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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】積層ゴムホースとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20230711BHJP
   B32B 25/00 20060101ALI20230711BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20230711BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B32B1/08 A
B32B1/08 B
B32B25/00
F16L11/04
F16L11/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019092573
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020185741
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐矢
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199076(JP,A)
【文献】特開2004-042495(JP,A)
【文献】特開平08-034886(JP,A)
【文献】特開2013-202965(JP,A)
【文献】特開平07-195382(JP,A)
【文献】特開2004-44728(JP,A)
【文献】特開2007-197522(JP,A)
【文献】特開2010-164063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と、該第1層の外表面に積層された第2層とを備えた積層ゴムホースの製造方法であって、
前記第1層は、第1ゴム成分と、該第1ゴム成分100質量部に対して1.25質量部以上4.5質量部以下の熱硬化性樹脂を含有し、
前記第2層は、第2ゴム成分と、該第2ゴム成分100質量部に対して1.25質量部以上の熱硬化性樹脂を含有し、
前記第1ゴム成分は、ニトリルゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムの少なくとも一方を含み、
前記第2ゴム成分は、クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムの少なくとも一方を含み、
前記第1層が含有する前記熱硬化性樹脂及び前記第2層が含有する前記熱硬化性樹脂は、いずれも、少なくともフェノール樹脂を含み、
前記第1層の外表面を65℃以上105℃以下の温度範囲に維持した状態で該第1層の外表面に前記第2層を積層形成する積層工程を備える、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層ゴムホースの製造方法において、
前記積層工程の前に、前記第1層を加熱して前記第1層の外表面の温度を65℃以上105℃以下の温度範囲にする加熱工程をさらに備える、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層ゴムホースの製造方法において、
前記第2ゴム成分と、前記熱硬化性樹脂を含有する、前記第2層用のゴム材料を準備する準備工程をさらに備え、
前記積層工程では、前記第1層の外表面に前記ゴム材料から前記第2層を積層形成する、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の積層ゴムホースの製造方法において、
前記第1層は、前記熱硬化性樹脂を、前記第1ゴム成分100質量部に対して2質量部以上4質量部以下含有し、
前記第2層は、前記熱硬化性樹脂を、前記第2ゴム成分100質量部に対して2質量部以上4質量部以下含有する、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の積層ゴムホースの製造方法において、
前記積層工程では、前記第1層を径方向外側に膨らませた状態で前記第1層の外表面に前記第2層を積層形成する、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の積層ゴムホースの製造方法において、
前記積層工程では、前記第1層に対して0.03MPa以上0.08MPa以下で真空引き処理を行うことにより、前記第1層を膨らませた状態とする、積層ゴムホースの製造方法。
【請求項7】
熱硬化性樹脂を含有する第1層と、
前記第1層の外表面に積層された第2層と
前記第1層及び前記第2層間において、補強糸により構成された中間層と
を備え、
前記第2層は、前記補強糸の間で前記第1層と接着している、積層ゴムホースであって、
前記第1層及び前記第2層間の接着部分に揮発性有機化合物を含有せず
前記第1層は、第1ゴム成分と、該第1ゴム成分100質量部に対して2質量部以上4質量部以下の熱硬化性樹脂とを含有し、
前記第2層は、第2ゴム成分と、該第2ゴム成分100質量部に対して2質量部以上4質量部以下の熱硬化性樹脂とを含有し、
前記第1ゴム成分は、ニトリルゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムの少なくとも一方を含み、
前記第2ゴム成分は、クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムの少なくとも一方を含み、
前記第1層の前記熱硬化性樹脂及び前記第2層の前記熱硬化性樹脂は、いずれも、少なくともフェノール樹脂を含む、積層ゴムホース。
【請求項8】
請求項に記載の積層ゴムホースにおいて
記第1層及び前記第2層間の接着力が25N/cm以上である、積層ゴムホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ゴムホースとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、補強ホース(積層ゴムホース)の製造方法が開示されている。この製造方法は、内管ゴム層(第1層)を形成するためのゴム管体を押出形成する内管ゴム形成工程(形成工程)と、ゴム管体上に補強糸層(中間層)を形成することでホース編組体を製造する編組工程と、外皮ゴム層(第2層)を形成するための外皮ゴム材料をホース編組体上に被覆する外皮ゴム形成工程(積層工程)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-202965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積層ゴムホースの製造方法では、ゴム管体上にトルエン等の揮発性有機化合物(VOC)を含有する接着剤を塗布して、外皮ゴム層をゴム管体上の外表面に積層している。
【0005】
しかし、揮発性有機化合物は環境負荷物質であるため、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を維持したい。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を維持させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、第1層用のゴム材料に熱硬化性樹脂を添加するようにした。
【0008】
具体的に、第1の発明では、第1層と、該第1層の外表面に積層された第2層とを備えた積層ゴムホースの製造方法であって、前記第1層は、ゴム成分100質量部に対して4.5質量部以下の熱硬化性樹脂を含有し、前記第1層の外表面を65℃以上105℃以下の温度範囲に維持した状態で該第1層の外表面に前記第2層を積層形成する積層工程を備えることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明によれば、第1層が熱硬化性樹脂を含有するので、第1層の熱硬化性樹脂と第2層のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらく。また、積層工程では、65℃以上に維持した状態の第1層の外表面に第2層を積層するので、第1層の熱硬化性樹脂が、第2層のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらきやすい分子構造をとる。また、熱硬化性樹脂が第1層を柔らかくする作用がはたらき、第1層の第2層に対する密着性が向上する。従って、第1層の熱硬化性樹脂と第2層のゴム成分のポリマーとの間の分子間引力及び両層間の密着性の向上により、両層間の接着力が得られる。よって、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を維持させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記積層工程の前に、前記第1層を加熱して前記第1層の外表面の温度を65℃以上105℃以下の温度範囲にする加熱工程をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明によれば、積層工程の前に行う加熱工程によって、第1層の外表面の温度を確実に65℃以上105℃以下にすることができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、熱硬化性樹脂を含有する、前記第2層用のゴム材料を準備する準備工程をさらに備え、前記積層工程では、前記第1層の外表面に前記ゴム材料から前記第2層を積層形成することを特徴とする。
【0013】
この第3の発明によれば、第1層だけでなく第2層も熱硬化性樹脂を含有するので、第1層のゴム成分のポリマーと第2層の熱硬化性樹脂との間に分子間引力がはたらく。さらに、熱硬化性樹脂が第2層を柔らかくする作用がはたらき、第2層の第1層に対する密着性が向上する。その結果、第1層のみが熱硬化性樹脂を含有する場合と比較して、両層間の接着力が向上する。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を向上させることができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記第2層用のゴム材料における前記熱硬化性樹脂の含有量は、該ゴム材料のゴム成分100質量部に対して4.5質量部以下であることを特徴とする。
【0015】
この第4の発明によれば、第2層用のゴム材料における熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム材料のゴム成分100質量部に対して4.5質量部以下であるので、熱硬化性樹脂による架橋を適度に制限でき、物性の大きな変化やゴム(第2層)のスコーチを抑制できる。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を向上させながら、両層のゴム物性を保つことができる。
【0016】
第5の発明は、第1~第4の発明のいずれか1つにおいて、前記第1層が含有する前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする。
【0017】
この第5の発明によれば、第1層が含有する熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であるので、フェノール樹脂の芳香環とゴム成分のポリマーとの間でファンデルワールス力がはたらき、且つ、フェノール樹脂の水酸基とゴム成分のポリマーとの間で水素結合が生じ得るので、フェノール樹脂とゴム成分のポリマーとの間で比較的強い分子間引力がはたらく。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を向上させることができる。
【0018】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、前記積層工程では、前記第1層を径方向外側に膨らませた状態で前記第1層の外表面に前記第2層を積層形成することを特徴とする。
【0019】
この第6の発明によれば、積層工程では、第1層を径方向外側に膨らませた状態で第2層を積層形成するので、第1層が第2層に対して圧着され、両層間の接着力が向上する。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を向上させることができる。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、前記積層工程では、前記第1層に対して0.03MPa以上0.08MPa以下で真空引き処理を行うことにより、前記第1層を膨らませた状態とすることを特徴とする。
【0021】
この第7の発明によれば、積層工程では、第1層に対して0.03MPa以上0.08MPa以下で真空引き処理を行うという簡単な方法により、両層間の接着力を向上させることができる。
【0022】
第8の発明は、熱硬化性樹脂を含有する第1層と、該第1層の外表面に積層された第2層とを備え、前記第1層及び前記第2層間の接着部分に揮発性有機化合物を含有しない積層ゴムホースである。
【0023】
この第8の発明によれば、第1層が熱硬化性樹脂を含有するので、第1層の熱硬化性樹脂と第2層のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらく。従って、第1層及び第2層間の接着部分に揮発性有機化合物を用いることなく、両層間の接着力が維持される積層ゴムホースを得ることができる。
【0024】
第9の発明は、第8の発明において、前記第1層及び前記第2層間に介設された中間層をさらに備え、前記第1層及び前記第2層間の接着力が25N/cm以上であることを特徴とする。
【0025】
この第9の発明によれば、揮発性有機化合物を用いることなく、第1層及び第2層間に介設された中間層をさらに備え、両層間の接着力が25N/cm以上の積層ゴムホースを得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によると、揮発性有機化合物を用いることなく両層間の接着力を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る積層ゴムホースの断面図である。
図2】積層ゴムホースの製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
<実施形態>
―積層ゴムホースの構成―
積層ゴムホースHは、図1に示すように、内層としての略円管状の第1層1と、この第1層1の外表面に積層された外層としての略円管状の第2層2とを備えている。この積層ゴムホースHは、第1層1及び第2層2の層間の接着部分に揮発性有機化合物を含有しない。
【0030】
第1層1は、ゴム成分と配合剤とを含有する第1ゴム材料1aからなる。第1ゴム材料1aのゴム成分としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)やエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。第1ゴム材料1aの配合剤は、熱硬化性樹脂を含有している。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂が好ましい。第1層1の熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、4.5質量部以下が好ましく、1質量部以上4質量部以下がより好ましく、2質量部以上4質量部以下がさらにより好ましい。第1ゴム材料1aの配合剤としては、熱硬化性樹脂以外に、カーボンブラックや炭酸カルシウム、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、硫黄、加硫促進剤、可塑剤等が挙げられる。第1ゴム材料1aの配合剤は、これら以外の成分を含んでいてもよい。
【0031】
第1層1は、例えば、内径が略6mm以上36mm以下であり、厚さが略1mm以上4mm以下である。
【0032】
第1層1の外表面には、中間層としての補強糸3が編組されている。補強糸3は、第1層1の周方向に間隔を空けて設けられている(図1参照)。補強糸3は、例えば、ポリノジック繊維などからなる。
【0033】
第2層2は、ゴム成分と配合剤とを含有する第2ゴム材料2aからなる。第2ゴム材料2aのゴム成分としては、クロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンジエンゴム等が挙げられる。第2ゴム材料2aの配合剤は、熱硬化性樹脂を含有している。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂が好ましい。第2層2の熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、4.5質量部以下が好ましく、1質量部以上4質量部以下がより好ましく、2質量部以上4質量部以下がさらにより好ましい。第2ゴム材料2aの配合剤としては、熱硬化性樹脂以外に、カーボンブラックや炭酸カルシウム、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、硫黄、加硫促進剤、可塑剤等が挙げられる。第2ゴム材料2aの配合剤は、これら以外の成分を含んでいてもよい。
【0034】
第2層2は、例えば、厚さが略1mm以上4mm以下である。また、第1層及び第2層の厚さの合計は、例えば、略2mm以上5mm以下である。
【0035】
第2層2は、周方向で隣り合う補強糸3の間で第1層1と接着している。第1層1及び第2層2間の接着力は25N/cm以上が好ましく、30N/cm以上がより好ましく、40N/cm以上がさらにより好ましい。なお、両層1,2間の接着部分には接着剤は塗布されていない。
【0036】
―積層ゴムホースの製造装置―
図2は、積層ゴムホースHの製造装置を示す。
【0037】
製造装置は、第1押出装置4と、編組装置5と、プレヒート機6と、第2押出装置7と、冷却水槽8と、塗布機9と、カッター10とを備えている。第1押出装置4、編組装置5、プレヒート機6、第2押出装置7、冷却水槽8、塗布機9、及びカッター10は、上流側からこの順に配置されている。
【0038】
第1押出装置4は、第1層1用の第1ゴム材料1aを押し出すことにより、第1層1を形成するものである。編組装置5は、ボビンキャリアから補強糸3を繰り出すことにより、第1押出装置4により形成された第1層1の外表面に補強糸3を編組するものである。プレヒート機6は、編組装置5により補強糸3が編組された第1層1を加熱するものである。第2押出装置7は、第2層2用の第2ゴム材料2aを押し出すことにより、プレヒート機6により加熱された第1層1の外表面に第2層2を積層形成するものである。冷却水槽8は、第2押出装置7により積層された両層1,2を冷却するものである。塗布機9は、冷却水槽8により冷却された両層1,2における第2層2の外表面に防着剤を塗布するものである。
【0039】
―積層ゴムホースの製造方法―
積層ゴムホースHの製造方法は、ゴム材料1a,2aの準備工程と、第1層1の形成工程と、補強糸3の編組工程と、第1層1を加熱する加熱工程と、第1層1に第2層2を積層する積層工程とを備えている。
【0040】
準備工程では、第1層1用の第1ゴム材料1a及び第2層2用の第2ゴム材料2aを準備する。
【0041】
準備工程の後、第1押出装置4より第1ゴム材料1aを押し出して第1層1を形成する形成工程を行う。形成工程の後、編組装置5によりボビンキャリアから補強糸3を繰り出し第1層1の外表面に補強糸3を編組する編組工程を行う。
【0042】
編組工程の後、プレヒート機6により第1層1を加熱して第1層1の外表面温度を後述する所定温度範囲にする加熱工程を行う。詳細に、補強糸3が編組された第1層1は、図示しないベルトコンベアで、プレヒート機6の内部に送られる。プレヒート機6は、第1層1を、その外表面温度が所定温度範囲になるまで加熱する。前記の所定温度範囲は、第1層1が含有する熱硬化性樹脂が分岐ポリマーとなり、且つ、その熱硬化性樹脂の架橋が進みすぎて第1層1が硬くならないような温度範囲に設定される。そのような温度範囲として、65℃以上105℃以下の範囲が好ましく、85℃以上105℃以下の範囲がより好ましく、95℃以上105℃以下の範囲がさらにより好ましい。このとき、プレヒート機6内の温度は、例えば、150℃以上200℃以下の範囲に設定される。
【0043】
加熱工程の後、前記所定温度範囲に維持した状態の第1層1の外表面に、第2押出装置7により第2ゴム材料2aを押し出して第2層2を積層形成する積層工程を行う。このとき、第1層1に対して真空引き処理を行うことにより、第1層1の外側の気圧を減圧して第1層1を径方向外側に膨らませた状態とする。真空引き処理の減圧の大きさは、0.03MPa以上0.08MPa以下の範囲が好ましく、0.06MPa以上0.08MPa以下の範囲がより好ましい。以上のようにして、積層ゴムホースの前駆体が得られる。
【0044】
積層工程の後、冷却水槽8により前記前駆体を冷却する。その後、塗布機9により第2層2の外表面に防着剤を塗布した後に、カッター10により前駆体を所定長さにカットする。これにより、積層ゴムホースHが得られる。
【0045】
―効果―
本実施形態によれば、第1層1が熱硬化性樹脂を含有するので、第1層1の熱硬化性樹脂と第2層2のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらく。また、積層工程では、65℃以上に維持した状態の第1層1の外表面に第2層2を積層するので、熱硬化性樹脂が分岐ポリマーとなって、熱硬化性樹脂の側鎖がゴム成分のポリマーに充分接近して相互作用しやすくなる。すなわち、第1層1の熱硬化性樹脂が、第2層2のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらきやすい分子構造をとる。また、熱硬化性樹脂が第1層1を柔らかくする作用がはたらき、第1層1の第2層2に対する密着性が向上する。
【0046】
ところで、第1層1の熱硬化性樹脂は、第2層2のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらいていることに加え、第2層2のゴム成分のポリマーと架橋していることも、両層1,2間の接着力に寄与していると考えられる。しかし、熱硬化性樹脂とゴム成分のポリマーとの架橋が進みすぎると、第1層1及び第2層2の物性が変化するので、架橋を適度に制限することが、ゴムの物性を維持するという観点から好ましい。
【0047】
ここで、本実施形態によれば、第1層1の熱硬化性樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して4.5質量部以下であり、且つ、積層工程における第1層1の外表面の温度が105℃以下であるので、熱硬化性樹脂による架橋を適度に制限でき、物性の大きな変化やゴム(第1層)のスコーチを抑制できる。従って、第1層1の熱硬化性樹脂と第2層2のゴム成分のポリマーとの間の分子間引力及び両層1,2間の密着性の向上により、両層1,2間の接着力が得られ、且つ、両層1,2の物性を保つことができる。よって、揮発性有機化合物を用いることなく、両層1,2の物性を保ちながら、両層1,2間の接着力を維持させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、積層工程の前に行う加熱工程によって、第1層1の外表面の温度を確実に65℃以上105℃以下にすることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第1層1だけでなく第2層2も熱硬化性樹脂を含有するので、第1層1のゴム成分のポリマーと第2層2の熱硬化性樹脂との間に分子間引力がはたらく。さらに、熱硬化性樹脂が第2層2を柔らかくする作用がはたらき、第2層2の第1層1に対する密着性が向上する。その結果、第1層1のみが熱硬化性樹脂を含有する場合と比較して、両層1,2間の接着力が向上する。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層1,2間の接着力を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、第2ゴム材料2aにおける熱硬化性樹脂の含有量は、第2ゴム材料2aのゴム成分100質量部に対して4.5質量部以下であるので、熱硬化性樹脂による架橋を適度に制限でき、物性の大きな変化やゴム(第2層)のスコーチを抑制できる。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層1,2間の接着力を向上させながら、両層1,2のゴム物性を保つことができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第1層1が含有する熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であるので、フェノール樹脂の芳香環とゴム成分のポリマーとの間でファンデルワールス力がはたらき、且つ、フェノール樹脂の水酸基とゴム成分のポリマーとの間で水素結合が生じ得るので、フェノール樹脂とゴム成分のポリマーとの間で比較的強い分子間引力がはたらく。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層1,2間の接着力を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、積層工程では、第1層1を径方向外側に膨らませた状態で第2層2を積層形成するので、第1層1が第2層2に対して圧着され、両層1,2間の接着力が向上する。従って、揮発性有機化合物を用いることなく両層1,2間の接着力を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、積層工程では、第1層1に対して0.03MPa以上0.08MPa以下で真空引き処理を行うという簡単な方法により、両層1,2間の接着力を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1層1が熱硬化性樹脂を含有するので、第1層1の熱硬化性樹脂と第2層2のゴム成分のポリマーとの間に分子間引力がはたらく。従って、第1層1及び第2層2間の接着部分に揮発性有機化合物を用いることなく、両層1,2間の接着力が維持される積層ゴムホースを得ることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、揮発性有機化合物を用いることなく、第1層1及び第2層2間に介設された補強糸3(中間層)をさらに備え、両層1,2間の接着力が25N/cm以上の積層ゴムホースHを得ることができる。
【0056】
<その他の実施形態>
前記実施形態では、積層ゴムホースHを第1層1、補強糸3及び第2層2の3層構造としたが、第1層1及び第2層2を備える限り、これに限定されない。例えば、補強糸3がない、第1層1及び第2層2のみからなる2層構造としてもよく、第1層1及び第2層2を備えた4層以上の構造としてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、第1ゴム材料1aのゴム成分をニトリルゴムやエチレンプロピレンジエンゴムとし、第2ゴム材料2aのゴム成分をクロロプレンゴムやエチレンプロピレンジエンゴムとしたが、これに限られない。例えば、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロヒドリンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等としてもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、第1ゴム材料1a及び第2ゴム材料2aの熱硬化性樹脂をフェノール樹脂としたが、これに限られない。例えば、メラミン樹脂やクマロン・インデン樹脂、ロジン・ロジンエステル樹脂、炭化水素樹脂等としてもよく、これらを複数用いてもよい。
【0059】
また、前記実施形態において、第2ゴム材料2aの配合剤は、熱硬化性樹脂を含有していなくてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、加熱工程を行ったが、積層工程で第1層1の外表面温度を65℃以上105℃以下の温度範囲に維持できる限り、加熱工程を行わなくてもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、両層1,2間の接着部分には接着剤を塗布しなかったが、揮発性有機化合物を含有しない接着剤を塗布してもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、積層工程では、真空引き処理により第1層1を膨らませた状態にしたが、これに限られない。例えば、第1層1内に外径が第1層1の内径よりも大きい円状の棒状部材を挿入して第1層1を膨らませた状態にしてもよい。
【実施例
【0063】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0064】
<実施例1>
準備工程では、ゴム材料Aを準備し、ゴム材料Aを第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いた。ゴム材料Aは、表1に示すように、ゴム成分としてエチレンプロピレンジエンゴム-1(住友化学株式会社製 商品名:エスプレン(登録商標)553)を60質量部、エチレンプロピレンジエンゴム-2(三井化学株式会社製 商品名:EPT 3092M)を40質量部、並びに配合剤としてフェノール樹脂(Akrochem Corp.製 商品名:Elaztobond(登録商標) A250)を1.5質量部及びメラミン樹脂(Allnex社製 商品名:CYREZ(登録商標) 964)を2.25質量部含有する。ゴム材料Aは、前記熱硬化性樹脂(フェノール樹脂及びメラミン樹脂)以外の配合剤として、カーボンブラック-1(東海カーボン株式会社製 シースト(登録商標)SO)を130質量部、炭酸カルシウム-1(東洋ファインケミカル株式会社製 商品名:ホワイトンP-30)を70質量部、軟化剤(出光興産株式会社製 商品名:ダイアナプロセスオイル PS-430)を75質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製 商品名:酸化亜鉛2種)を5質量部、ステアリン酸-1(日油株式会社製 商品名:ビーズステアリン酸)を1質量部、老化防止剤-1(精工化学株式会社製 商品名:ノンフレックス(登録商標)RD)を1質量部、老化防止剤-2(大内新興化学工業株式会社製 商品名:ノクラック(登録商標)MB)を2質量部、加工助剤(DOG Chemie社製 商品名:デオフローA)を2質量部、硫黄(鶴見化学工業株式会社製 商品名:サルファックス(登録商標)A)を0.5質量部、加硫促進剤-1(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)CM-G)を1質量部、加硫促進剤-2(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)TT-G)を1質量部、加硫促進剤-3(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)TRA)を1質量部、加硫促進剤-4(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)BZ)を0.5質量部含有する。
【0065】
【表1】
【0066】
準備工程の後の形成工程では、第1ゴム材料から第1層を形成した。形成工程の後の編組工程では、第1層の外表面にポリノジック繊維からなる補強糸を編組した。編組工程の後の加熱工程では、第1層の外表面温度が100℃になるように、プレヒート機内の温度を200℃に設定した。加熱工程の後の積層工程では、第1層の外表面温度を100℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを0.07MPaとした(表2参照)。製造された積層ゴムホースは、内径が16mm、外径が24mm、第1層の厚さが2.0mm、第2層の厚さが2.0mmであった。
【0067】
【表2】
【0068】
<実施例2~15>
以下の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表2参照)。すなわち、実施例2~4では、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例2)、0.02MPa(実施例3)、0.01MPa(実施例4)とした。実施例5では、真空引き処理を行わなかった。
【0069】
実施例6~10では、第1層の外表面温度が90℃になるように、プレヒート機内の温度を150℃に設定し、積層工程において第1層の外表面温度を90℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例7)、0.02MPa(実施例8)、0.01MPa(実施例9)とした。実施例10では、真空引き処理を行わなかった。
【0070】
実施例11~15では、加熱工程を行わず、積層工程において第1層の外表面温度を、形成工程における第1層の外表面温度よりも少し低い70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを0.05MPa(実施例12)、0.02MPa(実施例13)、0.01MPa(実施例14)とした。実施例15では、真空引き処理を行わなかった。
【0071】
<実施例16~30>
準備工程において、以下に示すゴム材料Bを準備し、このゴム材料Bを、第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述のように実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表3参照)。
【0072】
【表3】
【0073】
ゴム材料Bは、表1に示すように、エチレンプロピレンジエンゴム100質量部に対するフェノール樹脂の含有量が1質量部であり、メラミン樹脂の含有量が1.5質量部であることを除いてゴム材料Aと同様である。
【0074】
実施例17~19では、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例17)、0.02MPa(実施例18)、0.01MPa(実施例19)とした。実施例20では、真空引き処理を行わなかった。
【0075】
実施例21~25では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例22)、0.02MPa(実施例23)、0.01MPa(実施例24)とした。実施例25では、真空引き処理を行わなかった。
【0076】
実施例26~30では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例27)、0.02MPa(実施例28)、0.01MPa(実施例29)とした。実施例30では、真空引き処理を行わなかった。
【0077】
<実施例31~45>
準備工程において、以下に示すゴム材料Cを準備し、このゴム材料Cを、第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表4参照)。
【0078】
【表4】
【0079】
ゴム材料Cは、表1に示すように、エチレンプロピレンジエンゴム100質量部に対するフェノール樹脂の含有量が0.5質量部であり、メラミン樹脂の含有量が0.75質量部であることを除いてゴム材料Aと同様である。
【0080】
実施例32~34では、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例32)、0.02MPa(実施例33)、0.01MPa(実施例34)とした。実施例35では、真空引き処理を行わなかった。
【0081】
実施例36~40では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持した。また、真空引きの大きさを、0.05MPa(実施例37)、0.02MPa(実施例38)、0.01MPa(実施例39)とした。実施例40では、真空引き処理を行わなかった。
【0082】
実施例41~45では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例42)、0.02MPa(実施例43)、0.01MPa(実施例44)とした。実施例45では、真空引き処理を行わなかった。
【0083】
<実施例46~60>
実施例46~60では、準備工程において、以下に示すゴム材料Dを準備し、このゴム材料Dを、第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表5参照)。
【0084】
【表5】
【0085】
ゴム材料Dは、表1に示すように、エチレンプロピレンジエンゴム100質量部に対するフェノール樹脂の含有量が0.25質量部であり、メラミン樹脂の含有量が0.38質量部であることを除いてゴム材料Aと同様である。
【0086】
実施例47~49では、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例47)、0.02MPa(実施例48)、0.01MPa(実施例49)とした。実施例50では、真空引き処理を行わなかった。
【0087】
実施例51~55では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例52)、0.02MPa(実施例53)、0.01MPa(実施例54)とした。実施例55では、真空引き処理を行わなかった。
【0088】
実施例56~60では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(実施例57)、0.02MPa(実施例58)、0.01MPa(実施例59)とした。実施例60では、真空引き処理を行わなかった。
【0089】
<実施例61>
準備工程において、以下に示すゴム材料G及びゴム材料Hを準備し、ゴム材料Gを第1ゴム材料として用い、ゴム材料Hを第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表6参照)。
【0090】
【表6】
【0091】
ゴム材料Gは、表7に示すように、ゴム成分としてニトリルゴム(JSR株式会社製 商品名:NV240)を100質量部、並びに配合剤としてフェノール樹脂(Akrochem Corp.製 商品名:Elaztobond(登録商標) A250)を1質量部及びメラミン樹脂(Allnex社製 商品名:CYREZ(登録商標) 964)を1.5質量部含有する。このほか、ゴム材料Gは、前記熱硬化性樹脂(フェノール樹脂及びメラミン樹脂)以外の配合剤として、カーボンブラック-1(東海カーボン株式会社製 シースト(登録商標)SO)を70質量部、可塑剤-1(DIC株式会社製 商品名:モノサイザー(登録商標)W-260)を15質量部、可塑剤-2(三菱ケミカル株式会社製 商品名:DINP)を15質量部、炭酸カルシウム-2(神島化学工業株式会社製 商品名:軽微性炭酸カルシウム)を30質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製 商品名:酸化亜鉛2種)を5質量部、ステアリン酸-2(花王株式会社製 商品名:ルナック(登録商標)S 30)を0.5質量部、老化防止剤-3(大内新興化学株式会社製 商品名:ノクラック(登録商標)224)を1質量部、老化防止剤-4(川口化学工業株式会社製 商品名:アンテージ(登録商標)3C)を0.5質量部、硫黄(鶴見化学工業株式会社製 商品名:サルファックス(登録商標)200S)を0.5質量部、加硫促進剤-1(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)CM-G)を0.1質量部、加硫促進剤-5(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)NOB)を1質量部含有する。
【0092】
【表7】
【0093】
ゴム材料Hは、表7に示すように、ゴム成分としてクロロプレンゴム-1(デンカ株式会社製 商品名:クロロプレンM-41)を60質量部、クロロプレンゴム-2(デンカ株式会社製 商品名:クロロプレンEM-40)を40質量部、並びに配合剤としてフェノール樹脂(Akrochem Corp.製 商品名:Elaztobond(登録商標) A250)を1質量部及びメラミン樹脂(Allnex社製 商品名:CYREZ(登録商標) 964)を1.5質量部含有する。このほか、ゴム材料Hは、前記熱硬化性樹脂(フェノール樹脂及びメラミン樹脂)以外の配合剤として、カーボンブラック-2(東海カーボン株式会社製 シースト(登録商標)S)を80質量部、可塑剤-3(菜種油)を20質量部、フィラー(白石カルシウム株式会社製 商品名:ハードクレー)を40質量部、酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製 商品名:スターマグ)を4質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製 商品名:酸化亜鉛2種)を4質量部、ステアリン酸-2(花王株式会社製 商品名:ルナック(登録商標)S 30)を1質量部、パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製 商品名:パラフィンワックス)を1.5質量部、老化防止剤-2(大内新興化学工業株式会社製 商品名:ノクラック(登録商標)MB)を0.5質量部、老化防止剤-3(大内新興化学株式会社製 商品名:ノクラック(登録商標) 224)を0.5質量部、老化防止剤-4(川口化学工業株式会社製 商品名:アンテージ(登録商標)3C)を1質量部、老化防止剤-5(川口化学工業株式会社製 商品名:アンテージ(登録商標)OD-P)を1質量部、老化防止剤-6(大内新興化学工業株式会社製 商品名:ノクラック(登録商標)PA)を0.5質量部、加硫促進剤-6(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)22-C)を0.5質量部、加硫促進剤-7(三新化学工業株式会社製 商品名:サンセラー(登録商標)DM-P)を1.5質量部含有する。
【0094】
実施例61では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持し、真空引き処理の減圧の大きさを0.03MPaとした。
【0095】
<比較例1~10>
準備工程において、以下に示すゴム材料Eを準備し、このゴム材料Eを、第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表8参照)。
【0096】
【表8】
【0097】
ゴム材料Eは、表1に示すように、フェノール樹脂及びメラミン樹脂を含有しないことを除いてゴム材料Aと同様である。
【0098】
比較例2~4では、真空引き処理の減圧の大きさを0.05MPa(比較例2)、0.02MPa(比較例3)、0.01MPa(比較例4)とした。比較例5では、真空引き処理を行わなかった。
【0099】
比較例6~10では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(比較例7)、0.02MPa(比較例8)、0.01MPa(比較例9)とした。比較例10では、真空引き処理を行わなかった。
【0100】
<比較例11~25>
準備工程において、以下に示すゴム材料Fを準備し、このゴム材料Fを、第1ゴム材料及び第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表9参照)。
【0101】
【表9】
【0102】
ゴム材料Fは、表1に示すように、エチレンプロピレンジエンゴム100質量部に対するフェノール樹脂の含有量が2質量部であり、メラミン樹脂の含有量が3質量部であることを除いてゴム材料Aと同様である。
【0103】
比較例12~14では、真空引き処理の減圧の大きさを0.05MPa(比較例12)、0.02MPa(比較例13)、0.01MPa(比較例14)とした。比較例15では、真空引き処理を行わなかった。
【0104】
比較例16~20では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを、0.05MPa(比較例17)、0.02MPa(比較例18)、0.01MPa(比較例19)とした。比較例20では、真空引き処理を行わなかった。
【0105】
比較例21~25では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持した。また、真空引き処理の減圧の大きさを0.05MPa(比較例22)、0.02MPa(比較例23)、0.01MPa(比較例24)とした。比較例25では、真空引き処理を行わなかった。
【0106】
<比較例26,27>
準備工程において、以下に示すゴム材料I及びゴム材料Jを準備し、ゴム材料Iを第1ゴム材料として用い、ゴム材料Jを第2ゴム材料として用いて後続の工程を行い、後述の実験条件を変えたことを除いて、実施例1と同様に実施した(表6参照)。
【0107】
ゴム材料Iは、表7に示すように、フェノール樹脂及びメラミン樹脂を含有しないことを除いてゴム材料Gと同様である。ゴム材料Jは、表7に示すように、フェノール樹脂及びメラミン樹脂を含有しないことを除いてゴム材料Hと同様である。
【0108】
比較例26では、積層工程において第1層の外表面の温度を90℃に維持し、真空引き処理の減圧の大きさを0.03MPaとした。
【0109】
比較例27では、積層工程において第1層の外表面の温度を70℃に維持し、真空引き処理を行わなかった。
【0110】
<評価試験>
―接着力―
各実施例及び比較例に係る積層ゴムホースについて、以下のように、接着力を測定した。
【0111】
積層ゴムホースを長さ25mmにカットして試験片を準備した。試験片の長さ方向に沿って第2層に切れ目を入れ、この切れ目において第2層をはく離させて引張試験機(株式会社東洋精機製作所製 商品名:ストログラフ)のつかみに取り付けた。引張試験機によって第2層を積層ゴムホースの径方向外側(積層ゴムホースの周面に対して90度の角度)に引っ張り、第2層の全体が第1層から完全にはく離されるまで、各はく離長さにおける応力を測定した。引張速度を25mm/分とし、測定時の温度は23℃であった。測定された応力の平均値を、試験片の長さ(25mm)で割って接着力を算出した。
【0112】
―ゴム物性の評価―
積層ゴムホースの物性について、圧縮永久ひずみ試験(JIS K6262に準拠)及び耐液性試験(JIS K6258に準拠)により評価した。
【0113】
圧縮永久ひずみ試験では、円形状の試験片(直径:29.0±0.5mm、厚さ:12.5±0.5mm)を、圧縮装置によって圧縮した。圧縮の際、スペーサを用いて圧縮率を25%とした。この状態で、150℃で70時間放置した。その後、室温(23℃)に30分間放置し、試験片の厚さを測定した。以下の式(1)で計算される圧縮永久ひずみCSが70%以下であれば合格とした。
【0114】
CS=(h0-h1)/(h0-hs)×100 (1)
式(1)において、h0は試験片の元の厚さ、h1は圧縮後30分間放置後の試験片の厚さ、hsはスペーサの厚さである。
【0115】
耐液性試験では、JIS K6258に準拠して厚さ2mm、体積2cmの試験片を準備した。この試験片の全面を、高膨潤油(IRM903)に100℃で70時間浸漬した。その後、試験片の体積を測定した。試験片の体積が、浸漬前と比較して130%以下であれば合格とした。
【0116】
以上の圧縮永久ひずみ試験及び耐液性試験の結果がいずれも合格であれば、物性を○と評価し、少なくとも一方が不合格であれば×と評価した。
【0117】
<結果>
第1層及び第2層が、フェノール樹脂を1.5質量部含有し、メラミン樹脂を2.25質量部含有するゴム材料Aからなる実施例1~15の結果を、表2に示す。
【0118】
表2に示すように、接着力は、実施例1が44N/cm、実施例2が41N/cm、実施例3が34N/cm、実施例4が33N/cm、実施例5が30N/cm、実施例6が43N/cm、実施例7が41N/cm、実施例8が34N/cm、実施例9が32N/cm、実施例10が29N/cm、実施例11が34N/cm、実施例12が31N/cm、実施例13が27N/cm、実施例14が24N/cm、実施例15が22N/cmであった。ゴム物性は、実施例1~15のすべてにおいて○であった。
【0119】
次に、第1層及び第2層が、フェノール樹脂を1質量部含有し、メラミン樹脂を1.5質量部含有するゴム材料Bからなる実施例16~30の結果を、表3に示す。
【0120】
表3に示すように、接着力は、実施例16が43N/cm、実施例17が40N/cm、実施例18が33N/cm、実施例19が31N/cm、実施例20が28N/cm、実施例21が42N/cm、実施例22が39N/cm、実施例23が32N/cm、実施例24が30N/cm、実施例25が27N/cm、実施例26が32N/cm、実施例27が30N/cm、実施例28が25N/cm、実施例29が23N/cm、実施例30が20N/cmであった。ゴム物性は、実施例16~30のすべてにおいて○であった。
【0121】
次に、第1層及び第2層が、フェノール樹脂を0.5質量部含有し、メラミン樹脂を0.75質量部含有するゴム材料Cからなる実施例31~45の結果を、表4に示す。
【0122】
表4に示すように、接着力は、実施例31が40N/cm、実施例32が37N/cm、実施例33が30N/cm、実施例34が28N/cm、実施例35が25N/cm、実施例36が38N/cm、実施例37が35N/cm、実施例38が28N/cm、実施例39が26N/cm、実施例40が23N/cm、実施例41が23N/cm、実施例42が20N/cm、実施例43が18N/cm、実施例44が15N/cm、実施例45が14N/cmであった。ゴム物性は、実施例31~45のすべてにおいて○であった。
【0123】
次に、第1層及び第2層が、フェノール樹脂を0.25質量部含有し、メラミン樹脂を0.38質量部含有するゴム材料Dからなる実施例46~60の結果を、表5に示す。
【0124】
表5に示すように、接着力は、実施例46が35N/cm、実施例47が31N/cm、実施例48が23N/cm、実施例49が15N/cm、実施例50が10N/cm、実施例51が29N/cm、実施例52が27N/cm、実施例53が22N/cm、実施例54が15N/cm、実施例55が10N/cm、実施例56が20N/cm、実施例57が18N/cm、実施例58が10N/cm、実施例59が0N/cm、実施例60が0N/cmであった。ゴム物性は、実施例46~60のすべてにおいて○であった。
【0125】
実施例1~60の結果より、接着力は、真空引き処理における減圧が大きいほど大きく、積層工程における第1層の外表面温度が高いほど大きいことが分かる。
【0126】
次に、第1層及び第2層が熱硬化性樹脂を含有しないゴム材料Eからなる比較例1~10の結果を、表8に示す。
【0127】
表8に示すように、接着力は、比較例1が34N/cm、比較例2が30N/cm、比較例3が22N/cm、比較例4が15N/cm、比較例5が10N/cm、比較例6が20N/cm、比較例7が18N/cm、比較例8が10N/cm、比較例9が0N/cm、比較例10が0N/cmであった。ゴム物性は、比較例1~10のすべてにおいて○であった。
【0128】
比較例1~10及び実施例1~60を、真空引き処理の減圧の大きさ及び第1層の外表面温度が同じ場合で比較すると、第1層及び第2層が熱硬化性樹脂を含有するゴム材料A~Dからなる実施例1~60の接着力は、第1層及び第2層が熱硬化性樹脂を含有しない比較例1~10の接着力よりも大きいことがわかる。例えば、真空引き処理の減圧の大きさが0.07MPaで、第1層の外表面の温度が100℃の場合で比較すると、第1層及び第2層が、フェノール樹脂を1.5質量部含有し、メラミン樹脂を2.25質量部含有する実施例1の接着力は、第1層及び第2層が熱硬化性樹脂を含有しない比較例1の接着力よりも10N/cm大きい。
【0129】
次に、第1層及び第2層が、フェノール樹脂を2質量部含有し、メラミン樹脂を3質量部含有するゴム材料Fからなる比較例11~25の結果を、表9に示す。
【0130】
表9に示すように、ゴム物性は、比較例11~25のすべてにおいて×であった。第1層及び第2層において、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂及びメラミン樹脂の含有量が多すぎることにより、熱硬化性樹脂同士の架橋又は熱硬化性樹脂及びエチレンプロピレンジエンの架橋が進んだためと考えられる。
【0131】
次に、第1層が、ニトリルゴムをゴム成分とし、フェノール樹脂を1質量部及びメラミン樹脂を1.5質量部含有するゴム材料Gからなり、第2層が、クロロプレンゴムをゴム成分とし、フェノール樹脂を1質量部及びメラミン樹脂を1.5質量部含有するゴム材料Hからなる実施例61の結果を表6に示す。また、第1層が、ニトリルゴムをゴム成分とし、熱硬化性樹脂を含有しないゴム材料Iからなり、第2層が、クロロプレンゴムをゴム成分とし、熱硬化性樹脂を含有しないゴム材料Jからなる比較例26及び27の結果も、表6に示す。
【0132】
表6に示すように、接着力は、実施例61が25N/cm、比較例26が10N/cm、比較例27が5N/cmであった。ゴム物性は、いずれの場合も○であった。実施例61は、実施例1~60とは第1ゴム材料及び第2ゴム材料のゴム成分が異なるが、ゴム成分を変えても熱硬化性樹脂を含有していることにより、第1層及び第2層間で比較的大きな接着力を維持できることがわかる。また、第1層及び第2層熱が硬化性樹脂を含有する実施例61は、両層が熱硬化性樹脂を含有しない比較例26及び27よりも接着力が15N/cm以上大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、積層ゴムホースの製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0134】
H 積層ゴムホース
1 第1層
1a 第1ゴム材料
2 第2層
2a 第2ゴム材料
3 補強糸(中間層)
図1
図2