(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】フレキシブルセンサ及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20230711BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R33/02 B
(21)【出願番号】P 2018211456
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 淳士
(72)【発明者】
【氏名】芦田 豊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊介
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-068187(JP,A)
【文献】特開2011-232064(JP,A)
【文献】特開2019-215330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0077133(US,A1)
【文献】特表2010-531452(JP,A)
【文献】特開2002-333455(JP,A)
【文献】特開2002-181850(JP,A)
【文献】特開昭63-229381(JP,A)
【文献】特開2012-185176(JP,A)
【文献】特開2002-320242(JP,A)
【文献】特開2008-241480(JP,A)
【文献】特開2017-181220(JP,A)
【文献】特開2020-076707(JP,A)
【文献】特開2019-196962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-17/22
G01R 33/00-33/26
G01R 19/00-19/32
G01R 1/04
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を取り囲んだ状態で当該測定対象についての物理量を検出するフレキシブルセンサであって、
前記測定対象についての物理量を検出するセンサケーブルと、
作業者の手又は指で
前記センサケーブルの先端部を嵌める操作
がされ
る部位であって、前記センサケーブルの基端部が取り付けられ、前記センサケーブルの
前記先端部が側面から嵌められる溝部を有する保持部と、を備え
、
前記センサケーブルは、前記保持部が作業者の手のひらで保持された状態で、前記保持部を保持する手の親指で押されることによって前記溝部に嵌められる、
フレキシブルセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルセンサであって、
前記保持部は、厚さよりも前記側面の幅の方が大きい板状に形成される、
フレキシブルセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブルセンサであって、
前記センサケーブルは、弾性を有し、外力を取り去ると元の形状又はほぼ元の形状に回復する、
フレキシブルセンサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記センサケーブルは、長手方向に沿って形成されるロゴスキーコイルを有し、
前記ロゴスキーコイルは、前記先端部が前記溝部に嵌められた状態で、環状になるように両端部が近接する、
フレキシブルセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のフレキシブルセンサであって、
前記センサケーブルは、前記ロゴスキーコイルの前記両端部が周方向に近接した状態で、前記基端部と前記先端部とが周方向に重複する、
フレキシブルセンサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記センサケーブルは、前記先端部に、前記基端部の曲率よりも曲率の大きな部位が形成される、
フレキシブルセンサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記溝部は、前記センサケーブルの前記先端部の形状と同じ形状に形成される、
フレキシブルセンサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記保持部は、前記溝部の少なくとも一部を含む凹部を有し、
前記凹部は、前記溝部よりも浅くかつ大きな面積に形成される、
フレキシブルセンサ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記溝部は、前記保持部の表裏両面に各々形成され、
前記センサケーブルの前記先端部は、どちらの前記溝部にも嵌められる、
フレキシブルセンサ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサであって、
前記センサケーブルの前記先端部は、前記溝部の所定の位置に嵌まっていることを作業者が識別可能な識別部を有する、
フレキシブルセンサ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載のフレキシブルセンサと、
前記フレキシブルセンサによって検出される検出信号に基づいて、前記測定対象についての物理量を測定する測定部と、を備える、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象を取り囲んだ状態で当該測定対象についての物理量を検出するフレキシブルセンサ及び測定装置に関する。なお、本明細書において、フレキシブルセンサとは、可撓性を有するセンサをいうものとする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物理量としての電流を検出する電流検出器が開示されている。この電流検出器は、可撓性を有するチューブと、チューブの外周面に巻回される導電線と、を備え、チューブを環状に撓ませることでロゴスキーコイルを構成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電流検出器では、作業者は、通電路に流れる電流を検出するために、チューブを通電路の周囲に通して、チューブの先端部を筒状の保持部に嵌合させる必要がある。通電路が電子部品の端子のような小さなものである場合には、電流検出器のチューブを細くする必要があるので、チューブの先端部を保持部に嵌合させる作業が難しくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、測定対象にフレキシブルセンサを取り付ける際の作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、測定対象を取り囲んだ状態で当該測定対象についての物理量を検出するフレキシブルセンサは、前記測定対象についての物理量を検出するセンサケーブルと、作業者の手又は指で前記センサケーブルの先端部を嵌める操作がされる部位であって、前記センサケーブルの基端部が取り付けられ、前記センサケーブルの前記先端部が側面から嵌められる溝部を有する保持部と、を備え、前記センサケーブルは、前記保持部が作業者の手のひらで保持された状態で、前記保持部を保持する手の親指で押されることによって前記溝部に嵌められる。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、測定対象の周囲にセンサケーブルを通して、センサケーブルの先端部を保持部の溝部に側方から嵌めるだけで、測定対象にフレキシブルセンサが取り付けられる。作業者は、例えば、保持部を手のひらで保持しながら親指でセンサケーブルを押すことで、両手を使わなくてもセンサケーブルを溝部に嵌めることができる。したがって、測定対象にフレキシブルセンサを取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るフレキシブルセンサを備える測定装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、フレキシブルセンサのセンサケーブルが開かれた状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、フレキシブルセンサのセンサケーブルが閉じられた状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、フレキシブルセンサのセンサケーブルが開かれた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、フレキシブルセンサのセンサケーブルが閉じられた状態を示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、電子部品の端子をセンサケーブルで取り囲む手順を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、電子部品の端子をセンサケーブルで取り囲む手順を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、電子部品の端子をセンサケーブルで取り囲む手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルセンサとしての電流センサ10、及び電流センサ10を備える測定装置100について説明する。
【0010】
まず、
図1を参照して、測定装置100の構成について説明する。
図1は、測定装置100の構成を示す図である。
【0011】
測定装置100は、測定対象に流れる電流を検出する電流センサ10と、電流センサ10から出力される検出信号を積分する積分回路30と、積分回路30から出力される信号に基づき測定対象についての物理量を測定する測定部40と、を備える。
【0012】
測定対象としては、交流電流が流れる電源ライン又は基板上に実装された電子部品の端子などが挙げられる。また、測定対象についての物理量としては、測定対象に流れる交流電流の値、交流電力の値、又は測定対象の周囲に生じる交流磁界の値などが挙げられる。
【0013】
電流センサ10は、測定対象を取り囲んだ状態で当該測定対象に流れる交流電流を検出する。電流センサ10は、測定対象に流れる交流電流を検出可能なセンサケーブル1と、センサケーブル1の基端部13が取り付けられてセンサケーブル1の先端部11が側面から嵌められる溝部22を有する保持部2と、を備える。電流センサ10の構成については、
図2から
図4を参照しながら、後で詳細に説明する。
【0014】
積分回路30は、センサケーブル1の導線に誘起される電圧を示す検出信号を、測定対象に流れる電流の振幅に比例した信号に変換する。積分回路30は、変換した信号を測定部40に検出信号として出力する。
【0015】
測定部40は、積分回路30からの検出信号に基づいて、測定対象に関する物理量を測定する。例えば、測定部40は、積分回路30から検出信号を受け付けると、その検出信号に基づいて測定対象に流れる交流電流を測定する。
【0016】
測定部40は、他の物理量として、受け付けた検出信号に基づいて交流電力又は磁界の強さなどを測定するものであってもよい。測定部40は、測定した物理量についての波形を画面に表示する。測定部40は、例えば、オシロスコープ、電力計、又は電流計などによって構成される。
【0017】
次に、
図2から
図4を参照して、電流センサ10の構成について説明する。
図2は、センサケーブル1が開かれた状態を示す電流センサ10の正面図である。
図3は、センサケーブル1が閉じられた状態を示す電流センサ10の正面図である。
図4は、
図3における右側面図である。
【0018】
図2に示すように、センサケーブル1は、測定対象を取り囲みやすくするために、あらかじめ湾曲した形状に成形されている。センサケーブル1は、可撓性を有し、測定対象を取り囲む際に撓ませることが可能である。センサケーブル1は、弾性を有し、外力を取り去ると、元の形状又はほぼ元の形状に回復する。
【0019】
図3に示すように、センサケーブル1は、長手方向に沿って形成されるロゴスキーコイル10aを有する。即ち、センサケーブル1は、可撓性を有するロゴスキーコイル方式の電流センサである。
【0020】
センサケーブル1の全体は、フッ素樹脂などの樹脂材料で覆われている。これにより、測定対象を取り囲む際にセンサケーブル1が測定対象又はこれに隣接する他の隣接部材に引っ掛かってセンサケーブル1に傷が付くのを防ぐことができる。
【0021】
センサケーブル1の先端部11には、センサケーブル1の基端1bを有する基端部13の曲率よりも曲率の大きな部位が形成されている。先端部11は、センサケーブル1の先端1aを含む特定の長さの部位であり、先端1aの曲率を最も大きくしてもよいし、先端1aには曲率がなく他の部位の曲率を基端部13の曲率よりも大きくしてもよい。
【0022】
ロゴスキーコイル10aは、絶縁性のある中空の可撓性部材に導線が螺旋状に巻き回されてなる。可撓性部材は、例えば、塩化ビニル又はポリエチレンなどの合成樹脂により構成される。巻き回された導線は、センサケーブル1の先端1aの近傍で折り返され、中空の可撓性部材の内部を通過してセンサケーブル1の基端1bまで延びている。
【0023】
ロゴスキーコイル10aは、先端部11が溝部22に嵌められた状態(
図3に示す状態)で、環状になるように両端部10b,10cが周方向に近接する。これにより、ロゴスキーコイル10aの不完全領域を小さくすることができるので、センサケーブル1が近接する他の導体から発生する磁束によるノイズの影響を小さくすることができる。
【0024】
このとき、フッ素樹脂などの樹脂材料がロゴスキーコイル10aを覆うので、ロゴスキーコイル10aは、先端1a及び基端1bから1~2mm程度後退した位置までしか設けられない。そのため、ロゴスキーコイル10aの両端部10b,10cが近接した状態では、基端部13と先端部11とは、長手方向(周方向)に重複する。
【0025】
センサケーブル1の先端部11は、溝部22の所定の位置に嵌まっていることを作業者が識別可能な識別部11aを有する。即ち、センサケーブル1のうち溝部22に嵌まる部分が、他の部分と識別できるようになっている。具体的には、例えば、識別部11aと他の部分とで異なる色や模様を付けることで、作業者が視覚的に識別できるようにする。
【0026】
これにより、センサケーブル1の先端部11を溝部22の所定の位置に嵌めることができるので、測定対象の電流を測定する度にロゴスキーコイル10aの不完全領域の大きさが変化することを防止できる。
【0027】
図2に示すように、センサケーブル1は、測定対象の背後を通過した先端1aが測定対象の前面よりも手前にくるように、先端部11が溝部22の形状に合わせて内側にあらかじめ曲げられている。このため、固定部21の延設方向に延びる直線に対してセンサケーブル1の先端部11及び基端部13間の中途部12の接線が直交するように、センサケーブル1が湾曲に形成されている。
【0028】
また、センサケーブル1の基端部13は、作業者の指で保持部2を測定対象に向かって押し出した際に、その力がセンサケーブル1の中途部12に伝わりやすくするために、直線状に形成されている。更に、センサケーブル1の中途部12は、センサケーブル1が測定対象の隣接部材のエッジに引っ掛かりにくくなるように、センサケーブル1の基端部13の曲率よりも大きく、かつ、先端部11の曲率よりも小さな曲率で形成されている。
【0029】
このように、センサケーブル1は、基端部13から先端部11に近づくほど、センサケーブル1の曲率が段階的に又は連続して大きくなる。これにより、作業者の力が保持部2からセンサケーブル1に伝わりやすくなるとともに、センサケーブル1が測定対象又はその隣接部材に引っ掛かりにくくなる。
【0030】
以下では、
図3に示すように、保持部2の溝部22にセンサケーブル1の先端部11が保持された状態でのセンサケーブル1の曲率半径Rbを基準半径と称し、この基準半径の逆数(1/Rb)を基準曲率と称する。
【0031】
ここでは、基準半径Rbは、10mm程度の大きさである。電流センサ10は、比較的小さな測定対象に流れる電流を測定するものである。
【0032】
保持部2は、作業者の手又は指で操作される操作部位である。保持部2は、センサケーブル1の一部を固定する固定部21と、測定対象を取り囲んだ際に作業者によりセンサケーブル1の先端部11が側面から嵌められる溝部22と、溝部22の少なくとも一部を含む凹部23と、センサケーブル1側のインピーダンスと測定部40側のインピーダンスとの整合を取るための整合回路24(
図1参照)と、を備える。
【0033】
固定部21には、溝部22と凹部23とが形成される。固定部21の内部には、整合回路24が設けられる。固定部21は、作業者が保持しやすいように、例えば、長さLが30mm程度であり、幅Wが10mm程度の大きさに形成される。固定部21は、センサケーブル1によって取り囲まれた測定対象に向けて突出する突出部21aを有する。
【0034】
突出部21aは、基準半径Rbの円弧と略同心の円弧状に形成される。突出部21aは、センサケーブル1が閉じられた状態のときにセンサケーブル1が取り囲む測定対象の大きさを制限する。これにより、電流センサ10が測定可能な範囲よりも大きな電流が流れる太さの測定対象を、センサケーブル1が取り囲めないようにできる。また、突出部21aが設けられることで、ロゴスキーコイル10aの不完全領域の近くに測定対象が位置できないように制限することができる。
【0035】
溝部22は、センサケーブル1の先端部11の形状と同じ形状に形成される。センサケーブル1は、溝部22に嵌まる際に変形しないので、先端部11の形状(曲率)を維持することができる。これにより、センサケーブル1を構成する可撓性のある樹脂材料に理想的な形状を記憶させることができる。
【0036】
図4に示すように、溝部22は、保持部2の表裏両面に各々形成される。センサケーブル1の先端部11は、どちらの溝部22にも嵌められる。これにより、作業者は、測定対象の位置や形状によって、センサケーブル1をどの方向から通すかを考えながら作業を行うことができる。
【0037】
溝部22にセンサケーブル1の先端部11が挿入されることで、電流センサ10は閉じた状態となる(
図3に示す状態)。一方、溝部22からセンサケーブル1の先端部11が外されることで、電流センサ10は開いた状態となる(
図2に示す状態)。また、固定部21においては、センサケーブル1の基端1bと積分回路30のケーブル3とが電気的に接続されている(
図1参照)。
【0038】
図2及び
図3に示すように、凹部23は、溝部22の周囲に円形に形成される。凹部23は、溝部22よりも浅くかつ大きな面積に形成される。凹部23は、作業者がセンサケーブル1の先端部11を溝部22に嵌める際に、指が入り込むように形成される。凹部23が形成されることによって、作業者がセンサケーブル1を溝部22にしっかり押し込むことができるので、先端部11を溝部22に嵌めやすくなる。
【0039】
図4に示すように、凹部23もまた、保持部2の表裏両面に各々形成される。凹部23は、円形に限らず、他の形状であってもよい。例えば、作業者の親指が入り込みやすいように、凹部23を、保持部2を保持する作業者の手の親指の形状に合わせて、固定部21の長さ方向に長い楕円形に形成してもよい。
【0040】
次に、
図5及び
図6を参照して、電流センサ10の使用形態について説明する。
図5は、電流センサ10が開いた状態でのセンサケーブル1の形状を示す斜視図である。
図6は、電流センサ10が閉じた状態でのセンサケーブル1の形状を示す斜視図である。
【0041】
図5に示すように、センサケーブル1の先端部11が溝部22に嵌められていない状態では、電流センサ10は開いた状態である。この状態から、作業者が先端部11を溝部22の位置に合わせて、先端部11を指で溝部22に押し込むと、
図6に示す状態になる。
【0042】
図6に示すように、作業者によってセンサケーブル1の先端部11が溝部22に嵌められることで、センサケーブル1の先端部11が溝部22に保持される。これにより、電流センサ10が閉じた状態となり、測定対象がセンサケーブル1によって取り囲まれる。
【0043】
このように、測定対象の周囲にセンサケーブル1を通して、センサケーブル1の先端部11を保持部2の溝部22に側方から嵌めるだけで、測定対象にセンサケーブル1が取り付けられる。作業者は、例えば、保持部2を手のひらで保持しながら親指でセンサケーブル1を押すことで、両手を使わなくてもセンサケーブル1を溝部22に嵌めることができる。したがって、測定対象にセンサケーブル1を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0044】
特に、電流センサ10は、センサケーブル1の基準半径Rbが10mm程度であり、比較的小さな測定対象に流れる電流を測定するものである。電流センサ10によれば、上記のように構成されることで、小さな測定対象にセンサケーブル1を取り付ける際にも、作業性を向上させることができる。
【0045】
保持部2の溝部22からセンサケーブル1の先端部11が外されると、可撓性を有するセンサケーブル1は、
図2に示すような元の形状に戻るが、先端部11は溝部22に嵌められる際に変形していないので、そのままの形状を維持する。
【0046】
次に、
図7Aから
図7Cを参照して、基板に実装された電子部品の端子(足)を測定対象とし、その端子部品の端子をセンサケーブル1で取り囲む手順について説明する。
図7Aから
図7Cは、センサケーブル1の先端1aを電子部品90の端子91の背後から手前に送り出す手順を説明するための図である。
【0047】
図7Aから
図7Cに示す例では、電子部品90として、集積回路(Integrated Circuit:IC)又はDC/DCコンバータなどの電子部品が用いられる。電子部品90の端子91と端子92との隙間は、数mm(ミリメートル)程度である。センサケーブル1の太さ(直径)は、端子91と端子92との隙間に入るように、1mm以上、かつ、2mm以下に形成されている。
【0048】
図7Aに示すように、作業者は、保持部2を指先で挟んだ状態で端子91に向かって保持部2を移動させることで、電子部品90と端子91との間にセンサケーブル1の先端1aが挿入される。
【0049】
このとき、センサケーブル1の先端部11は、電流センサ10が閉じた状態の基準曲率(1/Rb)以上の曲率で形成されているので、センサケーブル1の先端部11を端子91の背後に挿入したときには、センサケーブル1の先端1aを端子91の背後を覆うように移動させることができる。このため、端子91のエッジにセンサケーブル1が引っ掛かってセンサケーブル1に傷が付つくのを抑制することができる。
【0050】
また、センサケーブル1の先端部11は基準曲率(1/Rb)以上の曲率で形成されているので、端子91の背後を通過したセンサケーブル1の先端1aは、センサケーブル1の挿入方向Aに対して端子91の背面から前面に向きやすくなる。これにより、作業者は、センサケーブル1の先端1aを端子91の手前に出すために、端子92の側面にセンサケーブル1の先端1aを突き当てやすくなる。それゆえ、端子91の背面から前面に向かって、センサケーブル1の先端1aを端子92と端子91との狭い隙間に通すことが可能となる。
【0051】
なお、センサケーブル1の先端部11の曲率半径は、電子部品90の端子91と端子92との間隔よりも小さくすることが好ましい。特に、先端部11の曲率半径を2mm以上、かつ、4mm以下に形成することで、電子部品に設けられた端子のエッジがセンサケーブル1に引っ掛かってセンサケーブル1に傷が付くのを抑制することができる。
【0052】
次に、
図7Bに示すように、作業者は、センサケーブル1の中途部12を端子91の背後の電子部品90に向かって押し当てるように保持部2を更に挿入方向Aに移動させる。
【0053】
これにより、センサケーブル1の中途部12が電子部品90に押し当てられ、その部位が支点となってセンサケーブル1が内側Bに向けられるので、センサケーブル1が端子91及び92の各エッジに引っ掛かりにくくなる。これにより、センサケーブル1に傷が付きにくくなる。
【0054】
更に、
図7Cに示すように、作業者は挿入方向Aに保持部2を押し込むことにより、残りのセンサケーブル1が端子91の背後に向かって送り出される。このとき、センサケーブル1の中途部12の曲率は、保持部2に向かって基準曲率(1/Rb)よりも小さいので、センサケーブル1が折れ曲がるのを抑制しつつ、センサケーブル1の先端部11を保持部2の溝部22に接近させることができる。
【0055】
その後、作業者によってセンサケーブル1の先端部11が溝部22に嵌められることで、測定対象がセンサケーブル1により取り囲まれる。このように、電流センサ10では、作業者の手によって容易に端子91をセンサケーブル1で取り囲むことができる。
【0056】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0057】
電流センサ10は、測定対象を取り囲んだ状態で当該測定対象に流れる電流を検出する。電流センサ10は、測定対象に流れる電流を検出するセンサケーブル1と、センサケーブル1の基端部13が取り付けられ、センサケーブル1の先端部11が側面から嵌められる溝部22を有する保持部2と、を備える。
【0058】
これにより、測定対象の周囲にセンサケーブル1を通して、センサケーブル1の先端部11を保持部2の溝部22に側方から嵌めるだけで、測定対象にセンサケーブル1が取り付けられる。作業者は、例えば、保持部2を手のひらで保持しながら親指でセンサケーブル1を押すことで、両手を使わなくてもセンサケーブル1を溝部22に嵌めることができる。したがって、測定対象にセンサケーブル1を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0059】
特に、電流センサ10は、センサケーブル1の基準半径Rbが10mm程度であり、比較的小さな測定対象に流れる電流を測定するものである。上記のように構成される電流センサ10によれば、小さな測定対象にセンサケーブル1を取り付ける際にも、作業性を向上させることができる。
【0060】
また、センサケーブル1は、長手方向に沿って形成されるロゴスキーコイル10aを有し、ロゴスキーコイル10aは、先端部11が溝部22に嵌められた状態で、環状になるように両端部10b,10cが周方向に近接する。センサケーブル1は、ロゴスキーコイル10aの両端部10b,10cが近接した状態で、基端部13と先端部11とが長手方向(周方向)に重複する。
【0061】
これにより、ロゴスキーコイル10aの不完全領域を小さくすることができるので、センサケーブル1が近接する他の導体から発生する磁束によるノイズの影響を小さくすることができる。
【0062】
また、センサケーブル1の先端1aを有する先端部11には、センサケーブル1の基端部13の曲率よりも曲率が大きな部位が形成される。
【0063】
センサケーブル1の先端部11の曲率が基端部13の曲率よりも大きいので、測定対象の背後に挿入したセンサケーブル1の先端1aを測定対象の背面から前面に向けやすくなる。これにより、作業者が測定対象の背後に手又はピンセットなどを入れなくても保持部2を操作することにより、測定対象よりも手前にセンサケーブル1の先端1aを出しやすくなる。
【0064】
よって、センサケーブル1の先端1aを測定対象の手前に引き出してセンサケーブル1の全体で測定対象を取り囲むことが容易となる。したがって、作業者が測定対象の背後に手を入れられない又は入れにくい状況であっても、測定対象を取り囲みやすくすることができる。
【0065】
また、溝部22は、センサケーブル1の先端部11の形状と同じ形状に形成される。
【0066】
そのため、センサケーブル1は、溝部22に嵌まる際に変形しない。これにより、センサケーブル1の先端部11を挿入孔に挿通させる構成のように、測定対象にセンサケーブル1を取り付ける度に先端部11を直線状に変形させなくてよい。よって、センサケーブル1を溝部22に嵌めても、先端部11の形状(曲率)を維持することができる。したがって、センサケーブル1を構成する可撓性のある樹脂材料に、測定対象を取り囲みやすくするための理想的な形状を記憶させることができる。
【0067】
保持部2は、溝部22の少なくとも一部を含む凹部23を有する。凹部23は、溝部22よりも浅くかつ大きな面積に形成される。
【0068】
これにより、作業者がセンサケーブル1の先端部11を溝部22に嵌める際に、指が凹部23に入り込む。よって、作業者がセンサケーブル1を溝部22にしっかり押し込むことができるので、先端部11を溝部22に嵌めやすくなる。
【0069】
また、溝部22は、保持部2の表裏両面に各々形成され、センサケーブル1の先端部11は、どちらの溝部22にも嵌められる。
【0070】
これにより、作業者は、測定対象の位置や形状によって、センサケーブル1をどの方向から通すかを考えながら作業を行うことができる。
【0071】
また、センサケーブル1の先端部11は、溝部22の所定の位置に嵌まっていることを作業者が識別可能な識別部11aを有する。
【0072】
これにより、センサケーブル1の先端部11を溝部22の所定の位置に嵌めることができるので、測定対象の電流を測定する度にロゴスキーコイル10aの不完全領域の大きさが変化することを防止できる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0074】
例えば、センサケーブル1の先端部11、中途部12、及び基端部13の各部の曲率については、一定にしてもよいし、連続的に小さくしてもよい。また、センサケーブル1の中途部12は省略してもよい。また、センサケーブル1の各部を一定の曲率で形成し、各部ごとにその長さを円周の4分の1の長さに設定してもよい。
【0075】
また、底面に複数の端子を有する電子部品が基板に実装された状態において電子部品90と基板との間に狭い空間がある場合であっても、上記実施形態の電流センサ10を用いることができる。このような場合であっても、その電子部品の端子を容易にセンサケーブル1で取り囲むことが可能である。
【0076】
また、センサケーブル1には、弾性変形する材質だけでなく、塑性変形する材質を使用してもよい。更にセンサケーブル1の太さ(直径)は、物理的に可能であれば1mm未満に形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100 測定装置
1 センサケーブル
2 保持部
3 ケーブル
10 電流センサ(フレキシブルセンサ)
10a ロゴスキーコイル
10b 端部
10c 端部
11 先端部
11a 識別部
13 基端部
21 固定部
22 溝部
23 凹部