(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】フィルム開閉装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A01G9/24 F
(21)【出願番号】P 2019234004
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 明
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-150361(JP,U)
【文献】特開2013-034443(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167110(JP,U)
【文献】実開昭50-064537(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0070353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
E06B 9/56 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスに設けられた開口部の上方に一端が取付けられて前記開口部を閉塞可能なフィルムと、前記フィルムの他端に装着される軸と、前記軸の一端に連結され前記軸を回転駆動可能な駆動機とを有し、前記駆動機によって前記軸を回転駆動させることで前記フィルムの巻上げ又は繰り出しをして前記開口部を開閉するフィルム開閉装置において、
前記軸の上方で前記ビニールハウスに着脱自在に取付けられるベルト保持金具と、
前記ベルト保持金具と前記軸とに架け渡され前記駆動機の荷重を支持するベルトとを備え、
前記ベルト保持金具は、前記ベルトの任意の位置を保持可能である
ことを特徴とするフィルム開閉装置。
【請求項2】
前記ベルト保持金具は、水平方向に並べて設けられた複数の取付孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム開閉装置。
【請求項3】
前記ビニールハウスにおいて前記軸の上方で横方向に架け渡され開口の幅が狭く形成された溝を有するフレーム材に着脱自在に取付けられる取付金具を有し、
前記取付金具は、前記溝に挿入されると弾発力を発揮して前記フレーム材に定着される定着部と、前記定着部から前記開口を通じて突出し水平方向に並べて配置されるとともに前記各取付孔に挿通可能な複数のフックを有する
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム開閉装置。
【請求項4】
前記ベルト保持金具は、前記ビニールハウスに鉛直に沿う姿勢で取付けられた状態で、上下に平行に並べて配置されるとともに、前記ビニールハウスを背にして正面から見て互いに前後にずれて配置される一対のロッド部を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム開閉装置。
【請求項5】
前記ベルトを間に挟みつつ前記軸を抱持して前記軸と前記ベルトを連結するクリップを有し、
前記軸と前記ベルトの間に滑り止めシートが介装されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルム開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルム開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウス内で栽培される農作物の生育には、農作物に適した温度管理が必要であるため、ビニールハウスには、側面、屋根面等に換気用の開口部が設けられている。そして、ビニールハウスの開口部を覆うフィルムを必要に応じて開閉することで、ビニールハウス内の温度を農作物に適した温度に制御する。
【0003】
フィルムの開閉には、フィルムを自動で巻上げ又は繰り出して開口部を開閉するフィルム開閉装置が用いられている。
【0004】
詳細には、フィルム開閉装置は、ビニールハウスの開口部の上方に設けられたシート定着用のフレーム材に一端が取付けられたフィルムと、当該フィルムの他端に装着される軸と、当該軸を回転駆動可能な駆動機とを有しており、駆動機によって軸を回転駆動させることでフィルムの巻上げ又は繰り出しを行い、開口部を開閉することで、ビニールハウス内を換気できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来のフィルム開閉装置では、軸に連結されている駆動機の荷重がフィルムに作用して、フィルムが伸びてしまうのを防止するために、ビニールハウスに設けられたシート定着用のフレーム材と軸との間に駆動機の荷重を支持するベルトを架け渡している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、シート定着用のフレーム材は、底部よりも開口部の幅が狭く形成された溝を有しており、当該溝にベルトの一端側を入れ込んだ状態で、ベルトの上からばねを挿入することで、ばねの弾発力によって、ベルトの一端側を保持できるようになっている。
【0008】
しかしながら、フレーム材には、ベルトの他にも、ビニールハウスのシートや、開口部からビニールハウス内に虫が侵入するのを防止する防虫ネットなどが、それぞれ、ばねを介して取付けられる場合がある。
【0009】
そのため、ベルトをフレーム材に取付ける際には、フレーム材の溝には、すでに複数のシート等やシート等をフレーム材に定着させるばねが挿入されており、ベルトを取付けるためのばねを挿入するスペースを確保しづらく、ベルトをフレーム材に取付けしづらかった。
【0010】
また、ベルトは、駆動機の荷重を支持するものであり、ベルトがたるむとフィルムに駆動機の荷重が作用してしまうので、ベルトをフレーム材と軸との間に取付けた後に、ベルトのフレーム材と軸との間に架け渡される部分の長さ、つまり、ベルトに駆動機の荷重が作用する部分の長さ(以下、「荷重支持長」と称する。)の調節を行う必要がある。ところが、その場合、軸や駆動機の荷重を支えながら、一度ばねをフレーム材の溝から外して、フレーム材に取付けられるベルトの位置を調節してから、再度ばねを挿入するといった作業が必要となるため、ベルトをフレーム材と軸との間に取付けた後に、ベルトの荷重支持長を調節するのは非常に面倒であった。
【0011】
そこで、本発明では、駆動機の荷重を支持するベルトのビニールハウスへの取付けと、当該ベルトの取付け後におけるベルトの荷重支持長の調節が容易となるフィルム開閉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段は、ビニールハウスに設けられた開口部の上方に一端が取付けられて前記開口部を閉塞可能なフィルムと、前記フィルムの他端に装着される軸と、前記軸の一端に連結され前記軸を回転駆動可能な駆動機とを有し、前記駆動機によって前記軸を回転駆動させることで前記フィルムの巻上げ又は繰り出しをして前記開口部を開閉するフィルム開閉装置において、前記軸の上方で前記ビニールハウスに着脱自在に取付けられるベルト保持金具と、前記ベルト保持金具と前記軸とに架け渡され前記駆動機の荷重を支持するベルトとを備え、前記ベルト保持金具が、前記ベルトの任意の位置を保持可能であることを特徴とする。この構成によると、ビニールハウスのシート定着用のフレーム材の溝にベルトを挿入することなく、ベルトをビニールハウスに取付けできる。
【0013】
また、本発明のフィルム開閉装置は、前記ベルト保持金具が、水平方向に並べて設けられた複数の取付孔を有するようにしてもよい。この構成によると、複数の取付孔内にフックを通したり、ビスを通したりしてビニールハウスへ取付けできるので、ベルト保持金具にベルトを介して偏荷重が作用しても、ベルト保持金具は水平姿勢を維持でき、ベルトを安定支持できる。
【0014】
また、本発明のフィルム開閉装置は、前記ビニールハウスにおいて前記軸の上方で横方向に架け渡され開口の幅が狭く形成された溝を有するフレーム材に着脱自在に取付けられる取付金具を有し、前記取付金具は、前記溝に挿入されると弾発力を発揮して前記フレーム材に定着される定着部と、前記定着部から前記開口を通じて突出し水平方向に並べて配置されるとともに前記各取付孔に挿通可能な複数のフックを有するとしてもよい。この構成によると、ビニールハウスにフックを容易に設けることができる上、フックに引掛けるだけでベルト保持金具をビニールハウスに容易に取付けできる。
【0015】
また、本発明のフィルム開閉装置は、前記ベルト保持金具が、前記ビニールハウスに鉛直に沿う姿勢で取付けられた状態で、上下に平行に並べて配置されるとともに、前記ビニールハウスを背にして正面から見て互いに前後にずれて配置される一対のロッド部を有するとしてもよい。この構成によると、ベルト保持金具に容易にベルトを保持させることができるとともに、ベルトの荷重支持長の調節も容易にできる。
【0016】
また、本発明のフィルム開閉装置は、前記ベルトを間に挟みつつ前記軸を抱持して前記軸と前記ベルトを連結するクリップを有し、前記軸と前記ベルトの間に滑り止めシートを介装するようにしてもよい。この構成によると、軸とベルトの間に生じる摩擦が大きくなるため、ベルトが引っ張られてもずれ難くなっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフィルム開閉装置によれば、駆動機の荷重を支持するベルトのビニールハウスへの取付けと、当該ベルトの取付け後におけるベルトの荷重支持長の調節を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係るフィルム開閉装置のビニールハウスへの使用状態を示す拡大斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る取付金具の斜視図である。
【
図3】フレーム材に取付けた取付金具にベルト保持部材を取付けた状態を示す一部拡大斜視図である。
【
図4】(a)は本実施の形態に係るベルト保持金具の正面図である。(b)は(a)のベルト保持金具を側面側から見たA-A断面図である。
【
図5】ベルトの上端側を保持した状態のベルト保持金具が取付けられたビニールハウスの一部拡大側面断面図である。
【
図6】
図5に示すベルト保持金具を傾けた状態を示すビニールハウスの一部拡大側面断面図である。
【
図7】軸におけるクリップ介してベルトの下端が連結された状態を示す拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0020】
本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aは、
図1に示すように、ビニールハウス1に設けられた開口部2の上方に一端が取付けられて開口部2を閉塞可能なフィルム3と、フィルム3の他端に装着される軸4と、軸4の一端に連結され当該軸4を回転駆動可能な駆動機5と、軸4の上方でビニールハウス1に着脱自在に取付けられるベルト保持金具6と、ベルト保持金具6と軸4とに架け渡され駆動機5の荷重を支持するベルト7とを備え、ベルト保持金具6は、ベルト7の任意の位置を保持可能とされている。そして、フィルム開閉装置Aは、駆動機5によって軸4を回転駆動させることでフィルム3の巻上げ又は繰り出しをして開口部2を開閉できる。なお、開口部2には図示しないネットが展張されており、通気性を確保しつつ、害虫や害鳥がビニールハウス1内に侵入することを防止している。
【0021】
以下、詳細に説明すると、ビニールハウス1は、
図1に示すように、複数のアーチパイプ8と、アーチパイプ8,8間に架け渡されて上下方向に並べて配置され底部よりも開口部の幅が狭く形成された溝を有する複数のフレーム材F1及び定着部材F2,F3とを備える骨組と、フレーム材F1及び各定着部材F2,F3の溝に弾性部材9を介して定着されることで骨組に展張されるビニールシートSとを備えて略蒲鉾型に形成される。フレーム材F1は、ビニールハウス1の屋根面と側面の間の肩部に沿って地面に対して水平に配置されており、各定着部材F2,F3は、ビニールハウス1の側面であって開口部2よりも下方に地面に対して水平に配置されている。
【0022】
また、このビニールハウス1の側面には、長手方向に沿って換気用の開口部2が形成されている。なお、開口部2の位置は、ビニールハウス1の側面には限られず、妻面、屋根面に設けられていてもよい。
【0023】
つづいて、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aの各部について、詳細に説明する。駆動機5は、
図1に示すように、ビニールハウス1の側方であって地面に起立する中空のパイプ材からなるガイド軸10の軸方向に沿って移動可能に取付けられている。詳しくは図示しないが、駆動機5は、駆動源としてのモータと、モータの回転速度を減速して駆動機5に連結された軸4に伝達する減速機と、ガイド軸10を挟持してガイド軸10に沿って転動可能な二対のローラを有している。
【0024】
また、駆動機5に連結される軸4は、中空のパイプ材からなっており、駆動機5のモータの回転方向を切り換えることで、軸4を任意の方向に回転できるようになっている。
【0025】
フィルム3は、雨や風のビニールハウス1内への侵入を阻止することが可能なビニールシート等とされている。そして、フィルム3の上端は、開口部2の上方で、横方向に架け渡されたビニールシート定着用のフレーム材F1を介してビニールハウス1に取付けられ、フィルム3の自由端となる下端には、フィルム3の幅方向に沿って軸4が装着されている。
【0026】
さらに、本実施の形態では、
図1に示すように、ビニールハウス1の開口部2の上方で横方向に架け渡されたフレーム材F1に取付金具11を介して着脱自在にベルト保持金具6が取付けられている。そして、ベルト保持金具6と軸4との間には、帯状のベルト7が架け渡されており、ベルト7は軸4を介して駆動機5を吊り下げた状態で、駆動機5を支持している。
【0027】
この際、ベルト7の下端側は、軸4におけるフィルム3が装着されていない部分、具体的には、軸4におけるフィルム3が装着されている部分と、駆動機5に連結されている部分との間に連結されている。
【0028】
これにより、軸4に装着されたフィルム3に作用する駆動機5の荷重が軽減され、フィルム3が駆動機5の荷重によって伸びてしまうことが防止されている。なお、本実施の形態に係るベルト7は、ポリエチレン製であるが、軸4に巻取り可能な柔軟性と、駆動機5の荷重を支持可能な強度を備えていれば、ベルト7の材質は特に限定されない。
【0029】
本実施の形態に係る取付金具11は、
図2に示すように、金属製の線材を屈曲して成形した定着部11aと、定着部11aの両端から起立する一対のフック11b,11bとを備えている。
【0030】
定着部11aは、水平片11cと、水平片11cの両端から外向きに傾斜する一対の傾斜片11d,11dと、各傾斜片11dの端部から起立し水平片11c側に向けて湾曲する湾曲片11eとを有する。各フック11bは、湾曲片11eの先端に連結され反水平片側に向けて連なるU字状の支持片11fと、支持片11fの先端から反定着部側に向けて斜め上方に突出する挿入片11gとをそれぞれ有する。
【0031】
そして、定着部11aの
図2中上下方向の幅は、フレーム材F1の溝の開口部の幅よりも大きいため、定着部11aを変形させつつフレーム材F1の溝内に押し込むと、定着部11aがフレーム材F1の溝内に圧縮された状態で挿入されるため弾発力を発揮して、取付金具11は、
図3に示すように、フレーム材F1に定着される。これにより、各フック11b,11bは、フレーム材F1の溝の開口を通じてフレーム材F1から外方へ突出した状態で、水平方向に並んで配置される。なお、定着部11aの形状は、フレーム材F1の溝内で弾発力を発揮してフレーム材F1に定着できるようになっていれば、上記形状には限定されない。
【0032】
ベルト保持金具6は、ビニールハウス1の側面に沿う鉛直姿勢で配置された状態でビニールハウス1を背にして見た時に正面側を向く面を正面としている。
【0033】
ベルト保持金具6は、
図4(a),(b)に示すように、矩形であって水平に並べて配置された2つの横向きに広がる角丸長方形の取付孔6a,6aを有する取付板部6bと、取付板部6bの
図4(a)中左右の下端にそれぞれ連結され互いに対向する一対の支持片6c,6cと、各支持片6c,6c間に上下に平行に並べて架け渡される一対のロッド部6d、6eを有する。さらに、上方のロッド部6dは、
図4(b)に示すように、下方のロッド部6eよりも、図中右方である正面側に配置されている。
【0034】
上方のロッド部6dは、
図4(a),(b)に示すように、一対の支持片6c,6c間に架け渡され表面が正面側を向く底面6fと、底面6fの両端からそれぞれ背面側に向けて内向きに傾斜して延びる互いに長さの等しい一対の傾斜面6g,6hとを有して、断面二等辺三角形状に形成されている。
【0035】
他方、下方のロッド部6eは、
図4(b)に示すように、一対の支持片6c,6c間に架け渡され上方のロッド部6dの下側の傾斜面6hに対して平行に配置される一方側平板部6iと、一方側平板部6iの図中右側端部から図中下向きに延びる他方側平板部6jを有して断面L字状に形成されている。ただし、各ロッド部6d,6eの形状は、上記形状には限られず、例えば、円柱状に形成されてもよい。
【0036】
そして、
図5に示すように、ベルト7の上端側を、ベルト保持金具6の図中左側である背面側から上方のロッド部6dと取付板部6bの間に通して上方のロッド部6dに巻き付けて折り返しつつ、上方のロッド部6dと下方のロッド部6eの間に通す。この状態で、ベルト保持金具6を背面側から各取付孔6a,6aに取付金具11の各フック11b,11bを挿通して、ベルト保持金具6をフック11b,11bに引掛ける。この際、フック11bは、先端に
図5中右斜め上方に突出する挿入片11gを有しているため、ベルト保持金具6をフック11b,11bに引掛ける際に、ベルト保持金具6を傾ける角度を小さくできる。そのため、ベルト保持金具6にベルト7を保持させた状態であっても、ベルト保持金具6をフック11b,11bに引掛け易くなっている。
【0037】
このように、ベルト保持金具6の各ロッド部6d,6eにベルト7を架け渡した状態で、ベルト保持金具6をフック11b,11bに引掛けて支持させ、ベルト保持金具6が鉛直に沿う姿勢をとると、
図5に示すように、上方のロッド部6dに当接する部分を挟んでベルト7とベルト7の折り返し部分が、下方のロッド部6eの一方側平板部6iの縁に重なった状態で当接する。ベルト7の下端側から荷重が作用した際に、ベルト7がベルト7の折り返し部分を一方側平板部6iに押し付けて、両者の間に摩擦が生じるため、ベルト7の下端側から荷重が作用してもベルト7がベルト保持金具6から脱落しない。なお、ここでいう、鉛直に沿う姿勢とは、ベルト保持金具6の上下方向の軸線が、鉛直線と完全に一致する状態だけでなく、フック11b,11bへの引っ掛け具合などによって、下方のロッド部6e上で重なっているベルト7とベルト7の折り返し部分とが離間しない程度に、ベルト保持金具6が、僅かに傾くような状態も含む。
【0038】
また、この際、ベルト7は、ベルト保持金具6が鉛直に沿って配置されたときに、一方側平板部6iの縁の角部に当接して、ベルト7の折り返し部分をロッド部6eに向けて強く押しつけるので、ベルト保持金具6にしっかりと固定できる。
【0039】
したがって、本実施の形態においては、ベルト7の上端側は、
図3に示すように、ベルト保持金具6を介して、ビニールハウス1に取付けられている。
【0040】
ここで、ベルト7のベルト保持金具6と軸4との間に架け渡される部分の長さ、つまり、ベルト7に駆動機5の荷重が作用する部分の長さ(荷重支持長)は、ベルト保持金具6によって保持されるベルト7の位置と軸4との間の距離で決定される。そのため、ベルト保持金具6によって保持されるベルト7の位置を調節すれば、ベルト7の荷重支持長を任意の長さに設定できる。
【0041】
さらに、
図6に示すように、フック11b,11bを支点にして、ベルト保持金具6の下側をビニールハウス1から離間させる方向に傾けると、下方のロッド部6e上で重なっていたベルト7とベルト7の折り返し部分が離間するため、ベルト7を下方のロッド部6eに向けて押しつける力が作用しなくなる。そのため、このようにベルト保持金具6を傾けた状態にすれば、ベルト7を折り返し部分又は下端側から引っ張るだけで、ベルト7をベルト保持金具6と軸4との間に取付けた後であっても、ベルト保持金具6をフック11b,11bから取り外すことなく、ベルト7の荷重支持長を任意の長さに調節できる。
【0042】
なお、本実施の形態では、ベルト保持金具6は、取付孔6aに取付金具11のフック11b,11bを挿通することで、ビニールハウス1に取付けられているが、各取付孔6a,6aをビニールハウス1の骨組に対向させた状態で各取付孔6a,6aにビスを挿入することで、ビニールハウス1の骨組に取付けられてもよい。
【0043】
他方、ベルト7の下端側は、クリップ12を介して軸4に連結されている。具体的には、本実施の形態に係るクリップ12は、
図7に示すように、断面C字状であって、開口幅が軸4の直径よりも狭く形成された弾性変形可能な材料で構成されている。そして、ベルト7を軸4の胴回りに沿わせた状態で、ベルト7の上からクリップ12を嵌合することで、ベルト7と軸4がクリップ12によって把持されている。
【0044】
この際、軸4とベルト7の間には、
図7に示すように、ゴム製の滑り止めシート13が介装されている。これにより、軸4とベルト7の間に生じる摩擦が大きくなるため、軸4とベルト7が直接当接する場合に比べて、ベルト7が引っ張られてもずれ難くなっている。
【0045】
つづいて、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aの作動について詳細に説明する。本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aの駆動機5は、図示しない制御盤によって制御されており、制御盤からビニールハウス1の開口部2を開放することを指示する信号が出力されると、駆動機5のモータが開方向に回転駆動する。すると、駆動機5に連結された軸4も回転するので、軸4がフィルム3を巻取りながら駆動機5と共に上側に移動して開口部2を開放する。この際、ベルト保持金具6と軸4との間に架け渡されたベルト7も、フィルム3と共に、クリップ12を介して軸4に巻取られる。
【0046】
反対に制御盤からビニールハウス1の開口部2を閉塞することを指示する信号が出力されると、駆動機5のモータが閉方向に駆動する。すると、駆動機5に連結された軸4がフィルム3を繰り出しながら駆動機5と共に下側に移動して開口部2を閉塞する。この際、ベルト保持金具6と軸4との間に架け渡されたベルト7も、フィルム3と共に、軸4から繰り出される。
【0047】
そして、軸4を介して駆動機5の荷重がベルト7によって支持されているので、フィルム3を巻取り又は繰り出しする際にも、フィルム3に駆動機5の荷重が作用するのを抑制できる。
【0048】
なお、制御盤は、駆動機5のモータの回転方向だけでなく回転時間も制御できるので、開口部2の開口量も任意に調節できる。
【0049】
前述したように、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aは、軸4の上方でビニールハウス1に着脱自在に取付けられるベルト保持金具6と、ベルト保持金具6と軸4とに架け渡され駆動機5の荷重を支持するベルト7とを備え、ベルト保持金具6が、ベルト7の任意の位置を保持可能とされている。
【0050】
この構成によると、ビニールハウス1に設けられたビニールシート定着用のフレーム材F1の溝にベルト7を挿入することなく、ベルト7の上端側を、ベルト保持金具6を介して、ビニールハウス1に取付けできる。そのため、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aでは、従来のように、ビニールハウスのシートや防虫ネットなどがばねを介して定着されているフレーム材の溝にベルトを強引に挿入する必要がなく、ベルト7をビニールハウス1に容易に取付けることができる。
【0051】
また、ビニールハウス1に着脱自在に取付けられたベルト保持金具6を介してベルト7をビニールハウス1に取付けているので、ベルト7の取付け後にベルト7の荷重支持長を調節する場合であっても、従来のように軸や駆動機の荷重を支えながら、一度ばねをフレーム材の溝から外して、フレーム材に取付けられるベルトの位置を調節してから、再度ばねを挿入するといった面倒な作業が必要なくなる。そのため、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aでは、ベルト7の荷重支持長の調節が容易となる。
【0052】
また、本実施の形態では、ベルト保持金具6が、水平方向に並べて設けられた複数の取付孔6a,6aを有している。この構成によると、複数の取付孔6a内にフック11b,11bを通したり、ビスを通したりしてビニールハウス1へ取付けできるので、ベルト保持金具6にベルト7を介して荷重が作用しても、ベルト保持金具6は水平姿勢を維持でき、ベルト7を安定支持できる。なお、本実施の形態では、取付孔6aの数は2つとされているが、3つ以上であってもよい。
【0053】
また、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aは、ビニールハウス1において軸4の上方で横方向に架け渡され開口の幅が狭く形成された溝を有するフレーム材F1に着脱自在に取付けられる取付金具11を有し、取付金具11は、フレーム材F1の溝に挿入されると弾発力を発揮してフレーム材F1に定着される定着部11aと、定着部11aからフレーム材F1の溝の開口を通じて突出し水平方向に並べて配置されるとともに各取付孔6a,6aに挿通可能な複数のフック11b,11bを有している。
【0054】
この構成によると、ビニールハウス1にフック11b,11bを容易に設けることができる上、ベルト保持金具6の取付孔6a,6aにフック11b,11bを挿通するだけで、ベルト保持金具6をビニールハウス1に容易に取付けできる。ただし、取付金具11の構成は、ビニールハウス1にフックを設けられるものであれば、上記構成には限定されず、例えば、フレーム材F1を挟持可能な金具にフックを設けるようなものでもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、各取付孔6aは、横向きに広がる角丸長方形に形成されているが、取付孔6aの形状は、特に限定されず、円形やその他の形状であってもよい。ただし、少なくとも一方の取付孔6aが横方向に幅が広い長孔とされていると、ビニールハウス1に設けられるフック11b,11bの間隔が寸法誤差などによって、多少異なっていても、ベルト保持金具6をフック11b,11bに引掛けることができる。
【0056】
また、本実施の形態に係るベルト保持金具6は、ビニールハウス1に鉛直に沿う姿勢で取付けられた状態で、上下に平行に並べて配置される一対のロッド部6d,6eを有し、上方のロッド部6dは、下方のロッド部6eよりもビニールハウス1を背にして正面から見て前方に配置されている。
【0057】
この構成によると、ベルト7をベルト保持金具6の正面から見て後方側から上方のロッド部6dに巻き付けて折り返しつつ、上方のロッド部6dと下方のロッド部6eの間に通してから、ベルト保持金具6を鉛直に沿う姿勢に配置すると、ベルト7がベルト保持金具6に保持されるため、ベルト保持金具6にベルト7を容易に保持させることができる。さらに、ベルト保持金具6の下側をビニールハウス1から離間させる方向に傾けると、ベルト7を折り返し部分又は下端側から引っ張るだけで、ベルト7の荷重支持長を容易に調節することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、上方のロッド部6dは、下方のロッド部6eよりもビニールハウス1を背にして正面から見て前方に配置されているが、各ロッド部6d,6eは、ビニールハウス1を背にして正面から見て互いに前後にずれて配置されていればよいので、上方のロッド部6dを、下方のロッド部6eよりもビニールハウス1を背にして正面から見て後方に配置するようにしてもよい。
【0059】
ただし、ベルト保持金具6は、ベルト7の任意の位置を保持できるようになっていれば、本実施の形態の構成には限定されず、例えば、ローラーバックルの機構の様にベルト7を挟み込んで保持する構成としてもよい。
【0060】
また、本実施の形態に係るフィルム開閉装置Aは、ベルト7を間に挟みつつ軸4を抱持して軸4とベルト7を連結するクリップ12を有し、軸4とベルト7の間に滑り止めシート13を介装している。
【0061】
この構成によると、軸4とベルト7の間に生じる摩擦が大きくなるため、軸4とベルト7が直接当接する場合に比べて、ベルト7が引っ張られてもずれ難くなっている。なお、本実施の形態では、滑り止めシート13は、ゴム製のシートとされているが、軸4とベルト7の間に生じる摩擦が大きくなるようなものであれば特に限定されず、例えば、表面が粗面なシートであってもよい。
【0062】
また、ここで、開口部2を開閉する際のフィルム3とベルト7の単位時間当たりの巻上げ量及び繰り出し量は、それぞれ、軸4におけるフィルム3とベルト7が装着されている部分の径の大きさに依存する。そのため、軸4におけるフィルム3とベルト7が装着されている部分の径の差が大きい場合、例えば、軸4におけるベルト7が装着されている部分の径が、フィルム3が装着されている部分の径よりも大きい場合には、開口部2の開閉時に、ベルト7がフィルム3よりも多く巻上げ又は繰り出しされて、軸4が傾いてしまう恐れがある。
【0063】
これに対し、滑り止めシート13は、シート状であって非常に薄くすることができるため、滑り止めシート13を軸4とベルト7の間に介装しても、軸4におけるベルト7が巻き付けられる部分の径の大きさはほとんど変わらない。そのため、軸4におけるフィルム3が装着される部分とベルト7が装着される部分の径の大きさにほとんど差が生じず、滑り止めシート13を介装しても、開口部2の開閉時に軸4が傾いてしまうのを防止できる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0065】
1・・・ビニールハウス、2・・・開口部、3・・・フィルム、4・・・軸、5・・・駆動機、6・・・ベルト保持金具、6a・・・取付孔、6d、6e・・・ロッド部、7・・・ベルト、11・・・取付金具、11a・・・定着部、11b・・・フック、12・・・クリップ、13・・・滑り止めシート、A・・・フィルム開閉装置、F1・・・フレーム材