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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
E03C1/22 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018220480
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020084574
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204895(JP,A)
【文献】実開平05-040376(JP,U)
【文献】実開昭52-045529(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体と、
前記槽体に備えられて前記槽体内の水を排出する排水口と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水装置であって、
前記弁部材は、弁体と、前記槽体内からの圧力が設定した値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水を下水側に排出する圧力弁と、からなり、
前記弁体は、貫通孔が形成された弁体上部と、前記弁体上部を覆う弁蓋と、弁体下部と、からなり、
前記弁体上部と前記弁体下部の間に圧力弁が配置され、
前記圧力弁に配置された磁石が、前記弁蓋に配置された磁石に引き合うことで、
前記圧力弁が前記貫通孔を閉口することを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記排水装置は、
前記弁部材を昇降させるとともに、前記弁部材の昇降状態を保持する保持機構を備え、
前記弁部材に対する押動によって前記保持機構が作動し、前記弁部材の上昇状態と下降状態が交互に保持されることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記排水装置は、
前記弁部材から離間した位置に設けられ、前記弁部材の昇降操作を行う操作部と、
前記操作部に加えられた操作を前記弁部材へと伝達する伝達部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項4】
前記弁部材は、
前記圧力弁の上方を覆う弁蓋を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水装置。
【請求項5】
前記排水装置は、
前記圧力弁が開口する圧力を任意に設定する圧力調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水装置に関するものであって、更に詳しくは、槽体内に湯水が貯留された際、設定した任意の水位を超えた場合に、余剰水を排出して槽体内の任意の水位を保持する排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台、浴槽等、槽体を備え、使用によって排水を生じる機器(以下、「排水機器」)において、槽体内部に生じた湯水を、下水側へ排出するための排水装置が知られている。
上記排水装置は、槽体の底面に排水口を形成し、当該排水口から排水配管を利用して槽体内の湯水を下水側に排出している。又、槽体の側面にオーバーフロー排水口を形成することによって、当該オーバーフロー排水口まで湯水が貯留されると、余剰水がオーバーフロー排水口へと流入するとともに、当該オーバーフロー排水口から連続するオーバーフロー流路を通じて下水側へと排出する構造となっている。これによって、オーバーフロー排水口が形成された水位以上に湯水が貯留されることを防ぐとともに、槽体から湯水が溢れてしまうことを防止している。
【0003】
ここで、近年意匠性や清掃性、衛生面等の理由から、槽体にオーバーフロー排水口が形成されていない場合があり、このような槽体においては余剰水を排出することが不可能であった。そこで、特許文献1に記載においては、槽体にオーバーフロー排水口を設けることなく余剰水を排出する排水装置が提案されている。
しかし、特許文献1に記載の排水装置はオーバーフロー排水口を有さないが、槽体背面にオーバーフロー配管を収納する空間が必要となる。従って、槽体背面にオーバーフロー配管を収納する空間を有していない洗面台には取り付けることができない。
【0004】
特許文献2には槽体背面にオーバーフロー配管を設けることなく余剰水を排出する排水装置が記載されているが、当該排水装置は排水配管の形状・構造が複雑化するとともに、余剰水を排出する機構を後付施工することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-117229号公報
【文献】特開2016-204895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、オーバーフロー配管を採用することなく余剰水を排出し、貯水時に槽体内の水位を一定に保つようにした排水装置について、形状・構造が簡単である装置や、後付施工が可能な装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、槽体と、
前記槽体に備えられて前記槽体内の水を排出する排水口と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水装置であって、
前記弁部材は、弁体と、前記槽体内からの圧力が設定した値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水を下水側に排出する圧力弁と、からなり、
前記弁体は、貫通孔が形成された弁体上部と、前記弁体上部を覆う弁蓋と、弁体下部と、からなり、
前記弁体上部と前記弁体下部の間に圧力弁が配置され、
前記圧力弁に配置された磁石が、前記弁蓋に配置された磁石に引き合うことで、
前記圧力弁が前記貫通孔を閉口することを特徴とする排水装置である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記排水装置は、
前記弁部材を昇降させるとともに、前記弁部材の昇降状態を保持する保持機構を備え、
前記弁部材に対する押動によって前記保持機構が作動し、前記弁部材の上昇状態と下降状態が交互に保持されることを特徴とする請求項1に記載の排水装置である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、前記排水装置は、
前記弁部材から離間した位置に設けられ、前記弁部材の昇降操作を行う操作部と、
前記操作部に加えられた操作を前記弁部材へと伝達する伝達部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水装置である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は前記弁部材は、
前記圧力弁の上方を覆う弁蓋を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水装置である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、前記排水装置は、
前記圧力弁が開口する圧力を任意に設定する圧力調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水装置である。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、弁部材が圧力弁を備えていることによって、オーバーフロー配管を採用することなく余剰水を排出し、貯水時に槽体内の水位を一定に保つことが可能となる。又、当該余剰水を排出する機構について、形状・構造が簡単とするとともに、既設の槽体に対して後付施工を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態を示す断面図である。
図2】弁部材を示す断面図である。
図3】弁部材の構成を示す分解図である。
図4】(a)圧力弁の閉口状態を示す断面図(b)開口状態を示す断面図である。
図5】本発明の第二実施形態を示す断面図である。
図6】弁部材を示す断面図である。
図7】弁部材の構成を示す分解図である。
図8】(a)圧力弁の閉口状態を示す断面図(b)開口状態を示す断面図である。
図9】本発明の第三実施形態に係る弁部材の(a)圧力弁の閉口状態を示す断面図(b)開口状態を示す断面図である。
図10】本発明の第四実施形態に係る弁部材の(a)圧力弁の閉口状態を示す断面図(b)開口状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の第一実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0015】
図1乃至図4に示す、本発明の第一実施形態に係る排水装置は、洗面台S、排水口本体1、吸気弁部材3、弁部材5から構成されている。
【0016】
洗面台Sは、槽体としての洗面ボウルBと、当該洗面ボウルBを載置する、内部に配管空間を備えたキャビネットCから構成される。
洗面ボウルBは上方が開口された箱状であって、底面には排水口本体1が取り付けられる取付口を備えている。
【0017】
排水口本体1は、内部に排水流路を形成する略円筒形状であって、当該排水流路上端において排水口2を形成する。又、排水口本体1は上端より外側に突出する鍔部と、鍔部の下方において雄螺子を備えている。
上記排水口本体1は洗面ボウルB底面に形成された取付口に挿通された後、洗面ボウルB下面に配置されたナットと螺合され、鍔部とナットにより取付口周縁を挟持することで固定されている。
【0018】
吸気弁部材3は排水口本体1の下方に配置され、その外周に外部と連通する吸気孔及び環状の吸気弁本体が当接する弁座部を備えている。
吸気弁本体は下流側の排水配管内の圧力が大気圧と等しい状態において、上記弁座部上に載置されて吸気孔を閉塞するとともに、下流側の排水配管内が負圧になった際には当該負圧によって上昇し、吸気孔を開放することで外部の空気を排水配管内に流入させ、吸気を行うことで負圧を解消する。
【0019】
図2及び図3に示すように、弁部材5は、弁体6、圧力弁7から構成されるとともに、保持機構20が連結されている。弁体6は略円盤状から成る弁体上部8と、網目状の弁体下部11、弁体上部8を覆う弁蓋12から成り、弁体上部8と弁体下部11の間に後述する圧力弁本体15が配置されている。又、圧力弁7は上記弁体上部8に形成された貫通孔9と、圧力弁本体15から構成されている。
【0020】
弁体上部8は周囲に環状のパッキンが嵌着されており、排水口2を覆うことで当該排水口2を水密的に閉塞する。又、弁体上部8はその中心を上下に貫通する貫通孔9が形成されているとともに、上面に形成された支柱13を介して弁蓋12と接続されている。貫通孔9は下方に圧力弁本体15が配置されているとともに、貫通孔9下面に形成された弁座10に圧力弁本体15が当接することによって開閉可能となっている。
弁体下部11は上端が弁体上部8に接続されているとともに、中央下面に保持機構20が着脱可能に取り付けられている。
弁蓋12は弁体6とほぼ同径であり、弁体6及び圧力弁7を覆い隠すことで意匠面を形成する蓋部材であって、内部に磁石17が埋設されている。磁石17は後述する圧力弁本体15内部に埋設された磁石18と引き合うように配置されている。又、弁蓋12は下面外周において下方に向けて複数本延設された支柱13によって弁体6と連結されている。
圧力弁本体15は断面視略コの字状であって、弁体6内部を上下動自在に配置されており、上端に止水部16を有するとともに、内部に磁石18が埋設されている。止水部16はゴム等の弾性部材から成るパッキンが嵌着されており、弁体6の貫通孔9下面に形成された弁座10に当接することで貫通孔9を水密的に閉塞する。
【0021】
上記圧力弁本体15と貫通孔9から成る圧力弁7は下流側の排水配管内が大気圧と等しい状態において、磁石17と磁石18の磁力によって圧力弁本体15が上昇している。この時、圧力弁本体15は弁座10に止水部16が当接し、貫通孔9から連続する排水流路を閉塞している。又、圧力弁7は、圧力弁本体15に対して上方から加わる圧力が設定された値を超えた際に開口し、上記排水流路を開放する様に構成されている。
【0022】
保持機構20はケーシング21と、ケーシング21内に配置された弁軸22、回転ギア23、スプリング24より構成されている。
ケーシング21は内側面において、回転ギア23を所定角度回転させる固定ギア下部25と、回転ギア23と噛合する固定ギア上部26が形成されているとともに、外側面には排水中の毛髪等を補足するための目皿が形成されている。
弁軸22はケーシング21の中心に配置されているとともに、ケーシング21の上面を貫通しており、その上端に取り付けられたOリングによって、弁体下部11に対して着脱可能に嵌合している。又、弁軸22には回転ギア23が回動可能且つ上下動不能に取り付けられている。
スプリング24はケーシング21底面に配置されており、弁軸22を上方に向けて付勢している。
【0023】
上記保持機構20は弁部材5に対する押動操作に伴い、以下の様に動作することによって弁部材5を昇降させるとともに、当該弁部材5の上昇状態と下降状態を交互に保持する。
まず、排水口2が開口している状態において、回転ギア23は固定ギア上部26とは噛合していない。従って、弁軸22はスプリング24の反発によって上方へと付勢され、弁部材5は上昇状態となっている。この時、回転ギア23は固定ギア上部26よりも上方に位置するとともに、圧力弁本体15に嵌着されたパッキンが排水口本体1から離間しているため、洗面ボウルB内の湯水は排水口2より下流側へと排出される。
上記弁部材5に対し、上方より弁蓋12を押し下げるように押動操作を行うと、弁部材5が下降するとともに、回転ギア23が固定ギア下部25によって所定角度回転する。ここで、使用者が手を離すと、スプリング24の反発によって弁軸22が若干上昇し、ケーシング21の上方に形成された固定ギア上部26と噛合することで、弁部材5の下降状態が保持される。
上記下降状態にある弁部材5に対して使用者が再度押動操作を加えると、再び弁軸22が下降するとともに、回転ギア23が固定ギア下部25によって所定角度回転し、固定ギア上部26との噛合が解除されることで弁部材5が上昇し、排水口2が開放される。
【0024】
上記弁部材5が設置された洗面ボウルBに対して、弁部材5が下降することによって排水口2が閉塞されている状態において、所定水位以下の湯水が貯留されている時、磁石17と磁石18が引き合う力が圧力弁本体15に加わる水圧よりも強いため、図4(a)に示すように、圧力弁本体15は磁力によって上昇しており、弁座10に止水部16が当接し、閉口状態を維持している。従って、使用者は所定水位まで湯水を貯留することができる。
ここで、所定水位以上の湯水が洗面ボウルBに貯留されると、圧力弁7は槽体より加わる圧力が設定された値を超えることによって開口する。即ち、磁石17と磁石18が引き合う力よりも圧力弁本体15に加わる水圧が上回るため、圧力弁本体15が磁力に反して押し下げられる。この時、図4(b)に示すように、止水部16が弁座10から離間し、貫通孔9より洗面ボウルB内の余剰水が排出される。尚、当該排出された余剰水は弁体下部11の網目部分を通過し、下水側へと排出される。
上記排出に伴い洗面ボウルB内の水位が低下すると、圧力弁本体15に加わる水圧が徐々に低下する。そして、磁石17と磁石18が引き合う力が水圧よりも上回ると、再び圧力弁本体15が上昇する。この時、弁座10に止水部16が当接することによって圧力弁7が閉口することで湯水を再び貯留可能となる。
【0025】
上記排水装置は、所定水位以上の湯水が洗面ボウルBに貯留され、余剰水が排出された際、排水配管内部が満水状態となると、サイホン現象によって排水配管内に強い負圧が生じ、洗面ボウルB内の湯水が下流側へと引き込まれる。この時、圧力弁本体15が負圧によって下方に引き込まれるため、洗面ボウルB内の水位が所定以下となっても圧力弁本体15が上昇することができない恐れがある。しかし、本発明は吸気弁部材3を備えており、負圧発生時には吸気弁部材3内部に配置された吸気弁本体が上昇し、吸気孔から吸気を行うことで当該負圧を解消し、水位を所定高さに保つことが可能となる。
尚、上記第一実施形態において、圧力弁7は磁石17と磁石18が引き合うことによって閉口する構造であることから、開口時における余剰水の排水流量を確保することができる。即ち、磁力は磁石間の距離の2乗に反比例することから、一度磁石17と磁石18離間すると、引き合う力が急激に減衰するため、圧力弁7を瞬時に大きく開口させることができる。これにより、流量不足によって槽体から余剰水が溢れてしまうことを防止することができる。
【0026】
次に、図5乃至図8を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。尚、本発明の第二実施形態に係る排水装置は、洗面台S、排水口本体1、吸気弁部材3、弁部材5、操作装置30から構成されているが洗面台S、排水口本体1、吸気弁部材3については上記第一実施形態と同一であるため、第一実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0027】
図6及び図7に示すように、弁部材5は、弁体6、圧力弁7から構成されるとともに、弁軸22が連結されている。弁体6は略円盤状から成る弁体上部8と、網目状の弁体下部11、弁体上部8を覆う弁蓋12から成り、弁体上部8と弁体下部11の間に後述する圧力弁本体15が配置されている。又、圧力弁7は上記弁体上部8に形成された貫通孔9と、圧力弁本体15から構成されている。
【0028】
弁体上部8は周囲に環状のパッキンが嵌着されており、排水口2を覆うことで当該排水口2を水密的に閉塞する。又、弁体上部8はその中心を上下に貫通する貫通孔9が形成されているとともに、上面に形成された支柱13を介して弁蓋12と接続されている。貫通孔9は下方に圧力弁本体15が配置されているとともに、貫通孔9下面に形成された弁座10に圧力弁本体15が当接することによって開閉可能となっている。
弁体下部11は上端が弁体上部8に接続されているとともに、中央下面に保持機構20が着脱可能に取り付けられている。
弁蓋12は弁体6とほぼ同径であり、弁体6及び圧力弁7を覆い隠すことで意匠面を形成する蓋部材であって、内部に磁石17が埋設されている。磁石17は後述する圧力弁本体15内部に埋設された磁石18と引き合うように配置されている。又、弁蓋12は下面外周において下方に向けて複数本延設された支柱13によって弁体6と連結されている。
圧力弁本体15は断面視略コの字状であって、弁体6内部を上下動自在に配置されており、上端に止水部16を有するとともに、内部に磁石18が埋設されている。止水部16はゴム等の弾性部材から成るパッキンが嵌着されており、弁体6の貫通孔9下面に形成された弁座10に当接することで貫通孔9を水密的に閉塞する。
【0029】
上記圧力弁本体15と貫通孔9から成る圧力弁7は下流側の排水配管内が大気圧と等しい状態において、磁石17と磁石18の磁力によって圧力弁本体15が上昇している。この時、圧力弁本体15は弁座10に止水部16が当接し、貫通孔9から連続する排水流路を閉口している。又、圧力弁7は、圧力弁本体15に対して上方から加わる圧力が設定された値を超えた際に開口し、上記排水流路を開放する様に構成されている。
【0030】
弁軸22は金属製の棒状体であって、上端が弁体下部11に接続されているとともに、目皿の中心に形成された開口を貫通しており、その下端は操作装置30の押上片33に載置されている。
【0031】
操作装置30は操作部31、伝達部32、押上片33を備えている。
操作部31は洗面ボウルBの上縁であって、弁部材5から離間した位置に形成された取付口に設置されており、使用者が押し引きによって手動操作可能となっている。
伝達部32は樹脂製のアウターチューブと、アウターチューブ内に配置された金属製のインナーワイヤから成るレリースワイヤである。インナーワイヤは一端が操作部31に、他端が押上片33に連結されており、操作部31に加えられた操作に応じてアウターチューブ内を摺動することによって、上記操作を押上片33へと伝達する。
押上片33はインナーワイヤの摺動に応じて回動するよう構成されており、弁部材5が載置されている。
【0032】
上記操作装置30は、弁部材5が下降している状態において、操作部31に対して引き上げ操作を加えると、インナーワイヤが操作部31側に向けて摺動し、押上片33が上方に向けて回動する。この時、弁部材5は押上片33の回動に伴い上昇し、排水口2を開口させる。一方、上記排水口2の開口状態より、操作部31に対して押し下げ操作を加えると、インナーワイヤが押上片33側へと摺動し、押上片33が下方に向けて回動することで弁部材5が下降し、排水口2を閉口させる。
【0033】
上記弁部材5が設置された洗面ボウルBに対して、弁部材5が下降することによって排水口2が閉塞されている状態において、所定水位以下の湯水が貯留されている時、磁石17と磁石18が引き合う力が圧力弁本体15に加わる水圧よりも強いため、図8(a)に示すように、圧力弁本体15は磁力によって上昇しており、弁座10に止水部16が当接し、閉口状態を維持している。従って、使用者は所定水位まで湯水を貯留することができる。
ここで、所定水位以上の湯水が洗面ボウルBに貯留されると、圧力弁7は槽体より加わる圧力が設定された値を超えることによって開口する。即ち、磁石17と磁石18が引き合う力よりも圧力弁本体15に加わる水圧が上回るため、圧力弁本体15が磁力に反して押し下げられる。この時、図8(b)に示すように、止水部16が弁座10から離間し、貫通孔9より洗面ボウルB内の余剰水が排出される。尚、当該排出された余剰水は弁体下部11の網目部分を通過し、下水側へと排出される。
上記排出に伴い洗面ボウルB内の水位が低下すると、圧力弁本体15に加わる水圧が徐々に低下する。そして、磁石17と磁石18が引き合う力が水圧よりも上回ると、再び圧力弁本体15が上昇する。この時、弁座10に止水部16が当接することによって圧力弁7が閉口することで湯水を再び貯留可能となる。
【0034】
上記排水装置は、所定水位以上の湯水が洗面ボウルBに貯留され、余剰水が排出された際、排水配管内部が満水状態となると、サイホン現象によって排水配管内に強い負圧が生じ、洗面ボウルB内の湯水が下流側へと引き込まれる。この時、圧力弁本体15が負圧によって下方に引き込まれるため、洗面ボウルB内の水位が所定以下となっても圧力弁本体15が上昇することができない恐れがある。しかし、本発明は吸気弁部材3を備えており、負圧発生時には吸気弁部材3内部に配置された吸気弁本体が上昇し、吸気孔から吸気を行うことで当該負圧を解消し、水位を所定高さに保つことが可能となる。
尚、上記第二実施形態において、圧力弁7は磁石17と磁石18が引き合うことによって閉口する構造であることから、開口時における余剰水の排水流量を確保することができる。即ち、磁力は磁石間の距離の2乗に反比例することから、一度磁石17と磁石18離間すると、引き合う力が急激に減衰するため、圧力弁7を瞬時に大きく開口させることができる。これにより、流量不足によって槽体から余剰水が溢れてしまうことを確実に防止することができる。
【0035】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明は上記第一、第二実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において自由に変更が可能である。例えば、上記第一実施形態と第二実施形態における弁部材5の形状を同一のものとして、互換性を持たせても良い。このようにすることによって、弁部材5を直接押動して排水口2を開閉する構造の排水装置(第一実施形態)と、操作部31に操作を加えることで排水口2を開閉する構造の排水装置(第二実施形態)の部材を共通化することが可能となる。尚、第一実施形態と第二実施形態において、弁蓋12は弁体6とほぼ同径であったが、弁蓋12を弁体6よりも大径とすることによって、弁体6を完全に覆い隠し、意匠性を向上させることができる。又、弁蓋12を排水口本体1の鍔部よりも大径とした場合、排水口本体1の鍔部と洗面ボウルBとの間に堆積する汚れを覆い隠すことが可能となる。
又、圧力弁7は磁力によって弁座10に向けて付勢される構造であったが、図9に示す第三実施形態の様に、スプリング等の弾性素材の弾性によって圧力弁7が付勢される構造であっても良い。又、その他にも重りによる荷重、空気圧や油圧によって圧力弁7を付勢して作動する構造であっても良い。
又、上記各実施形態に対して、圧力弁が開口する圧力を任意に設定する圧力調整機構を備えても良い。即ち、図10に示す第四実施形態の様に、磁石17と磁石18の距離を螺合によって調整可能とすることによって、槽体内に貯留可能な水位を適宜設定可能とすることができる。尚、当該圧力調整機構は、螺合によって磁石間の距離を調整する構造に限るものではなく、係合その他の方法であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 排水口本体
2 排水口
3 吸気弁部材
5 弁部材
6 弁体
7 圧力弁
8 弁体上部
9 貫通孔
10 弁座
11 弁体下部
12 弁蓋
13 支柱
15 圧力弁本体
16 止水部
17 磁石
18 磁石
20 保持機構
21 ケーシング
22 弁軸
23 回転ギア
24 スプリング
25 固定ギア下部
26 固定ギア上部
30 操作装置
31 操作部
32 伝達部
33 押上片
S 洗面台
B 洗面ボウル
C キャビネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10