(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】二重構造容器の成形に使用されるスタックプリフォーム
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20230711BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2019113834
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】葛西 知宏
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-046555(JP,A)
【文献】特開2019-081604(JP,A)
【文献】特開2018-134813(JP,A)
【文献】特開2016-210181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒容器を成形するための外筒プリフォームと、内袋容器を成形するための内袋プリフォームとから構成され、該外筒プリフォーム内に該内袋プリフォームが挿入されているスタックプリフォームにおいて、
前記外筒プリフォーム及び内袋プリフォームは、いずれも全体として試験管形状を有しており且つ非延伸部である首部と、該首部に連なっており且つ延伸成形部である管状部とからなり、
前記内袋プリフォームの管状部の上部は、上方から下方に行くにしたがって小径となっているテーパー部となっており、該テーパー部は、多面体形状の外面を有していることを特徴とするスタックプリフォーム。
【請求項2】
前記テーパー部の上端部に外面が多角形状の多面体基部が形成されており、この多面体基部によって、前記多面体状外面が形成されている
請求項1に記載のスタックプリフォーム。
【請求項3】
前記多面体基部の下側から下方に延びているリブが点対称的に複数形成されており、該多面体基部とリブとによって、前記多面体状外面が形成されている
請求項2に記載のスタックプリフォーム。
【請求項4】
前記リブは、下方に行くに従い、高さ及び幅が漸次小さくなるような形態を有している
請求項3に記載のスタックプリフォーム。
【請求項5】
前記リブは、三角形状の平断面形状を有しており、その頂点を繋ぐ稜線が、前記多面体基部が有する角部に連なっている
請求項4に記載のスタックプリフォーム。
【請求項6】
前記内袋プリフォームの首部には、上端部に外方に突出した小フランジが形成されており、該小フランジから下方に間隔を置いて、該小フランジよりも大径の嵌合固定用リング状突起が形成されている
請求項1~5の何れかに記載のスタックプリフォーム。
【請求項7】
前記内袋プリフォームの首部は、前記小フランジと嵌合固定用リング状突起との間の外面も多面体形状を有している
請求項6に記載のスタックプリフォーム。
【請求項8】
前記外筒プリフォームの首部の内面には、空気路形成用溝が形成されている
請求項1~7の何れかに記載のスタックプリフォーム。
【請求項9】
外筒容器を成形するための外筒プリフォームと、内袋容器を成形するための内袋プリフォームとから構成され、該外筒プリフォーム内に該内袋プリフォームが挿入されている
請求項1に記載のスタックプリフォームを用意し、
前記スタックプリフォームにおける外筒プリフォームの外面側と内袋プリフォームの内部側からとの同時加熱により、該外筒プリフォーム及び内袋プリフォームの延伸成形部分をブロー成形温度に加熱し、
次いで、前記スタックプリフォームをブロー成形金型内に配置して、ブロー成形を行うことを特徴とする二重構造容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒容器と、該外筒容器内に挿入されて保持された内袋容器とからなる二重構造容器の成形に使用されるスタックプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋容器と外筒容器とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばエアレスボトルとして、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている。かかるエアレスボトルは、逆止弁付のキャップと組み合わせで使用されるものであり、外筒容器であるボトルの胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出され、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外筒容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
上記のような空気の流通を確保するために、一般に、外筒容器の首部の壁を貫通する導入口が設けられており、さらに、外筒容器の首部に装着されるキャップの筒状側壁(スカート部)には、その内面に、上下に揺動する弁体が設けられ、この弁体により、上記導入口を通して空気の流通が制御されるように構成される(例えば、特許文献1参照)。
従って、上記のような二重構造容器では、後加工により、空気導入口を形成する必要があり、生産性が低いという問題がある。
【0004】
また、二重構造容器に装着されるキャップは、一般に、螺子係合により装着されるが(例えば、特許文献2)、このような方式では、外筒容器の首部(或いは内筒容器の首部)の外面に、キャップを装着するための螺条が必要となり、その分、外筒容器や内袋容器のハイトが高くなってしまい、結果的に樹脂量が多く、また、容器重量も重くなってしまう。
【0005】
従って、外筒容器の首部に空気導入口を形成することなく、極めてシンプルな形態で、外筒容器と内袋容器との間の空間に空気の出し入れを行うことが可能な二重構造容器が望まれており、さらには、打栓嵌合によりキャップを装着するのに適した形態の二重構造容器も求められている。
【0006】
上記のような要求を満足する二重構造容器として、本出願人は、先に、
外筒容器と外筒容器の内部に収容された内袋容器とから成る二重構造容器において、
前記外筒容器は、外筒首部と、該外筒首部に連なり且つ延伸成形された胴部とを有しており、
前記内袋容器は、内袋首部と、該内袋首部に連なり且つ延伸成形された袋状部とを有しており、
前記内袋首部の外面には、下方部分に、前記外筒首部の内面との嵌合固定用リング状突起が設けられており、該リング状突起は、空気路形成用切欠きを有していると共に、該内袋首部の上端には、該リング状突起よりも小径の小フランジが水平方向外方に延びており、
前記内袋容器が前記外筒容器に収容されている状態において、該内袋首部のリング状突起が、前記外筒首部の内面に嵌合固定されていることを特徴とする二重構造容器、
を提案した(特願2019-54865号)。即ち、この二重構造容器は、外筒容器用プリフォームに内袋容器用プリフォームを嵌合固定することによりスタックプリフォームを得て、このスタックプリフォームをブロー型内に配置し、内袋容器用プリフォーム内にブロー流体を供給してのブロー成形により製造される。
【0007】
本出願人が提案した上記の二重構造容器は、外筒容器の首部に空気導入口を形成することなく、極めてシンプルな形態で外筒容器と内袋容器との間の空間(作用空間)に空気の出し入れを行うことが可能となるというものである。
【0008】
本発明者等は、上記の二重構造容器と比較しても、作用空間内への空気の出し入れがより速やかに行われるように、内袋容器の袋状部が外筒容器の内面から速やかに離れるという身離れ性が向上した二重構造容器を製造し得るスタックプリフォームについての検討を推し進めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-2198号公報
【文献】特開2017-222141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、内袋容器の袋状部が外筒容器の内面から速やかに離れるという身離れ性に優れた二重構造容器を成形することが可能なスタックプリフォームを提供することにある。
本発明の他の目的は、スタックプリフォームを用いてのブロー成形により、効率よく二重構造容器を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、外筒容器を成形するための外筒プリフォームと、内袋容器を成形するための内袋プリフォームとから構成され、該外筒プリフォーム内に該内袋プリフォームが挿入されているスタックプリフォームにおいて、
前記外筒プリフォーム及び内袋プリフォームは、いずれも全体として試験管形状を有しており且つ非延伸部である首部と、該首部に連なっており且つ延伸成形部である管状部とからなり、
前記内袋プリフォームの管状部の上部は、上方から下方に行くにしたがって小径となっているテーパー部となっており、該テーパー部は、多面体形状の外面を有していることを特徴とするスタックプリフォームが提供される。
【0012】
本発明のスタックプリフォームにおいては、以下の態様が好適に採用される。
(1)前記テーパー部の上端部に外面が多角形状の多面体基部が形成されており、この多面体基部によって、前記多面体状外面が形成されていること。
(2)前記多面体基部の下側から下方に延びているリブが点対称的に複数形成されており、該多面体基部とリブとによって、前記多面体状外面が形成されていること。
(3)前記リブは、下方に行くに従い、高さ及び幅が漸次小さくなるような形態を有していること。
(4)前記リブは、三角形状の平断面形状を有しており、その頂点を繋ぐ稜線が、前記多面体基部が有する角部に連なっていること。
(5)前記内袋プリフォームの首部には、上端部に外方に突出した小フランジが形成されており、該小フランジから下方に間隔を置いて、該小フランジよりも大径の嵌合固定用リング状突起が形成されていること。
(6)前記内袋プリフォームの首部は、前記小フランジと嵌合固定用リング状突起との間の外面も多面体形状を有していること。
(7)前記外筒プリフォームの首部の内面には、空気路形成用溝が形成されていること。
【0013】
本発明によれば、また、外筒容器を成形するための外筒プリフォームと、内袋容器を成形するための内袋プリフォームとから構成され、該外筒プリフォーム内に該内袋プリフォームが挿入されている前述した形態を有するスタックプリフォームを用意し、
前記スタックプリフォームにおける外筒プリフォームの外面側と内袋プリフォームの内部側からとの同時加熱により、該外筒プリフォーム及び内袋プリフォームの延伸成形部分をブロー成形温度に加熱し、
次いで、前記スタックプリフォームをブロー成形金型内に配置して、ブロー成形を行うことを特徴とする二重構造容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスタックプリフォームは、外筒容器を成形するための外筒プリフォームと、内袋容器を成形するための内袋プリフォームとから構成され、該外筒プリフォーム内に該内袋プリフォームが挿入されているという基本構造を有するものであり、外筒プリフォーム及び内袋プリフォームは、いずれも全体として試験管形状を有しており且つ非延伸部である首部と、該首部に連なっており且つ延伸成形部である管状部とからなっている。即ち、このようなスタックプリフォームは、ブロー成形型内に配置され、内袋プリフォーム及び外筒プリフォームの延伸成形部である管状部をブロー成形温度(樹脂のガラス転移点以上融点未満)に加熱した状態で、外筒プリフォーム内に挿入されている内袋プリフォーム内にブロー流体を供給し、内袋プリフォームの管状部を膨張させ、この膨張によって外袋プリフォームの管状部も膨張し、ブロー成形型によって容器形状に賦形されることとなる。従って、成形直後の二重構造容器では、内袋プリフォームの袋状部は、外筒容器の内面に密着した状態にある。
【0015】
しかるに、本発明のスタックプリフォームにおいては、内袋プリフォームの延伸成形部である管状部の上部が多面体形状の外面を有している。このため、ブロー成形により、この管状部が膨張すると、外筒容器の肩部或いはその近傍に対応する部分には、管状部の上部に形成されている多面体形状によって肉厚分布が形成されることとなる。即ち、この多面体形状のコーナー部分が厚肉となり、コーナー部の間の部分が薄肉となるわけである。従って、外筒容器の肩部或いはその近傍に密着している内袋容器の袋状部は、このような肉厚分布によって、外筒容器の肩部或いはその近傍内面から離れやすい状態となっている。例えば、内容物を排出するために、外筒容器の胴部を押圧した時、内袋容器の袋状部の肩部或いはその近傍に密着している部分に加わる応力が不均等となり、この結果、この肩部或いはその近傍に密着している部分において、一部が肩部或いはその近傍から離れ、空隙が形成される。このような空隙を通して、外筒容器の胴部内面と内袋容器の袋状部外面との間に空気が流入し、外容器の胴部内面と内袋容器の袋状部外面との間の作用空間Zと外部とを連通する空気路を容易に確保することが可能となる。
【0016】
このように、本発明のスタックプリフォームにより形成される二重構造容器は、内袋容器の袋状部(特に外容器の肩部或いはその近傍に密着している部分)の身離れ性が高められているため、作用空間と外部との間の空気路を容易に確保することができ、内容物の排出を速やかに行うことができる。
【0017】
また、本発明では、スタックプリフォームを用いてのブロー成形により二重構造容器を製造するに際して、スタックプリフォームにおける外筒プリフォームの外面側と内袋プリフォームの内部側からとの同時加熱により、該外筒プリフォーム及び内袋プリフォームの延伸成形部分をブロー成形温度に加熱するという手段が採用される。
即ち、二重構造を有していない通常の形態の容器をブロー成形により製造する場合には、プリフォームの外面側からヒーター等を用いての加熱(外部加熱)によりプリフォームをブロー成形温度に加熱してブロー成形が行われるが、スタックプリフォームを用いてブロー成形する場合、このような外部加熱では、成形不良を生じ易い。外筒プリフォームの内部に収容されている内袋プリフォームをブロー成形温度に加熱しなければならず、しかも、この内袋プリフォームと外筒プリフォームとの間には空隙が存在している。このため、必然的に加熱時間が長くなり且つ加熱ムラを生じ易いからである。しかるに、本発明では、外部からの加熱と同時に、内袋プリフォームの内部からも加熱するため、加熱時間を短縮し、且つ加熱ムラを有効に防止し、効率よく、二重構造容器を製造することができる。
特に、外筒プリフォームの内部に収容されている内袋プリフォームの延伸成形部が多面体形状の外面を有している場合には、加熱ムラによる成形不良が生じ易いが、上記のように外部加熱と同時に内部加熱を行う場合には、このような加熱ムラによる成形不良を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】スタックプリフォームにより成形される二重構造容器の機能を説明するための概略図。
【
図2】本発明のスタックプリフォームにより形成される二重構造容器における首部部分の好適な形態をキャップの一部と共に拡大して示す側断面図。
【
図3】
図2の二重構造容器における外筒首部の概略斜視図。
【
図4】
図2の二重構造容器における内袋首部の概略斜視図。
【
図5】外筒容器内に内袋容器が嵌合固定されている状態での首部の部分を示す斜視図。
【
図6】本発明のスタックプリフォームを構成する外筒プリフォームを示す図。
【
図7】本発明のスタックプリフォームを構成する内袋プリフォームを示す図。
【
図8】
図6の外筒プリフォームと
図7の内袋プリフォームとから形成される本発明のスタックプリフォームを示す図。
【
図9】
図7に示されている内袋プリフォームにおいて、
図7(c)でのQ-Q面での断面図。
【
図10】
図8のスタックプリフォームから成形された二重構造容器にキャップが装着されている状態の首部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、スタックプリフォームを用いて成形される二重構造容器の機能について、簡単に説明しておく。
このような二重構造容器の概略構造を示す
図1を参照して、全体として1で示す二重構造容器は、ボトル形状の外筒容器3と、醤油等の内容液が収容される内袋容器5とからなり、
図1から理解されるように、外筒容器3の内部に、内袋容器5が挿入されて保持されている。
【0020】
外筒容器3は、首部(外筒首部)11と、外筒首部11に連なっており且つ下方に向かって拡径している肩部13と、肩部13に連なっている胴部15を有しており、胴部15の下端は、底部17により閉じられている。このような外筒首部11の外面には、サポートリング19が形成されており、このサポートリング19よりも上方部分にキャップが嵌合固定される。
また、内袋容器5は、首部(内袋首部)21と、この内袋首部21に連なり膨らんだ形態の袋状部23とからなっている。
【0021】
上記のような外筒容器3及び内袋容器5は、これに限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどに代表されるブロー成形可能な熱可塑性樹脂を用いて成形される。
【0022】
上記のような二重構造容器1において、外筒容器11の胴部15は、通常、若干凹んだ形態を有しており、この凹んだ部分(スクイズ領域)を押圧(スクイズ)することにより、胴部15が大きく凹み、これに伴って、内袋容器5の袋状部23が押圧され、これにより、この袋状部23に収容されている内容液が排出される。内容液が排出されると、内容液の減量に応じて袋状部23が収縮するが、外筒容器3の胴部15は、その弾性により原形に復帰し、両者の間に空隙(作用空間Z)が形成されることとなる。
【0023】
ところで、上記のような排出操作を繰り返し行っていくとき、内容液の排出量に応じて、袋状部23は、より大きく収縮していく。従って、胴部15のスクイズに際して、前述した作用空間Z内の空気が排出されてしまうと、収縮した袋状部23内の内容液を排出するためには、外筒容器3の胴部15をより強く押圧して大きく変形させなければならなくなり、最終的には、内容物の排出を行うことができなくなってしまう。従って、胴部15を押圧して内容液を排出する際には、作用空間Z内の空気が排出されず、作用空間Zに空気を存在させ、空気層を介して袋状部23が押圧されることが必要である。
また、内容液が排出されると、内容液が排出された分だけ袋状部23の容積が減り、一方、外筒容器3の胴部15は凹んだ状態から復帰するため、作用空間Z内は負圧の状態となる。従って、内容液の排出後には、作用空間Z内に空気を導入し、作用空間Z内を常圧に戻す必要がある。負圧のままのときは、胴部15の原形復帰がスムーズに行われないばかりか、次に、胴部15を押圧して内容液の排出を行う場合、胴部15を大きく凹ませなければならず、内容液の排出を効果的に行うことが困難となってしまうからである。
【0024】
従って、上記の作用空間Zからの空気の排出が防止され、また、この作用空間Zには、適宜空気が導入されることが求められる。即ち、この作用空間Z内への空気の出し入れのための空気路を形成することが必要となる。
【0025】
尚、上記の構造の二重構造容器1は、内袋を形成するためのプリフォーム(内袋プリフォーム)が外筒を形成するためのプリフォーム(外筒プリフォーム)の内部に挿入保持されているスタックプリフォームを用いての延伸ブロー成形により製造されるものであり、外筒容器3では、肩部13、胴部15及び底部17がブロー延伸により薄肉化された部分であり、内袋容器5では、袋状部23がブロー延伸により薄肉化された部分である。即ち、このような二重構造容器において、外筒首部11及び内袋首部21は、ブロー成形されない非延伸部となっており、成形前と同様の形態を有しており、内袋首部21は、外筒首部11内に嵌合固定されている。また、ブロー成形直後の状態では、内袋容器5の袋状部23は、外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17に密着した状態にあり、上記の作用空間Zは、閉じられた状態にある。
【0026】
前述した
図1を参考にして、空気路を確保するために好適な二重構造容器の首部の形態を示す
図2~5を参照されたい。この形態において、外筒容器3の首部(外筒首部)11の上端部分の外面には、アンダーカット31が形成されており、このアンダーカット31との係合を利用してキャップ100が装着され、安定に保持される。また、外筒首部11の内面から上端面及び外面に沿って、作用空間Zから外部にかけての空気路X(
図2参照)が形成されるように、このアンダーカット31は一部切り欠かれており、空気路形成用スリット31aが形成されている。
図3から理解されるように、このスリット31aは、空気が流通し易いように、二股の逆V字形状を有している。このようなスリット31aの数・および形状は特に制限されないが、キャップ100との係合力が損なわれない程度の範囲で複数箇所に設けることが、作用空間Zへの空気の出し入れをスムーズに行う上で好適である。
【0027】
外筒首部11の内面の上端には、内方に向かって傾斜した傾斜面33が形成されている。この傾斜面33が、以下に述べるキャップ100が有する空気弁Aとの係合面(接触面)となっており、この空気弁Aの接触及び離脱を利用して、作用空間Z内への空気の導入を行い、さらには、作用空間Z内からの空気の排出を阻止する弁機能を確保することができる。また、
図3に示されているように、上記の傾斜面33には、圧調整用凹部34が設けられており、この圧調整用凹部34により、キャップ100が有する空気弁Aの機能が補強されるようになっている。このような圧調整用凹部34の機能については、後述する。
【0028】
また、外筒首部11の内面において、上記傾斜面33から下方の部分はストレートな直胴面Dとなっており、
図2及び
図3に示されているように、この直胴面Dの下端に、内方に突出した段差面35が形成されている。この段差面35は、内袋首部21の外筒首部11内での位置を安定にするために形成されているものである。
【0029】
さらに、上記の外筒首部11の内面の直胴部Dには、上記の傾斜面33の下端部から、上記段差面35を跨ぐように、軸方向に直線状に延びている空気路形成用溝37が形成されている。
図3に示されているように、このような溝37は、一定間隔で多数形成されており、このような溝37を設けることにより、前述した空気路Xを確保することができる。
尚、上記の直胴面Dは、ストレートな直胴形状で示されているが、実際は、成形時の型抜きのために若干傾斜したテーパー面となっている。
【0030】
一方、上記の外筒首部11内に位置している内袋容器5の首部(内袋首部21)の外面上端には、
図2及び
図4に示されているように、外方に突出した小フランジ41が形成されている。この小フランジ41は、ブロー成形前の段階で、内袋用のプリフォームを外筒用プリフォーム内に挿入する際に、所定の治具による把持等を行うために形成されているものである。さらに、この小フランジ41には、凹部41aが複数箇所に形成されている。即ち、このような凹部41aを形成することにより、後述する内袋用プリフォームを外筒プリフォームに嵌合固定してスタックプリフォームの組み立てなどを行うためのホルダの装着や取り外しを容易に行うことができるからである。例えば、上記の凹部41aに対応する切欠きを設けておき、このホルダ内に内袋用プリフォームの首部を挿入し、該ホルダを90度回転させれば、内袋プリフォームは、該ホルダに安定に保持され、その搬送、打栓による外筒プリフォーム内への嵌合固定などによりスタックプリフォームを安定に保持することができ、さらにはブロー成形も行うことができ、操作終了後は、該ホルダ90度回転することにより、ホルダを速やかに取り外すことが可能となる。
【0031】
さらに、内袋首部21の外面には、上記小フランジ41の下方に、嵌合固定用のリング状突起43が設けられている。即ち、このリング状突起43は円板形状を有しており、その外径は、外筒首部11の内径に匹敵し、内袋首部21を外筒首部11内に挿入した時、このリング状突起43の外面が外筒首部11の内面に密着し、ガタツキなく、安定に嵌合保持される。また、このとき、リング状突起43が、外筒首部11に形成されている段差面35と係合することにより、内袋首部21が深く挿入されないように、位置決めされることとなる。
【0032】
尚、上記の態様では、外筒首部11の内面に形成されている空気路形成用溝37によって空気路Xが確保されており、従って、リング状突起43は、完全な円板形状を有しているが、溝37の代わりに、リング状突起43に切欠きを形成することにより、空気路Xを確保することもできる。
【0033】
また、上記のリング状突起43の下側部分は、上側部分に比して小径となっており、この結果、このリング状突起43には、段差部43aが形成されている。即ち、この段差部43aが外筒首部11の内面に形成されている段差面35と噛み合い、これにより、内袋首部21がしっかりと保持されるようになっている。
さらに、段差面35と噛み合っているリング状突起43の上方への位置ずれを防止するために、成形時の型抜き性が損なわれない限りにおいて、外筒首部11の内面の直胴部Dに小突起を設けることもできる。
【0034】
さらに、
図2等から理解されるように、前述した小フランジ41は、リング状突起43よりも小径に形成されている。従って、内袋首部21が外筒首部11内に嵌合固定された状態において、内袋首部11の上端の小フランジ41は、外筒首部11の上端面を覆っておらず、リング状突起43の上部には、外筒首部11の内面に沿ってストレートな空間Yが上部空間に直接連通している。しかも、外筒首部11の内面には、段差面35を跨ぐように空気路形成用溝37が形成されており、前述した作用空間Zと、上記のストレートな空間Yとが連通するように構成されている。従って、このストレートな空間Yを通して、作用空間Zから外部にかけての空気路Xを形成することが可能となっている。
【0035】
本発明において、上述した形態の内袋首部21において、小フランジ41とリング状突起43との間の領域45は、多面体形状となっていることが好適である。この領域45を多面体形状とすることにより、内袋首部21の強度を高めることができ、後述するスタックプリフォームの状態でのブロー成形を安定に行うという点で有利となる。また、この領域45が円形状に形成されていると、ブロー成形のための加熱により膨張したとき、上記の空間Yが狭くなり、空気路Xに沿った空気の流れが不安定になるおそれがあるが、上記のように多面体形状とすることにより、熱膨張が生じたとしても、空間Yを一定の大きさに維持することができ、空気路Xに沿った空気の流れを安定に確保することができるという利点もある。
【0036】
上述した構造の首部を有する二重構造容器1は、
図2に示されているように、全体として100で示すキャップが装着されて使用に供される。
図2において、このキャップ100の概略構造が示されているが、内袋容器5内に収容されている内容物の排出は許容するが、内袋容器5内への空気の流入を阻止する逆止弁は省略されており、また、このキャップ100に設けられている上蓋が省略されている。かかるキャップ100は、外筒容器3の首部11に装着されるものであり、省略されている逆止弁とは別に、空気弁Aが設けられており、そのキャップ100の筒状側壁121の外面には、前述した外筒首部11に形成されているアンダーカット31と係合する周状突起Bが形成されており、筒状側壁121に連なり且つ水平方向に延びている頂板部125には、筒状側壁121とは間隔をおいて下方に延びているインナーリングCが設けられている。
図2から理解されるように、上記の空気弁Aは、キャップ軸方向下方に延びている環状フラップ片であり、左右に揺動可能となっており、上記の筒状側壁121とインナーリングCとの間の位置において、頂板部125から下方に延びており、その下端は外筒首部11の内面上端に形成されている傾斜面33に当接している。
【0037】
このようなキャップ100において、インナーリングCの外面は、内袋容器5の首部21の内面に密着しており、これにより、内袋容器5のシール性が確保される構造となっている。また、筒状側壁121の内面に形成されている周状突起Bには、図示されていないが、一部に切欠きが形成されており、作用空間Zから外部にかけて形成される空気路Xが遮断されないように構成されている。
【0038】
上記のキャップ100を二重構造容器1(外筒容器3の首部11)に装着したとき、この空気弁A(フラップ片)とキャップ100の筒状側壁121との間の空間に、外筒容器3の首部11の上端部分が入り込んだ状態となっている。即ち、前述したように、小フランジ41が外筒首部11の上端面を覆っておらず、リング状突起43の上部には、外筒首部11の内面に沿ってストレートな空間Yが形成されているため、このような空気弁Aが入り込んだ状態とすることができる。このような構造では、外筒首部11に空気路Xを確保するための導入口を形成する必要がなく、後加工を行わずに、二重構造容器1を製造することができる。
【0039】
即ち、上記の空気弁Aの内面側に内袋容器5の首部21が位置しており、この空気弁Aが揺動して外方側に傾いたときに、空気弁Aの下端が外筒容器3の首部11の内面(傾斜面33)に当接するようになっている。
【0040】
上記のようなキャップ100が装着されている二重構造容器1において、常態においては、上記の空気弁Aと傾斜面33との接触により、作用空間Zと外部とを連通する空気路Xは遮断されている。即ち、溝37を通る空気路Xは、空気弁Aにより閉じられている。この状態でキャップ100の上蓋を開け、二重構造容器1を傾け、外筒容器3の胴部15(
図1におけるスクイズ領域)をスクイズして凹ませたとき、内袋容器5の袋状部23も凹み、これにより、内袋容器5内の内容液は、キャップ100に形成されている逆止弁(
図2では省略)を通して外部に排出される。このとき、胴部15の凹みにより、作用空間Z内の圧力は上昇するが、この圧力上昇によって空気弁Aは、外方に撓み、傾斜面33に強く押し付けられるため、空気路Xは開放されず、作用空間Z内の空気が外部に流れることは無い。尚、常態において、空気弁Aと傾斜面33とが離れた状態にあったとしても、スクイズしたとき、作用空間Z内の内圧が急激に上昇するので、この空気弁Aは外方に大きく撓んで傾斜面33と接触することになるので、溝37を通る空気路Xは閉じられたままであり、やはり、スクイズ時に作用空間Z内の空気が外部に流れることは無い。
【0041】
一方、胴部15のスクイズを停止すると、キャップ100に設けられている逆止弁は閉じ、内袋容器5内に外部から空気が流入することはないが、スクイズにより凹んだ外筒容器3の胴部15は、原形に復帰する。従って、内袋容器5の袋状部23は、内容液が排出された分だけ収縮するが、外筒容器3の胴部15の原形復帰により、作用空間Zは、負圧となる。この結果、傾斜面33に当接していた空気弁Aは内方に撓み、空気弁Aと傾斜面33との間に空隙が生じ、溝37を通る空気路Xは開放され、外部から作用空間Z内に空気が流入することとなる。このため、次に外筒容器3の胴部15をスクイズしたとき、作用空間Zに空気が存在し、内袋容器5の袋状部23と外筒容器3の胴部15との間に空気層が存在することとなり、先の内容液の排出により収縮している袋状部23は速やかに押圧され、前回のスクイズと同様、内容液が速やかに排出されることとなる。
例えば、スクイズ停止後に作用空間Z内に空気が流入しないときには、袋状部23が収縮しているため、内容液を排出するためには、胴部15を強く押圧して大きく凹ませることが必要となってしまい、最終的には、内容液の排出を行うことができなくなってしまう。本発明の二重構造容器1では、このような不都合が、空気弁Aと当接する傾斜面33の形成により、有効に解決されている。
【0042】
尚、上述した説明においては、空気弁Aが接触する空気弁接触面が傾斜面33となっている例を示したが、このような傾斜面とせず、通常のストレートな直胴面を空気弁接触面として利用することもできる。即ち、環状フラップ片からなる空気弁Aは、スクイズ時に外方に撓んで外筒首部11の内面と接触する。従って、空気路形成用溝37の上端が空気弁Aと接触する部分よりも下方に位置していれば、空気の排出を有効に防止することができるからである。
しかし、空気弁接触面が直胴面との場合は、キャップ100を打栓により装着する際に空気弁Aの変形等を生じ易くなるため、キャップ100を打栓により装着するという観点からは、空気弁接触面は、上記のような傾斜面33とすることが好適である。
【0043】
また、上記のような態様においては、
図3に示されているように、上記の傾斜面33に、圧調整用凹部34が複数箇所に設けられていることが好適である。即ち、このような圧調整用凹部34の形成により、環境温度変化(温度上昇)により、作用空間Z内の圧力が上昇したときのガス抜きを効果的に行うことができる。例えば、空気弁接触面がストレートな直立面であると、このような温度上昇により内圧が上昇した時、空気弁Aが該直立面に接触するため、作用空間Zからのガス抜きは行われない。このため、キャップ100の上蓋を開けたとき、内容液が排出されてしまうことがある。しかしながら、空気弁接触面を傾斜面33とし、上記の圧調整用凹部34を形成していたときには、環境温度の変化程度の内圧上昇により、空気弁Aが外方に少し撓んだとき、この空気弁Aは、上記の圧調整用凹部34上に位置し、空気弁Aと傾斜面33との間に空隙が生じる。このため、この空隙部分を通してガス抜きが行われ、これにより、キャップ100の上蓋を開けたときの内容液の排出を防止することができる。勿論、スクイズ時には、作用空間Zの内圧が大きく上昇し、空気弁Aが大きく外方に撓むため、このような圧調整用凹部34を通しての空気の排出は生じることが無い。
【0044】
このように、傾斜面33に形成されている圧調整用凹部34は、ガス抜きによる圧調整機能を有しており、空気弁Aの機能を補強する。このような圧調整用凹部34は、外部への空気の排出のために設けられており、内部に空気を導入するために形成されているものではないことから、
図3中の部分拡大図に示されているように、上方側が幅広となっており、下方が幅狭の形状を有していることが好ましく、このような形態とすることにより、ガス抜きをスムーズに行うことができる。また、空気弁Aによる空気路Xの遮断を確実に行うために、この圧調整用凹部34は、空気路形成用溝37の延長線からはずれた位置に存在させることが好適である。
【0045】
尚、上述した態様において、上記のようなガス抜き機能は、空気弁Aの外面(傾斜面33と接触する側の面)に溝(ガス抜き用溝)を形成することにより、発揮させることもできる。従って、上記のような圧調整用凹部34の代わりに、空気弁Aにガス抜き用溝を形成することもできるし、また、ガス抜き用溝を設けると同時に、圧調整用凹部34を設けることもできる。
【0046】
上述した
図2~
図5に示されている首部構造を有する二重構造容器1は、以下に述べる本発明のスタックプリフォームを用いてのブロー成形により成形される。
図6~9には、このようなスタックプリフォーム及びスタックプリフォームの作製に用いる外筒プリフォーム及び内袋プリフォームの形態の一例が示されている。
尚、既に述べたように、外筒容器3の首部11及び内袋容器5の首部21は、非延伸成形部であり、ブロー成形の前後で、これら首部11,21の形態は同じであり、従って、
図1~5で説明したとおりの形態を有している。従って、以下のプリフォームの説明においても、これらの首部については、同じ番号で示し、また、その形態について、詳細な説明は省略している。
【0047】
図6は、外筒容器3を形成するためのプリフォーム(外筒プリフォーム)を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は側断面図である。
図6において、この外筒プリフォームは51で示されており、全体として試験管形状を有しており、上部が、前述した形態の外筒首部11となっており、この外筒首部11に連なっている管状部53が延伸成形部となっている。
【0048】
即ち、外筒プリフォーム51の外筒首部11は、前述したように、その外面には、サポートリング19及びアンダーカット31が形成され、このアンダーカット31には、空気路Xを確保するための切欠き31aが形成されている。また、この外筒首部11の内面には、上端に傾斜面33が形成され、この傾斜面33には、圧調整用凹部34が形成されており、さらに、その下方には、段差面35が形成されている。さらに、傾斜面33の下端からは、段差面35を跨ぐように、軸方向に延びている空気路形成用溝37が周方向に一定間隔をおいて、複数形成されている。外筒首部11はブロー延伸されない非延伸成形部であるため、このような外筒首部11の形態は、ブロー成形前後で基本的に変わらない。
【0049】
また、延伸成形部である管状部53は、ブロー成形されることにより、前述した外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17となる部分が賦形される。
【0050】
図7は、内袋容器5を形成するための内袋プリフォーム61を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)はAOA側断面図、(d)は底面図である。
この内袋プリフォーム61も、全体として試験管形状を有しており、上部が、前述した形態の内袋首部21となっており、この内袋首部21に連なっている管状部63が延伸成形部となっている。
【0051】
即ち、内袋プリフォーム61の内袋首部21は、前述したように、その外面には、上端に小フランジ41、及びその下方にリング状突起43が設けられている。また、先に説明したように、小フランジ41には切欠き41aが形成されており、小フランジ41とリング状突起43との間の領域45は、多面体形状となっている(即ち、その平面形状が多角形である)。
このような内袋首部21は、ブロー延伸されない非延伸成形部であるため、内袋首部21の形態もまた、ブロー成形前後で基本的に変わらない。
【0052】
また、延伸成形部である管状部63は、
図7(c)の側断面図から理解されるように、上部が内方に向かって傾斜しており下方に行くほど小径となっているテーパー部63aとなっており、そのテーパー部63aの下端から下方部分が直胴部63bとなっている。このような形態とすることにより、この内袋プリフォーム61を外筒プリフォーム51内への挿入を容易に行うことができる。また、このような形態の内袋プリフォーム61の管状部63がブロー成形されると、テーパー部63aでの周方向延伸倍率が小さく、直胴部63bでの周方向延伸倍率が大きくなる。このため、内袋容器5の袋状部23では、外筒容器3の肩部13に対応する部分が比較的厚肉となり、一方、胴部15に対応する部分が薄肉となる。従って、内容物の排出にともなって袋状部23が収縮すると、その収縮形態は、上方の肩部13に対応する部分の形態を維持しながら、下方の胴部15に対応する部分から収縮していくように規制される。これにより、袋状部23の収縮により内容物が排出し難くなるという不都合を抑制することが可能となる。
【0053】
上記のような内袋プリフォーム61及び外筒プリフォーム51は、何れも、前述したブロー成形に適した熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂)を用いての射出成形により成形され、内袋プリフォーム61を外筒プリフォーム51内に挿入して、
図8に示されているスタックプリフォーム71が組み立てられる。
このスタックプリフォーム71は、外筒首部11内に内袋首部21が入り込んでいる部分が、非延伸領域αであり、この領域αの下方の部分が延伸領域βとなる。即ち、このスタックプリフォーム71において、非延伸領域αの形態は、前述した
図2及び
図5で示されている形態となる。
【0054】
上記のような形態のスタックプリフォーム71を所定のブロー成形温度に加熱してブロー成形型内に配置し、圧縮エア等のブロー流体をスタックプリフォーム71内(内袋プリフォーム61内)に吹き込むことにより、ブロー成形が行われる。即ち、内袋プリフォーム61の管状部63は、外筒プリフォーム51の管状部53を膨張により押し広げながら延伸され、この結果、外筒プリフォーム51の管状部53は、成形型の形態に応じて、肩部13、胴部15及び底部17の形態に賦形される。一方、内袋プリフォーム61の管状部63は、この外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17の内面に密着した袋状部23の形態に賦形され、かくして前述した形態の二重構造容器1が製造される。
【0055】
尚、
図8に示されているスタックプリフォーム71においては、内袋プリフォーム61が完全に外筒プリフォーム51内に挿入され、外筒プリフォーム51の上端と内袋プリフォーム61の上端と同一面上に位置するように組み立てられているが、このような形態に限定されるものではなく、例えば、内袋プリフォーム61の上端(即ち、内袋首部21の上端の小フランジ41)が、外筒プリフォーム51の上端(即ち、外袋首部11の上端)よりも突出した状態で存在するような形態とすることもできる。
この場合には、内袋プリフォーム61の上端の小フランジ41と外筒首部11の上端との間の空間に治具を挿入した状態でブロー成形を行い、ブロー成形後、治具を引き抜き、突出している内袋首部21の上端を外筒首部11内に押し込む(打栓)ことにより、
図2及び
図5に示された形態とすることができる。スタックプリフォーム71をこのような形態とすることは、成形後に、内袋容器5の袋状部23と外筒容器3の肩部13との間に空隙を形成することができるため、最初に内容液の排出を行う際、作用空間Z内への空気の導入を速やかに行うことができるという利点がある。
【0056】
尚、ブロー成形温度は、内袋プリフォーム61及び外筒プリフォーム51を形成している樹脂のガラス転移温度以上、融点未満であり、例えば樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合で75~250℃程度である。さらに、ブロー成形温度が、内袋プリフォーム61及び外筒プリフォーム51を形成している樹脂のガラス転移温度以上、昇温結晶化温度未満であると、加熱によるプリフォームの結晶化が抑制される。例えば、樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合で75~150℃程度である。
【0057】
スタックプリフォーム71のブロー成形温度への加熱は、赤外線ヒーター等を用いて外筒プリフォーム51の外面側からの加熱と同時に、内筒プリフォーム61の内部からも行われる。内筒プリフォーム61の内部からの加熱は、高周波、カートリッジヒータ、高温媒体等により加熱されている金属ロッドを内筒プリフォーム61の内部に挿入することにより行われる。このような外部加熱と同時に内部加熱が行われるため、加熱時間が短縮され、しかも均一に加熱することができるため、加熱ムラによる成形不良等を有効に防止することができる。
【0058】
上記の金属ロッドを内袋プリフォーム61内に侵入させて内部加熱を行う場合、内袋プリフォーム61の延伸成形部である管状部63の内面と金属ロッドとの円周方向のクリアランスは、2~8mm程度とし、金属ロッドの先端と管状部63との垂直方向のクリアランスは、2~10mm程度とすることが、加熱ムラを生じることなく加熱できるという点で好適である。
【0059】
上記のような外部及び内部からの同時加熱によりブロー成形温度まで加熱されたスタックプリフォーム71は、内部加熱のための金属ロッドを引き抜いてブロー成形金型内に配置し、常法にしたがい、内袋プリフォーム61内にブロー流体を供給し、ブロー成形が行われることとなる。
【0060】
再び
図7に戻って、本発明においては、上記の内袋プリフォーム61は、
図7(a)及び
図7(d)に示されているように、リング用突起43の下側部分の領域、即ち、テーパー部63aの外面が多面体形状となっていることが極めて重要である。より具体的に説明すると、このテーパー部63aの外面の多面体形状は、リング状突起43の下面に接する上端部に、平面形状が点対称の多角形状となっている多面体基部81が形成されていることが好ましく、より好適には、この多面体基部81の下側から下方に延びているリブ83が形成されている。
【0061】
このリブ83の形状を示す
図9の平断面図を参照して、リブ83は、複数(図の例では12個)形成されており、それぞれほぼ三角形状の断面を有しており、その頂点は、多面体基部81の各角部81aに連なり、該角部81aから下方に延びている稜線83aを形成している。このようなリブ83は、下方に行くに従い、三角形状の断面の高さ及び幅(三角形状の底辺の長さ)が漸次小さくなるような形態を有している。
【0062】
即ち、テーパー部63aの外面形状を上記のような多面体とすることにより、これをブロー成形したとき、成形される袋状部23において、外筒容器3の肩部13に対面する部分或いはその近傍に肉厚分布を形成することができる。例えば、多面体形状の上記角部81a,稜線83aに対応する部分が肉厚に形成され、角部81a,稜線83aの間の部分が肉薄となる。このような肉厚分布を形成することにより、得られる二重構造容器1において、外筒容器3の肩部13での内袋容器5の袋状部23の身離れ性がより向上し、作用空間Zに連なる空気路Xを確保する上で極めて好適である。即ち、ブロー成形直後の段階では、先にも述べたように、内袋容器5の袋状部23は、外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17に密着した状態にあるため、上記のような肩部13或いはその近傍での身離れ性は極めて重要である。
【0063】
尚、多面体形状は、ブロー成形により肉厚分布が形成される限り、上記のような形態に限定されるものではなく、例えば、リブ83を形成せず、多面体基部83のみで多面体形状を形成することもできるし、リブ83の断面形状を、三角形状以外の多角形状とすることもできる。また、多面体の面数も、特に制限されるものではなく、目的とする容器の大きさによっても異なるが、一般的には、上記の多面体基部81において、8~24面体となっていることが好適である。また、多面体基部81の角部81aのそれぞれからリブ83の稜線83aが下方に延びているが、角部81aの一部から稜線83aが延びているようにリブ83を形成することもできる。但し、袋状部23の肩部13或いはその近傍での身離れ性の観点からは、全ての角部81aから稜線83aが延びるようリブ83が形成されていることが好適である。
さらに、ブロー成形上、多面体基部81及びリブ83は、平面でみて、点対称的な形状を有していることが望ましい。
【0064】
このように、本発明では、内袋プリフォーム61の管状部63は多角形状外面を有しており、このような多角形状外面により、外筒容器3の肩部13或いはその近傍での内袋容器5の袋状部23の身離れ性を高めることができる。また、このような多角形状外面を有している内袋プリフォーム61を使用しているにもかかわらず、外筒プリフォーム51の外部からの加熱と同時に、内袋プリフォーム61の内部からも加熱されてブロー成形が行われるため、内袋プリフォーム61を均一に加熱することができ、不均一加熱による成形不良を確実に防止することができる。
即ち、外筒プリフォーム51の外部からの加熱及び内袋プリフォーム61の内部からの加熱を同時に行うという手段は、多角形状外面が形成されていない通常の内袋プリフォームが使用されているスタックプリフォームのブロー成形にも適用することができるが、特に、多角形状外面を有する内袋プリフォーム61が使用されているスタックプリフォーム71のブロー成形に特に効果的である。
【0065】
また、本発明においては、
図7(b)に示されているように、テーパー部63aの下方の直胴部63bにおいては、その内面に、軸方向に線状に延びている縦溝85が、点対称的に複数形成されていることが好ましい。このような縦溝85を形成することにより、ブロー成形により形成される袋状部23に、縦溝85に対応する部分に、収縮形状を規定する薄肉部が軸方向に形成され、これにより、袋状部23から内容物が排出されて収縮を生じたとき、この薄肉部を折目として安定な形態の収縮形状を確保することができ、収縮により、内容物の排出が困難となるという不都合をより確実に回避することができる。
尚、上記の縦溝85は、特に限定されるものではないが、通常、4~9程度の数で点対称的に分布していることが望ましい。
【0066】
上記のようなスタックプリフォーム71により成形された二重構造容器1は、内袋容器5内に内容液を充填した後、キャップを装着することにより使用に供される。
尚、この二重構造容器1に装着されるキャップとしては、原理的には、螺子係合により外筒首部11に装着される所謂螺子キャップを使用することもできる。この場合には、外筒首部11の外面に、キャップ係合用螺条を設け、この螺条に、空気路Xを確保するためのスリットが形成されることとなる。
【0067】
しかしながら、二重構造容器1では、外筒首部11に形成されている傾斜面33にキャップに形成されている空気弁A(具体的には環状フラップ片)を当接させることが効果的であり、このような空気弁Aは、
図2から理解されるように、空気弁Aの内方に内袋首部21が位置するようになる。従って、内袋容器5の密封を確保するために、インナーリングCなどの部材を用いる必要となる。このような構造を確保するという点で、本発明のスタックプリフォーム71により成形される二重構造容器1に適用されるキャップは、打栓タイプのキャップであることが好適である。このような打栓式のキャップを適用することにより、外筒首部11や内袋首部21のハイトを低くすることができ、製造コストの点でも有利となる。
【0068】
前述した
図2では、打栓式キャップ100の概略構造が示されているが、
図10に、二重構造容器1に装着された打栓式キャップ100の代表的な構造を示した。
【0069】
図10において、二重構造容器1の外筒首部21に打栓により装着されるキャップは、
図2と同様、100で示されており、空気弁A、外筒首部11の外面に形成されているアンダーカット31と係合する係合突起B及び内袋首部21の内面に密着しているインナーリングCを備えている。
【0070】
かかるキャップ100は、全体として110で示すキャップ本体と、キャップ本体110内に保持されている中栓111及び逆止弁113とから構成されている。
【0071】
キャップ本体110は、前述した外筒容器3の首部11に装着される筒状側壁121と、筒状側壁121にヒンジ連結されている上蓋123とを有している。
【0072】
上記の筒状側壁121の上端には、その内部空間を閉じるように延びている頂板部125が一体に形成されている。
また、特に限定されるものではないが、この筒状側壁121には、上方から下方に延びているスリット127が形成されており、これにより二重壁構造となっている。このような二重壁構造により、使用済のキャップ100を、格別の器具を用いずに、二重構造容器1から容易に引き剥がすことが可能となっており、分別廃棄性が高められている。
【0073】
また、上記の筒状側壁121の内面に、外筒首部11のアンダーカット31と係合する係合突起Bが形成されている。この係合突起Bには、空気路Xを確保するための切欠きが形成されているのは、先に説明したとおりである。
【0074】
上記の筒状側壁121の上端から内方に延びている頂板部125の下面には、筒状側壁121とは間隔おいて、下方に延びているインナーリングCが形成されており、このインナーリングCが、内袋首部21の内面に密着することにより、内袋容器5のシール性が確保される。
【0075】
また、頂板部125の下面の外周縁から筒状側壁121の内面の上端部にかけて、補助突起133が形成されており、この補助突起133が、外筒首部11の上端面から外面にかけて密着することにより、このキャップ本体110(筒状側壁121)が、ガタツクことなく、しっかりと外筒首部11に固定される。尚、この補助突起133にも、空気路Xを確保するために、切欠きが形成されているのは言うまでもない。
【0076】
さらに、頂板部125の下面において、インナーリングCよりも外方側に、空気弁Aとして機能する環状垂下フラップ片が設けられている。この空気弁Aが、前述した外筒首部11の上端内面に形成されている傾斜面33と係合することにより、外筒首部11の内面に沿って形成されているストレートな空間Yに連通して作用空間Zに通じる空気路Xとして利用することができ、このような空気路Xを通して作用空間Zへの空気の出し入れが行われるわけである。
従って、上記のような空気弁Aを設ける代わりに、上記の頂板部125に開口を形成し、この開口を開け閉めし得る形態の空気弁を設ける構造とすることもできる。頂板部125に形成される開口が、前述したストレートな空間Yに連通しているからである。
【0077】
上述した頂板部125の下面には、インナーリングCで囲まれる領域に、中栓111を保持するための中栓保持用リング137(以下、単にリングと呼ぶことがある)が設けられている。このリング137内に中栓111が収容されるが、収容された中栓111が脱落せずにしっかりと保持されるように、このリング137は、下方に向かってやや縮径した形状を有しており、且つリング137の内面下端には、突起139が形成されている。さらに、リング137の内方側の頂板部125の下面には、やはり中栓111を安定に保持するために周状小突起141が形成されている。
【0078】
一方、頂板部125の上面には、周縁部分に、背の低い上蓋係合用突起143が形成され、これにより、上蓋123を閉じたとき、上蓋123がしっかりと保持される。
【0079】
また、頂板部125の上面の中心部分には、内容液注出用案内筒145が立設されている。
この案内筒145は、筒状側壁121内の中空空間と連通しており、内袋容器5から排出される内容液の注出路となる。
【0080】
前記した筒状側壁121の上端部分或いは頂板部125の外周縁には、ヒンジバンド147により上蓋123が旋回可能に連結されている。
この上蓋123は、天板部151と天板部151の外周縁に連なるスカート部153とから構成されている。
【0081】
上記の上蓋123において、スカート部153の内面には、係合用凹部155が形成されており、上蓋123を旋回して閉じたとき、この凹部155が前述した上蓋係合用突起143と係合し、これにより、上蓋123の閉蓋状態が安定に保持される。また、スカート部153の外面には、ヒンジバンド147とは反対側の位置に開封用タブ157が設けられている。これにより、このタブ157を持って、上蓋123の開栓操作を容易に行うことができる。
【0082】
天板部151の内面(
図6において、上側の面)には、背の高い緩衝用突起159が周状に形成されている。上蓋123を閉じたとき、この緩衝用突起159の先端が頂板部125の上面に当接するように形成されている。即ち、上蓋123が閉じられている状態において、偶発的に大きな垂直荷重が加わったとき、この緩衝用突起159により応力が緩和され、上蓋123等の破損が防止されるものである。
【0083】
また、天板部151の中央部分には、逆止弁113を賦勢するためのポール161が立設されている。
このポール161は、上蓋123を閉じたとき、中栓保持用リング137内に収容されている中栓111に保持されている逆止弁113を押圧賦勢するための部材である。従って、上蓋123を閉じたとき、このポール161は、内容液注出用案内筒145内に侵入し、逆止弁113に当接することとなる。従って、案内筒145の上端は、ヒンジバンド147側の背が低く形成されている。また、ポール161は、付け根部側が比較的大径に形成され、先端部側が小径に形成された形態を有しており、これに伴い、案内筒145の内面の上方部分には、内方に突出した内方突起145aが設けられている。即ち、上蓋123を閉じたとき、案内筒145内に侵入したポール161は、大径の付け根部側が内方突起145aとの嵌合によりしっかりと固定され、ポール161の小径の先端部側が位置決めされ、一定位置で逆止弁113に当接し、逆止弁113を賦勢するように構成されている。
【0084】
さらに、天板部151の内面には、上記のポール161を取り囲み、且つ上蓋123を閉じたとき、案内筒145を取り囲むような位置に、小さな保護リング163が設けられている。これにより、内容液がポール161やその周辺部に付着した場合、上蓋123を開放したとき、天板部151の内面全体に内容液が濡れ広がらないようにすることができる。また、同様の目的で、ポール161の周辺部には、小さな溝165が設けられている。
【0085】
さらに、キャップ本体110に設けられている中栓保持用リング137内には、中栓111が収容されるが、この中栓111は、案内筒145の内部と内袋容器5の内部とを連通させる開口170が中央部分に形成されている。即ち、この開口170を通って、内袋容器5内の内容液は案内筒145内に流れ、案内筒145から排出されることとなる。
【0086】
上記のような中栓111は、筒状基部171と、筒状基部171の内面の下端から上方に向かって延びている周状傾斜フランジ173と、周状傾斜フランジ173の先端から降下して延びている降下壁175と、降下壁175の下端から内方に突出している水平フランジ177とから形成されており、この水平フランジ177で囲まれている空間が、前述した開口170となっている。このような中栓111の形態は、以下に述べる逆止弁113を安定に保持するために形成されたものである。
【0087】
即ち、内袋容器5内に収容されている内容液を排出するためには、上記の開口170が開放された状態になければならないが、排出をしない状態では、空気が内袋容器5内に流入するのを防止するために、この開口170を閉じておく必要がある。空気が流入すると、内容液の排出により収縮した袋状部23が膨らんでしまい、その後の内容液の排出に支障を来すこととなるからである。また、内容液の排出に際して案内筒145の内面に付着した内容液が内袋容器5内に戻るのを防止し、内袋容器5内の内容液の品質を保持する上でも、内容液の排出後は、速やかに開口170が閉じられることが望まれる。このような機能を確保するために、逆止弁113が使用される。
【0088】
かかる逆止弁113は、円形であり且つ若干上方に膨らんだドーム形状の弁体181を有しており、この弁体181は、環状支持部材183から延びている複数のストラップ185により上下動可能に保持されている。この環状支持部材183は、中栓保持用リング137の内部に嵌め込まれて固定され、また、弁体181は、開口170を閉じるように、降下壁175の内部に挿入された状態にあり、この弁体181が上昇すると、開口170が開放され、開口170を通して内容液が排出されることとなる。この場合、弁体181は、複数のストラップ185により保持されているため、開口170を通った内容液は、ストラップ185の間隙を通って案内筒145内に流れることとなる。また、上蓋123を閉じたときには、前述したポール161が弁体181をしっかりと押付けるため、この降下壁175内に弁体181が嵌め込まれた状態となり、開口170が弁体181によりしっかりと閉じられた状態となる。
【0089】
即ち、上蓋123を開けた状態で二重構造容器1を傾け、外筒容器3の胴部15(スクイズ領域)を押圧することにより、内袋容器5の袋状部23が押圧され、このときの内圧上昇により弁体181が持ち上げられ、上記のように開口170を通して内容液が排出される。また、胴部15のスクイズを停止すると、ストラップ185の弾性により弁体181は、開口170を閉じる位置に戻り、さらに、上蓋123を閉じることにより、この弁体181は、降下壁175の内部にがっちりと保持されることとなる。
【0090】
尚、上述した中栓111及び逆止弁113のキャップ本体110内への組み込みは、例えば、中栓111内に逆止弁113を組み込んだ後、この組立体を、キャップ本体110の中栓保持用リング137内に押し込むにより行われる。これにより、逆止弁113を収容保持している中栓111は、その筒状基部171が、リング137の下端の突起139と上方の周状小突起141との間にしっかりと挟持される。この状態で、上蓋123を閉じた状態で、該キャップ100を、内容物が充填されている二重構造容器1に被せて打栓することにより、このキャップ100が装着される。
【0091】
ところで、上蓋123を開放し、外筒容器3の胴部15を押圧することにより、逆止弁113の弁体181を押し上げて内容液を排出するとき、外筒容器3の内面と内袋容器5との間の作用空間Zから空気が排出するのを防止し、内容液排出後には、作用空間Zに空気を導入し、作用空間Zを常圧に戻すことが必要となる。本発明では、このような機能を確保するために、前述した空気弁A(環状垂下フラップ片)が、外筒首部11の内面に上端に形成されている傾斜面33に当接するように設けられているわけである。
【0092】
尚、上述したキャップ本体110、中栓111及び逆止弁113は、何れも、オレフィン系樹脂、例えば、低、中或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いての射出成形、圧縮成形等により製造される。
【0093】
このようなキャップ100が装着された二重構造容器1は、内容液を小出しすることができ、しかも空気との接触による酸化劣化を防止し、長期にわたって内容液の品質を保持することができるため、醤油等の調味液が収容される容器として好適に使用される。
【符号の説明】
【0094】
1:二重構造容器
3:外筒容器
5:内袋容器
11:外筒首部
13:肩部
15:胴部
21:内袋首部
23:袋状部
31:アンダーカット
33:傾斜面
34:圧調整用凹部
35:段差面
37:空気路形成用溝
43:嵌合固定用リング状突起
51:外筒プリフォーム
53:外筒プリフォームの延伸成形部(管状部)
61:内袋プリフォーム
63:内袋プリフォームの延伸成形部
63a:テーパー部
81:多面体基部
81a:多面体基部の角部
83:リブ
83a:リブの稜線
100:キャップ
X:空気路
Y:ストレートな空間
Z:作用空間
A:キャップの空気弁