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特許7311333隙間処理部材及び区画体の貫通孔処理構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】隙間処理部材及び区画体の貫通孔処理構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20230711BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20230711BHJP
   A62C 3/16 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
F16L5/04
E04B1/94 F
E04B1/94 N
A62C3/16 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019125343
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021011897
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸和
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223190(JP,A)
【文献】特開2007-205472(JP,A)
【文献】特開2018-105376(JP,A)
【文献】特開2016-223279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
E04B 1/94
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画体に設けられた貫通孔に挿通された貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間において前記貫通部材を取り囲む状態に設置される隙間処理部材であって、
前記貫通部材を取り囲むようにして前記貫通孔の内側に配置される筒状部と、
前記筒状部と一体であり、前記筒状部の厚さ方向に沿って当該筒状部の外面側から中心に向けて延びる複数の弁部と、を有し、
前記弁部は、熱膨張性能を有し、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、
前記筒状部は、熱膨張性能を有し、前記厚さ方向へ圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、
前記弁部は、前記筒状部よりも圧縮変形しやすくなるように、発泡度が相対的に高く、
前記筒状部は、前記貫通孔への挿入性を高めるような形状を維持すべく、前記弁部よりも圧縮変形しにくいことを特徴とする隙間処理部材。
【請求項2】
複数の前記弁部は、それぞれ前記厚さ方向に沿う前記筒状部の中心側に先端が位置するとともに前記中心よりも前記筒状部の外面側に基端が位置し、複数の前記弁部が前記基端で互いに連結されて弁体を構成し、前記弁体は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する板状の発泡体から構成され、
各弁部は、前記弁体の中心から放射状に延びるスリット同士の間に形成されるとともに、前記先端と前記基端を結ぶ方向へ圧縮変形可能である請求項1に記載の隙間処理部材。
【請求項3】
前記筒状部は、当該筒状部の内側からの押圧により、前記厚さ方向に沿って前記筒状部の外面の少なくとも一部が拡張変形する請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の隙間処理部材。
【請求項4】
前記区画体を前記貫通孔が貫通する方向を貫通方向とすると、前記区画体における前記貫通方向の一方側において前記貫通孔の周囲を覆うフランジ部を有する請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の隙間処理部材。
【請求項5】
前記筒状部は、前記厚さ方向に圧縮変形可能な突出部を前記筒状部の内面に有する請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の隙間処理部材。
【請求項6】
前記突出部は、熱膨張性能を有する請求項に記載の隙間処理部材。
【請求項7】
区画体に設けられた貫通孔に貫通部材が挿通され、前記貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間に前記貫通部材を取り囲むように隙間処理部材が設置されている区画体の貫通孔処理構造であって、
前記隙間処理部材は、請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の隙間処理部材からなり、
前記隙間に配置された前記筒状部が前記厚さ方向へ圧縮されて当該筒状部の外面が前記貫通孔の内周面に密接し、
前記弁部が撓み変形又は圧縮することで前記貫通部材が前記弁部の間の通過口を通過するとともに、前記弁部の先端側が前記貫通部材の外周面に密接していることを特徴とする区画体の貫通孔処理構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通部材の外周面と貫通孔の内周面との隙間に設置される隙間処理部材及び隙間処理部材が設置されている区画体の貫通孔処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物等において、区画体としての壁を厚さ方向に貫通するケーブルや配管といった貫通部材を配設する場合、壁に貫通孔をあけて貫通部材を貫通させ、その貫通部材の外周面と貫通孔の内周面との隙間に隙間処理部材や筒状部材を設置して区画体の貫通孔処理構造を形成している。
【0003】
隙間処理部材としては、例えば特許文献1に記載の熱膨張性耐火具が挙げられる。特許文献1に記載の熱膨張性耐火具は、貫通孔内に挿入される筒状の耐火具本体と、耐火具本体の外周面から張り出したフランジと、耐火具本体の内周面からフランジとは反対方向に張り出した舌片とを備える。
【0004】
耐火具本体は、貫通部材が挿通可能な挿通孔を備える熱膨張性ゴム製である。耐火具本体の厚さ方向への寸法には、火災等で発生した熱により膨張する熱膨張部の厚さが確保されるとともに、該熱膨張部の外周面側において火災等の発生時に耐火具本体の外形形状を維持する外形維持部の厚さが確保されている。
【0005】
そして、貫通孔処理構造においては、貫通孔の内周面と貫通部材の外周面との間に熱膨張性耐火具が設置されるとともに、熱膨張性耐火具の挿通孔内に挿通された貫通部材の外周面と耐火具本体の内周面との間には複数の舌片が配置されている。複数の舌片は貫通部材の外周面に密接するように弾性変形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-241027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の熱膨張性耐火具において、耐火具本体は熱膨張性ゴム製であるが、耐火具本体の径方向への厚さには、熱膨張部の厚さが確保されるとともに外形維持部の厚さが確保されている。このため、耐火具本体は変形しにくく、貫通孔の大きさによっては耐火具本体を貫通孔に挿入しにくいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、貫通孔への挿入性を向上できる隙間処理部材及び区画体の貫通孔処理構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための隙間処理部材は、区画体に設けられた貫通孔に挿通された貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間において前記貫通部材を取り囲む状態に設置される隙間処理部材であって、前記貫通部材を取り囲むようにして前記貫通孔の内側に配置される筒状部と、前記筒状部と一体であり、前記筒状部の厚さ方向に沿って当該筒状部の外面側から中心に向けて延びる複数の弁部と、を有し、前記弁部は、撓むことで前記貫通部材が通過する通過口を形成する板状体、又は圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、前記筒状部は、前記厚さ方向へ圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、前記筒状部は、前記弁部に比べて撓みにくいことを要旨とする。
【0010】
隙間処理部材について、複数の前記弁部は、それぞれ前記厚さ方向に沿う前記筒状部の中心側に先端が位置するとともに前記中心よりも前記筒状部の外面側に基端が位置し、複数の前記弁部が前記基端で互いに連結されて弁体を構成し、前記弁体は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する板状の発泡体から構成され、各弁部は、前記弁体の中心から放射状に延びるスリット同士の間に形成されるとともに、前記先端と前記基端を結ぶ方向へ圧縮変形可能であってもよい。
【0011】
また、隙間処理部材について、前記筒状部及び前記弁部は熱膨張性能を有し、前記筒状部の熱膨張率は前記弁部の熱膨張率よりも大きくてもよい。
上記問題点を解決するための隙間処理部材は、区画体に設けられた貫通孔に挿通された貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間において前記貫通部材を取り囲む状態に設置される隙間処理部材であって、前記貫通部材を取り囲むようにして前記貫通孔の内側に配置される筒状部と、前記筒状部の厚さ方向における当該筒状部の内面と前記貫通部材の外周面との間を閉塞する閉塞部と、を有し、前記筒状部及び前記閉塞部は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、前記筒状部は、前記閉塞部に比べて撓みにくいことを要旨とする。
【0012】
隙間処理部材について、前記筒状部は、当該筒状部の内側からの押圧により、前記厚さ方向に沿って前記筒状部の外面の少なくとも一部が拡張変形してもよい。
隙間処理部材について、前記区画体を前記貫通孔が貫通する方向を貫通方向とすると、前記区画体における前記貫通方向の一方側において前記貫通孔の周囲を覆うフランジ部を有していてもよい。
【0013】
隙間処理部材について、前記筒状部は、前記厚さ方向に圧縮変形可能な突出部を前記筒状部の内面に有していてもよい。
隙間処理部材について、前記突出部は、熱膨張性能を有していてもよい。
【0015】
上記問題点を解決するための区画体の貫通孔処理構造は、区画体に設けられた貫通孔に貫通部材が挿通され、前記貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間に前記貫通部材を取り囲むように隙間処理部材が設置されている区画体の貫通孔処理構造であって、前記隙間処理部材は、前記貫通部材を取り囲むようにして前記貫通孔の内側に配置される筒状部と、前記筒状部の厚さ方向に沿って当該筒状部の外面側から中心に向けて延設される複数の弁部と、を有し、前記弁部は、撓み変形又は圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成されるとともに、前記筒状部は、前記厚さ方向へ圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、前記筒状部は、前記弁部に比べて撓みにくく形成されており、前記隙間に配置された前記筒状部が前記厚さ方向へ圧縮されて当該筒状部の外面が前記貫通孔の内周面に密接し、前記弁部が撓み変形又は圧縮することで前記貫通部材が前記弁部の間の通過口を通過するとともに、前記弁部の先端側が前記貫通部材の外周面に密接していることを要旨とする。
【0016】
上記問題点を解決するための区画体の貫通孔処理構造は、区画体に設けられた貫通孔に貫通部材が挿通され、前記貫通部材の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間に前記貫通部材を取り囲む隙間処理部材が設置されている区画体の貫通孔処理構造であって、前記隙間処理部材は、前記貫通部材を取り囲むようにして前記貫通孔の内側に配置される筒状部と、前記筒状部の内面と前記貫通部材の外周面との間に配置される閉塞部と、を有し、前記筒状部及び前記閉塞部は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成され、前記筒状部は、前記閉塞部に比べて撓みにくく、前記隙間に配置された前記筒状部が厚さ方向へ圧縮されて当該筒状部の外面が前記貫通孔の内面に密着し、前記閉塞部が前記厚さ方向へ圧縮することで当該閉塞部が前記筒状部の内面と前記貫通部材の外周面に密接していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、貫通孔への挿入性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す断面図。
図2】第1の実施形態の隙間処理部材を示す分解斜視図。
図3】第1の実施形態の隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す斜視図。
図4】第2の実施形態の隙間処理部材を示す分解斜視図。
図5】第2の実施形態の隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す断面図。
図6】第3の実施形態の隙間処理部材を示す分解斜視図。
図7】第3の実施形態の隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す断面図。
図8】第4の実施形態の隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す正面図。
図9】別例の隙間処理部材を示す斜視図。
図10】隙間処理部材を用いた貫通孔処理構造を示す断面図。
図11】別例の隙間処理部材を示す分解斜視図。
図12】(a)は筒状部材を貫通孔に挿入した図、(b)は筒状部材を内側から拡張させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、隙間処理部材、及び区画体の貫通孔処理構造を具体化した第1の実施形態を図1図3にしたがって説明する。
【0020】
まず、区画体としての壁Wについて説明する。図1に示すように、壁Wはコンクリート製の中実状をなすとともに、壁Wには、貫通部材としての配線Pを壁Wの厚さ方向に貫通させるための円孔状の貫通孔Waが形成されている。なお、複数の配線Pを纏めた状態で形成される外周面を配線Pの外周面としてもよい。配線Pの外周面は周方向に凹凸状である場合もあるし、円状である場合もある。また、貫通部材は、配線Pの他に、パイプや保護管といった配管材であってもよいし、配線と配管材とを纏めたものであってもよい。配線Pの外周面と貫通孔Waの内周面との間には隙間Sが画成され、この隙間Sには、配線Pを取り囲む隙間処理部材11が設置されている。
【0021】
次に、隙間処理部材11について説明する。
図2に示すように、隙間処理部材11は、円筒状に形成された筒状部12と、該筒状部12の軸方向の一端面に接着された弁体20と、を有する。筒状部12及び弁体20は、それぞれ熱膨張性能を有する発泡体からなり、具体的には、母材に熱膨張材が均一に分散された発泡体からなる。筒状部12及び弁体20は、母材に熱膨張材と発泡剤が混練された母材材料における発泡剤のみを発泡させて得られたものである。本実施形態では、熱膨張材として膨張黒鉛が使用され、母材として、ポリマーが使用され、より具体的には、合成ゴムが使用されている。合成ゴムとしてはクロロプレンゴムが使用されている。なお、合成ゴムとしては、クロロプレンゴムの他に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(IR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)が挙げられる。
【0022】
また、発泡剤の発泡開始温度は130~200℃であり、膨張黒鉛の発泡開始温度は120~300℃である。隙間処理部材11の筒状部12及び弁体20の製造方法としては、例えば、クロロプレンゴムに膨張黒鉛及び発泡剤を均一に分散させて母材材料を調整した後、膨張黒鉛が膨張しないように、膨張黒鉛が膨張する温度より低い温度で母材材料を加熱し、発泡剤を発泡させて製造される。
【0023】
隙間処理部材11は、発泡剤の発泡によって形成された微細な気泡を多数有するスポンジ状であり、気泡は隙間処理部材11の内部及び表面に多数存在している。また、発泡クロロプレンゴムにより、隙間処理部材11は圧縮変形可能である。
【0024】
筒状部12及び弁体20は、それぞれ発泡体であるが、発泡度が異なり、筒状部12の発泡度は、弁体20の発泡度より低い。筒状部12及び弁体20において、母材の体積に対する気泡の比率を発泡度とする。
【0025】
筒状部12の中心軸線の延びる方向を筒状部12の軸方向とし、軸方向に直交する方向を筒状部12の厚さ方向とする。筒状部12の厚さ方向は、筒状部12の内面と外面とを繋ぐ方向でもある。また、筒状部12の軸方向への弁体20の寸法を、弁体20の厚さとする。筒状部12の厚さは、弁体20の厚さより厚い。そして、上記したように、筒状部12の発泡度は弁体20の発泡度より低いことも加味すると、筒状部12は、弁体20よりも圧縮変形しにくく、撓みにくい。言い換えると、弁体20の弁部22は、筒状部12よりも圧縮変形しやすく、撓みやすい。つまり、筒状部12は圧縮変形可能である一方で、筒状部12の形状をある程度維持できる材質である。
【0026】
なお、筒状部12及び弁体20の発泡度の上限は、30倍程度である。発泡度が30倍より大きくなると、筒状部12及び弁体20が軟らかくなりすぎて、後述する反力を十分に得られず好ましくないからである。
【0027】
本実施形態では、筒状部12と弁体20とで発泡度を異ならせているが、この場合、筒状部12の発泡度の上限は、5倍までが好ましく、2倍までがより好ましい。これは、筒状部12の発泡度を、上限の30倍よりも低くすることで、筒状部12を撓みにくくして貫通孔Waへの挿入性を高めることを目的とするためである。
【0028】
一方、弁部22の発泡度においては、30倍よりも低い中で、筒状部12よりも相対的に発泡度を高くする。このように設定することで、弁部22を筒状部12よりも撓みやすくでき、配線Pの外面形状に追従して変形しやすくなる。
【0029】
また、筒状部12の熱膨張率は、弁体20の熱膨張率より大きくなるように膨張黒鉛の配合を筒状部12と弁体20とで異ならせている。
筒状部12の内側には円孔状をなす挿通孔13が、筒状部12の軸方向に貫通して形成されている。挿通孔13の半径を「r」とする。筒状部12は、筒状部12の軸方向全体に亘って延びる分割用スリット14を備える。分割用スリット14は、筒状部12の厚さ方向へ延びる。そして、分割用スリット14は、筒状部12の外面と挿通孔13とを連通するように筒状部12の厚さ方向に繋がり、挿通孔13を筒状部12の外側へ開口可能としている。
【0030】
弁体20は、円枠状の基部21と、基部21から、基部21の中心に向けて突出する扇形状の弁部22と、を有し、全体として円盤状である。弁体20は、基部21が筒状部12の軸方向の一端面に接着されることで、筒状部12と一体化されている。弁体20の最大寸法である直径は、筒状部12の外径と同じである。このため、弁体20の外周部は、筒状部12の外面から張り出していない。
【0031】
弁体20は、当該弁体20の中心から放射状に延びる複数のスリット23を有する。複数のスリット23は、弁体20の外面に到達しない途中まで延びている。そして、複数のスリット23よりも外側に基部21が位置している。各スリット23において、弁体20の中心から基部21に至るまでの寸法を、スリット23の長さとする。このスリット23の長さは、上記の挿通孔13の半径rと同じ又は僅かに長い。
【0032】
弁体20は、複数のスリット23のうちの一つに連続する半割用スリット24を有する。半割用スリット24は、弁体20の外面と一つのスリット23とを連通させる。そして、半割用スリット24により基部21が半割可能に形成されている。
【0033】
各弁部22は、弁体20の周方向に隣り合うスリット23同士の間に形成されている。各弁部22は、基部21から弁体20の中心に向かうに従い幅狭となる扇形の板状体である。各弁部22の先端は筒状部12の中心側に位置している。弁体20に配線Pが差し込まれると、弁体20がスリット23によって複数に分割されて複数の弁部22が形成されるようになっている。
【0034】
弁体20の基部21が筒状部12の軸方向の一端面に接着された隙間処理部材11において、各スリット23は、弁体20の中心から筒状部12の内周縁に至るまで延びている。このため、各弁部22の基端は筒状部12の内周縁に沿う位置にある。つまり、各弁部22は、筒状部12の外面側から中心に向けて延設されている。各弁部22は、撓み変形可能である。また、各弁部22は、先端と基端とを結ぶ方向、つまり筒状部12の厚さ方向に圧縮変形可能であるとともに、圧縮されると原形状へ復帰する反力を有する。
【0035】
そして、弁体20に配線Pが挿通されない状態では、弁体20は筒状部12の挿通孔13を閉鎖している。一方、弁体20に配線Pが挿通されると弁体20が撓み変形するとともに、圧縮変形し、圧縮状態から原形状へ復帰する反力により、各弁部22の先端側は配線Pに密接するようになっている。
【0036】
次に、上記構成の隙間処理部材11を用いた貫通孔処理構造について説明する。
図1又は図3に示すように、壁Wの貫通孔Wa内には、配線Pが挿通されるとともに、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sには、隙間処理部材11の筒状部12が設置されている。壁Wを配線Pが貫通する方向を貫通方向とすると、筒状部12の軸方向への寸法は、貫通方向への貫通孔Waの長さより短い。
【0037】
筒状部12及び弁体20は、外面側から径方向に圧縮されている。筒状部12及び弁体20の外面は、貫通孔Waの内周面に密接している。また、弁体20に配線Pが挿通されることにより、弁体20には、各弁部22の間に配線Pの通過口25が形成されている。つまり、配線Pは通過口25を通過している。
【0038】
各弁部22は、基部21と配線Pとの間で径方向に圧縮されている。各弁部22の先端面は配線Pの外面に密接している。そして、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sは、隙間処理部材11によってほぼ全体が閉塞される。なお、配線Pの外周面と各弁部22の先端側との間に僅かな隙間が生じる場合は、その隙間に図示しない熱膨張パテを充填する。
【0039】
次に、隙間処理部材11を用いた貫通孔処理構造の形成方法を説明する。
まず、貫通孔Wa内に配線Pを挿通し、壁Wに配線Pを貫通させる。次に、隙間処理部材11における分割用スリット14及び半割用スリット24から隙間処理部材11を拡開させ、挿通孔13を隙間処理部材11の軸方向全体に亘って開口させる。そして、壁Wの外側で分割用スリット14及び半割用スリット24内に配線Pを通過させ、さらに、配線Pを挿通孔13内に収容する。その後、隙間処理部材11の拡開状態を解除し、隙間処理部材11を閉じる。すると、配線Pの外側に隙間処理部材11が装着される。このとき、弁体20が複数の弁部22に分割され、各弁部22の先端側が配線Pの外面に接触する。
【0040】
続いて、隙間処理部材11を配線Pに沿って貫通孔Waに向けてスライド移動させ、隙間処理部材11を、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sに挿入する。このとき、図1の2点鎖線に示すように、貫通孔Waの直径が筒状部12及び弁体20の外径より若干小さい場合、筒状部12及び弁体20は外面側から、筒状部12の厚さ方向へ僅かに圧縮変形されながら隙間Sに挿入される。そして、貫通孔Waの隙間Sに筒状部12及び弁体20が挿入されると、圧縮変形した筒状部12及び弁体20の原形状へ復帰しようとする反力により、筒状部12及び弁体20の外面は貫通孔Waの内周面に密接する。なお、貫通孔Waの直径が筒状部12及び弁体20の外径より若干大きい場合は、筒状部12及び弁体20は厚さ方向へ圧縮変形されず、隙間Sに挿入される。
【0041】
また、弁体20においては、各弁部22が、筒状部12の厚さ方向へ圧縮変形される。貫通孔Waの隙間Sに弁体20が挿入されると、弁体20の原形状へ復帰しようとする反力により、弁部22の先端面は配線Pの外周面に密接する。すると、隙間処理部材11が壁Wに設置される。
【0042】
次に、壁Wの貫通孔処理構造の作用を説明する。
さて、壁Wの貫通孔Waに貫通孔処理構造が設けられた建築物において、壁Wの一方の壁面側で火災等が発生すると、配線Pやその他のものの燃焼により煙が発生する。このとき、貫通孔Waは、筒状部12の貫通孔Wa内周面への密接、弁部22の配線Pの外周面への密接、及び熱膨張パテにより閉鎖されているため、貫通孔Waが煙の経路となることが防止され、壁Wの他方の壁面側へ煙が伝わる不都合がなくなる。
【0043】
さらに配線Pが燃焼し、火災等や燃焼により発生した熱により隙間処理部材11及び熱膨張パテの露出面側が加熱される。すると、隙間処理部材11及び熱膨張パテが膨張する。このとき、隙間処理部材11の筒状部12と弁体20とでは、筒状部12の方が弁体20よりも熱膨張率が大きいため、筒状部12の方が弁体20よりも大きく膨張する。さらに、配線Pが燃え進むと、隙間処理部材11が内面から加熱されるとともに、熱膨張パテも加熱される。すると、隙間処理部材11及び熱膨張パテが内面側から膨張する。加熱された隙間処理部材11及び熱膨張パテは、筒状部12の軸方向及び厚さ方向へ膨張し、配線Pを押し潰しながら貫通孔Waを密封閉鎖する。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)隙間処理部材11の筒状部12及び弁部22は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成されている。このため、貫通孔Waの直径が、筒状部12の外径より小さい場合には、筒状部12の外面を貫通孔Waの内周面に密接させることができるとともに、弁部22の先端側を配線Pの外周面に密接させることができる。そして、筒状部12は、弁部22に比べて撓みにくいため、例えば、筒状部12が弁部22と同じように撓みやすい材質である場合と比べると、筒状部12の形状を維持しやすく、貫通孔Waの隙間Sへの筒状部12の挿入性が向上する。
【0045】
(1-2)弁部22は、弁体20をスリット23によって基部21と弁部22に分割して形成されている。このため、弁体20に弁部22を形成しやすい。
(1-3)隙間処理部材11の筒状部12及び弁部22は、それぞれ熱膨張性能を有する。このため、壁Wの貫通孔Waに貫通孔処理構造が設けられた建築物において火災等が発生した場合、隙間処理部材11を熱膨張させて貫通孔Waを密封閉鎖する。その結果、配線Pの外周面と貫通孔Waの内周面との間の隙間Sが熱、煙の経路となり、壁Wの他方の壁面側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0046】
(1-4)隙間処理部材11を構成する筒状部12の熱膨張率を、弁体20の熱膨張率より大きくした。筒状部12の熱膨張率を弁体20の熱膨張率より大きくすることで、配線Pと筒状部12との間が空いていても、熱膨張した筒状部12によって隙間Sを密封閉鎖しやすい。
【0047】
(1-5)隙間処理部材11は、筒状部12と弁体20を接着して形成されている。このため、発泡度の異なる筒状部12と弁体20を備える隙間処理部材11を製造しやすい。
【0048】
(1-6)隙間処理部材11の筒状部12及び弁体20はそれぞれ圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する。このため、貫通孔Waの貫通方向の両側で貫通孔Waの開口する位置がずれ、貫通孔Waの両側で隙間Sの寸法が異なっていても、筒状部12及び弁体20が圧縮によって隙間Sの大きさに追従して変形することで隙間Sを閉塞できる。そして、隙間Sの大きさに追従して隙間処理部材11が変形するため、配線Pを撓ませることなく隙間Sを閉塞できる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、隙間処理部材、及び区画体の貫通孔処理構造を具体化した第2の実施形態を図4図5にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、第2の実施形態の隙間処理部材31は、筒状部12と、筒状部12の軸方向両端に設けられた弁部22と、を有する。弁部22は、弁体20を筒状部12の軸方向の端面に接着することで設けられている。
【0051】
図5に示すように、第2の実施形態の隙間処理部材31を用いた貫通孔処理構造は、区画体としての中空壁40に設置される。中空壁40は、立設された複数本の間柱41と、該間柱41を挟むようにして立設される複数対の間仕切り壁42とから構築される。そして、間柱41を挟んで相対向する対の間仕切り壁42同士の間には中空部43が形成されている。中空壁40には、配線Pを貫通させるための貫通孔44が形成されている。貫通孔44は、各間仕切り壁42に形成された円孔状の孔42aと中空部43とが繋がって形成されている。
【0052】
貫通孔44には、配線Pが挿通されるとともに、貫通孔44のうち、間仕切り壁42の孔42aの内周面と配線Pの外周面との隙間Sには、隙間処理部材31の筒状部12の両端部及び弁体20が設置されている。筒状部12及び一対の弁体20は、外周面側から径方向に圧縮されている。筒状部12及び一対の弁体20の外周面は、間仕切り壁42の孔42aの内周面に密接している。また、弁体20に配線Pが挿通されることにより、各弁体20には、各弁部22の間に配線Pの通過口25が形成されている。つまり、配線Pは通過口25を通過している。
【0053】
一対の間仕切り壁42の孔42aの位置が、筒状部12の軸方向にずれている場合がある。この場合、筒状部12の軸方向の一端部と他端部の位置もずれる。すると、各孔42aにおいて、孔42aの内周面と配線Pの外周面との隙間Sにおいて、狭くなる位置と広くなる位置とが併存する。図5の右下側の孔42aにおいて、隙間Sが狭くなった部分では、筒状部12及び弁体20がより厚さ方向へ圧縮され、図5の右上側の孔42aにおいて、隙間Sが広くなった部分では、筒状部12及び弁体20の圧縮が弱まる。
【0054】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-5)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)隙間処理部材31は、筒状部12の軸方向の両端に弁部22を備える。このため、貫通孔44の貫通方向の両端を弁部22で閉塞することができる。
【0055】
(2-2)隙間処理部材31の筒状部12及び弁体20はそれぞれ圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する。このため、筒状部12の軸方向の両側で孔42aの位置がずれて隙間Sの寸法が異なっても、筒状部12及び弁体20の圧縮によって隙間Sを閉塞できる。そして、隙間Sの大きさに追従して隙間処理部材31が変形するため、配線Pを撓ませることなく隙間Sを閉塞できる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、隙間処理部材、及び区画体の貫通孔処理構造を具体化した第3の実施形態を図6図7にしたがって説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0057】
図7に示すように、第3の実施形態の隙間処理部材51は、配線Pを取り囲むようにして貫通孔Waの内側に配置される筒状部52と、筒状部52の内面と配線Pの外周面との間の隙間Sに配置され、隙間Sを閉塞する閉塞部53と、を有する。筒状部52及び閉塞部53は、それぞれ熱膨張性能を有する発泡体からなり、第1の実施形態と同じ材質である。
【0058】
筒状部52及び閉塞部53は、それぞれ発泡体であるが、発泡度が異なり、具体的には筒状部52は、閉塞部53よりも発泡度が低い。このため、筒状部52は、閉塞部53よりも圧縮変形しにくく、撓みにくい。言い換えると、閉塞部53は、筒状部52よりも圧縮変形しやすく、撓みやすい。
【0059】
図6に示すように、閉塞部53は円筒状である。閉塞部53は、筒状部52と中心軸を同じとする同心円筒状である。閉塞部53の外径は筒状部52の内径より小さい、又は、閉塞部53の外径は、筒状部52の内径と同じである。
【0060】
次に、上記構成の隙間処理部材51を用いた貫通孔処理構造について説明する。
図7に示すように、壁Wの貫通孔Wa内には、配線Pが挿通されるとともに、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との隙間Sには、隙間処理部材51の筒状部52が設置されている。また、筒状部52の内面と配線Pの外周面との間には閉塞部53が設置されている。筒状部52及び閉塞部53は、筒状部52の厚さ方向に圧縮されている。このため、筒状部52の外周面は、貫通孔Waの内周面に密接している。また、閉塞部53に配線Pが挿通されることにより、閉塞部53は、筒状部52と配線Pとの間で圧縮されている。閉塞部53の内周面は配線Pの外面に密接している。そして、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sは、隙間処理部材51によってほぼ全体が閉塞される。
【0061】
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)、(1-3)、(1-6)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(3-1)第3の実施形態の隙間処理部材51は、配線Pを取り囲むように配線Pの外周面に密接する筒状の閉塞部53を有する。このため、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sを隙間処理部材51によって閉塞しやすい。
【0062】
(第4の実施形態)
次に、隙間処理部材、及び区画体の貫通孔処理構造を具体化した第4の実施形態を図8にしたがって説明する。なお、第4の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0063】
第4の実施形態の隙間処理部材61は、配線Pを取り囲むようにして貫通孔Waの内側に配置される筒状部62と、筒状部52の内周面から突設された複数の突出部63と、を有する。筒状部62及び突出部63は、それぞれ熱膨張性能を有する発泡体からなり、第1の実施形態と同じ材質である。
【0064】
筒状部62及び突出部63は、それぞれ発泡体であるが、発泡度が異なり、具体的には筒状部62は、突出部63よりも発泡度が低い。筒状部62は、筒状部62の厚さ方向へ圧縮変形可能である。また、突出部63よりも圧縮変形しにくく、撓みにくい。言い換えると、突出部63は、筒状部62よりも圧縮変形しやすく、撓みやすい。
【0065】
複数の突出部63は、それぞれブロック状である。複数の突出部63は、筒状部62の周方向へ僅かな隙間を空けて等間隔おきに配置されている。各突出部63は、筒状部62の内面から筒状部62の中心に向けて突出する。各突出部63は、第1の実施形態の弁部22と同様に、配線Pの外周面に密接する。
【0066】
次に、上記構成の隙間処理部材61を用いた貫通孔処理構造について説明する。
壁Wの貫通孔Wa内には、配線Pが挿通されるとともに、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との隙間Sには、隙間処理部材61が設置されている。また、筒状部62の内周面と配線Pの外周面との間には複数の突出部63が配置されている。筒状部62及び突出部63は、外面側から筒状部62の厚さ方向に圧縮されている。このため、筒状部62の外面は、貫通孔Waの内周面に密接している。また、各突出部63の先端同士の間に配線Pが挿通されることにより、各突出部63は、筒状部62と配線Pとの間で、筒状部62の厚さ方向へ圧縮されている。突出部63の先端面は配線Pの外周面に密接している。そして、貫通孔Waの内周面と配線Pの外周面との間の隙間Sは、隙間処理部材61によってほぼ全体が閉塞される。したがって、複数の突出部63は、筒状部62の内面と配線Pの外周面との間を閉塞する閉塞部としても機能する。
【0067】
なお、筒状部62の周方向に隣り合う突出部63同士の間には僅かな隙間が形成されるが、この隙間には熱膨張パテが充填される。
従って、第4の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)、(1-3)、(1-4)、(1-6)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0068】
(4-1)隙間処理部材61の複数の突出部63により、配線Pを周方向の全体から支持することができ、配線Pを貫通孔Waの中心軸付近に安定した状態に支持できる。
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
図9に示すように、第1の実施形態の隙間処理部材11において、弁部22の外縁部を筒状部12の外面より張り出した構成とし、弁部22において筒状部12の外面より張り出した部分によって環状のフランジ部26を設けてもよい。フランジ部26は、筒状部12の周方向の全体に亘って設けられる。なお、弁体20は、厚さが第1の実施形態より薄く、撓み変形可能に構成されている。
【0070】
図10に示すように、フランジ部26を有する隙間処理部材11を用いた貫通孔処理構造では、フランジ部26は、壁Wにおける貫通方向の一方側において、貫通孔Waの周囲を覆うように、壁Wの表面に当接する。また、弁体20の各弁部22は、第1の実施形態と同様に、筒状部12の厚さ方向へ圧縮変形されるとともに、撓み変形する。そして、弁体20の原形状へ復帰しようとする反力により、弁部22の先端面は配線Pの外周面に密接する。
【0071】
このように構成した場合、貫通孔Waの直径が筒状部12の外径より若干大きい場合は、筒状部12は厚さ方向へ圧縮変形されずに隙間Sに挿入される。すると、筒状部12の外面と貫通孔Waの内周面との間に間隙Kが形成されるが、この間隙Kをフランジ部26によって表側から覆うことができる。
【0072】
○ 第1の実施形態において、筒状部12の軸方向の一端の外面に、当該筒状部12の外面から張り出したフランジ部を設けてもよい。この場合、フランジ部を発泡体で構成し、フランジ部を貫通孔Wa内に配置してもよい。フランジ部の外周面が貫通孔Waの内周面に密接するとよりよい。
【0073】
○ 第1及び第2の実施形態において、筒状部12と弁体20とは接着でなく、溶着であってもよいし、両面テープによる貼着であってもよい。また、筒状部12と弁体20とを一体成形してもよい。
【0074】
○ 第3の実施形態において、図11に示すように、閉塞部53は、配線Pを取り囲む基材55を有するとともに、当該基材55から貫通孔Waの内周面に向けて突出し、かつ配線Pを取り囲む方向へ複数並設された閉塞ブロック体56を備える構成であってもよい。このように構成した場合、閉塞部53は、複数の閉塞ブロック体56それぞれが貫通孔Waの内周面の一部に接触する。また、閉塞部53は、貫通孔Waの周方向に複数並設される。そして、配線Pを取り囲む方向に隣り合う閉塞ブロック体56同士の間に開いた各空間を介して壁Wの表側から裏側を視認不能とすべく、各空間を補完するように、貫通孔Waの貫通方向にずれた位置には、他の閉塞部53が配置される。
【0075】
○ 各実施形態において、弁部22は撓み変形可能な薄板状であってもよい。
○ 各実施形態において、筒状部12,52,62は発泡体であれば熱膨張性能を有していなくてもよい。
【0076】
○ 第1及び第2の実施形態において、弁部22を含む弁体20は熱膨張性能を有していなくてもよい。また、第3の実施形態において、閉塞部53は熱膨張性能を有していなくてもよい。さらに、第4の実施形態において、突出部63は熱膨張性能を有していなくてもよい。
【0077】
○ 第1及び第2の実施形態において、弁体20と筒状部12とで熱膨張率を同じにしてもよいし、弁体20の熱膨張率を筒状部12の熱膨張率より大きくしてもよい。また、第3の実施形態において、閉塞部53と筒状部52とで熱膨張率を同じにしてもよいし、閉塞部53の熱膨張率を筒状部52の熱膨張率より大きくしてもよい。さらに、第4の実施形態において、突出部63と筒状部62とで熱膨張率を同じにしてもよいし、突出部63の熱膨張率を筒状部62の熱膨張率より大きくしてもよい。
【0078】
○ 第3の実施形態において、閉塞部53は円筒状でなくてもよく、筒状部52の内面と配線Pの外周面との間を埋めることができれば、適宜変更してもよい。例えば、閉塞部53は、半円状に2分割されていてもよいし、3体以上に分割されていてもよい。
【0079】
図12(a)に示す筒状部材70を用いて貫通孔処理構造を壁Wに設けてもよい。筒状部材70は、貫通孔Waに挿通された配線Pの外周面と貫通孔Waの内周面との隙間Sにおいて配線Pを取り囲む状態に設置される。
【0080】
筒状部材70は、配線Pを取り囲むようにして貫通孔Waの内側に配置される筒状部71と、筒状部71の軸方向の一端に設けられ、筒状部71の外面から外方へ張り出すフランジ部72と、を有する。筒状部材70は、圧縮すると原形状へ復帰する反力を有する発泡体から構成されるとともに、熱膨張性能を有する。筒状部71は、軸方向に貫通する挿通孔71aを有する。そして、筒状部材70は、筒状部71の内側からの押圧により外面が拡張変形する性質を有する。筒状部71の外径は、貫通孔Waの直径より僅かに小さく、筒状部71は貫通孔Waに圧入することなく挿入できる。
【0081】
図12(a)に示すように、筒状部材70を用いて貫通孔処理構造を壁Wに設ける場合、まず、筒状部材70の筒状部71を貫通孔Waに挿入する。このとき、筒状部71は厚さ方向に圧縮されない。
【0082】
図12(b)に示すように、筒状部71の挿通孔71aに配線Pを挿入する。このとき、配線Pの直径は、筒状部71の内径より大きくする。すると、挿通孔71aに配線Pが圧入され、配線Pによって筒状部71が内側から押圧される。すると、筒状部71が拡径し、筒状部71の外面が拡張変形する。その結果、筒状部71の外面が貫通孔Waの内周面に密接する。
【0083】
○ 第1の実施形態において、筒状部12の外径が、貫通孔Waの直径より僅かに小さく、筒状部12を貫通孔Waに圧入することなく挿入できる場合、挿通孔13に配線Pを挿入することで、筒状部12を内側から押圧して拡径させる。そして、筒状部12の内側からの押圧により、筒状部12を厚さ方向に沿って拡径させ、当該筒状部12の外面を貫通孔Waの内周面に密接させてもよい。このとき、筒状部12は、周方向の一部が厚さ方向に拡張変形してもよいし、周方向の全体が厚さ方向に拡張変形してもよい。
【0084】
この場合、筒状部12を貫通孔Waに挿入するとき、筒状部12は厚さ方向に圧縮されない。そして、筒状部12の挿通孔13に配線Pを挿入する。このとき、配線Pの直径は、筒状部12の内径より大きくする。すると、挿通孔13に配線Pが圧入され、配線Pによって筒状部12が内側から押圧される。すると、筒状部12の外面の少なくとも一部が拡張変形する。その結果、筒状部12の外面が貫通孔Waの内周面に密接する。
【0085】
○ 第1及び第2の実施形態において、筒状部12の軸方向の端部に外面から凹む係止溝を設ける。そして、弁体20の外周部に、係止溝に係止する係止部を設ける。係止溝に係止部を係止させて、筒状部12に弁体20を一体化してもよい。
【0086】
○ 第1及び第2の実施形態の隙間処理部材11において、筒状部12と弁体20の発泡度を同一としてもよい。この場合、発泡度の上限は5倍までが好ましく、2倍までがより好ましい。そして、筒状部12と弁体20の発泡度が同一の場合は、弁部22の厚さを筒状部12の厚さより薄くすることで、弁部22を筒状部12より撓みやすくする。つまり、筒状部12を、弁部22に比べて撓みにくくする。
【0087】
また、筒状部12と弁体20とで厚さを同一とし、発泡度のみを相対的に差を付けることで、筒状部12を、弁部22に比べて撓みにくくしてもよいし、筒状部12と弁体20とで、厚さと発泡度の両方を調整して筒状部12を、弁部22に比べて撓みにくくしてもよい。
【0088】
○ 第3の実施形態の隙間処理部材51において、筒状部52と閉塞部53の発泡度を同一としてもよい。この場合、発泡度の上限は5倍までが好ましく、2倍までがより好ましい。そして、筒状部52と閉塞部53の発泡度が同一の場合は、閉塞部53の厚さを筒状部52の厚さよりも薄くすることで、閉塞部53を筒状部52より撓みやすくする。つまり、筒状部52を、閉塞部53に比べて撓みにくくする。
【0089】
また、筒状部52と閉塞部53とで厚さを同一とし、発泡度のみを相対的に差を付けることで、筒状部52を、閉塞部53に比べて撓みにくくしてもよいし、筒状部52と閉塞部53とで、厚さと発泡度の両方を調整して筒状部52を、閉塞部53に比べて撓みにくくしてもよい。
【0090】
○ 第4の実施形態の隙間処理部材61において、筒状部62と突出部63とで発泡度を同一としてもよいし、筒状部62と突出部63とで、厚さと発泡度の両方を調整して筒状部62を突出部63に比べて撓みにくくしてもよい。
【0091】
○ 各形態において、弁部22は扇形状であるが、弁部22の形状は適宜変更してもよい。
○ 壁Wの厚さ、すなわち貫通孔Waの貫通方向への寸法が大きい場合は、貫通孔Waの貫通方向の両側から隙間処理部材11を隙間Sに挿入してもよい。
【0092】
○ 区画体は、如何なるものであってもよい。例えば、床でもよい。
○ 貫通孔Waの形状は、四角形状といった多角形状としてもよい。
○ 壁Wに形成した貫通孔Waにスリーブを設置し、該スリーブの内側を貫通孔としてもよい。
【符号の説明】
【0093】
P…貫通部材としての配線、S…隙間、W…区画体としての壁、Wa,44…貫通孔、11,31,51,61…隙間処理部材、12,52,62,71…筒状部、22…弁部、23…スリット、26,72…フランジ部、53…閉塞部、63…突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12