(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】耐震補修弁の傾き矯正構造
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20230711BHJP
F16K 5/06 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
F16K27/00 C
F16K5/06 Z
(21)【出願番号】P 2018198644
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】呉竹 賢二
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 幸一
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190614(JP,A)
【文献】特開2017-172799(JP,A)
【文献】特開2017-106523(JP,A)
【文献】実開昭52-121729(JP,U)
【文献】特開平10-246387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0298594(US,A1)
【文献】特開2013-190084(JP,A)
【文献】特開2014-159823(JP,A)
【文献】特開2018-013145(JP,A)
【文献】特開平10-325481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16L 27/00 - 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修弁本体のボデーの二次側にフランジ部を、前記ボデーの一次側に挿し口をそれぞれ形成し、前記挿し口を環状の押輪と環状の受け口部材からなる保持体の内周側に遊嵌状態で装入し、前記挿し口と前記保持体との間に抜け止めリングとゴム輪を装着した伸縮可撓機構を内蔵し、前記補修弁本体が可撓して傾いた際に、前記補修弁本体を直立状態にして、前記フランジ部、又は、前記挿し口を延長した長尺状の延設管の途中に設けた固定用フランジ部と前記保持体との間に傾き矯正治具を取付け、この傾き矯正治具は、前記フランジ部、又は、前記固定用フランジ部と前記保持体との間に挟持された状態で前記補修弁本体を包囲するように装着
されることを特徴とする
耐震補修弁の傾き矯正構造。
【請求項2】
前記固定用フランジ部と前記保持体との間の間隙距離を前記フランジ部と前記保持体との間の間隙距離と略同一とし、かつ、前記傾き矯正治具と高さを略同一とした延設管用の傾き矯正治具を前記固定用フランジ部と前記保持体との間に装着可能とした請求項1に記載の
耐震補修弁の傾き矯正構造。
【請求項3】
前記傾き矯正治具に一つ或は複数の切欠き状の係止部が形成され、この係止部が前記補修弁本体及び前記保持体に取付けられた接続用ボルト、接続用ナットに係止された状態で前記傾き矯正治具が止着された請求項1又2に記載の
耐震補修弁の傾き矯正構造。
【請求項4】
前記傾き矯正治具は、二分割或はそれ以上の分割構造に設けられた請求項1乃至3の何れか1項に記載の
耐震補修弁の傾き矯正構造。
【請求項5】
前記傾き矯正治具は、自由端部の開口部を有する一体構造に設けられ、この開口部の対向側に曲折変形用の切欠き部が形成された請求項1乃至4の何れか1項に記載の
耐震補修弁の傾き矯正構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可撓性を有する継手構造を備えた耐震補修弁の傾き矯正構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば消火栓や空気弁は、一般に地下に埋設された水道管から分岐管を介して立設状態に接続される。通常、これら消火栓や空気弁の直下には補修弁が設けられ、この一次側の補修弁により水道管から消火栓や空気弁に加わる水圧を遮断することで、二次側の消火栓や空気弁のメンテナンスや交換が可能になっている。このように消火栓や空気弁を地下埋設式とした場合、仮に地震が発生して地盤変化が生じると、水道管のずれなどにより消火栓や空気弁が損傷するおそれがある。この対策として、消火栓や空気弁を伸縮可撓性を有する継手構造の耐震補修弁を介して分岐管に接続するものが知られている。
【0003】
この種の補修弁として、例えば、特許文献1の耐震補修弁が本出願人により出願されている。この補修弁は、ボデーの挿し口が受け口部材に挿入された状態でこれらの間に抜け止めリング、ゴム輪が装着され、押輪を介してこれら抜け止めリング、ゴム輪が押圧されつつ一体化されている。これにより、ボデー側が挿し口を介して受け口部材に対して振れ方向を中心として伸縮可撓可能になり、ゴム輪によりシール性を確保して水漏れを防ぐことが可能になっている。
【0004】
このような継手構造を用いて消火栓や空気弁を地下に敷設する場合、例えば、
図6(a)、
図6(b)に示した状態に接続される。
図6(a)の場合、地中に水平方向に埋設された水道管1まで到達するように弁筐(ピット)2が地表3から形成され、この弁筐2内に水道管1から分岐された分岐部4が配置されている。分岐部4の上部には伸縮可撓性を有する補修弁5が、弁筐2の壁面2aとの間に隙間が設けられつつ立設状態で接続される。補修弁5の上部には空気弁6が接続され、この空気弁6により水道管1内の空気を外部に逃がすようになっている。
【0005】
また、
図6(b)においては、
図6(a)の空気弁の位置に消火栓7が接続され、この消火栓7を介して外部に水が供給されるようになっている。この場合、
図6(a)の場合と同様に水道管1の分岐部4の上部に補修弁5が立設状態で接続され、この補修弁5の上部に消火栓7が接続される。
地震の発生時には、
図6(a)、
図6(b)に示すように、各補修弁5のボデー5a側が水道管1側に対して振れ方向並びに接続方向に伸縮可撓することで外力を緩和し、空気弁6や消火栓7や分岐部4の破損を防止するようになっている。
【0006】
一方、特許文献2は、分岐管の耐震継手に関するものであり、本管から分岐された分岐管と末端器材が接続された接続管とを繋ぐために設けられる。この継手は、分岐管の内周に環状シール部材が装着され、分岐管の固定側フランジ部と、接続管の可動側フランジ部との間に形成された空間に弾性体により形成された筒状スペーサが介在された状態で、固定側フランジ部と可動側フランジ部とが連結ボルトで接続されている。これにより、地震発生時などに末端器材側が揺れて分岐管および接続管に曲げモーメントが作用した際に、スペーサによりこの振れ方向の力を緩和し、連結ボルトの破損を防止しつつシール部材により継手の破損や漏水を防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-172799号公報
【文献】特許第6341722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前者の特許文献1は、
図6(a)、
図6(b)の状態で補修弁5が敷設されている場合、地震の発生時に地盤と管路の相対変位により、消火栓7や空気弁6が弁筐2に衝突し、補修弁5が伸縮可撓して傾倒することがある。この場合、補修弁5に漏水や破損がみられないときには、復旧作業時には弁筐2部分のみを交換し、補修弁5はそのまま再利用することができる。
しかし、補修弁5に過大な力が加わって可撓した場合、傾倒状態から直立状態に戻したときに、この状態を保持することが難しくなる。そのため、
図7(a)に示すように、補修弁5が傾斜して空気弁6の水平の取付け状態を維持できなくなるおそれがあり、空気弁6の機能を十分に発揮できずに漏水が生じる可能性も生じる。また、
図7(b)に示すように、補修弁5が傾斜することでこの補修弁5に開閉操作用の開栓器8を取付けたときに、開栓器8が弁筐2に干渉して操作が難しくなったり、開栓器8を取付けられずに開閉操作できなくなることもある。
仮に、補修弁5の破損した内部部品を交換して直立状態を保持しようとしたとしても、この補修弁5が埋設状態で分岐部4に接続されていることで作業が困難であり、補修弁5を分岐部4から取り外して部品を交換する場合にも断水しての作業が必要となる。
【0009】
一方、後者の特許文献2の耐震継手は、地震発生時に振れ方向の力を筒状スペーサで緩和するものであり、例えばこの耐震継手の末端側に補修弁を設けた場合、この補修弁を地震後の可撓状態から直立状態に戻して再度直立状態に保持するためのものではない。さらに、スペーサが分岐管と接続管と間に接合用部品として一体に組込まれ、このスペーサの可撓を介してシール部材のシール性を確保していることから、スペーサが破損したときにはこのスペーサを交換して可撓性を復旧させる必要がある。スペーサを交換する場合、連結ボルトを緩めて接続管を分岐管から取外す必要があるため、交換作業が難しくなるという問題も有している。
【0010】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、伸縮可撓性により耐震性を発揮する耐震補修弁であり、伸縮可撓した際に、部品を交換することなく直立状態に戻した状態で保持できる耐震補修弁の傾き矯正構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、補修弁本体のボデーの二次側にフランジ部を、ボデーの一次側に挿し口をそれぞれ形成し、挿し口を環状の押輪と環状の受け口部材からなる保持体の内周側に遊嵌状態で装入し、挿し口と保持体との間に抜け止めリングとゴム輪を装着した伸縮可撓機構を内蔵し、補修弁本体が可撓して傾いた際に、補修弁本体を直立状態にして、フランジ部、又は、挿し口を延長した長尺状の延設管の途中に設けた固定用フランジ部と保持体との間に傾き矯正治具を取付け、この傾き矯正治具は、フランジ部、又は、固定用フランジ部と保持体との間に挟持された状態で補修弁本体を包囲するように装着される耐震補修弁の傾き矯正構造である。
【0013】
請求項2に係る発明は、固定用フランジ部と保持体との間の間隙距離をフランジ部と保持体との間の間隙距離と略同一とし、かつ、傾き矯正治具と高さを略同一とした延設管用の傾き矯正治具を固定用フランジ部と保持体との間に装着可能とした耐震補修弁の傾き矯正構造である。
【0014】
請求項3に係る発明は、傾き矯正治具に一つ或は複数の切欠き状の係止部が形成され、この係止部が補修弁本体及び保持体に取付けられた接続用ボルト、接続用ナットに係止された状態で傾き矯正治具が止着された耐震補修弁の傾き矯正構造である。
【0015】
請求項4に係る発明は、傾き矯正治具は、二分割或はそれ以上の分割構造に設けられた耐震補修弁の傾き矯正構造である。
【0016】
請求項5に係る発明は、傾き矯正治具は、自由端部の開口部を有する一体構造に設けられ、この開口部の対向側に曲折変形用の切欠き部が形成された耐震補修弁の傾き矯正構造である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、伸縮可撓機構を介して補修弁本体が保持体に対して伸縮可撓することで耐震性を発揮し、部品の破損や漏水を確実に防止する。補修弁本体が伸縮可撓して傾いた際には、この補修弁本体の全体を垂直状態に戻して、フランジ部と保持体との間、又は、挿し口を延長した長尺状の延設管の途中に設けた固定用フランジ部と保持体との間に傾き矯正治具を取付けて直立状態に保持することで、部品を交換することなく再利用でき、補修弁本体の傾倒を防止した状態で使用可能となる。これにより、フランジ部を介して二次側に空気弁を設けた場合には、この空気弁の水平の取付け状態を維持してその機能を十分に発揮し、漏水も防ぐことができる。一方、二次側に消火栓を設けた場合には、補修弁を介して消火栓の傾きを阻止し、この消火栓に取付けられる開栓器の弁筐等への干渉を防止し、開栓器による操作性を確保して放水作業を円滑におこなうことができる。
【0019】
しかも、傾き矯正治具を、その上下両端をフランジ部と保持体との間に挟んだ状態で、かつ補修弁本体を包囲する状態で装着することにより、補修弁本体が傾き矯正治具に接触してその傾倒を防いで直立状態を確実に保持する。地震発生時には、傾き矯正治具により衝撃を吸収しつつ補修弁本体が伸縮可撓するため、内部の部品の破損を防止できる。傾き矯正治具を装着するための被装着部位をあらたに設けることなく、二次側の接続用フランジ部と、伸縮可撓機構の収納用の保持体とを利用して傾き矯正治具を装着可能となる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、固定用フランジ部と保持体との間の間隙距離をフランジ部と保持体との間の間隙距離と略同一とし、かつ、傾き矯正治具と高さを略同一とした延設管用の傾き矯正治具を固定用フランジ部と保持体との間に装着可能としたので、深い位置に埋設される長尺状の場合でも、固定用フランジと保持体との間と略同じ高さの傾き矯正治具を取付けできる。このため、全体の高さが異なる場合にも一つの傾き矯正治具を共用化可能になり、異なる仕様ごとに異なる傾き矯正治具を製作する必要がない。
【0021】
請求項3に係る発明によると、接続用ボルト、接続用ナットの取付け数に応じて一つ或は複数の係止部を傾き矯正治具に形成し、この傾き矯正治具を接続用ボルト、接続用ナットの外方より取付けできる。これにより、接続用ボルトや接続用ナットを着脱することなく接続状態で傾き矯正部材を装着できる。この場合、傾き矯正治具を撓ませつつ接続用ボルト、接続用ナットに容易に係止部を着脱でき、傾き矯正部材の装着後には、その弾性により係止部が接続用ボルト、接続用ナットへの係止状態を維持して脱落を確実に阻止する。
【0022】
請求項4に係る発明によると、傾き矯正治具を二分割或はそれ以上の分割構造とすることで補修弁本体の側方から簡便に着脱でき、態様に応じて任意の分割数によって傾き矯正治具を設けることも可能となる。傾き矯正治具の未使用時には、分割したパーツを重ねてコンパクト化できる。
【0023】
請求項5に係る発明によると、傾き矯正治具を自由端部の開口部を有する一体構造に設け、開口部の対向側に曲折変形用の切欠き部を形成することで、この傾き矯正治具をヒンジ構造として、補修弁本体の外方よりワンタッチで接続用ボルト、接続用ナットに着脱可能となる。傾き矯正治具を一体化できるためその管理も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の耐震補修弁の実施形態を示す模式図である。(a)は耐震補修弁の正面図である。(b)は耐震補修弁の平面図である。
【
図2】(a)は耐震補修弁の側面図である。(b)は
図1(a)の縦断面図である。
【
図3】(a)は傾き矯正治具の分離斜視図である。(b)は傾き矯正治具の正面図である。(c)は(a)の平面図である。
【
図4】(a)は傾き矯正治具の他例を示す平面図である。(b)は(a)のA部拡大断面図である。
【
図5】(a)は耐震補修弁の他例を示す正面図である。(b)は(a)の中央縦断面図である。
【
図6】(a)は耐震補修弁に空気弁が接続された状態を示す模式図である。(b)は耐震補修弁に消火栓が接続された状態を示す模式図である。
【
図7】(a)は耐震補修弁に接続された空気弁の可撓状態を示す模式図である。(b)は耐震補修弁に接続された消火栓の可撓状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明における耐震補修弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、
図2においては、本発明の耐震補修弁の実施形態を示している。
【0027】
本発明の耐震補修弁は、二次側にフランジ部21を備えた補修弁本体10と、一次側に保持体11を有し、保持体内11には伸縮可撓機構12が備えられ、この伸縮可撓機構12により補修弁本体10が保持体11に対して伸縮可撓可能に設けられている。さらに、補修弁本体10と保持体11との間には、傾き矯正治具20が設けられる。
そして、補修弁本体10が可撓して傾いた際には、この補修弁本体10を保持体11に対して直立状態にして、そのフランジ部21と保持体11との間に傾き矯正治具20を取付けて直立状態を保持するようにしている。
【0028】
図2(b)において、補修弁本体10は、金属材料により形成されたボデー22を備えており、このボデー22の二次側には略円板状のフランジ部21が形成され、このフランジ部21を介して空気弁や消火栓などの配管機器23が六角ボルト等の接続用ボルト24、六角ナット等の接続用ナット25により取付け可能に設けられる。
ボデー22の一次側には挿し口26が延長するように形成され、この挿し口26の外周には所定幅の幅広溝27が形成されている。補修弁本体10は、挿し口26を介して保持体11に接続可能になっている。
【0029】
ボデー22内にはボールよりなる弁体30が装着され、この弁体30にはステム31が接続され、このステム31に操作用ハンドル32が取付けられている。弁体30は、操作用ハンドル32の回転操作によってステム31を介してボデー22内に形成された流路33を開閉可能に設けられる。ボデー22内の弁体30の一次側には弁座34が装着され、ボデー22の弁体30の二次側には弁座35が弁座受け36を介して装着される。このように、本例では、補修弁本体10がボール弁構造に設けられている。
【0030】
一方、保持体11は、環状の受け口部材40と、この受け口部材40の上部に装着される環状の押輪41とからなり、これらは六角穴付きボルト等の接続用ボルト28により固着され、この保持体11を介して、補修弁本体10が、一次側の外部配管である分岐管の配管フランジ42に配管用の埋込みボルト29、接続用ナット25により接続される。図示しないが、分岐管は、水平方向に配置された水道本管から垂直方向に分岐され、水道本管に接続されたT字管により構成されている。
【0031】
押輪41は、金属材料により略円板状に形成され、中央には挿し口26が遊嵌状態で挿入可能な内径の挿通口43が形成される。挿通口43の下部側には、後述する抜け止めリング44を装着可能な拡径段部45が形成される。一方、挿通口43の上部側には、拡径状の大径段部46が形成され、この大径段部46によって傾倒した補修弁本体10の挿し口26の干渉を防ぐようになっている。
【0032】
受け口部材40は、金属材料により略円板状に形成され、この受け口部材40の上面側には拡径段部45と略同径の抜け止めリング44装着用の環状段部47が形成され、この環状段部47に続けて後述するゴム輪48収納用の小径段部49が形成される。受け口部材40の底面内周側には縮径状の張出部50が形成され、この張出部50により外部の配管フランジ42との接合時に装着される、図示しないガスケットの当たり面が確保される。
上記の受け口部材40は、接続用ボルト24、接続用ナット25によって配管フランジ42と固着可能な外径に設けられる。
【0033】
伸縮可撓機構12は、ボデー22に形成された前記挿し口26、並びに抜け止めリング44、ゴム輪48を有している。
【0034】
抜け止めリング44は、金属材料により環状に形成され、その厚さが後述の装着溝51内に挟着状態で装着可能で、かつ幅広溝27の長さよりも大きくなるように設けられる。抜け止めリング44の内周上部には環状の突条部52が内径側に突出して形成され、この突条部52は、幅広溝27に係止可能な長さに設けられる。抜け止めリング44は分割されたリングにより設けられ、この分割構造により、突条部52を幅広溝27に係止させた状態で、装着溝51に装着可能に設けられている。
【0035】
ゴム輪48は、弾性に富んだゴム材料により小径段部49に収容可能な環状に形成され、受け口部材40と挿し口26との間に装着されてこれらの間のシール性を確保可能になっている。
【0036】
伸縮可撓機構12は、挿し口26が保持体11の内周側に遊嵌状態で装入された状態で、これら挿し口26と保持体11との間に抜け止めリング44、ゴム輪48が装着されて構成される。この場合、受け口部材40と押輪41とを重ねたときに、受け口部材40の環状段部47と押輪41の拡径段部45とにより抜け止めリング44装着用の前記装着溝51が構成され、小径段部49にゴム輪48が収納され、装着溝51に抜け止めリング44が装着された状態で、押輪41と受け口部材40とが接続用ボルト28により固着されて一体化される。
【0037】
押輪41の締め込みにより抜け止めリング44を介してゴム輪48が押圧され、押輪41によって抜け止めリング44の突条部52が幅広溝27に係止して受け口部材40、押輪41からのボデー22の抜け出しが防止された状態で、ゴム輪48によるシール性が発揮されて漏れが防がれた状態となる。このように一つの押輪41で抜け止めリング44、ゴム輪48を所定の状態に装着していることでコンパクト化されている。
【0038】
受け口部材40と押輪41との組合わせ後には、突条部52の下部付近と幅広溝27との間に伸縮可撓スペースSが形成され、この伸縮可撓スペースSと、挿通口43上部の大径段部46とを介して、地震発生時には二次側に配置されたボデー22側が一次側に配置された保持体11側に対して振れ方向並びに接続方向に伸縮可撓して耐震性を発揮する。
【0039】
この伸縮可撓時にもゴム輪48により挿し口26と受け口部材40との間のシール性が確保されることで、挿し口26側が保持体11に対して大きく傾いたとしても、ゴム輪48が弾性力を発揮して挿し口26の外周、受け口部材40の小径段部49の内周に密着シールした状態を確保し、漏れを確実に防止する。
【0040】
ボデー22と押輪41との間には、ゴムカバー53が設けられ、このゴムカバー53は、弾性を有するゴム材料により環状に形成され、ボデー22、押輪41にそれぞれ形成された係合部位に伸縮可能な状態で着脱可能に取付けられる。このゴムカバー53により伸縮可撓機構12への水やゴミ等の浸入が防がれ、かつ、このゴムカバー53は、地震等の外力により補修弁本体10が大きく傾いたり、流路方向に引き出された場合でも追随して変形することで脱落が防止されている。
【0041】
図3(a)~
図3(c)に示した傾き矯正治具20は、例えばVU管(塩化ビニル管)等の樹脂管を材料として略円筒形状に形成され、本例では分割体20a、20aにより二分割構造に設けられる。傾き矯正治具20の高さHは、フランジ部21の底面から保持体11の押輪41上面までの間と略同じ高さであり、本例ではやや短く設けられ、傾き矯正治具の高さHが67mm、フランジ部21底面から押輪41上面までの間の距離が70mmに設けられ、耐震補修弁のフランジ部の面間寸法が150mmとなるように設けられている。
【0042】
傾き矯正治具20の上下端部には、円周方向に沿って複数の切欠き状の係止部60が形成される。この上下の各係止部60は、接続用ボルト24、28、ボデー22のフランジ部21側に装着される接続用ナット25に対応する位置に、それぞれ所定の切欠き幅及び深さにより形成される。本実施形態においては、傾き矯正治具20の上端部側に、4つの接続用ナット25(接続用ボルト24)の位置に対応する4箇所の係止部60が形成され、下端部側に、4本の接続用ボルト28の位置に対応する4箇所の係止部60が形成されている。
傾き矯正治具20において、補修弁本体10に設けられたステム収納部(軸装部)61が対応する位置には、切欠き状の逃げ部62が形成される。
【0043】
図1、
図2において、傾き矯正治具20は、その上下両端がフランジ部21と保持体11との間に挟まれた状態で、かつ補修弁本体10を包囲する状態で装着される。このとき、フランジ部21及び保持体11に取付けられた接続用ボルト24、28、接続用ナット25に対して、それぞれ外方より係止部60が係止された状態で各分割体20aが装着され、これによって傾き矯正治具20がフランジ部21、保持体11に止着され、この傾き矯正治具20を弾性により撓ませながら装着可能になっている。逃げ部62内には、ステム収納部61が収まることで、このステム収納部61を避けつつ傾き矯正治具20を補修弁本体10の外周囲に装着可能となる。
図示しないが、傾き矯正治具20の装着後には、その外周にゴムバンドを巻き付けたり、紐で縛ったりしてもよく、この場合、分割体20aの分離を防いで、傾き矯正治具20の取付け状態を維持できる。
【0044】
図4(a)においては、傾き矯正治具の他例を示している。この傾き矯正治具70は、円筒部の一部を切断するようにして、自由端部の開口部71を有する一体構造に設けられる。
図4(b)に示すように、開口部71の対向側の外周面には、切欠き部72が略90°の角度で形成され、この切欠き部72付近で傾き矯正治具70が曲折変形可能となる。これにより、傾き矯正治具70は、いわゆるヒンジ構造に設けられ、切欠き部72を中心に弾性変形させながら開口部71を開口させて、フランジ部21及び保持体11に装着可能になっている。
【0045】
図5(a)、
図5(b)においては、耐震補修弁の他例を示している。この耐震補修弁においては、補修弁本体80に流路方向に延設された延設管81が備えられ、この延設管81の途中に固定用フランジ部82が設けられる。固定用フランジ部82は、その底面から保持体11の押輪41上面までの間の距離が、前述した補修弁本体10のフランジ部21の底面から押輪41上面までの間の距離(70mm)と略同じになるように、延設管81の所定位置に一体又は別体に設けられる。これによって、固定用フランジ部82と保持体11との間に、前記の傾き矯正治具20と同じ高さHである傾き矯正治具20が取付け可能になっている。本例の耐震補修弁においては、フランジ部の面間寸法が300mmとなるように設けられている。
【0046】
なお、本発明の耐震補修弁は、T字管以外の各種の分岐管にも接続可能であり、さらには、分岐管以外の立て配管などの配管にも接続することが可能である。本実施形態では、補修弁本体をボール弁構造としているが、ボール弁以外の各種のバルブ構造に設けることもできる。
【0047】
傾き矯正治具は、VU管以外の樹脂材料を用いたり、或はその他の材料を用いて形成することもできる。傾き矯正治具を分割構造とする場合、二分割以上の分割構造に設けてもよい。
係止部は、傾き矯正治具に対して一つのみ形成されていてもよく、この係止部の数、及び幅や深さは、接続用ボルト、接続用ナットの数や呼び径、長さなどの仕様に合わせて適宜設定でき、逃げ部の切欠き形状もステム収納部の大きさなどに応じて任意に設定可能である。
【0048】
次いで、本発明の耐震補修弁の上記実施形態における作用を説明する。
図1、
図2において、伸縮可撓機構12を介して補修弁本体10のボデー22を保持体11に接続し、このボデー22を抜け止めリング44で抜け出しを阻止した状態で、ゴム輪48によりシール性並びに伸縮可撓性を確保した状態に設けていることにより、地震などにより外力が加わったときには、補修弁本体10が保持体11に対して流路方向及び振れ方向に伸縮可撓可能となる。これにより、補修弁が地下に埋設され、地震により弁筐に衝突したりして衝撃が加わったとしても伸縮可撓機構12を介して耐震性を発揮し、部品の破損や漏水を防ぐことができる。
【0049】
補修弁本体10が可撓して傾いた際には、保持体11側に対してボデー22側を直立状態、すなわち、補修弁全体を直立状態にし、フランジ部21と保持体11との間に傾き矯正治具20の上下両端を挟んだ状態にしつつ、補修弁本体10を包囲する状態でこの傾き矯正治具20を取付けてこの直立状態を保持できる。これにより、傾き矯正治具20の装着後には、その上端にフランジ部21の底面、下端に押輪41の上面がそれぞれ円周状に接触し、これらフランジ部21、押輪41を略水平状態に規制して振れを防止した状態で補修弁の直立状態を維持できる。このため、可撓後の補修弁を復旧させた後に、継続して使用することができる。
しかも、フランジ部21と保持体11とを利用して傾き矯正治具20を装着できるため、補修弁に別途装着部位を設けることなく、位置を規制しつつ傾き矯正治具20を所定の状態に装着できる。
【0050】
傾き矯正治具20の装着状態で地震等が発生した場合には、補修弁本体10の保持体11に対する伸縮可撓動作を傾き矯正治具20により適度に規制し、傾き矯正治具20が有する弾性により衝撃を吸収しつつ伸縮可撓させることができる。これにより、補修弁本体10の急激な伸縮可撓を抑えて部品の損傷を防ぐこともできる。この場合、地震による補修弁本体10の保持体11に対する傾倒で傾き矯正治具20が破損したときには傾き矯正治具20を取外し、再度補修弁本体10を直立させた状態で別の傾き矯正治具20を前記と同様に装着できる。
【0051】
傾き矯正治具20をVU管で設けていることで、汎用のパイプを利用して切欠き状の係止部60や逃げ部62を容易に加工でき製作も容易になる。軽量化を図りつつ強度を確保でき、長期に渡って補修弁の直立状態を保持可能となる。
【0052】
図3の二分割構造の傾き矯正治具20を装着する場合、
図1、
図2において、手動にて補修弁本体10を保持体11に対して直立状態に保持した状態で、逃げ部62内にステム収納部61を逃がすようにしつつ、補修弁本体10の側面から挟み込むように取付ける。このとき、弾性を利用して各分割体20aを撓ませるようにしながら、接続用ボルト24、接続用ナット25の外方から係止部60を引っ掛けるように係止させて止着できるため取付け作業が容易であり、また、取外しも容易である。装着後には、係止部60の周囲が接続用ボルト24、28、接続用ナット25に係止することで自然に脱落することを防止できる。
【0053】
一方、
図4に示すように、一体構造の傾き矯正治具70を装着する場合には、切欠き部72付近を中心にこの傾き矯正治具70を開口部71を開く方向に曲折変形させ、この開口部71から補修弁本体10の側面に包囲状態で取付けできる。この場合にも、前記と同様に逃げ部62内にステム収納部61を逃がしつつ、接続用ボルト24、28、接続用ナット25の外方から係止部60を引っ掛けるように容易に係止できる。傾き矯正治具70の装着後には、切欠き部60を介して元の円筒形状に復帰する方向に力が加わるため、自然に脱落することを防止して装着状態を維持できる。
【0054】
上記した何れの傾き矯正治具20、70の場合にも、係止部60を切欠きにより形成していることでこの係止部60同士の間に挟まれた部分が細いリブ状となるため、治具全体を撓ませやすくなり着脱が一層容易となる。
【0055】
図5に示すように、補修弁本体80を延設管81により延設した形状とし、この延設管81の途中に固定用フランジ部82を設け、この固定用フランジ部82と保持体11との間の距離を、高さHの傾き矯正治具20を装着可能に設けた場合には、補修弁本体80を長尺状に設けた場合にも傾き矯正治具20を共用化しつつ補修弁を直立状態に保持できる。このため、補修弁本体80を延長して深い位置に敷設する場合にも、態様の異なる傾き矯正治具を別途設けることなく、1種類の傾き矯正治具20又は傾き矯正治具70を使用してワンタッチで装着できる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0057】
10、80 補修弁本体
11 保持体
12 伸縮可撓機構
20、70 傾き矯正治具
20a 分割体
21 フランジ部
24 接続用ボルト
25 接続用ナット
26 挿し口
40 受け口部材
41 押輪
44 抜け止めリング
48 ゴム輪
60 係止部
71 開口部
72 切欠き部
81 延設管
82 固定用フランジ部
H 傾き補正治具の高さ