(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電解電極及びその製造方法、電解装置、衣類処理機器
(51)【国際特許分類】
A61L 2/03 20060101AFI20230711BHJP
C25B 11/055 20210101ALI20230711BHJP
D06F 39/00 20200101ALI20230711BHJP
【FI】
A61L2/03 100
C25B11/055
D06F39/00 Z
(21)【出願番号】P 2021563324
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2019127645
(87)【国際公開番号】W WO2020215770
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】201910346470.6
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910415321.0
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519385445
【氏名又は名称】▲無▼▲錫▼小天鵝電器有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI LITTLE SWAN ELECTRIC CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.18,SOUTH CHANGJIANG ROAD,NEW DISTRICT,WUXI,JIANGSU 214028,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 青波
(72)【発明者】
【氏名】周 存玲
(72)【発明者】
【氏名】熊 明
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 登▲軍▼
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0376804(US,A1)
【文献】特開2020-180315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00 - 2/28
A61L 11/00 - 12/14
C02F 1/46 - 1/48
C25B 11/00 - 11/097
D06F 39/00 - 39/10
D06F 58/02 - 58/08
D06F 58/20 - 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、外筒と、電解装置とを備え、
前記内筒は前記外筒の内に回動可能に設けられ、
前記電解装置は前記内筒と前記外筒との間に設けられ、
前記電解装置はアノードを備え、
前記アノードは、電解電極を採用しており、
前記電解電極は基体と、遷移層と、電極触媒材料層とを備え、前記遷移層は前記基体の表面に付着され、前記電極触媒材料層は前記遷移層の表面に付着されている電解電極において、
前記遷移層の厚さは、電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成される
衣類処理機器。
【請求項2】
前記遷移層の厚さは1-10nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の
衣類処理機器。
【請求項3】
前記基体はチタン基体であり、及び/または前記遷移層は酸化アルミニウム遷移層である
ことを特徴とする請求項1に記載の
衣類処理機器。
【請求項4】
前記電極触媒材料層は前記遷移層の表面にめっきされた白金層、または前記遷移層の表面に堆積された、ホウ素がドープされたダイヤモンド薄膜材料である
ことを特徴とする請求項1に記載の
衣類処理機器。
【請求項5】
前記電極触媒材料層は、安定性酸化物材料と活性酸化物材料から共同で形成されるナノ混合コーティング層であり、
前記安定性酸化物材料は、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、二酸化コバルト、三酸化タングステン、二酸化ルテニウムのいずれか一種以上の材料を含み、
前記活性酸化物材料は、イリジウム系酸化物、スズ系酸化物、鉛系酸化物のいずれか一種以上の材料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の
衣類処理機器。
【請求項6】
前記活性酸化物材料と前記安定性酸化物材料との重量の比は0.2:0.8~0.9:0.1である
ことを特徴とする請求項5に記載の
衣類処理機器。
【請求項7】
前記電解装置はさらにカソードを備え、
前記カソードは、金属材料または電解電極を採用している、
ことを特徴とする請求項1に記載の衣類処理機器。
【請求項8】
衣類処理機器の電解電極の製造方法であって、
前記電解電極は基体と、遷移層と、電極触媒材料層とを備え、前記遷移層は前記基体の表面に付着され、前記電極触媒材料層は前記遷移層の表面に付着されている電解電極において、前記遷移層の厚さは、電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成され、
基体の表面に遷移層を形成し、前記遷移層の厚さは、電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成されるステップと、
前記遷移層の表面に電極触媒材料層を形成するステップと、を含
み、
前記遷移層は酸化アルミニウム遷移層であり、
基体の表面に遷移層を形成する前記ステップは、具体的には、
純アルミニウムをターゲット材とし、アルゴンガスをスパッタリングガスとし、酸素ガスを反応ガスとし、基体をベースとし、高周波マグネトロンスパッタリング法により前記基体の表面に前記遷移層を形成すること、
または、
トリメチルアルミニウム蒸気を前駆体とし、水蒸気を酸化剤とし、80-300℃の温度条件で原子層堆積法により前記基体の表面に前記遷移層を形成すること、である
衣類処理機器の電解電極の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、
基体の表面に遷移層を形成し、前記遷移層の厚さは、電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成されるステップと、
前記遷移層の表面に電極触媒材料層を形成するステップと、を含み、
遷移層の表面に電極触媒材料を形成する前記ステップは、具体的には、
塩化イリジウム酸、塩化コバルトを溶媒に分散させて混合溶液を形成するステップと、
前記遷移層の表面に前記混合溶液をコーティングするステップと、
前記遷移層の表面に酸化イリジウムと酸化コバルトとのナノ混合コーティング層を形成するように熱処理して、前記ナノ混合コーティング層が前記電極触媒材料層であるステップと、を含む
製造方法。
【請求項10】
前記塩化イリジウム酸と前記塩化コバルトとのモルの比は1:0.02~1:4である
ことを特徴とする
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記混合溶液には、水酸基カルボン酸系のキレート剤が含まれている
ことを特徴とする
請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
熱処理する前記ステップは、具体的には、
前記混合溶液を複数回に分けてコーティングし、毎回コーティングした後、前記電解電極を100-400℃の温度条件で2-20分間焼成するステップと、
最後に前記混合溶液をコーティングした後、前記電解電極を400-650℃の温度条件で60-120分間焼成するステップと、を含む
ことを特徴とする
請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の交互引用
【0002】
本願は、下記二つの中国特許出願、即ち出願番号が201910346470.6であり、出願日が2019年04月26日である中国特許出願、及び出願番号が201910415321.0であり、出願日が2019年05月17日である中国特許出願に基づき優先権を主張し、上記二つの中国特許出願の全ての内容を参考として本願に援用する。
【0003】
本発明は電気化学殺菌の技術分野に関し、特に電解電極及びその製造方法、電解装置、衣類処理機器に関する。
【背景技術】
【0004】
水環境管理の面で、電気化学処理技術は工業廃水の分解及び再生、土壌修複などの環境汚染管理において際立ったため、人々の広い注目を浴びている。電気化学プロセスに関する電極触媒材料において、イリジウム系酸化物は電気化学の分野において比較的活躍されている。イリジウム系酸化物の電極材料は、電触媒活性が高く、耐食性が強く、耐久性に優れる等の多くの顕著な利点を有しているにも関わらず、工業の適用にはいくつかの不安定及び異常故障の要素があって、例えば、イリジウム系酸化物のコーティング層と基体との熱膨張係数の差異によって、一般的にイリジウム系酸化物のコーティング層は縦横に交差している亀裂構造を呈している。このような亀裂を有する表面形状によって、電極は、後続の熱処理過程において酸素ガスの侵入により基体基板の高温酸化を容易に引き起こし、電触媒過程においても電解液が亀裂を介して基体とコーティング層との界面に浸透しやすく、さらに基体表面の電気化学酸化を加速する。基体表面の酸化は、電極の耐用年数を低下させ、電極触媒材料を脱落させ、ひいては失活させることになる。
【0005】
衣類処理機器が衣類を洗浄する面で、衣類処理機器は使用中に、衣類繊維、不純物などの汚染物が時間とともにますます多くなって、そして衣類処理機器の内が湿っぽいため、細菌、真菌の増殖に温床を提供してしまう。また、ある着色の織物が水溶液に染料を解放することが多く、次にこれらの染料がそれと異なる色の織物に移行して、衣類の色が互いに染み着かれてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、以上の事情に鑑み、耐用年数が長く、殺菌効果が高い電解電極及びその製造方法、電解装置を提供すること、並びに耐用年数が長く、殺菌効果が高く、水における遊離染料分子を効果的に分解・脱色させて色移りを防止することが実現できる衣類処理機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施例の第一態様は、基体と、遷移層と、電極触媒材料層とを備え、前記遷移層は前記基体の表面に付着され、前記電極触媒材料層は前記遷移層の表面に付着されている電解電極において、前記遷移層の厚さは電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成される電解電極を提供する。
【0008】
一部の実施態様において、前記遷移層の厚さは1-10nmである。
【0009】
一部の実施態様において、前記基体はチタン基体であり、及び/または前記遷移層は酸化アルミニウム遷移層である。
【0010】
一部の実施態様において、前記電極触媒材料層は前記遷移層の表面にめっきされた白金層、または前記遷移層の表面に堆積された、ホウ素がドープされたダイヤモンド薄膜材料である。
【0011】
一部の実施態様において、前記電極触媒材料層は、安定性酸化物材料と活性酸化物材料から共同で形成するされる混合コーティング層であり、前記安定性酸化物材料は、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、二酸化コバルト、三酸化タングステン、二酸化ルテニウムのいずれか一種以上の材料を含み、前記活性酸化物材料は、イリジウム系酸化物、スズ系酸化物、鉛系酸化物のいずれか一種以上の材料を含む。
【0012】
一部の実施態様において、前記活性酸化物材料と安定性酸化物材料との重量の比は(0.2-0.9):(0.1-0.8)である。
【0013】
本発明の実施例の第二態様は、カソードとアノードとを含み、カソードは、金属材料または上記いずれかの前記電極を採用しており、前記アノードは上記いずれかの前記電極を採用している電解装置を提供する。
【0014】
本発明の実施例の第三態様は、内筒と、外筒と、上記いずれかの電解装置とを備え、前記内筒は前記外筒の内に回動可能に設けられ、前記電解装置は前記内筒と前記外筒との間に設けられた衣類処理機器を提供する。
【0015】
本発明の実施例の第四態様は、上記一部の技術案における前記電解電極の製造方法であって、
基体の表面に遷移層を形成し、前記遷移層の厚さは、電子が前記遷移層を通過できることを満たすように構成されるステップと、
遷移層の表面に電極触媒材料層を形成するステップと、
を含む電解電極の製造方法を提供する。
【0016】
一部の実施態様において、前記遷移層は酸化アルミニウム遷移層であり、基体の表面に遷移層を形成する前記ステップは、具体的には、純アルミニウムをターゲット材とし、アルゴンガスをスパッタリングガスとし、酸素ガスを反応ガスとし、基体をベースとし、高周波マグネトロンスパッタリング法により前記基体の表面に前記遷移層を形成すること、または、トリメチルアルミニウム蒸気を前駆体とし、水蒸気を酸化剤とし、80-300℃の温度条件で原子層堆積法により前記基体の表面に前記遷移層を形成すること、である。
【0017】
一部の実施態様において、遷移層の表面に電極触媒材料を形成する前記ステップは、具体的には、
塩化イリジウム酸、塩化コバルトを溶媒に分散させて混合溶液を形成するステップと、
前記遷移層の表面に前記混合溶液をコーティングするステップと、
前記遷移層の表面に酸化イリジウムと酸化コバルトとのナノ混合コーティング層を形成するように熱処理して、前記ナノ混合コーティング層が前記電極触媒材料層であるステップと、を含む。
【0018】
一部の実施態様において、前記塩化イリジウム酸と前記塩化コバルトとのモル比は1:0.02~1:4である。
【0019】
一部の実施態様において、前記混合溶液には、水酸基カルボン酸系のキレート剤が含まれている。
【0020】
一部の実施態様において、熱処理する前記ステップは、具体的には、
前記混合溶液を複数回に分けてコーティングし、毎回コーティングした後、前記電解電極を100-400℃の温度条件で2-20分間焼成するステップと、
最後に前記混合溶液をコーティングした後、前記電解電極を400-650℃の温度条件で60-120分間焼成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例の電解電極は、遷移層が比較的薄く、電子が量子トンネリング効果により遷移層を通過することができる。このように、電解電極の電気的触媒性能にほとんど影響を与えない。さらに、遷移層は遷移接続の役割を果たして、従来技術において基体と電極触媒材料層との間の膨張係数の差異に起因する電極触媒材料層に亀裂が発生する現象を大幅に改善し、電解電極の耐用年数を向上させることができる。
【0022】
本発明の実施例の衣類処理機器は、作動の過程において、外筒の内に水が入ったとき、電解装置を起動し、電解装置は強酸化活性を有する水酸基ラジカル(・OH)を発生させることができ、・OHは極めて高い酸化電位を有し、その酸化能力が極めて高いため、大部分の有機汚染物質と急速な連鎖反応を発生させることができ、・OHは低温で殺菌消毒して衣類に損害を与えないことができ、一部の・OHは水道水における塩素水と反応して活性塩素を発生させ、活性塩素は長期的に存在し、長期の抗菌効果を有する。電解装置が発生した大量の水酸基ラジカルは洗浄過程において着色衣類が水に遊離した染料分子の発色団を酸化破壊して染料を脱色させ、遊離した染料が淡色の衣類に汚染して色移りになることを防止し、反応を継続して染料分子を無害な二酸化炭素、水、無機塩などに分解させる。同時に電解電極は大量のマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルは、径が極めて小さいため、洗浄過程において衣類繊維内部に良好に入り、マイクロバブルの発破、吸着浮上の作用によって、マイクロバブルが絶えずに生成されてサイクルの洗濯を行い、洗浄剤に協力して衣類繊維の内部に堆積した皮脂、油脂、微細な塵などの汚れを徹底的に除去し、洗浄効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例の電解電極の模式図である。
【
図2】本発明の一実施例の電解電極の製造方法のフロー模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
なお、衝突がない場合、本発明における実施例及び実施例における技術的特徴は、互いに組み合せることができ、具体的な実施形態における詳細な説明は本発明の趣旨を解釈および説明するものであり、本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0025】
本発明の実施例の一態様は電解電極を提供し、当該電解電極はカソードであってもよいし、アノードであってもよい。
【0026】
図1を参照して、電解電極は基体10と、遷移層20と、電極触媒材料層30とを備え、遷移層20は基体10の表面に付着され、電極触媒材料層30は遷移層20の表面に付着されている。つまり、遷移層20は基体10の表面と電極触媒材料層30との間に介在され、遷移層20の厚さは、電子が遷移層20を通過できることを満たすように構成される。
【0027】
本発明の実施例の電解電極、遷移層20が比較的薄く、電子が量子トンネリング効果により遷移層20を通過することができる。このように、電解電極の電気的触媒性能にほとんど影響を与えない。さらに、遷移層20は遷移接続の役割を果たして、従来技術において基体と電極触媒材料層との間の膨張係数の差異に起因する電極触媒材料層に亀裂が発生する現象を大幅に改善し、電解電極の耐用年数を向上させることができる。
【0028】
一実施例において、上記遷移層20の厚さは1nm-10nm(nanometer、ナノ)であり、例えば1nm、2nm、4nm、6nm、8nm、10nmである。このように、遷移層20は基体10の表面に対して比較的確実な保護作用を果たすだけでなく、電解電極の電気的触媒性能にもほとんど影響を与えない。
【0029】
一実施例において、基体10はチタン基体に選択され、チタン基体は純チタンで製造されてもよいし、他の材料の表面に一層のチタン薄膜をめっきして形成されてもよい。
【0030】
遷移層20の材料の種類は複数種可能であり、例えばSiN(窒化珪)、TiN(窒化チタン)、TiO2ナノチューブなどである。
【0031】
一実施例において、遷移層20は酸化アルミニウム遷移層であり、酸化アルミニウム(化学式Al2O3)自体が非常に緻密であるため、基体10に対して相対的に密閉された保護を形成することができる。また、酸化アルミニウムは、良好な耐高温性能、耐食性を有し且つ良好な機械強度を有することによって破断されることは困難である。そのため、電解電極は、高温または電気化学の条件においても、遷移層20の保護によって基体10の表面はより一層酸化されることが困難であり、電解電極の耐用年数を大幅に向上させることになる。さらに、遷移層20とチタン基体との膨張係数の差異を小さくしても良いし、電極触媒材料層30と遷移層20との膨張係数を小さくしても良い。これにより、従来技術において基体と電極触媒材料層との間の膨張係数の差異に起因する電極触媒材料層に亀裂が発生する現象を大幅に改善し、電解電極の耐用年数を向上させることができる。
【0032】
電極触媒材料層30は複数種の選択が可能であり、例えば、一実施例において、電極触媒材料層30は遷移層20の表面にめっきされた白金層に形成される。または、電極触媒材料層30は遷移層20の表面に堆積された、ホウ素がドープされたダイヤモンド薄膜材料である。
【0033】
別の実施例において、電極触媒材料層30は、安定性酸化物材料と活性酸化物材料から共同で形成されるナノ混合コーティング層であり、安定性酸化物材料は、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、二酸化コバルト、三酸化タングステン、二酸化ルテニウムのいずれか一種以上の材料を含み、活性酸化物材料は、イリジウム系酸化物、スズ系酸化物、鉛系酸化物のいずれか一種以上の材料を含む。本実施例における電極触媒材料層30はコストが低く、経済性が高く、普及に有利である。
【0034】
なお、本願の実施例において、イリジウム系酸化物はIrO2を含み、スズ系酸化物はSnO2を含む。鉛系酸化物はPbO、Pb3O4、PbO2のいずれか一種以上である。
【0035】
ナノ混合コーティング層の表面をミクロな粗面とすることにより、電解電極の効果的な電気化学的活性表面積を増加させて酸素発生反応に適切な反応サイトを提供し、電解装置の電解効率を向上させることができる。
【0036】
一部の実施例において、上記活性酸化物材料と安定性酸化物材料との重量の比は(0.2-0.9):(0.1-0.8)である。なお、上記の活性酸化物材料と安定性酸化物材料との重量の比の和は1である。当該割合により、電極触媒材料層30における活性酸化物材料が占める割合を適切な割合とすることができ、電極触媒材料の活性を向上させることができる。
【0037】
本願の実施例の第二態様は、カソードとアノードとを含み、アノードは上記いずれかの電解電極であり、カソードは金属材料または上記いずれかの電解電極である。なお、前記金属材料は、カソードの耐用年数を向上させるようにステンレスまたは他の腐食しにくい金属材料であってもよい。
【0038】
一実施例において、カソード及びアノードはいずれも上記の電解電極を採用すると、つまり、二枚の電解電極の中、一方の電解電極をアノードとし、他方の電解電極をカソードとする。一面から言えば、電解過程において、一方の電解電極の腐食速度が他方の電解電極の腐食速度を超えたことが存在し得り、いずれかの電解電極の腐食程度が一定量に達した場合に電源の正負極を切り替えて二つの電解電極の極性を交換することができる。このように、二枚の電解電極はほぼ同じ耐用年数を有し、電解装置の耐用年数を延長させることができる。一方、水電解の過程においてカソードの表面に水垢が徐々に生成され、水垢が取り除かれることが困難であり、特に水質が悪く、水垢が多く蓄積された場合に水電解装置の電解効能は大きく影響されている。本願の実施例において、カソード上の水垢が一定量に達した場合に電源の正負極を切り替えて二つの電解電極の極性を交換することにより、先に一定量の水垢が堆積された電極はアノードとされ、水垢がアノードから徐々に剥離されて水垢を除去する役割に達成する。
【0039】
本願の実施例の第三態様は、内筒(図示せず)と、外筒(図示せず)と、上記の電解装置とを備え、内筒は外筒の内に回動可能に設けられ、電解装置は内筒と外筒との間に設けられた衣類処理機器(図示せず)を提供する。
【0040】
本願の実施例の衣類処理機器、作動の過程において、外筒内に水が入ったとき、電解装置を起動し、電解装置は強酸化活性を有する水酸基ラジカル(・OH)を発生させることができ、・OHは極めて高い酸化電位を有し、その酸化能力が極めて高いため、大部分の有機汚染物質と急速な連鎖反応を発生させることができ、・OHは低温で殺菌消毒して衣類に損害を与えないことができ、一部の・OHは水道水における塩素水と反応して活性塩素を発生させ、活性塩素は長期的に存在し、長期の抗菌効果を有する。電解装置が発生した大量の水酸基ラジカルは洗浄過程において着色衣類が水に遊離した染料分子の発色団を酸化破壊して染料を脱色させ、遊離した染料が淡色の衣類に汚染して色移りになることを防止し、反応を継続して染料分子を無害な二酸化炭素、水、無機塩などに分解させる。同時に電解電極は大量のマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルは、径が極めて小さいため、洗浄過程において衣類繊維内部に良好に入り、マイクロバブルの発破、吸着浮上の作用によって、マイクロバブルが絶えずに生成されてサイクルの洗濯を行い、洗浄剤に協力して衣類繊維内部に堆積した皮脂、油脂、微細な塵などの汚れを徹底的に除去し、洗浄効果を高めることができる。
【0041】
図2を参照して、本願の実施例の第四態様は、
基体10の表面に遷移層20を形成し、前記遷移層20の厚さは、電子が前記遷移層20を通過できることを満たすように構成されるステップS1と、
遷移層20の表面に電極触媒材料層30を形成するステップS2と、
を含む電解電極の製造方法を提供する。
【0042】
基体10の表面に遷移層20を形成する方法は複数種であり、例えば、高周波マグネトロンスパッタリング法または原子層堆積法を採用しても良い。
【0043】
一実施例において、遷移層20は酸化アルミニウム遷移層であり、高周波マグネトロンスパッタリング法により遷移層20を形成する方法は、具体的には、純アルミニウムをターゲット材とし、アルゴンガスをスパッタリングガスとし、酸素ガスを反応ガスとし、基体10をベースとし、高周波マグネトロンスパッタリング法により基体10の表面に遷移層20を形成することである。また、高周波マグネトロンスパッタリング法以外の操作方法について従来技術を採用すればよく、ここで説明を省略する。高周波マグネトロンスパッタリングのプロセスにおいて、アルミニウム原子が酸化された後に高エネルギーを持って基体10に射出して、基体10の表面に遷移層20を形成する。当該遷移層20と基体10の表面との結合力は比較的大きい。
【0044】
別の実施例において、遷移層20は酸化アルミニウム遷移層であり、原子層堆積法により遷移層20を形成する方法は、具体的には、トリメチルアルミニウム蒸気を前駆体とし、水蒸気を酸化剤として採用し、80℃-300℃の成長の温度条件で、原子層堆積法により基体10の表面に遷移層20を形成することである。このように、基体10の表面に遷移層20がホームポジションで成長し得る。ホームポジションで遷移層20が成長する過程において、新たに生成したものは高い化学活性を有しているため、遷移層20と基体10の表面との結合力が大きくなる。上記の成長温度が100℃-200℃であることが好ましく、当該温度条件で遷移層20の形成にさらに適する。
【0045】
電極触媒材料層30は複数種の選択が可能であり、例えば、一実施例において、電極触媒材料層30は遷移層20の表面にめっきされた白金層に形成される。または、電極触媒材料層30は遷移層20の表面に堆積された、ホウ素がドープされたダイヤモンド薄膜材料である。
【0046】
別の実施例において、電極触媒材料層30は、安定性酸化物材料と活性酸化物材料から共同で形成されるナノ混合コーティング層であり、安定性酸化物材料は、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、二酸化コバルト、三酸化タングステン、二酸化ルテニウムのいずれか一種以上の材料を含み、活性酸化物材料は、イリジウム系酸化物、スズ系酸化物、鉛系酸化物のいずれか一種以上の材料を含む。本実施例における電極触媒材料層30はコストが低く、経済性が高く、普及に有利である。
【0047】
ナノ混合コーティング層の表面をミクロな粗面とすることにより、電解電極の効果的な電気化学的活性表面積を増加させて酸素発生反応に適切な反応サイトを提供し、電解装置の電解効率を向上させることができる。
【0048】
本願の実施例において、安定性酸化物材料を二酸化コバルトとし、活性酸化物材料をイリジウム系酸化物とする例として、ナノ混合コーティング層の製造過程について説明する。
【0049】
具体的には、上記のステップS2は、具体的には、
塩化イリジウム酸(塩化イリジウム酸六水和物、化学式はH2IrCl6・6H2O)、塩化コバルト(化学式はCoCl2)を溶媒に分散させて混合溶液を形成するステップS21と、
前記遷移層20の表面に混合溶液をコーティングするステップS22と、
遷移層20の表面に酸化イリジウムと酸化コバルトとのナノ混合コーティング層を形成するように熱処理して、ナノ混合コーティング層が上記の電極触媒材料層30であるステップS23と、を含む。
【0050】
具体的に、溶媒は、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエンシクロヘキサノン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコール、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルアセトン、メチルブタノン、メチルイソブタノン、グリコールモノメチルエーテル、グリコールモノジエチルエーテル、グリコールモノブチルエーテル、アセトニトリルのいずれか一種以上である。
【0051】
コーティングは手動でコーティングしてもよく、他の方法、例えば電気泳動、スプレーなどを採用して行っても良い。
【0052】
上記の塩化イリジウム酸と塩化コバルトとのモルの比は1:0.02~1:4であり、当該割合により、熱処理後の電極触媒材料層30における安定性酸化物材料と活性酸化物材料との重量の比を(0.2-0.9):(0.1-0.8)の区間範囲に維持させて、電極触媒材料の活性を向上させることができる。本願の実施例において、塩化イリジウム酸と塩化コバルトとのモルの比の範囲が1:0.2~1:3であることが好ましく、当該比率の条件では、電解電極の触媒材料がより良い活性を有する。
【0053】
前駆体である塩化イリジウム酸及び塩化コバルトが溶液において比較的良好な分散性を有し、かつ電極触媒材料層30と遷移層20との間には比較的良好な結合力を有していることができるために、一実施例において、上記混合溶液は水酸基カルボン酸系のキレート剤を含み、水酸基カルボン酸系のキレート剤はキレート性を有するだけではなく比較的良好な分散性も有し、且つ生物分解性に優れ、環境保護の要求に合致する。なお、関連技術においてキレート剤の種類としては複数種があり、例えば、ポリリン酸塩系、アミノカルボン酸系、1、3-ジケトン系、オキシカルボン酸系、ポリアミン系等など挙げられる。本実施例において、キレート剤は水酸基カルボン酸系に選択され、水酸基カルボン酸系のキレート剤は複数種であり、グルコン酸、ポリアクリル酸、マレイン酸などを含む。
【0054】
上記のステップS23は、具体的には、
混合溶液を複数回に分けてコーティングし、毎回コーティングした後、電解電極は100℃-400℃の温度で2-20分間焼成する必要があり、電極触媒材料層30の厚さが必要な厚さになるまで複数回のコーティング、複数回の焼成を行っている。
【0055】
最後に混合溶液をコーティングした後、400℃-650℃で60-120分間焼成する。
【0056】
熱処理により、上記の溶媒を揮発または分解させ、最終的に遷移層20の表面にホームポジションで酸化イリジウムと酸化コバルトとのナノ混合コーティング層を生成することができる。
【0057】
本発明に提供された各実施例/実施形態は矛盾が生じない場合に互いに組み合せても良い。
【0058】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するもためはなく、当業者にとって、本発明は様々な変形及び変更が可能である。本発明の精神と原則の内において、行われたいかなる修正、均等置換、改善等は、本出願の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
10 基体
20 遷移層
30 電極触媒材料層