(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】回転ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/12 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
F16F9/12
(21)【出願番号】P 2022501415
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006103
(87)【国際公開番号】W WO2021166043
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】秋場 潤一郎
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-250191(JP,A)
【文献】特開2007-064329(JP,A)
【文献】特開平05-044760(JP,A)
【文献】特開2000-220682(JP,A)
【文献】特開2011-231868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粘性流体が充填されるハウジングと、前記ハウジングの開口を閉塞するキャップと、シャフトを前記キャップから外部に露出して前記ハウジング内に収容され、前記ハウジングに対して回転自在に支持されるロータとを備え、粘性流体の剪断抵抗により生じるトルクによって前記ロータの回転に抵抗を付与する回転ダンパにおいて、
前記ハウジングは、前記ロータの側面に対向する底面の中心に形成された、前記シャフトの軸心を回転自在に支持する軸受け部と、前記軸受け部を中心に同心円状に立設され、前記軸受け部を中心とする点対称な周位置に切り欠きが形成され、隣接するものとの間で前記軸受け部を中心とする円周を均等に分割する周位置に各前記切り欠きが分散配置された、前記ロータの側面との間に所定の隙間を形成する高さの複数の壁と、これら複数の壁の最外周のものの周囲に形成された、前記キャップの側面に当接する高さの周壁と、この周壁の周囲に形成された前記キャップとの嵌合部とを有し、
前記ロータは、前記ハウジングの底面に対向する側面の中心に形成された、前記軸受け部に回転自在に支持される被支持部と、前記ハウジング側の壁の立設ピッチと半ピッチずれたピッチで前記被支持部を中心に同心円状に立設され、最外周のものに囲まれるものが前記被支持部を中心とする点対称な周位置に切り欠きが形成され、隣接するものとの間で前記被支持部を中心とする円周を均等に分割する周位置に各前記切り欠きが分散配置された、前記ハウジングの底面との間に所定の隙間を形成する高さの複数の壁と、これら複数の壁の最外周のものの周囲に立設された、前記ハウジングの底面との間に所定の隙間を形成する高さの多角形状に形成されている周壁と、前記被支持部を中心とする円周方向に等間隔に等弧長で形成されて周壁の内周側に前記ロータの側面を開口させる複数の排出孔とを有し、
前記キャップは、前記ロータの前記複数の壁が形成された側面と反対の側面を覆う蓋部と、前記蓋部の周囲に形成されて前記ハウジングの嵌合部に嵌合する周縁部とを有する
ことを特徴とする回転ダンパ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記軸受け部を中心に180°対向する各壁の周位置に前記切り欠きが一対形成され、最内周の壁と最内周の壁の外側に2番目に立設される壁とに形成される各前記切り欠きが直線上に位置し、最内周の壁の外側に1番目に立設される壁と3番目に立設される最外周の壁とに形成される各前記切り欠きが、最内周の壁に形成される各前記切り欠きを通る直線と直交する直線上に位置し、
前記ロータは、前記被支持部を中心に180°対向する最内周の壁の周位置に前記切り欠きが一対形成され、最内周の壁の外側に1番目に立設される壁に形成される前記切り欠きが、最内周の壁の各前記切り欠きを通る直線にそれぞれ45°傾いた2直線上の4箇所に位置し、最内周の壁の外側に2番目に立設される壁に形成される前記切り欠きが、最内周の壁の各前記切り欠きを通る直線とこの直線に直交する直線との2直線上の4箇所に位置し、最外周の壁が最内周の壁の外側に3番目に立設される
ことを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ。
【請求項3】
前記ハウジングに形成された複数の壁のうちの1つの壁は
前記ハウジングに形成されたその他の壁より高い、または、前記ロータに形成された複数の壁のうちの1つの壁は
前記ロータに形成されたその他の壁より高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転ダンパ。
【請求項6】
前記ハウジングの開口は、前記キャップの周縁部外周と前記ハウジングの嵌合部との当接箇所が溶着されて密閉されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内の粘性流体により生じるトルクによってロータの回転に抵抗を付与する回転ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の回転ダンパとしては、例えば、特許文献1に開示された回転ダンパがある。
【0003】
この回転ダンパは、ケースと、このケースに収容されたシリコーンオイルと、ローターと、ケースの開口を閉塞するキャップとを備える。ローターは、ケースから外部へ一部が突出する軸部に、シリコーンオイル中を移動する抵抗部が設けられて、構成される。ケースは、円形の底部の底面の中心に、ローターの軸部を支持する軸支部が設けられ、軸支部の中心を中心とした同心円上に円周溝が空気移動用通路として設けられている。また、ローターの抵抗部には、軸部の中心を中心とした同心円上に複数の円弧状貫通孔が空気停留部として設けられるとともに、この円弧状貫通孔を連絡する凹溝が、円弧状貫通孔の同心円上に空気移動用通路として、抵抗部の表裏に設けられている。
【0004】
ローターが回転するとき、凹溝の下流部に負圧部が発生するので、組み立て時にケース内に混入した空気がこの負圧部に追従して、一方の円弧状貫通孔から他方の円弧状貫通孔へ移動する。この際、空気は、円周溝および凹溝を通ってほとんど圧縮されない状態で移動する。したがって、この従来の回転ダンパにおいては、ローターが回転しても、ケース内に混入した空気に起因する異音の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された上記従来の回転ダンパでは、ケース内に混入した空気に起因する異音の発生は防止されるが、回転ダンパの内部に滞留している空気の影響で、ローターの回転中に回転抵抗が変動してしまう不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
内部に粘性流体が充填されるハウジングと、ハウジングの開口を閉塞するキャップと、シャフトをキャップから外部に露出してハウジング内に収容され、ハウジングに対して回転自在に支持されるロータとを備え、粘性流体の剪断抵抗により生じるトルクによってロータの回転に抵抗を付与する回転ダンパにおいて、
ハウジングは、ロータの側面に対向する底面の中心に形成された、シャフトの軸心を回転自在に支持する軸受け部と、軸受け部を中心に同心円状に立設され、軸受け部を中心とする点対称な周位置に切り欠きが形成され、隣接するものとの間で軸受け部を中心とする円周を均等に分割する周位置に各切り欠きが分散配置された、ロータの側面との間に所定の隙間を形成する高さの複数の壁と、これら複数の壁の最外周のものの周囲に形成された、キャップの側面に当接する高さの周壁と、この周壁の周囲に形成されたキャップとの嵌合部とを有し、
ロータは、ハウジングの底面に対向する側面の中心に形成された、軸受け部に回転自在に支持される被支持部と、ハウジング側の壁の立設ピッチと半ピッチずれたピッチで被支持部を中心に同心円状に立設され、最外周のものに囲まれるものが被支持部を中心とする点対称な周位置に切り欠きが形成され、隣接するものとの間で被支持部を中心とする円周を均等に分割する周位置に各切り欠きが分散配置された、ハウジングの底面との間に所定の隙間を形成する高さの複数の壁と、これら複数の壁の最外周のものの周囲に立設された、ハウジングの底面との間に所定の隙間を形成する高さの多角形状に形成されている周壁と、被支持部を中心とする円周方向に等間隔に等弧長で形成されて周壁の内周側にロータの側面を開口させる複数の排出孔とを有し、
キャップは、ロータの複数の壁が形成された側面と反対の側面を覆う蓋部と、蓋部の周囲に形成されてハウジングの嵌合部に嵌合する周縁部とを有することを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、ハウジングの軸受け部にロータの被支持部が支持されてロータがハウジングに収容される際、ハウジングの各壁に形成された切り欠きと、ロータの各壁に形成された切り欠きとが、ハウジングの軸受け部を中心に点対称な周位置に配置されるように、ロータがハウジングに収容されることで、ハウジングの軸受け部を中心とする円周方向に均等に各切り欠きが分散配置され、ハウジングの軸受け部を中心に曲折しながら放射状に伸びる粘性流体の流路が形成される。
【0009】
したがって、回転ダンパの組み立て時、ハウジングの軸受け部に定量の粘性流体を注入した後、ハウジングとロータとの相対位置を上記の位置にしてロータをハウジングに収容させると、粘性流体は、ハウジングの軸受け部を中心に曲折しながら放射状に伸びる粘性流体の流路を伝って、粘性流体に混入して気泡となった空気と共に、ロータの自重によって促進されながら、速やかにハウジングの外周へ向かって均等に分散して移動する。ハウジングの外周へこのように向かって移動させられる粘性流体に含まれる空気は、ロータの周壁の内周側に形成された複数の排出孔に粘性流体が到達すると、ロータの側面を開口させる複数の排出孔から粘性流体によって押し出され、ハウジングの底面とロータの側面との間から外部へ排出される。この際、ロータの最外周の壁には切り欠きが形成されていないため、粘性流体のハウジングの外周へ向かう勢いがこの最外周の壁によって抑制され、粘性流体がハウジングの嵌合部へ溢れ出ることが防止される。
【0010】
このため、この状態でキャップをロータの反対の側面に被せて、キャップの周縁部をハウジングの嵌合部に嵌合させることで、ハウジングの内部に空気が滞留しない回転ダンパを得ることができる。よって、ローターの回転中に回転抵抗が変動してしまう不具合を起こすことのない回転ダンパを提供することができる。
また、ロータの周壁とハウジングの最外周の壁との間における径方向の隙間は、多角形状をした周壁の角部分において、大きく形成される。したがって、この隙間が、多角形状をした周壁の辺部分において小さくても、この隙間に到達する粘性流体は、周壁の角部分に大きく形成される隙間から、周壁の辺部分に形成される小さな隙間にスムーズに流れ、隙間全体に速やかに充填される。このため、上記隙間に到達する粘性流体に含まれる空気は、上記隙間を経由して排出孔から外部へ速やかに排出される。また、上記隙間全体の大きさを調節することにより、ロータの回転に与える回転抵抗の大きさを微調整することができる。
【0011】
また、本発明は、
ハウジングが、軸受け部を中心に180°対向する各壁の周位置に切り欠きが一対形成され、最内周の壁と最内周の壁の外側に2番目に立設される壁とに形成される各切り欠きが直線上に位置し、最内周の壁の外側に1番目に立設される壁と3番目に立設される最外周の壁とに形成される各切り欠きが、最内周の壁に形成される各切り欠きを通る直線と直交する直線上に位置し、ロータが、被支持部を中心に180°対向する最内周の壁の周位置に切り欠きが一対形成され、最内周の壁の外側に1番目に立設される壁に形成される切り欠きが、最内周の壁の各切り欠きを通る直線にそれぞれ45°傾いた2直線上の4箇所に位置し、最内周の壁の外側に2番目に立設される壁に形成される切り欠きが、最内周の壁の各切り欠きを通る直線とこの直線に直交する直線との2直線上の4箇所に位置し、最外周の壁が最内周の壁の外側に3番目に立設される
ことを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、ハウジングの軸受け部にロータの被支持部が支持されてロータがハウジングに収容される際、ハウジングの最内周の壁に180°対向する周位置に形成される各切り欠きを通る直線と、ロータの最内周の壁に180°対向する周位置に形成される各切り欠きを通る直線とが直交するように、ロータがハウジングに収容されることで、ハウジングの各壁に形成された切り欠きと、ロータの各壁に形成された切り欠きとが、ハウジングの軸受け部を中心に点対称な周位置に配置される。したがって、各切り欠きは、ハウジングの軸受け部を中心とする円周方向に均等に分散配置され、ハウジングの軸受け部を中心に曲折しながら放射状に伸びる粘性流体の流路が形成される。
【0013】
また、本発明は、ハウジングに形成された複数の壁のうちの1つの壁がハウジングに形成されたその他の壁より高い、または、ロータに形成された複数の壁のうちの1つの壁がロータに形成されたその他の壁より高いことを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、ハウジングに形成された複数の壁の先端とロータの側面との間に形成される所定の隙間の大きさ、および、ロータに形成された複数の壁の先端とハウジングの底面との間に形成される所定の隙間の大きさが、ハウジングに形成された複数の壁のうちの1つの壁がその他の壁より高い分、または、ロータに形成された複数の壁のうちの1つの壁がその他の壁より高い分、大きくなる。したがって、部品の寸法のバラツキ等によって生じる上記の各所定の隙間の大きさの変動分が各所定の隙間の大きさに占める割合は、小さくなる。このため、上記の各所定の隙間の大きさにバラツキが生じても、そのバラツキに起因するロータの回転抵抗の変動を抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、複数の排出孔の径方向が、ロータに形成された最外周の1つ内側の壁の外径と周壁の内径との間にわたって形成され、ロータに形成された最外周の壁が各排出孔の径方向幅の中心に位置することを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、粘性流体の上記流路を経由して、ロータに形成された最外周の1つ内側の壁まで到達した粘性流体に含まれる空気が、速やかに各排出孔から排出されると共に、ロータに形成された切り欠きの無い最外周の壁を乗り越える粘性流体に含まれる空気も、速やかに各排出孔から排出される。このため、粘性流体に含まれる空気は、各排出孔から効率的に排出されるようになる。
【0019】
また、本発明は、ハウジングの開口が、キャップの周縁部外周とハウジングの嵌合部との当接箇所が溶着されて密閉されることを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、ハウジングとキャップとの溶着箇所が、ハウジングの内部に充填される粘性流体が到達しない箇所に設定される。したがって、ハウジングとキャップとの溶着箇所に粘性流体が及んで、ハウジングとキャップとの溶着が行えなくなることが防げる。このため、ハウジングとキャップとは、キャップの周縁部外周とハウジングの嵌合部との当接箇所で確実に溶着されて、ハウジングの開口は確実にキャップにより閉塞されて密閉される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ローターの回転中に回転抵抗が変動してしまう不具合を起こすことのない回転ダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態による回転ダンパの三面図である。
【
図2】一実施の形態による回転ダンパの外観斜視図である。
【
図3】一実施の形態による回転ダンパの断面図である。
【
図4】一実施の形態による回転ダンパを構成するハウジングを各面から見た図である。
【
図5】一実施の形態による回転ダンパを構成するロータを各面から見た図である。
【
図6】一実施の形態による回転ダンパを構成するキャップを各面から見た図である。
【
図7】一実施の形態による回転ダンパを構成するシール部材を各面から見た図である。
【
図8】一実施の形態による回転ダンパにおけるハウジングとロータの各壁の配置状態を示す断面図である。
【
図9】一実施の形態による回転ダンパにおけるハウジングとロータの各壁によって形成される粘性流体の流路を示す断面図である。
【
図10】変形例によるハウジングと一実施の形態によるロータの各壁によって形成される粘性流体の別の流路を示す断面図である。
【
図11】変形例によるロータと一実施の形態によるハウジングの各壁の配置状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明による回転ダンパを実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する各図において、同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
【0024】
図1(a)は、本発明の一実施の形態による回転ダンパ1の平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は底面図である。また、
図2(a)は回転ダンパ1を底面側から見た外観斜視図、同図(b)は上面側から見た外観斜視図である。また、
図3は、
図1(b)における回転ダンパ1のIII-III線破断矢視断面図である。
【0025】
回転ダンパ1は、ハウジング2、キャップ3、ロータ4、シール部材5および図示しない粘性流体を備えて構成される。ハウジング2、キャップ3およびロータ4は樹脂材料から形成されるが、金属材料から形成することも可能である。キャップ3は、ハウジング2の開口を閉塞しており、ハウジング2の内部にはシリコーンオイル等の粘性流体がキャップ3との間に充填されている。ロータ4は、そのシャフト4aをキャップ3から外部に露出してハウジング2内に収容され、ハウジング2に対して回転自在に支持されている。シール部材5は、
図3に示すように、キャップ3とシャフト4aとの間に設けられており、キャップ3とシャフト4aとの間から粘性流体が漏れるのを防止している。回転ダンパ1は、ハウジング2に充填された粘性流体の剪断抵抗により生じるトルクによって、ロータ4の回転に抵抗を付与する。
【0026】
ハウジング2は、
図4(a)に平面図、同図(b)に側面図、同図(c)に正面図が示される。また、同図(d)に、同図(a)におけるハウジング2のIVd-IVd線破断矢視断面図が示される。
【0027】
ハウジング2は円盤状をしており、平面視で略円形状をした外周の対向する部分が平行にカットされて、回り止め部2aが形成されている。この回り止め部2aは、回転ダンパ1によって回転抵抗が付される装置の一方の物体にハウジング2が取り付けられたとき、ハウジング2がこの一方の物体に対して回転するのを防止する。
【0028】
ハウジング2は、ロータ4の側面4b(
図3参照)に対向する底面2bの中心に軸受け部2cが形成されている。軸受け部2cは、中空円筒状をしており、ロータ4のシャフト4aの軸心を回転自在に支持する。ハウジング2の底面2bには、複数の壁2dが軸受け部2cを中心に同心円状に立設されている。複数の壁2dは、ハウジング2とロータ4との相対回転時、粘性流体に剪断抵抗を与える剪断抵抗板となる。本実施形態では、複数の壁2dは、最内周の壁2d0と、この最内周の壁2d0の外側に1番目、2番目および3番目に立設される壁2d1,2d2および2d3とから構成される。最内周の壁2d0の外側に3番目に立設される壁2d3は、これら複数の壁2d0,2d1,2d2および2d3の最外周のものとなる。
【0029】
各壁2d0,2d1,2d2および2d3には、軸受け部2cを中心とする点対称な周位置に切り欠き2eが形成され、各切り欠き2eは、隣接する壁2dとの間で軸受け部2cを中心とする円周を均等に分割する周位置に分散配置されている。本実施形態では、各壁2d0,2d1,2d2および2d3には、軸受け部2cを中心に180°対向する各壁2dの周位置に切り欠き2eが一対形成されている。最内周の壁2d0と最内周の壁2d0の外側に2番目に立設される壁2d2とに形成される各切り欠き2eは、直線L1上に位置する。また、最内周の壁2d0の外側に1番目に立設される壁2d1と3番目に立設される最外周の壁2d3とに形成される各切り欠き2eは、最内周の壁2d0に形成される各切り欠き2eを通る直線L1と直交する直線L2上に位置する。
【0030】
各壁2d0,2d1,2d2および2d3は、ロータ4の側面4bとの間に所定の隙間α(
図3参照)を形成する高さを有する。本実施形態では、ハウジング2に形成された複数の壁2d0,2d1,2d2および2d3のうちの1つの最内周の壁2d0が、その他の壁2d1,2d2および2d3より高く設定されており、ロータ4の側面4bと壁2d0との間に隙間αは無い。なお、本実施形態では、隙間αは0.2~0.25mmに設定されている。また、ハウジング2は、最外周の壁2d3の周囲に、キャップ3の側面に当接する高さの周壁2fを有する。ハウジング2は、さらに、この周壁2fの周囲に円環状に形成された、キャップ3との嵌合部2gを有している。
【0031】
ロータ4は、
図5(a)に平面図、同図(b)に側面図、同図(c)に正面図、同図(d)に底面図が示される。また、同図(e)に、同図(d)におけるロータ4のVe-Ve線破断矢視断面図が示される。
【0032】
ロータ4は、シャフト4aが中心に立設された円盤状をしている。シャフト4aは円柱状をしているが、外周の対向する部分に窪みが対称に形成されて、回り止め部4a1が形成されている。この回り止め部4a1は、回転ダンパ1によって回転抵抗が付される装置の他方の物体にシャフト4aが取り付けられたとき、シャフト4aがこの他方の物体に対して回転するのを防止する。
【0033】
ロータ4は、ハウジング2の底面2bに対向する側面4bの中心に、センターピン4cが被支持部として形成されている。センターピン4cは、円柱状をしており、中空円筒状をしたハウジング2の軸受け部2cの中空部に嵌まって、軸受け部2cに回転自在に支持される。ロータ4の側面4bには、ハウジング2側の壁2dの立設ピッチと半ピッチずれたピッチで、センターピン4cを中心に複数の壁4dが同心円状に立設されている。複数の壁4dは、ハウジング2とロータ4との相対回転時、ハウジング2の壁2dと共に、粘性流体に剪断抵抗を与える剪断抵抗板となる。本実施形態では、複数の壁4dは、最内周の壁4d0と、この最内周の壁4d0の外側に1番目、2番目および3番目に立設される壁4d1,4d2および4d3とから構成される。最内周の壁4d0の外側に3番目に立設される壁4d3は、これら複数の壁4d0,4d1,4d2および4d3の最外周のものとなる。
【0034】
最外周の壁4d3に囲まれる壁4d0,4d1および4d2には、センターピン4cを中心とする点対称な周位置に切り欠き4eが形成され、各切り欠き4eは、隣接する壁4dとの間でセンターピン4cを中心とする円周を均等に分割する周位置に分散配置されている。本実施形態では、最内周の壁4d0には、センターピン4cを中心に180°対向する周位置に切り欠き4eが一対形成されている。また、最内周の壁4d0の外側に1番目に立設される壁4d1に形成される切り欠き4eは、最内周の壁4d0の各切り欠き4eを通る直線L3にそれぞれ45°傾いた2直線L4,L5上の4箇所に位置する。また、最内周4d0の壁の外側に2番目に立設される壁4d2に形成される切り欠き4eは、最内周の壁4d0の各切り欠き4eを通る直線L3とこの直線L3に直交する直線L6との2直線上の4箇所に位置する。
【0035】
各壁4d0,4d1,4d2および4d3並びに周壁4fは、シャフト4aの軸方向において、ハウジング2の底面2bとの間に所定の隙間α(
図3参照)を形成する高さを有し、ハウジング2の径方向において、ハウジング2の各壁2d0,2d1,2d2および2d3との間に所定の隙間α1を形成する厚みを有する。また、ロータ4は、最外周の壁4d3の周囲に立設された周壁4fを有する。周壁4fは、ハウジング2の底面2bとの間に所定の隙間αを形成する高さを持つが、
図5では、周壁4fの高さが壁4d0,4d1,4d2および4d3の高さより低く描かれている。周壁4fの高さは、基本的には、
図3に示すように壁4d0,4d1,4d2および4d3の高さと等しく設定される。
図5に示すように周壁4fの高さが壁4d0,4d1,4d2および4d3の高さより低く設定されると、ロータ4の回転抵抗が低く設定される。ロータ4は、さらに、この周壁4fの内周側にロータ4の側面4bを開口させる排出孔4gを有する。排出孔4gは、センターピン4cを中心とする円周方向に等間隔に等弧長で複数形成されている。本実施形態では、排出孔4gは、センターピン4cを中心とする円周方向に4個形成されている。また、排出孔4gの径方向は、最外周の1つ内側の壁4d2の外径と周壁4fの内径との間にわたって形成され、最外周の壁4d3は各排出孔4gの径方向幅の中心に位置する。
【0036】
キャップ3は、
図6(a)に平面図、同図(b)に正面図、同図(c)に底面図が示される。また、同図(d)に、同図(a)におけるキャップ3のVId-VId線破断矢視断面図が示される。
【0037】
キャップ3も円盤状をしており、蓋部3a、周縁部3b、開口部3c、スラスト軸受部3d、ラジアル軸受部3eおよびシール部3fを有する。キャップ3がハウジング4に取り付けられると、蓋部3aは、ロータ4の複数の壁4dが形成された側面4bと反対の側面を覆う。また、蓋部3aの周囲に突出して形成された周縁部3bは、窪んで形成されたハウジング2の嵌合部2gに嵌合する。この際、キャップ3の周縁部3bとハウジング2の嵌合部2gとは、キャップ3の周縁部3bの外周における、
図3に破線の円で囲まれる箇所で当接する。この当接箇所で、周縁部3bの外周は嵌合部2gに超音波溶着され、周縁部3bの外周と嵌合部2gとが互いに溶けて固着し、周縁部3bと嵌合部2gとの間が密閉される。なお、ハウジング2およびキャップ3が金属材料から形成される場合には、周縁部3bの外周は嵌合部2gに溶接されて、周縁部3bと嵌合部2gとの間が密閉される。
【0038】
開口部3cにはシャフト4aが挿通されるが、これらの隙間から粘性流体が漏れるのを防止するため、円筒状の溝形状をしたシール部3fにシール部材5が装着される。このシール部3fの円筒状溝の底面には、シャフト4aからかかるアキシアル方向の負荷を受けるスラスト軸受部3dが形成されている。また、シール部3fの円筒状溝の側面には、シャフト4aからかかるラジアル方向の負荷を受けるラジアル軸受部3eが形成されている。
【0039】
シール部材5は、
図7(a)に平面図、同図(b)に側面図が示される。シール部材5はドーナツ状をしたOリングで、弾性を有する。シャフト4aの根元に取り付けられて、シャフト4aがキャップ3の開口部3cに挿通されることで、シール部材5はキャップ3のシール部3fに装着される。
【0040】
回転ダンパ1の組立に際し、最初に、壁2dが形成された側面2bを上にして、ハウジング2が水平で平坦な盤上、例えば、組立作業台の台上に置かれる。次に、ハウジング2の軸受け部2cを中心として放射状に定量の粘性流体が入れられる。次に、ロータ4のシャフト4aの根元にシール部材5が取り付けられ、ロータ4とハウジング2との相対位置が下記の定位置にされた状態で、ロータ4がハウジング2に組み付けられる。その後、シャフト4aにキャップ3の開口部3cが挿通され、キャップ3の周縁部3bがハウジング2の嵌合部2gに嵌め込まれる。続いて、周縁部3bと嵌合部2gとに超音波溶着が行われることで、回転ダンパ1の組立が完了する。
【0041】
本実施形態の回転ダンパ1では、ハウジング2の軸受け部2cにロータ4のセンターピン4cが支持されてロータ4がハウジング2に収容される際、ハウジング2の各壁2d0,2d1,2d2および2d3に形成された切り欠き2eと、ロータ4の各壁4d0,4d1,4d2および4d3に形成された切り欠き4eとが、ハウジング2の軸受け部2cを中心に点対称な周位置に配置される定位置となるように、ロータ4がハウジング2に収容される。すなわち、ハウジング2の最内周の壁2d0に180°対向する周位置に形成される各切り欠き2eを通る直線L1と、ロータ4の最内周の壁4d0に180°対向する周位置に形成される各切り欠き4eを通る直線L3とが直交する定位置となるように、ロータ4がハウジング2に収容される。このようにロータ4がハウジング2に収容されることで、各切り欠き2e,4eは、
図8に示すように、ハウジング2の軸受け部2cを中心とする円周方向に均等に分散配置される。
図8は、
図3に示す回転ダンパ1のVIII-VIII線破断矢視断面図である。
【0042】
この状態では、ハウジング2の軸受け部2cを中心に曲折しながら放射状に伸びる粘性流体の流路が、
図9に示す矢印のように形成される。つまり、ハウジング2の軸受け部2cを中心として放射状に入れられた粘性流体は、軸受け部2cの外周とロータ4の最内周の壁4d0との間に形成される円周溝に入り込み、最内周の壁4d0に形成された一対の切り欠き4eから、最内周の壁4d0とハウジング2の最内周の壁2d0との間に形成される円周溝に移動する。この円周溝に移動した粘性流体は、ハウジング2の最内周の壁2d0に形成された一対の切り欠き2eから、最内周の壁2d0とロータの壁4d1との間に形成される円周溝に移動する。このように粘性流体は、ハウジング2の各壁2d0,2d1,2d2および2d3と、ロータ4の各壁4d0,4d1,4d2および4d3との間に形成される円周溝を、各切り欠き2e,4eを経由して、ハウジング2の外周へ向かって次々に移動していく。
【0043】
したがって、回転ダンパ1の組み立て時、ハウジング2の軸受け部2cに定量の粘性流体を注入した後、ハウジング2とロータ4との相対位置を上記の定位置にしてロータ4をハウジング2に収容させると、粘性流体は、ハウジング2の軸受け部2cを中心に曲折しながら放射状に伸びる粘性流体の流路を伝って、粘性流体に混入して気泡となった空気と共に、ロータ4の自重によって促進されながら、速やかにハウジング2の外周へ向かって均等に分散して移動する。ハウジング2の外周へこのように向かって移動させられる粘性流体に含まれる空気は、ロータ4の周壁4fの内周側に形成された複数の排出孔4gに粘性流体が到達すると、ロータ4の側面を開口させる複数の排出孔4gから粘性流体によって押し出され、ハウジング2の底面2bとロータ4の側面4bとの間から外部へ排出される。この際、ロータ4の最外周の壁4d3には切り欠き4eが形成されていないため、粘性流体のハウジング2の外周へ向かう勢いがこの最外周の壁4d3によって抑制され、粘性流体がハウジング2の嵌合部2gへ溢れ出ることが防止される。
【0044】
このように、粘性流体に混入する空気が排出孔4gから排出されたこの状態で、ロータ4の壁4dが形成された側面4bと反対の側面にキャップ3を被せて、キャップ3の周縁部3bをハウジング2の嵌合部2gに嵌合させることで、ハウジング2の内部に空気が滞留しない回転ダンパ1を得ることができる。よって、ローター4の回転中に回転抵抗が変動してしまう不具合を起こすことのない回転ダンパ1を提供することができる。
【0045】
また、本実施形態の回転ダンパ1では、ハウジング2に形成された複数の壁2dの先端とロータ4の側面4bとの間に形成される所定の隙間αの大きさ、および、ロータ4に形成された複数の壁4dの先端とハウジング2の底面2bとの間に形成される所定の隙間αの大きさが、ハウジング2に形成された複数の壁2d0,2d1,2d2および2d3のうちの1つの壁2d0がその他の壁2d1,2d2および2d3より高い分、大きくなる。したがって、部品の寸法のバラツキ等によって生じる上記の各所定の隙間αの大きさの変動分が各所定の隙間αの大きさに占める割合は、小さくなる。このため、上記の各所定の隙間αの大きさにバラツキが生じても、そのバラツキに起因するロータ4の回転抵抗の変動を抑制することができる。
【0046】
例えば、上記の1つの壁2d0がその他の壁2d1,2d2および2d3と同じ高さにされ、所定の隙間αの大きさが0.05~0.1mmに設定される場合、部品の寸法のバラツキ等によって生じる各所定の隙間αの大きさの変動分、例えば0.05mmが各所定の隙間αの大きさに占める割合は、100~50%となって大きくなる。このため、各所定の隙間αの大きさにバラツキが生じると、そのバラツキに起因して、ロータ4の回転抵抗には大きな変動が生じる。しかし、本実施形態のように、1つの壁2d0がその他の壁2d1,2d2および2d3より高くされ、その高い分、各所定の隙間αの大きさが本実施形態のように例えば0.2~0.25mmに大きく設定されると、部品の寸法のバラツキ等によって生じる各所定の隙間αの大きさの変動分、例えば0.05mmが各所定の隙間αの大きさに占める割合は、25~20%となって小さくなる。このため、上記のように、各所定の隙間αの大きさにバラツキが生じても、そのバラツキに起因するロータ4の回転抵抗の変動を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の回転ダンパ1では、上述のように、排出孔4gの径方向が、最外周の1つ内側の壁4d2の外径と周壁4fの内径との間にわたって形成され、ロータ4の最外周の壁4d3は各排出孔4gの径方向幅の中心に位置する。したがって、粘性流体の上記流路を経由して、最外周の1つ内側の壁4d2まで到達した粘性流体に含まれる空気が、速やかに各排出孔4gから排出されると共に、切り欠き4eの無い最外周4d3の壁を乗り越える粘性流体に含まれる空気も、速やかに各排出孔4gから排出される。このため、粘性流体に含まれる空気は、各排出孔4gから効率的に排出されるようになる。
【0048】
また、本実施形態の回転ダンパ1では、上述のように、キャップ3の周縁部3bの外周がハウジング2の嵌合部2gに超音波溶着されることで、ハウジング2の開口がキャップ3により閉塞されて密封される。本構成によれば、ハウジング2とキャップ3との溶着箇所は、窪んだ嵌合部2gの内法外周側における窪みの底より高いところに位置して、ハウジング2の内部に充填される粘性流体が到達しない箇所に設定される。したがって、ハウジング2とキャップ3との溶着箇所に粘性流体が及んで、ハウジング2とキャップ3との溶着が行えなくなることが防げる。このため、ハウジング2とキャップ3とはキャップ3の周縁部3bの外周とハウジング2の嵌合部2gとの当接箇所で確実に超音波溶着されて、ハウジング2の開口は確実にキャップ3により閉塞されて密閉される。
【0049】
なお、上記の実施形態では、ハウジング2に形成された複数の壁2d0,2d1,2d2および2d3のうちの1つの壁2d0を、その他の壁2d1,2d2および2d3より高くした場合について説明したが、ロータ4に形成された複数の壁4d0,4d1,4d2および4d3のうちの1つの壁、例えば最内周の壁4d0を、その他の壁4d1,4d2および4d3より高く設定するようにしてもよい。このような変形例の構成においても、ハウジング2に形成された複数の壁2dの先端とロータ4の側面4bとの間に形成される所定の隙間αの大きさ、および、ロータ4に形成された複数の壁4dの先端とハウジング2の底面2bとの間に形成される所定の隙間αの大きさが、1つの壁4d0がその他の壁4d1,4d2および4d3より高い分、大きくなり、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【0050】
高くする壁2dまたは4dは、半径が小さい方が粘性流体の剪断抵抗に与える影響、すなわち、ロータ4の回転抵抗に与える影響が少ないので、上記のように最内周の壁2d0や壁4d0を高くする壁2dまたは4dとして選定するのが好ましい。
【0051】
また、上記の実施形態では、
図4(a)に示すように、ハウジング2の最内周の壁2d0およびその外側に2番目に立設される壁2d2に形成された各切り欠き2eを通る直線L1が回り止め部2aに平行にされ、最内周の壁2d0の外側に1番目および3番目に立設される壁2d1,2d3に形成された各切り欠き2eを通る直線L2が回り止め部2aに垂直にされた場合について、説明した。しかし、
図10に示す変形例のように、ハウジング2の最内周の壁2d0およびその外側に2番目に立設される壁2d2に形成された各切り欠き2eを通る直線L1、および、最内周の壁2d0の外側に1番目および3番目に立設される壁2d1,2d3に形成された各切り欠き2eを通る直線L2をそれぞれ反時計回りに45°回転させた位置に、各切り欠き2eを配置するように構成してもよい。この場合にも、ロータ4がハウジング2に収容される際、ハウジング2の最内周の壁2d0に形成される各切り欠き2eを通る直線L1と、ロータ4の最内周の壁4d0に形成される各切り欠き4eを通る直線L3とが直交する定位置となるように、ロータ4がハウジング2に収容されることで、各切り欠き2e,4eは、ハウジング2の軸受け部2cを中心とする円周方向に均等に分散配置され、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【0052】
また、上記の実施形態および各変形例では、
図5(d)に示すように、ロータ4の周壁4fが円環状に形成された場合について説明したが、
図11(a)に示す変形例によるロータ4の底面図のように、多角形状にロータ4の周壁4f1を形成するように構成してもよい。本構成によれば、このロータ4をハウジング2に収容させた同図(b)に示すように、ロータ4の周壁4f1とハウジング2の最外周の壁2d3との間における径方向の隙間βは、多角形状をした周壁4f1の角部分において、大きく形成される。したがって、この隙間βが、多角形状をした周壁4f1の辺部分において小さくても、この隙間βに到達する粘性流体は、周壁4f1の角部分に大きく形成される隙間βから、周壁4f1の辺部分に形成される小さな隙間βにスムーズに流れ、隙間全体に速やかに充填される。このため、上記隙間βに到達する粘性流体に含まれる空気は、上記隙間βを経由して排出孔4gから外部へ速やかに排出される。また、周壁4f1の多角形状の角数を変更したりして、例えば、8角形を6角形などに変更したりして、隙間βの全体の大きさを調節することにより、ロータ4の回転に与える回転抵抗の大きさを微調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による回転ダンパ1は、例えば、歯車やラックと噛み合う被駆動歯車などの回転に抵抗を与えて回転を制動する装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…回転ダンパ、2…ハウジング、2a…回り止め部、2b…底面、2c…軸受け部、2d,2d0,2d1,2d2,2d3,4d,4d0,4d1,4d2,4d3…壁、2e,4e…切り欠き、2f,4f,4f1…周壁、2g…嵌合部、3…キャップ、3a…蓋部、3b…周縁部、3c…開口部、3d…スラスト軸受部、3e…ラジアル軸受部、3f…シール部、4…ロータ、4a…シャフト、4a1…回り止め部、4b…側面、4c…センターピン(被支持部)、4g…排出孔、5…シール部材、α…所定の隙間