(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】透明導電塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20230711BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20230711BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230711BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230711BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230711BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D5/24
C09D7/20
C09D7/63
C09D7/65
H01B1/24 A
(21)【出願番号】P 2019073539
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018081716
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】久留島 康功
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060497(WO,A1)
【文献】特開2011-241256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00
C09D 5/24
C09D 7/20
H01B 1/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(3):
(1)(a)カーボンナノ
チューブ、
(b)
非イオン性分散剤、または高分子系分散剤、および
(c)水、または、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒
の混合物を得る工程、
(2)前記混合物を70℃以下の分散温度から、分散温度より10℃以上低い40℃以下の分散中断温度に冷却する工程、及び
(3)前記工程(2)をさらに3回以上行う工程
を含む、透明導電塗料の製造方法。
【請求項2】
(b)分散剤がHLB12以上である、請求項
1に記載の透明導電塗料の製造方法。
【請求項3】
(c)
水混和性有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項
1または2に記載の透明導電塗料の製造方法。
【請求項4】
(a)カーボンナノ
チューブ、
(b)
非イオン性分散剤、または高分子系分散剤、および
(c)水、または、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒
を含む透明導電塗料であって、
50%の2-プロパノール水溶液で重量比で50倍希釈を行った後の全光線透過率が20%以下である、透明導電塗料。
【請求項5】
(b)分散剤がHLB12以上である、請求項
5に記載の透明導電塗料。
【請求項6】
(c)
水混和性有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項
4または5に記載の透明導電塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電塗料に関する。詳しくは、カーボンナノ材料の分散性を向上した透明導電塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ材料は、導電性が高く、延伸加工性が高く、低着色性であり、化学的安定性に優れることから、導電性コーティング剤への適用が期待されている。しかし、カーボンナノ材料は、アスペクト比が大きく、配位不飽和な構造を有しているため、分子間相互作用が強く、凝集しやすい性質を持つ。カーボンナノ材料が凝集した状態では、本来の導電性や透明性等の特性を発揮できないため、導電性コーティング剤におけるカーボンナノ材料の分散性を高めることが求められている。
【0003】
カーボンナノ材料の分散性を高めるために、超音波による分散処理が知られている(特許文献1)。超音波によりキャビテーションを発生させ、カーボンナノ材料を分散させている。キャビテーションの発生量は温度に依存するため、高温の方が分散しやすい。しかし、超音波処理は調節が困難であり、過度の超音波処理を行うとカーボンナノ材料が切断や破壊を受け、その結果、新たな活性面が生じてさらに凝集しやすくなってしまう傾向があった。このような分散体は凝集しやすく、基材への塗布性に劣り、辛うじて塗布可能な場合でも、塗膜の導電性や透明性は低く、コーティング剤に適用することが難しかった。
【0004】
一方、カーボンナノ材料を低温でマイルドな条件で分散させる技術が知られている(特許文献2)。マイルドな条件で分散させることで、ナノカーボン材料の切断や破壊が抑制されることから、カーボンナノ材料を樹脂へ練り込む用途等、高度な透明性が必要とされない分野には適用可能な分散性が得られている。しかし、透明電極等の高い透明性が求められる用途ではさらに高い分散性が望まれており、そのような用途に使用可能な透明導電塗料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-16222号公報
【文献】国際公開第2015/015758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カーボンナノ材料が高度に分散した透明導電塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高温での強力な分散工程と再凝集を抑制する冷却工程を繰り返すことにより、透明導電膜の分野において求められる高い導電性と高い透明性を兼ね備えた、カーボンナノ材料を含む透明導電塗料を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記工程(1)~(3):
(1)(a)カーボンナノ材料及び(b)分散剤の混合物を得る工程、
(2)前記混合物を70℃以下の分散温度から、分散温度より10℃以上低い40℃以下の分散中断温度に冷却する工程、及び
(3)前記工程(2)をさらに3回以上行う工程
を含む、透明導電塗料の製造方法に関する。
【0009】
透明導電塗料の製造方法において、(a)カーボンナノ材料がグラフェン、カーボンナノチューブ、及びフラーレンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
透明導電塗料の製造方法において、(b)分散剤がHLB12以上であることが好ましい。
【0011】
透明導電塗料の製造方法において、工程(1)の混合物がさらに(c)有機溶剤を含むことが好ましい。
【0012】
透明導電塗料の製造方法において、(c)有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、(a)カーボンナノ材料、及び(b)分散剤を含む透明導電塗料であって、50%の2-プロパノール水溶液で重量比で50倍希釈を行った後の全光線透過率が20%以下である、透明導電塗料に関する。
【0014】
透明導電塗料において、(a)カーボンナノ材料が、グラフェン、カーボンナノチューブ、及びフラーレンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0015】
透明導電塗料において、(b)分散剤がHLB12以上であることが好ましい。
【0016】
透明導電塗料は、さらに(c)有機溶剤を含むことが好ましい。
【0017】
透明導電塗料において、(c)有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法で得られる透明導電塗料は、カーボンナノ材料が高度に分散し、高い導電性と高い透明性を兼ね備える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)透明導電塗料
本発明は、(a)カーボンナノ材料、及び(b)分散剤を含む透明導電塗料であって、50%の2-プロパノール水溶液で重量比で50倍希釈を行った後の全光線透過率が20%以下である、透明導電塗料に関する。ここで2-プロパノールの濃度は重量100分率である。この透明導電塗料は、カーボンナノ材料の分散性が高く、透明導電膜の分野において求められる高い導電性と高い透明性を兼ね備える。
【0020】
(a)カーボンナノ材料
カーボンナノ材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。これらのカーボンナノ材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。透明導電塗料におけるカーボンナノ材料の含有量は特に限定されないが、透明導電塗料の固形分全体に対して0.1~90重量%が好ましく、0.2~70重量%がより好ましく、0.5~50重量%がさらに好ましい。また、後述の方法で透明導電塗料を含むコーティング組成物を基材上に塗布し、積層体を製造したときに、積層体上で0.01~50.0mg/m2となる量が好ましく、0.1~10.0mg/m2となる量がより好ましい。
【0021】
カーボンナノチューブの種類は特に限定されず、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等の各種公知技術により製造されたカーボンナノチューブを適宜選択して用いることができる。単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよびこれらを任意の割合で含む混合物のいずれも使用可能である。導電性に優れる点から、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0022】
カーボンナノチューブの長さは、典型的には1~2000μmであり、好ましくは5~1000μmであり、より好ましくは5~500μmである。2000μmを超えるとカーボンナノチューブの凝集、切断、破壊が生じやすい傾向がある。また、1μm未満では十分な導電経路が形成できない傾向がある。
【0023】
カーボンナノチューブの直径は、典型的には0.1~50nmであり、好ましくは0.3~20nmであり、さらに好ましくは0.5~10nmである。50nmを超えると導電性が低下することがある。また、0.1nm未満のカーボンナノチューブは製造することが困難である。
【0024】
(b)分散剤
分散剤としては、カーボンナノ材料を水中で分散できれば特に限定されないが、陽イオン性分散剤、陰イオン性分散剤、両イオン性分散剤、非イオン性分散剤、高分子系分散剤が挙げられる。
【0025】
陽イオン性分散剤としては、ステアリルアミンアセテート等の炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0026】
陰イオン性分散剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0027】
両イオン性分散剤としては、炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルベタイン、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルアミンオキサイドが挙げられる。
【0028】
非イオン性分散剤としては、炭素数1~20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体、炭素数 1~20のアルキル基を有するアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル、炭素数2~4のアルキレン基を有するポリカルボキシレートエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0029】
高分子系分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ヒドロキシセルロース、炭素数の1~8のアルキル基を有するヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、デンプン、ゼラチン、アクリル系コポリマー、ポリカルボン酸またはその誘導体、ポリスチレンスルホン酸またはその塩などの高分子系分散剤が挙げられる。
【0030】
これらの中では、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリスチレンスルホン酸、セルロース誘導体、ポリカルボン酸、アクリル系コポリマー、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリカルボン酸、アクリル系コポリマーがより好ましい。これらの分散剤は、2以上を組み合わせて用いても良い。また、1以上の分岐鎖を有し、分岐鎖の分子量が15以上である分散剤が、分子鎖が全方位に広がり、分散性が高くなることから好ましい。
【0031】
分散剤は、分散安定性に優れるという理由から、HLB値が12以上が好ましく、14以上がより好ましい。なお、HLB値は、以下の計算方法により計算することができる。
グリフィン法:[(親水部分の分子量)÷(全体の分子量)]×20
【0032】
透明導電塗料における分散剤の含有量は特に限定されないが、透明導電塗料の固形分全体に対して0.1~99.9重量%が好ましく、0.2~99重量%がより好ましく、0.5~95重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では分散性不足となり、99.9重量%を超えると分散処理中に泡立ちが発生し、コーティング組成物を製造することが困難となることがある。
【0033】
本発明の透明導電塗料は、50重量%の2-プロパノール水溶液で重量比で50倍希釈を行った後の全光線透過率が20%以下である。全光線透過率は、透明導電塗料を50重量%の2-プロパノール水溶液を用い、重量比で50倍に希釈後、希釈液を石英ガラス製測定セル(光路長10mm、光路幅30mm)に入れ、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HZ-2)に入れて測定された値を、50重量%の2-プロパノール水溶液の測定値を比較対照として算出される値をいう。
【0034】
本発明の透明導電塗料は、ナノカーボン材料の分散性が良好であり、3500rpm、23℃の条件下で5分間遠心分離処理に供した直後の上澄みの吸光度が、遠心分離処理前の吸光度の90%以上であることが好ましい。当該比率は、91%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましい。なお、3500rpm、23℃の条件下で5分間の遠心分離処理は、約1か月間の静置に相当する。吸光度は、カーボンナノ材料がカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等、いずれの場合にも647nmの波長で測定できる。
【0035】
透明導電塗料の溶剤は、ナノカーボン材料を分散できれば特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類、;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン類、アセトニトリル等の有機溶剤、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤(含水有機溶剤)、2種以上の有機溶剤の混合溶剤等が挙げられる。有機溶剤は、分散安定性、基材への塗布性の点から、水と混和する有機溶剤であることが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトンがより好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールがさらに好ましい。水と有機溶剤との混合溶剤を用いる場合、有機溶剤の濃度は10~90重量%が好ましく、20~80重量%がより好ましい。
【0036】
塗布性や液安定性の観点から、透明導電塗料中の固形分濃度は0.01~20重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましく、0.5~5重量%であることがさらに好ましい。この濃度は、上記溶剤の透明導電塗料への添加量により調節できる。
【0037】
(その他の成分)
透明導電塗料は、さらに、任意で導電性高分子、バインダー樹脂、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤等を含有していてもよい。これらの成分を配合する場合、任意の時点で配合でき、例えば後述する透明導電塗料の製造方法の過程、又は製造後、あるいは、後述するコーティング組成物を得る過程で配合することができる。
【0038】
透明導電塗料に導電性高分子を配合する場合、導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。中でも、チオフェン環を分子内に含むことで導電性が高い分子ができやすい点で、分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子が好ましい。導電性高分子は、ポリ陰イオン等のドーパントと複合体を形成していてもよい。
【0039】
分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子の中でも、導電性や化学的安定性に極めて優れている点で、ポリ(3,4-二置換チオフェン)がより好ましい。また、導電性高分子が、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)とポリ陰イオン(ドーパント)との複合体である場合、低温かつ短時間で粗面導電体を形成することができ、生産性にも優れることとなる。なお、ポリ陰イオンは導電性高分子のドーパントであり、その内容については後述する。
【0040】
ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0041】
【0042】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、R1及びR2は相互に独立して水素原子又はC1-4のアルキル基を表すか、又は、R1及びR2が結合している場合にはC1-4のアルキレン基を表す。C1-4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2が結合している場合、C1-4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、1,2-エチレン基がより好ましい。C1-4のアルキル基、及び、C1-4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていても良い。C1-4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0043】
導電性高分子の重量平均分子量は、500~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましく、1500~20000であることがさらに好ましい。
【0044】
ドーパントは特に限定されないが、ポリ陰イオンが好ましい。ポリ陰イオンは、ポリチオフェン(誘導体)とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン(誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類及びスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0045】
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000~500000であることが好ましく、40000~200000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0046】
導電性高分子とポリ陰イオンとの複合体としては、導電性に特に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体であることが好ましい。
【0047】
導電性高分子の導電率は、0.01S/cm以上であることが好ましく、1S/cm以上であることがより好ましい。
【0048】
導電性高分子の含有量は、カーボンナノ材料の固形分100重量部に対して5~2000重量部が好ましく、10~1000重量部がより好ましい。
【0049】
透明導電塗料にバインダー樹脂を配合する場合、バインダー樹脂としてはコーティング組成物の成分として後述するバインダー樹脂を使用できる。バインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、カーボンナノ材料の含有量100重量部に対して0.1~6000重量部であることが好ましく、0.1~5000重量部であることが好ましく、5~4000重量部であることがより好ましい。
【0050】
透明導電塗料に粘度調整剤を配合する場合、粘度調整剤としては、例えば、ポリアクリル酸系樹脂、セルロースエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0051】
透明導電塗料にpH調整剤を配合する場合、pH調整剤としては、例えば、アンモニア、エタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0052】
透明導電塗料に消泡剤を配合する場合、消泡剤としては、例えば、ポリアセチレングリコール等のグリコール系化合物、有機変性ポリシロキサン等のシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサンを乳化剤によって水に分散した乳化物等が挙げられる。
【0053】
(2)透明導電塗料の製造方法
本発明の透明導電塗料の製造方法は、下記工程(1)~(3):
(1)(a)カーボンナノ材料及び(b)分散剤の混合物を得る工程、
(2)前記混合物を70℃以下の分散温度から、分散温度より10℃以上低い40℃以下の分散中断温度に冷却する工程、及び
(3)前記工程(2)をさらに3回以上行う工程、
を含む。
【0054】
工程(1)では、(a)カーボンナノ材料及び(b)分散剤の混合物を得る。混合物の溶剤は、透明導電塗料について溶剤として説明した通りである。
【0055】
なお、工程(1)の前に、前処理として、カーボンナノ材料の高速攪拌処理を行ってもよい。高速攪拌処理はマイルドな条件での分散処理であり、超音波やビーズミルを用いた分散処理のようにキャビテーションの発生による破断やビーズの衝突による微粉砕を伴う処理ではない。高速攪拌処理は、攪拌体の高速回転により、凝集したカーボンナノ材料の分散体を緩め、ほぐす効果がある。高速攪拌処理を分散処理の前に行っておくことにより、カーボンナノ材料の分散をより効率的に行える。
【0056】
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物を70℃以下の分散温度から、分散温度より10℃以上低い40℃以下の分散中断温度に冷却する。分散温度は、カーボンナノ材料を分散させつつ、カーボンナノ材料の切断や破壊を生じさせないために、70℃以下であり、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。分散温度は、カーボンナノ材料を分散させるために 10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。分散温度を維持する時間は、カーボンナノ材料を分散させることができれば特に限定されないが、1~600分間が好ましく、2~400分間がより好ましい。
【0057】
分散温度での保温中には、追加的な分散処理として、振動ミル、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、ロールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等を用いた分散処理を行ってもよい。分散処理はバッチ式でも連続式でもよい。
【0058】
分散中断温度は、分散温度より10℃以上低いことが求められ、分散温度より15℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましく、25℃以上低いことがさらに好ましい。具体的な分散中断温度は、カーボンナノ材料の切断や破壊を防止するために、40℃以下であり、30℃以下であることが好ましい。分散温度から、分散中断温度に冷却することにより、カーボンナノ材料の切断や破壊が生じることを防止できる。
【0059】
分散温度から分散中断温度への冷却速度は、特に限定されないが、0.5℃/分以上が好ましく、1℃/分以上がより好ましい。分散中断温度を維持する時間は特に限定されないが、60分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましい。分散温度から分散中断温度への冷却中には、温度が分散温度より低く、かつ、分散中断温度より高い範囲に保たれる限り、追加成分の添加や抜き取り等の工程を行ってもよい。
【0060】
工程(3)では、前記工程(2)をさらに3回以上行う。よって、本発明の透明導電塗料の製造方法において工程(2)は合計4回以上実施される。工程(2)を合計4回以上実施することにより、カーボンナノ材料の切断や破壊が生じることは防ぎながら、カーボンナノ材料の高度な分散を実現できる。工程(3)において、前記工程(2)の繰り返し回数は3回以上であり、5回以上が好ましく、7回以上がより好ましい。前記工程(2)の繰り返し回数が2以下(工程(2)の合計実施回数が合計3回以下)では、カーボンナノ材料を十分に分散できない。
【0061】
本発明の透明導電塗料の製造方法において、繰り返し行われる工程(2)の各回の分散温度は、70℃以下であれば、同一であってもよく、異なっていてもよい。同様に、繰り返し行われる工程(2)の各回の分散中断温度は、直前の分散温度より10℃以上低ければ、同一であってもよく、異なっていてもよい。工程(2)を繰り返すとき、分散中断温度から分散温度への昇温速度は、特に限定されないが、0.5℃/分以上が好ましく、1℃/分以上がより好ましい。分散中断温度から分散温度への昇温中には、温度が分散温度より低く、かつ、分散中断温度より高い範囲に保たれる限り、追加成分の添加や抜き取り等の工程を行ってもよい。
【0062】
(3)コーティング組成物
本発明の透明導電塗料を、バインダー樹脂、レベリング剤、及び有機溶剤等と混合し、コーティング組成物を得ることができる。バインダー樹脂、レベリング剤、有機溶剤等の添加方法は特に限定されず、透明導電塗料にこれらの成分を同時に添加してもよく、別々に添加してもよい。別々に添加する場合、その添加順序は特に限定されない。
【0063】
コーティング組成物における透明導電塗料の含有量は特に限定されないが、例えば、積層体とした際にカーボンナノ材料の含有量が0.01~50.0mg/m2となる量が好ましく、0.1~10.0mg/m2となる量がより好ましい。0.01mg/m2未満では、積層体中のカーボンナノ材料の存在割合が少なくなり、導電性を十分に確保することができない場合がある。50.0mg/m2を超えると、積層体中のカーボンナノ材料の存在割合が多くなり、塗布膜の強度、成膜性に悪影響を与える原因となる場合があるからである。
【0064】
バインダー樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルコキシシランオリゴマー、ポリオレフィン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。その理由は、コーティング組成物中の他の成分との相溶性が高く、これらのバインダーを含有するコーティング組成物を用いて形成した積層体は、基材に対する親和性や、成膜性が良好であるためである。これらのバインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
ポリエステル樹脂としては、2つ以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であればよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。
【0068】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
【0069】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0070】
ポリウレタンとしては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
アルコキシシランオリゴマーとしては、例えば、下記式(II)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される高分子量化されたアルコキシシランであり、シロキサン結合(Si-O-Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマー等が挙げられる。
SiR4(II)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である)
【0073】
アルコキシシランオリゴマーの構造は特に限定されず、直鎖状であっても良く、分岐状でもよい。また、アルコキシシランオリゴマーは、式(II)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルコキシシランオリゴマーの重量平均分子量は特に限定されないが、152より大きく4000以下であることが好ましく、500~2500であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0074】
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
バインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、カーボンナノ材料の含有量100重量部に対して100~6000重量部であることが好ましく、500~4000重量部であることがより好ましい。バインダーの含有量が100重量部未満であると、コーティング組成物で積層体を作製したときに積層体の強度が弱くなることがあり、一方、6000重量部を超えると、積層体中のカーボンナノ材料の割合が相対的に少なくなり、積層体の導電性を十分に確保することができないことがある。
【0076】
レベリング剤としては、親水性が高い方が、水-有機溶剤中での分散力に優れることから、HLB値が10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。なお、HLB値は、以下の計算方法により計算することができる。
グリフィン法:[(親水部分の分子量)÷(全体の分子量)]×20
【0077】
具体的なレベリング剤としては、ポリエステル系レベリング剤、ポリエーテル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤が挙げられる。これらの中でも、エステル結合を有するポリエステル系レベリング剤や、エーテル結合を有するポリエーテル系レベリング剤は、カーボンナノ材料と相互作用しやすく、水-アルコール中での分散機能がより高いために、好ましい。
【0078】
ポリエステル系レベリング剤としては、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0079】
ポリエーテル系レベリング剤としては、セルロースエーテル;プルラン;ポリエチレングリコール:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン等のシリコーン変性ポリエーテル;ポリグリセリン;ポリエーテルポリオール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルアルコールアルコキシレート等のアルキルエーテル誘導体、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
フッ素系レベリング剤としては、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロブタンスルホン酸、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基・リン酸基含有リン酸エステル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリシロキサン等の他、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の反応性基を導入した反応性ポリシロキサンの他、アルキル基、エステル基、アラルキル基、フェニル基、ポリエーテル基等の非反応性を導入した非反応性ポリシロキサン等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
アクリル系レベリング剤としては、シリコーンとアクリルからなるアクリル系共重合物等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
これらの中でも、エステル結合を有するポリエステル系レベリング剤や、エーテル結合を有するポリエーテル系レベリング剤は、カーボンナノ材料と相互作用しやすく、水-アルコール中でナノカーボン材料を分散させる性能が高いために、より好ましい。カーボンナノ材料として、グラフェンを使用する際はポリエステル系レベリング剤が最も好ましく、カーボンナノチューブを使用する際は、ポリエーテル系レベリング剤が最も好ましい。
【0084】
レベリング剤としては、分散剤と同じ物質を使用することもできるが、分散剤よりも低いHLB値を持つレベリング剤を使用することが好ましい。
【0085】
レベリング剤の含有量は、特に限定されないが、コーティング組成物の固形分全体に対して0.01~40重量%であることが好ましく、0.1~20重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。レベリング剤の含有量が0.01重量%未満であると、分散安定性と基材塗布性が不十分になる傾向があり、一方、40重量%を超えると、膜強度に悪影響を与えたり、塗布ムラが生じる傾向がある。
【0086】
有機溶剤は、コーティング組成物の基材に対する親和性を高める機能を有する。有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のエステル類:N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、等のヒドロキシル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物;ハロゲン類、イソホロン、プロピレンカーボネート、アセチルアセトン、アセトニトリル、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤(含水有機溶剤)、2種以上の有機溶剤の混合溶剤等が挙げられる。カーボンナノ材料の分散安定性の点からは、水と有機溶剤との混合溶剤が好ましく、水とアルコール類との混合溶剤がより好ましく、水とメタノール、水とエタノール、水と2-プロパノールの組み合わせがさらに好ましい。また、塗布性向上のために、エチレングリコール類、プロピレングリコール類、アミド化合物等を添加することも有効である。
【0087】
有機溶剤は、コーティング組成物を用いて形成する積層体中には残留しないことが好ましい。なお、本明細書においては、コーティング組成物の全ての成分を完全に溶解させるもの(即ち、「溶剤」)と、不溶成分を分散させるもの(即ち、「分散媒」)とを特に区別せずに、いずれも「溶剤」と記載する。
【0088】
(その他の成分)
コーティング組成物は、さらに、架橋剤、触媒、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、発泡剤等を含有していてもよい。
【0089】
架橋剤を配合することにより熱硬化性バインダー樹脂を架橋させることができ、帯電防止性能を向上できる。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系、ポリイソシアネート系、ポリアクリレート系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。コーティング組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、コーティング組成物中30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0090】
コーティング組成物が熱硬化性バインダー樹脂及び架橋剤を含有する場合、熱硬化性バインダー樹脂を架橋させるための触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。
【0091】
コーティング組成物に導電性高分子を配合させる場合、水溶性酸化防止剤を配合することにより、帯電防止層の耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。水溶性酸化防止剤としては、特に限定されず、還元性の水溶性酸化防止剤、非還元性の水溶性酸化防止剤等が挙げられる。
【0092】
コーティング組成物に水溶性酸化防止剤を配合する場合、水溶性酸化防止剤の配合量は導電性高分子の固形分100重量部に対して、0.001~1000重量部が好ましく、0.05~500重量部がより好ましく、0.1~300重量部がさらに好ましい。
【0093】
(4)積層体
コーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布することにより、コーティング塗膜を有する積層体を得ることができる。コーティング組成物は基材に直接塗布して形成してもよいし、プライマー層等の別の層を予め基材上に設けた後で、当該層の上に塗布して形成してもよい。
【0094】
基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの材質は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
基材の厚みは、特に限定されないが、10~10000μmであることが好ましく、25~5000μmであることがより好ましい。また、透明性の観点から、基材フィルムの全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0096】
コーティング塗膜は、コーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布した後、加熱処理することにより得ることができる。コーティング組成物を基材の少なくとも1面に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等を用いることができる。
【0097】
コーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布する前に、必要に応じて、あらかじめ基材の表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。
【0098】
コーティング塗膜を形成する際の加熱処理は、特に限定されず公知の方法により行えば良く、例えば、送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いて行えばよい。コーティング組成物が溶剤を含有する場合、溶剤は、加熱処理により除去される。
【0099】
コーティング塗膜を形成する際の加熱処理の温度条件は、特に限定されないが、150℃以下であることが好ましく、50~140℃であることがより好ましく、60~130℃であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が150℃を超えると、用いる基材の材質が限定され、例えば、PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等の一般に透明電極フィルムに用いられる基材を用いることが出来なくなる。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1~60分間であることが好ましく、0.5~30分間であることがより好ましい。
【0100】
コーティング塗膜の厚みは、特に限定されないが、1~2000nmであることが好ましく、2~1500nmであることがより好ましく、5~1000nmであることがさらに好ましい。
【0101】
コーティング塗膜の表面抵抗率は、特に限定されないが、102~1012Ω/□であることが好ましく、103~1011Ω/□であることがより好ましく、104~1010Ω/□であることがさらに好ましい。
【0102】
コーティング塗膜の屈折率は、特に限定されないが、1.4~1.7であることが好ましく、1.4~1.6であることがより好ましい。
【0103】
積層体のヘイズ(Haze)値は、特に限定されないが、5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値が5.0%を超えると、積層体の透明性が悪化することがある。なお、ヘイズ値は小さければ小さいほど好ましいため、その下限は特に限定されないが、例えば0.01%である。ヘイズ値はJIS K 7136に準拠して測定することができる。
【0104】
積層体の全光線透過率は、特に限定されないが、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が85%未満であると、透明性が不十分(外観不良)となることがある。なお、全光線透過率の上限は100%である。全光線透過率はJIS K 7136に準拠して測定することができる。
【0105】
本発明の積層体は、高透明性と高導電性の双方が求められる導電膜としての用途に好適に使用することができる。このような用途として、例えば、半導体、電子部品などの包装材料、表面保護フィルム、偏光板用途、電子写真記録材料、磁気記録材料や、透明タッチパネルやエレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられる透明導電性フィルム、帯電防止フィルム、マスキングテープ、再剥離型ラベル等が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「%」は特記ない限り「重量%」を意味する。
【0107】
(1)使用材料
(1-1)基材フィルム
・PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)
【0108】
(1-2)カーボンナノ材料
・カーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、ZEONANO SG101、平均長さ300μm、直径約4nm)
【0109】
(1-3)分散剤
・非イオン性分散剤(BASF社製、Pluronic F108、HLB:24以上)
・非イオン性分散剤(クラリアント社製、品名:Genapol PF 80、HLB:19)
・高分子系分散剤(日本触媒社製、品名:ポリビニルピロリドンK-30、HLB:15)
【0110】
(1-4)レベリング剤
・ポリエーテル系レベリング剤(三洋化成工業株式会社製、品名:エマルミン240、HLB:16)
【0111】
(1-5)バインダー樹脂
・アクリル樹脂(東亞合成株式会社製、ジュリマーFC-80、固形分率30%)
【0112】
(2)評価方法
(2-1)透明導電塗料の全光線透過率
透明導電塗料を、50重量%の2-プロパノール水溶液を用い、重量比で50倍に希釈後、希釈液を石英ガラス製測定セル(光路長10mm、光路幅30mm)に入れ、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HZ-2)に入れて全光線透過率を測定した。なお、50重量%の2-プロパノール水溶液の全光線透過率を基準とした。
【0113】
(2-2)透明導電塗料の粘度
透明導電塗料を恒温槽において25℃で30分静置後、B型粘度計(B型粘度計BM:東機産業製)により粘度を測定した。
【0114】
(2-3)コーティング塗膜の表面抵抗率
コーティング塗膜の製膜直後の表面抵抗率を、表面抵抗率と装置の測定可能レンジに応じて、下記の方法から選択し、評価した。
表面抵抗率が1.0×106(Ω/□)未満の場合:三菱化学株式会社製ロレスタGP MCP-T600のESPプローブを用いて10Vの印加電圧にて測定した。
表面抵抗率が1.0×106(Ω/□)~1.0×108(Ω/□)の場合:三菱化学株式会社製ハイレスタUP(MCP-HT450型)のUAプローブを用いて10Vの印加電圧にて測定した。
表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)を超える場合:三菱化学株式会社製ハイレスタUP(MCP-HT450型)のUAプローブを用いて250Vの印加電圧にて測定した。
【0115】
(2-4)積層体の全光線透過率およびヘイズ
積層体の製造直後の全光線透過率およびヘイズを、JIS K7136に従い、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HZ-2)を用いて測定した。
【0116】
(3)透明導電塗料の作製
(実施例1)
カーボンナノチューブ、非イオン性分散剤(BASF社製、品名:Pluronic F108、HLB:24以上)、エタノール、純水を表1に記載の重量部となるようにガラスビーカー内で混合した。なお、表1においてカーボンナノチューブの配合量は固形分を表す。この混合物を、超音波処理により分散した。分散は、超音波処理を行いながら表2に記載する分散温度で保温し、表2に記載する分散中断温度まで冷却し5分間保温した。その後、分散温度での保温、分散中断温度までの冷却、及び分散中断温度での保温を同じ条件で、合計回数が表2に記載した回数となるまで繰り返し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理はバッチ式超音波ホモジナイザー(hielscher社製、製品名「HP50H」)を用いて、出力50W、周波数30kHzで60分間行った。
【0117】
(実施例2)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、非イオン性分散剤、エタノール、純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理は、温度変化を表2に記載の条件で行い、循環方式の超音波処理方法(hielscher社製、製品名「UIP2000hd」、出力2000W、周波数20kHz)を表2に記載の条件で2時間行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0118】
(実施例3)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、非イオン性分散剤、エタノール、純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理は、温度変化を表2に記載の条件で行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0119】
(実施例4)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、非イオン性分散剤、アクリル樹脂、エタノール、純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理は、温度変化を表2に記載の条件で行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0120】
(実施例5)
実施例1と同じ組成および条件で透明導電塗料を製造した。
【0121】
(実施例6)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、非イオン性分散剤(クラリアント社製、品名:Genapol PF 80、HLB:19)、純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理は、温度変化を表2に記載の条件で行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0122】
(実施例7)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、高分子系分散剤、エタノール、及び純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。超音波処理は、温度変化を表2に記載の条件で行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0123】
(比較例1~4)
表1に記載の重量部となるようにカーボンナノチューブ、非イオン性分散剤、エタノール、純水をガラスビーカー内で混合し、この混合物を超音波処理により分散し、固形分率1.1%の透明導電塗料を得た。比較例1では温度変化を表2に記載の条件で行い、分散温度で保温する際の超音波処理として、循環方式の超音波処理方法(hielscher社製、製品名「UIP2000hd」、出力2000W、周波数20kHz)を表2記載の条件で2時間行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。比較例2~4では温度変化を表2に記載の条件で行った以外は、実施例1と同じ手順で行った。
【0124】
【0125】
(4)透明導電塗料の評価
得られた透明導電塗料の外観を目視観察し、カーボンナノチューブの分散性を以下の基準で判断した。その結果を表2に示す。
恒温槽中で25℃で24時間静置後、凝集物を認めなかった:○
恒温槽中で25℃で24時間静置後、凝集物を認めた:×
また、上述した方法により透明導電塗料の全光線透過率、粘度を測定した。その結果を表2に示す。
【0126】
(5)コーティング組成物および積層体の作製
実施例1~4、6~7および比較例1~4は、透明導電塗料をそのままコーティング組成物として使用した。実施例5は、実施例1と同じ組成および条件で作製した透明導電塗料2.7重量部(固形分率1.1%)に、レベリング剤0.01重量部、およびアクリル樹脂(東亞合成株式会社製、ジュリマーFC-80、固形分率30%)0.5重量部を混合し、コーティング組成物を作製した。
【0127】
コーティング組成物を基材フィルムの片面にバーコート法にて塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で2分間乾燥させることによりコーティング塗膜を形成し、積層体を得た。コーティング塗膜の膜厚は、コーティング組成物の固形分と、バーコータの番手を適宜選択することにより、約40nmに調整した。
【0128】
得られた積層体について、上述した方法により表面抵抗率、全光線透過率、及びヘイズを測定した。結果を表2に示す。
【0129】
【0130】
表2に示すように、実施例1~7の透明導電塗料は、製造直後の分散性の外観が良好であり、透明導電塗料の全光線透過率がいずれも20%以下であり、カーボンナノ材料が高度に分散していることを示していた。また、実施例1~7の積層体は、カーボンナノ材料が高度に分散した透明導電塗料を用いて作製されているため、表面抵抗が低く、全光線透過率・ヘイズの測定値から透明度が高いことが確認された。実施例4は透明導電塗料中にバインダーを配合し、実施例5はコーティング組成物中にバインダーを配合したが、いずれも、カーボンナノ材料が高度に分散していた。
【0131】
比較例1~4では透明導電塗料におけるカーボンナノ材料の分散性が低く、カーボンナノ材料が凝集した凝集物が沈降してしまうため、透明導電塗料の全光線透過率がいずれも20%以上となった。また、バーコータでの塗布時、カーボンナノ材料が凝集した凝集物がバーコータの溝にかきとられ、十分な量のカーボンナノ材料がコーティング塗膜に残らず、その結果、表面抵抗率が高かった。これは、比較例1では分散中断温度での保温を行なわず、比較例2では分散温度が高すぎ、比較例3では分散中断温度が高すぎたため、カーボンナノ材料が切断や破壊を受け、その結果、新たな活性面が生じてさらに凝集しやすくなったと推測される。また、比較例4では分散・分散中断回数が十分でなかったため、そもそもカーボンナノ材料が十分に分散しなかったと推測される。