって検出して画像化する撮影装置から、前記第1透視画像の取得時とは異なる時刻に前記患者に照射した前記放射線に応じた第2透視画像を取得する第2画像取得部と、
前記検出器の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に前記3次元空間に配置した前記第1透視画像
を透視投影することによって前記第2透視画像
に対応した再構成画像を生成する生成部と、
前記第2透視画像と前記再構成画像と
に基づく計算の結果、類似度
が高い最終的な位置を、前記3次元空間における前記第1透視画像の好適位置
として求める計算部と、
を備え、
前記生成部は、前記計算部によって用いられる再構成画像を、前記第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記再構成画像のうち前記第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成された再構成画像は、前記患者の対象部位を包含するように生成される、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記再構成画像のうち前記第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲の第1再構成画像と、
前記再構成画像のうち前記第1再構成画像以外の第2再構成画像とを生成し、
前記計算部は、前記第1再構成画像を前記第2透視画像に対して仮想的に平行移動させることで、前記第1再構成画像に含まれる前記対象部位と前記第2透視画像に含まれる前記対象部位との類似度が高い第1位置を求める第1計算部と、
前記第1計算部により求められた前記第1位置を基準とし、前記第2再構成画像を前記第2透視画像に対して仮想的に平行および回転移動させることで、前記第2再構成画像に含まれる前記対象部位と前記第2透視画像に含まれる前記対象部位との類似度が高い第2位置を求める第2計算部とを含み、
前記第2位置を最終的な前記好適位置として出力する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記計算部は、前記第1位置を求める際に前記第1再構成画像を前記第2透視画像に対して仮想的に平行移動させる移動量に基づいて、次に生成する前記第1再構成画像の範囲を決定する画像範囲決定部、
をさらに備える、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記患者に対して、少なくとも第1の方向から照射された前記放射線を検出する前記検出器に対応する前記第1再構成画像と、前記第1の方向とは異なる第2の方向から照射された前記放射線を検出する前記検出器に対応する前記第1再構成画像とを生成し、それぞれの前記検出器が前記放射線を検出する前記方向が示す情報を含む前記第2再構成画像を生成する、
請求項3または請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第1計算部は、少なくとも、前記第1の方向または前記第2の方向のいずれか一方の方向から照射された前記放射線を検出する1つの前記検出器に対応する前記第1再構成画像を用いて前記第1位置を求める、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第1計算部は、前記第1の方向または前記第2の方向のいずれか一方の方向から照射された前記放射線を検出する前記検出器に対応する前記第1再構成画像を用いて前記第1位置を求める処理と、前記第1位置を基準として、他方の方向から照射された前記放射線を検出する前記検出器に対応する前記第1再構成画像を用いて、前記第1再構成画像に含まれる前記対象部位と前記第2透視画像に含まれる前記対象部位との類似度がより高い前記第1位置を求める処理とを、前記第1再構成画像に含まれる前記対象部位と前記第2透視画像に含まれる前記対象部位との類似度が所定の範囲内になるまで繰り返し、
前記第2計算部は、前記所定の範囲内となった前記第1位置を基準として、前記第2位置を求める、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記第1計算部がいずれか一方の前記検出器に対応する前記第1位置を求めた後に、他方の前記検出器に対応する前記第1再構成画像を生成する、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記第1透視画像および前記第2透視画像を表示装置に表示させ、さらに前記好適位置の情報を前記表示装置に表示させる表示制御部と、
前記第1透視画像の前記3次元空間内での前記好適位置の移動の指示を受け付ける受付
部と、
をさらに備える、
請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
コンピュータを、
患者の第1透視画像を取得する第1画像取得部と、
照射した放射線を検出器によって検出して画像化する撮影装置から、前記第1透視画像の取得時とは異なる時刻に前記患者に照射した前記放射線に応じた第2透視画像を取得する第2画像取得部と、
前記検出器の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に前記3次元空間に配置した前記第1透視画像
を透視投影することによって前記第2透視画像
に対応した再構成画像を生成する生成部と、
前記第2透視画像と前記再構成画像と
に基づく計算の結果、類似度
が高い最終的な位置を、前記3次元空間における前記第1透視画像の好適位置
として求める計算部と、
を備え、
前記生成部が、前記計算部によって用いられる再構成画像を、前記第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成する、
医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラム。
【請求項11】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
前記患者に対して異なる方向から照射された前記放射線を検出する2つの検出器を備える撮影装置と、
を備える医用装置。
【請求項12】
請求項11に記載の医用装置と、
前記患者の治療する対象の部位に治療ビームを照射する照射部と、
前記治療ビームの照射を制御する照射制御部と、
前記医用装置において求められた前記好適位置に合うように前記患者が固定された寝台の位置を移動させる寝台制御部と、
を備える治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、放射線を患者の体内にある病巣に対して照射することによって、その病巣を破壊する治療方法である。このとき、放射線は、病巣の位置に正確に照射される必要がある。これは、患者の体内の正常な組織に放射線を照射してしまうと、その正常な組織にまで影響を与える場合があるからである。そのため、放射線治療を行う際には、まず、治療計画の段階において、予めコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)が行われ、患者の体内にある病巣の位置が3次元的に把握される。そして、把握した病巣の位置に基づいて、正常な組織への照射を少なくするように、放射線を照射する方向や照射する放射線の強度が計画される。その後、治療の段階において、患者の位置を治療計画の段階の患者の位置に合わせて、治療計画の段階で計画した照射方向や照射強度に従って放射線が病巣に照射される。
【0003】
治療段階における患者の位置合わせでは、3次元のCTデータを治療室内に仮想的に配置し、この3次元のCTデータの位置に、実際に治療室内の移動式寝台に寝かせた患者の位置が一致するように寝台の位置を調整する。より具体的には、寝台に寝かせた状態で撮影した患者の体内のX線透視画像と、治療計画のときに撮影した3次元のCT画像から仮想的にX線透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像との2つの画像を照合することによって、それぞれの画像の間での患者の位置のずれを求める。このとき、患者のX線透視画像は、3次元空間での患者の位置を求めるために、少なくとも2つの異なる方向から撮影され、それぞれのX線透視画像とDRR画像との照合を行うことによって、3次元空間内での患者の位置のずれが求められる。そして、最終的に、画像照合によって求めた患者の位置のずれに基づいて寝台を移動させ、患者の体内の病巣や骨などの位置を、治療計画のときと合わせる。
【0004】
ところで、放射線治療では、患者の体内の病巣に対する放射線の照射が、複数回に分けて行われる。このため、放射線を病巣に照射する都度、患者の位置合わせ、つまり、X線透視画像とDRR画像との照合を行う必要がある。ここで、3次元のCT画像からのDRR画像の再構成は、CT画像のデータに対してレイトレーシング法を適用して行うため計算コストが高い。つまり、DRR画像を作成するための多くの時間を要する。また、患者は、放射線を病巣に照射する都度、位置がずれないように寝台に拘束されるため、放射線治療の際の患者の負担が大きい。このため、従来から、X線透視画像とDRR画像との画像照合を計算機によって自動計算することによって、放射線治療における患者の位置合わせに要する時間を短縮する方法が提案されている。
【0005】
従来の患者の位置合わせの方法では、2方向から撮影されたX線透視画像のそれぞれに対して位置合わせを行う際に、一方の撮影方向に沿ってX線透視画像とDRR画像とを照合する探索と、他方の撮影方向に沿ってX線透視画像とDRR画像とを照合する探索とを交互に行っている。これにより、従来の患者の位置合わせの方法では、探索をしている撮影方向に沿ったDRR画像における変化が少なくなるため、同じ撮影方向に対応するDRR画像の再作成が不要となり、それぞれの撮影方向における好適な位置の探索の高速化を図ることが可能となる。
【0006】
そして、従来の患者の位置合わせの方法では、X線透視画像と同じ撮影範囲をDRR画像で再現することによって、DRR画像を作成する際の計算コストを低減している。しかしながら、近年では、X線撮像装置の低コスト化や設置場所の制限などの理由から、X線透視画像の撮影範囲が狭くなる場合がある。すると、CT画像から再構成したDRR画像における患者の位置と、寝台に寝かせた状態の現在の患者の位置との差異が大きい場合には、X線透視画像に写っている患者の部位が、DRR画像に十分に含まれていないというようなことも考えられる。この場合、X線透視画像とDRR画像との画像照合によって患者の位置のずれを求めることが困難となってしまうことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、患者の位置合わせを高い精度で行うことができる医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の医用画像処理装置は、第1画像取得部と、第2画像取得部と、生成部と、計算部とを持つ。第1画像取得部は、患者の第1透視画像を取得する。第2画像取得部は、照射した放射線を検出器によって検出して画像化する撮影装置から、前記第1透視画像の取得時とは異なる時刻に前記患者に照射した前記放射線に応じた第2透視画像を取得する。生成部は、前記検出器の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に前記3次元空間に配置した前記第1透視画像を透視投影することによって前記第2透視画像に対応した再構成画像を生成する。計算部は、前記第2透視画像と前記再構成画像とに基づく計算の結果、類似度が高い最終的な位置を、前記3次元空間における前記第1透視画像の好適位置として求める。前記生成部は、前記計算部によって用いられる再構成画像を、前記第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、患者の位置合わせを高い精度で行うことができる医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の治療システムにおける動作の流れを示すフローチャート。
【
図4】第1の実施形態の治療システムにおける放射線の照射経路と、コンピュータ断層撮影画像および医用画像処理装置が生成するデジタル再構成X線写真画像との関係を説明するための図。
【
図5】第1の実施形態の治療システムにおけるX線透視画像と医用画像処理装置が生成する再構成画像との関係を説明するための図。
【
図6】第1の実施形態の医用画像処理装置が生成した再構成画像を用いて好適位置を求める動作を説明するための図。
【
図7】第2の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図である。治療システム1は、例えば、治療台10と、寝台制御部11と、2つの放射線源20(放射線源20-1および放射線源20-2)と、2つの放射線検出器30(放射線検出器30-1および放射線検出器30-2)と、治療ビーム照射門40と、治療ビーム照射制御部41と、画像解析部50と、表示制御部60と、表示装置61と、指示受付部80と、医用画像処理装置100とを備える。
【0014】
なお、
図1に示したそれぞれの符号に続いて付与した「-」とそれに続く数字は、対応関係を識別するためのものである。より具体的には、放射線源20と放射線検出器30との対応関係では、放射線源20-1と放射線検出器30-1とが対応して1つの組となっていることを示し、放射線源20-2と放射線検出器30-2とが対応してもう1つの組となっていることを示している。なお、以下の説明において複数ある同じ構成要素を区別せずに表す場合には、「-」とそれに続く数字を示さずに表す。
【0015】
治療台10は、放射線による治療を受ける被検体(患者)Pを固定する寝台である。寝台制御部11は、治療台10に固定された患者Pに治療ビームを照射する方向を変えるために、治療台10に設けられた並進機構および回転機構を制御する制御部である。寝台制御部11は、例えば、治療台10の並進機構および回転機構のそれぞれを3軸方向、つまり、6軸方向に制御する。
【0016】
放射線源20-1は、患者Pの体内を透視するための放射線r-1を予め定められた角度から照射する。放射線源20-2は、患者Pの体内を透視するための放射線r-2を、放射線源20-1と異なる予め定められた角度から照射する。放射線r-1および放射線r-2は、例えば、X線である。
図1は、治療台10上に固定された患者Pに対して、2方向からX線撮影を行う場合を示している。なお、
図1においては、放射線源20による放射線rの照射を制御する制御部の図示を省略している。
【0017】
放射線検出器30-1は、放射線源20-1から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-1を検出し、検出した放射線r-1のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内のX線透視画像を生成する。放射線検出器30-2は、放射線源20-2から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-2を検出し、検出した放射線r-2のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内のX線透視画像を生成する。放射線検出器30は、2次元のアレイ状にX線検出器が配置され、それぞれのX線検出器に到達した放射線rのエネルギーの大きさをデジタル値で表したデジタル画像を、X線透視画像として生成する。放射線検出器30は、例えば、フラット・パネル・ディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)や、イメージインテンシファイアや、カラーイメージインテンシファイアである。以下の説明においては、それぞれの放射線検出器30が、FPDであるもとする。放射線検出器30(FPD)は、生成したそれぞれのX線透視画像を医用画像処理装置100に出力する。なお、
図1においては、放射線検出器30によるX線透視画像の生成を制御する制御部の図示を省略している。
【0018】
治療システム1では、放射線源20と放射線検出器30との組が、特許請求の範囲における「撮影装置」の一例である。
図1には、異なる2つ方向から患者PのX線透視画像を撮影する撮影装置を示している。撮影装置と医用画像処理装置100とを合わせたものが、特許請求の範囲における「医用装置」の一例である。
【0019】
治療システム1では、放射線源20と放射線検出器30との位置が固定されているため、放射線源20と放射線検出器30との組によって構成される撮影装置が撮影する方向(治療室の固定座標系に対する相対方向)が固定されている。このため、治療システム1が設置された3次元空間内において3次元座標を定義した場合、放射線源20と放射線検出器30との位置を、3軸の座標値で表すことができる。以下の説明においては、3軸の座標値の情報を、放射線源20と放射線検出器30との組によって構成される撮影装置のジオメトリ情報とよぶ。ジオメトリ情報を用いれば、所定の3次元座標内の任意の位置に位置する患者Pの位置を、放射線源20から照射された放射線が患者Pの体内を通過して放射線検出器30に到達したときの位置から求めることができる。つまり、所定の3次元座標における患者Pの位置を、射影行列として求めることができる。
【0020】
ジオメトリ情報は、治療システム1を設置するときに設計された放射線源20および放射線検出器30の設置位置から得ることができる。ジオメトリ情報は、3次元計測器などによって計測した放射線源20および放射線検出器30の設置位置から得ることもできる。射影行列をジオメトリ情報から求めておくことによって、医用画像処理装置100は、3次元空間内にある患者Pが、撮影された透視画像のどの位置に撮影されるかを計算することができる。
【0021】
また、
図1に示したような患者Pの透視画像を2つ同時に撮影することが撮影装置では、それぞれの放射線源20と放射線検出器30との組ごとに、射影行列を求めておく。これにより、2つの透視画像に撮影された患者Pの体内の病巣や骨、あるいは患者Pの体内に予め留置されているマーカーの像の位置(2次元座標の位置)から、三角測量の原理と同様にして、病巣や骨、あるいはマーカーの位置を表す所定の3次元座標での座標値を計算することができる。
【0022】
なお、
図1では、2組の放射線源20と放射線検出器30、つまり、2つの撮影装置を備える治療システム1の構成を示した。しかし、治療システム1が備える撮影装置の数は、2つに限定されない。例えば、治療システム1は、3つ以上の撮影装置(3組以上の放射線源20と放射線検出器30との組)を備えてもよい。また、治療システム1は、1つの撮影装置(1組の放射線源20と放射線検出器30との組)のみを備えてもよい。
【0023】
治療ビーム照射門40は、患者Pの体内の治療する対象の部位である病巣を破壊するための放射線を治療ビームBとして照射する照射部である。治療ビームBは、例えば、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などである。治療ビームBは、治療ビーム照射門40から直線的に患者P(より具体的には、患者Pの体内の病巣)に照射される。治療ビーム照射制御部41は、治療ビーム照射門40による治療ビームBの照射を制御する。治療ビーム照射制御部41は、画像解析部50により出力された治療ビームBの照射タイミングを指示する信号に応じて、治療ビーム照射門40に治療ビームBを照射させる。
【0024】
図1では、固定された1つの治療ビーム照射門40を備える治療システム1の構成を示したが、これに限定されず、治療システム1は、複数の治療ビーム照射門を備えてもよい。例えば、治療システム1は、患者Pに水平方向から治療ビームを照射する治療ビーム照射門をさらに備えてもよい。また、治療システム1は、1つの治療ビーム照射門が患者Pの周辺を回転することによって、様々な方向から治療ビームを患者Pに照射する構成であってもよい。より具体的には、
図1に示した治療ビーム照射門40が、
図1に示した水平方向Yの回転軸に対して360度回転することができる構成であってもよい。このような構成の治療システム1は、回転ガントリ型治療システムとよばれる。なお、回転ガントリ型治療システムでは、治療ビーム照射門40の回転軸と同じ軸に対して、放射線源20および放射線検出器30も、同時に360度回転する。
【0025】
画像解析部50は、肺や肝臓など、患者Pの呼吸や心拍の動きによって移動してしまう器官の位置を追跡し、患者Pの病巣に治療ビームBを照射する照射タイミングを決定する。つまり、画像解析部50は、呼吸同期照射方法によって放射線治療を行うための治療ビームBの照射タイミングを決定する。画像解析部50は、それぞれの放射線検出器30によってリアルタイムに撮影された患者PのX線透視画像に写されている患者Pの体内の病巣や骨の像を追跡することによって、放射線治療において病巣に照射する治療ビームBの照射タイミングを自動で決定する。このとき、画像解析部50は、追跡している患者Pの体内の病巣や骨の像の位置が放射線治療を行う所定の範囲(領域)(以下、「ゲートウィンドウ」という)内にあるか否かを判定し、患者Pの体内の病巣や骨の像の位置がゲートウィンドウ内にあるタイミングを、治療ビームBを照射する照射タイミングとして、この照射タイミングを指示する信号を、治療ビーム照射制御部41に出力する。これにより、治療ビーム照射制御部41は、画像解析部50により出力された照射タイミングを指示する信号に応じて、治療ビーム照射門40に治療ビームBを照射させる。つまり、治療ビーム照射制御部41は、追跡している患者Pの体内の病巣や骨の像の位置がゲートウィンドウ内にある場合にのみ、治療ビームBを照射させるように治療ビーム照射門40を制御し、患者Pの体内の病巣や骨の像の位置がゲートウィンドウ内にない場合には、治療ビームBの照射を停止させるように治療ビーム照射門40を制御する。
【0026】
なお、ゲートウィンドウは、放射線治療を行う前に撮影した3次元のコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)画像に写されている患者Pの体内の病巣や骨の位置を中心とし、その中心の位置にマージンを付加した3次元の領域が設定される。また、ゲートウィンドウは、CT画像に対して設定した範囲(領域)を、CT画像から仮想的にX線透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像やX線透視画像に射影させた範囲(領域)として設定してもよい。また、ゲートウィンドウは、放射線治療を開始する直前の患者Pの状態を考慮して設定されたマージンを付加して設定してもよい。上記のようなことを考慮してゲートウィンドウを設定することにより、患者Pに対して不適切な治療ビームBや不要な放射線rの照射を行ってしまうような事態、いわゆる、被ばくを回避することができる。
【0027】
なお、画像解析部50は、それぞれの放射線検出器30によってリアルタイムに撮影されたX線透視画像に基づいて、放射線治療において治療を行う患者Pの体内に予め留置されているマーカーの像を追跡することによって、マーカーと病巣との相対的な位置の関係などから、放射線治療において病巣に照射する治療ビームBの照射タイミングを自動で決定してもよい。この場合、画像解析部50は、追跡しているマーカーの像の位置がゲートウィンドウ内にあるタイミングを、治療ビームBを照射する照射タイミングとして指示する信号を、治療ビーム照射制御部41に出力する。
【0028】
医用画像処理装置100は、現在の患者Pの位置を、治療計画の段階など、放射線治療を行う前の計画段階において事前に定められた位置に合わせる位置決めのための画像処理をする処理部である。医用画像処理装置100は、放射線治療を行う前に事前に撮影した3次元のCT画像などから仮想的にX線透視画像を再構成したDRR画像と、それぞれの放射線検出器30により出力された現在のX線透視画像とを照合することによって、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置を自動で探索する。そして、医用画像処理装置100は、治療台10に固定されている患者Pの現在の位置を、放射線治療を行うために事前に定められた好適な位置(以下、「好適位置」という)に移動させるための治療台10の移動量を求める。医用画像処理装置100の構成および処理に関する詳細については後述する。
【0029】
なお、医用画像処理装置100と放射線検出器30のそれぞれとは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)によって接続される構成であってもよい。
【0030】
表示制御部60は、医用画像処理装置100において好適位置を探索している途中を含めて、CT画像や、DRR画像、X線透視画像、さらには、現在の好適位置の情報を表示装置61に表示させる。これにより、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの表示装置61に、CT画像や、DRR画像、X線透視画像、現在の好適位置の情報が表示され、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が、現在の位置決めの状況を目視で確認することができる。
【0031】
指示受付部80は、医用画像処理装置100において探索した好適位置を、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が手動で調整するためのユーザーインターフェースである。指示受付部80は、放射線治療の実施者(医師など)によって操作される操作部(不図示)を備えている。
【0032】
なお、第1の実施形態の医用画像処理装置は、医用画像処理装置100と、表示制御部60と、指示受付部80とを含めた構成であってもよい。また、第1の実施形態の医用画像処理装置は、さらに、画像解析部50を含めた構成であってもよい。また、第1の実施形態の医用画像処理装置は、さらに、表示装置61と一体になった構成であってもよい。
【0033】
次に、治療システム1を構成する医用画像処理装置100の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態の医用画像処理装置100の概略構成を示すブロック図である。
図2に示した医用画像処理装置100は、第1画像取得部101と、第2画像取得部102と、生成部103と、計算部104とを備える。また、計算部104は、第1計算部1041と、第2計算部1042とを備える。
【0034】
第1画像取得部101は、治療対象の患者Pの体内を透視可能な3次元ボリュームデータ像を取得する。第1画像取得部101は、取得した3次元ボリュームデータを、生成部103に出力する。3次元ボリュームデータは、CT装置や、コーンビーム(Cone-Beam:CB)CT装置、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置などの撮影装置で患者Pを撮影することによって取得した3次元のデータである。以下の説明においては、3次元ボリュームデータが、CT装置によって患者Pを撮影して取得したCT画像のデータ(以下、「CTデータ」という)であるものとする。
【0035】
第2画像取得部102は、治療システム1が設置された治療室において治療台10に固定された現在の患者Pの体内のX線透視画像を取得する。つまり、第2画像取得部102は、それぞれの放射線検出器30によってリアルタイムに撮影された患者Pの体内のX線透視画像を取得する。第2画像取得部102は、取得したX線透視画像を、計算部104に出力する。
【0036】
生成部103は、第1画像取得部101により出力されたCTデータに基づいて、DRR画像を生成する。このとき、生成部103は、治療システム1において撮影装置を構成する2つの放射線検出器30(FPD)のそれぞれが放射線を検出する面に平行な2次元の平面に沿ってFPDの大きさ、つまり、FPDの撮影範囲を仮想的に拡大したDRR画像(以下、「第1DRR画像」という)と、2つのFPDの撮影範囲と同じ撮影範囲のDRR画像(以下、「第2DRR画像」という)とを生成する。生成部103は、生成した第1DRR画像と第2DRR画像とのそれぞれを、計算部104に出力する。
【0037】
計算部104は、生成部103が生成した第1DRR画像または第2DRR画像と、第2画像取得部102が取得したX線透視画像とに基づいて、治療システム1が設置された治療室の3次元空間内に仮想的に配置されたCTデータの位置(以下、「CT位置」という)と、治療台10に固定された現在の患者Pの位置との間の位置のずれ(以下、「患者Pの位置ずれ量」という)を計算する。そして、計算部104は、計算した患者Pの位置ずれ量に基づいて、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を、好適位置として探索する。計算部104は、探索した好適位置のCT位置に基づいて、治療室内の3次元座標に準拠した回転および並進を治療台10にさせるための6つの制御パラメータを計算し、計算した6つの制御パラメータを寝台制御部11に出力する。ここで、計算部104が寝台制御部11に出力する6つの制御パラメータは、治療台10に設けられた並進機構および回転機構のそれぞれを3軸方向に制御するためのパラメータである。
【0038】
第1計算部1041は、第1DRR画像とX線透視画像とに基づいて、放射線検出器30(FPD)が放射線を検出する面に平行な2次元の平面に沿って患者Pの位置ずれ量を計算するCT位置を移動させながら、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を探索する。例えば、第1計算部1041は、治療室内の3次元座標に準拠した並進量を表す1つのパラメータに従ってCT位置を移動させ、第1DRR画像とX線透視画像との類似度が最も高いCT位置を探索する。そして、第1計算部1041は、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になるまで、CT位置の探索を行う。このとき、第1計算部1041は、放射線検出器30-1または放射線検出器30-2のいずれか一方に対応する第1DRR画像とX線透視画像とに基づいたCT位置の探索と、放射線検出器30-1または放射線検出器30-2のいずれか他方に対応する第1DRR画像とX線透視画像とに基づいたCT位置の探索とを交互に行う。従って、第1計算部1041におけるCT位置の探索は、いずれか一方の放射線検出器30に対応するCT位置の探索のみ、すなわち、1回のみで終了する場合もあるが、一方の放射線検出器30に対応するCT位置の探索と、他方の放射線検出器30に対応するCT位置の探索とを交互に複数回繰り返してから終了する場合もある。なお、第1計算部1041におけるCT位置の探索は、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になるまで、つまり、治療台10に固定された患者Pの位置をある程度合わせることができるようになるまで行う簡易的なCT位置の探索である。以下の説明においては、第1計算部1041におけるCT位置の探索を、「疎探索」という。
【0039】
なお、第1計算部1041におけるCT位置の疎探索では、上述したように、一方の放射線検出器30に対応する第1DRR画像とX線透視画像とに基づいたCT位置の探索と、他方の放射線検出器30に対応する第1DRR画像とX線透視画像とに基づいたCT位置の探索とを交互に行う。このため、第1計算部1041は、現在の第1DRR画像を用いたCT位置の疎探索が完了するごとに、疎探索した患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置の情報を、生成部103に出力する。これにより、生成部103は、第1計算部1041により出力された現在の第1DRR画像におけるCT位置を基準として、現在の第1DRR画像に対応する放射線検出器30とは異なる放射線検出器30に対応する新たな第1DRR画像を生成し、生成した新たな第1DRR画像を第1計算部1041に出力する。このように、生成部103と第1計算部1041とは互いに連携して、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になるまで、第1DRR画像の生成とCT位置の疎探索とを行う。
【0040】
第2計算部1042は、第1計算部1041に引き続き、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置をより詳細に探索する。第2計算部1042は、第1計算部1041が探索した患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を基準とした第2DRR画像とX線透視画像とに基づいて、治療室内の3次元座標に準拠した回転および並進方向に沿って患者Pの位置ずれ量を計算するCT位置を移動させながら、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を探索する。言い換えれば、第2計算部1042は、治療室内の3次元座標に準拠した回転量および並進量を表す6つのパラメータに従ってCT位置を移動させ、第2DRR画像とX線透視画像との類似度が最も高いCT位置を、最終的な好適位置として探索する。なお、第2計算部1042におけるCT位置の探索は、第2DRR画像とX線透視画像とに基づいて最終的なCT位置(好適位置)、つまり、治療台10に固定された患者Pに治療ビームBを照射する方向を自動で決定するための詳細なCT位置の探索である。以下の説明においては、第2計算部1042におけるCT位置の探索を、「密探索」という。第2計算部1042は、探索した最終的な好適位置(CT位置)に基づいて、治療台10を治療室内の3次元座標に準拠して回転および並進させるための6つの制御パラメータを計算し、計算した6つの制御パラメータを寝台制御部11に出力する。
【0041】
これにより、寝台制御部11は、第2計算部1042により出力された6つの制御パラメータに従って治療台10に設けられた並進機構および回転機構を制御し、治療台10に固定された患者Pの方向を、治療ビームBを照射して放射線治療を行うのに好適な方向に向けさせる。
【0042】
このような構成によって、医用画像処理装置100は、第1計算部1041における疎探索と、第2計算部1042における密探索とによって、治療台10に固定された患者Pの方向を好適な方向に向けさせるための6つの制御パラメータを計算する。これにより、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、医用画像処理装置100が計算した6つの制御パラメータに従って、放射線治療において治療を行う患者Pの方向を、治療ビームBを照射するために好適な方向に向けさせることができる。そして、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、画像解析部50が決定した適切なタイミングで、患者Pの体内の病巣に治療ビームBを照射することができる。
【0043】
なお、上述した医用画像処理装置100に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、プログラム(ソフトウェア)を記憶した記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)とを備え、プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能が実現されてもよい。また、上述した医用画像処理装置100に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって各種機能が実現されてもよい。また、上述した医用画像処理装置100に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって各種機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの治療システム1に備えた記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が治療システム1に備えたドライブ装置に装着されることで、治療システム1に備えた記憶装置にインストールされてもよい。また、プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークを介して予めダウンロードされて、治療システム1に備えた記憶装置にインストールされてもよい。
【0044】
次に、治療システム1の動作の概略について説明する。
図3は、第1の実施形態の治療システム1における動作の流れを示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、事前にCT装置によって患者Pが撮影されており、CT画像のCTデータ(3次元ボリュームデータ)が用意されているものとする。また、第1計算部1041および第2計算部1042は、DRR画像とX線透視画像との類似度に基づいて、CT位置の探索を行うものとする。
【0045】
治療システム1が動作を開始し、医用画像処理装置100が起動すると、第1画像取得部101は、CTデータを取得する(ステップS100)。そして、第1画像取得部101は、取得したCTデータを、生成部103に出力する。
【0046】
続いて、第2画像取得部102は、それぞれの放射線検出器30により出力された現在の患者Pの体内のX線透視画像を取得する(ステップS101)。そして、第2画像取得部102は、取得したX線透視画像を、計算部104に出力する。
【0047】
続いて、医用画像処理装置100は、CT位置の疎探索の処理を開始する。CT位置の疎探索の処理において、生成部103は、第1画像取得部101により出力されたCTデータに基づいて、第1DRR画像を生成する(ステップS102)。そして、生成部103は、生成した第1DRR画像を計算部104に出力する。
【0048】
続いて、計算部104内の第1計算部1041は、生成部103により出力された第1DRR画像と、第2画像取得部102により出力されたX線透視画像とに基づいて、現在の第1DRR画像とX線透視画像との類似度が最も高いCT位置を探索する(ステップS103)。
【0049】
続いて、第1計算部1041は、探索したCT位置における患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104において、探索したCT位置における患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内ではない場合、第1計算部1041は、探索したCT位置の情報を生成部103に出力して、処理をステップS102に戻す。これにより、生成部103は、ステップS102において、第1計算部1041により出力されたCT位置の情報に基づいて新たな第1DRR画像を生成し、第1計算部1041は、ステップS103において、生成部103が生成した新たな第1DRR画像と、第2画像取得部102により出力されたX線透視画像とに基づいて、新たな第1DRR画像とX線透視画像との類似度が最も高いCT位置を探索する。このように、医用画像処理装置100では、生成部103と第1計算部1041とは互いに連携して、探索したCT位置における患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になるまで、つまり、第1DRR画像とX線透視画像との類似度が所定の類似度の閾値よりも高くなるまで、CT位置の疎探索の処理を繰り返す。
【0050】
一方、ステップS104において、探索したCT位置における患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内である場合、つまり、第1DRR画像とX線透視画像との類似度が所定の類似度の閾値よりも高いCT位置を探索した場合、第1計算部1041は、探索したCT位置の情報を第2計算部1042に出力して、処理をステップS105に進める。
【0051】
これにより、医用画像処理装置100は、CT位置の密探索の処理を開始する。CT位置の密探索の処理において、生成部103は、第1画像取得部101により出力されたCTデータに基づいて、第2DRR画像を生成する(ステップS105)。そして、生成部103は、生成した第2DRR画像を計算部104に出力する。
【0052】
続いて、第2計算部1042は、第1計算部1041が探索したCT位置を基準とし、生成部103により出力された第2DRR画像と、第2画像取得部102により出力されたX線透視画像とに基づいて、最終的なCT位置を探索する(ステップS106)。このように、医用画像処理装置100では、第2計算部1042によって、CT位置の密探索の処理1回のみ行う。
【0053】
続いて、表示制御部60は、生成部103により出力された第2DRR画像と、第2画像取得部102により出力されたX線透視画像とを表示装置61に表示させる。さらに、表示制御部60は、第2計算部1042が探索した最終的なCT位置を表示装置61に表示させる。そして、指示受付部80は、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)による最終的なCT位置の調整を受け付け、受け付けた最終的なCT位置の調整情報を、第2計算部1042に出力する(ステップS107)。
【0054】
続いて、第2計算部1042は、探索したCT位置に、指示受付部80により出力された最終的なCT位置の調整情報を反映し、最終的なCT位置(好適位置)とする。そして、第2計算部1042は、治療台10を治療室内の3次元座標に準拠して回転および並進させるための6つの制御パラメータを計算する(ステップS108)。第2計算部1042は、計算した6つの制御パラメータを寝台制御部11に出力する。
【0055】
続いて、寝台制御部11は、第2計算部1042により出力された6つの制御パラメータに従って治療台10移動させる(ステップS109)。
【0056】
次に、治療システム1を構成する医用画像処理装置100の動作の詳細について説明する。まず、医用画像処理装置100を構成する生成部103におけるDRR画像の生成方法について説明する。DRR画像は、仮想的にX線透視画像をシミュレーションするために生成する画像である。このため、最初に、X線透視画像の撮影モデルについて説明し、続いて、DRR画像の生成方法について説明する。
【0057】
(X線透視画像の撮影モデル)
X線撮影では、X線源である放射線源20により照射されたX線が被写体である患者Pの体内を通過して、X線検出器を2次元のアレイ状に配置したFPDである放射線検出器30に到達したときのエネルギーの大きさを画像化することによって、患者Pの体内を透視したX線透視画像を得ることができる。このX線透視画像におけるそれぞれの画素位置、つまり、X線検出器の位置におけるX線のエネルギーPiは、下式(1)によって表すことができる。
【0058】
【0059】
上式(1)において、P0は、被写体(患者P)に入射したときのX線のエネルギーである。また、上式(1)において、μ(l,P)は、位置lにおける物体の線減弱係数であり、この物質を通過するX線のエネルギーPによって変化する値である。X線源から画素位置iに到達するまでのX線の経路上にある物質の線減弱係数を線積分したものが、X線検出器に到達するX線のエネルギーとなる。ここで、X線検出器における検出特性は、X線のエネルギーPiの対数をとったものに対して線形になるように設計されており、X線検出器が出力する信号値をピクセル値に線形に変換することによって画像を得ることができる。つまり、X線透視画像の画素値Tiは、下式(2)で表すことができる。
【0060】
【0061】
上式(2)において、log(P0)は、定数である。このため、X線撮影によって得られるX線透視画像における各画素は、X線源から照射されるX線がFPDを構成するそれぞれのX線検出器に到達する経路上の物質(つまり、患者P)の線減弱係数の積和に応じて画素化されることになる。
【0062】
(DRR画像の生成方法)
続いて、DRR画像の生成方法について説明する。DRR画像は、3次元空間内に仮想的に配置したCT画像を任意の方向から透視投影することによって生成する。ここで、
図4に、DRR画像の生成処理の一例を示す。
図4は、第1の実施形態の治療システム1における放射線(X線)の照射経路と、コンピュータ断層撮影画像(CT画像)および医用画像処理装置100が生成するデジタル再構成X線写真画像(DRR画像)との関係を説明するための図である。
図4では、治療システム1における撮影装置の座標系上の画素位置を(x,y,z)、DRR画像の座標系上の画素位置を(u,v)としている。画素位置(u,v)におけるDRR画像の輝度値I(u,v)は、下式(3)で表されるレイトレーシングの式によって計算される。
【0063】
【0064】
上式(3)において、V(x,y,z)は、治療システム1において仮想的に配置されたCT画像の画素位置(x,y,z)におけるCT値である。そして、上式(3)では、DRR画像の輝度値I(u,v)は、X線源から照射されるX線の照射経路l上のCT値の積分によって得られることを示している。ここで、上式(3)におけるW(V)は、CT値に掛かる重み係数である。この重み係数W(V)を制御することによって、特定のCT値を強調したDRR画像を生成することができる。これは、X線透視画像とDRR画像とを照合する際に、重視したい患者Pの病巣の組織を強調したり、放射線治療の実施者(医師など)が注目したい組織を強調して視認性を高めたいときなどに有効である。
【0065】
ここで、DRR画像の輝度値I(u,v)に含まれるCT値V(x,y,z)は、画素位置(x,y,z)にある物質の線減弱係数に基づく値である。このため、X線の照射経路lにある物質の線減弱係数の和によってDRR画像を生成すると、X線透視画像も、上式(3)で示すようにX線の照射経路l上の線減弱係数の和で画素値が決定され、DRR画像とX線透視画像とは類似することになる。なお、DRR画像のようにCT値からX線透視画像を再構成するためには、X線の照射経路lとCT値V(x,y,z)との位置を定める必要がある。
【0066】
次に、医用画像処理装置100を構成する計算部104、つまり、第1計算部1041および第2計算部1042におけるCT位置(好適位置)の探索について説明する。まず、第1計算部1041と第2計算部1042とに共通するCT位置(好適位置)の探索の考え方について、計算部104がCT位置(好適位置)の探索をするものとして説明する。
【0067】
計算部104は、DRR画像とX線透視画像とのそれぞれを構成する画素の値(画素値)に基づいた類似度を計算するための評価関数を定義し、最も評価値がよくなる(最も類似度が高くなる)画像が撮影された画素位置を求めることによって、CT位置(好適位置)を探索する。より具体的には、3次元空間内でCTデータの位置および姿勢を定める6つのパラメータによって定められるCT位置を移動させながら、DRR画像とX線透視画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数の出力(類似度)が最良となる位置を探索する。このとき、計算部104は、評価関数として、DRR画像とX線透視画像との2つの画像のそれぞれの画素値の正規化相互相関を用いる。なお、計算部104は、DRR画像とX線透視画像との2つの画像のそれぞれの画素値の相互情報量を、評価関数として用いてもよい。また、計算部104は、DRR画像とX線透視画像との2つの画像を、ガウシアンフィルタ、ソーベルフィルタなどを用いる画像処理を施した画像に一旦変換し、変換した画像間での差分や、正規化相互相関、相互情報量を、評価関数として用いてもよい。また、計算部104は、DRR画像とX線透視画像との2つの画像を構成する各画素の勾配方向を計算した画像に変換し、変換した各画素の勾配方向の一致度を、評価関数としてもよい。
【0068】
このような考え方に基づいて、計算部104(第1計算部1041および第2計算部1042)は、DRR画像とX線透視画像とを用いてCT位置(好適位置)を探索する。なお、従来の一般的な治療システムでは、CT位置(好適位置)の探索において上述したような類似度を計算するための評価関数を用いる場合、2つの画像の撮影範囲内に、患者Pの体内における同じ部位が写っていることが前提になっている。しかしながら、計算部104では、第1計算部1041による疎探索と、第2計算部1042による密探索、つまり、2段階の探索処理で、CT位置(好適位置)を探索している。これにより、計算部104は、治療システム1を構成する撮影装置の低コスト化や設置場所の制限などの理由から放射線検出器30(FPD)の撮影範囲が狭くなり、DRR画像に写される患者Pの体内の部位と、X線透視画像に写される患者Pの体内の部位とに大きな差異があった場合でも、CT位置(好適位置)を高精度に探索することができる。つまり、計算部104は、患者Pの位置決めの処理を高い精度で行うことができる。
【0069】
続いて、第1計算部1041におけるCT位置(好適位置)の疎探索について説明する。第1計算部1041は、上述したように、生成部103が放射線検出器30(FPD)が放射線を検出する面に平行な2次元の平面に沿ってFPDの大きさを仮想的に拡大した第1DRR画像と、X線透視画像とに基づいて、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を探索する。このため、最初に、生成部103が生成する第1DRR画像の一例について説明し、続いて、第1計算部1041によるCT位置(好適位置)の疎探索の方法について説明する。
【0070】
(第1DRR画像)
図5は、第1の実施形態の治療システム1におけるX線透視画像と医用画像処理装置100に備えた生成部103が生成する再構成画像(第1DRR画像)との関係を説明するための図である。
図5の(a)には、第2画像取得部102が取得したいずれか一方の放射線検出器30により出力されたX線透視画像の一例を示し、
図5の(b)には、
図5の(a)に示したX線透視画像に対応する第1DRR画像を生成部103が生成するときの処理の一例を示している。以下の説明においては、
図5に示したX線透視画像と第1DRR画像とのそれぞれが、放射線検出器30-1に対応する画像であるものとする。
【0071】
第2画像取得部102は、従来の一般的な治療システムと同様に、治療システム1が設置された治療室において治療台10に固定された現在の患者Pの体内を放射線検出器30-1が撮影したX線透視画像を取得する。ここで、仮に、生成部103が、従来の一般的な治療システムと同様に、放射線検出器30-1の撮影範囲と同じ範囲のDRR画像を生成すると、例えば、
図5の(b-1)に示したようなDRR画像を生成する場合がある。この場合、
図5の(a)と
図5の(b-1)とを比べてわかるように、
図5の(a)に示したX線透視画像に写されている患者Pの部位と、
図5の(b-1)に示したDRR画像に写されている患者Pの部位とが大きくずれてしまうことも考えられる。
図5の(b-1)に示したDRR画像では、治療ビームBを照射する対象の病巣の位置がほぼ中心になるように撮影された
図5の(a)に示したX線透視画像に対して、中心位置が左上の方に大きくずれて、患者Pの頭部の上部が写されていない。すると、
図5の(a)に示したX線透視画像と
図5の(b-1)に示したDRR画像とのそれぞれに共通して含まれる患者Pの部位の領域が少なくなり、患者Pの位置ずれ量の計算が困難となってしまう。つまり、
図5の(a)に示したX線透視画像と
図5の(b-1)に示したDRR画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数による評価値(類似度)を計算することができず、最終的に寝台制御部11に出力する6つの制御パラメータに多くの誤差が含まれてしまうことになる。
【0072】
このため、生成部103は、
図5の(b-2)に示したように、DRR画像に写される患者Pの部位の範囲を仮想的に拡大して、つまり、DRR画像に対応する放射線検出器30-1(FPD)における撮影範囲を仮想的に広げて、生成する第1DRR画像が患者Pの部位を包含するようにする。より具体的には、生成部103は、放射線検出器30-1が放射線源20-1から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線(X線)を検出する平面の方向、つまり、放射線検出器30-1がX線透視画像を撮影する方向(角度)から見たときに、第1画像取得部101が取得して出力した患者PのCTデータ(3次元ボリュームデータ)が全て含まれる範囲まで撮影範囲を広げて、第1DRR画像を生成するようにする。
図5の(b-2)には、
図5の(b-1)に示したDRR画像における撮影範囲を、左側および上側に広げている状態を示している。これにより、生成部103は、
図5の(b-3)に示したように、
図5の(b-1)に示したDRR画像における撮影範囲が左側および上側に広げられ、患者Pの頭部の全体が写された第1DRR画像を生成する。これにより、
図5の(a)に示したX線透視画像に含まれる患者Pの部位の領域が、
図5の(b-3)に示した第1DRR画像に含まれることになり、
図5の(a)に示したX線透視画像と
図5の(b-3)に示した第1DRR画像とのそれぞれの画素値から、より高い精度で、評価関数による評価値(類似度)、つまり、患者Pの位置ずれ量を計算することができる。
【0073】
(CT位置の疎探索方法)
続いて、第1計算部1041によるCT位置(好適位置)の疎探索の方法について説明する。
図6は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた生成部103が生成した再構成画像(第1DRR画像)を用いて好適位置(CT位置)を求める動作を説明するための図である。
図6には、CT位置の初期位置から疎探索を3回行って、患者Pの位置ずれ量、つまり、疎探索したCT位置が終了位置から所定の範囲内になるまでの様子の一例を示している。
【0074】
まず、現在の位置が、初期位置IPであった場合、生成部103は、放射線検出器30-2に対応する第1DRR画像を生成して第1計算部1041に出力する。より具体的には、生成部103は、治療システム1が設置された治療室の3次元空間内で初期位置IPに仮想的に配置されたCTデータを含み、放射線検出器30-2が放射線(X線)を検出する面に平行な2次元の平面を表す第1DRR画像(例えば、
図5の(b-3)に示した第1DRR画像)を生成して第1計算部1041に出力する。
【0075】
これにより、第1計算部1041は、生成部103により出力された第1DRR画像に含まれるCT位置を第1DRR画像が表す2次元の平面に沿って順次移動させながら、現在の第1DRR画像における好適位置(CT位置)を探索する。より具体的には、第1計算部1041は、現在の第1DRR画像に含まれるCT位置を1画素分ずつ順次移動させながら、現在の第1DRR画像と放射線検出器30-2に対応するX線透視画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を探索する。ここで、第1DRR画像に含まれるそれぞれの画素の3次元空間における縦方向および横方向の長さは、治療システム1における撮影装置のジオメトリ情報に基づいた簡単な幾何計算によって求めることができる。このため、第1計算部1041は、求めたそれぞれの画素における3次元空間の縦方向および横方向の長さを、第1DRR画像においてそれぞれの画素が配置された2次元の平面内での縦方向および横方向の長さに変換する。そして、第1計算部1041は、変換した縦方向および横方向の長さに基づいて、CT位置を1画素分ずつ移動させながら、評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を探索する。
図6には、放射線検出器30-2に対応する現在の第1DRR画像の平面内の探索経路R1に沿ってCT位置を移動させて、現時点で最良のCT位置を中間位置MP-1として探索した様子を示している。なお、
図6では、探索経路R1を1つの直線で表しているが、上述したように、第1計算部1041は、CT位置を第1DRR画像が表す2次元の平面に沿って移動させる。このため、探索経路R1は、第1DRR画像内の縦方向および横方向に直線的にCT位置を移動させる経路である。第1計算部1041は、探索した中間位置MP-1を表す情報を、生成部103に出力する。
【0076】
続いて、生成部103は、第1計算部1041により出力された中間位置MP-1を表す情報に基づいて、放射線検出器30-1に対応する第1DRR画像を生成して第1計算部1041に出力する。より具体的には、生成部103は、放射線検出器30-2に対応する第1DRR画像を生成するときと同様に、治療システム1が設置された治療室の3次元空間内で中間位置MP-1に仮想的に配置されたCTデータを含み、放射線検出器30-1が放射線(X線)を検出する面に平行な2次元の平面を表す第1DRR画像を生成して第1計算部1041に出力する。
【0077】
これにより、第1計算部1041は、中間位置MP-1を探索するときと同様に、現在の第1DRR画像に含まれるCT位置を1画素分ずつ順次移動させながら、現在の第1DRR画像における好適位置(CT位置)を探索する。ただし、ここでは、第1計算部1041は、現在の第1DRR画像と放射線検出器30-1に対応するX線透視画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を探索する。
図6には、放射線検出器30-1に対応する現在の第1DRR画像の平面内の探索経路R2に沿ってCT位置を移動させて、現時点で最良のCT位置を中間位置MP-2として探索した様子を示している。なお、
図6において1つの直線で表した探索経路R2も、探索経路R1と同様に、現在の第1DRR画像内の縦方向および横方向に直線的にCT位置を移動させる経路である。第1計算部1041は、探索した中間位置MP-2を表す情報を、生成部103に出力する。
【0078】
その後、同様に、生成部103は、第1計算部1041により出力された中間位置MP-2を表す情報に基づいて、中間位置MP-2に仮想的に配置されたCTデータを含む放射線検出器30-2に対応する第1DRR画像を生成して、第1計算部1041に出力する。そして、第1計算部1041も同様に、現在の第1DRR画像と放射線検出器30-2に対応するX線透視画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を探索する。
図6には、放射線検出器30-2に対応する現在の第1DRR画像の平面内の探索経路R3に沿ってCT位置を移動させて、現時点で最良のCT位置を中間位置MP-3として探索した様子を示している。なお、
図6に示した探索経路R3も、探索経路R1と同様に、放射線検出器30-2に対応する現在の第1DRR画像内の縦方向および横方向に直線的にCT位置を移動させる経路である。
【0079】
以降、同様に、生成部103によるいずれか一方の放射線検出器30に対応する第1DRR画像の生成と、第1計算部1041による現時点で最良のCT位置の探索を繰り返す。これにより、第1計算部1041が疎探索したCT位置が、終了位置EP、つまり、最終的なCT位置に近づいていく。
【0080】
なお、第1計算部1041における疎探索は、上述したように、治療台10に固定された患者Pの位置をある程度合わせることができるようになるまで行う簡易的なCT位置の探索である。従って、第1計算部1041は、疎探索したCT位置が終了位置EPから所定の範囲内になると、つまり、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になると、疎探索を終了する。
図6では、第1計算部1041が、中間位置MP-3のCT位置を探索した時点で疎探索を終了している。その後、計算部104における患者Pの位置ずれ量の計算は、第2計算部1042に引き継がれる。この場合、第1計算部1041は、探索した中間位置MP-3を表す情報を第2計算部1042に出力して、疎探索を終了する。
【0081】
ここで、第1計算部1041が疎探索を繰り返す回数、つまり、第1計算部1041が疎探索を終了すると判定する患者Pの位置ずれ量の所定の範囲は、第1DRR画像とX線透視画像とのそれぞれの画素値から求まる評価関数の出力(類似度)に対して予め定められた類似度の閾値によって定める。なお、第1計算部1041が患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になったと判定する条件は、予め定められた他の条件であってもよい。例えば、第1計算部1041は、疎探索を予め定められた回数だけ行ったときに、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になったと判定してもよい。また、例えば、第1計算部1041は、第1DRR画像とX線透視画像とのそれぞれの写されている患者Pの体内の同じ病巣や骨、あるいはマーカーの像の距離が、放射線検出器30(FPD)に配置されているそれぞれのX線検出器によってX線透視画像に表すことができる実際の距離、いわゆる、X線透視画像を構成するそれぞれの画素の画素ピッチ以下になったときに、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になったと判定してもよい。また、例えば、第1計算部1041は、患者Pの位置ずれ量を計算する際のCT位置の移動量が、所定の移動量以下になったとき、言い換えれば、前回の疎探索において探索したCT位置と今回の疎探索において探索したCT位置との間の距離が、所定の距離以下になったときに、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になったと判定してもよい。また、例えば、第1計算部1041は、第1DRR画像とX線透視画像とのそれぞれの写されている患者Pの体内の同じ病巣や骨、あるいはマーカーの像の距離が、第2計算部1042が引き続き患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置を探索することができる探索可能範囲内の距離(例えば、0.5[mm])以下になったとき、言い換えれば、第2計算部1042に患者Pの位置ずれ量の計算を引き継ぐことができる状態になったときに、患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になったと判定してもよい。
【0082】
(CT位置の密探索方法)
続いて、第2計算部1042におけるCT位置(好適位置)の密探索について説明する。第2計算部1042は、上述したように、第1計算部1041による疎探索に引き続いて、第2DRR画像とX線透視画像とに基づいた密探索を行う。なお、第2計算部1042における密探索は、従来の一般的な治療システムにおけるCT位置の探索と同様である。つまり、第2計算部1042における密探索では、第1計算部1041における疎探索のようにCT位置の移動を2次元の平面内に限定せずに、最終的な好適位置(CT位置)を探索する。より具体的には、第2計算部1042は、治療室内の3次元座標に準拠した回転量および並進量を表す6つのパラメータに従ってCT位置をランダムに移動させながら、それぞれのCT位置で第2DRR画像とそれぞれの放射線検出器30に対応するX線透視画像とのそれぞれの画素値から評価関数の出力(類似度)を求め、評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を密探索する。なお、第2計算部1042は、治療室内の3次元座標に準拠した回転量および並進量を表す6つのパラメータに従ってCT位置を順次移動させながら評価関数の出力(類似度)が最良となるCT位置を密探索してもよい。
【0083】
ただし、第2計算部1042が密探索を行うときには、第1計算部1041によって患者Pの位置ずれ量が所定の範囲内になっている。つまり、治療台10に固定された患者Pの位置がある程度合わせられた状態になっている。このため、第2計算部1042は、第1計算部1041が疎探索を終了したCT位置を基準として、第2DRR画像に含まれるCT位置を移動させる範囲を絞り込んだ状態で最終的な好適位置(CT位置)を密探索することができる。例えば、第2計算部1042は、CT位置を移動させる範囲を、第1計算部1041が疎探索したCT位置を中心とした所定の範囲として、CT位置を密探索することができる。
【0084】
そして、第2計算部1042は、密探索によって探索した最終的なCT位置に基づいて、治療台10を移動させるための6つの制御パラメータを計算し、計算した6つの制御パラメータを寝台制御部11に出力する。これにより、寝台制御部11は、第2計算部1042により出力された6つの制御パラメータに従って治療台10移動させる。
【0085】
なお、第2計算部1042は、上述したように、探索した最終的なCT位置に基づいて治療台10を移動させるための6つの制御パラメータを計算する前に、最終的なCT位置の情報を表示制御部60に出力して、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が確認するようにしてもよい。この場合、表示制御部60は、生成部103が生成した第2DRR画像に基づいて、それぞれの放射線検出器30に対応する表示用のDRR画像を生成し、生成したそれぞれの放射線検出器30に対応する表示用のDRR画像と、第2画像取得部102が取得した対応する放射線検出器30のX線透視画像とを重畳した確認用の表示画像を、表示装置61に表示させる。さらに、表示制御部60は、表示用のDRR画像と対応するX線透視画像とを重畳した確認用の表示画像に、第2計算部1042が探索した最終的なCT位置を重畳して、表示装置61に表示させる。なお、表示用のDRR画像は、表示制御部60が生成するのではなく、第2計算部1042が探索した最終的なCT位置に基づいて生成部103が生成して表示制御部60に出力してもよい。この場合、表示制御部60は、生成部103が生成した表示用のDRR画像と対応するX線透視画像とを重畳し、さらに最終的なCT位置を重畳して、表示装置61に表示させる構成となる。
【0086】
また、第2計算部1042は、指示受付部80により出力された、表示装置61に表示された表示用のDRR画像およびX線透視画像と最終的なCT位置とに基づいて放射線治療の実施者(医師など)が調整した、最終的なCT位置を調整する情報を取得してもよい。この場合、第2計算部1042は、指示受付部80により出力された最終的なCT位置を調整する情報を探索したCT位置に反映してから治療台10を移動させるための6つの制御パラメータを計算し、計算した6つの制御パラメータを寝台制御部11に出力する。これにより、寝台制御部11は、第2計算部1042により出力された、放射線治療の実施者(医師など)が調整したCT位置が反映された6つの制御パラメータに従って治療台10移動させる。
【0087】
上述したように、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、第1計算部1041による疎探索と、第2計算部1042による密探索との2段階の探索処理で最終的なCT位置(好適位置)を探索することによって、治療台10に固定されている患者Pを放射線治療に好適位置に移動させるための位置決めの処理をする。ここで、第1計算部1041による疎探索において用いる第1DRR画像は、平面で考えれば放射線検出器30(FPD)における撮影範囲よりも広くなるものの、CT位置を移動させる範囲は2次元の平面の範囲である。また、第2計算部1042による密探索は、第2DRR画像においてCT位置を移動させる範囲を絞り込んだ状態で、1回のみ行う。このため、第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1では、DRR画像に写される患者Pの体内の部位と、撮影装置が撮影したX線透視画像に写される患者Pの体内の部位とに大きな差異があった場合でも、CT位置を探索するために行う計算の負荷である計算コストを抑えた状態で、高精度に患者Pの位置決めの処理を行うことができる。
【0088】
なお、上述したように、患者Pの位置決めの処理をする際、医用画像処理装置100では、計算部104に備えた第1計算部1041と第2計算部1042とのそれぞれが、DRR画像に含まれるCT位置を移動させることによって、放射線源20と放射線検出器30との組によって構成される撮影装置が設置された治療室内の3次元座標にCT位置を合わせるものとして説明した。しかしながら、実際の放射線治療では、治療計画の段階などにおいて事前に定められた方向から、患者Pに対して治療ビームBを照射する。従って、医用画像処理装置100が寝台制御部11に出力する最終的な6つの制御パラメータは、治療台10に固定されている患者Pを、治療ビームBを照射して放射線治療を行うために事前に定められた好適な方向に向けさせるために、探索した最終的なCT位置から逆算して求めた制御パラメータである。言い換えれば、それぞれの放射線検出器30が、事前に計画されたDRR画像と同じX線透視画像を撮影することができるように、治療台10に固定されている患者Pの方向を変えるための制御パラメータである。
【0089】
このため、治療システム1では、医用画像処理装置100による位置決めの処理が終了して治療台10を移動させた後に、撮影装置によって再度X線透視画像を撮影して患者Pの向きを再確認してもよい。この場合に撮影されるX線透視画像は、事前に定められた好適な方向から患者Pを撮影した画像となる。そして、治療システム1では、表示用のDRR画像と、再度撮影したX線透視画像と、最終的なCT位置とを重畳して表示装置61に表示させ、放射線治療の実施者(医師など)が最終的に確認(判断)した後に、治療ビームBを患者Pの体内の病巣に照射するようにしてもよい。
【0090】
なお、ここで放射線治療の実施者(医師など)が最終的に確認(判断)した結果、治療ビームBを照射しない場合には、医用画像処理装置100が再び患者Pの位置決めの処理を自動で行ってもよいし、放射線治療の実施者(医師など)が手動で患者Pの位置を調整してもよい。ここで、医用画像処理装置100が再び患者Pの位置決めの処理を自動で行う場合には、第1計算部1041による疎探索を行わず、第2計算部1042による密探索のみを行うようにしてもよい。また、放射線治療の実施者(医師など)が手動で患者Pの位置を調整する場合には、第1計算部1041による疎探索においてCT位置を移動させるために、3次元空間における縦方向および横方向の長さを2次元の平面内での縦方向および横方向の長さに変換したときの情報を利用して、患者Pの位置を2次元の平面内で調整させるようにしてもよい。
【0091】
上記説明したように、医用画像処理装置100は、患者Pの3次元ボリュームデータ像(CT画像)を取得する第1画像取得部101と、照射した放射線(X線)を放射線検出器30によって検出して画像(X線透視画像)化する撮影装置から、CT画像の取得時とは異なる時刻に患者Pに照射した放射線(X線)に応じたX線透視画像を取得する第2画像取得部102と、放射線検出器30の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に3次元空間に配置したCT画像からX線透視画像を再現した再構成画像(DRR画像)を生成する生成部103と、X線透視画像とDRR画像との類似度(評価値)に基づいて、3次元空間におけるCT画像の好適位置を求める計算部104と、を備え、生成部103は、計算部104によって用いられるDRR画像を、X線透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成する。
【0092】
また、上記説明したように、医用画像処理装置100において、DRR画像のうちX線透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成されたDRR画像は、患者Pの対象部位を包含するように生成されてもよい。
【0093】
また、上記説明したように、生成部103は、DRR画像のうちX線透視画像に対応する範囲よりも広い範囲の第1再構成画像(第1DRR画像)と、DRR画像のうち第1DRR画像以外の第2再構成画像(第2DRR画像)とを生成し、計算部104は、第1DRR画像をX線透視画像に対して仮想的に平行移動させることで、当該第1再構成画像に含まれる対象部位と第2透視画像に含まれる対象部位との類似度が高い第1位置を求める第1計算部1041と、第1計算部1041により求められた第1位置を基準とし、第2DRR画像をX線透視画像に対して仮想的に平行および回転移動させることで、当該第2DRR画像に含まれる対象部位とX線透視画像に含まれる対象部位との類似度が高い第2位置を求める第2計算部1042とを含み、第2位置を最終的な好適位置として出力してもよい。
【0094】
また、上記説明したように、生成部103は、患者に対して、少なくとも第1の方向から照射された放射線を検出する放射線検出器30に対応する第1DRR画像と、第1の方向とは異なる第2の方向から照射された放射線を検出する放射線検出器30に対応する第1DRR画像とを生成し、それぞれの放射線検出器30が放射線を検出する方向が示す情報を含む第2DRR画像を生成してもよい。
【0095】
また、上記説明したように、第1計算部1041は、少なくとも、第1の方向または第2の方向のいずれか一方の方向から照射された放射線を検出する1つの放射線検出器30に対応する第1DRR画像を用いて第1位置を求めてもよい。
【0096】
また、上記説明したように、第1計算部1041は、第1の方向または第2の方向のいずれか一方の方向から照射された放射線を検出する放射線検出器30に対応する第1DRR画像を用いて第1位置を求める処理と、当該第1位置を基準として、他方の方向から照射された放射線を検出する放射線検出器30に対応する第1DRR画像を用いて、当該第1DRR画像に含まれる対象部位とX線透視画像に含まれる対象部位との類似度がより高い第1位置を求める処理とを、第1DRR画像に含まれる対象部位とX線透視画像に含まれる対象部位との類似度が所定の範囲内になるまで繰り返し、第2計算部1042は、所定の範囲内となった第1位置を基準として、第2位置を求めてもよい。
【0097】
また、上記説明したように、生成部103は、第1計算部1041がいずれか一方の放射線検出器30に対応する第1位置を求めた後に、他方の放射線検出器30に対応する第1再構成画像を生成してもよい。
【0098】
また、上記説明したように、医用画像処理装置100は、CT画像およびX線透視画像を表示装置61に表示させ、さらに好適位置の情報を表示装置61に表示させる表示制御部60と、CT画像の3次元空間内での好適位置の移動の指示を受け付ける指示受付部80と、をさらに備えてもよい。
【0099】
また、上記説明したように、医用装置は、医用画像処理装置100と、患者Pに対して異なる方向から照射された放射線(X線)を検出する2つの放射線検出器30を備える撮影装置と、を備えてもよい。
【0100】
また、上記説明したように、治療システム1は、医用装置と、患者Pの治療する対象の部位に治療ビームBを照射する治療ビーム照射門40と、治療ビームBの照射を制御する治療ビーム照射制御部41と、医用装置において求められた好適位置に合うように患者Pが固定された治療台10の位置を移動させる寝台制御部11と、を備えてもよい。
【0101】
また、医用画像処理装置100は、CPUやGPUなどのプロセッサと、ROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの記憶装置とを備え、記憶装置には、プロセッサを、患者Pの3次元ボリュームデータ像(CT画像)を取得する第1画像取得部101と、照射した放射線(X線)を放射線検出器30によって検出して画像(X線透視画像)化する撮影装置から、CT画像の取得時とは異なる時刻に患者Pに照射した放射線(X線)に応じたX線透視画像を取得する第2画像取得部102と、放射線検出器30の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に3次元空間に配置したCT画像からX線透視画像を再現した再構成画像(DRR画像)を生成する生成部103と、X線透視画像とDRR画像との類似度(評価値)に基づいて、3次元空間におけるCT画像の好適位置を求める計算部104と、を備え、生成部103が、計算部104によって用いられるDRR画像を、X線透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成するように機能させるためのプログラムが記憶された装置であってもよい。
【0102】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第2の実施形態の医用画像処理装置(以下、「医用画像処理装置200」という)に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システムを、「治療システム2」という。
【0103】
なお、以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システム2の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明を省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素である医用画像処理装置200の構成、動作、および処理についてのみを説明する。
【0104】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、現在の患者Pの位置を事前に定められた位置に合わせる位置決めの処理をする。つまり、医用画像処理装置200も、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、疎探索と密探索との2段階の探索処理によって、治療台10に固定されている患者Pの現在の位置を事前に定められた好適位置に移動させるための治療台10の移動量を求める。
【0105】
以下、治療システム2を構成する医用画像処理装置200の構成について説明する。
図7は、第2の実施形態の医用画像処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
図7に示した医用画像処理装置200は、第1画像取得部101と、第2画像取得部102と、生成部103と、計算部204とを備える。また、計算部204は、第1計算部1041と、第2計算部1042と、画像範囲決定部2043とを備える。
【0106】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100を構成する計算部104が、計算部204に代わった構成である。計算部204は、第1の実施形態の医用画像処理装置100を構成する計算部104に、画像範囲決定部2043が追加された構成である。なお、医用画像処理装置200に備えたその他の構成要素は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた構成要素と同じ構成要素である。従って、以下の説明においては、医用画像処理装置200の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明を省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素についてのみを説明する。
【0107】
医用画像処理装置200では、計算部204に備えた第1計算部1041が、現在の第1DRR画像を用いて疎探索したCT位置の情報を、生成部103に出力する代わりに、画像範囲決定部2043に出力する。
【0108】
画像範囲決定部2043は、第1計算部1041により出力されたCT位置の情報に基づいて、第1計算部1041が次の疎探索において用いる第1DRR画像の撮影範囲を決定する。画像範囲決定部2043は、決定した第1DRR画像の撮影範囲の情報と、第1計算部1041により出力されたCT位置の情報とを、生成部103に出力する。
【0109】
これにより、生成部103は、画像範囲決定部2043により出力された現在の第1DRR画像におけるCT位置を基準として、第1DRR画像の撮影範囲の情報に応じた大きさで、第1計算部1041が次の疎探索において用いる新たな第1DRR画像を生成し、生成した新たな第1DRR画像を第1計算部1041に出力する。
【0110】
このような構成によって、医用画像処理装置200では、第1計算部1041がCT位置を疎探索する際の計算コストを、第1の実施形態の医用画像処理装置100よりもさらに抑えた状態で、高精度に患者Pの位置決めの処理を行うことができる。
【0111】
ここで、画像範囲決定部2043における第1DRR画像の撮影範囲の決定方法について説明する。なお、以下の説明においては、
図6に示した第1DRR画像を用いてCT位置を求める動作の一例を参照して、画像範囲決定部2043における第1DRR画像の撮影範囲の決定方法を説明する。
【0112】
第1計算部1041による疎探索において用いる第1DRR画像の撮影範囲は、平面で考えると、放射線検出器30(FPD)における撮影範囲よりも広くなっている。しかしながら、第1計算部1041が疎探索したCT位置が、終了位置、つまり、疎探索における最終的なCT位置に近い場合には、第1計算部1041が疎探索において移動させるCT位置の範囲は狭くしても問題なくなると考えられる。例えば、第1計算部1041における疎探索が終盤に差し掛かり、疎探索したCT位置と疎探索における最終的なCT位置との距離が放射線検出器30(FPD)の撮影範囲以内の距離である場合には、第1DRR画像の撮影範囲は、放射線検出器30(FPD)の撮影範囲やそれ以下の範囲にすることができる。このため、画像範囲決定部2043は、第1計算部1041により出力されたCT位置の情報に基づいて、次の疎探索において第1計算部1041が用いる第1DRR画像の撮影範囲を狭くする。
【0113】
より具体的には、例えば、
図6に示した第1DRR画像を用いてCT位置を求める動作の一例では、1回目の疎探索において第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲は、探索経路R1に沿った、放射線検出器30-2(FPD)の撮影範囲よりも広い範囲である。これに対して、例えば、
図6に示した動作の一例では、2回目の疎探索において第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲は、探索経路R2に沿った範囲であり、放射線検出器30-1(FPD)の撮影範囲よりも狭い。さらに、例えば、
図6に示した動作の一例では、3回目の疎探索において第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲は、探索経路R3に沿った範囲であり、放射線検出器30-2(FPD)の撮影範囲よりも狭い。
【0114】
そこで、画像範囲決定部2043は、第1計算部1041が現在の疎探索においてCT位置を移動させた距離に基づいて、次の疎探索においてCT位置を移動させた距離を予測し、次の疎探索において第1計算部1041が用いる第1DRR画像の撮影範囲を決定する。例えば、
図6に示した動作の一例では、3回目の疎探索において第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲は、1回目および2回目の疎探索によって、より高い確率で放射線検出器30-2(FPD)の撮影範囲よりも狭いと考えられる。このため、画像範囲決定部2043は、3回目の疎探索に用いる第1DRR画像の撮影範囲を、例えば、放射線検出器30-2(FPD)の撮影範囲と同じ範囲に決定する。これにより、3回目の疎探索において第1計算部1041がCT位置を移動させる範囲が、放射線検出器30-2(FPD)の撮影範囲となり、必要以上に第1DRR画像を生成する際の生成部103における計算コストや、第1計算部1041における疎探索の計算コストが増加してしまうのを回避することができる。
【0115】
なお、上述したように、例えば、
図6に示した動作の一例では、2回目の疎探索において第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲も、放射線検出器30-1(FPD)の撮影範囲よりも狭いと考えられる。ただし、2回目の疎探索を行う段階では、1回目の疎探索のみが終了している段階であり、第1DRR画像の平面内でCT位置を移動させる範囲が放射線検出器30-1(FPD)の撮影範囲よりも狭いと考えられる確率が3回目の疎探索のときよりは低くなっていると考えられる。仮に、患者Pの位置ずれ量が最も少ないCT位置が第1DRR画像の撮影範囲を超えたCT位置にある場合には、2回目の疎探索におけるCT位置が第1DRR画像の端部のCT位置となり、以降に第1計算部1041が疎探索を繰り返す回数が増加してしまうことも考えられる。このため、画像範囲決定部2043は、より高い確率でCT位置を移動させる範囲が放射線検出器30(FPD)の撮影範囲よりも狭くなる場合に、次の疎探索において第1計算部1041が用いる第1DRR画像の撮影範囲を狭くするようにする。
【0116】
上述したように、第2の実施形態の医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、第1計算部1041による疎探索と、第2計算部1042による密探索との2段階の探索処理で最終的なCT位置(好適位置)を探索することによって、治療台10に固定されている患者Pを放射線治療に好適位置に移動させるための位置決めの処理をする。さらに、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、画像範囲決定部2043が、第1計算部1041による疎探索において用いる第1DRR画像の撮影範囲を狭い範囲にさせる。これにより、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、第1計算部1041が疎探索する際の計算コストを、第1の実施形態の医用画像処理装置100よりも抑えた状態で、高精度に患者Pの位置決めの処理を行うことができる。
【0117】
上記説明したように、医用画像処理装置200において、計算部204は、第1位置を求める際に第1再構成画像(第1DRR画像)を第2透視画像(X線透視画像)に対して仮想的に平行移動させる移動量に基づいて、次に生成する第1DRR画像の範囲を決定する画像範囲決定部2043、をさらに備えてもよい。
【0118】
上記に述べたとおり、各実施形態の医用画像処理装置では、第1計算部による疎探索と、第2計算部による密探索との2段階の探索処理で好適位置を探索することによって、放射線治療において治療ビームを病巣に照射させるために事前に定められた位置に治療台に固定されている患者を移動させるための位置決めの処理をする。これにより、各実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムでは、好適位置を探索する計算コストを抑えた状態で、高精度に患者の位置決めの処理を行うことができる。そして、各実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムでは、適切なタイミングで治療ビームを病巣に照射する放射線治療を安全に行うことができる。
【0119】
上記実施形態で説明した医用画像処理装置において用いられる医用画像処理プログラムは、コンピュータを、患者の第1透視画像を取得する第1画像取得部と、照射した放射線を検出器によって検出して画像化する撮影装置から、第1透視画像の取得時とは異なる時刻に患者に照射した放射線に応じた第2透視画像を取得する第2画像取得部と、検出器の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に3次元空間に配置した第1透視画像から第2透視画像を再現した再構成画像を生成する生成部と、第2透視画像と再構成画像との類似度に基づいて、3次元空間における第1透視画像の好適位置を求める計算部と、を備え、生成部が、計算部によって用いられる再構成画像を、第2透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成する、医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラムである。
【0120】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、患者Pの3次元ボリュームデータ像(CT画像)を取得する第1画像取得部(101)と、照射した放射線(X線)を放射線検出器(30)によって検出して画像(X線透視画像)化する撮影装置から、CT画像の取得時とは異なる時刻に患者Pに照射した放射線(X線)に応じたX線透視画像を取得する第2画像取得部(102)と、放射線検出器(30)の3次元空間における設置位置に基づいて、仮想的に3次元空間に配置したCT画像からX線透視画像を再現した再構成画像(DRR画像)を生成する生成部(103)と、X線透視画像とDRR画像との類似度(評価値)に基づいて、3次元空間におけるCT画像の好適位置を求める計算部(104)と、を持つことにより、生成部(103)は、計算部(104)によって用いられるDRR画像のうち少なくとも一部を、X線透視画像に対応する範囲よりも広い範囲となるように生成することで、患者の位置合わせを高い精度で行うことができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1,2・・・治療システム
10・・・治療台
11・・・寝台制御部
20,20-1,20-2・・・放射線源
30,30-1,30-2・・・放射線検出器
40・・・治療ビーム照射門
41・・・治療ビーム照射制御部
50・・・画像解析部
60・・・表示制御部
61・・・表示装置
80・・・指示受付部
100,200・・・医用画像処理装置
101・・・第1画像取得部
102・・・第2画像取得部
103・・・生成部
104,204・・・計算部
1041・・・第1計算部
1042・・・第2計算部
2043・・・画像範囲決定部