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特許7311160ドライアイ症候群を診断及び処置する方法及びヒトの眼を処置するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ドライアイ症候群を診断及び処置する方法及びヒトの眼を処置するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/54 20060101AFI20230711BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230711BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230711BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230711BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61K36/54
A61K36/185
A61P27/02
A61K47/44
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/107
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020508983
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018046918
(87)【国際公開番号】W WO2019036625
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】62/547,553
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519055711
【氏名又は名称】アクリビスタ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AKRIVISTA,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィットカップ、スコット
(72)【発明者】
【氏名】オレイニク、オレスト
(72)【発明者】
【氏名】ガースト、マイク
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ、ピーター エイ.
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520210(JP,A)
【文献】特表2014-528452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0174000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/33-33/44
A61K 31/00-31/327
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための組成物において、
水と、
アボカド油を0.05重量%~0.5重量%にて含有し、ヒマシ油を0.05重量%~0.5重量%にて含有する疎水性構成要素と、を含有する、組成物。
【請求項2】
さらに、ホホバ油、ティーツリー油、ココナツ油、オレウロペイン、綿実油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、アマニ油、菜種油、ティーツリー油、アルガン油、ダイズ油、オリーブ油、キャラウェイ油、ローズマリー油、ペパーミント油、ヒマワリ油、ユーカリ油、ベルガモット油、フェンネル油、ゴマ油、メントール油、ヤクヨウニンジン油、ナツメ油、オクラ油、及び任意の2種以上の混合物のうちの少なくとも1つからなる群から選択される油を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
等張剤、粘度増強剤、及び界面活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記等張剤は、アルカリ金属の塩化物、ヒアルロン酸塩、アクリル酸塩、及びグリセリンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記粘度増強剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボポール(登録商標)カルボマー、Pemulen(登録商標)カルボマー、Noveon(登録商標)カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ヒアルロン酸のアルカリ金属塩、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、ポリオキシル40ステアレート、及びポリオキシル40水素化ヒマシ油からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記等張剤の構成要素はグリセリンを含有し、前記粘度増強剤はPemulen(登録商標)カルボマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、前記界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
殺生物剤をさらに含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記殺生物剤は、塩化ベンズアルコニウム(BAK)、塩化ベンゼトニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、フェニル水銀塩、過ホウ酸ナトリウム、クロロブタノール、ヘキセチジン、安定化されたオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))、及び安定化されたチメロサールからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
グリセリン、Pemulen(登録商標)カルボマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、及び塩化ベンズアルコニウムを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
0.05重量%~0.1重量%のアボカド油と、1重量%のグリセリンと、Pemulen(登録商標)カルボマーと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤と、0.005重量%の塩化ベンズアルコニウムを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ヒマシ油を0.05重量%~0.1重量%にて含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
1.3センチポアズ~8センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
4センチポアズ~100センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
100センチポアズを超える粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための組成物において、
水と、
0.05重量%~0.5重量%のアボカド油と、0.05重量%~0.5重量%のヒマシ油とを含有する疎水性構成要素と、を含有し、
前記組成物は、a)1.3センチポアズ~100センチポアズ、及びb)100センチポアズを超える数値から選択される粘度を有する、組成物。
【請求項17】
等張剤、粘度増強剤、及び界面活性剤をさらに含有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記等張剤の構成要素はグリセリンを含有し、前記粘度増強剤はPemulen(登録商標)カルボマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、前記界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤を含有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
1重量%のグリセリンと、0.05重量%~0.002重量%のPemulen(登録商標)カルボマーと、0.2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、0.05重量%~0.4重量%のポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤と、0.005重量%の塩化ベンズアルコニウムを含有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性構成要素は0.05重量%~0.5重量%の範囲にて存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物において、
水と、
0.05重量%~0.5重量%のアボカド油と、0.05重量%~0.5重量%のヒマシ油とを含有する疎水性構成要素と、を含有し、
前記眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物は、a)4センチポアズ~100センチポアズ、及びb)100センチポアズを超える数値から選択される粘度を有する、眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物。
【請求項22】
等張剤、粘度増強剤、及び界面活性剤をさらに含有する、請求項21に記載の眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物。
【請求項23】
前記等張剤の構成要素はグリセリンを含有し、前記粘度増強剤はPemulen(登録商標)カルボマーを含有し、前記界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤を含有する、請求項22に記載の眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物。
【請求項24】
エマルションからなる、請求項21に記載の眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物。
【請求項25】
ドライアイの治療のための薬剤として有効であるように眼瞼の処置のために調剤されている、請求項21に記載の眼瞼の皮膚用スキンケア用組成物。
【請求項26】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための眼瞼の皮膚用化粧用調剤において、
水と、
0.05重量%~0.5重量%のアボカド油と、0.05重量%~0.5重量%のヒマシ油とを含有する疎水性構成要素と、を含有し、
前記眼瞼の皮膚用化粧用調剤は、a)1.3センチポアズ~100センチポアズ、及びb)100センチポアズを超える数値範囲から選択される粘度を有する、眼瞼の皮膚用化粧用調剤。
【請求項27】
前記眼瞼の皮膚用化粧用調剤は、アイライナー、アイシャドー、及びマスカラからなる群から選択される化粧品として有効である、請求項26に記載の眼瞼の皮膚用化粧用調剤。
【請求項28】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための医薬品の製造に用いる、請求項1~20のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項29】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための人工涙液組成物の製造に用いる、請求項1~20のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項30】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための皮膚処置のための組成物の製造に用いる、請求項1~25のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項31】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための眼瞼処置のための組成物の製造に用いる、請求項1~25のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項32】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための化粧品組成物の製造に用いる、請求項1~25のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項33】
ヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に処置され、ドライアイ症候群の愁訴があるヒトの眼又は眼瞼の皮膚表面に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するための化粧品組成物の製造に用いる、請求項26又は27に記載の眼瞼の皮膚用化粧用調剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼におけるドライアイ症候群(DES)を診断及び処置する方法、及び診断されたドライアイ症候群を処置するために設計された組成物に関する。より詳細には、本発明は、ヒト患者がドライアイ症候群を有するかどうかを決定して、そうであれば、患者の一方の眼又は両方の眼におけるドライアイ症候群の程度又は重症度を決定するために試験する工程と;眼における薬物療法を用いるドライアイ症候群の処置に影響し得る、どのくらいの感受性及び/又は他の問題を患者が有するかについて患者を問診する工程と;試験及び問診に基づいて、患者のドライアイ症候群を処置するための処置組成物を提供する工程とを含む方法に関する。「処置組成物」により、ドライアイ症候群の症状及び/又は原因を軽減することに役立つ処置として開発された局所眼科製剤が意味される。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ症候群(ドライアイ疾患ともいわれる)又は単にドライアイは、ヒトにおける比較的普通の苦痛であり、人が眼に潤滑及び栄養を与えるために十分な品質の涙液を有しない状態である。涙液は、眼の前の表面の健康を維持するために、及び明確な視力を提供するために必要である。眼瞼の各瞬目で、涙液は、角膜に全体にわたって広がる。涙液は、潤滑を提供し、眼の感染のリスクを低下させ、眼中の外来物を洗い去って、眼の表面を平滑及び透明に保つ。眼中の過剰な涙液は、眼瞼の内隅にある小さい排液管(涙管)に流入して、鼻の後部に流れ出る。
【0003】
ドライアイを罹患している人は、涙液の産生が少なすぎることもあり及び/又は彼らの涙液が正常な組成を有しないこともあり、すなわち、例えば、涙液の品質(pH、粘度、張性又はタンパク質もしくは脂質含有率)が、正常範囲の値から変化していることもある。これらの変化は、年齢、手術、種々の病態の結果に基づいて、又は薬物療法の副作用として起こることもある。
【0004】
ドライアイは、涙液の産生及び排液が均衡しない場合に起こり得る;しかしながら十分な涙液量を欠くことが、ドライアイ疾患の唯一の原因である。過少の涙液は、風及び乾燥気候などの環境の条件への露出によって引き起こされる蒸発にも基づき得て、涙液中における十分な脂質の欠如により悪化し得る。眼の表面の炎症又は他の刺激は、慢性ドライアイから生じ得るか又はドライアイ疾患をもたらし、抗炎症性薬物及び抗炎症活性を有する薬剤もドライアイを処置するために使用することができる。
【0005】
涙液は、外側の油層、中部の水層、及び内側のムチン、涙液タンパク質を含有するタンパク質層の3層で作られている。油層は、水層の蒸発の防止を助け、及び内部粘液層上のムチンは、涙液が角膜上に均一に広がることを助ける。これらの層のいずれの欠損も、涙液があまりに速やかに蒸発するか又は角膜全体にわたって均一に広がりそこなう原因になり得る。ドライアイの最も普通の形態は、水層が不適切な場合に生じ得て;この状態は角結膜炎乾燥症と呼ばれる。
【0006】
ドライアイは、特に高齢の成人に普通の、及びしばしば慢性の問題であり、比較的広い範囲の眼の問題を生じ得る。処置しないで放置するならば、例えば、眼における比較的小さい眼の刺激、砂のような、引っかかるか又は焼けるような感じ、過剰な出涙(刺激に対する応答で)、ぼやけた視力、及び、角膜に対する永久的損傷が起こり得る。
【0007】
ドライアイに対する処置は、眼中における涙液の正常量を回復させるか又は維持して、乾燥及び関係する不快感感を最少化して眼の健康を維持することを一般的に目指す。
特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4には、眼科組成物が記載されている。非特許文献1には、涙液中における表面張力が記載されている。
【0008】
眼の不快感は、比較的普通のことであり、ドライアイ症候群(DES;ときにはDED(ドライアイ疾患)と呼ばれる)以外の状態からも生じ得るので、不快感の原因及び不快感を引き起こす状態の程度(又は重症度)を決定するために、患者の涙液の量及び品質の評価を含む試験が行われることは重要である。多くの場合に、このタイプの試験は行われない。しばしば、眼の不快感に悩む人は、悩まされる眼(単数又は複数)に汎用の人工涙液点眼剤を点眼することにより自己処置する。たとえ、人工涙液がドライアイを処置するために有用であると確認されていても、そのような汎用の人工涙液は、特定の患者を処置するために有効でないこともあり、及び/又は刺激的で、不快であり、及び/又は特定の患者により必要とされる涙液の必要な品質を適切に目指すことに成功しないこともある。
【0009】
眼科医学の社会で広く奉じられているドグマは、徴候及び症状に基づく患者の涙液の測定可能なパラメーターは、ドライアイ症候群の重症度又は治療に対するその応答を示さないということである。結果として、「試行錯誤」手法を使用してドライアイ疾患を処置することが、一般的に慣行であり、処置医学的な専門的処方又は人工涙液製剤又は眼瞼バルム剤などの処置組成物を薦めて、それから後日結果を査定して、同じ処置組成物を続けて薦めるか、又は有益な結果が観察されるか又は患者により報告されるまで、異なる処置組成物を試みるかのいずれかである。例えば、患者のドライアイ疾患が重症であれば重症であるほど、処置組成物はより粘稠であるべきであると、一般的に考えられてきた。それ故、個々の患者を基準にしたドライアイの処置のための系統的及び論理的方法は、利用可能でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願第3266446号公報
【文献】米国特許公開第2016/0143977号公報
【文献】米国特許第9,314,528号明細書
【文献】米国特許第8,957,048号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】ティファニー(Tiffany),J.M.,Arch.Soc.ESP Oftalmol,2006;81:363-366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人らは、この問題を本願明細書に記載されるように解決して、この見解が誤りであること、及びドライアイ疾患は、個々の患者の症状及び涙液の品質、及び、限定されないが:屈折率、表面張力、比重、粘度、涙液膜破壊時間、等張性及びpHのような患者の涙液の測定可能パラメーターの査定に、少なくとも部分的に基づいて処置することができることを、ここで示す。本発明は、そのようなパラメーターの予測の集合の査定に部分的に引かれる発明であり、これらのパラメーターを含む患者のデータに基づく、個々の患者における特定化されるドライアイ症候群を有効に処置することができる組成物の製剤である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願においては、特に断りのない限り、特許請求の範囲を含む本願明細書に明記される各々及びあらゆる範囲の値(濃度、粘度等)は、終点(単数又は複数)だけでなく範囲全体を特に含むことを意図されている。例えば、0から10であると明記された範囲は、0と10の間の全部の数、例えば、1、2、3、4、その他、0と10の間の3桁の有効数字までの全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、その他、及び終点0及び10を開示することを意図される。化学的置換基と関連する範囲、例えば、「C1からC5の炭化水素」なども、特定してC1及びC5の炭化水素ならびにC2、C3、及びC4炭化水素を含み及び開示することを意図されている。
【0014】
ドライアイ症候群(DES)を診断及び/又は処置する新しい方法、及びドライアイ症候群により悩まされるヒトの眼を処置するための人工涙液組成物が発見された。そのような方法及び組成物は、適当なセットの増大した処置の選択肢を提供することで、実質的に総合的な効力を提供して、より望ましい処置的効果を生じた。それに加えて、現行の方法及び組成物を利用する他の重要な利益が得られる。例えば、患者の安全性及び快適性が増強される。
【0015】
特に、本発明の方法は、本発明の方法を使用して、副作用及び/又はアレルギー反応の低下したリスクを提供する。処方する医師などの医療提供者は、人工涙液処置組成物を、それらの涙液品質が異なる一連の別様に製剤化された選択肢から有利に選択することができて、したがって、特定の、異なる患者及び患者亜集団を処置することにおいて有用な人工涙液組成物を処方又は提供することにおける増大した柔軟性を提供される。本発明の方法は容易に実行することができる。
【0016】
それに加えて、本発明の組成物は、異なる人工涙液製剤の選択肢のセットとして便利に提供されることが可能で、処方者がこれらの最も適当な、例えば、処置される特定の患者による使用のために最も有効な及び適合性の組成物の中から選択することを可能にする。
【0017】
さらに、ドライアイ症候群は、眼瞼炎、眼瞼の内側のスケール形成(scaling)、刺激又は感染などの眼瞼の状態から生じ得る。したがってある例では、本発明は、処方者が、これらの中から最も適当な、例えば、患者の視力及びDESの症状の査定に基づいて、処置される特定の患者による使用のために、最も有効な及び適合性の組成物を選択することを可能にする、異なるドライアイ処置製剤の選択肢のセットを目指す。この場合に、ドライアイ処置製剤の選択肢は、「人工涙液」に限定されなくてもよく、バルム剤、眼及びファンデーションのメイキャップ、乳剤、及び典型的な人工涙液よりも大きい粘度を有する他の局所製剤を含むこともできる。したがって、幾つかの例では、より粘稠な眼のバルム剤、ローション剤、又は同様な組成物が、直接眼瞼に適用されてもよい。本出願人らは、本発明の組成物のある粘度増強構成要素が、そのような構成要素の眼の局所投与について普通の快適性又は寛容限界よりかなり下の十分ゆとりのある粘度を提供することができることを発見した。それに加えて、高粘度バルム剤、ローション剤等が、好適には、可能ならば、それらが眼瞼から眼表面に広がったときに、ぼやけを低下させるか又はなくすような程度の透明度及び屈折率を有するように製剤化される。好適には、高粘度の組成物は、患者の涙液による希釈により、又は(温度感受性の粘度増強ポリマー構成要素を有する組成物で)眼瞼の上又は下のそれらの設置位置と比較した温度における変化により、眼表面における粘度を低下させることができる。
【0018】
カルボポール(登録商標)タイプポリマー、Noveon(登録商標)タイプポリマー、及びPemulen(登録商標)タイプポリマーなどの幾つかの粘度増強構成要素は、それらが皮膚表面に対してよく付着することも可能にする負電荷を有する。本出願人らは、これらの化合物が、多くの他の粘度増強構成要素より約5倍低い水中油もしくは油中水の濃度で又は約10倍低い油中水の濃度で、及び1%(w/v)未満、又は0.5%(w/v)未満、又は約0.25%(w/v)未満、又は約0.2%(w/v)未満、又は約0.15%(w/v)未満、又は約0.1%(w/v)未満、又は約0.05%(w/v)未満、又は約0.02%(w/v)未満、又は約0.01%(w/v)未満の濃度で油を有するエマルションで使用され得ることを見出した。
【0019】
一般的に、人工涙液は、好適には、約2ミリパスカル・秒(mPa・s)(2センチポアズ(cP))から約8mPa・s(8cP)の範囲内に粘度を有するが、エマルションは、典型的には、約1.2mPa・s(1.2cP)から約250mPa・s(250cP)、又は約4mPa・s(4cP)から約100mPa・s(100cP)の範囲内に粘度を有する。ゲル及び軟膏(例えば、眼瞼の炎症、スケール形成、眼瞼炎の処置のための眼瞼調合剤、又は眼瞼上又はその付近で適用されるメイキャップ調合剤で使用され得るものなど)は、約100mPa・s(100cP)から約2000mPa・s(2000cP)又はそれを超える範囲に粘度を有することもできる。
【0020】
簡単に説明すると、現行の方法及び組成物は、関与するヒト患者の特定の必要及び懸念を確認することにおける実質的に全般にわたる有効度を提供して;各患者のために申し分なく適した組成物を提供することにより、必要性及び懸念に取り組む。
【0021】
本発明の一態様において、現行の方法は、ヒト患者におけるドライアイ症候群を診断及び処置することを包含する。そのような方法は、徴候及び症状を査定することを含む。「症状」は、疾患に冒された個体により自覚的に経験される現象であるが、「徴候」は、疾患により冒された個体以外の誰かにより他覚的に検出され得る現象である。
【0022】
したがって、例えば、患者の涙液を試験して、涙液量及び品質及び特定の患者がドライアイ症候群を有するかどうかを決定することが、徴候の査定である。患者に、感受性、例えば、不快感、アレルギー疾患、その他の存在、度合い、又は程度、及び/又は患者がドライアイ症候群の処置に関して有する1種又は複数の他の問題、例えば、点眼剤、例えば、患者の眼中に点眼される薬が添加された点眼剤を有することについて問診することが、症状の査定を構成する。
【0023】
ドライアイ症候群を検出するための診断方法を標準化することについて、種々の方法が議論されてきた。したがって、the Tear Film and Ocular Surface Society (TFOS) Dry Eye Workshop(「DEWSΠ」)の報告(ジェイ.エス.ウォルフゾーンら(J.S.Wolffsohn et al.),The Ocular Surface xxx544-579(2017)を参照されたい)は、ドライアイ疾患(DED)の診断は多くの因子からなり、「ゴールドスタンタード」と考えられる単一の試験はないことを示す。本出願人らは、ドライアイ疾患の臨床的診断が症状及び徴候の両方の査定を含むことを提起する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
症状
「症状」は、眼表面疾患指数(OSDI(著作権))などの患者質問事項を使用して査定することができる;シッフマン、アール.エム.ら(Schiffman,R.M.,et al.)、Arch.Ophthalmol.118:615-621(2000)を参照されたい。OSDI(著作権)(著作権、1995 アラガン社(Allergan社))が、現在最も広く使用されている質問事項である。ドライアイ質問事項(質問事項(DEQ)(バーグレイ,シー.ジー.ら(Begley C.G.,et al.)、Cornea,21:664-670(2002)及びIDEEL(アベツ エルら(Abetz L.et al.),Health Qual.Life Outcomes,9:111(2011)を参照されたい)などの他の調査も、乾燥、ざらつき、異物感、羞明、その他などの個々の症状についての視覚的アナログスケールと一緒に使用することができる。大部分の調査は、数種のこれらの個々の症状に対するスコアを合計して、総合的スコアを得る。視覚的障害及び視覚的機能(それはより定量的であり得る)についての試験も使用される。
【0025】
OSDIなどの質問事項が、患者の症状を推定するために普通に使用されるが、「1から10のスケールで、あなたの眼の不快感はどのくらい重症ですか?」などの質問を一般的に有するような質問事項は、異なる人々による異なる解釈を許す。例えば、ドライアイ疾患は、普通に夕方に最も重症であり午前にはそれほど重症ではない。それ故、質問が午前に尋ねられるだけであれば、症状は、低目に報告され得る。重要なこととして、不快感は、幾人かの患者では散発的に起こり得るが、それに対して、それは他の人々では、持続し得る。毎日、終日にわたって起こる中程度の不快感は、数ヶ月に1回2~3秒続く重症の疼痛よりも問題であり得る。質問の変化する解釈についてのこの傾向は、ドライアイ疾患の存在及び重症度についての症状の質問事項に基づく決定の低い対応の一因となり得る。
【0026】
その結果、本出願人らは、ドライアイ疾患の存在又は重症度を診断するために、対象者から症状を集める目的のために使用される調査及び質問事項は、報告された結果が何時起こるかを決定するために、時間の経過順の構成要素を有することが重要であると考える。
【0027】
したがって、理想的な質問事項は、「あなたの眼はどのように多くの時間、ひりひりするか又は煩わしいですか?」のような時間経過の質問を含有することができるか、又は臨床医又は医療専門家は、「過去4時間にわたって、あなたの眼はどのようにひりひりしたか又は煩わしかったですか?」などの質問を尋ねることにより、一定期間にわたる症状を推定することができる。
【0028】
刺す、焼ける、光感受性、ざらつきなどの特定の症状が質問され得る。しかしながら、症状は、患者によって及び時間によって変化するので、「あなたの眼はどのようにひりひりするか又は煩わしいか」などのより一般的な症状の質問の方が、疾患の重症度を予測し得る。
【0029】
時間経過の症状のデータは、非一時的な症状データと組み合わされるべきである。例えば、総合的非一時的症状データの合計に、総合的時間経過の症状データの合計を掛けて、総合的スコアを得ることができる。あるいは、本発明では、好適には、非一時的症状データのスコアの合計を一時的症状データのスコアの合計に加えて、総合的スコアを得ることもできる。
徴候
徴候は、DESの重症度の存在に関係のある種々のパラメーターから選択することができる。
【0030】
涙液膜安定性は、涙液破壊時間(TBUT)及び涙液膜蒸発速度により測定することができる。TBUTは、例えば、マイクロピペット又はフルオレセインが含侵された細長い紙片を使用してフルオレセイン色素を注入することにより、視覚で決定することができる。細長い紙片で注入される体積を制御することは困難なこともあるので、狭い(1mm)細長い紙片の使用及び乾燥滅菌アプリケーターの使用が提案されている。涙液膜安定性は、反射されるパターンの歪みを測定することにより、又は分布図及びOculus(商標)デバイスなどの進歩した外撮像を測定することができる自動化されたデバイスを使用することにより決定することもできる。
【0031】
蒸発は、それを直接又は間接的に決定するための少数の非常に簡単なデバイスが利用可能であるにも拘らず、臨床診療でルーチン的に測定されてはいない。例えば、涙液膜の蒸発は、眼表面の冷却を生じさせて、赤外サーモグラフィーが眼表面の温度を、非侵襲的様式で測定することができて、他覚的定量的出力を提供する。
【0032】
涙液の体積は、光干渉トポグラフィー(OCT)を使用するメニスコメトリー、フェノールレッド糸試験、又は種々のバージョンのシルマー試験で査定することができる。
涙液膜組成物は:
a)疾患重症度と共に一般的に上昇する涙液膜の容量オスモル濃度の決定。
【0033】
b)ガラスの顕微鏡スライド上で乾燥された涙液が、健常眼ではコンパクトで密であるが、見えないか又は断片化していれば疾患の眼である、特徴的な「シダ様」結晶パターンを形成する涙液シダ化試験。
【0034】
c)炎症のマーカー(MMP-9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)、ラクトフェリン、サイトカイン及びケモカイン、HLA-DR(ヒト白血球抗原-抗原Dが関係する))を推定する種々の分析方法。
を使用して査定することができる。
【0035】
眼表面の損傷は、多くの異なる生体染色の染料(フルオレセイン、ローズベンガル、リサミングリーン)、及びスコアリング方法(例えばDEWS IIは5通りの異なる染色スコアリング方法をリストにしている)を使用して査定することができる。
【0036】
眼瞼:マイボーム腺は、機能について査定され、種々の方法により撮像され得る。マイボーム腺の機能不全は、ドライアイ疾患の一部である;正常では、マイボーム腺は、マイバムという涙液蒸発を防止する油性物質を分泌する。
【0037】
DESを診断して特徴づける追加の革新的な方法は、Association for Research in Vision and Ophthalmologyの2018年のミーティング(「ARVO2018」)で進歩した。例えば、モリーナら(Molina et al.)は健常患者及びDEDを有する患者の眼の表面におけるマイクロバイオームのメタゲノムの分析を実施して論じた。結果は、健常対象者をこれらのDESを患う患者と識別する微生物フローラにおける分類学的差異を決定することができた。モリーナら(Molina et al.)、「DEDの眼の表面における微生物の種(microbiome)のメタゲノムの分析(Metagenomic analysis of microbial species (microbiome) on the surface of the eye in DED)」、ポスターボードB0078、抄録No.900-B0078 ARVO 2018ミーティング、ハワイ州ホノルル(2018年4月29日)。
【0038】
フォーティンベリーら(Fortinberry et al.)は、ドライアイ疾患と関連する眼表面炎症を制御する可能性を有する、対象者の涙液中の細胞外小胞からのマイクロRNAの単離及び配列決定について報告している。フォーティンベリーら(Fortinberryet al.),「眼の炎症性状態に関連する、眼表面から放出された小胞からのRNA分析(RNA analysis from microvesicles released from the ocular surface-relating to inflammatory state of the eye)」、ポスターボードB0088、抄録、No.910-B0088ARVO 2018 Meeting、ハワイ州ホノルル(2018年4月29日)。
【0039】
バーグら(Berg et al)は、引き出された抄録「チップ上のラボ」で、蛍光免疫測定及び約100nlの試料体積を使用して、8段階の試料レベル(0、25、409、100、250、500、及び1000ng/ml)にわたるドライアイ患者集団におけるDESのためのバイオマーカーとして、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の分析性能を評価する免疫測定を記載した。バーグら(Berg et al.),Nanoliter Lab-on-a-Chip Immunoassay Platformにおける定量的MMP-9涙液分析の分析性能(Analytical Performance of a Quantitative MMP-9 Tear Fluid Analysis on a Nanoliter Lab-on-a-Chip Immunoassay Platform)、ポスターボードB0117、抄録、No.939-B0117 ARVO2018 Meeting、ハワイ州ホノルル(2018年4月29日)。
【0040】
フアンら(Huang et al.)は、DESの存在の表示としての涙液膜中のリンホトキシンα(LTA)のレベルを測定する方法を記載している。フアンら(Huang et al.),DEDにおいて低下した涙液膜中のリンホトキシンα(LTA)の測定(Measurement of lymphotoxin alpha (LTA) in tear film - reduced in DED)、ポスターボードB0133、抄録No.955-B0133 ARVO 2018 Meeting、ハワイ州ホノルル(2018年4月29日)。
【0041】
フルクス,ゲイリー エヌ.(Foulks、Gary N.)及びプフグフェルダー,ステファン シー.(Pfugfelder、Stephen C)(Am.J.Ophthalmol.157:6 1122-1129(June 2014))は、以下の表で報告した、DESと相関するバイオマーカーを確認する新しい手法及び処置に対する応答を概説している:
【0042】
【表1】
典型的マトリックス
粘度は、患者の許容性と反比例する涙液(人工涙液製剤を含む)の物理的性質である。粘度が高いほど視力がぼやける傾向があり、高度に粘稠な人工涙液製剤は、「べたべたして」不快に感ずる傾向がある。これらの品質は両方とも、特許承諾を低くする傾向があり、そのことは、製剤がどのように良く治療的に機能し得るかと関係なく逆効果であり;そうでなければ有効な治療剤の治療的価値は、患者がそれを使用しようとしないならば不適切である。
【0043】
本出願人らは、人工涙液の患者の許容性は、その透明性(すなわち、580nmにおける光の透過率、パーセント)と直接比例することも発見した。天然屈折率に近い透明に見える人工涙液製剤は、ぼやけた視力及び視覚的障害と関連する傾向がある、曇った透過率の低いエマルションよりも、患者に許容される。
【0044】
さらに、治療的治癒効果は、粘度に比例して、及び表面張力に反比例する。この理由は、粘度がより高い人工涙液は、眼表面に、より有効に付着する傾向があり、したがって眼表面を乾燥効果から保護して、それにより治癒を促進するからである。より低い表面張力は、涙液調合剤がより有効に広がることを可能にする。脂質含有率における増大(ある油の添加によるなど)は、表面張力を低下させ得て、それにより涙液の広がりやすさを増強する。油、油の混合物、又は他の涙液構成要素が抗炎症性効果を有する場合に、この増強された広がりやすさは、それにより増強された抗炎症性効果を提供することができる。
【0045】
典型的な方法で、フルオレセイン、ローズベンガル、リサミングリーン及び/又は他の染料を用いる眼表面染色は、ブロンら(Bron et al.,)の、他のドライアイ試験の情況における角膜及び結膜染色の等級付け(Grading of Corneal and Conjunctival Staining in the Context of other Dry Eye Tests) Cornea 22(7)640-=50(2003))(そこで1~5のスケールが提案されている)により記載された、診断試験及び枠組みなどの(又はそれに基づく)標準的スケールを使用して測定され得る。
【0046】
又は一般に、眼表面染色を使用することもある。
症状
0~10のスケールで
あなたの眼は、どれほどひりひりするか又は煩わしいのですか?
0=全くひりひりしないし煩わしくない
10=ひどくひりひりするし煩わしい
0~10のスケールで
日中及び夜間中にどれだけ、あなたの眼はひりひりするか又は煩わしいですか?
0=全くない
10=何時も一定で
症状のスコア=0~100の結果のスコアで重症度×時間
注:論じられたように、眼表面及び涙液に対する疾患マーカーの遺伝的試験又は査定が、徴候の重症度を定量するために使用され得る。
【0047】
本出願人らは、患者の症状及び疾患の重症度の徴候を査定することにより、患者の許容性が治癒の可能性と均衡するマトリックスを、独特の方法で現在活用している。患者の徴候の査定(角膜染色又は疾患重症度の他の他覚的尺度;それはマトリックスのY軸に沿って位置付けることができる)のまとめた結論は、低徴候重症度又は高徴候重症度のいずれかとして特徴づけられるが、それに対して、患者の症状の査定(それはマトリックスのX軸に沿って位置付けることができる)のまとめた結論も、低症状重症度又は高症状重症度のいずれかとして特徴づけられる。「まとめられた結論」により、複数の症状及び/又は徴候が査定されて疾患重症度の表示として等級付けられることが意味される。したがって、生じたマトリックスは;例えば、以下のように現れることができる:
【0048】
【表2】
したがって、4種の異なる人工涙液製剤が、このマトリックスに拠って作製され得る:
a)製剤Aは、低粘度、標準量の油、及び正常の表面張力を有して、快適性及び潤滑の両方を提供する。低い角膜染色を有する患者は、比較的正常な、完全な涙液膜を有して、それは、涙液膜の表面張力が比較的低いことを示す。ティファニーら(Tiffany et al.)、CUR.EYE RES.,8(5):507-15(May 1998)で、表面張力と非侵襲的涙液破壊時間(NIBUT)の間でドライアイ及び正常眼の両方について負の相関が見出された。この研究で、報告された平均の(+/-標準偏差)表面張力の値は、正常眼からの涙液については43.6+/-2.7ミリニュートン(N)/m、及びドライアイからの涙液については49.6+/-2.2mN/mであった。ドライアイからの涙液についての全てのNIBUT値は、20秒未満(8.9+/-5.1秒、平均+/-SD、n=35)であったが、それに対して、正常値の53%が30秒以上であった。
【0049】
b)製剤Bは、高い症状重症度及び低い徴候重症度に応答する人工涙液製剤である。低い徴候重症度は、涙液膜が比較的完全のままであることを示す。この製剤は、高めの粘度(それは、涙液膜が眼表面に付着することを助けることにより、NIBUTを増大させて増強された潤滑を提供することができる)、標準量の油、及び正常の表面張力を有する。
【0050】
c)製剤Cは、低い症状重症度及び高い徴候重症度に応答する人工涙液製剤である。この情況で、患者は、高度の眼の不快感又は視力機能障害を経験することはないが、他覚的な徴候は、患者がDESを患うことを示す。製剤は低粘度を有するが、高まった量の油(涙液膜の蒸発を防止するために)、及び正常の表面張力を有する。
【0051】
d)製剤Dは、高い症状重症度及び高い徴候重症度の両方に応答する人工涙液製剤であり、高粘度、高めの量の油及び正常より低い表面張力を有する人工涙液である。
e)それに加えて、a)測定涙液が340mOsms/Lを超える超容量オスモル濃度、又はb)臨床医により査定された約4秒以下の減少した涙液破壊時間のいずれかを有する患者のために、「製剤E」を、製剤Dの改変として利用可能にすることができる。製剤Eは、低容量オスモル濃度であり、高油濃度、高粘度及び低表面張力を有する。それに加えて、製剤Eは、表面保護剤を含有することもできる。
【0052】
透明性(580nmにおける透過率のパーセント)/Nが患者の許容性の尺度であり、N/STが治療効力の尺度である、そのような処置的組成物のセットの一例として、治療製剤の表示されたセットが作製されてもよい。
【0053】
【表3】
重要なこととして、同じベース製剤A~Eは、眼瞼乾燥及び眼瞼炎の処置のための局所「眼瞼涙液」製剤として使用するために、より粘稠に作製され得る。この目的のために、例えば、粘度増強剤(例えば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボポール(登録商標)、Pemulen(登録商標)、Noveon(登録商標)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEPPG)、ヒアルロン酸塩、例えばヒアルロン酸ナトリウムなど、及びポリビニルピロリドンなど、ただし、これらに限定されない)を製剤に添加して、製剤の粘度を増大させることもできる。
【0054】
これらの製剤は、眼表面に眼瞼潤滑剤として、及び投与されたときに、又は、眼瞼が薄いため、眼瞼の外部表面への適用を通して、眼瞼中に吸収される活性成分として適用されることもできて、この適用は、製剤が眼瞼に浸透して眼表面を内から処置することを可能にする。
【0055】
それに加えて、製剤A~E(及びそれらのより粘稠なバージョン)は、メイキャップのファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラなどの、ただしこれらに限定されない化粧品の部分として組み込まれ得る。治療的に有益な組成物は、皮膚(例えば、眼瞼、眼の周囲の皮膚、結膜、その他)に吸収されてDESの系及び徴候を緩和することに役立つであろう。そのようなメイキャップ組成物は、眼瞼の外部表面に適用されて(アイシャドー又はファンデーションのメイキャップなどで)、眼瞼に浸透することが可能にされて、この様式で眼表面を潤滑にすることができる。それに加えて、眼及び皮膚のメイキャップは、しばしば不注意で眼に入り、眼に刺激を起こさせ得るので、本発明は、ドライアイ疾患の処置のための治療用組成物を含有するメイキャップ組成物を提供して、それはこの刺激の幾つかを軽減するであろう。
【0056】
それ故、本発明の方法を使用して、患者の徴候及び症状のこの典型的マトリックス査定を使用することがわかる。この処置に基づいて、次に、患者の特定のドライアイ症候群を処置するために、及び粘稠な眼の薬物-例えば、異物感その他に対する寛容のために、本発明の組成物が、患者の眼で使用するために提供される。
【0057】
患者に提供される処置組成物は、一連の異なる組成物から選択される。異なる組成物は、各々、水及び疎水性構成要素、非常に好適には少なくとも1種の天然の油構成要素を含有する構成要素を含み、それは、ヒトの眼に入れられたときに、殺生物(抗真菌、抗寄生生物性抗ウイルス及び/又は抗菌)活性を有することができて有利である。
【0058】
一実施形態において、疎水性構成要素は、ホホバ油、それらの疎水性誘導体、アボカド油及びそれらの疎水性誘導体、オリーブ油及びそれらの疎水性誘導体、オレウロペイン及びそれらの疎水性誘導体、ティーツリー油及びそれらの疎水性誘導体、綿実油及びそれらの疎水性誘導体、ヒマワリ油及びそれらの疎水性誘導体、トウモロコシ油及びそれらの疎水性誘導体、アマニ油及びそれらの疎水性誘導体、菜種油及びそれらの疎水性誘導体、アルガン油及びそれらの疎水性誘導体、ヒマシ油及びそれらの疎水性誘導体、ダイズ油及びそれらの疎水性誘導体、キャラウェイ油及びそれらの疎水性誘導体、ローズマリー油及びそれらの疎水性誘導体、ペパーミント油及びそれらの疎水性誘導体、ヒマワリ油及びそれらの疎水性誘導体、ユーカリ油及びそれらの疎水性誘導体、ベルガモット油及びそれらの疎水性誘導体、フェンネル油及びそれらの疎水性誘導体、ゴマ油及びそれらの疎水性誘導体、ヤクヨウニンジン油及びそれらの疎水性誘導体、ナツメ油及びそれらの疎水性誘導体、オクラ油及びそれらの疎水性誘導体、ベルガモット油及びそれらの疎水性誘導体、メントール油及びそれらの疎水性誘導体、1種又は複数の他の天然油、1種又は複数の他の天然油の疎水性誘導体及び任意のこれらの油の混合物から選択される。
【0059】
「誘導体」により、組成物の化学的化合物が意味され、それは、言及された化合物と構造的に同様な部分であり、又はそれを含有する。したがって、この定義による「誘導体」は、ある情況で、言及された化合物に対する合成前駆体ならびにそれから誘導された化合物を含むことができる。
【0060】
好適には、本発明の治療用組成物は、アボカド油又はその誘導体を、単独又は別の天然油との組み合わせのいずれかで含む。さらにより好適な治療用組成物は、アボカド油とヒマシ油の組み合わせを含む。
【0061】
別の実施形態において治療用組成物は、ヒマシ油及び少なくとも1種の追加の油、例えば、ミネラル油又は植物に基づく油などを含む。
ある例では、疎水性構成要素は、抗炎症性及び他の有益な効果、例えば、
A)炎症性薬剤により誘発された浮腫の低下、好中球浸潤の低下、クロトン油により誘発された病理学的変化の低下又は改善、一酸化窒素(NO)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)放出の低下。例えば、種々の研究により、ホホバ液体ワックスの抗炎症活性が示されている。ハバシーら(Habashy et al.),Pharm Res.51(2):95-105(Feb.2005)。
【0062】
B)インターロイキン-lベータ(IL-1B)、TNF-α、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)及びインターロイキン-8(IL-8)の減少した遺伝子発現、減少したプロスタグランジンE2(PGE2)合成、及びアボカド/ダイズの不鹸化物及びエピガロカテキンガレート(ECGC)とのインキュベーション後のウマの手根骨接合部からの関節の軟骨細胞における核因子カッパベータ(NF-kB)の転座の阻害及びそれに続くTNF-アルファ及びIL-lベータによる活性化により示される変形性関節症モデルにおける抗炎症活性、オウンビーら(Ownby et al.),J.Inflamm.28(11):8(March 28,2014);
C)ウィスターラットで報告された切開及び摘出後の皮膚の創傷モデルにおける、アボカド油の向上した創傷治癒及び抗炎症活性。ド・オリベイラら(De Oliveira et al.),証拠に基づく補体(Evid. Based Complement).Internal.Med.,2013:472382(2013);
D)マイボーム腺機能不全及びドライアイ疾患に対して眼瞼に湿布で適用されたオメガ3-脂肪酸の抗炎症活性。トーデら(Thode,et al.)、Drugs 75(11):177-85(July 2015);
E)走鳥類(ダチョウ、アメリカダチョウ及びエミュー)の油及びティーツリー油が血液単核細胞の生存能力を低下させて、IFNγを阻害すると報告され、角化細胞の成長及び細胞増殖を低下させて、創傷の治癒を促進するように思われる。ベネットら(Bennett et al.),Pout.Sci.94(9):2288-96(September 2015);
F)オレウロペインの酸化抑制、抗炎症、抗菌及び抗ウイルス活性。シエド ハリス オマール(Syed Haris Omar)、Sci.Pharm.78(2):133-154(April-June 2010)
なども有することができて有利である。
【0063】
試験(又は査定)は、好適には、医療専門家、例えば医師、オプトメトリスト、眼科技術者、看護師、臨床看護師、医師の補助者又は他の医療専門家又は同等の訓練を受けた人により、又はその監督の下に実施される。
【0064】
試験は、患者がドライアイ症候群を有するか、検査下の患者に存在するドライアイ症候群の特性、及び、患者においてどのくらい重症の又は深刻な症候群であるかを決定する1種又は複数の試験を含むことが有利である。そのような処置は、検査下の患者を処置するために適当と思われる1種又は複数の処置組成物、例えば、バルム剤、乳剤又は人工涙液製剤を確認することもできる。
【0065】
試験は、患者の片方の眼又は両方の眼における涙液の量及び/又は品質ならびに患者の眼におけるこれらの涙液の効果に関する、少なくとも1つの決定、好適には複数の決定を含むことができる。例えば、試験は、患者の眼中における涙液の粘度、pH、張性及び/又は容量オスモル濃度、タンパク質(例えば、ムチン)含有率、屈折率、表面張力、比重、及び1つ又は複数の他の性質の1つ以上、又は2つ以上、又は3つ以上を決定するために実施され得る。そのような試験は、角膜染色、涙液破壊時間の決定、結膜の赤さの度合いの決定、及びシルマーの試験、及び患者の涙液の量及び性質を決定するために役立つ1種又は複数の他の試験を含むこともある。それに加えて、試験は、好適には、患者の眼におけるドライアイ症候群の程度又は重症度(重症度)の定性的評価を行うための、患者の眼の視覚的評価を含む。
【0066】
患者を、例えば、面接及び/又はDESの症状、例えば、存在する場合には、感受性及び/もしくは他の状態の度合いはどうかなど、ならびに/又は患者のドライアイ症候群の処置のコースに影響することがある、患者が有する問題、ならびに患者により過去に使用された任意の人工涙液製品の適合性もしくはそれらの不使用などに関して、患者により満たされたチェックリストの使用を通して、問診すること。例えば、及び限定されないが、患者は、アレルギー疾患の存在、患者の眼に点眼剤を入れたときのこれまでの感受性、有害な薬物反応、例えば、患者のDESを処置することに使用するために考えられている組成物又は複数の組成物の1種又は複数の構成要素に対する任意の有害な反応について、尋ねられることもある。
【0067】
試験及び問診の結果は、医療専門家により処置計画の部分として考慮されることが好適な。試験及び問診に基づいて、処置組成物は、患者のDESを処置するために、患者の眼で使用するために提供される。
【0068】
この処置組成物は、屈折率、透明性、表面張力、比重、pH、張性及び/又は容量オスモル濃度、タンパク質(例えば、ムチン)含有率及び任意の他の性質又は患者の眼中の涙液の性質に基づいて、一連の又は複数の異なる局所眼科組成物から選択される。換言すれば、患者のドライアイ症候群の状態及び個々の又は特定の感受性、状態及び/又は患者の眼の処置に影響し得る患者の他の問題、例えば、患者の眼におけるある点眼剤又は薬物療法に対する感受性が考慮されて、患者のDESを処置するための複数の処置組成物の中から特定の処置組成物を提供するための根拠の少なくとも重要な部分又はさらに実質的に全部を形成する。
【0069】
本発明の一例で、ヒトの眼を処置するための処置組成物は、水及びホホバ油、ホホバ油の誘導体、アボカド油、アボカド油の誘導体、オリーブ油、及びそれらの混合物及びヒマシ油、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種又は複数の疎水性構成要素、ドライアイ症候群で悩まされるヒトの眼に入れられたときに、ドライアイ症候群を有利に処置するために有効な量で存在する疎水性構成要素を含む。
【0070】
そのような組成物は、ドライアイ症候群を処置することにおいて高度に有効である。重要なこととして、一連の比較的少数のそのような組成物が、広く変化する重症度でDESを有するヒト患者及び広い範囲の他の問題、例えば、快適性に関する問題、したがってドライアイ症候群の処置に影響し得る、処置投与計画に対する患者の投与順守などの問題を有する広い範囲のヒト患者を処置するために有効であることが見出された。
【0071】
換言すれば、セット1組の又は一連の約4又は約5種、又は約6種、又は約7種、又は約8種、又は約9種、又は約10種の異なる局所眼科人工涙液処置組成物が、本発明に従って製剤化されることが可能であり、その少なくとも1種が、ドライアイ症候群を患う患者の約90%又は約95%又は約98%を有効に及び快適に処置するであろうということが見出された。
【0072】
高分子量のポリアクリル酸ポリマー(本願明細書では、商品名カルボポール(登録商標)Noveon(登録商標)及びPemulen(登録商標)と称されて、この商品名で販売されているが;これらの名称により(特に断りのない限り)他の商品名で販売されている汎用の乳化安定剤と同じか又は同様な化合物も意味する)を含むある製剤で、約0.1%(w/v)から約0.5%の天然油を含有するドライアイ処置製剤の作製で必要とするPemulen(登録商標)は、他の方法における点眼剤、眼又は眼蓋乳剤などの眼乳剤などのドライアイ処置製剤で予想されるより約10倍少ないことが、思いがけなく見出された。
【0073】
該シリーズの組成物の異なる組成物の各々は、構成要素の異なる組み合わせ、例えば、組成物により異なる構成要素及び/又は同じ構成要素の異なる濃度を有する。例えば、点眼剤を有する患者に関して、組成物中に存在する構成要素の異なる組み合わせが、患者のドライアイ症候群の重症度及び感受性及び/又は不快感の存在及び/又は患者の眼における患者が有する1種又は複数の他の問題に応じて提供される。
【0074】
該シリーズの処置組成物の1種又は複数又は全ては、実質的にステロイドを含まなくてもよい。「実質的にステロイドを含まない」により、ステロイドを含まないか、又はドライアイ疾患に対して識別可能な処置的効果を有しない一定量のステロイドを有することが意味される。別の例では、1種又は複数の又は全ての組成物が、有用な又は有効量のステロイドを含んでもよい。幾つかの例では、処置組成物は、任意の追加の処置的構成要素(米国食品医薬品局により規制される任意の薬物)を含まないこともある。他の例では、本発明の処置組成物は、1種又は複数の治療用組成物を含むことができる。
【0075】
一例では、該シリーズの組成物1種又は複数の又は全てが、シクロスポリン、例えば、シクロスポリンAを、組成物が投与される患者におけるドライアイ症候群を処置することに少なくとも役立つ有効量で含むことができる。一連の組成物中の1種又は複数の又は全ての組成物は、シクロスポリンを実質的に含まないこともある。「実質的にシクロスポリンを含まない」により、シクロスポリンを含まないか、又はドライアイ疾患に対する識別可能な処置的効果を有しない一定量のシクロスポリンを有することが意味される。存在する場合には、少なくとも1種の本発明の組成物中に存在するシクロスポリン、例えば、シクロスポリンAの量は、ある例では、重量により、約0.05%から約2.0%、又は約0.05%から約1.5%、又は約0.1%から約1.0%、又は約0.2%から約1%の範囲内にあることもできる。
【0076】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、一定量のホホバ油構成要素を含むことができて、ホホバ油(液体ホホバワックス)、ホホバ油誘導体、例えば、疎水性ホホバ油誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する。ホホバ油構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、ホホバ油構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化するか又は同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物は、ホホバ油構成要素を含まないこともある。
【0077】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、一定量のアボカド油構成要素を含むことができて、アボカド油、アボカド油誘導体、例えば、疎水性アボカド油誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する。アボカド油構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、アボカド油構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化することも同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物はアボカド油構成要素を含まないこともある。
【0078】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、ティーツリー油、ティーツリー油誘導体、例えば、疎水性ティーツリー油誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する、一定量のティーツリー油構成要素を含むことができる。ティーツリー油構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、ティーツリー油構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化することも同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物は、ティーツリー油構成要素を含まないこともある。
【0079】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、アルガン油、アルガン油誘導体、例えば、疎水性アルガン油誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する、一定量のアルガン油構成要素を含むことができる。アルガン油構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、アルガン油構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化することも同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物は、アルガン油構成要素を含まないこともある。
【0080】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、オレウロペイン、オレウロペイン誘導体、例えば、疎水性オレウロペイン誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する、一定量のオレウロペイン構成要素を含むことができる。オレウロペイン構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、オレウロペイン構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化することも同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物は、オレウロペイン構成要素を含まないこともある。
【0081】
上で触れたように、1種又は複数の組成物は、ヒマシ油誘導体、例えば、疎水性ヒマシ油誘導体、及びそれらの2種以上の混合物を含むことを意味する、一定量のヒマシ油を含むことができる。ヒマシ油構成要素は、単独の油として、又は1種又は複数の追加の油との組み合わせのいずれかで、該シリーズの組成物の1種又は複数又は全ての中で、約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.75%(w/v)又は約0.1%(w/v)から約0.5%(w/v)、又は約0.1%(w/v)から約0.25%(w/v)の範囲内で存在することができる。存在する場合には、ヒマシ油構成要素の濃度は、該シリーズの組成物の各組成物で変化することも同じであることもある。1種又は複数のこれらの組成物は、ヒマシ油構成要素を含まないこともある。
【0082】
一般的にいえば、天然涙液は約7.4のpHを有するが、僅かに酸性のpH値に耐えることはできる。張性と容量オスモル濃度とはしばしば混同されるが、張性は2つの溶液間の浸透圧の勾配の尺度であり、したがって半透膜を越えることができない溶質によってのみ影響され、その理由は、これらだけが、平衡における浸透圧勾配に影響する溶質であるからである。天然涙液の容量オスモル濃度は、約290mOsmである(約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム溶液に対応する;外部角膜は、約0.5%から約1.8%の塩化ナトリウム(w/v)の範囲と等価の溶液に耐えることができる)。ドライアイ症候群の幾つかの場合に、涙液流体は高張であることができて、低張涙液の高モル濃度が存在して、容量オスモル濃度が約340mOsm/1以上である場合に、矯正が必要になり得る。低浸透圧の処置組成物(例えば、約300mOsmol/L未満)が、この状態を打ち消すために使用され得る。
【0083】
人工涙液組成物は、好適な実施形態では、タンパク質を含有しないので、正常ではムチンにより提供される粘度が必要な場合には、粘度増強構成要素を添加することができる。添加される粘度増強構成要素の利点は、人工涙液処置組成物が、角膜の表面に、粘度増強構成要素がないときより長くとどまることができることである。処置組成物の粘度は、約1.0から約100mPa・s(cP);好適には、1mPa・s(cP)を超えて約60mPa・s(cP)まで;より好適には約1.1mPa・s(cP)から約55mPa・s(cP);より好適には約1.2mPa・s(cP)から約50mPa・s(cP)の範囲であることができる。ある例では、処置組成物は、約1mPa・s(cP)と約3mPa・s(cP)の間の粘度を有する点眼剤又は人工涙液を含むことができる。低粘度は、約15mPa・s(cP)未満であり、それに対して、高粘度は、約15mPa・s(cP)以上である。正常な表面張力は、約4×10-4ニュートン/cm(40ダイン/cm)を超える。低表面張力は、約4×10-4ニュートン/cm(40ダイン/cm)以下である。
【0084】
処置組成物は、処置組成物が提供される患者に利益を提供するために有効な一定量の少なくとも1種の追加の構成要素を含むことができる。そのような例では、任意の眼科的に許容される構成要素が、組成物(単数又は複数)及び/又は患者に、所望の利益を提供する1種又は複数の本発明の組成物中に含まれ得る。
【0085】
例えば、処置組成物は、1種又は複数の有機又は無機溶質を、等張剤として(塩化ナトリウム又はカリウム、ヒアルロン酸塩、アクリル酸塩、グリセリン等など);pHを生理学的に許容される範囲内で維持するために、緩衝剤としてホウ酸又はリン酸の金属塩など;粘度増強剤(限定されないが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボポール(登録商標)、Pemulen(登録商標)、Noveon(登録商標)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEPPG)、ヒアルロン酸ナトリウムなどのヒアルロン酸塩、及びポリビニルピロリドンなど);界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル及びそれらの誘導体(例えばポリソルベート(登録商標)80)、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、それらの混合物などを含むことができる。これらの薬剤の幾つかは、本出願の処置組成物中で2種以上の機能を有することができて;例えば、全ての溶質は、液体の合計等張性に寄与して、CMC、HPMC、Pemulen(登録商標)及びカルボポール(登録商標)などの薬剤は、粘度増強剤であるが、乳化安定剤としても機能することができる。
【0086】
ある例で、本発明の処置組成物は、保存剤として殺生物剤、例えば、塩化ベンズアルコニウム(BAK)、塩化ベンゼトニウム、又は別の第四級アンモニウム保存剤、メチル及びエチルパラベン、フェニル水銀塩、例えば、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀など、過ホウ酸ナトリウム、クロロブタノール、ヘキセチジン、安定化されたオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))、及び安定化されたチメロサールなどを含有することができる。しかしながら、他の例では、本発明の処置組成物は、例えば、滅菌状態を可能な限り維持する様に設計されたアプリケーターを用いて、滅菌単位用量又は滅菌多回用量製剤として利用可能な保存剤を含まない製剤であることもできる。
【0087】
研究により、伝統的に使用される低濃度でさえ、殺生物剤は、繰り返し使用で角膜細胞に対して細胞傷害性であり得ることが示された。したがって、眼科調合剤の中で最も普通に使用される殺生物剤であるBAKは、使用される濃度で(約0.004%から約0.02%(w/v)の範囲)、角膜上皮の分離をもたらし得る。幾種類かのウイルス、カビ及び原生動物に対して有効であるが、それは、全ての可能性のある汚染物質、最も注目すべき緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の株に対して有効でない。EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などのキレート剤を、緑膿菌(P.aerugenosa)の耐性を克服するために添加することはできるが、EDTAはそれ自体が角膜組織に対して有害である。Purite(登録商標)又は過塩素酸塩などの他の殺生物剤は、眼の組織に対する害は遥かに少ないが、有効な殺生物活性がより低いこともある。
【0088】
それ故、本発明の幾つかの例では、1種又は複数の天然油又は同様な物質(その全てを、本願明細書では「油」と呼ぶことにする)、例えば、(限定されないが)ホホバ油、アボカド油、ティーツリー油、ココナツ油、アルガン、オレウロペイン、綿実油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、アマニ油、菜種油、ティーツリー油、アルガン油、ヒマシ油、ダイズ油、キャラウェイ油、ローズマリー油、ペパーミント油、ヒマワリ油、ユーカリ油、ベルガモット油、フェンネル油、ゴマ油、メントール油、ヤクヨウニンジン油、ナツメ油、オクラ油;殺生物又は抗菌活性を有する第2の殺生物剤としてテルペノイド、又はオリーブ油を含有する眼科使用のために適当な油(上で挙げられたもの以外の)を含む疎水性構成要素を添加することが望ましい。そのような薬剤は、第1の殺生物剤及び/又はキレート剤(BAKとEDTAの組み合わせなど)の濃度の低下を可能にすることができる。
【0089】
他の例では、本発明の処置組成物は、滅菌単位剤形で、保存剤を含まない組成物として提供されることもある。
本発明のさらなる他の例では、本出願で開示された処置組成物は、眼に対して局所送達するための活性な治療剤を包含するための担体又はビヒクル製剤を提供することができる。例えば、好適な油又は液体ワックスと薬物部分との独特な相互作用、これらの製剤の新規な眼の快適性特性、及び該製剤により提供される有利な薬物送達プラットホームを含む1種又は複数の多くの特性に基づいて、本発明の製剤で製剤化される場合に、新規な効果を有することができる多くの薬物がある。
【0090】
そのような薬物は、特に、そのような製剤が(例えば、それら自体が抗炎症活性を有する油及び/又はワックスを含む)、抗炎症性効果を増強ならびに/又は薬物の送達及び許容性を改善できる場合に、抗炎症性薬物を含むことができるが、限定はされない。有益な抗炎症剤:メトトレキセート;リフテグラスト;非ステロイド抗炎症性薬物、例えば、ジクロフェナックナトリウム、フルビプロフェンナトリウム、ケトロラクトロメタミン(tromethanimne)、ブロムフェナック、及びアプラフェナックなど;抗アレルギー薬、例えば、ケトチフェン、アザラスチン、エピナスチン、オロパタジン、及びアルカフチジン;コルチコステロイド様ジフルプレドネート、酢酸プレドニゾロン、ロテプレドノール、フルオロメタノン、及びデキサメタゾンなど;カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムス及びシクロスポリンなど;及びメトトレキセート及びラパマイシンのような他の抗炎症性薬物。
【0091】
本発明の製剤は、油エマルションがタンパク質安定化を改善できた高分子タンパク質生物薬剤を製剤化することにも有用であることができる。このことは、油が、凝集すなわちタンパク質の不安定性の原因となり得ることを考えれば、特に新規であろう。本発明者らが使用している油は、眼のために独特であり、先行する製剤より低い濃度で有用である。油は、他の成分と一緒になって、驚くべきことに安定化に強い影響を有する。これは、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、ベバシズマブ、ラナビズマブ、及びアフリベルセプトなどのタンパク質の吸収及び送達を改善するために使用することができる。
【0092】
それに加えて、本発明の製剤の無痛化する性質は、幾種かの眼の局所治療剤の性質であるとして報告された刺激を打ち消すために有利に活用することができる。例えば、保存剤を含むか又は含まないそのような製剤は、ブリモニジン、ブリンゾラミド、ピロカルピン、トラバプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ポビドンヨウ素、及び硝酸銀などの薬物の製剤化において使用されることが可能である。
【0093】
本発明の処置組成物中で単独で、又は他の油との組み合わせで使用され得る油の他の特定の例は、アボカド油、綿実油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、アマニ油、菜種油、ティーツリー油、アルガン油、ヒマシ油、ダイズ油、キャラウェイ油、ローズマリー油、ペパーミント油、ヒマワリ油、ユーカリ油、ベルガモット油、フェンネル油、ゴマ油、ヤクヨウニンジン油、ナツメ油、オクラ油及び/又は1種又は複数の他の油、例えば、患者の眼に入れられたときに抗菌効果を有する天然の油を含む。
【0094】
処置組成物は、任意の適当な形態、例えば、溶液、混合物、エマルション又はマイクロエマルションの形態で提供され得る。
一例では、本発明は、DESの徴候及び症状の存在について、患者の涙液を試験すること、患者を面接することなどを通して、患者を試験すること、適当な人工涙液処置組成物を、例えば、4から7種の異なる処置組成物のセットの中から選択すること、ならびに試験及び査定の結果の少なくとも部分で選択された適当な人工涙液、バルム剤又は乳剤処置組成物を患者に提供することを目指す。
【0095】
試験可能な涙液の性質は、屈折率(RI)、表面張力(ST)、比重(SG)、粘度、タンパク質含有率、脂質濃度、容量オスモル濃度、涙液破壊時間及び等張性を含む。DESは、角膜染色、結膜の充血、結膜の染色、涙液産生、涙液破壊時を含む臨床的徴候及び患者症状、ならびに疼痛、不快感、視力のぼやけ、及び眼表面疾患指数(OSDI)を含む症状重症度を測定することによって患者を検査することにより査定することもできる。それに加えて、眼瞼炎症を査定してスコア付けることもできる。これらのパラメーターを、正常値と比較して、本発明の処置組成物の調製に使用することができる。
【0096】
DESの重症度及び特徴には患者間の実質的変動がある。個々の患者は、異なる処置及び涙液置き換え療法から利益を得ることができる。重要なことでは、本発明者らは、透明性(「C」;580nmにおけるパーセントによる透過率)及びSGが、局所眼科製剤の組成物を、治療の可能性から特徴づけるために活用され得ることを見出した。人工涙液の屈折率は、正常涙液膜の屈折率と、好適には同様:例えば、約1.337であるべきである。涙液置き換え療法の眼表面への長期の処置的効果に加えて、涙液製剤の視力に対する有害な効果も考慮しなければならない。分光光度計、屈折計及び比重瓶を使用して決定されたこれらの値が、そのような製剤の眼表面の治癒効果及び視覚的朦朧の可能性の両方を特徴づける新規な方法に寄与したが、それは、それらが、油含有調合剤を含む全成分からの寄与を捉えて、RIが調合剤の光学透明性を明確にすることに役立ち得るからである。光学透明性を得るための多相調合剤の屈折率合わせ又はマイクロエマルションの調製などの技法を使用することにより、この手法は、処置組成物の導入時における視覚のぼやけを最小化すること及び/又は患者にそれらの最適な「光学的に特注された」製品を提供することに役立つことができる。
【0097】
涙液製剤の増大した粘度は、その治癒の可能性を増大させることができるが、同時に、そのような増大した粘度は、組成物に耐える患者の能力を減少させ得ることが理解されるであろう。
【0098】
この関係を理解することは、本発明者らが、各製剤の視力に対する影響を最少化しながら、個々の患者の疾患の基準に合わせた異なる性質を有する製剤の範囲を選択することを可能にする。
【0099】
幾つかの場合に、提供した後で、処置組成物が有効でないこと及び/又は患者のドライアイ症候群のための処置として不満足なことが判明した場合には、提供する工程は、患者特定のパラメーターを再査定すること、及び提供される異なる処置組成物のセット又はシリーズの異なるものを使用することにより改良され得る。これが、必要であれば、患者のドライアイ症候群のための治療用組成物のセットの中から利用可能な最も有効な及び満足な人工涙液処置組成物である組成物が、患者に提供されるまで、繰り返され得る。
【0100】
本発明の方法の一実施形態において、2種以上の組成物を、患者のドライアイ症候群に向けて順次使用することができる。例えば、日中のある時間の間、患者の眼が、過酷な条件に露出されることがあり、それにより引き起こされた患者の眼における比較的重症ドライアイ症候群を有効に制御するように、これらの過酷な条件を緩和するためにドライアイ処置組成物を使用することが必要とされる。ストレスの比較的少ない時間中に、例えば、夕方及び/又は睡眠のための準備中に、ドライアイ症候群は重症度が低下し得る。これらの時間に患者により経験されるドライアイ症候群は、実質的により軽くなり得る。これらの時間に、患者が使用してより快適である間、より緩和な人工涙液処置組成物が患者のドライアイ症候群を緩和するために利用されてもよく、その結果、ドライアイ症候群が治癒され得る。
【0101】
それをより広げて、片眼又は両眼が異なる条件に晒されるときに約4から約10種の人工涙液処置組成物のセットから選択される異なった人工涙液処置組成物が利用され得る。2種以上の処置組成物を使用することができる柔軟性は、例えば、眼が露出される環境に依存して、彼又は彼女が経験しているドライアイ症候群を、眼が露出され得る変化する条件及び患者の眼におけるドライアイ症候群の重症度にかかわらず、患者が有効に制御することを可能にする。
【0102】
好適には、疎水性構成要素は、1種又は複数の天然植物に基づく油、それらの疎水性誘導体等を含む。有用な油材料の例は、植物に基づく油、動物油、ミネラル油、合成油等及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。疎水性構成要素は、1種又は複数の高級脂肪酸グリセリドを含むことができる。非常に好適には、少なくとも1種の油が、植物に基づく油から選択される。疎水性構成要素が、ホホバ油、ホホバ油の疎水性誘導体、ヒマシ油、ヒマシ油の疎水性誘導体、アボカド油、アボカド油の疎水性誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択される場合に、優れた結果が得られる。本発明の非常に好適な実施形態は、アボカド油を含む。他の好適な実施形態はヒマシ油及び少なくとも1種の追加の油を含み-最適には追加の油は野菜由来のものである。
【0103】
構成要素は、本発明の処置組成物中で利用され得て、それは、本発明の有用な組成物で2種以上の機能を実施するために有効である。例えば、上で示されたように、カルボキシメチルセルロース(CMC)、HPMC、Pemulen(登録商標)及びカルボポール(登録商標)は粘度増強剤であるが、乳化安定剤としても機能し得る。例えば、乳化剤及び界面活性剤の両方として有効な構成要素が利用され得て、及び/又はポリ電解質構成要素及び粘度誘発構成要素の両方として有効な構成要素が利用され得る。本発明における、所与の患者の処置で使用するために選ばれる特定の処置組成物は、差し迫った特定の適用に存在する種々の因子、例えば、達成されるべき患者のドライアイ症候群の所望の処置、利用される組成物の所望の性質を考慮に入れて、例えば、組成物が投与されることになっている患者の感受性等の因子を考慮に入れて、有利に選択される。
【0104】
ある例では、本発明の処置的組成物は、それ自体により、又は眼の近くで使用するための加湿剤もしくは化粧品などの皮膚処置のためのベースとしてのいずれかで有用であり得る。普通のアイシャドー又はアイライナーなどの化粧品と異なって、本発明の組成物は、眼、及びしたがって皮膚処置に対して潤滑性であり、そのような組成物を使用して作製された化粧品は、化粧品が不注意で眼に入った事態で生じる眼の刺激を低下させる。これは、患者が共存するドライアイ疾患を有する場合に、特別の利益であり得て、その理由は、眼瞼に適用される成分は、眼瞼に浸透して眼に達し得るからである。
【0105】
それに加えて、本発明の組成物は、他の製品と異なって、細孔又は腺を詰まらせない加湿皮膚助剤として、眼瞼外側の処置のために有用であり得る。そのような組成物は、眼瞼炎などの感染を処置又は防止するための抗菌性構成要素も含有することができる。
【0106】
本発明で有用な組成物は、有利に眼科的に許容される。本発明で有用な組成物中の構成要素又は材料の各々は、好適には、現在有用な組成物中で使用されている濃度で、眼科的に許容される。組成物、構成要素又は材料は、それが眼の組織と適合性である場合に、眼科的に許容される、すなわち、それは、眼の組織との接触にもたらされた場合に、重大な又は過度の有害な効果を引き起こさない。
【0107】
そのような組成物は、約6から約10の範囲内、好適には約7.0から約8.0の範囲内及びより好適には約7.2から約7.6の範囲内、又は約7.4、又はそのようなpHを有する。
【0108】
本発明の方法は、本発明の有用な組成物の1種を、眼の角膜表面又はヒト患者の眼に局所的に投与することを含む投与する工程を好適には提供する。投与は、点眼から綿スワブ又は指の使用に及ぶことができる。
【0109】
本願明細書に記載される各及びあらゆる特徴、ならびに2つ以上のそのような特徴の各及びあらゆる組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が互いに相反しないという条件で、本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
本発明で有用な組成物は、1種又は複数の他の構成要素を、本発明の方法及び/又は本発明で有用な組成物の有用性及び有効性を助長することに有効な量で含むことができる。そのような1種又は複数の他の構成要素の例は、乳化剤構成要素、界面活性剤構成要素、張性構成要素、ポリ電解質構成要素、乳化安定性構成要素、粘度を誘発する構成要素、保護薬構成要素、抗酸化性物質構成要素、組成物のpHを調節するための酸及び/又は塩基、緩衝剤構成要素、保存剤構成要素等を含むが、これらに限定されない。眼科不活性成分のリストは、米国食品医薬品局のウェブサイトの医薬品評価研究センターの不活性成分データベース(cder Inactive Ingredient database)から見出すことができる。この不活性成分のリストは、本願明細書に援用する。
【0111】
一実施形態において、本発明で有用な組成物は、実質的に保存剤を含まない。したがって、本発明で有用な組成物は、滅菌されて使用前には滅菌状態で維持されており、例えば、封じられたパッケージ又は他の方法で実質的に滅菌状態で維持されて提供されることが可能である。
【0112】
任意の適当な乳化剤構成要素が、本発明で有用な組成物で利用され得るが、ただし、そのような乳化剤構成要素は、エマルション又はマイクロエマルションを形成及び/又は維持することに有効であり、一方、貯蔵又は使用中に、組成物に対して重大な又は過度の有害な効果を有してはならない。
【0113】
それに加えて、本発明で有用な組成物、ならびに本発明の組成物の構成要素の各々は、組成物中に存在する濃度で、有利に眼科的に許容される。
有用な乳化剤構成要素は、従来使用されていて当技術分野において周知のそのような構成要素から選択され得る。そのような乳化剤構成要素の例は、性質はアニオン、カチオン、非イオン性又は両性であってもよい表面活性構成要素又は界面活性剤構成要素を含むが、これらに限定されない。一般的に、乳化剤構成要素は、疎水性構成要素及び親水性構成要素を含む。有利には、乳化剤構成要素は、本発明の有用な組成物で水溶性である。好適には、乳化剤構成要素は非イオン性である。適当な乳化剤構成要素の特定の例は、ポリソルベート(登録商標)80、ポリアルキレンアルキレンエーテル、アルキルアルコールのポリアルキレンオキシドエーテル、アルキルフェノールのポリアルキレンオキシドエーテル、眼科組成物等で有用な他の乳化剤/界面活性剤、好適には非イオン性乳化剤/界面活性剤、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0114】
乳化剤構成要素は、エマルションを形成することに及び/又は疎水性構成要素を水又は水性構成要素でエマルションに維持するのに有効な量で存在する。1つの好適な実施形態で、乳化剤構成要素は、本発明で有用な組成物の重量に対して約0.01%から約5%、より好適には約0.02%から約2%及びさらにより好適には約0.05%から約1.5%重量パーセンテージの範囲内で存在する。好適には、界面活性剤構成要素(単数又は複数)は、存在する場合には、非イオン性であり、親水性相と疎水性相とを乳化するために十分な濃度でのみ存在する。
【0115】
ポリ電解質又はエマルションを安定化させる構成要素は、本発明で有用な組成物に含まれ得る。そのような構成要素は、本発明で有用なエマルション中で電解質バランスを維持して、それによりエマルションを安定化させること及び使用前にエマルションが破壊されることを防止することに有効であり得る。一実施形態において、本発明で有用な組成物は、エマルション安定化構成要素として有効なポリアニオン性の構成要素を含む。本発明で有用な組成物中で有用な適当なポリアニオン性構成要素の例は、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性アクリル酸含有ポリマー、アニオン性メタクリル酸含有ポリマー、アニオン性アミノ酸含有ポリマー等及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0116】
ポリアニオン性構成要素の1つの有用なクラスは、複数のアニオン電荷を有する1種又は複数のポリマー材料を含む。例は:
金属カルボキシメチルセルロース
金属カルボキシアルキルメチルセルロース
金属カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース
金属カルボキシメチルデンプン
金属カルボキシメチルヒドロキシエチルデンプン
加水分解されたポリアクリルアミド及びポリアクリロニトリルヘパリン
グルコアミノグリカン
ヒアルロン酸
コンドロイチン硫酸塩
デルマタン硫酸塩
ペプチド及びポリペプチド
アルギン酸
金属アルギン酸塩
アクリル酸及びメタクリル酸
金属アクリレート及びメタクリレート
ビニルスルホン酸
金属ビニルスルホン酸塩
アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸
アミノ酸の金属塩
p-スチレンスルホン酸
p-スチレンスルホン酸の金属塩
2-メタクリロイルオキシエチルスルホン酸
2-メタクリロイルオキシエチルスルホン酸の金属塩
3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸
金属3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸の金属塩
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の金属塩
アリルスルホン酸
アリルスルホン酸の金属塩等
のホモポリマー及び1種又は複数のコポリマー
を含むが、これらに限定されない。
【0117】
1種の特に有用なエマルション安定化構成要素は、カルボマー及びPemulen(登録商標)材料などの架橋したポリアクリレートを含む。Pemulen(登録商標)は、ポリマー乳化剤のためのB.F.Goodrichの登録商標である。Pemulen(登録商標)材料は、アクリレート/C10~30アルキルアクリレートの架橋ポリマー、又はペンタエリトリトールのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸と長鎖アルキルメタクリレートの高分子量コポリマーを含む。カルボマーは、種々の分子量のポリアクリレートポリマーを含む。
【0118】
本発明で有用なポリアニオン性構成要素は、本発明で有用な組成物に対して適当な粘度を提供するためにも使用することができる。したがって、ポリアニオン性構成要素は、本発明で有用なエマルションを安定化させることに、及び本発明で有用な組成物に適当な度合いの粘度を提供することに有用であり得る。
【0119】
ポリ電解質又はエマルション安定化構成要素は、組成物をエマルションの形態で安定化させることに少なくとも役立つために有効な量で有利に存在することができる。例えば、ポリ電解質/エマルションの安定化構成要素は、組成物の約0.01重量%以下から約1重量%以上、好適には約0.02重量%から約0.5重量%の範囲内の量で存在することができる。本出願人らは、あるエマルションで、Pemulen(登録商標)などの安定化構成要素が、驚くべきことに、0.2%(w)未満又は0.1重量%未満などの低濃度で治療用組成物に適当に高粘度を提供するために使用され得ることを見出した。
【0120】
一般市販薬の局所眼科使用のために適当な可溶化界面活性剤は、ポリソルベート(登録商標)80、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油60(PEG60水素化ヒマシ油としても知られている)、チロキサポール、ポリエチレングリコールモノステアレート、ならびにPEG40水素化ヒマシ油、及びアクリレート/C10~30アルキルアクリレート架橋ポリマー(例えば、Pemulen(登録商標))を含むことができる。
【0121】
任意の適当な張性構成要素は、本発明に従って利用することができる。有機又は無機張性構成要素を利用することができる。有用な有機張性構成要素又は有機張性剤は、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。有用な無機張性構成要素は、塩アニオンのアルカリ金属塩、例えば、クエン酸塩、塩素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、及びヒアルロン酸塩などを含むことができる。本発明で有用な組成物、例えば、エマルション又はマイクロエマルションは、好適には、等張であることからプラス又はマイナス約20%又は約10%の範囲内であることができるが;しかしながら他の例では、処置組成物のセットの1種又は複数は、患者の高張又は低張涙液を本質的に等張状態にインサイチューで回復させるために、それぞれ、低張又は高張であることができる。
【0122】
したがって、複数の組成物中で1種又は複数の組成物の張性は、特定の群又はクラスの特許にとって1種又は複数の組成物が有用であることを容易にするように、変化させることができる。
【0123】
眼科の保護薬構成要素は、本発明で有用な組成物中に含まれることがある。例えば、カルボキシメチルセルロース、他のセルロースポリマー、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300及びPEG400)、ポリソルベート(登録商標)80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドン等及びそれらの混合物などの眼科保護薬構成要素が、ドライアイを処置するために有用な本発明の眼科組成物で使用され得る。
【0124】
保護薬構成要素は、好適には、治療用組成物、例えば、人工涙液組成物中に、本発明で有用な組成物の潤滑性を増強するのに有効な量で存在する。本発明の組成物中における保護薬構成要素の量は、特定の保護薬(又は保護薬構成要素の組み合わせ)に部分的に依存して、組成物の重量に対して少なくとも約0.01%又は約0.02%から約0.5%又は約1.0%の範囲内であることができる。
【0125】
本発明で有用なポリ電解質/エマルション安定化構成要素の多くは、保護薬構成要素としても有効であり得て、逆も真である。乳化剤/界面活性剤構成要素は、保護薬構成要素としても有効であり得て、逆も真である。
【0126】
本発明で有用な組成物は、有効量の保存剤構成要素を含むことができる。任意の適当な保存剤又は保存剤の組み合わせが利用され得る。適当な保存剤の例は、塩化ベンズアルコニウム(BAK)、塩化ベンゼトニウム、又は別の第四級アンモニウム保存剤、メチル及びエチルパラベン、フェニル水銀塩、例えば、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀など、過ホウ酸塩、クロロブタノール、ヘキセチジン、過塩素酸塩、安定化されたオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))、安定化されたチメロサール等及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物中に含まれる保存剤構成要素の量は、組成物を保存するために有効であり、利用される特定の保存剤構成要素、関与する特定の組成物、関与する特定の適用及び同様な因子に基づいて変化することができる。保存剤濃度は、組成物の約0.00001%から約0.05%又は約0.1%(w/v)の範囲内であることが多いが、ある保存剤の他の濃度も利用され得る。一般的に必要な保存剤効力を提供することができる最低の濃度の保存剤(又は保存剤の混合物)を活用することが望ましく、その理由は、多くの保存剤は、高めの濃度で細胞傷害性であり得るからである。塩素及びホウ素に基づく保存剤は、BAK及び他の第四級アンモニウム塩よりも細胞傷害性が小さいことが可能である。
【0127】
本発明における保存剤構成要素の非常に有用な例は、亜塩素酸塩構成要素を含むが、これらに限定されない。本発明による保存剤として有用な亜塩素酸塩構成要素の特定の例は、安定化された二酸化塩素(SCD)、金属の亜塩素酸塩、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の亜塩素酸塩など及びそれらの混合物を含む。技術的規格(又はUSP規格)の亜塩素酸ナトリウムは、非常に有用な保存剤構成要素である。多くの亜塩素酸塩構成要素、例えば、SCDの厳密な化学組成は、完全には理解されていない。ある亜塩素酸塩構成要素の製造又は生産が、本願明細書に全体として援用する米国特許第3,278,447号明細書でマックニコラス(McNicholas)により記載されている。有用なSCD製品の特定の例は、商標Dura Klor(登録商標)でRio Linda Chemical社により販売されているもの、及び商標Anthium Dioxide(登録商標)でInternational Dioxide社により販売されているものを含む。特に有用なSCDは、商標BIO-Cide(登録商標)でBIO-Cide International社により販売されている製品、ならびにAllergan社により商標Purite(登録商標)により確認される製品である。
【0128】
他の有用な保存剤は、抗菌性のペプチドを含む。利用され得る抗菌性のペプチドの中で、ディフェンシン、ディフェンシンと関係するペプチド、セクロピン、セクロピンと関係するペプチド、マガイニン及びマガイニンと関係するペプチド及び抗菌性、抗真菌及び/又は抗ウイルス活性を有する他のアミノ酸ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。他の保存剤と抗菌性のペプチドとの混合物又は抗菌性のペプチドの混合物も本発明の範囲内に含まれる。
【0129】
抗菌活性(複数を含む)は、本組成物の1種又は複数の油、ワックス又は他の疎水性構成要素の生物学的活性としても固有であり得るか、又は特にこの目的のために含まれる薬物に含まれ得る。そのような場合に、疎水性構成要素を第2の保存剤又は抗菌剤として考慮すること、及びそれ故、第1の抗菌剤又は保存剤の濃度(及び有害な細胞傷害性効果の可能性)を低下させることは可能であり得る。
【0130】
それに加えて又はあるいは、幾つかの例では、本発明の組成物中に、抗炎症活性を有する構成要素を含むことは非常に望ましい。そのような抗炎症活性(複数可)は、本組成物の1種又は複数の油、ワックス又は他の疎水性構成要素の生物学的活性として固有であることもあり、又は特にこの目的のために含まれる薬物中に含まれることもある。
【0131】
本発明の組成物は、幾つかの例では、保存剤を含まない組成物として、例えば、滅菌されて、単回使用の容器で提供されることが可能である。他の例では、存在するならば、保存剤のタイプ及び/又は量は、該シリーズの組成物で異なることもある。該シリーズの組成物の構成におけるそのような柔軟性は、個々の患者のために間違いのない又は最良の処置組成物を選択する上で有用であり得る。
【0132】
本発明の組成物は、粘度改変剤又は構成要素、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含むセルロースポリマー;カルボマー(例えばカルボポール(登録商標)等);ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アルギン酸塩;カラギーナン;及びグアール、カラヤ、アガロース、イナゴマメ、トラガカント及びキサンタンガムなどを含むことができる。そのような粘度改変構成要素が、あったとして、本発明の組成物に所望の粘度を提供するために有効な量で利用される。そのような粘度変更因子の濃度は、典型的には組成物の合計の約0.01%から約5%w/vの間で変化するが、ある粘度改変構成要素の他の濃度も使用されることがある。
【0133】
本発明で有用な組成物は、眼科製品、例えば、溶液剤、水中油エマルション剤等の生産で有用な従来の及び周知の方法を使用して生産することができる。
一例では、エマルションの油性相は、油性材料相中の任意の他の疎水性構成要素と組み合わせることができる。油性相と水は、別々に適当な温度で加熱され得る。この温度は、両方の場合に同じであってもよく、固体又は半固体の油性相の場合に、油性相中の乳化剤構成要素として、一般的に、最高の融点を有する成分(単数又は複数)の溶融温度を約10℃から2ないし3度超える。油性相が室温で液体である場合に、組成物の調製のために適当な温度は、油性相と別にした成分の融点が決定されるルーチン実験法により決定することができる。油性相又は水相のいずれも全ての構成要素が室温で可溶である場合には、加熱が必要でないこともある。水溶性の乳化されない薬剤は、水中に溶解されて、界面活性剤構成要素を含む油溶性構成要素は油性相中に溶解される。
【0134】
一例では、水中油エマルションは以下のようにして創られる:最終の油相を、中間体相、好適には脱イオン水、又は最終の水性相のいずれかの中に穏やかに混合して適当な分散液を創り、生成物を攪拌して又は攪拌せずに放冷する。最終の油相が最初穏やかに中間体水相中に混合された場合には、生じたエマルション濃縮物をその後最終の水性相と適当な比で混合する。そのような場合に、エマルション濃縮物及び最終の水性相は同じ温度でなくてもよく、又はエマルションがすでにこの点で形成されていることもあるので、室温より高くで加熱する。
【0135】
安定なエマルションが形成されて、不混和性の流体の混合物にエネルギーを適用することにより分散される。「安定な」エマルションとは、疎水性相と親水性相とが30日、より好適には60日、より好適には90日、より好適には6カ月、より好適には1年以上のような長時間内に実質的に分離しないエマルションを指すことが意味される。
【0136】
上で記載されたような穏やかな混合は、適用が必要とされるエネルギー量が比較的低い。このことは、比較的高分子量(MW)を有する材料を使用する場合に有利であり得て、それは、穏やかな混合で、比較的小さい及び比較的弱い剪断力を生じて、これらの大きいMWの分子に裂け目を生じさせるからである。
【0137】
エマルション及び形成されたときに生じたエマルションの構成要素の粘度、ならびにこれらの構成要素の化学的及び物理的特性(粘度に加えて:分子量、極性、電荷、疎水性/親水性/両親媒性、その他を含む)を含む多くの因子に依存して、比較的大量のエネルギーが、全ての構成要素が安定なエマルションで均一に分散したままである安定なエマルションを形成するために必要とされ得る。
【0138】
高エネルギーの方法は、高エネルギー、高剪断の混合(例えば、Silverstonミキサーを使用する)、微小流動化(高剪断力を発生させるための高圧を適用する)及び超音波処理方法を含む。これらの方法は、エマルション中の球状サイズ(すなわち、水中油エマルション中における油液滴サイズ)を低下させ、及びエマルション中における成分の均一分散を確実にするために使用することができる。高剪断力は、高分子及びPemulen(登録商標)及び幾つかのセルロース及びセルロース誘導体などの高分子量ポリマーの剪断を引き起こして、それによりそれらの粘度を減少させることもできる。
【0139】
本発明の水中油エマルションは、調製後に熱、例えば、オートクレーブスチーム滅菌を使用して滅菌することができ、又は、例えば、0.22ミクロンの滅菌フィルターを使用して滅菌濾過することができる。滅菌フィルターを利用する滅菌は、エマルション液滴(又は小球又は粒子)のサイズ及び特性がこれを可能にする場合に使用することができる。エマルションの液滴サイズ分布は、完全に0.22ミクロンの滅菌濾過膜の粒子サイズカットオフ未満で滅菌濾過可能である必要はない。エマルションの液滴サイズ分布が0.22ミクロンの滅菌濾過膜の粒子サイズカットオフを超える場合には、エマルションは、濾過膜を通過する間変形又は変化して、次に通過後に形を回復することができる必要がある。この性質は、濾過前後の組成物におけるエマルション液滴サイズ分布及び合計油のパーセントのルーチン試験により容易に決定される。あるいは、小量の大きい液滴サイズの材料の損失は許容され得る。
【0140】
水中油エマルションは、好適には、熱力学的に安定である。幾つかの例で、エマルションは、マイクロエマルション又は屈折率が一致したエマルションなどの等方性の透明な組成物でないこともある。他の現在好まれる例では、エマルションは、透明又は半透明である。本発明のエマルションは、有利なことに、室温で、30日を超える、より好適には60日、より好適には90日、より好適には6カ月、より好適には1年以上の貯蔵寿命を有する。
【0141】
他の例では、本発明の組成物は、マイクロエマルションであることもある。マイクロエマルションは、相間の界面における表面張力を低下させる様式で、界面活性剤及び共界面活性剤の存在下で水性及び非水性相の分散液である。これらのエマルションは、高い安定性、小さい液滴サイズ(例えば、直径が約100nm以下)及び透明な外見を有することができる。通常のエマルションと対照的に、マイクロエマルションは、構成要素の簡単な混合で形成されることが可能で、通常のエマルションの形成で一般的に使用される高い剪断条件を必要としない。3通りの基本的なタイプのマイクロエマルションは、直接相(direct)(水中に分散された油、o/w)、逆相(油中に分散された水、w/o)及び両連続相である。水性相は塩を含有することができるが、一方、疎水性相は2種以上の油を含むことができる。
【0142】
例えば、油は、1種又は複数の天然に生ずるワックス又は油を含むことができる。特に好適な例で、エマルション又はマイクロエマルションの疎水性相は、実際には長鎖ワックスエステルで構成される液体ワックスであるホホバ「油」、又はアボカド油を含む。これらの油のいずれも、治療用組成物中の唯一の油として存在することができるか、又は1種又は複数の追加の(好適には植物系)油と組み合わされることも可能である。
【0143】
ホホバワックスのエステルの構成要素は、合計で38から44個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸とエステル化された長鎖アルコールを含む。典型的長鎖脂肪酸は、ガドレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、リノレン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、乳酸、デカテ酸、酢酸及びミリスチン脂肪酸を含む。脂肪酸は、典型的には種々の飽和又は不飽和度を有するか又は有しないC12からC30の炭素鎖を有する。ワックスのエステルのアルコール構成要素は、種々の飽和又は不飽和度を有するか又は有しないC16とC32の間の炭素鎖を含有する。アルコール構成要素は、エイコサ-11-エノール、ドコサ-13-エノール、テトラコサ-15-エノール、ミリスチルアルコール、オクチルドデシルステアロイルアルコール又はセチルアルコールであることができる。ホホバ油は、マッコウクジラ油と化学的に同様であって、エンベロープウイルス、糸状菌、真菌及び細菌に対する抗菌活性を有すると確認された。例えば、各々本明細書に援用する米国特許第4,585,656号明細書及び第6,559,182号明細書を参照されたい。
【0144】
アボカド油は、約71%(w)がモノ飽和脂肪酸、約13%がポリ不飽和脂肪酸、及び約16%が飽和脂肪酸であり、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール及びリノレン脂肪酸及び小量のカンペステロール、ベータ-シトステロール及びスチグマステロールならびにテルペノイド、グルタチオン、カロテノイド、フェノール、タンニン、レシチン、ステロリン、D-マノヘプツロース及びペルセノンA及びBを含むバイオ活性な植物性化学物質を含有する。これらのパーセンテージは、使用されるアボカドの種類、使用されるアボカド油の薬学的規格、及び抽出の方法を含み得る因子に基づいて若干異なり得ることは理解されるであろう。臨床研究は、高コレステロール血症の患者で、アボカドに富む食事が、高炭水化物の食事又はアボカドを含まない他の食事と比較して、LDL-コレステロール及びトリグリセリドを低下させて、HDL-コレステロールを増大させることを示した。
【0145】
マイクロエマルションを作製する方法は、当技術分野において周知であり;幾つかの方法が以下の出版で開示されている。ゲルバシア及びロサーノ(Gerbacia and Rosano), J.Coll.& Interface Sci.(44),242-248;ロサーノ(Rosano),米国特許第4,146,499明細書;エヴィット(Evitts)、欧州特許公開EP0480690Al号公報、及びカワシマら(Kawashima et al.),米国特許第6,582,718号明細書、これらの各々は本願明細書に援用する。
【0146】
以下の例が本発明のある態様を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0147】
一連の異なる人工涙液処置組成物を調製する。本発明による処置組成物の各々は、ヒトにおけるドライアイ症候群の処置で使用するために適当である。
【0148】
【表4】
上で見ることができたように、実例で示された組成物のあるもの(例えば、組成物G、H及びL)では、単一種の油が使用されているが、それに対して、他の組成物(組成物K、M及びN)では2種以上の油が使用されており、さらに他の例(組成物I及びJ)では油が使用されていない。したがって、種々のドライアイ治療用の組成物を作製することができて、各々患者症状及び涙液性質の異なるセットに適する。ここで実例で示された全ての組成物は、抗菌剤(BAK又は亜塩素酸ナトリウム)を含有するが、これらの保存剤を含まない(例えば、滅菌)バージョン又は他の組成物も作製され得ることは理解されるであろう。粘度を誘発する構成要素(この場合に、カルボポール(登録商標)、Pemulen(登録商標)、HPMC及びPEGなどの化合物)の濃度は、必要に応じて変化させることができる。
【0149】
本発明の組成物はこれらに限定されないが、好適な例で、治療用組成物のシリーズの粘度の範囲は、約3、5、7、10、15及び20ミリパスカル・秒(mPa・s)(センチポイズ(cP))であり、組成物の各々の比重は、約0.7と約1.1の間であり;組成物の各々の屈折率は、約1.20から約1.8の間であり、最適範囲は約1.33-約1.57である。
【実施例2】
【0150】
彼/彼女が各々幾らかの度合いの眼の不快感を経験していることを示す患者の群が、ドライアイ症候群の存在又は非存在を決定する試験のために選択されて集められた。
試験は、患者の眼(単数又は複数)におけるドライアイ症候群の存在及び重症度を認識することに経験のある資格のある医療関係者によって実施される。涙液が捕集され、涙液の量が決定され、涙液の品質が、pH、容量オスモル濃度、タンパク質含有率、疎水性/親水性バランス、及び粘度について分析されて、ドライアイ症候群により冒されていない対象者についての平均値と比較される。
【0151】
この試験の結果として、幾人かの人々はドライアイ症候群を有せず、他の人々はドライアイ症候群をまさに有することが決定される。特に、ドライアイ症候群を有すると確認された人々の中でサブグループを確認することができる。
【0152】
サブグループAの患者は、正常未満の量の涙液を有するが、タンパク質のレベルは正常で、涙液のムコイド(粘稠)層は完全であり、容量オスモル濃度は正常範囲にあり、涙液中における親水性に対する構成要素の疎水性の比は正常で、pHは約7.4であることを示す。これらの所見に基づいて、天然涙液に近似のpH、容量オスモル濃度、疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比、及び粘度を有する人工涙液処置組成物が、有効な処置及び患者の快適性の両方の観点から、可能性として最適であると仮に結論される。
【0153】
サブグループBの患者は、正常未満の量の涙液を有し、涙液のタンパク質、及び粘度も正常未満である。涙液の容量オスモル濃度は正常範囲にあり、涙液中における疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比は正常であり、pHは約7.4である。患者は、眼中における砂のような感じを報告する。これらの所見に基づいて、天然涙液に近似のpH、容量オスモル濃度、疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比、及び正常涙液と比較して増大した粘度(したがって涙液が角膜全体にわたってより均一に広がることを可能にする)を有する人工涙液処置組成物が、有効な処置及び患者の快適性の両方の観点から、可能性として最適であると仮に結論される。
【0154】
サブグループCの患者は、正常未満の量の涙液を有する。涙液のタンパク質及び粘度も正常である。涙液の容量オスモル濃度は、約1.8%(w/v)の塩化ナトリウム(高張)と等価である。涙液中における疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比は正常である;しかしながら涙液のpHは約6.2である。患者は、眼中における刺す感覚を報告する。これらの所見に基づいて、生理学的pH(約7.4)に合わせて緩衝されて、天然涙液の疎水性構成要素の親水性構成要素に対する近似比を有し、正常涙液と比較して僅かに低張(例えば、約0.5%(w/v)塩化ナトリウムと等価)の人工涙液処置組成物が、有効な処置及び患者の快適性の両方の観点から、可能性として最適であると仮に結論される。
【0155】
サブグループDの患者は、正常量の涙液を有する。涙液のタンパク質及び粘度も正常である。涙液の容量オスモル濃度は、約0.5%(w/v)塩化ナトリウムと等価である(低張)。涙液中における疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比は正常より高く;涙液のpHは約7.4である。患者は眼中における刺す感覚を報告する。これらの所見に基づいて、疎水性構成要素の親水性構成要素に対する天然涙液の正常比を有し、正常涙液と比較して僅かに高張(例えば、約1.8%塩化ナトリウムと等価)の人工涙液処置組成物が、有効な処置及び患者の快適性の両方の観点から、可能性として最適であると仮に結論される。
【0156】
サブグループEの患者は、正常量の涙液を有する。涙液のタンパク質及び粘度は、最適未満である。涙液の容量オスモル濃度は、約0.5%(w/v)塩化ナトリウムと等価である(低張)。涙液中における疎水性構成要素の親水性構成要素に対する比は正常より高く;涙液のpHは約7.4である。患者は眼中における刺す、焼ける感覚を報告する。これらの所見に基づいて、正常より僅かに高い粘度、及び疎水性構成要素の親水性構成要素に対する天然涙液の正常比を有し、正常涙液と比較して僅かに高張である(例えば、約1.8%塩化ナトリウムと等価)人工涙液処置組成物は、有効な処置及び患者の快適性の両方の観点から、可能性として最適であると仮に結論される。
【0157】
ドライアイ症候群陽性の患者の群の各メンバーは、彼らの眼に関して、特に、それらの眼が薬物療法及び眼に入れられた点眼剤を含む何かに対して感受性であるどうかについて、ドライアイ症候群を扱う処置の手法に影響し得る何らかのアレルギー及び/又は他の感受性を知っているかどうかについて面接される。
【0158】
これらの問診は、人のドライアイ症候群の処置の間に生じるか又は明らかになり得る任意の特定の問題を確認するために十分詳細に行われる。この様式で人々を問診した結果として、人々の各々は:(a)眼に点眼剤を有して、快適性の問題はたいしてないか全くない人;
(b)眼に点眼剤を有することで重要な快適性の問題を有する人として確認される。
【0159】
上で記した試験及び問診の結果として、上で記したように試験され及び問診された各人は、試験及び問診の結果に基づいて、組成物A~Eの1種を提供される。
そのような試験/問診手法の使用は、異なる処置組成物、例えば、ドライアイ症候群を処置するための組成物A~Eとの組み合わせで、処置される人の快適性及び安全性の懸念を同時に考慮に入れながら、ドライアイシステムを処置するために個別に選択される方法で、ドライアイ症候群を処置するための高度に有効な手法を提供する。
【実施例3】
【0160】
下表で提示された眼の皮膚保護の異なるベース組成物OからYまでのセットを調製する。眼の皮膚保護のベース組成物の各々は、皮膚の条件付け及び加湿のために単独で使用されることが可能であり、又はあるいはアイシャドーもしくはアイライナーの顔料及び他の成分などの化粧添加剤を添加するための基礎として、ドライアイ症候群を患う患者で使用するために、又は眼に対する刺激を防止するために適当である。
【0161】
【表5】
この例では、Simulgel(登録商標)(アクリレートポリマーのファミリー)調合剤は、ポリソルベート(登録商標)80を含有する。Simulgel(登録商標)が使用される場合、追加のポリソルベート(登録商標)80は、0.25%(w/v)の最終濃度に達するならば、及びそれが必要なときにのみ添加されるべきである。それに加えて、これらの例では、増粘剤Simulgel(登録商標)又はカルボポール(登録商標)、Pemulen(登録商標)、HPMC、CMC(カルボキシメチルセルロース)は、所望の粘度に達するために、ここで与えられた相互のそれぞれの比率で調節されるべきである。
【実施例4】
【0162】
適当な製剤パラメーターを決定するために、以下の最終組成を有する3種の局所眼製剤を作製した:
【0163】
【表6】
製剤は以下のように作製した:80gの水に対して、1.00gのグリセリンを室温で添加して、ビーカー中でマグネチックスターラーのバーを用いて混合した。混合し続けながら、Pemulen(登録商標)を添加した(製剤A及びD:100mg;製剤B及びE:200mg;製剤C及びF:300mg)。
【0164】
15分間加熱しつつ混合し続けながら、ポリソルベート(登録商標)80を添加して(製剤A及びD:50mg;製剤B及びE:75mg;製剤C及びF:100mg)、次に冷却した。混合し続けながら、アボカド油を製剤A(100mg)、B(300mg)及びC(500mg)に添加して、ホホバ油を製剤D(100mg)、E(300mg)及びF(500mg)に添加した。
【0165】
20μlの50%(w/v)BAK溶液を添加して混合し、続いて混合し続けながら、100mgのEDTA二ナトリウムを添加した。0.1N NaOHを添加して製剤のpHを7.4±0.3にした。次に最後に、水を加えて合計体積を100mlに合わせた。
【0166】
製剤B、C、E及びFは、非常に粘稠で、内部に気泡が捕捉された流れないゲル又はペーストを形成することが見出された。製剤A及びDは薄いグレイの不透明で粘稠な液体であった。
【実施例5】
【0167】
実施例4の製剤A~Fの高粘度は、特に低いPemulen(登録商標)濃度を考慮すれば驚異的であり;比較的低量のPemulen(登録商標)を含有し、構成要素の添加の順序を変えた製剤の新しいセットが作製される。それに加えて、混合は、マグネチックスターラーのプレート及びバーを使用するよりむしろIKAの高架式ミキサーを使用して行われる。
【0168】
3種の製剤(G、Gl及びH)は、出発点として前の製剤A及びDを使用して作製される。製剤G及びGlはアボカド油及び他の成分を同一の量で含有するが、Pemulen(登録商標)の添加順序が異なる。製剤Hはホホバ油を含有する。
【0169】
【表7】
全ての製剤化は、ビーカー中で800gの水を用いて開始する。IKAミキサーのシャフト及び回転翼を試料中に挿入して、混合速度を375rpm(混合物中に引き込まれる空気の量を最小化しながら跳ね散らさないで、表面より下の材料を引き上げて浮かせるために十分な)に調節する。
【0170】
製剤Gのために、成分の順序は:グリセリン、ポリソルベート(登録商標)80、アボカド油、ホウ酸、BAK、EDTA及びpHを7.4にするための1N NaOHであり;全ての成分を加えて混合する。次にPemulen(登録商標)を添加する(水中で1mg/ml溶液の10ml)。次に水を加えて1000mlの最終体積にする。
【0171】
製剤Glは、Pemulen(登録商標)がEDTAの添加後に添加されることを除いて、製剤Gと同じ様式で調製され;次に混合物のpHを1N NaOHでpH7.2に調節して、水で体積(1000ml)を合わせる。
【0172】
製剤Hは、ホホバ油がアボカド油の代りに置換されることを除いて、製剤Gと同じ様式で調製される。
混合されると直ちに、製剤Glは最も均一に分散しているように見えて、製剤G及びHの両方で見られた観察され得る溶解されなかった粒子又は固体はない。製剤Glは、1.1mPa・s(cP)の粘度、31×10-5ニュートン/cm(31ダイン/cm)の表面張力及び4.4パーセントの580nmにおける透過率を有する。
【0173】
試料をアリコートに分割して、25℃及び40℃で2週間インキュベートして、時間0、1週間及び2週間観察する。pH、容量オスモル濃度及び粘度は、全ての試料で両方の温度で変化しないままである。
【実施例6】
【0174】
製剤Glは、外見及び粘度に関して、実施例5における優秀な候補の人工涙液製剤として査定される。2種のさらなる製剤、G2及びIは、実施例5の結果に基づいて作製され;これらの製剤は、実施例5との実験の厳密及び調和を保つためにアボカド油を使用して作製される;しかしながら、本出願人らは、同様な結果を、他の油を使用して、ほとんど追加のないか又は全くない実験法で得ることができると考える。実施例5におけるように、混合は、マグネチックスターラーのプレート及びバーを使用するよりむしろIKAの高架式ミキサーを使用して行われる。
【0175】
製剤G2は、1リットルのビーカー(「水性相」のビーカーA)で作製して;700gの水を添加する。ホウ酸及びEDTAを348rpmで混合して添加する;次に混合物のpHを1N NaOHでpH7.4に調節する。
【0176】
別のビーカー(「油相」のビーカーB)中で、500mgのポリソルベート80を100gの水に添加して溶解されるまで混合する。10mgのPemulen(登録商標)を348rpmで混合しながら添加する;Pemulen(登録商標)が溶解されたときに、水中50%(w)の200μlのBAK溶液を、混合しながら添加し、続いて10gのグリセリン及び1gのアボカド油を添加する。
【0177】
ビーカーBの内容物をビーカーAに、380rpmで混合しながら添加して、混合を終夜室温で続ける。pHを測定して1N NaOHを添加してpHを7.37に調節し、次に混合物をメスフラスコに移して、水を添加して1リットルにする。
【0178】
製剤Iは、以下のようにして作製する:
1mg/gPemulen溶液を水中で作製する。約80gの水をビーカーに加えて、100mgのPemulenを添加し、マグネチックスターラーのバーを使用して、溶解されるまで混合し、次に水で100gにする。
【0179】
別のビーカー中で、約25gの水に500mgのポリソルベート(登録商標)80を加えて空気を溶液中に混入させないように、攪拌棒で混合する。
10gのPemulen(登録商標)溶液を小さいビーカーに攪拌棒を用いて移し、250μl(250mg)の18%NaOHを加えながら溶液を攪拌する。Pemulen(登録商標)を、この段階で、油相中に取り込む前に溶液の粘度を若干低下させる目的で、Pemulen(登録商標)の幾らかの限定された加水分解を生じさせる試みで、NaOHに加える。混合なしでは、均一な混合物はこの段階で得られなかった。次に溶液を混合して90分間加熱した。溶液を約40℃に維持した。1gのアボカド油を、ゆっくりと約30℃に温め、次にPemulen(登録商標)溶液に添加して混合する。混合は、平滑な均一溶液が形成されるまで続ける。温度は25℃~30℃に維持する。
【0180】
ホウ酸緩衝液は、800gの水を1リットルのビーカーに加え、次に以下の成分を順に加えることにより調製する:1gのグリセリン、6gのホウ酸、1gのEDTA、1NのNaOHでpHを7.39に調節した。次にポリソルベート(登録商標)溶液の全内容物を添加して混合する。次に温かいPemulen(登録商標)/油混合物を該緩衝溶液に、中程度の攪拌下で加えて、ビーカーを緩衝溶液ですすぐ。最後に、100mgのBAKを50%BAKの貯蔵溶液から加えて、最終のpHを7.59であるように決定する。成分の最終の濃度は、表5に示すように設定する。
【0181】
【表8】
製剤G2及びIの外見は同様である。両方とも溶解されない白色粒子を有する薄いグレイの曇った溶液である。2種の製剤のうち、製剤Iは、より小さい粒子を含有し、一方、製剤G2は、大きい粒子及び小さい粒子の両方を含有する。
【実施例7】
【0182】
製剤G2及びIで得られた結果は、BAK濃度の低下は可能であることもあり、製剤安定性を助けることができることもあることを示すと査定される。構成要素の添加順序も、ホウ酸塩緩衝液中でPemulen(登録商標)の貯蔵溶液を作製して、他の成分に加えることにより改変され、構成要素は、エマルションスクリーンを備えたSilverson高速ミキサーを使用して混合され、乳化プロセスに役立つであろう。
【0183】
6リットルの0.6%(w)ホウ酸塩緩衝液は、以下のように作製される。4.8リットルの水に36gのホウ酸を攪拌しながら添加して、1N NaOHを使用して、pHを約7.3に調節する。次に緩衝液に水を追加して6リットルにする。
製剤Jの調製
4リットルのビーカーに1.6gの0.6%(w)ホウ酸塩緩衝液を入れて、マグネチックスターラーのバーを使用して20gグリセリンと混合する。1gのポリソルベート(登録商標)80を添加して混合し続ける。2gの二ナトリウムEDTA二水和物を添加して混合する。全ての構成要素が視覚的に溶解されたときに、マグネチックスターラーを取り外してSilversonミキサーのエマルション混合スクリーンを溶液中に挿入する。Silversonミキサーの速度を、跳ね散らさないで、及び水中に引き込まれる空気を最少にして、表面より下の材料を引き上げて浮かせるように調節する。
【0184】
次に2gのアボカド油を添加して混合する。Pemulen(登録商標)溶液(0.02g/g)は、400gの0.6%(w)ホウ酸塩緩衝液を使用して10gのPemulen(登録商標)を溶解し、次に0.6%(w)のホウ酸塩緩衝液を使用して溶液を500gにして作製する。10gの0.02%(W)Pemulen(登録商標)溶液を他の成分の混合物に添加して混合する。
【0185】
0.2mlの50%(w)BAK溶液を上記混合物に添加して、0.005%(w)の最終のBAK濃度にする。該混合物を次に0.6%(w)のホウ酸塩緩衝液を使用して2リットルにする。
製剤Kの調製
30gの0.02%(w)Pemulen(登録商標)ホウ酸塩緩衝溶液を、水、グリセリン、EDTA、ポリソルベート(登録商標)80及びアボカド油の混合物に添加することを除いて、製剤Kを製剤Jと同じ様式で調製し、製剤Jに関して記載されたように混合する。0.2mlの50%(w)BAK溶液をこの混合物に添加して、0.005%(w)の最終のBAK濃度を得る。次に、0.6%(w)のホウ酸塩緩衝液を使用して、該混合物を、2リットルにする。
製剤Lの調製
50gの0.02%(w)Pemulen(登録商標)ホウ酸塩緩衝溶液を、水、グリセリン、EDTA、ポリソルベート(登録商標)80及びアボカド油の混合物に添加することを除いて、製剤Lを、試料Jと同じ様式で調製し、製剤Jに関して記載されたように混合する。次に、0.2mlの50%(w/v)のBAK溶液をこの混合物に加えて、0.005%(w)の最終のBAK濃度を得る。0.6%(w)のホウ酸塩緩衝液を使用して、該混合物を2リットルにする。
【0186】
成分の最終の濃度を表6に示す。
【0187】
【表9】
次にこれらの製剤を、25℃及び40℃における時間0及び1週間及び2週間後の安定性について試験する。
【実施例8】
【0188】
下の表7にリストとして挙げた典型的製剤は、実質的に実施例7で説明したように作製して混合する。
【0189】
【表10】
【実施例9】
【0190】
0.04mg/mlのPemulen(商標)の貯蔵溶液及び8mg/mlのヒプロメロース(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を、該ポリマーを熱DIに混入することにより調製する。貯蔵溶液は次に5℃で終夜貯蔵する。
【0191】
製剤T及び製剤Uの油相を、油と熱ポリソルベート80とを55℃から65℃で混合することにより調製する。次に油相を、40mg/mlのグリセリンの水溶液と、Silverson高剪断ミキサーを使用して約1時間55℃から65℃で乳化して、均一なエマルションを得る。残存する水性構成要素及びPemulen(商標)及びヒプロメロース(商標)を、均一なエマルション中に混合することにより加えて製剤T及び製剤Uを形成する。アボカド油を単独の油として含有する製剤Tは、上の表面に白色泡沫を有する均一な不透明なエマルションである。アボカド油及びヒマシ油を含有する製剤Uは、表面の泡沫を示さない均一な半透明のエマルションである。
【0192】
【表11】
これらの製剤を、pH、容量オスモル濃度、表面張力及び%透過率(透明性)について試験して、結果を下でまとめる。
【0193】
【表12】
したがって、そうでなければ同一の製剤Uで、0.1%のアボカド油が、0.05%のアボカド油及び0.05%のヒマシ油で置き換えられた場合に、製剤Uの透明性が製剤Tと比較して大きく増大しているだけでなく、粘度における僅かの減少がある。それ以外では、試験された2種の製剤の物理化学的特性は同様である。
【0194】
それに加えて、ヒマシ油の存在(例えば、製剤O)は、単独油の製剤M、Q及びRと比較して表面張力における減少を提供する。興味あることに、ヒマシ油を第2の油構成要素として添加すると(すなわち、ホホバ油も含有した製剤N)同様に表面張力が低下する。注目に値することとして、製剤O(ヒマシ油のみ)及びN(ヒマシ油とホホバ油)についての表面張力データは、等価の表面張力の低下を実現して、ヒマシ油の添加は、単独で使用されるか、又は他の油、例えばアボカド油及びホホバ油などの植物に基づく油との組み合わせで使用されるかに関わらず、表面張力に対して主要素をなす、支配的効果を有し得ることを示唆している。
【実施例10】
【0195】
本発明の方法で使用される治療用組成物の予想されるセットのモデルとして、選択されて試験された治療用組成物G-1、M、N、O、P、Q、R,T及びUを使用して得られた結果を、これらの組成物について決定された、粘度(N)、表面張力(ST)及び透明性(580nmにおける透過率、パーセント)パラメーターに加えて表にした。上で詳細に説明したように、患者の許容性は、透明性/Nに比例すると決定されたが、治療の治癒効果は、N/STに比例すると決定された。
【0196】
【表13】
したがって、これらの製剤のなかで、全てが低粘度(約15mPa・s(cP)未満)であり、粘度のみに基づいてそれらの全てを製剤A又は製剤Cのいずれかにする。
【0197】
製剤G-1、N、O、及びPは、全て、低表面張力のものである。したがって、これらの製剤は、低表面張力及び低粘度に基づいたマトリックス製剤Cに入る。製剤Mは、低表面張力に対する正常の縁にある。
【0198】
製剤Q、R、T及びUは、全て正常より高い表面張力を有し、正常な表面張力及び低粘度に基づくマトリックス製剤A内に入る傾向があるであろう。
これらの製剤(G-1、M、N、O、P、Q、R、T及びU)は、症状及び徴候がそれらの最適の治療製剤をマトリックス四半分のB又はDの内に入れる患者を処置するために、粘度を増大させること及び/又は表面張力を減少させる(例えば、製剤の油濃度を増大させることにより)ことにより、さらに変化させることができる。涙液の減少した表面張力は、液滴の眼表面上にわたる広がりやすさを助け、涙液膜破壊時間を増大させる。
【0199】
前述の例は、単に、本願明細書で開示された要素を組み込む種々の例の例示の目的のためのものである。多くの発明が本願明細書で開示され得る程度に、どのようなそのような発明も、本願において、単独で、本願で開示された他の特徴又は発明との組み合わせで、又は本発明のために必須と明示的に開示されていない任意の特徴又は特徴を欠いて開示されたと理解されるべきである。例えば、本願明細書に記載された発明は、本願明細書に記載された他の任意の特徴、要素、方法もしくは構造内で、又はそれらとの組み合わせで実行することができる。それに加えて、本願明細書中で特定の例で存在すると例示されている特徴は、本発明の他の例では、本発明から明示的に欠けているか、又はこの特許出願における他の箇所で記載されている特徴と、本特許出願では他に例示されていないか又はその特定の例で存在する様式で組み合わせることができることが意図されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲の言語によってのみ決定されるべきである。
【0200】
したがって、本願明細書で提供された本発明の種々の記載は、本発明の現在好適な例を例示する。しかしながら、本発明は、特に断りのない限り、提供された例、又は特定の形態、形状、及び要素の関係に限定されないと理解されるべきである。本発明の開示に基づいて、当業者は、本発明の開示が、そのような代替の各々の完全に書かれた記載を、各々が特定されて記載されたかのように提供すると理解されるように、与えられた特定の例の他の選択肢を直ちに着想するであろう。
【0201】
特許請求の範囲の用語は、本願明細書における特定の定義によるだけでなく、本発明の開示に照らして当業者により理解される図も参照して固有に定義されるであろう。
本願明細書で引用したあらゆる出版物及び特許文献は、あたかも各々が個々に記されたかのように、同じ程度に全ての目的のために、個々に本願明細書に援用する。