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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】球状粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230711BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20230711BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20230711BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20230711BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20230711BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C01B33/26
C01G9/02 B
C01G23/047
C01G25/02
C01F11/46 B
B01J2/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018185666
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055702
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慧
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 郁子
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200710(JP,A)
【文献】特開昭61-204033(JP,A)
【文献】特開昭61-220726(JP,A)
【文献】特開2006-225226(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108507926(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107176610(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101077974(CN,A)
【文献】特開2015-120618(JP,A)
【文献】特開2015-113277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-39/54
C01G 1/00-99/00
C01F 1/00-17/38
B01J 2/00-2/30
B01J 13/02-13/22
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分濃度が0.5~80%となるように無機成分を含む水分散液と、乳化剤と、非水系溶媒とを含む混合液を乳化して、前記水分散液を内包する乳化液滴を含む油中水滴型の乳化液を調製する乳化工程と、
前記乳化液を-50~0℃に冷却し、前記乳化液滴内の氷の結晶成長に伴って前記無機成分を排斥させることにより、前記乳化液滴から球状粒子を形成する凍結工程と、
前記凍結工程の後で、前記乳化液滴を常温に戻してから水を除去する脱水工程と、を含むことを特徴とする球状粒子の製造方法。
【請求項2】
前記凍結工程で乳化液を-50℃以上-10℃未満に冷却して前記乳化液滴を凍結させることにより、粒子内に細孔を有する多孔質の球状粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載の球状粒子の製造方法。
【請求項3】
前記凍結工程で乳化液を-10~0℃に冷却して前記乳化液滴を凍結させることにより、外殻の内部に空洞を有する中空構造の球状粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載の球状粒子の製造方法。
【請求項4】
前記無機成分が、ケイ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、およびセリウムの少なくとも一つの元素を含む化合物であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の球状粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機成分で構成された球状粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機成分の球状粒子はさまざまな産業で利用され、現代の便利な生活を支えている。粒子の大きさや成分は様々であるが、その製造方法も多種多様である。例えば、無機酸化物を含むコロイド液を噴霧乾燥して、平均粒径1~10μmの球状の多孔質シリカ粒子を製造することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、珪酸アルカリ水溶液を噴霧乾燥して得られた前駆体粒子からアルカリを除去することにより中空シリカ粒子を製造することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、エマルション法により針状突起を有するシリカ粒子を製造することが知られている(例えば、特許文献3を参照)。その他にも、ガラスフリットを火焔中で発泡させガラス微小中空体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-270201号公報
【文献】特開2011-256098号公報
【文献】特開2009―242115号公報
【文献】特開2006―256895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な構造の球状粒子を製造する方法はいろいろと提案されているが、同一構造の球状粒子でも構成成分に応じて異なった方法を適用する必要があった。そこで、本発明の目的は、無機成分からなる球状粒子の構造を比較的容易に制御できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の球状微粒子の製造方法は、無機成分を含んだ水分散液と、乳化剤と、非水系溶媒とを混合して、乳化液滴を含む油中水滴型の乳化液を調製する乳化工程と、前記乳化液を-50~0℃に冷却して乳化液滴を凍結させる凍結工程と、前記凍結工程の後で、前記乳化液滴から水を除去する脱水工程と、を含んでいる。
【0006】
また、凍結工程の条件を調整することにより、粒子内に細孔を有する多孔質構造の球状粒子や、外殻の内部に空洞を有する中空構造の球状粒子を得ることができる。すなわち、-10~0℃の温度域にて乳化液滴を凍結させることにより、中空球状粒子を製造することができる。
【0007】
さらに、球状粒子の構成成分を選択することにより、外殻が多孔質の中空球状粒子や外殻が無孔質の中空球状粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の球状粒子の製造方法によれば、無機成分からなる球状粒子の内部構造を比較的に容易に制御できる。具体的には多孔質粒子、外殻が多孔質の中空粒子、外殻が無孔質の中空粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による球状粒子の製造方法は、以下の工程を備えている。まず、無機成分が水に分散された分散液と、乳化剤と、非水系溶媒とを混合し、この混合溶液から乳化液滴を含む油中水滴型の乳化液を調製する(乳化工程)。この乳化液を冷却して乳化液滴を凍結させる(凍結工程)。次に、この乳化液滴から水を除去する(脱水工程)。これにより、水分散液に含まれていた無機成分を主成分として構成された球状粒子が得られる。なお、分散液には、水以外の溶媒を含んでいてもよい。また、乳化剤と非水系溶媒は油中水滴型の乳化液滴を形成するために加えられる。次に、各工程を詳細に説明する。
【0010】
[乳化工程]
はじめに、無機成分の水分散液を用意する。このとき、水分散液の固形分濃度が0.5~80%の範囲になるように調整することが好ましい。一般的に、固形分濃度が80%を超えると、分散液の粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が得られないおそれがある。固形分濃度が0.5%未満だと、希薄すぎて球状粒子としての形が整わなくなる。
【0011】
この水分散液と非水系溶媒と乳化剤を混合する。非水系溶媒は、乳化のために必要であり、水と相溶しないものであればよい。非水系溶媒には一般的な炭化水素溶媒を用いることができる。乳化剤は、油中水滴型の乳化液滴を形成できるものであればよい。乳化剤として界面活性剤が適している。界面活性剤のHLB値は1~10の範囲が好ましい。非水系溶媒の極性に応じて、最適なHLB値を選択すればよい。HLB値は特に1~5の範囲が好ましい。また、異なるHLB値の界面活性剤を組み合わせてもよい。
【0012】
次に、この混合溶液を乳化装置により乳化させる。このとき、所望の平均径の乳化液滴を含んだ乳化液が得られるように、乳化条件を設定する。乳化液滴の平均径は、球状粒子の平均径にほぼ対応する。そのため、乳化工程では、一般的に平均径が10nm~1000μmの乳化液滴を含む乳化液を調製する。乳化装置には、一般的な高速せん断装置を用いることができる。この他、より微細な乳化液滴が得られる高圧乳化装置、より均一な乳化液滴が得られる膜乳化装置、マイクロチャネル乳化装置などの公知の装置を目的に応じて選択できる。
【0013】
なお、平均径10nm未満の乳化液滴を含む乳化液を調製することは、工業的に困難である。一方、平均径1000μmを超える乳化液滴を調製することは容易であるが、現状では、1000μmを超える球状粒子の工業的な応用例は余り見当たらない。
【0014】
[凍結工程]
次に、乳化工程で得られた乳化液を-50~0℃の範囲で冷却する。これにより、液滴中の水を凍結させた凍結乳化物が得られる。ここで、凍結温度が-50℃~-10℃の場合は、氷の結晶が急速に成長するのに伴い、液滴中の無機成分が排斥される。そのため、多孔性の球状粒子を調製することができる。-10~0℃の場合は、氷の結晶が緩慢に成長するのに伴い、液滴中の無機成分が液滴の外周に排斥される。そのため、外殻の内部に空洞を有する中空構造の球状粒子を調製することができる。
【0015】
なお、乳化液滴を凍結させると約1割体積が膨張するが、後述の脱水工程で脱水しても凍結乳化液滴の粒子径を維持した球状粒子が得られる。
【0016】
[脱水工程]
凍結工程の後、乳化液を脱水処理する。脱水処理により、乳化液滴から水が除去され、所望の粒子径の球状粒子を含む非水系溶媒分散液が得られる。
【0017】
脱水処理は、さまざまな方法で行うことができる。例えば、凍結乳化液を常温まで昇温した後、常圧または減圧下での加熱により、水を蒸発させることができる。これにより、球状粒子を含む非水系溶媒分散液が得られる。常圧下の加熱脱水法では、冷却管を備えたセパラブルフラスコを加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。また、減圧下の加熱脱水法では、ロータリーエバポレーターや、蒸発缶など用いて減圧加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。
【0018】
あるいは、乳化液を固液分離する際に、乳化液滴を脱水することができる。すなわち、凍結工程で得られた凍結乳化液を常温まで昇温した後、公知の濾過、遠心分離などの方法で固形分を分離する。これにより、非水系溶媒とともに乳化液滴の水も除去できる。このようにして、球状粒子のケーキ状物質が得られる。さらに、ケーキ状物質を常圧または減圧下で加熱すること(乾燥工程)により、非水系溶媒とともに水も蒸発し、球状粒子の乾燥粉体が得られる。
【0019】
また、必要に応じてケーキ状物質を洗浄して、界面活性剤を低減することができる。球状粒子に対して、界面活性剤の残留量を500ppm以下とすることが好ましい。これにより、球状粒子を乳化物等の液体製剤に配合した場合の長期安定性が向上する。界面活性剤を低減させるためには、有機溶媒を用いて洗浄することが好ましい。
【0020】
なお、球状粒子を水分散液の形態で得たい場合は、固液分離処理により得られたケーキ状物質を水に置換する。これにより、球状粒子の水分散液が得られる。
【0021】
本発明で用いる無機成分として、ケイ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、およびセリウムの少なくとも一つ元素を含む化合物が挙げられる。
【0022】
これら無機成分は水に分散される必要がある。すなわち、水溶性無機化合物を水に分散させた分散液、固体が予め水に分散したゾル、酸化チタンなどの粉末を水に分散させた分散液を用いる。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
珪酸液などの水溶性無機化合物を用いて調製された乳化液を-10~0℃の範囲で冷却して製造すると、無孔質の外殻を有する中空球状粒子が得られる。
【0024】
水溶性無機化合物としては、アルカリ金属塩、有機アルカリ金属塩、ペルオキソ化合物および、その塩が挙げられる。アルカリ金属塩として、珪酸ナトリウム、チタン酸カリウム、及び、これらを陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリ(アルカリイオンの除去等)したものを例示できる。また、有機アルカリ金属塩として、第4級アンモニウムシリケート、及びこれを陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリ(アルカリイオンの除去等)したものを例示できる。また、ペルオキソ化合物として、チタンまたはジルコニウムのペルオキソ化合物を例示できる。
【0025】
固体が予め水に分散したゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、酸化鉄ゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化ストロンチウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、硫酸バリウムゾル、および酸化セリウムゾル等が挙げられる。また、各種粒子の平均粒子径dは、2nm~100μmが好ましい。平均粒子径が100μmを超えると球状粒子が得られないことがある。平均粒子径が2nm未満の場合は、粒子としての安定性が低く、工業的な側面で好ましくない。10nm~10μmの範囲が特に望ましい。
【0026】
粉末を水に分散する場合は、粉末を水に加えた後に液中分散機、例えば高速回線せん断型攪拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、超音波分散機、容積駆動型ミル、媒体撹拌ミル等を用いて分散させることが好ましい。分散後の各種粒子の平均粒子径dは、2nm~100μmが好ましい。
【0027】
なお、無機成分として、アルカリ金属塩、有機アルカリ金属塩、ペルオキソ化合物塩を用いた場合は、脱水工程の後に脱塩操作を行う必要がある。塩がアルカリ成分の場合は、鉱産、有機酸、炭酸等で中和する。塩が酸成分の場合は、アルカリ、有機塩基等で中和する。中和の後、水洗により精製することが望ましい。
【実施例
【0028】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0029】
[実施例1]
はじめに、無機成分の水分散液を準備する。本実施例では、シリカゾル(日揮触媒化成製のCataloid SI-30、固形分濃度30%)1667gに純水3333gを加え、固形分濃度10%の水分散液を調製した。
【0030】
この水分散液と非水溶性溶媒と界面活性剤を混合する。本実施例では、水分散液200gをヘプタン(関東化学社製)3346gと界面活性剤AO-10V(花王社製)25gの混合溶液中に加えた。乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して、この混合溶液を10000rpmで10分間撹拌し、乳化させた。このようにして得られた乳化液を、-25℃の恒温槽中で72時間静置し、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温した。さらに、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。この濾過法によれば乳化液滴の水が除去される。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄し、界面活性剤を除去した。これにより得られたケーキ状物質を、120℃で12時間乾燥した。この乾燥処理によっても、乳化液滴内の水が除去される。得られた乾燥粉体を、500℃で4時間焼成した、この焼成粉体を、250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、球状粒子の粉体を得た。
【0031】
球状粒子の調製条件を表1に示す。また、球状粒子の粉体の物性を以下の方法で測定した。その結果を表2に示す。
【0032】
(1)各粒子の平均粒子径
レーザー回折法を用いて、各粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径とした。このようにして、球状粒子の平均粒子径d、無機成分の平均粒子径dを求めた。ここでは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2(堀場製作所社製)を用いて粒度分布を測定した。但し、実施例10、実施例11の平均粒子径dは、マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて、動的光散乱法により粒度分布を測定した。
【0033】
(2)超音波分散前後の平均粒子径比
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950v2)で、分散条件を「超音波60分間」に設定し、分散させた。分散後の球状粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布のメジアン値を超音波分散後の平均粒子径dとした。これから超音波分散前後の平均粒子径の比(d/d)を求めた。
【0034】
(3)球状粒子の真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H-8000)により、2000倍から25万倍の倍率で撮影し、写真投影図を得る。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径DLと、これに直交する短径DSを測定し、比(DS/DL)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
【0035】
(4)球状粒子の比表面積
球状粒子の粉体を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、105℃で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、試料を1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m/g)をBET法にて測定した。球状粒子に配合したI型結晶性セルロースの密度(1.5g/cm)でこれを換算し、単位体積当たりの比表面積を求めた。実施例10、実施例11の球状粒子の水分散液については、この分散液を120℃、12時間乾燥した後の粉体を試料として使用した。
【0036】
(5)球状粒子の細孔容積、細孔径
球状粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次いで、洗浄したセルに0.15gの試料を取り、Belsorp miniII(日本ベル社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着させ、その後、脱着させる。得られた吸着等温線から、BJH法により平均細孔径を算出する。また、「細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V-Vc)/W)」という式から細孔容積を算出した。ここで、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比を0.001567とした。また、実施例10、実施例11の球状粒子の水分散液については、この分散液を120℃、12時間乾燥した後の粉体を試料として使用した。
【0037】
(6)乳化液滴の平均径
レーザー回折法を用いて、乳化液滴の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均径とした。このようにして、乳化液滴の平均径を求めた。ここでは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置SALD-2000(島津製作所社製)を用いて粒度分布を測定した。但し、実施例10、実施例11の乳化液滴の平均径は、ELS-Z(大塚電子社製)を用いて、動的光散乱法により粒度分布を測定した。
【0038】
[実施例2]
実施例1と同様に乳化液を調製した。この乳化液を-5℃の冷凍庫中で72時間静置した。これ以降も実施例1と同様にして、球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0039】
本実施例で得られた球状粒子の構造を調べた。粉体0.1gをエポキシ樹脂約1g(BUEHLHER社製EPO-KWICK)に均一に混合して常温で硬化させた後、FIB加工装置(日立製作所社製、FB-2100)を用いて、試料を作製した。透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、HF-2200)を用いて、加速電圧200kVの条件下で、この試料のSEM像を撮影した。その結果、外殻の内部に空洞が形成された中空構造の粒子であった。このSEM像から、外殻の厚さTと外径ODを計測し、外殻の厚さ比(T/OD)を求めた。
【0040】
[実施例3]
実施例1で用いた無機成分の水分散液の代わりに、日揮触媒化成社製のUSBB-120(固形分濃度10%)を使用した。そのため、本実施例の無機成分はシリカアルミナである。これ以外は、実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0041】
[実施例4]
本実施例では、FINEX―50(堺化学工業社製)500gを純水4500gに懸濁し、この懸濁液をマイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製M-7250-30)に10回通過させて、固形分濃度10%の水分散液を調製した。これを無機成分の水分散液として用いて、実施例1と同様に球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0042】
[実施例5]
実施例1で用いた無機成分の水分散液の代わりに、日揮触媒化成社製のネオサンベールPW―1010A―20(固形分濃度10%)を使用した。これ以外は、実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0043】
[実施例6]
実施例1で用いた無機成分の水分散液の代わりに、日揮触媒化成社製のネオサンベールA(固形分濃度10%)を使用した。これ以外は、実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0044】
[実施例7]
実施例1で用いた無機成分の水分散液の代わりに、日揮触媒化成社製のネオサンベールF(固形分濃度10%)を使用した。これ以外は、実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0045】
[実施例8]
本実施例では、堺化学工業社製のBF―20FW(固形分濃度58%)862gに純水4138gを加え、固形分濃度10%の水分散液を調製した。これを無機成分の水分散液として用いて、実施例1と同様に球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0046】
[実施例9]
本実施例では、堺化学工業社製のSZR-W(固形分濃度30%)1667gに純水3333gを加え、固形分濃度10%の水分散液を調製した。これを無機成分の水分散液として用いて、実施例1と同様に球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0047】
[実施例10]
無機成分の水分散液として珪酸液(固形分濃度4.5%)を使用した。この珪酸液200gを、ヘプタン(関東化学社製)3346gと界面活性剤AO-10V(花王社製)25gの混合溶液中に加えた。この混合溶液を、100MPaの圧力でマイクロフルイダイザーを3回通液させた。これにより乳化され、乳化液滴を含む乳化液が得られた。このようにして得られた乳化液を、-25℃の恒温槽中で72時間静置し、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温した。さらに、10000Gで10分間遠心分離処理を行って、固液分離した。得られた沈降物を再度ヘプタンに分散させ、遠心分離処理を行った。この操作を3回繰り返し、界面活性剤を除去した。さらに、得られた沈降物をエタノールに分散させ、10000Gで10分間遠心分離処理を行って、固液分離した。得られた沈降物を再度エタノールに分散させ、遠心分離処理を行った。この操作を5回繰り返した。さらに、得られた沈降物を純水に分散させ、10000Gで10分間遠心分離処理を行って、固液分離した。得られた沈降物を再度純水に分散させ、遠心分離処理を行った。この操作を10回繰り返して、球状粒子の水分散液を得た。この球状粒子の水分散液の物性を測定した。
【0048】
[実施例11]
本実施例では、珪酸液(固形分濃度4.5%)22gに純水178gを加えて、固形分濃度0.5%の無機成分の水分散液とした。こ水分散液200gを、ヘプタン(関東化学社製)3346gと界面活性剤AO-10V(花王社製)25gの混合溶液中に加えた。この混合溶液を、170MPaの圧力で、マイクロフルイダイザーに10回通液させた。これ以降は実施例10と同様にして球状粒子の水分散液を調製し、物性を測定した。本実施例では、実施例10に比べて固形分濃度を低くし、マイクロフルイダイザーの条件を変更したために、小さい球状粒子が得られた。
【0049】
[実施例12]
乳化条件を100rpm、10分間とした以外は実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0050】
[実施例13]
乳化条件を2000rpm、10分間とした以外は実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0051】
[実施例14]
実施例1で用いたシリカゾル(Cataloid SI-30)を希釈せずに、固形分濃度30%のまま、無機成分の水分散液として使用した。これ以外は実施例1と同様にして球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0052】
[実施例15]
無機成分の水分散液として珪酸液(固形分濃度4.5%)を使用した。これ以外は実施例1と同様に球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0053】
[実施例16]
無機成分の水分散液として珪酸液(固形分濃度4.5%)を使用した。これ以外は実施例2と同様に球状粒子を調製し、物性を測定した。
【0054】
[比較例1]
実施例1と同様に乳化液を調製した。この乳化液をガラスビーカーに入れ、それをデュワー瓶に入れた液体窒素(-196℃)に1分間漬けて凍結させた。その後、常温まで昇温した。さらに、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄し界面活性剤を除去した。これにより得られたケーキ状物質を、120℃で12時間乾燥した。この乾燥処理により乳化液滴内の水分が除去された。この乾燥粉体を、500℃で4時間焼成した、この焼成粉体を、250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、無機粒子の粉体を得た。この無機粒子の物性を測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】