(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】水和膨潤物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230711BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20230711BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230711BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230711BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230711BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230711BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230711BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61K8/02
A23L29/206
A61K8/73
A61K8/92
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/44
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019118636
(22)【出願日】2019-06-26
(62)【分割の表示】P 2015138910の分割
【原出願日】2015-07-10
【審査請求日】2019-07-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田渕 彰
(72)【発明者】
【氏名】江川 宏
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】木村 敏康
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-283305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒と、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とを含有する水和膨潤物であって、
前記ガラクトース部分分解物を3質量%以上10質量%以下含有し、
前記ガラクトース部分分解物が前記水性溶媒に溶解されずに前記水性溶媒を吸収し前記水性溶媒中に
-25℃以上5℃以下で懸濁した状態である、水和膨潤物。
【請求項2】
請求項
1に記載の水和膨潤物であって、油状物質と混合して油状物質含有ゲル組成物を調製するための水和膨潤物。
【請求項3】
ダマを含まない前記油状物質含有ゲル組成物を調製するための、請求項2に記載の水和膨潤物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油状物質含有ゲル組成物の製造方法及び油状物質含有ゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油等の様々な分野において、動植物油類、鉱物油類、炭化水素類といった各種油状物質と、ゲル化剤と、水性溶媒とを含有し、該ゲル化剤によってゲル化されてなる油状物質含有ゲル組成物が用いられている。かかる油状物質含有ゲル組成物は、ゲル化剤が水性溶媒に溶解されてなる溶液に油状物質が乳化された状態で、該溶液がゲル化されてなる。
【0003】
この種の油状物質含有ゲル組成物においては、ゲル化剤として、人体に比較的安全であることから、天然多糖類由来のものが用いられている。天然多糖類由来のゲル化剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ガラクトキシログルカン、ジェランガム、カードラン等が用いられている。
【0004】
これらゲル化剤を用いてゲル組成物を作製するためには、ゲル化剤を、80℃以上といった高温の水に撹拌溶解する必要がある。
【0005】
しかし、高温でゲル化剤を溶解させた後、冷却すると、溶液がゲル化してしまい、この状態で油状物質を添加して混合すると、ゲル構造が破壊されてしまい、油状物質含有ゲル組成物が得られない。このため、高温でゲル化剤を溶解させた後、この高温状態で、油状物質と混合しなければならず、作製が簡便とはいい難い。
【0006】
また、高温状態で上記溶液と油状物質とを混合すると、油状物質の乳化が不安定となり、油状物質を十分に含有させることが困難となる。
【0007】
さらに、上記ゲル化剤は、溶解時に、ダマが形成され易い。ダマが形成されると、得られた油状物質含有ゲル組成物中に、水和していない多糖類に起因する粉状の固形物(非水和物)が残存し、品質が低下することになる。そこで、ダマを解消する必要があるが、一旦ダマとなった多糖類を内部まで完全に水和させて溶解させるのには、多大な時間及び労力がかかる。
【0008】
このように、上記ゲル化剤を用いた油状物質含有ゲル組成物は、油状物質を十分に含有しているとはいい難く、また、簡便に作製できるともいい難い。
【0009】
一方、ガラクトキシログルカンの側鎖の一部を構成するガラクトースを、微生物由来の精製β-ガラクトシダーゼを用いて部分的に分解(部分分解)することによって除去して得られた、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物(以下、単に「ガラクトース部分分解物または部分分解物」という場合がある。)が提案されている(特許文献1、2参照)。かかるガラクトース部分分解物は、該ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合したときの混合物の熱挙動が、上記ガラクトキシログルカンの熱挙動とは逆であり、具体的には、加熱するとゲル化し、冷却するとゾル化し、このゾル/ゲルの変化が可逆的であるという熱挙動を示す。このような熱挙動は、可逆的熱ゲル化特性と呼ばれている。
また、ガラクトース部分分解物は、天然多糖類由来であり、化学修飾(付加)されていないことから人体および環境に安全であるため、該ガラクトース部分分解物を用いて製造
されたゲル組成物は、食品、化粧品、または医薬品製剤等において幅広く利用され得る。
この種のガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物の製造方法として、冷却した水性溶媒とガラクトース部分分解物とを混合して水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解し、溶解液を加熱してゲル化させることによって、ゲル組成物を製造することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-283305号公報
【文献】国際公開第97/29777号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1、2の方法では、ゲル組成物を製造する際、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解させており、この水溶液を、油状物質と混合し、油状物質を乳化させることによって、油状物質を含有させることは可能となる。
しかし、特許文献1の方法では、十分に油状物質を含有させられるとはいい難い。
【0012】
加えて、特許文献1、2の方法では、水性溶媒を冷却し続けてこれにガラクトース部分分解物を混合する必要があるため、準備時間と手間がかかる。
また、これら方法では、混合物の粘度が高くなり過ぎて、所望の容器に移し替えて加熱によってゲル化させようとする際に、取り扱い難くなる場合がある。また、所望の容器に十分に充填することが困難となったり、溶液調製時や充填時等に気泡が混入し易くなったりする。
このように、特許文献1、2の方法を用いても、油状物質含有ゲル化組成物を簡便に製造できるとはいい難い。
【0013】
上記事情に鑑み、本発明は、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造可能な油状物質含有ゲル組成物の製造方法、及び、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を製造するための水和膨潤物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、以下の知見を得た。
すなわち、一般的に、多糖類を水性溶媒と混合したとき、水性溶媒中の水によって多糖類が、先ずは水和膨潤した状態となり、水和膨潤がさらに進むと溶解した状態に至ることが知られている。
このことと、上記特許文献1、2の方法とを考慮した結果、特許文献1、2の方法では、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を混合してこれを溶解しているため、溶解液の粘度が比較的高くなり、その結果、取り扱い難くなる。
また、水性溶媒を冷却してその温度を低くする程、ガラクトース部分分解物が水和膨潤した状態になるまでに要する時間、さらには、水和膨潤した状態から溶解した状態になるまでの時間が短くなるため、上記特許文献1の方法では、早期に粘性が発現され、水性溶媒にガラクトース部分分解物を均一に拡散させるためには、比較的強い強制撹拌が必要になる。
【0015】
これらの知見に基づいて本発明者らがさらに鋭意研究を進めたところ、水性溶媒とガラクトース部分分解物とを室温で混合することによって、混合物中にダマが発生することなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させ得ることを見出した。
また、この室温での混合によって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を、ほとんど溶解していない状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を低いものとし得ることになる。次いで、このように粘度の低い混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく高粘性の水和膨潤した状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を高いものとし得ることになる。
しかも、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省けることにもなる。
そして、ガラクトース部分分解物の多くが水和膨潤した状態にある混合物を加熱しても、この混合物をゲル化させることができ、ゲル組成物が得られることを見出した。
【0016】
さらに、本発明者らが鋭意研究したところ、ガラクトース部分分解物と、水とに、さらに油状物質を混合して得られた混合物を、上記のように冷却または凍結し、加熱することによって、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物が得られることを見出した。
また、ガラクトース部分分解物と水とを混合して得られた混合物を、冷却または凍結し、室温まで加熱して解凍した後、油状物質を添加してさらに混合し、加熱することによっても、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物が得られることを見出した。
さらに、このように油状物質を含有させることによって、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解させる特許文献1、2の方法と比較して、同じガラクトース部分分解物を添加したときに、より多くの油状物質を含有させ得ることを見出した。
このように、ガラクトース部分分解物と水とを混合して得られた混合物を冷却または凍結し、その後、この混合物がゲル化する前に、油状物質を添加することによって、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明に係る油状物質含有ゲル組成物の製造方法は、
油状物質を含有する油状物質含有ゲル組成物の製造方法であって、
工程(1):ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
工程(3):前記工程(2)で得られた混合物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る工程とを備え、
前記工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、前記油状物質を添加する。
【0018】
ここで、「室温」とは、15~35℃の温度範囲内の温度を意味する。また、「室温で
混合する」とは、水性溶媒の温度が室温の状態で混合することを意味する。
「冷却」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていない状態を意味し、液状になっている場合と固体状、すなわち、凍結状になっている場合の双方が混在している状態も含む。
「凍結」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていることを意味する。
【0019】
かかる構成によれば、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、前記油状物質を添加して、工程(1)~(3)を行うことができる。
【0020】
このとき、工程(1)にて、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合することによって、無機化合物を水性溶媒に溶解させつつ、混合物中にダマを発生させることなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物(分散液)の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
このように、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
さらに、工程(3)にて、工程(2)で得られた混合物を加熱してゲル化することによって、混合物をゲル化させることができる。このとき、得られたゲル組成物は、ガラクトース部分分解物に起因するダマ等の非水和物の混入が抑制されたものとなる。
【0021】
そして、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、油状物質を添加することによって、ゲル化しておらず、且つ、油状物質を含有する混合物(油状物質含有混合物)が得られ、これを加熱することによって、上記水和膨潤物中のガラクトース部分分解物の分子間に油状物質が取り込まれて包含されながら(乳化しながら)ゲル化させることができ、これにより、油状物質含有ゲル組成物を得ることができる。
また、このようにして得られた油状物質含有ゲル組成物は、添加した油状物質がゲル組成物と分離することなくこれに安定して取り込まれており、油状物質を十分に含有するものとなる。
【0022】
従って、上記製造方法によれば、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造することができる。
【0023】
なお、「分散」とは、全体的に粉状の各ガラクトース部分分解物に水性溶媒が浸透して
いるが、表層に高粘度な(粘着)層がほとんど形成されていない状態で、各ガラクトース
部分分解物が水性溶媒に存在している状態を意味する。
「水和膨潤」とは、全体的に粉状の各ガラクトース部分分解物が水性溶媒を十分に吸収
し、各ガラクトース部分分解物が全体として高粘度な状態を形成している状態を意味する。
「溶解」とは、高粘度な表層から多糖分子鎖が解離し、該表層から溶媒中に拡散する状
態を意味する。
また、「ダマ」とは、粉状のガラクトース部分分解物が集合した状態(集合物の状態)
で水と接触し、集合物内部に空気層を含んだまま該集合物の外層のみが水との接触によって高粘度な状態となり、これにより、該集合物の内部まで水性溶媒が浸透し難くなり、全
体として塊となった状態、または、その塊がさらに集合した状態を意味する。
【0024】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(1)において、前記油状物質を添加してもよい。
【0025】
かかる構成によれば、工程(1)でガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを混合して混合物を得、得られた混合物を、工程(2)で冷却または凍結することによって、混合物中のガラクトース部分分解物が水性溶媒に水和膨潤し、これにより、水和膨潤物と油状物質とが混合されてなる油状物質含有混合物を得る。そして、油状物質含有混合物中の水和膨潤物を工程(3)で加熱することによって、ガラクトース部分分解物の分子間に、工程(1)で添加した油状物質を取り込みながら(乳化しながら)、油状物質含有混合物をゲル化させることができる。
これにより、油状物質を室温で混合することができる。また、比較的初期の工程で、必要な原料を投入することができるため、製造がより簡便となる。
【0026】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(3)において、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に前記油状物質を添加してもよい。
【0027】
かかる構成によれば、工程(2)でガラクトース部分分解物が水性溶媒に水和膨潤し、これにより、これらの混合物としての水和膨潤物を得る。そして、工程(3)で、この水和膨潤物がゲル化する前に油状物質を添加することによって、油状物質含有混合物を得ることができ、該油状物質含有混合物を加熱することによって、ガラクトース部分分解物の分子間に油状物質を取り込みながら(乳化しながら)、油状物質含有混合物をゲル化させることができる。
これにより、既に十分に水和膨潤物が形成され、該水和膨潤物を構成しているガラクトース部分分解物の分子が比較的多い状態で、油状物質を添加することができるため、該ガラクトース部分分解物の分子間に、比較的多くの油状物質を取り込ませることができる。
従って、油状物質をより十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を、製造し得る。
【0028】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(1)において前記油状物質を添加するとき、
前記ガラクトース部分分解物1質量部に対して、0.01~20質量部の前記油状物質を添加することが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の混合物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をより安定に保持することが可能となる。
【0030】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(2)において、前記工程(1)で得られた混合物を凍結した場合には、
前記工程(3)において、前記工程(2)で得られた混合物を解凍し、前記油状物質を添加することが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、工程(2)で凍結した混合物を解凍した状態で、該混合物と油状物質とを混合することができるため、これらを十分に混合し得る。
よって、油状物質をより十分に含有させ得る。
【0032】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(3)において前記油状物質を添加するとき、
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を0.01~700質量部添加し得る。
【0033】
かかる構成によれば、比較的微量から比較的多量まで広範な添加量で、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をゲル組成物中により安定に保持することも可能となる。
【0034】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を1~50質量部添加し得る。
【0035】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をさらに分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をゲル組成物中にさらに安定に保持することも可能となる。
【0036】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を50~700質量部添加することが好ましい。
【0037】
かかる構成によれば、油状物質を比較的多量に包含するゲル組成物を作製できる。
【0038】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記水性溶媒とを18~30℃で混合することが好ましい。
【0039】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを18~30℃で混合することによって、ダマの形成をより回避しながら、また、通常の室温環境で水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。従って、作業性の低下をより抑制できる。
【0040】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記ゲル組成物中の前記ガラクトース部分分解物の配合量が、0.05~20質量%であることが好ましい。
【0041】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対
して0.05~20質量%であることによって、油状物質をより十分に含有させ得ることができ、また、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離させることなく安定に包含させることができる。
【0042】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
工程(1)では、得られた混合物にガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることが好ましい。
【0043】
かかる構成によれば、工程(1)で得られた混合物にガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離させることなく安定に包含させることが可能となる。
【0044】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた混合物を-25~10℃まで冷却または凍結することが好ましい。
【0045】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物を、より適度に水和膨潤させ得るため、より十分に油状物質を含有させ得る。
【0046】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物の製造方法においては、
前記油状物質は、常温で液状または半固体状であることが好ましい。
【0047】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物と油状物質とをより混合し易くなる。
【0048】
本発明の油状物質含有ゲル組成物は、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを含有し、且つ、
前記油状物質を、0.01~90質量%含有する。
【0049】
かかる構成によれば、油状物質含有ゲル組成物が、油状物質が十分に含有されたものとなる。
【0050】
上記構成の油状物質含有ゲル組成物においては、
前記ガラクトース部分分解物を、0.05~20質量%含有することが好ましい。
【0051】
かかる構成によれば、油状物質を、より安定して含有し得る。
【発明の効果】
【0052】
以上の通り、本発明によれば、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造可能な油状物質含有ゲル組成物の製造方法、及び、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に、本発明に係るゲル組成物の製造方法及びこの製造方法によって製造されたゲル組成物の実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態の油状物質含有ゲル組成物の製造方法は、
油状物質を含有する油状物質含有ゲル組成物の製造方法であって、
工程(1):ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
工程(3):前記工程(2)で得られた混合物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る工程とを備え、
前記工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、前記油状物質を添加する。
【0055】
本実施形態の製造方法で使用されるガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とは、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを部分分解して除去した物質を意味し、以下、ガラクトース部分分解物と略称することもある。また、ガラクトキシログルカンとは、側鎖ガラクトースが後述する酵素処理による部分分解によって除去されていないガラクトキシログルカン(完全ガラクトキシログルカン)を意味する。また、かかる完全ガラクトキシログルカンは、ネイティブガラクトキシログルカンとも称される場合がある。
【0056】
ガラクトキシログルカンは双子葉、単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)の構成成分であり、また、一部の植物種子の貯蔵多糖類として存在する。ガラクトキシログルカンはグルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ-1,4結合し、側鎖にキシロース、そのキシロースにさらにガラクトースが結合している。ガラクトキシログルカンはそれ自体通常ゲル化しないが、糖やイオンあるいはアルコールの共存下ではゲル化する。
【0057】
ガラクトキシログルカンは、いかなる植物由来のガラクトキシログルカンでもよく、例えばタマリンド、ジャトバ、ナスタチウムの種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギなどの穀物またはリンゴなどの果実の表皮から入手できる。最も入手し易く、含有量も多いことから、好ましくは、豆科植物タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンである。かかるガラクトキシログルカンとしては、市販のものを採用し得る。
【0058】
本実施形態の製造方法に用いるガラクトース部分分解物は、例えば、以下の製造方法によって製造される。すなわち、上記タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンを、55℃に保持した後クエン酸三ナトリウムでpH6に調製し、β-ガラクトシターゼを添加し、撹拌しながら50~55℃で16時間反応させる。次いで、95℃、30分間加熱して酵素を失活させた後、室温に戻し、等容量のエタノールを加え、1時間放置する。放置して得られた沈殿物を吸引濾過により回収し、送風乾燥機で乾燥した後、粉砕することによって製造される。
【0059】
用いるβ-ガラクトシダーゼとしては、植物由来のものおよび微生物由来のもののいずれでもよいが、微生物Aspergillus orizaeまたはBacillus circulans由来の酵素、または、ガラクトキシログルカン含有種子中の酵素が好ましい。かかるβ-ガラクトシダーゼとしては、市販のものを採用し得る。
【0060】
このβ-ガラクトシダーゼによる酵素反応は、反応の進行につれて側鎖ガラクトースが部分的に除去され、その除去率が30%付近になると反応液は急激に増粘しゲル化する。ガラクトースの除去率が30~55%の範囲では、加熱によってゲル化し冷却によってゾル化する可逆的熱応答ゲル化性を有するものとなる。ガラクトース除去率が30%未満ではゲル化せず、また、55%を越えると強固過ぎるゲルが得られる傾向にある(特開平8-283305号公報、国際公開第97/29777号参照)。
【0061】
この点を考慮すれば、ガラクトースが30~55%部分分解されてなる上記ガラクトース部分分解物を用いることが好ましい。除去率をこの範囲とすることによって、加熱によって十分にゲル化を発揮させつつも、強固過ぎないゲル組成物を作製し得る。これにより、可逆的に、加熱によって十分にゲル化し、冷却によって十分にゾル化する可逆的熱応答ゲル化性を発揮させ易くなる。また、ガラクトースが30~55%除去されてなることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより安定に包含させることが可能となる。
【0062】
また、ガラクトースが30~55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、上記の通り、ガラクトキシログルカンから、ガラクトースが30~55%部分分解されてなる。
ガラクトキシログルカンは、通常、側鎖キシロースを約37%、側鎖ガラクトースを約17%含有している(Gidleyら、カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、214(1991)219-314頁参照)。よって、ガラクトースが30~55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、側鎖キシロースを39~41%、側鎖ガラクトースを8~12%含有していると算出される。
なお、ガラクトースの部分分解率(すなわち、ガラクトースの除去率)は、得られた部分分解物がセルラーゼ分解されることによって生成されるガラクトキシログルカンオリゴ糖量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アミノカラム)で測定することにより算出することができる。
【0063】
水性溶媒としては、水を含有する溶媒であって、ガラクトース部分分解物を溶解可能であれば、特に限定されるものではない。
【0064】
前記油状物質は、前述の分散液の冷却または凍結により形成される、水性溶媒中に分散された水和膨潤物に取り込まれて包含されるものである。
油性物質としては、特に限定されないが、水和膨潤物中のガラクトース部分分解物と相溶性を有するものを用いることができる。
【0065】
油性物質は、常温で液状又は半固体状であることが好ましい。
油状物質が、常温で液状または半固体状であることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物と混合し易くなる。
【0066】
常温で液状または半固体状の油状物質としては、特に限定されないが、オリーブ油、ひまし油、アボガド油、マカデミアンナッツ油、サフラワ油、胡麻油、大豆油、つばき油、綿実油、キャノーラ油等の菜種油、アーモンド油、黄卵油、トータ油、馬油、魚油、ラノリン等の油脂類、スクアラン、ワセリン、流動パラフィン、イソパラフィン、灯油、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、流動パラフィン等のような炭化水素類、鎖状または環状のシリコーン油類、脂肪酸アルキルエステル(例、イソステアリン酸イソセチル、オクタン酸セチル、オクタン酸セトステアリル、オレイン酸デシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロビル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル)等の脂肪酸エステル類、オレイン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、ウンデシル酸、軟質ラノリン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸等のような高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール等の高級アルコール類、ビタミン(D、E)類およびその誘導体類、石鹸素地液のような洗浄成分を含有する液体等が挙げられる。
【0067】
油状物質の含有量は、ゲル組成物全量に対し、0.01質量%~90質量%が好ましい。含有量が90質量%を超えると、ゲルの安定性が悪くなるおそれがあり、さらに経済的でなくなるおそれがあることから、上記範囲が好ましい。一方、含有量の下限は、0.01質量%以上が好ましい。
【0068】
半固体状の油状物質の例として、ラノリン、ワセリンなどを挙げることができる。
【0069】
上記油状物質は、2種以上を同時に用いることができる。
【0070】
本実施形態の製造方法における工程(1)では、上記ガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る。
より具体的には、上記ガラクトース部分分解物を室温の水性溶媒と混合して、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させた混合物としての分散液(すなわち、懸濁液)を得る。
【0071】
ここで、前述したように、水性溶媒を冷却してその温度を低くさせる程、ガラクトース部分分解物が水和膨潤した状態になるまでに要する時間、さらには、水和膨潤した状態から溶解した状態になるまでの時間が短くなる。また、このように溶解した状態に至るまでの時間が比較的早い状態において、水性溶媒中にガラクトース部分分解物をできるだけ均一に拡散させるためには、比較的強い撹拌力が必要となる。すなわち、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物をできるだけ均一に溶解させるためには、比較的強い撹拌力が必要となる。
【0072】
これに対し、ガラクトース部分分解物は、室温の水性溶媒中で水和膨潤した状態に至るまで、さらには溶解した状態に至るまでの時間が、冷却した水性溶媒を用いた場合よりも遥かに長いため、これと同程度の撹拌力で撹拌してもほとんど溶解しない。
よって、工程(1)では、ガラクトース部分分解物と室温の水性溶媒とを混合することによって、ガラクトース部分分解物に起因するダマの発生を抑制し得る。
【0073】
なお、ガラクトース部分分解物と水性溶媒を混合する際、たとえ分散液中に粉末の塊が発生したように見えたとしても、これはダマではなく、スパチュラ(スパーテル)などで軽くほぐすことで容易にほとんど完全に分散させることができる。ここでいう「ほぐす」とは、塊を形成する前の単位に戻すことを意味し、一般的に物質を溶解させるために行われる撹拌とは全く異なる操作を意味する。
【0074】
水性溶媒とガラクトース部分分解物とを混合する際の水性溶媒の温度は、室温であれば特に限定されるものではないが、18~30℃を採用することが好ましく、18~28℃を採用することがより好ましい。
18℃以上で混合することによって、ダマの形成をより回避しながら水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。これにより、ガラクトース部分分解物を溶解させた場合に生じるような粘度増加をより抑制することができるため、作業性の低下をより抑制できる。また、30℃以下で混合することによって、加熱等の特殊な環境を必要とすることなく、通常の室温環境でガラクトース部分分解物を水性溶媒に分散させることができるので、簡便に操作を行うことができる。なお、加熱を行いながら、混合してもよい。
このように、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを18~30℃で混合することによって、作業性の低下をより抑制することができる。
【0075】
水性溶媒とガラクトース部分分解物とを混合する際の混合時間は、上記温度においてはガラクトース部分分解物が水性溶媒に極めてなじみやすいことを考慮すれば、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
かかる混合時間は、例えば、5分~1時間を採用することができ、10分~30分を採用することが好ましい。
混合時間を1時間以下とすることによって、操作を早く完了させることができ、作業性が向上するという利点がある。
【0076】
水性溶媒に対するガラクトース部分分解物の配合量は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
例えば、得られるゲル組成物の所望のゲル特性に応じて適宜設定することができる。例えば、この観点から、例えば、工程(1)では、上記混合物中に、前記ガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることが好ましく、2~7質量%含有されていることがより好ましく、3~5質量%含有されていることがさらに好ましい。
上記混合物中に、ガラクトース部分分解物が1質量%以上含有されていることによって、より確実にゲル化させることができる。また、ゲルの表面上に水層が形成され難くし得るという点では、ガラクトース部分分解物が2質量%以上含有されていることが好ましく、3質量%以上含有されていることがより好ましい。
一方、ガラクトース部分分解物が10質量%以下含有されていることによって、ゲル中の水を適度な量とすることができ、これにより、所望のゲル特性を発揮させ得るゲル組成物を製造することができる。
加えて、工程(1)で得られた混合物にガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離させることなく安定に包含させることが可能となる。
【0077】
また、例えば、浅い(深さが小さい)容器内で(すなわち、上記混合物の深さを小さくした状態で)上記混合物の各成分を配合することによって、所望のゲル特性をさらに発揮させ得るゲル組成物を製造することができる。
なお、ガラクトース部分分解物の濃度が低い場合、後述する冷却または凍結した混合物を加熱すると、上側に、ゲル化に寄与できなかった水が層となり、その下方がゲル化層となる場合がある。この場合、上側の水層(分離水)を除去することによって、下側のゲル層を、ゲル組成物として得ることもできる。すなわち、後述する冷却または冷凍した混合物を濃縮してゲル組成物を得ることもできる。
このように、ガラクトース部分分解物の濃度によっては上記水層が除去されることを考慮すれば、生成したゲル組成物(上記水層を除去した場合には、除去後のゲル組成物であり、上記水層が発生しない場合にはそのままのゲル組成物)中のガラクトース部分分解物の濃度は、1~10重量%が好ましく、2~7重量%がより好ましく、3~5重量%がさらに好ましい。
【0078】
工程(1)によれば、工程(2)で冷却または凍結する前に、上記混合物を所望形状の鋳型等に移すことによって、所望の形状に形成された成型品としてのゲル組成物を得ることも可能となる。
【0079】
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する。
より具体的には、工程(1)で得られた分散液を冷却または凍結することによって、水和溶媒にガラクトース部分分解物を水和膨潤させた水和膨潤物を得る。
水和膨潤物には、冷却したが凍結されていない液状の水和膨潤物、及び、凍結した固体状の水和膨潤物が含まれる。なお、工程(2)において、水性溶媒にはガラクトース部分分解物が一部溶解した溶解物が含まれていてもよい。
【0080】
工程(2)によれば、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物を冷却または凍結することによって、工程(1)にて水性溶媒中に分散している状態のガラクトース部分分解物を、水性溶媒中の水によって水和膨潤させることができる。このように水和膨潤させることができるため、粘度の発現を比較的遅らせることができ、これにより、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。このように強制撹拌等を不要とし得るため、その分、簡便となる。
なお、工程(2)において強制撹拌を行うことが妨げられるものではく、強制撹拌を行った場合には、行わなかった場合よりも一層速やかにガラクトース部分分解物を水和膨潤させることが可能となる。
【0081】
前記冷却または凍結においては、工程(1)で得られた混合物(分散液)中のガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができるのであれば、当該混合物を降温させる程度は特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
ここで、上記混合物を降温させる温度が低くなるほど、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる傾向にある一方、過度に水和膨潤を進行させて粘性を発現させ易くなる傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、前記工程(1)で得られた混合物を-25~10℃まで冷却または凍結することが好ましい。
上記混合物を降温させる温度範囲の上限については、10℃以下とすることによって、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる。また、ガラクトース部分分解物を一層水和膨潤させ易くなるという点では、上限については、5℃とすることがより好ましく、1℃とすることがさらに好ましい。
一方、上記混合物を降温させる温度範囲の下限については、-25℃とすることによって、水和膨潤の過度の進行を抑制し、粘性を発現させ難くすることができる。
【0082】
工程(3)では、工程(2)で得られた混合物を加熱することによりゲル化させて、ガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物を得る。
より具体的には、工程(3)では、工程(2)で得た水和膨潤物及び溶解物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る。
【0083】
そして、本実施形態では、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、油状物質を添加する。
油状物質の添加タイミングは、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に油状物質を添加するのであれば、特に限定されない。
【0084】
具体的には、例えば、工程(1)において、油状物質をさらに添加する。添加後、ガラクトース部分分解物、水性溶媒及び油状物質を、撹拌棒またはスパチュラで撹拌して均一になるように混合し得る。
【0085】
このように油状物質を添加することによれば、工程(1)でガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを混合して混合物を得、得られた混合物を、工程(2)で冷却または凍結することによって、混合物中のガラクトース部分分解物が水性溶媒に水和膨潤し、これにより、水和膨潤物と油状物質とが混合されてなる油状物質含有混合物を得る。そして、油状物質含有混合物中の水和膨潤物を工程(3)で加熱することによって、ガラクトース部分分解物の分子間に、工程(1)で添加した油状物質を取り込みながら(乳化しながら)、油状物質含有混合物をゲル化させることができる。このとき、高速撹拌混合を行わなくても、油状物質含有混合物をゲル化させることができる。なお、油状物質を少量ずつ徐々に添加してもよい。
このように、工程(1)において、油状物質を添加することによって、油状物質を室温で混合することができる。また、比較的初期の工程で、必要な原料を投入することができるため、製造がより簡便となる。
【0086】
このように、工程(1)において油状物質を添加するとき、ガラクトース部分分解物1質量部に対して、0.01~20質量部の油状物質を添加することが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
0.01~20質量部の油状物質を添加することによって、ガラクトース部分分解物の混合物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をより安定に保持することが可能となる。
【0087】
また、上記の他、具体的には、例えば、工程(3)において、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に油状物質を添加する。工程(2)で得られた混合物と、油状物質とを、撹拌棒またはスパチュラで撹拌して均一になるように混合し得る。
【0088】
このように油状物質を添加することによれば、油状物質を添加する前において、工程(2)でガラクトース部分分解物が水性溶媒に水和膨潤し、これにより、これらの混合物としての水和膨潤物を得る。そして、工程(3)で、この水和膨潤物がゲル化する前に油状物質を添加することによって、油状物質含有混合物を得ることができ、該油状物質含有混合物を加熱することによって、ガラクトース部分分解物の分子間に油状物質を取り込みながら(乳化しながら)、油状物質含有混合物をゲル化させることができる。
これにより、既に十分に水和膨潤物が形成され、該水和膨潤物を構成しているガラクトース部分分解物の分子が比較的多い状態で、油状物質を添加することができるため、該ガラクトース部分分解物の分子間に、比較的多くの油状物質を取り込ませることができる。
従って、油状物質をより十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を、製造し得る。
【0089】
また、前記工程(2)において、前記工程(1)で得られた混合物を凍結した場合には、前記工程(3)において、前記工程(2)で得られた混合物を解凍し、前記油状物質を添加することが好ましい。なお、前記工程(2)で解凍しながら油状物質を添加しても、解凍した後に油状物質を添加してもよい。
このように油状物質を添加することによって、工程(2)で凍結した混合物を解凍した状態で、該混合物と油状物質とを混合することができるため、これらを十分に混合し得る。よって、油状物質をより十分に含有させ得る。
なお、この場合、工程(3)において、工程(2)で凍結した混合物が解凍され、且つ、ゲル化されない温度まで加熱して、該混合物を解凍すればよい。また、工程(2)で得られた混合物に、油状物質を添加する際には、該混合物が解凍されていても解凍されていなくてもよいが、該混合物と油状物質とを混合する際には、該混合物が解凍されていることが好ましい。
【0090】
工程(3)において前記油状物質を添加するとき、工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、油状物質を0.01~700質量部添加することが好ましく、10質量部~450質量部がより好ましい。
【0091】
油状物質を0.01~700質量部添加することによって、比較的微量から比較的多量まで広範な添加量で、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をゲル組成物中により安定に保持することも可能となる。
【0092】
また、前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を1~50質量部添加し得る。
【0093】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をさらに分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をゲル組成物中により安定に保持することも可能となる。
【0094】
また、前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を50~700質量部添加し得る。
【0095】
油状物質を50~700質量部添加することによって、油状物質を比較的多量に包含するゲル組成物を作製できる。
【0096】
また、前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を50~300質量部添加することが好ましい。
【0097】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をゲル組成物中により安定に保持することも可能となる。
【0098】
上記工程(3)の加熱においては、上記工程(2)で得られた冷却または凍結された油状物質を含有する混合物(油状物質含混合物)をゲル化させるのに十分温度、または、上記工程(3)において、上記工程(2)で得られた混合物に油状物質を添加して得られた混合物(油状物質含有混合物)をゲル化させるのに十分な温度まで、上記油状物質含有混合物を昇温させればよい。すなわち、当該油状物質含有混合物を昇温させる程度は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0099】
ここで、油状物質含有混合物を昇温させる温度が高くなるほど、ゲル強度を高めることができる一方、無駄な加熱操作が増えて作業性が低下する傾向にある。さらに、ゲル構造から油状物質が分離しやすくなる傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、油状物質含有混合物を加熱する場合、25~60℃まで昇温させることが好ましい。
上記昇温させる温度の下限については25℃とすることによって、ゲル強度を十分に高めることができる。また、ゲル強度をより十分に高めるという点では、下限については30℃とすることがより好ましく、40℃がさらに好ましい。
一方、上記昇温させる温度の上限については60℃とすることによって、無駄な加熱操作および油状物質の分離を抑制することができ、これにより、ゲル組成物の品質および作業性の低下を抑制することができる。また、無駄な加熱操作および油状物質の分離をより抑制するという点では、上限については50℃とすることが好ましい。
【0100】
上記の通り、油状物質を添加した後、工程(3)で加熱して油状物質含有混合物をゲル化させることによって、油状物質含有ゲル組成物を得ることができる。
【0101】
上記した本実施形態のゲル油状物質含有組成物の製造方法によれば、工程(1)にて、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合することによって、混合物中にダマを発生させることなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物を溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
しかも、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
【0102】
そして、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、油状物質を添加することによって、ゲル化しておらず、且つ、油状物質を含有する混合物(油状物質含有混合物)が得られ、これを加熱することによって、上記水和膨潤物中のガラクトース部分分解物の分子間に油状物質を取り込みながら(乳化しながら)ゲル化させることができ、これにより、油状物質含有ゲル組成物を得ることができる。
また、このようにして得られた油状物質含有ゲル組成物は、添加した油状物質がゲル組成物と分離することなくこれに安定して取り込まれており、油状物質を十分に含有するものとなる。
【0103】
従って、上記製造方法によれば、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造することができる。
【0104】
なお、例えば、工程(1)で油状物質を添加する場合には、工程(1)で得られた油状物質含有混合物を、工程(2)で冷却または凍結した後、必要に応じて、工程(3)で使用するまで、例えば15℃以下の低温で静置して保存してもよい。そして、このように保存した油状物質含有混合物を、工程(3)で加熱してゲル化させて、油状物質含有ゲル組成物を得ることもできる。
【0105】
また、例えば、工程(1)で油状物質を添加しない場合には、工程(2)で冷却または凍結後の混合物(水和膨潤物)を、必要に応じて、工程(3)で使用するまで、例えば15℃以下の低温で静置して保存してもよい。そして、このように保存した混合物に、工程(3)で油状物質を添加して油状物質含有混合物とし、これを加熱してゲル化させて、油状物質含有ゲル組成物を得ることもできる。
【0106】
さらに、例えば、工程(3)においては、油状物質含有混合物を、必要に応じて、ゲル化のための加熱を行うまで、例えば15℃以下の低温で静置して保存してもよい。そして、この油状物質含有組成物を、所望形状の鋳型に移し、この状態で加熱してゲル化させて、成型品としての油状物質含有ゲル組成物を得ることもできる。
【0107】
また、本実施形態の製造方法に用いられるガラクトース部分分解物は、前述したように、可逆的熱ゲル化特性を有しており、より具体的には、体温程度まで加熱することでゲル化される特性を有している。よって、本実施形態の製造方法は、例えば、工程(3)において、油状物質含有混合物を肌に塗布し、体温によって加熱して、ゲル化してもよい。すなわち、油状物質含有ゲル組成物を、用時調製してもよい。
【0108】
本実施形態の油状物質含有ゲル組成物は、上記本実施形態の製造方法によって得られたものである。
かかる油状物質含有ゲル組成物は、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを含有し、且つ、油状物質を、0.01~90質量%含有する。
【0109】
本実施形態によれば、油状物質含有ゲル組成物が、油状物質が十分に含有され、且つ、簡便に製造されたものとなる。
【0110】
本実施形態の油状物質含有ゲル組成物は、ガラクトース部分分解物を、0.05~20質量%含有することが好ましい。
ガラクトース部分分解物を、0.05~20質量%含有することによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質を安定に包含させることができる。
【0111】
本実施形態の油状物質含有ゲル組成物は、ガラクトース部分分解物を、0.2~5質量%含有することがより好ましい。
ガラクトース部分分解物を、0.2~5質量%含有することによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離することなく安定に包含できるという利点がある。
【0112】
また、本実施形態の製造方法によって得られた油状物質含有ゲル組成物は、上記の通り、加熱によってゲル化させて製造されるものであるため、この性質に基づいて、家庭、医療現場、生体材料、化粧料など、各種産業に利用可能な高分子材料として、各種分野で利用することができる。また、本実施形態で用いるガラクトース部分分解物は、天然物由来のガラクトキシログルカンを化学修飾して得られたものではないため、生体に対して安全な油状物質と混合するときに界面活性剤を必ずしも使用する必要がないため、得られた油状物質ゲル組成物も、生体に対して安全に使用することができ、また食品への使用も可能となり得る。
【0113】
以上、本実施形態の油状物質含有ゲル組成物の製造方法及び油状物質含有ゲル組成物について説明したが、本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。例えば、上記ゲル組成物の製造方法及びゲル組成物においては、ガラクトース部分分解物、油状物質、および水性溶媒以外の添加剤を適宜添加してもよい。
【実施例】
【0114】
以下、本発明について、実施例を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0115】
(製造例1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造
・β-ガラクトシダーゼの精製:
複合酵素活性を有する市販のβ-ガラクトシダーゼ(製品名:ラクターゼY-AO、ヤクルト社製、Aspergillusorizae由来)の2.5%水溶液をイオン交換クロマトグラフィー(製品名:DEAE Toyopeal、東ソー社製)の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0~0.6MのNaClグラジエントに付し、NaCl濃度0.2~0.4Mで溶出させた。さらに、疎水クロマトグラフィー(製品名:Butyl-Toyopeal、東ソー社製)の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0~0.6Mの硫酸アンモニウムグラジエントに付し、硫酸アンモニウム濃度10%以下で溶出させた。以上の操作により、市販の粗酵素2.5gから精製酵素60mgを得た。本品はセルラーゼ活性、IPase(イソプリメベロース生成酵素)活性が認められなかった。
【0116】
・ガラクトース部分分解物の製造:
上記で得た精製酵素β-ガラクトシダーゼを用い、基質の1%ガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)水溶液を、酵素濃度2.4×10-5質量%、pH5.6、50℃で反応させた後、100℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。反応溶液は、反応開始後約15時間でゲル化して、ゲル状の組成物を得た。得られたゲル状の組成物におけるガラクトース除去率を以下の方法で算出した。
ゲル状の組成物の1質量%水溶液7gにセルラーゼオノズカRS(ヤクルト社製)0.15質量%溶液(50mM酢酸緩衝液、pH4.0)を1mL加え、50℃、オーバーナイトで反応させた。上記1%ガラクトキシログルカン水溶液も同様の方法で反応させ、対照とした。反応後、反応液を98℃で30分間加熱することによって酵素を失活させた。その後、試料を前処理カートリッジ(IC-SP、東ソー社製)および0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルターにかけ、得られたろ液10μLを、アセトニトリル:水=60:40(v/v)を0.6mL/分で流しているHPLCのアミノカラムにアプライし、ガラクトキシログルカンのオリゴ糖(7糖(ガラクトース0個)、8糖(ガラクトース1個)、9糖(ガラクトース2個))の溶出面積を示差屈折率計で検出した。次いで、1ユニット(7糖)あたりのガラクトース量を、(8糖の面積+(9糖の面積×2))/(7糖の面積+8糖の面積+9糖の面積)により算出した。上記式で算出したゲル状の組成物について算出されたガラクトース量の、対照のガラクトキシログルカンから算出されたガラクトース量からの減少率をガラクトース除去率(%)としてさらに算出したところ、約45%だった。
そして、上記得られたゲル状の組成物を凍結乾燥、または、該ゲル状の組成物にアルコールを加えて沈殿・濾取後、乾燥して、粉状のガラクトース部分分解物を得た。
【0117】
以下の実験例1~4において、ガラクトース部分分解物を水に室温で分散させた分散液を、冷却または凍結した後、油状物質を混合して加熱して製造されたものを実施例とし、油状物質を混合せずに加熱して製造されたものを比較例とした。
【0118】
(実験例1)
(1)オリーブ油含有ゲル組成物の作製
プラスチックカップ(製品名:プロマックス、容量:90mL、品番:EI-90、旭化成パックス社製)に、製造例1で得られたガラクトース部分分解物1.0gを加え、室温の水を加え、全量を20gとしてガラクトース部分分解物(5質量%)の分散液を調製した。この状態で、分散液を-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して、分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後の試料に、0.2、0.4、0.8、1.2、2.0、3.0、4.0.5.0、10.0gのオリーブ油(製品名:スブベティカオーガニックエキストラバージンオリーブ油、DSP五協フード&ケミカル社製。なお、オリーブ油として、以下、同様のオリーブ油を用いた。)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、触感及び使用感を評価した。下記表1に示す基準で、オリーブ油の分離を評価した。また、保形性については、50℃で2時間保持(加熱)後、プラスチック容器を水平状態から90°傾け、ゲル組成物の変形が見られないとき、保形性を有する(ゲル形成された)と判断した。触感については、加熱後の組成物を容器から取り出し、取り出したゲル組成物を手の甲の肌上に貼付することにより触感を評価した。
オリーブ油の添加量および分離についての結果を表2に示す。
【0119】
【0120】
表2に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液20gから、少なくとも4gまでのオリーブ油を含有する良好なゲル組成物を作製することができた。また、得られたゲル組成物は、プラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物を、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
【0121】
【0122】
(実験例2)
(1)オリーブ油含有ゲル組成物の作製(工程(1)の分散液中にオリーブ油を添加して作製する方法)
実験例1と同様の方法で、全量を20gとしてガラクトース部分分解物(5質量%)の分散液を調製した後、4.0gのオリーブ油を添加し、混合しなかった。この状態で、オリーブ油を添加した分散液を-20℃に設定した冷凍庫で2時間静置して、分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後の試料を、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表3に示す。
【0123】
表3に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液に4gのオリーブ油を添加して作製した試料でも。良好なゲル組成物が得られた。また、得られたゲル組成物は、プラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。また、取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
【0124】
【0125】
(実験例3)
(1)シリコーン油含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、ガラクトース部分分解物1.0gの分散液20g(5質量%)を調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、1.0、2.0、3.0、4.0gのシリコーン油(製品名:ケアシル、型式:CSF-3100、ヌシルテクノロジー社製)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、シリコーン油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表4に示す。また、比較例1の結果も併せて示す。
【0126】
表4に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液20gから、4gまでのシリコーン油を含有する良好なゲル組成物を作製することができた。また、得られたゲル組成物は、プラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
【0127】
【0128】
(実験例4)
(1)ゴマ油含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、ガラクトース部分分解物1.0gの分散液20g(5質量%)を調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、0.2、0.5、1.0、2.0.3.0gのゴマ油(かどや社製)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、ゴマ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、ゴマ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表5に示す。
【0129】
表5に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液20gから、1.0gまでのゴマ油を含有する良好なゲル組成物を作製することができた。また得られたゲル組成物は、プラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
【0130】
【0131】
(実験例5)
(1)オレイン酸含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、3質量%および5質量%のガラクトース部分分解物を含有する分散液を30.0g調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、撹拌棒を用いて混合しながら、オレイン酸(ナカライテスク社製)を少量ずつ添加して、ゲル組成物に安定に含有できるオレイン酸添加量を調べた。オレイン酸を添加した混合物を、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オレイン酸含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オレイン酸の分離、保形性(ゲル形成)、及び触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表6に示す。
【0132】
表6に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液30gでは、3.3gのオレイン酸を含有する、良好なオレイン酸含有ゲル組成物を作製できた。
これに対し、3質量%の部分分解物を含有する分散液30gでは、5質量%部分分解物を含有する分散液30gと比較して少なくとも約2.5倍多くのオレイン酸(8.2g)を分離することなく安定に含有する、良好なオレイン酸含有ゲル組成物を作製できた。また、得られたオレイン酸を含有する2つのゲル組成物は、いずれもプラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
【0133】
【0134】
(実験例6)
(1)石鹸含有ゲル組成物の作製
本実験例の処方を、下記表7に示す。
上記プラスチックカップに、製造例1で得られたガラクトース部分分解物1.0gを加え、室温の水を加え、全量を15gとしてガラクトース部分分解物の分散液(5質量%)を得た。得られた分散液に、石鹸素地液1(製品名:プライオリーB-100B(登録商標)、花王社製)、石鹸素地液2(製品名:アミライトGCK-12K(登録商標)、味の素社製)を5gずつ別々に添加し、スパチュラを用いて混合した(石鹸素地液1の凍結前添加:実施例18、石鹸素地液2の凍結前添加:実施例20)。これら石鹸素地液1、2を添加した各分散液(2つ)と、石鹸素地液を添加していない分散液(2つ)を、-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して、-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、石鹸素地液を添加していない分散液に、石鹸素地液1、石鹸素地液2を5gずつ別々に添加し、スパチュラを用いて混合した(石鹸素地液1の凍結解凍後添加:実施例19、石鹸素地液2の凍結解凍後添加:実施例21)。各分散液を、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、石鹸素地液含有ゲル組成物を作製した。
【0135】
【0136】
(2)評価
実施例18~21では、いずれも石鹸素地液を含有するゲル組成物が得られた。
石鹸素地液が均一に混合されている場合を、「◎」と表し、均一に混合されていない場合を、「○」と表すことによって、評価した。結果を表7に表す。
表7に示すように、石鹸素地液を凍結前の分散液に混合した場合(実施例18及び20)、均一に石鹸素地液を含有する良好なゲル組成物が得られた。しかし、凍結後解凍した混合物に石鹸素地液を混合した場合(実施例19及び21)、石鹸素地液の分離はほとんど見られなかったが、均一には混合されなかった。凍結前に石鹸素地液を添加したゲル組成物(実施例18及び20)を用いて、水道水で手を洗浄したところ、ゲル組成物は、良好な泡立ち性を示し、問題なく手を洗浄することができた。
【0137】
(実験例7)
(1)オリーブ油及び石鹸素地液含有ゲル組成物の作製
本実験例の処方を表8に示す。
プラスチックカップ〔旭化成パックス社製、製品名プロマックス、容量:90mL、EI-90〕に、下記表8に示すように、製造例1で得られたガラクトース部分分解物を1.0g、石鹸素地液(製品名:プライオリーB-100(登録商標)、花王社製)を0または6g加え、室温の水を加え、全量を20gとしてガラクトース部分分解物を5質量%含有する分散液を得た。調製した分散液を-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、石鹸素地液を添加および添加していない試料に、水4g(オリーブ油0g+水4g)、オリーブ油2g及び水2g(オリーブ油2g+水2g)、オリーブ油3g及び水1g(オリーブ油3g+水1g)、オリーブ油4g(オリーブ油4g+水0g)を添加し、スパチュラを用いて混合した。得られた混合液を、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油及び石鹸素地液含有ゲル組成物(オリーブ油配合ゲル石鹸組成物)を作製した。
(2)評価
オリーブ油を単独で含有するゲル組成物、及び、オリーブ油と石鹸素地液とを含有するゲル組成物の分離について、実験例1と同様にして評価を行った。結果を表8に示す。
【0138】
【0139】
表8に示すように、5質量%の部分分解物を含有する分散液20gに石鹸素地液を凍結前に混合しておくことによって、ゲル組成物全量(100質量%)に対して17質量%のオリーブ油を含有する良好な組成物を得ることができた(実施例27)。また、得られたゲル組成物は、プラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
実施例22~27のゲル組成物で手を洗浄したところ、泡立ちが良いことが確認された。洗浄後、手の表面を観察したところ、手の表面にオリーブ油が薄被膜として残存したことにより、該手の表面が、しっとりとしていた。オリーブ油を含有していないゲル組成物(実施例28)は、凍結解凍後の水添加と撹拌とによって、起泡し、その後の加熱処理によって、細かな泡を内含したままゲル化したため、起泡化されたゲル組成物を作製することができた。
【0140】
(実験例8)
ゲル組成物を用いたクレンジング実験
実施例1と同様にして、3質量%の部分分解物を含有する分散液を調製し、凍結した後、解凍して、混合物を調製した(試料1:ゲル化されていない)。
さらに、上記混合物100質量部に対して20質量部のオリーブ油を徐々に添加し、スパチュラを用いて混合して、オリーブ油含有混合物を調製した(試料2:ゲル化されていない)。
一方、ガラクトースが部分除去されていないガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)を水に加えて撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトキシログルカンを含有する水溶液を調製した(試料3:ゲル化されていない)。
【0141】
次いで、人の腕に、赤色のリップクリーム(販売品名:リップドレスR、近江兄弟社製)を円形に塗布した(2cm×2cmを5箇所)。
そして、5箇所の塗布面それぞれに、試料1、2、3を適量塗布し、手指でこすり洗いした(各塗布面について10往復)。こすり洗いを行った後、残存するゲルを流水に晒すことのみによって、穏やかに除去した。除去後の塗布面を観察したところ、試料3で洗浄した塗布面は、リップクリームがほとんど除去されていなかったが、試料2で洗浄した塗布面は、リップクリームが全て除去されていた。試料1で洗浄した塗布面は、リップクリームがほとんど除去されていた。よって、ガラクトース部分分解物及び油状物質を含有するゲル組成物では、グリロイドと比較して、優れた洗浄効果を明瞭に確認することができた。
【0142】
さらに、洗浄後、塗布面を乾燥させ、塗布面全体にティッシュを軽く押し付けたところ、試料3で洗浄した塗布面(塗布面に相当する腕の部分)に接触したティッシュには赤色が付着した。これに対し、試料1で洗浄した塗布面(塗布面に相当する腕の部分)に接触したティッシュには、赤色の付着がやや見られたが、試料2で洗浄した塗布面に接触したティッシュには、赤色の付着は全く見られなかった。
【0143】
さらに、試料1、2を50℃で2時間加熱してゲル化させたゲル組成物を用いて、上記と同様に洗浄したところ、試料1、2と同様の結果が確認された。
【0144】
(実験例9)
実験例9の処方を表9~17に示す。なお、表8~10において、ガラクトース部分分解物を「部」と表し、ガラクトキシログルカン(グリロイド)を「グ」と表し、メチルセルロースを「メ」と表し、氷温下撹拌溶解により調製したガラクトース部分分解物を「部・撹拌」と表す。
【0145】
油状物質として、上記オリーブ油、上記シリコーン油、流動パラフィン(ナカライテスク社製)、2-エチルヘキサン酸セチル(製品名:セチオールSN-1、BASF社製)、オレイルアルコール(ナカライテスク社製)、トリオレイン(ナカライテスク社製)、ラノリン(シグマ製)、キャノーラ油(日清オイリオ社製)を用いた。使用する水に防腐剤(プロクリン200、シグマ社製)を0.05質量%添加した水溶液を用いたことと、容器としてガラス製スクリューカップ(容量30mL、No.35、マルエム社製)を用いた。
【0146】
(1)実施例29~58:各種油状物質を含有するゲル組成物の作製
実施例1と同様にして、ガラクトース部分分解物を含有する水分散液を調製し、凍結後、解凍することによって、混合物(水和膨潤物)を作製した。得られた混合物に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、25℃~80℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。なお、後述するように、4℃に調節した恒温器中で、一定時間静置したものは、ゲル化しなかった(比較例9、10、13)。なお、いずれの温度でも、5~10分程度でゲル化が確認された。
【0147】
(2)比較例2~8、11、12:各種油状物質を含有するゲル組成物の作製
上記ガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)を水に加え、撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトキシログルカンを含有する水溶液を調製した。得られた水溶液に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、4℃、及び、25℃~80℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。なお、これらは、恒温器中で一定時間静置したものの、いずれの温度でもゲル化しなかった。
【0148】
(3)比較例9、10、13:各種油状物質を含有するゲル組成物の作製
実施例1と同様にして、ガラクトース部分分解物を含有する水分散液を調製し、凍結後、解凍することによって、混合物(水和膨潤物)を作製した。得られた混合物に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、4℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。得られた組成物は、ゲル化しなかった。
【0149】
(4)比較例14~15:各種油状物質を含有するゲル組成物の作製
上記ガラクトース部分分解物を氷温に冷却した水に加え、撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトース部分分解物を含有する水溶液を調製した。得られた水溶液に、油状物質(オリーブ油)を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、50℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。
【0150】
(5)比較例16~21:各種油状物質を含有するゲル組成物の作製
メチルセルロース(製品名:メトローズ(登録商標)SM-4000(高粘性タイプ)、信越化学工業社製)の粉末を、室温の水に添加して分散液の作製を試みたが、ダマが多く発生したため分散液を作製することはできなかった。そこで、90℃以上に加熱した水に上記メチルセルロースを添加し、混合することによって分散液を作製した。得られた分散液を4℃まで冷却し、さらに撹拌溶解することにより、3質量%の水溶液を調製した。得られた水溶液を目視で観察したところ、ガラクトース部分分解物を用いた混合物と同程度の粘性を示した。そして、得られた水溶液に、油状物質(オリーブ油)を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、50℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。
【0151】
(6)参考例1~25:各種油状物質を含有する組成物の作製
上記(1)~(4)において、油状物質を添加して撹拌して得られた調製直後の組成物(恒温器中に静置していない組成物)を、そのまま(ゲル化させないまま)参考例の組成物とした。
【0152】
(7)評価
得られた油状物質含有組成物について、実験例1と同様にして、調製直後及び恒温器内で一定条件で保存後の油状物質の分離、保形性(ゲル形成)、及び触感を評価した。油状物質の分離についての結果を表9~表17に示す。
【0153】
(8)安定性
得られた組成物について、恒温器内での保存時間と分離との関係を調べた。具体的には、一定条件で保存した後で実験例1と同様にして評価を行い、上記(6)での調製直後の上記組成物の評価と比較することによって、経時安定性を評価した。そして、一定条件で保存した後でも良好と評価された組成物を、経時的に安定なものと判定した。なお、表9~17の保存条件の欄において、「-」は調製直後の組成物であり、恒温器で保存しなかったことを示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
表9~17に示すように、ガラクトース部分分解物を含有する組成物は、25℃以上の加熱でゲル化が見られた。また、メチルセルロースを含有する組成物は、50℃以上の加熱でゲル化が見られた。これに対し、ガラクトキシログルカンを含有する組成物はゲル化しなかった。
【0164】
油状物質(例、オリーブ油(実施例32))と、ガラクトース部分分解物とを含有するゲル組成物は、80℃保存下でも安定であり、熱耐性(ゲルが崩れたり溶解したりしない)及び高温環境下での安定性(高温環境下で油状物質が分離しない)を有することが示された。
一方、かかる油状物質とガラクトース部分分解物とを含有する組成物は、低温(4℃)での長期保存ではゾルを呈していた。また、この低温保存により、油状物質の分離が見られ(水和膨潤物が油状物質を取り込む量が低下し)、安定性が低い傾向にあった。
ガラクトース部分分解物と水性溶媒との混合物(水和膨潤物)は、低温でゲル化しないことから、油状物質を含有するゲル組成物を作製するためには、さらに、油状物質を経時的に分離することなく安定に含有するゲル組成物を作製するためには、油状物質を上記混合物に混合するだけでは不十分であり、上記混合物を、温度を上昇させることによって一旦ゲル化させることが必要であり、そして、このようにゲル化させて得られたゲル組成物は、油状物質を経時的に分離することなく安定に含有できることが明らかとなった。
また、各種油状物質とガラクトース部分分解物とを含有するゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができ、いずれも心地よい触感があることがわかった。
【0165】
上記表に示すように、本発明の方法によって作製した油状物質含有ゲル組成物(例えば、実施例40~43)は、氷温下で撹拌溶解させた溶液(従来法、先行特許文献1を参照)を用いて作製したゲル組成物(比較例14、15)よりも、油状物質を製造時に分離することなく安定して含有させ得ることが明らかとなった(例、参考例15)。
また、従来法で調製した溶液に油状物質を含有させて作製した組成物は、50℃で一定時間保存したとき、2時間後から油状物質の分離が多くなり(比較例14)、24時間後では、油状物質の分離が著しく、安定性を全く維持することはできなかった(比較例15)。
これに対して、本発明の方法で得られる油状物質含有ゲル組成物は、上記混合物(水和膨潤物)の段階で、予想外なことに、従来法で調製した溶液よりも多くの油状物質を分離することなく安定に含有させた組成物を製造することができ(例、参考例14)、さらに、この組成物を加熱してゲル化させることによって、50℃で一定時間保存したとき、少なくとも1ヶ月まで、経時的にも分離することなく安定性を維持することが可能であった(実施例43)。
しかも、本発明の方法によって作製した油状物質含有ゲル組成物は、製造が簡便であった。
この結果から、本発明の方法で得られる上記混合物(水和膨潤物)およびゲル組成物は、従来法で製造した溶液やゲル組成物よりも、油状物質を分離することなく安定に含有させることができ、しかも、経時的に分離することなく安定に含有しやすい構造となっていると考えられる。
【0166】
上記表に示すように、ガラクトキシログルカン(グリロイド)を用いた場合には、保存前(参考例2,4、5、8、10、12、13)、及び、各種条件での保存後(比較例2~8、11,12)において、各種油状物質含有する組成物は、明らかに、ガラクトース部分分解物を用いた場合よりも分離しており、安定性が低かった。これらの結果は、ガラクトース部分分解物はグリロイドに比べて製造時により多量の油状物質を含有することができること、さらに経時安定性(油状物質の含有量の低下が抑制されていること)も高いことを示している。このことから、ゲル組成物における油状物質の含有量及び経時安定性には、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースの部分分解によって発現する物性変化が関与していることが示唆された。
【0167】
上記表に示すように、ガラクトース部分分解物を用いた水和膨潤物(混合物)は、質量比で、混合物の等量から数倍量のオリーブ油(参考例11、14)、シリコーン油(参考例3)、流動パラフィン(参考例6、7)、セチオール(参考例9)、ラノリン(参考例18)、およびキャノーラ油(参考例19)を安定に含有できることが示された。特に、オリーブ油に関しては、上記混合物は、その約7倍量を安定に含有できることが示された(参考例14)。さらに、上記油状物質を含有するゲル組成物は、各種保存条件において良好な経時安定性を示した(実施例33~47)。このように、一定濃度のガラクトース部分分解物を含有する上記混合物は、多量の油状物質を含有できることから、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物は、油状物質を抱え込みながら柔軟に伸展できるネットワーク構造(網目構造)を有するものと推察される。
本実施例で検討した油状物質のうち、オレイルアルコール及びトリオレインは、上記他の油状物質に比べて、上記混合物中に安定に含有される量が比較的少なかった(参考例16、17)。しかし、オレイルアルコール及びトリオレインを含有させた場合でも、一定保存条件で良好な経時安定性を示した(実施例50、51)。
【0168】
上記表に示すように、ガラクトース部分分解物を用いたゲル組成物に、製造時(ゲル化時)及び経時的に安定に含有させ得るオリーブ油の含有量は、3質量%の水分散液(水和膨潤物)の場合に最大を示した。これに対して、ガラクトース部分分解物を3質量%含有する水分散液(水和膨潤物)の場合、同じ濃度のメチルセルロース溶液に比べ、約2倍量のオリーブ油を分離することなく、安定に含有し得ることが示された。
ガラクトース部分分解物を4質量%~5質量%含有する水分散液(水和膨潤物)を用いたゲル組成物は、同じ濃度のメチルセルロース溶液と比べて、分離することなく安定に含有できるオリーブ油の量が著しく少なくなる傾向にあった。予想外なことに、ガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物は、一般に知られているメチルセルロースとは明瞭に異なる、油状物質を安定に含有できる特異な濃度(3質量%)を有することが明らかとなった。ガラクトース部分分解物を3質量%の含有する水分散液(水和膨潤物)を用いたゲル組成物では、油状物質を安定に取り込んで包含するのに最適なネットワーク構造(網目構造)が形成されていると考えられる。
以上の結果から、天然由来の水性多糖の構造を一部酵素処理するだけで、広範囲の油状物質を安定に含有するゲル状組成物を作製できること、また油状物質を含有するこのゲル組成物は、触感が良好であることが示された。
【0169】
(実験例10)
化粧品(ミルクローション)(比較例22)
製造例1で得られたガラクトース部分分解物を用いて、特許文献1(特開平8-283305号公報)に記載の処方に類似する下記表18の処方で化粧品(ミルクローション)を作製した。本実験例では、ガラクトース部分分分解物を、氷温下で水に撹拌溶解した。作製した試料を50℃のインキュベータ内に2時間静置したが、保形性のあるゲルは形成されなかった。
【0170】