IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ノズルタップ装置 図1
  • 特許-ノズルタップ装置 図2
  • 特許-ノズルタップ装置 図3
  • 特許-ノズルタップ装置 図4A
  • 特許-ノズルタップ装置 図4B
  • 特許-ノズルタップ装置 図5
  • 特許-ノズルタップ装置 図6
  • 特許-ノズルタップ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ノズルタップ装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20230711BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H05K13/00 G
H05K13/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019005701
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020113727
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】石川 賢三
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251351(JP,A)
【文献】特開2012-199352(JP,A)
【文献】特開2016-219745(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162700(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/013733(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/111001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を装着する部品装着機の機内に設けられるユニットに対して取り外し可能に設けられ、且つ、前記部品を吸着する吸着ノズルのノズル先端部を押し当て可能なタップ部を備えるノズルタップ部材と、
前記ユニットと、
前記ユニットにおいて前記タップ部が設けられる予定領域を撮像し撮像された画像を画像処理して、前記ノズルタップ部材が前記ユニットに取り付けられているか否かを判断する判断部と、
を備えるノズルタップ装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記画像処理によって前記タップ部を認識できたときに、前記ノズルタップ部材が前記ユニットに取り付けられていると判断し、前記タップ部において前記ノズル先端部を押し当てる位置を、前記画像処理による前記タップ部の認識結果に基づいて設定する請求項に記載のノズルタップ装置。
【請求項3】
前記判断部によって前記ノズルタップ部材が前記ユニットに取り付けられていると判断され且つ前記タップ部において前記ノズル先端部が押し当てられた累積回数が所定回数に達したときに、前記タップ部のメンテナンスを指示する指示部をさらに備える請求項または請求項に記載のノズルタップ装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記画像処理によって前記タップ部を認識できなかったときに、前記ノズルタップ部材が前記ユニットに取り付けられていないと判断し、前記タップ部における前記ノズル先端部の押し当てを禁止する請求項に記載のノズルタップ装置。
【請求項5】
前記判断部によって前記ノズルタップ部材が前記ユニットに取り付けられていないと判断されたときに、前記ユニットに前記ノズルタップ部材を取り付けることを指示する指示部をさらに備える請求項または請求項に記載のノズルタップ装置。
【請求項6】
前記タップ部は、前記ノズル先端部の材質と同じ材質で平面状に形成されている請求項1~請求項のいずれか一項に記載のノズルタップ装置。
【請求項7】
前記タップ部および前記ノズル先端部は、セラミックで形成されている請求項に記載のノズルタップ装置。
【請求項8】
前記ユニットは、複数の前記ノズルタップ部材を取り付け可能である請求項1~請求項のいずれか一項に記載のノズルタップ装置。
【請求項9】
前記ユニットは、前記吸着ノズルを着脱可能に収容するノズルステーションである請求項1~請求項のいずれか一項に記載のノズルタップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ノズルタップ部材およびそれを備えるノズルタップ装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の部品実装機は、吸着ノズルを交換したときに吸着ノズルの下端部を押し当て可能な治具台を備えている。これにより、特許文献1に記載の部品実装機は、交換した吸着ノズルの昇降軸に対する座りを改善して、部品の吸着および装着の精度を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-92200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
治具台は、吸着ノズルの下端部が押し当てられるにつれて、タップ部(吸着ノズルの下端部が押し当てられる部位)が劣化する可能性があり、タップ部をメンテナンスする必要がある。しかしながら、部品実装機の機内に治具台が固定されていると、タップ部のメンテナンス作業が煩雑になる可能性がある。なお、特許文献1には、治具台の代わりにノズルステーションなどを使用することができる点が記載されているが、タップ部がノズルステーションから取り外し可能であるか否かについては、記載されていない。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、吸着ノズルのノズル先端部を押し当て可能なタップ部のメンテナンスを容易に行うことが可能なノズルタップ部材およびそれを備えるノズルタップ装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板に部品を装着する部品装着機の機内に設けられるユニットに対して取り外し可能に設けられ、且つ、前記部品を吸着する吸着ノズルのノズル先端部を押し当て可能なタップ部を備えるノズルタップ部材を開示する。
【発明の効果】
【0007】
上記のノズルタップ部材は、部品装着機の機内に設けられるユニットに対して取り外し可能に設けられる。よって、部品装着機の作業者は、ユニットからノズルタップ部材を取り外すことにより、タップ部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品装着機10の構成例を示す平面図である。
図2】吸着ノズル30の一例を示す斜視図である。
図3】ノズルタップ部材50が取り付けられているノズルステーション40NSの一例を示す斜視図である。
図4A】開放状態のときの吸着ノズル30の収容状態の一例を示す斜視図である。
図4B】閉鎖状態のときの吸着ノズル30の収容状態の一例を示す斜視図である。
図5】ノズルタップ部材50の一例を示す斜視図である。
図6】ノズルタップ装置60の構成例を示す模式図である。
図7】ノズルタップ装置60の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1-1.部品装着機10の構成例
ノズルタップ部材50は、基板90に部品91を装着する部品装着機10の機内に設けられるユニット40に対して取り外し可能に設けられる。図1に示すように、部品装着機10は、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、基板カメラ15、制御装置16およびユニット40を備えている。また、本実施形態のユニット40は、吸着ノズル30を着脱可能に収容するノズルステーション40NSである。
【0010】
基板搬送装置11は、例えば、ベルトコンベアなどにより構成され、基板90を搬送方向(X軸方向)に搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路および電気回路のうちの少なくとも一方が形成される。基板搬送装置11は、部品装着機10の機内に基板90を搬入し、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による部品91の装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0011】
部品供給装置12は、基板90に装着される複数の部品91を供給する。部品供給装置12は、基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って設けられる複数のフィーダ121を備えている。複数のフィーダ121の各々は、複数の部品91が収納されるキャリアテープ(図示略)をピッチ送りさせて、フィーダ121の先端側に位置する供給位置において部品91を採取可能に供給する。また、部品供給装置12は、チップ部品などと比べて比較的大型の電子部品(例えば、リード部品など)を、トレイ上に配置した状態で供給することもできる。
【0012】
部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131および移動台132を備えている。ヘッド駆動装置131は、直動機構によって移動台132を、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。移動台132には、クランプ部材(図示略)によって装着ヘッド20が着脱可能(交換可能)に設けられている。装着ヘッド20は、少なくとも一つの吸着ノズル30を用いて、部品供給装置12によって供給される部品91を採取し保持して、基板搬送装置11によって位置決めされた基板90に部品91を装着する。
【0013】
図2に示すように、吸着ノズル30は、本体部31と、フランジ部32と、識別部33と、把持部34と、可動部35と、を備えている。本体部31は、基部であり、フランジ部32、把持部34および可動部35が設けられる。フランジ部32には、切欠き部32aが設けられている。切欠き部32aは、後述するノズルステーション40NSの回転規制部材41cと嵌合可能な形状に形成されている。本実施形態では、例えば、回転規制部材41cが円筒状に形成されており、切欠き部32aは、吸着ノズル30の軸方向視において、半円状に形成されている。
【0014】
識別部33は、吸着ノズル30を識別可能な部位であり、把持部34が設けられる側のフランジ部32の表面に設けられている。識別部33は、フランジ部32の特徴的な部位(例えば、文字、図形、記号、立体的形状など)を用いることができる。識別部33は、例えば、吸着ノズル30の固有情報を示す識別コードを含むと好適である。識別コードは、一次元コードであっても良く、二次元コードであっても良い。また、フランジ部32に製造者の名称、製品の型式、ロット番号、基準適合マークなどの文字、図形、記号などが付されている場合、識別部33は、これらを含むことができる。さらに、フランジ部32に凹部、凸部などの立体的形状が形成されている場合、識別部33は、これらを含むことができる。
【0015】
装着ヘッド20は、ヘッド本体に昇降可能に保持される昇降部材(図示略)を備えており、昇降部材は、吸着ノズル30を保持することができる。また、装着ヘッド20は、昇降部材を用いて、保持している吸着ノズル30と、ノズルステーション40NSに収容されている吸着ノズル30とを交換することもできる。把持部34は、装着ヘッド20の昇降部材が吸着ノズル30を保持可能に形成されている。把持部34は、昇降部材によって保持可能であれば良く、形状等は、限定されない。図2に示すように、本実施形態の把持部34は、吸着ノズル30の軸方向と直交する方向に、本体部31から突出するように形成されている。
【0016】
可動部35は、本体部31に対して摺動可能な部位であり、部品91を吸着可能なノズル先端部35aを備えている。吸着ノズル30が昇降部材によって保持されているときに、可動部35は、昇降部材に設けられる圧縮ばね(図示略)によって、下方に付勢されている。可動部35は、ノズル先端部35aが部品91に接触して部品91を吸着するときに、圧縮ばねの弾性力に抗して上方へ移動して、ノズル先端部35aが部品91と接触するときの衝撃を低減することができる。
【0017】
部品カメラ14および基板カメラ15は、公知の撮像装置を用いることができる。部品カメラ14は、光軸がZ軸方向の上向き(鉛直上方方向)になるように、部品装着機10の基台に固定されている。部品カメラ14は、吸着ノズル30によって保持されている部品91を下方から撮像することができる。基板カメラ15は、光軸がZ軸方向の下向き(鉛直下方方向)になるように、部品移載装置13の移動台132に設けられている。基板カメラ15は、基板90を上方から撮像することができる。部品カメラ14および基板カメラ15は、制御装置16から送出される制御信号に基づいて撮像を行う。部品カメラ14および基板カメラ15によって撮像された画像データは、制御装置16に送信される。
【0018】
制御装置16は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている(いずれも図示略)。制御装置16には、部品装着機10に設けられる各種センサから出力される情報、画像データなどが入力される。制御装置16は、制御プログラムおよび予め設定されている所定の装着条件などに基づいて、各装置に対して制御信号を送出する。例えば、制御装置16は、基板搬送装置11によって位置決めされた基板90を基板カメラ15に撮像させる。制御装置16は、基板カメラ15によって撮像された画像を画像処理して、基板90の位置決め状態を認識する。また、制御装置16は、部品供給装置12によって供給された部品91を吸着ノズル30に採取させて、吸着ノズル30によって吸着されている部品91を部品カメラ14に撮像させる。制御装置16は、部品カメラ14によって撮像された画像を画像処理して、部品91の保持姿勢を認識する。
【0019】
制御装置16は、制御プログラムなどによって予め設定される装着予定位置の上方に向かって、吸着ノズル30を移動させる。また、制御装置16は、基板90の位置決め状態、部品91の保持姿勢などに基づいて、装着予定位置を補正して、実際に部品91を装着する装着位置を設定する。装着予定位置および装着位置は、位置(X軸座標およびY軸座標)の他に回転角度を含む。制御装置16は、装着位置に合わせて、吸着ノズル30の目標位置(X軸座標およびY軸座標)および回転角度を補正する。制御装置16は、補正された目標位置において補正された回転角度で吸着ノズル30を下降させて、基板90に部品91を装着する。制御装置16は、上記のピックアンドプレースサイクルを繰り返すことによって、基板90に複数の部品91を装着する装着処理を実行する。
【0020】
1-2.ユニット40の構成例
ユニット40は、部品装着機10の機内に設けられる機器であれば良く限定されない。装着ヘッド20を用いて吸着ノズル30が取り扱われることを考慮すると、ユニット40は、装着ヘッド20の移動可能領域に設けられる機器であると好適である。例えば、ノズルステーション40NS、廃棄する部品91を回収する回収箱(図示略)、基板搬送装置11のガイドレール、部品供給装置12のフィーダ121などは、装着ヘッド20の移動可能領域に設けられ、ユニット40に含まれる。特に、ノズルステーション40NSは、吸着ノズル30を着脱可能に収容するので、ノズルタップ部材50が設けられる対象として好適である。
【0021】
図3図4Aおよび図4Bに示すように、ノズルステーション40NSは、複数の収容凹部41aと、支持部材41bと、複数の回転規制部材41cと、遮蔽部材42と、を備えており、吸着ノズル30を着脱可能に収容する。なお、図3は、複数の吸着ノズル30がノズルステーション40NSに収容されている収容状態の一例を示している。また、図4Aおよび図4Bは、一の収容凹部41aにおける一の吸着ノズル30の収容状態の一例を示している。
【0022】
複数の収容凹部41aは、ノズルステーション40NSにおいて、所定ピッチで格子点状に複数列に形成されている。複数の収容凹部41aは、ノズルステーション40NSの内部に形成されており、複数の吸着ノズル30を収容することができる。支持部材41bは、板状に形成されており、複数の吸着ノズル30のフランジ部32を支持することができる。複数の回転規制部材41cの各々は、一の吸着ノズル30の切欠き部32aと嵌合して、当該吸着ノズル30の回転を規制する。図4Aに示すように、本実施形態の回転規制部材41cは、円筒状に形成されている。
【0023】
遮蔽部材42は、ノズルステーション40NSの上面に設けられており、例えば、ノズルステーション40NSの交換作業などにおいて、ノズルステーション40NSに収容されている吸着ノズル30の脱落を規制する。遮蔽部材42は、例えば、ノズルステーション40NSの長手方向(本実施形態では、X軸方向)に沿ってスライド可能に設けられている。図4Aおよび図4Bに示すように、遮蔽部材42は、収容凹部41aに対応する位置に孔部42aを備えている。孔部42aは、例えば、遮蔽部材42のスライド方向に沿って延伸するように形成されている。孔部42aは、吸着ノズル30のフランジ部32の外径と比べて大径の大径部42a1と、吸着ノズル30のフランジ部32の外径と比べて幅狭であり、遮蔽部材42のスライド方向に沿って延伸している延伸部42a2と、を備えている。
【0024】
図4Aに示すように、遮蔽部材42を開放位置にスライドさせた開放状態では、孔部42aの大径部42a1が吸着ノズル30のフランジ部32と対向して、収容凹部41aから吸着ノズル30を取り出し可能になっている。図4Bに示すように、遮蔽部材42を閉鎖位置にスライドさせた閉鎖状態では、孔部42aの延伸部42a2が吸着ノズル30のフランジ部32と対向して、吸着ノズル30のフランジ部32が遮蔽部材42によって抜け止めされ、吸着ノズル30の脱落が規制される。なお、遮蔽部材42は、遮蔽部材駆動機構(図示略)によって開閉駆動される。遮蔽部材駆動機構は、例えば、部品装着機10の稼働中に遮蔽部材42を開放位置にスライドさせて、吸着ノズル30の収容および取り出しを許容する。遮蔽部材駆動機構は、例えば、部品装着機10の生産停止中、ノズルステーション40NSの交換作業時などに遮蔽部材42を閉鎖位置にスライドさせて、吸着ノズル30の収容および取り出しを規制する。
【0025】
1-3.ノズルタップ部材50の構成例
既述したように、吸着ノズル30は、本体部31に対して摺動可能な可動部35を備えている。また、可動部35は、吸着ノズル30が装着ヘッド20の昇降部材によって保持されているときに、昇降部材に設けられる圧縮ばねによって、下方に付勢されている。そのため、例えば、吸着ノズル30の交換などによって、圧縮ばねの付勢状態が変化して、本体部31の中心軸に対する可動部35の中心軸の偏心が、吸着ノズル30の交換前と比べて増大する場合がある。上述した偏心が増大すると、部品91の吸着精度が低下し、部品91の装着精度が低下する可能性がある。
【0026】
そこで、図1図3および図5に示すように、ノズルタップ部材50は、部品91を吸着する吸着ノズル30のノズル先端部35aを押し当て可能なタップ部51を備えている。よって、部品装着機10の作業者は、例えば、装着ヘッド20の昇降部材を用いて、ノズル先端部35aをタップ部51に押し当てて、上述した偏心を修正することができる。ノズル先端部35aをタップ部51に押し当てることにより、例えば、圧縮ばねと可動部35の接触状態が安定し、上述した偏心が修正される。
【0027】
部品装着機10の制御装置16は、例えば、装着ヘッド20の昇降部材に保持されている吸着ノズル30が交換されたときに、装着ヘッド20の昇降部材を昇降させて、ノズル先端部35aの押し当てを行うことができる。ノズル先端部35aの押し当て量(押し込み量)および押し当て回数は、事前に設定しておくことができる。例えば、設計者は、事前に実機による測定などを行って、上述した偏心の低減効果を把握しておき、偏心の低減効果が得られる押し当て量(押し込み量)および押し当て回数を取得することができる。
【0028】
制御装置16は、ノズル先端部35aの押し当てが行われた後に、例えば、部品カメラ14を用いて、上述した偏心の低減効果を確認することができる。このとき、制御装置16は、ノズル先端部35aの押し当て後の実際の偏心に合わせて、部品91の吸着位置を補正することができ、部品91の装着位置を補正することができる。なお、装着ヘッド20が複数の吸着ノズル30を同時に保持可能な場合(具体的には、ロータリヘッド、ラインヘッドなどの場合)、制御装置16は、交換された複数の吸着ノズル30について、ノズル先端部35aの押し当てを全て行うと良い。そして、制御装置16は、部品カメラ14を用いて、交換された複数の吸着ノズル30を一度に撮像すると良い。これにより、複数の吸着ノズル30の各々について、交換作業、ノズル先端部35aの押し当て作業、部品カメラ14による撮像作業を順に繰り返す場合と比べて、作業効率が向上する。
【0029】
また、タップ部51とノズル先端部35aの材質が異なると、強度が低い部材の劣化(例えば、削れなど)が顕著になり易い。さらに、平面状に形成されていないタップ部51は、上述した偏心を低減し難い。そこで、タップ部51は、ノズル先端部35aの材質と同じ材質で平面状に形成されていると好適である。これにより、タップ部51およびノズル先端部35aの一方の劣化が顕著になる状況を回避することができると共に、上述した偏心を低減し易くなる。また、タップ部51およびノズル先端部35aは、セラミックで形成されていると好適である。セラミックは、例えば、ジルコニアを用いることができる。ジルコニアは、セラミックにおいて、常温における強度および靭性が高く、表面平滑性に優れており、タップ部51およびノズル先端部35aの材質として好適である。
【0030】
なお、タップ部51は、ノズル先端部35aの材質と異なる材質で平面状に形成することもできる。具体的には、吸着ノズル30と比べて、タップ部51を保護したい場合、タップ部51は、ノズル先端部35aと比べて強度が高い材質で形成することができる。逆に、タップ部51と比べて、吸着ノズル30を保護したい場合、タップ部51は、ノズル先端部35aと比べて強度が低い材質で形成することができる。
【0031】
タップ部51は、ノズル先端部35aが押し当てられるにつれて劣化する可能性があり、タップ部51をメンテナンスする必要がある。このとき、タップ部51が部品装着機10の機内に固定されていると、タップ部51のメンテナンス作業が煩雑になる可能性がある。また、ノズルステーション40NSなどの取り外し可能なユニット40にタップ部51を直接固定すると、タップ部51のメンテナンス作業中は、ユニット40を使用することができなくなり、利便性が低下する。そこで、タップ部51は、ノズルタップ部材50に設けられ、ノズルタップ部材50は、ユニット40に対して取り外し可能に設けられる。
【0032】
具体的には、図3および図5に示すように、ノズルタップ部材50は、本体部50aと、タップ部51と、を備えている。本実施形態の本体部50aは、ユニット40であるノズルステーション40NSの角部に設けることができるように、三角柱形状に形成されている。タップ部51は、本体部50aがノズルステーション40NSの角部に取り付けられたときに、装着ヘッド20の昇降部材と対向可能な本体部50aの水平面に固定されている。これにより、装着ヘッド20の昇降部材を用いたノズル先端部35aの押し当て作業をノズルステーション40NSの近傍で行うことができる。また、ノズルタップ部材50がノズルステーション40NSの角部に設けられることにより、ノズルタップ部材50の取り付けおよび取り外しが容易になる。
【0033】
ノズルタップ部材50の取り付け方法は、種々の方法を採用することができ、限定されない。ノズルタップ部材50は、例えば、公知の締結部材(例えば、ボルト、ナットおよびワッシャなど)によって取り付けることができる。本実施形態のノズルタップ部材50は、ノズルタップ部材50の下部側(タップ部51が設けられる上部側と反対側)において、上記の締結部材によって本体部50aがノズルステーション40NSに固定されている。
【0034】
1-4.ノズルタップ装置60の構成例
ノズルタップ装置60は、ノズルタップ部材50と、ユニット40と、を備えている。ノズルタップ部材50が備えるタップ部51は、既述したいずれの形態であっても良い。また、ユニット40には、複数のノズルタップ部材50を取り付けることもできる。例えば、ノズルステーション40NSの複数の角部において、複数のノズルタップ部材50を取り付けることができる。この場合、複数のノズルタップ部材50のうちのいずれのノズルタップ部材50を用いて、ノズル先端部35aの押し当てを行っても良い。そのため、複数のノズルタップ部材50において、ノズル先端部35aの押し当て作業を分担させることができ、作業効率が向上する。
【0035】
また、ユニット40は、吸着ノズル30を着脱可能に収容するノズルステーション40NSであると好適である。これにより、装着ヘッド20の昇降部材は、吸着ノズル30の交換作業と、ノズル先端部35aの押し当て作業とを、ノズルステーション40NSの近傍で行うことができる。
【0036】
ノズルタップ部材50は、ユニット40に対して取り外し可能に設けられるので、ユニット40にノズルタップ部材50が取り付けられていない可能性がある。そこで、ノズルタップ装置60は、制御ブロックとして捉えると、判断部61および指示部62のうちの少なくとも判断部61を備えていると好適である。図6に示すように、本実施形態のノズルタップ装置60は、判断部61および指示部62の両方を備えている。また、判断部61および指示部62は、部品装着機10の制御装置16に設けられており、制御装置16は、図7に示すフローチャートに従って、制御を実行する。
【0037】
判断部61は、ユニット40においてタップ部51が設けられる予定領域AR1を撮像し撮像された画像を画像処理して、ノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられているか否かを判断する(図7に示すステップS11~ステップS13およびステップS17)。これにより、ノズルタップ装置60は、ユニット40に対して取り外し可能に設けられるノズルタップ部材50が、実際に、ユニット40に取り付けられているか否かを認識することができる。
【0038】
本実施形態のユニット40は、ノズルステーション40NSであり、予定領域AR1は、例えば、図1および図3に示される。また、判断部61は、予定領域AR1を撮像し撮像された画像を画像処理することができれば良く、予定領域AR1の撮像方法および画像処理の方法は、限定されない。判断部61は、例えば、予定領域AR1を基板カメラ15に撮像させることができる。そして、判断部61は、基板カメラ15によって撮像された画像を画像処理(例えば、画像を白色と黒色の二階調で表す二値化処理)して、タップ部51を認識できたか否かを判断することができる。
【0039】
判断部61は、画像処理によってタップ部51を認識できたとき(ステップS12でYesの場合)に、ノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられていると判断する(ステップS13)。そして、判断部61は、タップ部51においてノズル先端部35aを押し当てる位置を、画像処理によるタップ部51の認識結果に基づいて設定する(ステップS14)。これにより、ノズルタップ装置60は、画像処理によるタップ部51の認識結果に基づいて、ノズル先端部35aの押し当て位置を設定することができる。制御装置16は、ノズル先端部35aの押し当て位置が設定された後、既述したように、装着ヘッド20の昇降部材を昇降させて、ノズル先端部35aの押し当てを行うことができる。
【0040】
ノズル先端部35aの押し当て位置は、任意に設定することができる。例えば、判断部61は、画像処理によって認識したタップ部51の中心位置を、ノズル先端部35aの押し当て位置として設定することができる。例えば、図3および図5に示すタップ部51は、円柱形状であり、判断部61は、画像処理によって認識した円の中心位置を、ノズル先端部35aの押し当て位置として設定することができる。なお、判断部61は、ノズル先端部35aの押し当て位置を適宜、変更することもできる。また、判断部61は、ノズル先端部35aが押し当てられた累積回数が一定回数に達する毎に、ノズル先端部35aの押し当て位置を変更することもできる。
【0041】
指示部62は、判断部61によってノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられていると判断され且つタップ部51においてノズル先端部35aが押し当てられた累積回数が所定回数に達したときに、タップ部51のメンテナンスを指示する(図7に示すステップS15およびステップS16)。これにより、ノズルタップ装置60は、適切なタイミングで、タップ部51のメンテナンスを指示することができる。
【0042】
なお、累積回数の閾値となる所定回数は、事前に設定しておくことができる。例えば、設計者は、事前に実機による測定などを行って、タップ部51およびノズル先端部35aの劣化状態を把握しておき、許容される劣化状態に基づいて、所定回数を取得することができる。
【0043】
指示部62は、ノズル先端部35aが押し当てられた累積回数が所定回数に達したとき(ステップS15でYesの場合)に、タップ部51のメンテナンスを指示する(ステップS16)。そして、制御は、一旦、終了する。ノズル先端部35aが押し当てられた累積回数が所定回数に達していないとき(ステップS15でNoの場合)、制御は、ステップS16に示す処理を行わないで、一旦、終了する。
【0044】
指示部62は、例えば、図1に示す表示器70を用いて、タップ部51のメンテナンスを指示することができる。表示器70は、タップ部51のメンテナンスが必要である旨を表示することができれば良く、限定されない。表示器70は、例えば、図1に示す部品装着機10の生産状況などを表示する表示装置を用いることができる。また、表示器70は、別途設けられる公知の表示装置(例えば、液晶ディスプレイなど)であっても良い。
【0045】
タップ部51のメンテナンスが指示されると、部品装着機10の作業者は、ユニット40からノズルタップ部材50を取り外して、タップ部51のメンテナンスを行うことができる。具体的には、部品装着機10の作業者は、交換用のノズルタップ部材50(タップ部51が劣化していないノズルタップ部材50)をユニット40に取り付けることができる。なお、判断部61は、画像処理によってタップ部51の汚れの有無を認識することもできる。この場合、指示部62は、判断部61によってタップ部51の汚れが認識されたときに、タップ部51の清掃を指示することもできる。
【0046】
判断部61は、画像処理によってタップ部51を認識できなかったとき(ステップS12でNoの場合)に、ノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられていないと判断する(ステップS17)。ノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられていないと、ノズル先端部35aの押し当て作業を行うことができないので、判断部61は、タップ部51におけるノズル先端部35aの押し当てを禁止する(ステップS18)。これにより、ノズルタップ装置60は、装着ヘッド20の無用な動作を回避することができる。
【0047】
指示部62は、判断部61によってノズルタップ部材50がユニット40に取り付けられていないと判断されたときに、ユニット40にノズルタップ部材50を取り付けることを指示する(ステップS19)。そして、制御は、一旦、終了する。これにより、ノズルタップ装置60は、ユニット40にノズルタップ部材50を取り付けることを指示することができる。
【0048】
指示部62は、例えば、図1に示す表示器70を用いて、ユニット40にノズルタップ部材50を取り付けることを指示することができる。ノズルタップ部材50の取り付けが指示されると、部品装着機10の作業者は、ユニット40にノズルタップ部材50を取り付ける。
【0049】
2.実施形態の効果の一例
ノズルタップ部材50は、部品装着機10の機内に設けられるユニット40に対して取り外し可能に設けられる。よって、部品装着機10の作業者は、ユニット40からノズルタップ部材50を取り外すことにより、タップ部51のメンテナンスを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10:部品装着機、
30:吸着ノズル、35a:ノズル先端部、
40:ユニット、40NS:ノズルステーション、
50:ノズルタップ部材、51:タップ部、
60:ノズルタップ装置、61:判断部、62:指示部、
90:基板、91:部品、
AR1:予定領域。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7