(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】錠剤裁断装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61J3/00 310A
(21)【出願番号】P 2023067036
(22)【出願日】2023-04-17
【審査請求日】2023-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523143958
【氏名又は名称】株式会社 クシロ
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥三
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146240(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032418(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/128190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
錠剤載置部と、
回転外装筒体と、
錠剤裁断部と、
裁断錠剤貯蔵部と、
で構成され、
前記錠剤載置部は、
上部周縁が下向きに傾斜し、下部が前記回転外装筒体と滑らかに回動可能に近接又は接触し、
前記回転外装筒体が、
内側面に前記錠剤載置部上部周縁から前記錠剤裁断部へ錠剤を案内する錠剤ガイド溝を備え、
前記錠剤裁断部が、
前記錠剤載置部下側に配置されて、
前記回転外装筒体を載置する回転台座と、
前記回転外装筒体周方向から前記錠剤ガイド溝に出現して錠剤に当接することにより刃体が回転する回転刃体と、
を備え、
前記回転台座が、
前記錠剤ガイド溝に案内されて裁断位置に到達した錠剤の停止面と、
錠剤の排出口と、
を備え、
前記裁断錠剤貯蔵部が、
前記排出口下側に配置され、
前記回転外装筒体が、一体化された前記錠剤載置部及び前記錠剤裁断部に対して回転することによって、前記回転刃体が前記停止面上にある錠剤を裁断すること、
を特徴とする錠剤裁断装置。
【請求項2】
前記錠剤ガイド溝が、
上側部分は鉛直方向に伸長し、前記錠剤裁断部直前において、前記回転外装筒体の回転方向に傾斜して形成されること、
を特徴とする請求項1に記載する錠剤裁断装置。
【請求項3】
前記錠剤ガイド溝が、
前記裁断位置の壁面において、前記回転刃体に裁断される錠剤と前記停止面との間に隙間ができる高さに錠剤の周形状に沿う形状の錠剤倣い部が形成されること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する錠剤裁断装置。
【請求項4】
前記回転刃体が、
片刃で切刃を上側に向けて設置されたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する錠剤裁断装置。
【請求項5】
前記回転外装筒体下部の錠剤ガイド溝が、
変更可能であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する錠剤裁断装置。
【請求項6】
前記錠剤裁断部が、
裁断位置から前記排出口の間において、裁断された刃体上側の錠剤が過剰に上方に移動しないように錠剤押え部材を設け、
前記錠剤押え部材が、
前記排出口の位置において、前記刃体上側の裁断錠剤を押圧して排出口へ導く裁断錠剤排出部を備えたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する錠剤裁断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一錠の錠剤を半切りに裁断する錠剤裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院又は薬局においては、調剤を行う際には、服薬者の症状に応じた適切な投薬量に従って、薬剤の量を調整する。投薬を行う薬剤が錠剤においては、錠剤を半錠に裁断する必要が生じる場合がある。多数の患者を対象とする調剤においては、一万錠以上の錠剤の裁断を行うことができる装置を導入し、分包まで自動化された装置を使用して調剤を行う場合もある。
【0003】
多数の錠剤を裁断することができる装置として、特許文献1をはじめとして様々な錠剤裁断装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、多数の錠剤を収容するカセット本体と、前記カセット本体の内部に設けられた回転可能なロータとを備える。前記ロータ本体の固定ブロックには内刃を備え、前記カセット本体に設けられた錠剤出口から排出される錠剤は、前記ロータ本体の外周面に設けられた錠剤の案内溝を通過して、前記内刃が、回転する前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されている。
【0005】
しかしながら、錠剤を半錠にして調剤を行う場合は、調剤全体の数%以下に過ぎず、裁断が必要な錠剤が一度に数錠程度であることも多い。このような場合にまで、一度に一万錠以上も裁断することができる装置を導入することは費用対効果を考慮すると現実的ではない。そこで、少数の錠剤を裁断することができる装置が必要となる。
【0006】
少数の錠剤を裁断することができる装置として、特許文献2の発明が開示されている。
【0007】
特許文献2には、一錠の錠剤が密封包装されている包装体等を択一的に載置支持する基台と、当該基台に対して上下揺動自在に枢支連結された可動体で構成された錠剤裁断具であって、片手で把持した状態で、基台と可動体とを近接させて、可動体に装着された刃体によって包装体内の錠剤を包装材と共に切断することができる錠剤裁断具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-7628号公報
【文献】特開2004-291133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の錠剤裁断具は、裁断の度に、刃体の同一箇所が錠剤に当接するため、刃体の切れ味の劣化が進みやすく、錠剤の裁断部分が欠けやすくなる。また、人が押圧する力によって裁断するため、作業者の力が弱い場合には錠剤の裁断に時間が掛かり非効率な状況が生じる可能性がある。また、錠剤裁断具に錠剤をセットする際には、異物が混入するおそれや、外部に露出した刃体に指が触れて、けがをするおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載された錠剤裁断具は、包装体に包装したまま裁断することができるが、錠剤を裁断する際に包装体の一部が、錠剤に付着するおそれがある。包装体から錠剤を出して裁断する裁断具の場合には、手や異物が錠剤に触れ衛生上の問題が生じる可能性がある。
【0011】
さらには、通常、投薬は、7日から14日程度の調剤が行われるため、半錠に裁断した錠剤が数十錠から百錠程度必要な場合もあるが、特許文献2に記載された錠剤裁断具では、一錠ずつ裁断するため、時間が掛かり効率的ではない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一錠から数百錠までの錠剤を正確かつ効率的に裁断することができる錠剤裁断装置を提供することを目的とする。また、円形状の錠剤のみならず、楕円状の錠剤について、正確に半錠に裁断するために、錠剤の案内路を変更して使用することが可能である錠剤裁断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の錠剤裁断装置は、少なくとも、錠剤載置部と、回転外装筒体と、錠剤裁断部と、裁断錠剤貯蔵部と、で構成され、前記錠剤載置部は、上部周縁が下向きに傾斜し、下部が前記回転外装筒体と滑らかに回動可能に近接又は接触し、前記回転外装筒体が、内側面に前記錠剤載置部上部周縁から前記錠剤裁断部へ錠剤を案内する錠剤ガイド溝を備え、前記錠剤裁断部が、前記錠剤載置部下側に配置されて、前記回転外装筒体を載置する回転台座と、前記回転外装筒体周方向から前記錠剤ガイド溝に出現して錠剤に当接することにより刃体が回転する回転刃体と、を備え、前記回転台座が、前記錠剤ガイド溝に案内されて裁断位置に到達した錠剤の停止面と、錠剤の排出口と、を備え、前記裁断錠剤貯蔵部が、前記排出口下側に配置され、前記回転外装筒体が、一体化された前記錠剤載置部及び前記錠剤裁断部に対して回転することによって、前記回転刃体が前記停止面上にある錠剤を裁断すること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明の錠剤裁断装置は、前記錠剤ガイド溝が、上側部分は鉛直方向に伸長し、前記錠剤裁断部直前において、前記回転外装筒体の回転方向に傾斜して形成されること、を特徴とする。
【0015】
また、本発明の錠剤裁断装置は、前記錠剤ガイド溝が、前記裁断位置の壁面において、前記回転刃体に裁断される錠剤と前記停止面との間に隙間ができる高さに錠剤の周形状に沿う形状の錠剤倣い部が形成されること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明の錠剤裁断装置は、前記回転刃体が、片刃で切刃を上側に向けて設置されたこと、を特徴とする。
【0017】
また、本発明の錠剤裁断装置は、前記回転外装筒体下部の錠剤ガイド溝が、変更可能であること、を特徴とする。
【0018】
また、本発明の錠剤裁断装置は、前記錠剤裁断部が、裁断位置から前記排出口の間において、裁断された刃体上側の錠剤が過剰に上方に移動しないように錠剤押え部材を設け、前記錠剤押え部材が、前記排出口の位置において、前記刃体上側の裁断錠剤を押圧して排出口へ導く裁断錠剤排出部を備えたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の錠剤裁断装置によれば、一体化された錠剤載置部、錠剤裁断部及び裁断錠剤貯蔵部に対して、掌に収まる回転外装筒体を回転させて、錠剤を裁断するため、大きな力を必要とせず、また作業者を限定することなく錠剤を裁断する作業を行うことができる効果を奏する。
【0020】
また、本発明の錠剤裁断装置によれば、錠剤載置部には一錠から数百錠までの錠剤が投入可能であるため、患者の処方箋に応じて必要数を投入しておき、一度に裁断を行うことができるため、一錠又は数個の裁断を行う錠剤裁断具と比較して効率が高い効果を奏する。
【0021】
また、本発明の錠剤裁断装置によれば、刃体が常時錠剤裁断装置内部にあり、作業者が触れることはなく、安全である。
【0022】
また、本発明の錠剤裁断装置によれば、錠剤の投入時から裁断された錠剤の回収まで、人手に触れることがなく作業を行うことができ、衛生的である効果を奏する。
【0023】
従来の錠剤裁断装置においては、刃体の同一箇所に錠剤が当接し、かつ、裁断の初期段階から刃体と錠剤との接触部分が多いため接触抵抗が大きく、切れ味の劣化が早い。一方、本発明の錠剤裁断装置によれば、回転自在の回転刃体が錠剤に接触した後、回転しながら周方向に移動する錠剤を裁断するので、回転刃体の任意の位置に錠剤が当接し、かつ、裁断初期段階では、回転刃体と錠剤との接触部分を最小とし、その後は接触部分を増やしながら切断を進めることができる。そのため、接触抵抗が小さい状態で裁断ができ、切れ味の劣化が少なく、回転刃体の寿命が長い。したがって、回転刃体の交換頻度が少なく効率的である効果を奏する。
【0024】
従来の錠剤裁断装置においては、裁断の初期段階から接触部分が大きいため、刃体と錠剤との衝突の衝撃が大きく、錠剤に欠けが生じる可能性が高まるが、本発明の錠剤裁断装置によれば、回転自在の回転刃体が錠剤に接触した後、錠剤の周方向への動きに同期して回転し錠剤に当接するため、回転刃体と錠剤とが衝突又は摩擦するにより発生する錠剤の欠けを最小限に抑制することができるので、正確に半錠を得ることができる効果を奏する。
【0025】
本発明の錠剤裁断装置によれば、錠剤ガイド溝が裁断位置において、回転外装筒体の回転方向に傾斜しているため、楕円状の錠剤を裁断する際においては、回転外装筒体が回転する際に働く錠剤下端の接地抵抗により楕円状の錠剤を直立させることができ、正確な半錠の位置で裁断することができる。
【0026】
本発明の錠剤裁断装置によれば、片刃にすることによって、切刃の角度が小さくなり錠剤を切断する際に刃体が錠剤に食い込む範囲が小さくなるため、裁断の際に発生する砕けカスを最小限に留める効果を奏する。また、切刃を上に向けることにより、刃体下側の裁断された錠剤を停止面に押さえつけることによる錠剤の砕けカスの発生を抑制する効果を奏する。
【0027】
本発明の錠剤裁断装置によれば、回転外装筒体を変更可能とすることにより、錠剤ガイド溝の形状を変更することができるため、各種の形状や大きさの錠剤の切断を可能とする効果を奏する。
【0028】
本発明の錠剤裁断装置によれば、裁断された刃体上側の錠剤が、錠剤ガイド溝を上方へ移動し、切断された上半分の錠剤に形成された角部が錠剤ガイド溝の壁面に引っ掛かり、排出口に移動できない状態が発生する可能性が想定されるが、錠剤押え部材を備えることによって、上半分の錠剤の錠剤ガイド溝への引っ掛かりを防止し、錠剤排出部材を備えることによって、上半分の錠剤の排出口への排出を確実に行うことを支援する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る錠剤裁断装置1の透視斜視図である。
【
図2A】丸錠用の回転外装筒体20の斜視図である。
【
図2B】丸錠を裁断する場合の錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。
【
図2C】楕円錠を裁断する場合において、錠剤ガイド溝22を鉛直方向に形成した錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。
【
図3A】楕円錠用の回転外装筒体20の斜視図である。
【
図3B】楕円錠を裁断する場合において、錠剤ガイド溝22を回転方向に傾斜させて形成した錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。
【
図4】錠剤倣い部24を設けた錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。
【
図5】錠剤裁断部10の裁断部位の側面断面図である。
【
図7】裁断動作中の錠剤の状態を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る錠剤裁断装置1を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る錠剤裁断装置1の透視斜視図である。
【0031】
本発明に係る錠剤裁断装置1は、少なくとも錠剤載置部30、回転外装筒体20、錠剤裁断部10、裁断錠剤貯蔵部40で構成される。
【0032】
錠剤載置部30は、裁断前の錠剤を少なくとも一錠を投入し、回転外装筒体20の回転に伴い、錠剤ガイド溝22の上端開口部に錠剤が誘導されるまでの収納場所である。
【0033】
回転外装筒体20は、錠剤載置部30及び錠剤裁断部10に対して回転し、錠剤載置部30に収納された錠剤を揺動させて錠剤ガイド溝22の上端開口部から錠剤ガイド溝22を経由して停止面142に落下させるとともに、停止面142及び錠剤ガイド溝22の下端部によって保持された錠剤を、錠剤裁断部10に配設された回転刃体12の位置まで案内するための駆動部である。回転外装筒体30の動力は、原則人手によって与えられる。
【0034】
錠剤裁断部10は、回転台座14、回転刃体12及び錠剤押え部材18を備え、正確に錠剤を半錠に裁断する。回転台座14は、回転外装筒体20が回転を行うための台座としての機能を有するとともに、錠剤ガイド溝22を通り裁断位置に到達した錠剤の停止面142としての機能も備える。停止面142の一部には裁断された錠剤が排出されるための排出口144が配設される。
【0035】
裁断錠剤貯蔵部40は、排出口144から排出された裁断錠剤を貯蔵する容器である。裁断錠剤貯蔵部40は、錠剤トレイ42と粉体受部44とを備える。錠剤トレイ42は、網状体で形成され、裁断された半錠のみを留め、裁断粉が発生した場合には、粉体受部44に落下させる。裁断錠剤貯蔵部40の上部には、回転台座14内側に設けられた凸部を係合させる凹部が設けられ、裁断錠剤貯蔵部40を錠剤裁断部10に対して回転させることによって着脱可能で、裁断された錠剤の取り出しを行うことができる。上述は、裁断錠剤貯蔵部40及び錠剤裁断部10を着脱可能に結合させる一例である。
【0036】
本発明の錠剤裁断装置1は、蓋部50を備えることが好ましい。蓋部50は、回転外装筒体20に螺着される構造でもよく、また蓋部50側面内側に弾性体で形成された例えばOリング52が配設されて、回転外装筒体20に着脱可能に密着させてもよい。蓋部50は、錠剤載置部30に投入した錠剤が外部にこぼれ落ちない機能を有するが、回転させる際に掌で握るためのツマミとして利用してもよい。
【0037】
以下、本発明に係る錠剤裁断装置1の構造及び動作について詳細に説明を行う。
【0038】
錠剤載置部30は、上部周縁が下向きに傾斜し、裁断される錠剤が回転外装筒体20方向に導かれるように形成される。前記傾斜は、錠剤の形状によって変更する。例えば、径の大きい丸錠や楕円錠の場合には、傾斜の長さや角度を大きくすることによって、錠剤ガイド溝22に誘導しやすくする。錠剤載置部30と錠剤裁断部10とは、ネジやナットなどの締結部材によって固着される。錠剤載置部30側面の下部は、回転外装筒体20との間で滑らかに回動が可能なように近接又は接触している。
【0039】
錠剤載置部30の側面と回転外装筒体20とは、錠剤が落下しない程度に隙間を有していてもよいが、後述する回転外装筒体20に設けられた錠剤ガイド溝22の角部に錠剤が接触することによる錠剤の欠けを防止するためには、隙間は可能な限り狭いことが好ましい。但し、密着させることは、錠剤載置部30と回転外装筒体20とが摺動する際に生じる摩耗によって装置部品の摩耗粉が発生する可能性があり、裁断した錠剤に不純物が付着するので、避けることが好ましい。
【0040】
図2Aは、丸錠用の回転外装筒体20の斜視図である。回転外装筒体20は、錠剤載置部30、錠剤裁断部10及び裁断錠剤貯蔵部40に対して回転可能な構造を備える。回転外装筒体20の底部に引掛け爪部29を複数箇所設け、回転台座14の停止面142の高さに設けた引掛け凹部146に結合させることにより、回転台座14上を回転外装筒体20が回動可能となる(
図5参照)。上述は、回転外装筒体20が回転台座14上を回動可能な構造の一例であり、その他の周知の回転構造でもよい。
【0041】
回転外装筒体20には、錠剤ガイド溝22、錠剤押え部材通路26及び回転刃体通路28を備える。錠剤ガイド溝22は、錠剤載置部30に収納された錠剤を一錠ずつ裁断高さへ導く錠剤の案内路である。錠剤押え部材通路26及び回転刃体通路28は、錠剤押え部材18又は回転刃体12の各々の高さの内面円周に設けられた錠剤押え部材18又は回転刃体12を通過させる機能を有する溝である。
【0042】
回転外装筒体20は、裁断する錠剤の形状によって変更することが可能である。裁断する錠剤によって、回転外装筒体20を交換して使用することも可能であるが、予め錠剤の種類によって異なる錠剤ガイド溝22を有する外装回転筒体20を備えた本発明に係る錠剤裁断装置1を用意する方が、コンタミネーションの観点から好ましい。
図2Aに示すように、丸錠の場合には、形状が点対称であるので、錠剤ガイド溝22は、鉛直方向に形成される。錠剤が停止面142に到達すると回転外装筒体20の回転によって、停止面142上を回転しつつ裁断位置まで移動する場合であっても、回転刃体12に到達した際には錠剤の中央位置が回転刃体12に当接する。
【0043】
一方、楕円錠では、
図2Cに示すように、錠剤ガイド溝22を鉛直方向に形成した場合には、錠剤が停止面142に到達した際には、楕円の焦点方向の頂点が停止面142に接触し、回転外装筒体20の回転(
図2C黒矢印が回転外装筒体20の回転方向)によって、下端の頂点が接地抵抗(
図2C白抜き矢印)を受けて回転外装筒体20の回転と逆方向に力が働き、上端の頂点が回転外装筒体20の回転方向に傾斜して回転刃体12に当接することになるため、正確に半錠に裁断することができない。回転方向については、
図7の説明において詳述する。
【0044】
図3Aは、楕円錠用の回転外装筒体20の斜視図を示した。楕円錠の場合には、錠剤ガイド溝22の下部を回転外装筒体20の回転方向に傾斜させることにより、停止面142に接触する下端の頂点が、錠剤ガイド溝22の回転方向に対して後側の下端に当接し、また上端の頂点が、錠剤ガイド溝22の回転方向に対して前側の傾斜面に当接し、回転方向に傾斜することを防止し、楕円錠剤を直立させることができる(
図3Bを参照)。したがって、回転外装筒体20は、錠剤ガイド溝22の傾斜方向と同一方向にのみ回転させる。
【0045】
図2Bは、丸錠を裁断する場合の錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。また、
図3Bは、楕円錠を裁断する場合において、錠剤ガイド溝22を回転方向に傾斜させて形成した錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。回転外装筒体20下側部分の錠剤ガイド溝22、押え部材通路及び回転刃体通路28を含む部分を錠剤ガイド溝下部ブロック222として回転外装筒体20本体と分離して形成し、例えば、鉛直方向に延長する錠剤ガイド溝22又は回転外装筒体20の回転方向に傾斜する錠剤ガイド溝22のいずれかを選択して回転外装筒体20に装着することを可能とする。その際、押さえ部材通路は、裁断対象の錠剤の直上に配設し、回転刃体通路28は、裁断対象の錠剤の中央位置になるように配設する。裁断する錠剤によって、錠剤ガイド溝下部ブロック222を交換して使用することも可能であるが、予め錠剤の種類によって異なる錠剤ガイド溝下部ブロック222を有する外装回転筒体20を備えた本発明に係る錠剤裁断装置1を用意する方が、コンタミネーションの観点から好ましい。
【0046】
錠剤ガイド溝下部ブロック222より上側の錠剤ガイド溝22は、錠剤が錠剤載置部30から容易に進入できるように裁断する錠剤の裁断方向の幅より広めに設定しておくことが好ましい。また、錠剤ガイド溝下部ブロック222においては、錠剤に沿うようにクリアランスを小さくし、錠剤の遊びを抑え正確に半錠の裁断が行えるようにすることが好ましい。その際、上部のガイド溝と錠剤ガイド溝下部ブロック222における錠剤ガイド溝22の接続部は滑らかに連結させて、段座を設けず、錠剤が停止面142までスムーズに到達可能な構造にすることが好ましい。錠剤ガイド溝下部ブロック222を用いない場合には、錠剤ガイド溝22上部から停止面142に向かって溝の大きさを徐々に狭めていくことによって同じ効果を得ることができる。
【0047】
回転外装筒体20の本体は、錠剤押え部材通路26及び回転刃体通路28が形成されていない加工状態で在庫しておき、裁断対象となる錠剤が決定した後に、当該錠剤の形状に合わせて、錠剤押え部材通路26及び回転刃体通路28について回転外装筒体20内面に配設する位置を設定し、切削加工を行う。切削加工を行った回転外装筒体20に、裁断対象の錠剤に適応する錠剤ガイド溝下部ブロック222を装着する。上述の構成とすることにより、回転外装筒体20は、予め一種類の形状のみ在庫すればよく、コストを安価に抑えることができるとともに、短納期に対応することができる。
【0048】
図4は、錠剤倣い部24を設けた錠剤ガイド溝下部ブロック222部分の斜視図及び正面図である。錠剤の中央位置に裁断のための刃体を通過させると、錠剤の通路のクリアランスにより、裁断された半錠が、上下に移動する可能性がある。詳述すると、裁断の際に切刃122が錠剤を切り進んでいる際に切刃122の傾斜によって錠剤の下側半分を停止面142に押圧して砕けカスを生じさせる場合がある。
【0049】
一方、錠剤の裁断された上側半分が、錠剤ガイド溝22を上方へ移動し、裁断された上半分の錠剤に形成された角部が、錠剤ガイド溝22の壁面に引っ掛かる場合がある。そこで、回転刃体12が進行する方向に面する壁面に、回転刃体12に当接される錠剤と停止面142との間に、回転刃体12の略厚みの隙間ができる高さに、錠剤の形状に倣う窪み形状の錠剤倣い部24を設けることにより、裁断錠剤が上下へ移動することを防止して、砕けカスの発生や錠剤ガイド溝22の壁面への引っ掛かりを防止することができる。
【0050】
図5は、錠剤裁断部10の裁断部位の側面断面図である。錠剤裁断部10は、錠剤載置部30の下側に配設されて、錠剤載置部30は、錠剤裁断部10に対してネジやナットなどの締結部材によって固着される。錠剤裁断部10は、回転台座14、回転刃体12及び錠剤押え部材18を備える。
【0051】
回転台座14は、回転外装筒体20が停止面142上に載置され回転を可能とするための台座である。回転外装筒体20の下端に設けられた引掛け爪部29を回転台座14の引掛け凹部146に挿し込み、回転外装筒体20の下面を停止面142に載置させることによって、回転外装筒体20は、回転台座14の停止面142上を滑らかに回動することができる。
【0052】
また、回転台座14は、錠剤ガイド溝22を通り裁断位置に到達した錠剤の停止面142としての役目を有し、回転外装筒体20の回転とともに停止面142上を錠剤が円の軌跡を描いて移動し回転刃体12に到達して裁断される。その後、錠剤は、停止面142の一部に配設された裁断後の錠剤の排出口144から排出される。
【0053】
回転刃体12は、回転軸124に回転自在に軸着される。材質は、錠剤を裁断できる硬度を有していればよく、鋼材、又はセラミックが好ましいが、これに限定されず、通常刃体に用いられる周知の材質であればよい。
【0054】
回転軸124は、回転台座14に回転軸押え部材148によって固定される。回転刃体12は、錠剤の高さ方向の中央を通過する高さで、かつ、回転外装筒体20に備えられた回転刃体通路28に突出して配設される。その際、裁断対象の錠剤の形状によって、回転刃体12の高さ位置の変更が必要となる。回転台座14の引掛け凹部146が形成されたフランジ部分の高さを、最も高い錠剤の中央を通過する高さに予め加工しておき、高さが低い錠剤を裁断対象とする場合には、切削加工を行い、フランジ部分の高さを調整することによって、複数種類の回転台座14を在庫する必要がなく適応することが可能である。
【0055】
回転刃体12は、回転自在に回転軸124に軸着されるため、回転外装筒体20の周方向から錠剤ガイド溝22の位置に出現し錠剤に当接すると、回転外装筒体20の回転に伴って、回転しつつ錠剤を裁断する。
図6A乃至
図6Cは、裁断の経過を示す平面模式図である。
図6Aは、回転刃体12が錠剤に接触し始めた裁断直前の状態を示す平面模式図である。その後、回転刃体12は、回転外装筒体20の回転が進むとともに、裁断を行いつつ、
図6Bに示すように回転していく。図の一点鎖線が、回転刃体12が最初に錠剤に当接した位置である。裁断の完了時には、回転刃体12が最初に当接した位置は、
図6Cに示すように錠剤から離脱している。錠剤が回転刃体12から完全に離脱した後は、回転刃体12は惰性で一時回転し直後に停止する。
【0056】
次に回転刃体12に到達する錠剤は、その直前に錠剤を裁断した回転刃体12の位置とは異なる位置に当接することになる。回転刃体12は、裁断の度に回転し、裁断の際に当接する切刃122の位置は、任意の位置に移り変わるため、同じ切刃122の位置で裁断する場合と比較して切刃122の寿命が長くなる効果を奏する。
【0057】
回転刃体12は、切刃122部分のすべてが、回転刃体通路28に到達し回転が可能な状態に設定されていれば、楕円形状や多角形形状であってもよい。
【0058】
回転刃体12は、両刃又は片刃のいずれでもよいが、両刃の場合には、切刃122が錠剤を切り進んでいる際に切刃122の傾斜によって錠剤の下側半分を停止面142に押圧して砕けカスを生じさせる可能性がある。一方、
図5に示すように、片刃を使用し切刃122を上側に配置した場合には、切刃122が錠剤を切り進んでいる際に錠剤の下側半分を停止面142に押圧することがなく、砕けカスが生じることを防止することができるのでより好ましい。
【0059】
錠剤押え部材18は、回転刃体12の直上に設けられたスペーサ184に固定され、錠剤押え部材通路26に突出して配設される。裁断の際に、錠剤の裁断された上側半分が、錠剤ガイド溝22を上方へ移動し、切断された上半分の錠剤に形成された角部が錠剤ガイド溝22の壁面に引っ掛かり、排出口144に移動できない状態が発生する可能性が想定されるが、錠剤押え部材18を備えることによって、錠剤押え部材18は、錠剤が錠剤ガイド溝22を通過し停止面142に到達した後、錠剤の直上に回転外装筒体20の周方向から出現し、裁断後の上半分の錠剤の錠剤ガイド溝22への引っ掛かりを防止することができる。
【0060】
また、回転刃体12が錠剤の裁断を完了して回転外装筒体20の周方向に通過した後、錠剤の上半分が排出口144の上方に到達した際に出現するように設けられた錠剤押え部材18の進行方向後側端部の裁断錠剤排出部182が錠剤を排出口144に押し出す。
【0061】
裁断錠剤排出部182は、錠剤押え部材18の周方向の最後に錠剤に接触する端部が下方向に角度をなして折り曲げられた状態で保持して形成される。裁断錠剤排出部182は、通常板バネに使用される鋼材や樹脂などの材質を用いて形成される。錠剤押え部材通路26において、裁断錠剤排出部182は、錠剤押え部材通路26の下面に接触しており、錠剤押え部材18の他の部分との角度をなさない平坦な状態となっているが、錠剤ガイド溝22が排出口144の上方に到達した際に、裁断錠剤排出部182は開放され、端部が原状の下方向に折り曲げられた状態に復元し、上側の半錠を排出口144に押し出す(
図7を参照)。
【0062】
図7は、裁断動作中の錠剤の状態を示す側面模式図である。錠剤ガイド溝下部ブロック222、回転台座14の一部、回転刃体12及び錠剤押え部材18のみを図示した。
【0063】
図7(a)は、錠剤が錠剤ガイド溝22において停止面142に到達して、錠剤の上方の錠剤ガイド溝22に錠剤押え部材18が回転外装筒体20の周方向から突出して、錠剤が閉鎖された空間に閉じ込められたところに、回転刃体12が回転外装筒体20の周方向から突出し始めて裁断が開始された状態が示されている。
【0064】
図7(b)は、錠剤の裁断が完了し、裁断された錠剤の下側半錠が排出口144に到達した状態が示されている。
図7(c)は、裁断された下側半錠が排出口144から裁断錠剤貯蔵部40に落下する状態が示されている。このとき、裁断された上側半錠は、上方にせり上がり錠剤ガイド溝22の壁面に裁断された角部が引っ掛かることがないように錠剤押え部材18によって、回転刃体12との間の錠剤ガイド溝22の空間に保持される。
【0065】
図7(d)は、裁断された錠剤の上側半錠が排出口144に到達した状態が示されている。錠剤押え部材18の進行方向後側端部に設けられた裁断錠剤排出部182が、錠剤押え部材通路26から錠剤ガイド溝22に出現し原状に復元し、下方向に折れ曲がる。その際に、上側半錠が、錠剤ガイド溝22の壁面などに引っ掛かっている場合であっても、付勢力によって排出口144に押し出すことができる。
【0066】
したがって、回転外装筒体20は、錠剤が停止面142に到達した際に、錠剤押え部材18の裁断錠剤排出部182が形成されていない端部が、先に錠剤の上方に突出する一方向に回転させる。裁断された上側半錠は、裁断錠剤貯蔵部40に落下し貯蔵される。
【0067】
本発明に係る錠剤裁断装置1は、電気やエアなどによって動作する周知の動力装置を用いて駆動部である回転外装筒体20を回転させて錠剤を裁断する機械駆動装置として構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
病院又は薬局において、一錠乃至数百錠の錠剤を半錠に裁断する必要が生じる場合に利用することができる。また、非常に簡便な装置で人手によって錠剤を裁断することが可能であるため、個人であっても、利用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 錠剤裁断装置
10 錠剤裁断部
12 回転刃体
122 切刃
124 回転軸
14 回転台座
142 停止面
144 排出口
146 引掛け凹部
148 回転軸押え部材
18 錠剤押え部材
182 裁断錠剤排出部
184 スペーサ
20 回転外装筒体
22 錠剤ガイド溝
222 錠剤ガイド溝下部ブロック
24 錠剤倣い部
26 錠剤押え部材通路
28 回転刃体通路
29 引掛け爪部
30 錠剤載置部
40 裁断錠剤貯蔵部
42 錠剤トレイ
44 粉体受部
50 蓋部
52 Oリング
TB 錠剤
【要約】
【課題】本発明は、一錠から数百錠までの錠剤を衛生的かつ効率的に裁断することができる錠剤裁断装置を提供することを目的とする。また、円形状の錠剤のみならず、楕円状の錠剤について、正確に半錠に裁断するために、錠剤の案内路が交換可能である錠剤裁断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の錠剤裁断装置は、少なくとも、錠剤載置部と、回転外装筒体と、錠剤裁断部と、裁断錠剤貯蔵部と、で構成され、前記錠剤載置部は、上部周縁が下向きに傾斜し、前記回転外装筒体が、錠剤ガイド溝を備え、前記錠剤裁断部が、前記錠剤載置部下側に配置されて、回転台座と、回転刃体と、を備え、前記回転台座が、錠剤の停止面と、排出口と、を備え、前記回転外装筒体が、一体化された前記錠剤載置部及び前記錠剤裁断部に対して回転することによって、前記回転刃体が前記停止面上にある錠剤を裁断すること、を特徴とする。
【選択図】
図1