IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シチズンホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ シチズンマシナリーミヤノ株式会社の特許一覧

特許7311278切削油タンク、工作機械及び工作機械システム
<>
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図1
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図2
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図3
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図4
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図5
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図6
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図7
  • 特許-切削油タンク、工作機械及び工作機械システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】切削油タンク、工作機械及び工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20230711BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019039763
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020142318
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】菅野 強
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-135651(JP,A)
【文献】特開2006-075977(JP,A)
【文献】特開2016-078192(JP,A)
【文献】特開2000-135640(JP,A)
【文献】特開2011-031329(JP,A)
【文献】特表平11-504866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00、10、14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械から排出される切削油を回収し、
互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、前記第1並行流路及び前記第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、
前記切削油を、前記第1並行流路及び前記第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、前記第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、
回収する前記切削油を前記第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、
各流出入部が、各々異なる方向から前記切削油が流入し、前記第1並行流路に前記切削油を流出させるように形成され
前記切削油を受容する2つの受容部を設け、
一方の受容部を、前記第2並行流路を挟んで前記第1並行流路と対向するように配置し、他方の受容部を連通路の対向位置に配置し、
一方の受容部から一方の流出入部に第1並行流路に対して交差する方向から切削油を流入させ、他方の受容部から他方の流出入部に第1並行流路に沿う方向から切削油を流入させる、切削油タンク。
【請求項2】
前記切削油に混入した切粉を前記切削油から分離しつつ搬送し、且つ、前記切削油を前記受容部に供給する搬送装置を装着可能な第1搬送装置装着部と、
前記第1搬送装置装着部に装着される向きと異なる向きに前記搬送装置を装着可能な第2搬送装置装着部と、を更に有し、前記搬送装置が前記第1搬送装置装着部に装着されることによって前記切削油が前記搬送装置から一方の受容部に供給され、前記搬送装置が前記第2搬送装置装着部に装着されることによって前記切削油が前記搬送装置から他方の受容部に供給される、請求項に記載の切削油タンク。
【請求項3】
前記第1搬送装置装着部及び前記第2搬送装置装着部が設けられる第一階層と、前記第1並行流路、前記第2並行流路、及び前記連通路が設けられ、前記第一階層の下方に配置される第二階層とからなる、請求項に記載の切削油タンク。
【請求項4】
前記受容部の一方は、前記第2並行流路と交差するように前記第一階層に設けられた堰堤を介して前記流出入部の一方に前記切削油を流出させる、請求項に記載の切削油タンク。
【請求項5】
工作機械の工具によるワークの加工の際に加工位置近傍に供給される切削油を回収して収容する切削油タンクと、
前記切削油タンクに収容された前記切削油を前記加工位置近傍に向けて供給する供給部に圧送するポンプと、を有し、
前記切削油タンクは、
工作機械から排出される切削油を回収し、
互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、前記第1並行流路及び前記第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、
前記切削油を、前記第1並行流路及び第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、前記第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、
回収する前記切削油を前記第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、
各流出入部が、各々異なる方向から前記切削油が流入し、前記第1並行流路に前記切削油を流出させるように形成され
前記切削油を受容する2つの受容部を設け、
一方の受容部を、前記第2並行流路を挟んで前記第1並行流路と対向するように配置し、他方の受容部を連通路の対向位置に配置し、
一方の受容部から一方の流出入部に第1並行流路に対して交差する方向から切削油を流入させ、他方の受容部から他方の流出入部に第1並行流路に沿う方向から切削油を流入させる、工作機械。
【請求項6】
ワークを工具によって切削する工作機械と、
工具によって切削されるワークから発生する切粉を搬送する搬送装置と、を有し、
前記工作機械は、
工作機械の工具によるワークの加工の際に加工位置近傍に供給される切削油を回収して収容する切削油タンクと、
前記切削油タンクに収容された前記切削油を、前記加工位置近傍に向けて供給する供給部に圧送するポンプと、を有し、
前記切削油タンクは、
工作機械から排出される切削油を回収し、
互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、前記第1並行流路及び前記第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、
前記切削油を、前記第1並行流路及び第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、前記第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、
回収する前記切削油を前記第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、
各流出入部が、各々異なる方向から前記切削油が流入し、前記第1並行流路に前記切削油を流出させるように形成され
前記切削油を受容する2つの受容部を設け、
一方の受容部を、前記第2並行流路を挟んで前記第1並行流路と対向するように配置し、他方の受容部を連通路の対向位置に配置し、
一方の受容部から一方の流出入部に第1並行流路に対して交差する方向から切削油を流入させ、他方の受容部から他方の流出入部に第1並行流路に沿う方向から切削油を流入させる、工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削油タンク、工作機械及び工作機械を有する工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械によりワークを切削するときに使用される切削油が収容される切削油タンクが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-135640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記切削油タンク内の切削油は工作機械によりワークを加工する際に、加工部分に供給された後に、切削油タンク内に回収される。ワークの加工部分は加工時に高温となるため、切削油によって冷却される。一方切削油はワークの加工部分を冷却することによって油温が上昇するため、切削油タンク内には所定の温度の切削油が流通する。工作機械は温度によって加工精度に影響が発生するため、切削油の温度は一定に維持されることが望ましいが、異なる回収位置から切削油を回収すると、切削油の温度が相違し、加工精度に悪影響が発生する場合がある。そこで、本発明では、加工時の切削油の温度の差を抑制しながら、切削油を異なる回収位置から回収することができる工作機械用の切削油タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、実施形態に係る工作機械用の切削油タンクは、工作機械から排出される切削油を回収し、互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、第1並行流路及び第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、切削油を、第1並行流路及び第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、回収する切削油を第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、各流出入部が、各々異なる方向から切削油が流入し、第1並行流路に切削油を流出させるように形成される。
【0006】
さらに、実施形態に係る切削油タンクは、切削油を受容する2つの受容部を設け、一方の受容部を、第2並行流路を挟んで第1並行流路と対向するように配置し、他方の受容部を連通路の対向位置に配置し、一方の受容部から一方の流出入部に第1並行流路に対して交差する方向から切削油を流入させ、他方の受容部から他方の流出入部に第1並行流路に沿う方向から切削油を流入させることが好ましい。
【0007】
さらに、実施形態に係る切削油タンクは、切削油に混入した切粉を切削油から分離しつつ搬送し、且つ、切削油を受容部に供給する搬送装置を装着可能な第1搬送装置装着部と、第1搬送装置装着部に装着される向きと異なる向きに搬送装置を装着可能な第2搬送装置装着部と、を更に有し、搬送装置が第1搬送装置装着部に装着されることによって前記切削油が前記搬送装置から一方の受容部に供給され、搬送装置が第2搬送装置装着部に装着されることによって切削油が搬送装置から他方の受容部に供給されることが好ましい。
【0008】
さらに、実施形態に係る切削油タンクでは、第1搬送装置装着部及び第2搬送装置装着部が設けられる第一階層と、第1並行流路、第2並行流路、及び連通路に設けられる第一階層の下方に配置される第二階層とからなることが好ましい。
【0009】
さらに、実施形態に係る切削油タンクでは、受容部の一方は、第2並行流路と交差するように第一階層に設けられた堰堤を介して流出入部の一方に切削油を流出させることが好ましい。
【0010】
また、実施形態に係る工作機械は、工作機械の工具によるワークの加工の際に加工位置近傍に供給される切削油を回収して収容する切削油タンクと、切削油タンクに収容された切削油を加工位置近傍に向けて供給する供給部に圧送するポンプと、を有し、切削油タンクは、工作機械から排出される切削油を回収し、互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、第1並行流路及び第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、切削油を、第1並行流路及び第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、回収する切削油を第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、各流出入部が、各々異なる方向から切削油が流入し、第1並行流路に切削油を流出させるように形成される。
【0011】
また、実施形態に係る工作機械システムは、ワークを工具によって切削する工作機械と、工具によって切削されるワークから発生する切粉を搬送する搬送装置と、を有し、工作機械は、工作機械の工具によるワークの加工の際に加工位置近傍に供給される切削油を回収して収容する切削油タンクと、切削油タンクに収容された切削油を加工位置近傍に向けて供給する供給部に圧送するポンプと、を有し、切削油タンクは、工作機械から排出される切削油を回収し、互いに並設される第1並行流路及び第2並行流路と、第1並行流路及び第2並行流路を互いの一方の端部で連通する連通路とを有し、切削油を、第1並行流路及び第2並行流路を互いに逆向きに流通させ、第2並行流路の端部から工作機械に対して供給する切削油タンクにおいて、回収する切削油を第1並行流路に流出させる2つの流出入部を並設し、各流出入部が、各々異なる方向から切削油が流入し、第1並行流路に切削油を流出させるように形成される。
【発明の効果】
【0012】
実施形態に係る工作機械用の切削油タンクは、例えばチップコンベアが側面に配置されたときの切削油の温度と、チップコンベアが背面に配置されたときの切削油の温度との温度差を抑制することができる。実施形態に係る工作機械は、チップコンベアが側面に配置されたときの切削油の温度と、チップコンベアが背面に配置されたときの切削油の温度との温度差を抑制しながら、切削油を異なる回収位置から回収できるので、切削油の温度の相違によって加工精度に悪影響が発生することが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る工作機械と、工作機械の背面に挿入されたチップコンベアと含む工作機械システムの第1の態様を示す図である。
図2】(a)は図1に示す工作機械システムの平面図であり、(b)は図1に示す工作機械システムの正面図である。
図3】実施形態に係る工作機械と、工作機械の側面に挿入されたチップコンベアと含む工作機械システムの第2の態様を示す図である。
図4】(a)は図2(b)のC-C線に沿う要部を断面で示した斜視図であり、(b)は(a)の部分透視図である。
図5図2(b)のC-C線に沿う断面図である。
図6図5のE-E線に沿う断面図であり、(b)は図5のF-F線に沿う断面図である。
図7図2(b)のD-D線に沿う斜視図である。
図8図2(b)のD-D線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施形態に係る工作機械と、工作機械の背面に挿入されたチップコンベアとを含む工作機械システムの第1の態様を示す図である。図2(a)は図1に示す工作機械システムの平面図であり、図2(b)は図1に示す工作機械システムの正面図である。図3は、実施形態に係る工作機械と、工作機械の側面に挿入されたチップコンベアとを含む工作機械システムの第2の態様を示す図である。
【0015】
工作機械システム100は、工作機械1と、チップコンベア101とを有する。工作機械1は、ベッド14上に、正面主軸10、背面主軸11、刃物台12等が搭載され、正面主軸10又は背面主軸11に回転可能に保持されたワークを、切削油の供給状態で刃物台12に保持された工具で切削して切削加工することができる。正面主軸10及び背面主軸11はワークを保持するワーク保持部であり、刃物台12はワークを切削する工具を保持する工具保持部である。
【0016】
工作機械1は、切削油を供給する供給部15と、供給部15に切削油を圧送するポンプ16と、切削油を収容する切削油タンク20とを有する。切削油タンク20上にベッド14が設けられている。供給部15は、第1供給部151と、第2供給部152とを有する。第1供給部151は、正面主軸10に保持されたワークが切削される切削位置近傍に向けて切削油を供給する。第2供給部152は、背面主軸11に保持されたワークが切削される切削位置近傍に向けて切削油を供給する。
【0017】
ポンプ16は、第1ポンプ161と、第2ポンプ162とを有し、第1ポンプ161又は第2ポンプ162によって、油圧を切り替えて切削油を供給することができる。
【0018】
チップコンベア101は、図1に示されるように、切削油タンク20の工作機械1の背面側に配置される第1挿入口31又は、図3に示されるように、切削油タンク20の工作機械1の右側面側に配置される第2挿入口32に挿入されて設置される。正面主軸10又は背面主軸11の切削位置近傍に向けて供給された切削油は、切削加工の際に発生する切粉を含めてチップコンベア101に対して排出され、チップコンベア101を介して切削油タンク20に回収される。チップコンベア101は、図4に示されるように、搬送装置として、第1搬送部111によって切粉を含有する切削油を受容し、切削油に含有される切粉を切削油から分離して工作機械1の外部に搬送し、切粉が分離された切削油を排出する。チップコンベア101の構造は従来公知のため、詳細な説明は割愛する。
【0019】
図4(a)は図2(b)のC-C線に沿う要部を断面で示した斜視図であり、図4(b)は図4(a)の部分透視図である。図5は、図2(b)のC-C線に沿う断面図である。図4(a)、図4(b)及び図5において、実線矢印は、チップコンベア101の第1搬送部111が第1挿入口31から挿入されたときに切削油が通過する経路を示す。また、破線矢印は、チップコンベア101の第1搬送部111が第2挿入口32から挿入されたときに切削油が通過する経路を示す。
【0020】
切削油タンク20は、上下二段の階層を備え、上方の第一階層に工作機械1の背面に向かって延伸する溝部を構成する第1搬送装置装着部22と、工作機械1の右側面に向かって延伸する溝部を構成する第2搬送装置装着部24とが設けられている。第1搬送装置装着部22と第2搬送装置装着部24とは、正面主軸10と背面主軸11間の間隙の略鉛直下方位置において重複する。重複部分は、回収部21として、正面主軸10又は背面主軸11での切削加工の際に発生する切粉を含む切削油を受容する。
【0021】
第1搬送装置装着部22は、チップコンベア101の第1搬送部111が第1挿入口31から挿入されると第1搬送部111を内設する。第2搬送装置装着部24は、チップコンベア101の第1搬送部111が第2挿入口32から挿入されると、第1搬送部111を内設する。
【0022】
第1搬送装置装着部22と並行して第1導油路23が設けられている。第1導油路23は壁部によって第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24に対して区切られている。第1導油路23は、第1搬送装置装着部22との間の壁部の一部の開口を介して第1搬送装置装着部22の背面側の端部と連通する。第1導油路23は、下方の第二階層に至り方形を有する槽状に区切られた第1貯留槽231と、第1堰堤232とを有する。第1堰堤232と第2搬送装置装着部24との間には第二階層に向かって開口する第1接続孔27が設けられている。第1導油路23は、第1接続孔27を介して第二階層に形成される共通導油路26に接続される。第1貯留槽231は、第1搬送装置装着部22の背面側の端部に隣接し、チップコンベア101が第1挿入口31に挿入され、第1搬送装置装着部22に装着されて設置された場合に、チップコンベア101の切粉が分離された切削油を排出する切削油排出口から排出される切削油を受容する受容部として機能する。第1堰堤232は、第1貯留槽231の正面側の側壁から第1接続孔27までを閉塞して第一階層と第二階層とを区切り、第1貯留槽231から越流した切削油を第1接続孔27を介して共通導油路26に流入させる。共通導油路26の一部は、第1堰堤232の下方を交差するように通過する。
【0023】
第2搬送装置装着部24と並行して第2導油路25が設けられている。第2導油路25は壁部によって第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24に対して区切られている。第2導油路25は、第2搬送装置装着部24との間の壁部の一部の開口を介して第2搬送装置装着部24の右側面側の端部と連通する。第2導油路25は、下方の第二階層に至り方形を有する槽状に区切られた第2貯留槽251と、第2堰堤252とを有する。第2堰堤252と第1接続孔27との間には第二階層に向かって開口する第2接続孔28が、第1接続孔27に隣接して設けられている。第2導油路25は、第2接続孔28を介して共通導油路26に接続される。第2貯留槽251は、第2搬送装置装着部24の右側面側の端部に隣接して配置され、チップコンベア101が第2挿入口32に挿入され、第2搬送装置装着部24に装着されて設置された場合に、チップコンベア101の切削油排出口から排出される切粉が分離された切削油を受容する受容部として機能する。第2堰堤252は、第2貯留槽251の左側面側の側壁を形成し、第2貯留槽251から越流した潤滑油を第2接続孔28を介して共通導油路26に流入させる。
【0024】
図6(a)は図5のE-E線に沿う断面図であり、図6(b)は図5のF-F線に沿う断面図であり、図7図2(b)のD-D線に沿う斜視図であり、図8図2(b)のD-D線に沿う断面図である。
【0025】
共通導油路26は、第二階層に設けられ、第1流出入部261と、第2流出入部262と、第1並行流路263と、連通路264と、第2並行流路265と、接続貯留槽266と、ポンプ油槽267とを有する。第1接続孔27又は第2接続孔28を介して共通導油路26に流入した切削油は、第1流出入部261又は第2流出入部262、第1並行流路263、連通路264、第2並行流路265、接続貯留槽266を順次通過して、ポンプ油槽267に到達する。第1並行流路263及び第2並行流路265を互いに逆向きに流通して、ポンプ油槽267に到達した切削油は、第1ポンプ161及び第2ポンプ162に供給される。
【0026】
第1流出入部261は、第1接続孔27の下方に位置し、第1搬送装置装着部22にチップコンベア101が装着されたときに、第1導油路23及び第1接続孔27を介して切削油が流入する。第2流出入部262は、第1流出入部261と併設されて第2接続孔28の下方に位置し、第2搬送装置装着部24にチップコンベア101が装着されたときに、第2導油路25及び第2接続孔28を介して切削油が流入する。
【0027】
第1並行流路263は、少なくとも一部が第2搬送装置装着部24の下方に位置し、且つ、第1流出入部261及び第2流出入部262の双方と並設して接する。第1並行流路263は、第1搬送装置装着部22にチップコンベア101が装着されたときに、第1並行流路263に対して交差する方向から切削油が流入し、第2搬送装置装着部24にチップコンベア101が装着されたときに、第1並行流路263に沿う方向から切削油が流入する。
【0028】
連通路264は、少なくとも一部が第1搬送装置装着部22の下方に位置し、且つ、第1並行流路263及び第2並行流路265を互いの一方の端部で連通する連通路264は、第1貯留槽231及び第2貯留槽251よりも容量が大きく、第1貯留槽231及び第2貯留槽251よりも長い時間に亘って切削油が滞留する。
【0029】
第1流出入部261及び第2流出入部262と並設し、且つ、連通路264と接して第2並行流路265が設けられている。第2並行流路265は壁部によって第1貯留槽231、第1流出入部261及び第2流出入部262のそれぞれに対して区切られている。第2並行流路265は連通路264と接続貯留槽266との間を接続する油路であり、第1導油路23の第1堰堤232の直下を、第1堰堤232と交差するように通過する。
【0030】
第2並行流路265の端部には、接続貯留槽266が接続されている。接続貯留槽266は壁部によって第1貯留槽231に対して区切られている。接続貯留槽266はポンプ油槽267に更に接続される。ポンプ油槽267は壁部によって第2貯留槽251に対して区切られている。ポンプ油槽267は、ポンプ16の下方に位置し、ポンプ16の吸入口に切削油を供給する。
【0031】
工作機械1は、チップコンベア101が第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24の何れに装着されたときでも同じ共通導油路26を介して切削油が循環できる。チップコンベア101から排出される切削油は、チップコンベア101が、第1搬送装置装着部22又は第2搬送装置装着部24の何れに装着されたときでも、第1貯留槽231又は第2貯留槽251を介して略同一長の経路で、近接して隣接する第1流出入部261又は第2流出入部262から第1並行流路263に流入するので、チップコンベア101の装着位置による切削油の温度差を小さくすることができる。
【0032】
また、工作機械1は、共通導油路26の第2並行流路265が、第1導油路23の第1堰堤232の直下を通過するように形成されるので、切削油タンク20の容量を増加させることなく切削油が導通する導油路の長さをより長くすることができる。工作機械1は、供給部15から供給されてからポンプ16によって供給部15に圧送されるまでに切削油が導通する導油路の長さを長くすることができるので、切削油の温度をより低下させることができる。工作機械1は、チップコンベア101が第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24の何れに装着されたときでも切削油の温度を同程度の温度まで低下させることで、チップコンベア101の装着位置による切削油の温度差を小さくすることができる。
【0033】
また、工作機械1では、第1導油路23及び第2導油路25のそれぞれは、切削油を貯留する第1貯留槽231及び第2貯留槽251を有するので、切削油の滞留時間を長くすることができる。工作機械1は、第1導油路23及び第2導油路25のそれぞれで切削油の滞留時間を長くすることができるので、比較的大きい切粉を沈殿させ、切粉と切削油との分離性を向上させることができる。
【0034】
また、工作機械1は、第1導油路23及び第2導油路25の何れの導油路を介して流入する共通導油路26は、第1導油路23及び第2導油路25が有する第1貯留槽231及び第2貯留槽251よりも容量が大きい貯留部264を有する。工作機械1は、共通導油路26が第1貯留槽231及び第2貯留槽251よりも容量が大きい貯留部264を有するので、チップコンベア101が装着される位置にかかわらず、チップコンベア101の装着位置による切削油の温度差を小さくすることができる。
【0035】
工作機械1は、背面に形成される第1挿入口31及び右側面に形成される第2挿入口32からチップコンベア101が挿入可能なように形成されるが、実施形態に係る工作機械は、少なくとも2つの挿入口が形成されていればよい。
【0036】
また、工作機械1では、共通導油路26は、第1導油路23及び第2導油路25を介して第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24に接続されるが、実施形態に係る工作機械では、共通導油路26は、第1搬送装置装着部22及び第2搬送装置装着部24に直接接続されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 工作機械
10 正面主軸
11 背面主軸
12 刃物台
15 供給部
16 ポンプ
20 切削油タンク
21 回収部
22 第1搬送装置装着部
23 第1導油路
24 第2搬送装置装着部
25 第2導油路
26 共通導油路
261 第1流出入部
262 第2流出入部
263 第1並行流路
264 連通路
265 第2並行流路
27 第1接続孔
28 第2接続孔
100 工作機械システム
101 チップコンベア(搬送装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8