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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】食品調温システム
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20230711BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20230711BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230711BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A47B31/00 H
A47B31/02 B
A47B31/02 D
A47B31/02 Z
F25D11/00 101D
F25D23/12 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019099452
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192086
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】宮近 哲朗
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-094069(JP,A)
【文献】登録実用新案第3087921(JP,U)
【文献】特開2016-077308(JP,A)
【文献】特開2016-195717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00-31/02
F25D 11/00
F25D 23/12
A47J 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する内部空間を有する移動可能なカートと、
前記内部空間に前記食品の調温のための空気を供給するステーションと、
ラッチ機構を用いて前記カートと前記ステーションとの接続又は分離を行う連結装置と、を備え
前記カートは、
前記内部空間に連通する開口部を有し、
前記ステーションは、
前記連結装置による接続時に前記開口部の周縁に当接する環状の接続枠部を有し、前記接続枠部の下部よりも上部が前記カートから離れた位置にあるように傾いた傾斜式設置、又は、前記下部と前記上部とが前記カートに対して同じ位置にあるように直立した直立型設置、が可能であるように構成され、
前記連結装置は、
前記開口部の周縁と前記接続枠部との当接箇所の上方に設けられ、
前記ステーションは、
前記当接箇所を封止するためのパッキンを前記接続枠部の周縁に有し、
前記連結装置は、
前記パッキンの上方に設けられ、
前記カートは、
前記連結装置による接続時に当該カートの自重によって前記開口部の周縁を前記パッキンに押圧させた状態にて保持される、
食品調温システム。
【請求項2】
請求項1に記載の食品調温システムにおいて、
前記連結装置は、
前記カート及び前記ステーションの一方に設けられるストライカと、
前記カート及び前記ステーションの他方に設けられ、前記ストライカと係合することによって前記ストライカを保持するラッチ部と、
前記ラッチ部による前記ストライカとの係合を解除する解除部と、を有する、
食品調温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を収容して移動可能なカートと、カート内の食品を調温可能なステーションと、を備える食品調温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の施設(例えば、医療施設や介護施設など)での食事の提供を目的として、調理済みの食品が置かれた多数のトレイを収容して移動可能なカートと、食品の加熱や冷却が可能なステーションと、を備えた食品調温システムが提案されている。この種の食品調温システムは、例えば、ステーションにカートを接続した状態で食品の加熱や冷却を行った後、ステーションからカートを分離して食品の運搬および提供を行うようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3087921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の食品調温システムは、電磁石を用いた連結装置により、カートとステーションとの接続または分離を行うようになっている。具体的には、この連結装置は、ステーションに設けた電磁石ユニットへの通電状態を制御することで、カートに設けた金属板を電磁石ユニットに吸着させるか否かを選択できるようになっている。このような連結装置には、カートとステーションとの接続・分離を電気的に制御可能な点でメリットがあるものの、停電や制御系の不具合などに起因し、本来であれば接続されているはずのステーションとカートとが意図せず分離する可能性がある点でデメリットがある。
【0005】
上記デメリットは、例えば、適正なタイミングでの食事提供の妨げとなり得る。例えば、医療や介護の現場では、食品調温システムは、調理済みの食品を収容したカートをステーションに接続した状態で保持し、タイマー等で所定の時刻に食品を調温(再加熱など)して提供する等の用途で用いられる。この用途では、カートとステーションとの接続中に停電などが生じてステーションからカートが分離すると、その後に食品を適正に調温できないことになる。このような不具合は、夜間の停電などのように、カートが意図せず分離したことを使用者が速やかに把握できない場合、又は、仮に意図しない分離を把握できたとしてもカートの再接続が困難な場合に、特に問題となる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カートとステーションとの意図しない分離を抑制可能な食品調温システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る食品調温システムは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
食品を収容する内部空間を有する移動可能なカートと、
前記内部空間に前記食品の調温のための空気を供給するステーションと、
ラッチ機構を用いて前記カートと前記ステーションとの接続又は分離を行う連結装置と、を備える、
食品調温システムであること。
[2]
上記[1]に記載の食品調温システムにおいて、
前記連結装置は、
前記カート及び前記ステーションの一方に設けられるストライカと、
前記カート及び前記ステーションの他方に設けられ、前記ストライカと係合することによって前記ストライカを保持するラッチ部と、
前記ラッチ部による前記ストライカとの係合を解除する解除部と、を有する、
食品調温システムであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の食品調温システムにおいて、
前記カートは、
前記内部空間に連通する開口部を有し、
前記ステーションは、
前記連結装置による接続時に前記開口部の周縁に当接する環状の接続枠部を有し、前記接続枠部の下部よりも上部が前記カートから離れた位置にあるように傾いた傾斜式設置、又は、前記下部と前記上部とが前記カートに対して同じ位置にあるように直立した直立型設置、が可能であるように構成され、
前記連結装置は、
前記開口部の周縁と前記接続枠部との当接箇所の上方に設けられる、
食品調温システムであること。
[4]
上記[3]に記載の食品調温システムにおいて、
前記ステーションは、
前記当接箇所を封止するためのパッキンを前記接続枠部の周縁に有し、
前記連結装置は、
前記パッキンの上方に設けられ、
前記カートは、
前記連結装置による接続時に当該カートの自重によって前記開口部の周縁を前記パッキンに押圧させた状態にて保持される、
食品調温システムであること。
【0008】
上記[1]の構成の食品調温システムによれば、食品を収容する内部空間を有する移動可能なカートと、カートの内部空間に食品の調温のための空気を供給するステーションとが、ラッチ機構を用いた連結装置により、機械的に接続または分離される。本構成の食品調温システムは、電気的な接続または分離を行う従来のシステムとは異なり、ラッチ機構による機械的な接続または分離が可能である。よって、カートとステーションとが接続した状態の維持に電力を要さないため、仮に停電などが生じても、カートとステーションとの接続を維持できる。したがって、本構成の食品調温システムは、カートとステーションとの意図しない分離を抑制可能である。
【0009】
また、従来の食品調温システムでは、電磁石ユニットを用いた連結装置を適正に作動させるためには、通常、カートとステーションとの(具体的には、電磁石ユニットと相手側の金属板との)精密な位置合わせが求められる。これは、電磁石ユニットが発する磁力圏に金属板を十分に近付ける必要があることや、電磁石ユニットと金属板とが十分に密着していなければ設計通りの吸着力が得られないこと等に起因する。これに対し、上記構成の食品調温システムは、ラッチ機構を用いて機械的にカートとステーションとを連結するため、電磁石ユニットを用いる場合に比べ、通常、カートとステーションとの位置合わせの要求精度が低い。具体的には、ラッチ機構による係合がなされる限り、多少の位置ズレや角度ズレが生じても、カートとステーションとを適正に接続できる。よって、上記構成の食品調温システムは、従来の食品調温システムに比べ、実際の使用時にカートとステーションとを着脱する際の作業性にも優れている。
【0010】
なお、上記「調温」は、食品を加熱すること(例えば、調理済みの食品を喫食温度まで加熱すること)、食品を冷却すること(例えば、調理済みの食品を保管する温度まで冷却すること)、及び、加熱または冷却した食品の温度を喫食温度に維持することを含む概念である。
【0011】
上記[2]の構成の食品調温システムによれば、連結装置は、カート及びステーションの一方に設けられるストライカと、カート及びステーションの他方に設けられるラッチ部と、ラッチ部とストライカとの係合を解除する解除部と、を有する。そのため、例えば、所定位置に設置したステーションにカートを近付けるだけで、ストライカをラッチ部に係合させられる。よって、本構成の食品調温システムは、実際の使用時にカートとステーションとを接続する際の作業性に優れる。
【0012】
上記[3]の構成の食品調温システムによれば、ステーションの接続枠部の下部よりも上部がカートから離れた位置にあるような設置法(傾斜式設置)、又は、ステーションの接続枠部の下部と上部とがカートに対して同じ位置にあるような設置法(直立式設置)により、ステーションが設置される。更に、ステーションの接続枠部とカートの開口部との当接箇所の上方に設けた連結装置を用いて、カートとステーションとが接続される。これにより、連結装置よりも下方側にカートの重心が位置することになるため、連結箇所を中心にカートがステーションに近付く向きの力のモーメントが、カートに生じることになる(例えば、図9を参照)。その結果、カートとステーションとが接続されれば、使用者が外力を及ぼさなくても、カートが自重によって自然にステーションに近付くことになる。そのため、接続枠部と開口部との当接箇所の上方にさえ連結装置を設ければ、当接箇所の下方などの他の箇所に連結装置を設けなくても、接続枠部と開口部とを上下共に十分に密着させながらカートとステーションとを接続できることになる。よって、本構成の食品調温システムは、連結装置を少なくできる分、製造コストを低減でき、実際の使用時にカートとステーションとを着脱する際の作業性に優れる。なお、上述した「上」及び「下」は、食品調温システムが施設等に設置されて使用される際の上下方向を基準とする。上下の基準について、以下同様である。
【0013】
上記[4]の構成の食品調温システムによれば、ステーションの接続枠部の周縁に設けられたパッキン全体にカートの自重が掛かり、カートの開口部の周縁をパッキンに対して均等に押圧させることができる。これにより、ステーションの接続枠部とカートの開口部との間の全体を均等に密封できる。よって、本構成の食品調温システムは、ステーションから調温用の空気を供給する際の空気の漏れ等を抑制し、食品を適正に調温できる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、カートとステーションとの意図しない分離を抑制可能な食品調温システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、カートとステーションとが接続された本発明の実施形態に係る食品調温システムの斜視図である。
図2図2は、カートとステーションとが分離された食品調温システムの斜視図である。
図3図3は、ステーションの斜視図である。
図4図4は、カートの斜視図である。
図5図5(a)は、ラッチ部及びストライカの詳細形状を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のA-A断面図である。
図6図6(a)~図6(c)は、ラッチ部及びストライカが連結される過程を説明するための図であり、図6(d)~図6(f)は、ラッチ部及びストライカの連結が解除される過程を説明するための図である。
図7図7(a)は、カートがステーションに向けて押し込まれる様子を示す側面図であり、図7(b)は、カートとステーションとが接続された食品調温システムの側面図である。
図8図8は、ラッチ部及びストライカの配設位置を説明するための側面図である。
図9図9は、カートとステーションとの連結箇所を中心にカートがステーションに向けて近付く向きの力のモーメントがカートに生じることを説明するための図である(カートの傾きを強調して図示している)。
図10図10(a)~図10(c)は、カートがステーションに対して傾いていない状態でステーションに向けて押し込まれる場合におけるラッチ検知部及びカート検知部の検知結果の推移を説明するための図である。
図11図11(a)~図11(c)は、カートが斜めに傾いた状態でステーションに向けて押し込まれる場合におけるラッチ検知部及びカート検知部の検知結果の推移を説明するための図である。
図12図12は、接続判定手段がカートとステーションとの接続又は分離を判定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、本発明の実施形態に係る食品調温システムにおけるラッチ部、ストライカ、及び、解除レバーの配置を示す図である。
図14図14は、変形例に係る食品調温システムにおけるラッチ部、ストライカ、及び、解除レバーの配置を示す図である。
図15図15は、他の変形例に係る食品調温システムにおけるラッチ部、ストライカ、及び、解除レバーの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る食品調温システム1について説明する。図1,2に示すように、食品調温システム1は、床面5(図7参照)に静置されるステーション2と、移動可能であってステーション2と接続されるカート3と、ステーション2及びカート3の接続又は分離を行う連結装置4(図7参照)と、を備える。
【0017】
食品調温システム1は、ステーション2から吹き出される冷風または熱風によってカート3に収容された食品の冷却および加熱が可能であり、且つ、調温された食品を収容したカート3をステーション2から分離して提供できるようになっている。食品調温システム1は、例えば、医療施設や介護施設などでの食事提供を目的として用いられる。
【0018】
<ステーション2>
まず、ステーション2の構成について説明する。ステーション2は、接続されたカート3に熱風または冷風を供給可能な装置である。ステーション2は、図3に示すように、縦長の四角形状から成る筐体11と、筐体11の上部に載置された機械室12と、筐体11の底部に設置された固定脚13と、を備えている。機械室12は、空気を冷却する冷却器(図示省略)へ冷媒を循環させる冷却装置(図示省略)と、熱風または冷風の供給を制御する制御部(図示省略)と、を備えている。
【0019】
筐体11の前面には、カート3と接続し、熱風または冷風を供給する筐体開口部14が開口している。筐体開口部14には、前方に向かい枠状に突出した接続枠部15が設けられ、接続枠部15の先端部には、カート3との接続を密封する枠部パッキン16が全周にわたって設けられている。筐体開口部14の下方には、カート3を接続枠部15へ誘導する一対のカートガイド52が設けられている。
【0020】
接続枠部15の上部には、カート3を接続保持するラッチ部17が、左右2箇所に設けられている。ラッチ部17は、連結装置4の一部を構成している。筐体11の前面には、ラッチ部17のロック状態を解除する解除レバー18が設けられている。ラッチ部17の後方には、ラッチ部17のロック状態を解除する解除機構19(図6を参照)が設けられている。解除機構19は、ワイヤ21等により解除レバー18と連動するようになっている(図13を参照)。解除レバー18、解除機構19、及びワイヤ21等は、本発明の「解除部」を構成している。
【0021】
機械室12に設けられた制御部は、カート3が完全に接続されたことを判定する接続判定手段を備えている。接続判定手段は、左右のラッチ部17それぞれに設けられてラッチ部17の動作を検知するラッチ検知部22と、左右のラッチ部17の略中央部に接近したカート3を検知するカート検知部23と、を備えている(図10参照)。接続判定手段の具体的な作動については、後述される。
【0022】
筐体11の内部には、加熱冷却部24と、冷却部25と、加熱冷却部24及び冷却部25を仕切る筐体仕切板26と、が設けられている。加熱冷却部24は、接続枠部15の左側に開口し、冷却部25は、接続枠部15の右側に開口している。筐体仕切板26は、筐体開口部14の略中央に位置し、接続枠部15の先端部まで延在している。筐体仕切板26の先端部には仕切パッキン27が設けられている。
【0023】
加熱冷却部24は、冷却装置(図示省略)と接続する第1冷却器(図示省略)と、ヒータ(図示省略)と、カート3から吸引した空気を第1冷却器とヒータに通過させカート3へ吹き出す第1循環ファン(図示省略)と、を備えている。
【0024】
冷却部25は、冷却装置と接続する第2冷却器(図示省略)と、カート3から吸引した空気を第2冷却器に通過させカート3へ吹き出す第2循環ファン(図示省略)と、を備えている。
【0025】
第1、第2冷却器、ヒータ、及び、第1、第2循環ファンの運転は、制御部により制御される。ヒータと第1循環ファンの運転により熱風が吹き出され、第1、第2冷却器と第1、第2循環ファンの運転により冷風が吹き出される。加熱冷却部24では、熱風の吹き出しと冷風の吹き出しとが切り替えられるように制御される。これにより、食品調温システム1は、筐体仕切板26で区分けした2つの領域を、互いに独立して加熱または冷却できる。よって、食品調温システム1は、例えば、1つのトレイ46上に配置した複数の食品の一部を冷却しながら他部を加熱する同時調温が可能である。
【0026】
筐体11の前面には、タッチ画面等で構成されて制御部を操作する操作部28と、ステーション2の運転状況を表示する表示部29と、が配置されている。なお、操作部28は、タッチ画面に限らず、物理的に作動するハードボタンで構成されてもよく、さらに外部端末による通信等により操作するように構成されても良い。
【0027】
<カート3>
次いで、カート3の構成について説明する。カート3は、図2及び図4に示すように、外カート31と、外カート31に格納可能な内カート32と、を備えている。外カート31は、内カート32を格納する格納室33を有する四角形状の外カート本体34と、外カート本体34の底面に固定された複数のキャスター35と、を備えている。
【0028】
外カート本体34は、ステーション2と接続する側に接続側開口部36を、ステーション2と接続する側と反対側に内カート32が搬入出自在とされる開口部37を、有しており、接続側開口部36及び開口部37に開閉扉38及び開閉扉39をそれぞれ備えている。図2は、開閉扉38,39の双方が開いた状態を示し、図4は、開閉扉38が開き、開閉扉39が閉じた状態を示す。
【0029】
開閉扉38及び開閉扉39の内面外周部には、それぞれ、接続側開口部36及び開口部37を密封する扉パッキン41が装着されている。外カート本体34は、断熱材を内包した断熱構造を有し、格納室33を保温するようになっている。
【0030】
外カート本体34の接続側開口部36の上部2箇所に、ステーション2のラッチ部17に向けて突出し且つラッチ部17と係合する丸棒状の係合ロッド42aを有したストライカ42が固定されている。ストライカ42は、連結装置4の一部を構成している。左右のストライカ42の中央部であってカート検知部23と対向する位置に、被検知部43が設けられている。
【0031】
内カート32は、四角形状の内カート本体44と、内カート本体44の底面に固定した複数のキャスター45と、を備えている。内カート本体44は、食品を載置したトレイ46を多段状に収容するトレイ収容室48を有し、外カート31の開閉扉38,39と対向する側において開口している。トレイ収容室48の略中央部に、トレイ46の中央部が差し込み可能な仕切板47が設置され、仕切板47の内部には断熱材が封入されている。さらに、仕切板47は、内カート32を外カート31に格納したとき、格納室33の空間を、食品を加熱可能な加熱冷却室48aと、食品を冷却保存する冷却室48bとに左右に区画するようになっている。
【0032】
食品を載せたトレイ46を収容するとき、仕切板47の左側には温めて食する食品を配置し、仕切板47の右側には加熱せず冷たいまま食する食品を配置する。内カート32の仕切板47は、ステーション2の筐体仕切板26と対向し、仕切パッキン27と密着するようになっている。外カート31の開閉扉38,39それぞれの内面には、内カート32の仕切板47と対向する位置に扉中央パッキン51が装着され、加熱冷却室48aと冷却室48bとを密封している。
【0033】
<食品調温システム1の作動例>
食品調温システム1の実際の作動の一例を以下に記載する。
外カート31の開閉扉38を開放した状態で、ステーション2のカートガイド52にガイドされながら接続側開口部36をステーション2の筐体開口部14に押し込むと、左右のストライカ42が左右のラッチ部17に進入し、噛合状態にロックされ、外カート31がステーション2に接続した状態で保持される。
【0034】
内カート32に食品を載せた複数のトレイ46を収容し、内カート32を外カート31に格納すると、仕切板47で仕切られた加熱冷却室48aと冷却室48bが、加熱冷却部24と冷却部25とにそれぞれ連通した状態で区画される。
【0035】
ステーション2の接続判定手段(詳細は後述される)により、カート3が完全に接続されたと判定されると、ステーション2の運転が可能な状態となる。ステーション2の操作部28への所定の操作により、ステーション2の運転を開始すると、冷却運転が開始され、第1循環ファンと第2循環ファンとが起動されるとともに、第1冷却器と第2冷却器とが駆動され、加熱冷却室48a及び冷却室48bともに冷風が循環する。これにより、加熱冷却室48aに収容された食品、及び、冷却室48bに収容された食品が、冷風によって冷却保存される。
【0036】
予め設定した再加熱開始時刻になると、再加熱運転が開始され、第1冷却器が停止し、ヒータが起動するように切り替わり、加熱冷却室48aに熱風が循環する。これにより、加熱冷却室48aに収容された食品が熱風により加熱される。このとき冷却室48bでは継続して冷風が循環している。このように、食品調温システム1は、食品の一部を冷却しながら他部を加熱する同時調温が可能である。
【0037】
所定時間経過したとき又は食事の温度が所定温度に到達したとき、再加熱運転は停止され、熱風及び冷風の循環が停止され、配膳可能な状態となる。作業者が解除レバー18を操作してラッチ部17のロックを解除すると、ストライカ42がラッチ部17から開放され、外カート31が内カート32と共にステーション2から離脱する。開閉扉38を閉じ、カート3内の食品を保温しながら運搬、配膳できるようになる。
【0038】
配膳が完了すると、作業者は内カート32と外カート31を返却し、それぞれ洗浄する。洗浄が完了すると、再び外カート31をステーション2にラッチ部17で接続し、次の食品を収容した内カート32を外カート31に格納して、次の食事までステーション2の運転を開始する。
【0039】
<連結装置4>
次いで、連結装置4の構成について説明する。連結装置4は、ステーション2側のラッチ部17と、カート3側のストライカ42と、解除機構19(図13を参照)と、を有する。図5に示すように、ラッチ部17は、横長四角形状のラッチケース61と、ストライカ42と係合するラッチプレート62と、ラッチプレート62を固定するロックプレート63と、を備えている。
【0040】
ラッチケース61には、ストライカ42の係合ロッド42aが進入可能なU字状の切欠部64が形成され、切欠部64の両側にラッチプレート62が回動するラッチ用軸65と、ロックプレート63が回動するロック用軸66がそれぞれ立設されている。係合ロッド42aは、上下方向に延びており、係合ロッド42aの延び方向(上下方向)に略直交する水平方向に広がるラッチプレート62と噛み合うように係合するようになっている。
【0041】
具体的には、ラッチプレート62は、前アーム67と後アーム68とを備えており、それらの間にストライカ42の係合ロッド42aを噛み込む嵌入溝69が形成されている。後アーム68には爪係合部71が形成されている。
【0042】
ラッチプレート62は、嵌入溝69が切欠部64の開放方向に向く「開放位置」(図5(b)、図6(a)参照)と、嵌入溝69が切欠部64と略垂直方向に向く「ロック位置」(図6(c)参照)との間で回動する。ラッチ用軸65には、ラッチプレート62を開放位置に向けて(図5(b)の矢印73a参照)回動付勢するラッチ用コイルバネ73が設けられている。
【0043】
ロックプレート63は、ロック用軸66を基端とし、先端部に、ラッチ検知部22(図10を参照)の被検知部として機能する解除操作部74を有するような、縦長形状に形成されている。ロックプレート63の略中央部には、ラッチプレート62側へ突出し爪係合部71と係合する爪部75が形成されている。
【0044】
ロックプレート63は、爪部75が爪係合部71と係合しラッチプレート62をロック状態に保持する「爪嵌合位置」(図6(c)参照)と、爪部75が爪係合部71から離脱する「解除位置」(図5(b)、図6(a)参照)との間で揺動する。ロック用軸66には、ロックプレート63の爪部75をラッチプレート62に向けて(図5(b)の矢印76a参照)回動付勢するロック用コイルバネ76が設けられている。ラッチプレート62がロック位置以外にあるときは、爪部75がラッチプレート62の外周部を摺動するようになっている。ラッチケース61は、ステーション2の筐体開口部14に固定されている。
【0045】
以下、連結装置4のロック動作について、図6(a)~図6(c)、及び、図7を参照しながら説明する。図7(a)に示すように、カート3(外カート31)をステーション2に向けて押し込むと、ストライカ42の係合ロッド42aがラッチプレート62の嵌入溝69に入り込み、ラッチケース61の切欠部64にガイドされながら、ラッチ用コイルバネ73の付勢力に反してラッチプレート62をロック位置に向け回動させる(図6(a)参照)。
【0046】
カート3がさらに押し込まれると、係合ロッド42aがラッチプレート62の後アーム68を押してロック位置までラッチプレート62を回動させる(図6(b)参照)。爪係合部71が爪部75と対向するロック位置までラッチプレート62が回動すると、ロックプレート63がロック用コイルバネ76の付勢力により爪嵌合位置まで回動して、爪部75が爪係合部71に入り込む(図6(c)参照)。これにより、ラッチプレート62が開放位置へ回動するのを爪部75が規制し、ラッチプレート62をロック状態に保持するようになる。
【0047】
この結果、ストライカ42の係合ロッド42aが、ラッチケース61の切欠部64と、ラッチプレート62の前アーム67及び後アーム68(嵌入溝69)とで噛み込まれて強固に拘束される。こうしてストライカ42とラッチ部17とが噛み合うように係合することで、カート3(外カート31)がステーション2に接続保持される(図7(b)参照)。
【0048】
このように、作業者によるカート3の接続動作により、ストライカ42をラッチ部17にロックさせ、電源や信号の有無にかかわらずカート3をステーション2に物理的に接続するようになっている。このため、停電や制御の誤動作等があってもカート3がステーション2から離脱することはなく、カート3内の温度を維持して食品を適正に調温できる。
【0049】
次いで、連結装置4の解除動作について、図6(d)~図6(f)を参照しながら説明する。ステーション2の解除レバー18を操作すると、図13に示すように、ワイヤ21の作動を介して解除機構19の解除部材19aが、ロックプレート63の解除操作部74を押圧することで、ロックプレート63が解除位置まで回動される(図6(d)参照)。この結果、ロックプレート63の爪部75が後アーム68の爪係合部71から外れ、ラッチプレート62がロック状態から解除された状態となる。
【0050】
ラッチプレート62がラッチ用コイルバネ73の付勢力により開放位置まで回動すると、拘束されていたストライカ42の係合ロッド42aが、前方に向け開放された状態となる(図6(e)参照)。この結果、ストライカ42が前方に向け離脱可能となり、カート3(外カート31)をステーション2から離脱分離することができるようになる(図6(f)参照)。
【0051】
このように、解除機構19をワイヤ21を介して解除レバー18と連動させ、作業者による手動操作でラッチ部17を解除するようになっている。このため、電源や信号の有無にかかわらず、ラッチ部17が予期せぬ外因により解除されるのを未然に防止することができる。
【0052】
<ラッチ部17及びストライカ42の配設位置>
図8に示すように、ラッチ部17は、ステーション2の筐体開口部14から突出した接続枠部15の上部に固定されている。接続枠部15の側部や下部には、ラッチ部17を設けなくてもよい。ラッチ部17は、接続枠部15の上部平面の左右2箇所に固定され、ラッチプレート62が枠部パッキン16より上部に位置するようになっている。ラッチプレート62がストライカ42の係合ロッド42aと噛み合うように係合するロック状態において、ストライカ42の係合位置77(より具体的には、ロック状態における係合ロッド42aの位置)は、枠部パッキン16の表面位置78より、背面側に位置している。
【0053】
<ステーション2の設置>
ステーション2は、設置される床面5(図7参照)に対し、垂直または垂直より背面側に若干傾斜した状態で設置される。このため、同じ床面5を走行して接続するカート3の接続側開口部36と、ステーション2の枠部パッキン16とが、平行、または上部がやや拡がった状態で配置される。
【0054】
(A)ステーションが床面5に対し垂直に設置される場合(直立式設置)
カートガイド52にガイドされながら、カート3(外カート31)の接続側開口部36とステーション2の接続枠部15とが平行な状態のまま接近させる。外カート31を接続枠部15に押し込むと、枠部パッキン16を圧縮しながらストライカ42がラッチ部17に押し込まれ、ラッチプレート62がロック位置まで回動してストライカ42の係合ロッド42aを噛み込んだ状態でロックされる。この結果、ステーション2の接続枠部15の上部が、外カート31のストライカ42と接続された状態となる。
【0055】
枠部パッキン16の上部は、ラッチ部17により押圧力が維持され圧縮された状態のまま略密閉状態に保持される。一方、枠部パッキン16の下部には接続手段がなく、外カート31に枠部パッキン16の反発力が作用し、外カート31の下部が外側に向け傾斜するような作用が働く。
【0056】
しかし、外カート31の接続側開口部36の下部には、固定されたストライカ42を中心としてストライカ42の係合位置の下方に回り込もうとする力(自重モーメント)が作用する。このため、枠部パッキン16の下部も、枠部パッキン16の反発力と、外カート31の自重モーメントとにより、略密着状に接続されることとなる。したがって、カート3の接続側開口部36と接続枠部15とが、上部及び下部ともに略密着状に維持される。なお、外カート31に内カート32を格納した場合、外カート31の荷重に内カート32の荷重がさらに掛かる。このため、自重モーメントがより強く作用され、さらに密着度を高めることができる。
【0057】
(B)ステーション2が床面5に対し垂直より背面側に若干傾斜して設置される場合(傾斜式設置)
外カート31の接続側開口部36は垂直状であるが、枠部パッキン16の下部が上部より前方に位置するため、枠部パッキン16の下部の方が強く押圧され、枠部パッキン16の下部の密着度を高めることができる。
【0058】
さらに、ラッチ部17がロックされる位置が背面側に移動するため、外カート31の上部に位置するストライカ42が背面側に引き込まれるように固定され、ストライカ42の下方に回り込もうとする力(自重モーメント)がより強く作用する。このように、枠部パッキン16の下部の密着度が高められ、自重モーメントの作用が強められる。この結果、接続枠部15の下方にラッチ部がなくても、接続枠部15全体がより確実に略密着状に維持されるようになる。
【0059】
(C)ステーション2が床面5に対し垂直より前方側に若干傾斜して設置される場合
外カート31の接続側開口部36は垂直状であるが、枠部パッキン16の下部が上部より後方に位置するため、ストライカ42がラッチ部17に固定されるとき、枠部パッキン16の上部は押圧されるが、枠部パッキン16の下部は上部ほど押圧され得ない。このため、枠部パッキン16の下部の反発力も弱く、枠部パッキン16の下部の密着度が低くなり、上記(A)や上記(B)の設置法に比べ、カート3の内部の熱気や冷気が漏れてしまうおそれがある。さらに枠部パッキン16の反発力が十分に掛かる前にラッチ部17にストライカ42が固定されてしまうため、外カート31の下部が外側に向け傾斜するような作用は働き難く、上記(A)や上記(B)の設置法に比べ、外カート31の下部がストライカ42の係合位置の下方に回り込もうとする力(自重モーメント)も十分に作用しない。
【0060】
以下、図9を参照しながら、上記(A)及び(B)の場合における上述した自重モーメントの作用についてより詳細に説明する。図9において、点aは、カート3の重力Faが作用する重心であり、点bは、カート3が枠部パッキン16から受ける反発力の合力Fbの作用点であり、点cは、カート3が床面5から受ける反力Fcの作用点である。点dは連結装置4(=ラッチ部17+ストライカ42)によるステーション2とカート3との連結箇所である。なお、図9は、説明の便宜上、カート3の傾き角θの大きさを実際の使用時における傾き角θよりも強調するように記載している。
【0061】
図9に示すように、カート3には、重力Faによる自重モーメントMa(図9にて反時計回り)と、合力FbによるモーメントMb(図9にて時計回り)と、反力FcによるモーメントMc(図9にて時計回り)と、が少なくとも点d周りに作用する。
【0062】
カート3の傾き角θが大きいほど、自重モーメントMaが大きくなる。また、カート3の傾き角θが大きいほど、枠部パッキン16がカート3に押し潰される度合いが小さくなるため、反発力の合力Fbが小さくなり、合力FbによるモーメントMbも小さくなる。更に、カート3の傾き角θが大きいほど、床面5に掛かる荷重が減り、点dで固定されているカート3が浮き上がる向きに掛かる反力Fcが小さくなり、反力FcによるモーメントMcも小さくなる。即ち、カート3の傾き角θが大きいほど、自重モーメントMaが大きくなり、モーメントMbとモーメントMcとの和(Mb+Mc)が小さくなる。カート3の傾き角θが小さい場合は、この逆となる。
【0063】
その結果、図7(b)に示すようにカート3とステーション2とを接続すると、カート3は、自重モーメントMaと、モーメントMbとモーメントMcとの和と、が等しくなる位置(Ma=Mb+Mcとなる傾き角θ)まで、自重によってラッチ部17(点d)周りに自然に回動することになる。なお、図中のαは、傾き角θがゼロのときに線分adと重力Faの向きとがなす角度(直立時角度)であり、βは、傾き角θがゼロのときに線分cdと反力Fcの向きとがなす角度(直立時角度)である。
【0064】
ここで、通常、カート3に作用する重力Faは枠部パッキン16の反発力(合力Fb)よりも十分に大きいため、自重モーメントMaがモーメントMbよりも十分に大きくなる(Ma>>Mb)。また、通常、重力Faと反力Fcは実質的に同じ大きさであるが、直立時角度αがβよりも十分に大きいため(α>>β)、自重モーメントMaがモーメントMcよりも十分に大きくなる(Ma>>Mc)。
【0065】
よって、上記(A)の設置法の場合、通常、枠部パッキン16が十分に押圧されて傾き角θがゼロ近くになるまで、カート3が自重によって点d周りに回動する。その結果、ステーション2の接続枠部15とカート3の接続側開口部36とが十分に密着することになる。
【0066】
更に、上記(B)の設置法の場合、連結装置4(=ラッチ部17+ストライカ42)によるステーション2とカート3との連結箇所が、点dから点eに移動するため、上記(A)の場合と比べて、カート3の傾き角θが更に大きくなる。よって、上記(A)の場合と比べ、更に自重モーメントMaが大きくなる。その結果、ステーション2の接続枠部15とカート3の接続側開口部36とが更に強固に密着することになる。
【0067】
<接続判定手段>
次いで、図10図12を参照しながら、ステーション2の接続判定手段によるカートの接続判定について説明する。接続判定手段は、ラッチ検知部22とカート検知部23とにより接続判定を行う。
【0068】
ラッチ検知部22は、図10,11に示すように、ラッチプレート62の回転に連動するロックプレート63(特に、解除操作部74)の揺動動作を検知するようになっており、左右のラッチ部17それぞれに設置されている。
【0069】
ラッチ検知部22は、非接触型の近接スイッチを用いている。近接スイッチの検知領域Y,Zは、ロックプレート63(解除操作部74)の揺動軌跡を横切るように配置されている。ラッチプレート62が開放位置にあるとき、又はロック位置にあるとき、ロックプレート63(解除操作部74)は、ラッチプレート62側に倒れた状態であるため、検知領域Y,Zから外れるようになっている。
【0070】
ストライカ42の押圧によりラッチプレート62が回動し始めるとロックプレート63(解除操作部74)が検知領域Y,Zに侵入し検知されるため、ストライカ42はラッチ部17の内部に侵入し且つロックされる前の状態であることが検知されることとなる。
【0071】
例えば、ストライカ42がラッチ部17の内部に侵入する前、又は、ラッチ部17に完全にロックされた状態では、検知領域Y,Zにロックプレート63(解除操作部74)がないことで、ラッチ検知部22は「ON」となり、ストライカ42がラッチ部17の内部に侵入している途中では、ロックプレート63(解除操作部74)が揺動して検知領域Y,Zに入ることで、ラッチ検知部22は「OFF」になる。
【0072】
カート検知部23は、ブラケットを介してステーション2の接続枠部15に固定されている。カート検知部23は、非接触型の近接スイッチを用いている。近接スイッチの検知領域Xは、接続枠部15から前方に向けて配置されており、近接スイッチの検知領域Xにカート3の被検知部43が侵入すると、カート検知部23がカート3を検知できるようになっている。このようにして、カート3が所定距離内に接近していることが検知される。
【0073】
例えば、検知領域Xにカート3の被検知部43がないとき、カート検知部23は「OFF」になり、検知領域Xに被検知部43があるとき、カート検知部23は[ON]になる。そして、接続判定手段は、カート検知部23が「ON」になり、且つ、2つのラッチ検知部22が共に「ON」になったとき、カート3がステーション2に完全に接続されたと判定するようになっている。
【0074】
本実施形態では、左右のラッチ部17の中間部にカート検知部23が一つ設置されている。但し、検知したい場所にカート検知部23を複数設置してもよい。例えば、上下左右の4箇所にカート検知部23を設置すれば、接続状況を正確に検知できる。しかし、この場合、検知は正確になるが、検知領域の設定や設置状況の変化による調整が煩雑となり、調整が困難となる場合がある。
【0075】
カート検知部23の検知領域Xは、ラッチ部17にストライカ42が侵入したときカート3を検知するように調整されている。つまり、当初、ラッチ検知部22は「ON」でありカート検知部23は「OFF」であるが、カート3が接近してカート検知部23が「ON」となっても、ラッチ部17にストライカ42が侵入することによりラッチ検知部22が「OFF」となっているため、接続完了する前に総ての検知部が「ON」となるのが回避され、誤判定を未然に防ぐことができる。このように検知領域を調整することでカート3の接続を正確に判定できるようになる。
【0076】
具体的には、接続判定手段は、図12に示すように、カート検知部23および2つのラッチ検知部22の計3個の総てが「ON」になったとき(ステップS1,S2,S3で「YES」)、カート3がステーション2に接続されたと判定する(ステップS4)。
【0077】
カート3が完全に離間しているときは、カート検知部23の検知領域Xにカート3の被検知部43が存在せず、カート検知部23は「OFF」であるため(ステップS1で「NO」)、カート3がステーション2から分離している(未接続)と判定される(ステップS5)。
【0078】
カート3がステーション2に接近したときは、カート3の被検知部43が検知領域Xに侵入してカート検知部23が「ON」になるが(ステップS1で「YES」)、ストライカ42がラッチ部17に侵入してラッチプレート62を回すため、ロックプレート63(解除操作部74)が揺動してラッチ検知部22が「OFF」になり(ステップS2,S3で「NO」)、未接続と判定される(ステップS5)。
【0079】
さらにカート3がステーション2に向けて押し込まれ、カート3がステーション2に完全に接続したとき、ロックプレート63(解除操作部74)がラッチプレート62側に倒れてロック状態になることで、ラッチ検知部22が再び「ON」になり(ステップS2,S3で「YES」)、カート検知部23も「ON」に維持されているため(ステップS1で「YES」)、カート3が接続されたと判定される(ステップS4)。
【0080】
このような判定方法であれば、カート3がステーション2に接近していても、ストライカ42が完全にロックされていない場合、ラッチ検知部22が「OFF」となることで、カート3が未接続と判定されるので、ステーション2の運転を誤って開始してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0081】
<カート3が傾かずに侵入したとき>
以下、具体例として、図10に示すように、カート3がステーション2に対して傾かない状態でステーション2に向けて押し込まれる場合における、ラッチ検知部22及びカート検知部23の検知結果の推移について説明する。
【0082】
まず、図10(a)に示すように、両側のラッチ部17の双方にストライカ42が押し込まれていない状態では、カート検知部23は未だカート3が検知されないことにより「OFF」であり(ステップS1で「NO」)、未接続と判定される(ステップS5)。なお、この状態では、両側のラッチ検知部22は共に「ON」になっている。
【0083】
この状態から、カート3を押し込むと、図10(b)に示すように、カート3がステーション2に接近し、カート3の被検知部43が検知領域Xに侵入してカート検知部23が「ON」になるが(ステップS1で「YES」)、ストライカ42がラッチ部17に侵入してラッチプレート62を回すため、ロックプレート63(解除操作部74)が揺動してラッチ検知部22が「OFF」になり(ステップS2,S3で「NO」)、未接続と判定される(ステップS5)。
【0084】
この状態から、カート3をさらに押し込み、両側のラッチ部17がロックされると、図10(c)に示すように、カート検知部23が「ON」に維持されたまま(ステップS1で「YES」)、両側のラッチ検知部22が「ON」になる(ステップS2,S3で「YES」)。その結果、カート3が接続されたと判定される(ステップS4)。
【0085】
<カート3が斜めに傾いて侵入したとき>
次いで、他の具体例として、図11に示すように、カート3が斜めに傾いた状態でステーション2に向けて押し込まれる場合におけるラッチ検知部22及びカート検知部23の検知結果の推移について説明する。
【0086】
例えば、図11(a)に示すように、右側のラッチ部17が先に接続されると、右側のラッチ部17のみロックされ、左側のラッチ部17にはストライカ42が押し込まれていない斜めに接続された状態となる。このとき、図11(a)に示すように、カート検知部23は未だカート3が検知されないことにより「OFF」であり(ステップS1で「NO」)、未接続と判定される(ステップS5)。なお、この状態では、両側のラッチ検知部22は共に「ON」になっている。
【0087】
この状態から、カート3の左側を押し込むと、図11(b)に示すように、カート3がさらに接近し、カート検知部が「ON」になる(ステップS1で「YES」)。しかし、左側のストライカ42が左側のラッチ部17に入り込み、左側のラッチ検知部22が「OFF」になるため(ステップS2で「NO」)、引き続き未接続と判定される(ステップS5)。
【0088】
この状態から、カート3をさらに押し込み、左側のラッチ部17もロックされると、図11(c)に示すように、カート検知部23が「ON」に維持されたまま(ステップS1で「YES」)、左側のラッチ検知部22も「ON」になる(ステップS2で「YES」)。また、右側のラッチ検知部22は「ON」のままである(ステップS3で「Yes」)。よって、総ての検知部が「ON」になるため(ステップS1,S2,S3で「YES」)、カート3が接続されたと判定される(ステップS4)。
【0089】
上記のように、検知領域を調整されたカート検知部23を左右のラッチ部17の中央部に一箇所設置すれば、カート3が左右どちら側から接近した場合であっても、同様に判定することができる。
【0090】
カート検知部23が中央にあると、左側のラッチ部17との距離と右側のラッチ部17との距離が同じになるため、カート3が左側から先に接続する場合でも同様な作用でカート3の接続状態が判定できる。したがって、どの方向からカート3が接続されても、少ない個数の検知部で、カート3の接続判定を正確に行うことができる。
【0091】
<作用・効果>
以上、本発明の実施形態に係る食品調温システム1によれば、食品を収容する格納室33を有する移動可能なカート3と、カート3の格納室33に食品の調温のための空気を供給するステーション2とが、ラッチ機構を用いた連結装置4により、機械的に接続または分離される。本構成の食品調温システム1は、電気的な接続または分離を行う従来のシステムとは異なり、ラッチ機構によって機械的に接続または分離を行う。よって、停電などによる意図しない接続の解除を防止できる。したがって、本構成の食品調温システム1は、カート3とステーション2との意図しない分離を抑制可能である。
【0092】
また、従来の食品調温システムでは、通常、電磁石を用いた連結装置を適正に作動させるためにカートとステーションとの精密な位置合わせが求められる。これに対し、上記構成の食品調温システム1は、ラッチ機構を用いて機械的にカート3とステーション2とを連結するため、従来の食品調温システムに比べ、カート3とステーション2との位置誤差の許容範囲が広い。よって、上記構成の食品調温システム1は、従来の食品調温システムに比べ、実際の使用時にカート3とステーション2とを着脱する際の作業性に優れる。
【0093】
更に、食品調温システム1によれば、連結装置4は、ステーション2に設けられるラッチ部17と、カート3に設けられるストライカ42と、カート3とステーション2との接続を解除する解除部(解除レバー18、解除機構19、及びワイヤ21)と、を有する。そのため、カート3及びステーション2の一方を他方に向けて近付けることで、両者を連結できる。よって、本構成の食品調温システム1は、連結する際の作業性に優れる。
【0094】
更に、食品調温システム1によれば、ステーション2の接続枠部15の下部よりも上部がカート3に対して離れる位置にあるような設置(傾斜式設置)、又は、ステーション2の接続枠部15の下部よりも上部がカート3に対して同じ位置にあるような設置(直立式設置)によって床面5に置かれたステーション2に対し、カート3が接続される。このとき、ステーション2の接続枠部15とカート3の接続側開口部36との当接箇所の上方に設けた連結装置4で、カート3とステーション2とが接続される。ここで、連結箇所よりも床面5に近い下方にカート3の重心が位置することになるため、連結箇所を中心にカート3がステーション2に向けて近付く向きのモーメント(自重モーメント)がカート3に生じることになる。その結果、当接箇所の上方にてカート3とステーション2とを連結すれば、カート3が自重によってステーション2に近付く向きに移動する。よって、当接箇所の上方以外の箇所に連結装置を設けなくても、カート3とステーション2とを適正に接続できることになる。
【0095】
更に、食品調温システム1によれば、カート3とステーション2との接続時、カート3の自重を利用し、ステーション2の接続枠部15の周縁に設けられた枠部パッキン16に対してカート3の接続側開口部36の周縁を押圧させることができる。これにより、ステーション2からカート3の格納室33に調温用の空気を供給する際、空気の漏れ等を抑制し、食品を適正に調温できる。
【0096】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0097】
上記実施形態では、図13に示すように、ラッチ部17と解除レバー18がステーション2に設けられ、ストライカ42がカート3に設けられ、ステーション2のラッチ部17がカート3のストライカ42を噛合保持してカート3を固定するように構成されている。このように、構造や機構が複雑なラッチ部17を、常に静置されているステーション2に装着することで、カート3の振動による不具合を防ぎ、カート3の重量増加、構造の複雑化を回避することができる。加えて、ラッチ部17と解除レバー18とを接続するワイヤ21の張力なども長く適正値に持続させることができる。
【0098】
これに対し、図14に示すように、ストライカ42がステーション2に設けられ、ラッチ部17と解除レバー18がカート3に設けられてもよい。図14に示す例では、カート3の接続面にラッチ部17が設けられ、カート3の当該接続面と反対側に解除レバー18が設けられ、両者がワイヤ21で連動されるようになっている。このように、解除レバー18、ワイヤ21、及びラッチ部17がカート3内で構成されるため、メンテナンスが容易となる。更に、解除レバー18が作業者側に取り付けられるので、作業者はステーション2まで体と腕を伸ばして操作することがなく、楽な姿勢でカート3の離脱操作ができ、作業性が向上する。
【0099】
更には、図15に示すように、図13と同様、ラッチ部17がステーション2に設けられ、且つ、ストライカ42がカート3に設けられる一方で、解除レバー18がカート3に設けられていてもよい。図15に示す例では、ステーション2側のワイヤ21の端部及びカート3側のワイヤ21の端部同士がワイヤ連結部21aにより連結可能となっている。カート3をステーション2に接続したとき、カート3側のワイヤ21の操作がステーション2側のラッチ部17まで伝達されるようになっている。これにより、カート3の振動によるラッチ部17の不具合を防ぐとともに、離脱操作の作業性を良好に保つことができる。
【0100】
更に、上記実施形態では、ワイヤ21の操作によりラッチ部17を解除するようになっている。これに対し、ラッチ部17のロックプレート63を操作するアクチュエータを設け、制御部が当該アクチュエータに信号を出し、当該アクチュエータを伸長させてラッチ部17のロックプレート63を解除するようにしてもよい。これにより、作業者が操作部のボタンを押す、またはタイマーのタイムアップ等によりラッチ部17を解除でき、人手を介さず自動的にラッチ部17を解除することができる。
【0101】
ここで、上述した本発明に係る食品調温システム1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
食品を収容する内部空間(33)を有する移動可能なカート(3)と、
前記内部空間(33)に前記食品の調温のための空気を供給するステーション(2)と、
ラッチ機構(17)を用いて前記カート(3)と前記ステーション(2)との接続又は分離を行う連結装置(4)と、を備える、
食品調温システム(1)。
[2]
上記[1]に記載の食品調温システム(1)において、
前記連結装置(4)は、
前記カート(3)及び前記ステーション(2)の一方に設けられるストライカ(42)と、
前記カート(3)及び前記ステーション(2)の他方に設けられ、前記ストライカ(42)と係合することによって前記ストライカ(42)を保持するラッチ部(17)と、
前記ラッチ部(17)による前記ストライカ(42)との係合を解除する解除部(18,19,21)と、を有する、
食品調温システム(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の食品調温システム(1)において、
前記カート(3)は、
前記内部空間(33)に連通する開口部(36)を有し、
前記ステーション(2)は、
前記連結装置(4)による接続時に前記開口部(36)の周縁に当接する環状の接続枠部(15)を有し、前記接続枠部(15)の下部よりも上部が前記カート(3)に対して離れる位置にあるように傾いた傾斜式設置又は前記下部と前記上部とが前記カート(3)に対して同じ位置にあるように直立した直立式設置が可能であるように構成され、
前記連結装置(4)は、
前記開口部(36)の周縁と前記接続枠部(15)との当接箇所の上方に設けられる、
食品調温システム(1)。
[4]
上記[3]に記載の食品調温システム(1)において、
前記ステーション(2)は、
前記当接箇所を封止するためのパッキン(16)を前記接続枠部(15)の周縁に有し、
前記連結装置(4)は、
前記パッキン(16)の上方に設けられ、
前記カート(3)は、
前記連結装置(4)による接続時に当該カート(3)の自重によって前記開口部(36)の周縁を前記パッキン(16)に押圧させた状態にて保持される、
食品調温システム(1)。
【符号の説明】
【0102】
1 食品調温システム
2 ステーション
3 カート
4 連結装置
5 床面
15 接続枠部
16 枠部パッキン(パッキン)
17 ラッチ部
18 解除レバー(解除部)
19 解除機構(解除部)
21 ワイヤ(解除部)
33 格納室(内部空間)
36 接続側開口部(開口部)
42 ストライカ
42a 係合ロッド
図1
図2
図3
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