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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】測定装置及び測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019149697
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2020052035
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2018177406
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066571(JP,A)
【文献】特開2018-028464(JP,A)
【文献】特開2015-152411(JP,A)
【文献】特開2017-111071(JP,A)
【文献】特開2018-036769(JP,A)
【文献】特開2017-156179(JP,A)
【文献】特開2009-068951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有し、前記受光素子からの受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、
前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、
前記測距部および前記偏向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測距部の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向とに基づいて線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との一対の交点の座標を検出し、前記測定光の走査軌跡と前記測定対象物とが交差するように前記一対の交点の座標に基づいて前記射出方向を変更するよう前記偏向部の偏向作動を制御することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記一対の交点の座標の中心が水平方向の左右いずれか一方に向けて連続的に移動するように、前記射出方向を変更することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記一対の交点の座標の延長線上に前記所定の中心が配置されるように前記射出方向を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記射出方向を変更する前の前記測定光の走査軌跡と前記射出方向を変更した後の前記測定光の走査軌跡とが重なるように、前記射出方向を変更することを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記一対の交点のいずれか一方に前記所定の中心が配置されるように前記射出方向を変更することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測定光の走査軌跡が円形となり、かつ前記測定対象物が配置される位置において前記円形が前記測定対象物の太さに応じたサイズとなるように前記射出方向を変更することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記測定光の走査軌跡が前記一対の交点を結ぶ方向を短軸とした楕円形となり、かつ前記短軸が前記一対の交点を結ぶ直線と前記測定光とがなす傾斜角に応じた長さとなるように前記射出方向を変更することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
測定対象物の測定を行う測定装置の制御方法であって、
前記測定装置は、
測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有する測距部と、
前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、を有し、
前記受光素子からの受光信号に基づき前記測定対象物の測距を行う測距工程と、
前記測距工程の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向とに基づいて線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との一対の交点の座標を検出する交点検出工程と、
前記測定光の走査軌跡と前記測定対象物とが交差するように前記一対の交点の座標に基づいて前記射出方向を変更するよう前記偏向部の偏向作動を制御する制御工程と、を備えることを特徴とする測定装置の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土木、建築等の分野で距離測定、形状測定を行なうものとして点群データを取得するレーザスキャナが用いられている。従来のレーザスキャナでは、スキャン領域を事前に範囲設定し、一旦スキャン条件(例えば、スキャン速度、発光周波数)を設定すると、設定したスキャン条件でスキャン領域全体をスキャンする様になっている。
【0003】
このような従来のレーザスキャナは、いずれかの測定部位のスキャン密度(単位面積当たりの測定点データ数)を高くしたい場合、スキャン領域全体のスキャン密度を高くして膨大なスキャンデータを取得する必要があった。そこで、特許文献1では、高いスキャン密度が要求される部位を局所測定範囲として設定して高いスキャン密度でスキャンし、効率よくスキャンデータを取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-66571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるレーザスキャナにおいて、局所測定範囲は、作業者が目視で判断した部位、あるいは撮像部が取得した画像データからエッジが多く抽出された部位となっている。しかしながら、作業者が目視で局所測定範囲を設定する場合、作業者による設定作業が煩雑であるとともに設定作業に多大な時間を要する。また、画像データからエッジを抽出して局所測定範囲を設定する場合、画像データの処理に時間と処理負荷が必要であるとともに所望の測定対象物のみを効率よく測定することができない。特に、測定対象物が線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される電線等である場合に、測定対象物の全体を簡易かつ効率良く測定することができなかった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される測定対象物の全体を簡易かつ効率良く測定することが可能な測定装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有し、前記受光素子からの受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、前記測距部および前記偏向部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測距部の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向とに基づいて線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との一対の交点の座標を検出し、前記測定光の走査軌跡と前記測定対象物とが交差するように前記一対の交点の座標に基づいて前記射出方向を変更するよう前記偏向部の偏向作動を制御することを特徴とする測定装置により解決される。
【0008】
本構成の測定装置によれば、測距部の測距結果と偏向部により偏向される射出方向とに基づいて、線状、棒状および柱状の少なくともいずれか(以下、説明の便宜上「線状等」と称することがある。)に形成される測定対象物と測定光の走査軌跡との一対の交点の座標が検出される。一対の交点の座標が検出される場合、周方向に走査される測定光が線状等の測定対象物を測定している状態である。そして、線状等の測定対象物を測定している状態で、測定光の走査軌跡と線状等の測定対象物とが交差するように、測定光の射出方向が変更される。そのため、測定光の射出方向を変更した後も、線状等に形成される測定対象物を測定している状態が維持される。このような測定光の射出方向の変更を繰り返すことにより、線状に形成される測定対象物の全体を簡易かつ効率よく測定することができる。
【0009】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記一対の交点の座標の中心が水平方向の左右いずれか一方に向けて連続的に移動するように、前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、線状等に形成される測定対象物の一端から他端までの領域を水平方向の左右いずれか一方に沿って連続的に測定することができる。
【0010】
本発明の測距装置において、好ましくは、前記制御部は、前記一対の交点の座標の延長線上に前記所定の中心が配置されるように前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測距装置によれば、一対の交点の座標の延長線上に測定光の走査軌跡の中心が配置されるため、線状等に形成される測定対象物が略直線状に延びる場合に、測定光の射出方向を変更した後も測定対象物を確実に測定することができる。
【0011】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記射出方向を変更する前の前記測定光の走査軌跡と前記射出方向を変更した後の前記測定光の走査軌跡とが重なるように、前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、射出方向を変更する前の測定光の走査軌跡と射出方向を変更した後の測定光の走査軌跡とが重なるため、線状等に形成される測定対象物を確実に捕捉しつつ高密度に測定することができる。
【0012】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記一対の交点のいずれか一方に前記所定の中心が配置されるように前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、一対の交点の座標のいずれか一方に測定光の走査軌跡の中心が配置されるため、線状等に形成される測定対象物が曲線状に延びる場合や、延びる方向が転換する場合であっても、射出方向を変更した後に測定対象物を確実に測定することができる。
【0014】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記測定光の走査軌跡が円形となり、かつ前記測定対象物が配置される位置において前記円形が前記測定対象物の太さに応じたサイズとなるように前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、測定対象物が配置される位置における円形の走査軌跡のサイズを測定対象物の太さに応じたサイズとしているため、測定装置から測定対象物までの距離によらずに、測定対象物を所望の密度で測定することができる。
【0015】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記測定光の走査軌跡が前記一対の交点を結ぶ方向を短軸とした楕円形となり、かつ前記短軸が前記一対の交点を結ぶ直線と前記測定光とがなす傾斜角に応じた長さとなるように前記射出方向を変更することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、測定対象物が延びる方向と測定光の方向とが90°よりも大きい鈍角である傾斜角をなすように配置した場合であっても、一対の交点を結ぶ長さが一定に維持されるため、線状等に形成される測定対象物の各部の座標を一定の間隔で取得することができる。
【0016】
前記課題は、本発明によれば、測定対象物の測定を行う測定装置の制御方法であって、前記測定装置は、測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有する測距部と、前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、を有し、前記受光素子からの受光信号に基づき前記測定対象物の測距を行う測距工程と、前記測距工程の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向とに基づいて線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との一対の交点の座標を検出する交点検出工程と、前記測定光の走査軌跡と前記測定対象物とが交差するように前記一対の交点の座標に基づいて前記射出方向を変更するよう前記偏向部の偏向作動を制御する制御工程と、を備えることを特徴とする測定装置の制御方法により解決される。
【0017】
本構成の測定装置の制御方法によれば、測距工程の測距結果と偏向部により偏向される射出方向とに基づいて線状等に形成される測定対象物と測定光の走査軌跡との一対の交点の座標が検出される。一対の交点の座標が検出される場合、周方向に走査される測定光が線状等の測定対象物を測定している状態である。そして、線状等の測定対象物を測定している状態で、測定光の走査軌跡と線状等の測定対象物とが交差するように、測定光の射出方向が変更される。そのため、測定光の射出方向を変更した後も、線状等に形成される測定対象物を測定している状態が維持される。このような測定光の射出方向の変更を繰り返すことにより、線状等に形成される測定対象物の全体を簡易かつ効率よく測定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される測定対象物の全体を簡易かつ効率良く測定することが可能な測定装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るレーザスキャナを具備する測量システムの外観図である。
図2図1に示すレーザスキャナの概略構成図である。
図3図1に示すレーザスキャナに於ける偏向部の概略図である。
図4図3に示す偏向部の作用説明図である。
図5】電線を基準光軸に沿って水平方向にみたX-Z平面図である。
図6】電線及び測量システムを上方からみたX-Y平面図である。
図7】電線及び測量システムを水平方向からみたY-X平面図である。
図8】演算制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図9】演算制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図10】操作装置の操作画面に表示される画像の一例を示す図である。
図11】電線を円形にスキャンした状態を示す図である。
図12】探索開始点から複数回に渡って円形にスキャンしたときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図13】探索開始点から複数回に渡って円形にスキャンしたときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図14】第1実施形態の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+3回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図15】第1実施形態の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+3回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図16】第2実施形態の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+3回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図17】第3実施形態の測量システムにおいて、電線を円形にスキャンした状態を示す図である。
図18】第4実施形態の測量システムにおいて、電線及び測量システムを上方からみたX-Y平面図である。
図19】第4実施形態の測量システムにおいて、楕円形のスキャンをn回からn+1回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図20図19に示す電線を上方からみた図である。
図21】第4実施形態の比較例の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+1回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。
図22図21に示す電線を上方からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。先ず、図1に於いて、本実施形態に係るレーザスキャナを具備する測量システム(測定装置)について概略を説明する。図1中、1は測量システムであり、Oは後述する偏向部35により偏向されていない状態での光軸を示し、この時の光軸を基準光軸とする。
【0021】
測量システム1は、主に支持装置としての三脚2、レーザスキャナ3、操作装置4、回転台5から構成される。回転台5は三脚2の上端に取付けられ、回転台5にレーザスキャナ3が横回転可能及び縦回転可能に取付けられる。又、回転台5は、レーザスキャナ3の横方向の回転角(水平方向の回転角)を検出する機能を具備している。
【0022】
回転台5には横方向に延びるレバー7が設けられる。レバー7の操作により、レーザスキャナ3を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、また所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0023】
レーザスキャナ3は、測距部3A(図2参照)、姿勢検出部17(図2参照)を内蔵し、測距部3Aは測定光23を測定対象物、或は測定範囲に射出し、反射測定光24を受光して測定を行う。又、姿勢検出部17は、レーザスキャナ3の鉛直(又は水平)に対する姿勢を高精度に検出可能である。
【0024】
操作装置4は、レーザスキャナ3との間で有線、無線等所要の手段を介して通信を行う通信機能を有する。又、操作装置4は、アタッチメント8を介してレーザスキャナ3に着脱可能となっており、取外した操作装置4は片手で保持し、操作可能であり、操作装置4によりレーザスキャナ3を遠隔操作可能となっている。
【0025】
更に、レーザスキャナ3からは、画像、測定状態、測定結果等が操作装置4に送信され、画像、測定状態、測定結果等が、操作装置4に記憶され操作装置4の表示部(図示せず)に表示される様になっている。操作装置4は、例えばスマートフォンであってもよい。
【0026】
図2を参照して、レーザスキャナ3について説明する。
レーザスキャナ3は、測定光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、第1通信部18、演算制御部19、第1記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。尚、測定光射出部11、受光部12、測距演算部13等は測距部3Aを構成する。
【0027】
測定光射出部11は射出光軸26を有し、射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、射出光軸26は、受光光軸31と合致する様に偏向される。第1反射鏡29と第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。発光素子27はパルスレーザ光線を発し、測定光射出部11は、発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測定光23として射出する。
【0028】
受光部12について説明する。受光部12には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測定光24が入射する。受光部12は、受光光軸31を有し、受光光軸31には、上記した様に、第1反射鏡29、第2反射鏡32によって偏向された射出光軸26が合致する。
【0029】
偏向された射出光軸26上に、即ち受光光軸31上に偏向部35(後述)が配設される。偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。基準光軸Oは、偏向部35によって偏向されなかった時の射出光軸26又は受光光軸31と合致する。
【0030】
偏向部35を透過し、入射した受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、また受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。結像レンズ34は、反射測定光24を受光素子33に結像する。受光素子33は反射測定光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、測距演算部13に入力される。測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0031】
図3を参照して、偏向部35について説明する。偏向部35は、一対の光学プリズム36a,36bから構成される。光学プリズム36a,36bは、それぞれ円板状であり、受光光軸31上に直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。光学プリズム36a,36bとして、それぞれリズレープリズムが用いられることが、装置を小型化するために好ましい。偏向部35の中央部は、測定光23が透過し、射出される第1偏向部である測定光偏向部35aとなっており、中央部を除く部分は反射測定光24が透過し、入射する第2偏向部である反射測定光偏向部35bとなっている。
【0032】
光学プリズム36a,36bとして用いられるリズレープリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素37a,37bと多数のプリズム要素38a,38bによって構成され、円板形状を有する。光学プリズム36a,36b及び各プリズム要素37a,37b及びプリズム要素38a,38bは同一の光学特性を有する。
【0033】
プリズム要素37a,37bは、測定光偏向部35aを構成し、プリズム要素38a,38bは反射測定光偏向部35bを構成する。リズレープリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なリズレープリズムを製作できる。
【0034】
光学プリズム36a,36bはそれぞれ受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。光学プリズム36a,36bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出光軸26を通過する測定光23を任意の方向に偏向し、受光される反射測定光24を受光光軸31と平行に偏向する。光学プリズム36a,36bの外形形状は、それぞれ受光光軸31を中心とする円形であり、反射測定光24の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、光学プリズム36a,36bの直径が設定されている。
【0035】
光学プリズム36aの外周にはリングギア39aが嵌設され、光学プリズム36bの外周にはリングギア39bが嵌設されている。リングギア39aには駆動ギア41aが噛合し、駆動ギア41aはモータ42aの出力軸に固着されている。同様に、リングギア39bには駆動ギア41bが噛合し、駆動ギア41bはモータ42bの出力軸に固着されている。モータ42a,42bは、モータドライバ16に電気的に接続されている。
【0036】
モータ42a,42bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。モータ42a,42bの回転量がそれぞれ検出され、モータドライバ16によりモータ42a,42bが個別に制御される。尚、エンコーダを直接リングギア39a,39bにそれぞれ取付け、エンコーダによりリングギア39a,39bの回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0037】
駆動ギア41a,41b、モータ42a,42bは、測定光射出部11と干渉しない位置、例えばリングギア39a,39bの下側に設けられている。
投光レンズ28、第1反射鏡29、第2反射鏡32、測定光偏向部35a等は、投光光学系を構成し、反射測定光偏向部35b、結像レンズ34等は受光光学系を構成する。
【0038】
測距演算部13は、発光素子27を制御し、測定光23としてパルスレーザ光線を発光させる。測定光23が、プリズム要素37a,37b(測定光偏向部35a)により、測定点に向うよう偏向される。
【0039】
測定対象物から反射された反射測定光24は、プリズム要素38a,38b(反射測定光偏向部35b)、結像レンズ34を介して入射し、受光素子33に受光される。受光素子33は、受光信号を測距演算部13に送出し、測距演算部13は受光素子33からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測定光23が照射された点)の測距を行い、測距データは第1記憶部20に格納される。而して、測定光23をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データが取得できる。
【0040】
射出方向検出部15は、モータ42a,42bに入力する駆動パルスをカウントすることで、モータ42a,42bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、モータ42a,42bの回転角を検出する。又、射出方向検出部15は、モータ42a,42bの回転角に基づき、光学プリズム36a,36bの回転位置を演算する。
【0041】
更に、射出方向検出部15は、光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測定光23の射出方向を演算し、演算結果は演算制御部19に入力される。演算制御部19は、測定光23の射出方向から基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1、鉛直角θ2を演算し、各測定点について、水平角θ1、鉛直角θ2を測距データに関連付けることで、測定点の3次元データを求めることができる。
【0042】
姿勢検出部17について説明する。姿勢検出部17は、フレーム45を有し、フレーム45は筐体9に固定され、或は構造部材に固定され、レーザスキャナ3と一体となっている。フレーム45にジンバルを介してセンサブロック46が取付けられている。センサブロック46は、直交する2軸を中心に360゜回転自在となっている。センサブロック46には、第1傾斜センサ47、第2傾斜センサ48が取付けられている。
【0043】
第1傾斜センサ47は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、第2傾斜センサ48は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0044】
センサブロック46のフレーム45に対する2軸についての相対回転角は、エンコーダ49,50によって検出される様になっている。又、センサブロック46を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が2軸に関して設けられており、モータは、第1傾斜センサ47、第2傾斜センサ48からの検出結果に基づきセンサブロック46を水平に維持する様に、演算制御部19によって制御される。
【0045】
センサブロック46が傾斜していた場合(レーザスキャナ3が傾斜していた場合)、センサブロック46に対する相対回転角がエンコーダ49,50によって検出され、エンコーダ49,50の検出結果に基づき、レーザスキャナ3の傾斜角、傾斜方向が検出される。センサブロック46は、2軸について360゜回転自在であるので、姿勢検出部17がどの様な姿勢となろうとも(例えば、姿勢検出部17の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0046】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、第2傾斜センサ48は第1傾斜センサ47に比べ検出精度が悪いのが一般的である。姿勢検出部17では、高精度の第1傾斜センサ47と高応答性の第2傾斜センサ48を具備することで、第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢制御を行い、第1傾斜センサ47により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0047】
第1傾斜センサ47の検出結果で、第2傾斜センサ48の検出結果を較正することができる。即ち、第1傾斜センサ47が水平を検出した時のエンコーダ49,50の値、即ち実際の傾斜角と第2傾斜センサ48が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、偏差に基づき第2傾斜センサ48の傾斜角を較正することができる。
【0048】
従って、予め、第2傾斜センサ48の検出傾斜角と、第1傾斜センサ47による水平検出とエンコーダ49,50の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、第2傾斜センサ48に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、第2傾斜センサ48による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0049】
演算制御部19は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、第2傾斜センサ48からの信号に基づき、モータを制御する。又、演算制御部19は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち第1傾斜センサ47が追従可能な状態では、第1傾斜センサ47からの信号に基づき、モータを制御する。
【0050】
尚、第1記憶部20には、第1傾斜センサ47の検出結果と第2傾斜センサ48の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。第2傾斜センサ48からの信号に基づき、第2傾斜センサ48による検出結果を較正する。この較正により、第2傾斜センサ48による検出結果を第1傾斜センサ47の検出精度迄高めることができる。よって、姿勢検出部17による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0051】
撮像部14は、レーザスキャナ3の基準光軸Oと平行な撮像光軸43を有し、例えば50°の画角を有するカメラであり、レーザスキャナ3のスキャン範囲を含む画像データを取得する。撮像光軸43と射出光軸26及び基準光軸Oとの関係は既知となっている。又、撮像部14は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0052】
撮像制御部21は、撮像部14の撮像を制御する。撮像制御部21は、撮像部14が動画像、又は連続画像を撮像する場合に、動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングとレーザスキャナ3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。演算制御部19は画像と点群データとの関連付けも実行する。
【0053】
撮像部14の撮像素子44は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、撮像光軸43を原点とした座標系での画素座標を有し、画素座標によって画像素子上での位置が特定される。画像処理部22は、撮像部14で取得した画像データに操作装置4で表示させる情報を重ね合わせる画像処理等を行う。画像処理部22が生成した画像は、演算制御部19により操作装置4の操作画面4Aに表示される。
【0054】
レーザスキャナ3の測定作動について説明する。三脚2を既知点、又は所定点に設置し、基準光軸Oを測定対象物に向ける。この時の基準光軸Oの水平角は、回転台5の水平角検出機能によって検出され、基準光軸Oの水平に対する傾斜角は姿勢検出部17によって検出される。
【0055】
偏向部35の偏向作用、スキャン作用について、図4を参照して説明する。尚、図4では説明を簡略化するため、光学プリズム36a,36bについて、プリズム要素37a,37bとプリズム要素38a,38bとを分離して示している。又、図4は、プリズム要素37a,37b、プリズム要素38a,38bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏向角が得られる。又、最小の偏向角は、光学プリズム36a,36bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、光学プリズム36a,36bの相互の光学作用が相殺され、偏向角は0゜となる。従って、光学プリズム36a,36bを経て射出される測定光23と、光学プリズム36a,36bを経て受光される反射測定光24は、基準光軸Oと合致する。
【0056】
発光素子27から測定光23が発せられ、測定光23は投光レンズ28で平行光束とされ、測定光偏向部35a(プリズム要素37a,37b)を透過して測定対象物或は測定範囲に向けて射出される。ここで、測定光偏向部35aを透過することで、測定光23はプリズム要素37a,37bによって所要の方向に偏向されて射出される。測定対象物或は測定範囲で反射された反射測定光24は、反射測定光偏向部35bを透過して入射され、結像レンズ34により受光素子33に集光される。
【0057】
反射測定光24が反射測定光偏向部35bを透過することで、反射測定光24は、受光光軸31と合致する様にプリズム要素38a,38bによって偏向される(図4)。光学プリズム36aと光学プリズム36bとの回転位置の組合わせにより、射出する測定光23の偏向方向、偏向角を任意に変更することができる。
【0058】
従って、演算制御部19は、発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、偏向部35を制御することにより、測定光23を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、反射測定光偏向部35bは、測定光偏向部35aと一体に回転していることは言う迄もない。
【0059】
更に、偏向部35の偏向角を連続的に変更して測定光23をスキャンしつつ測距を実行することでスキャン軌跡に沿って測距データ(スキャンデータ)を取得することができる。又、スキャン速度、スキャン密度等で定まるスキャン条件について、スキャン速度は、モータ42a,42b間の関係を維持して、回転速度を増減することで、増減し、スキャン密度は、スキャン速度と測定光23のパルス発光周期との関係を制御することで所望の値に設定できる。
【0060】
又、測定時の測定光23の射出方向角は、モータ42a,42bの回転角により検出でき、測定時の射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。従って、レーザスキャナ3を、3次元位置データを有する点群データを取得するレーザスキャナとして機能させることができる。
【0061】
次に、本実施形態の測量システム1により測定対象物の点群データを取得する処理について説明する。本実施形態の測定対象物は、線状に延びるように形成される電線100である。なお、本実施形態の測定対象物は、線状のものに限定されるわけではなく、棒状あるいは柱状のものであってもよい。また、本実施形態の測定対象物は、電線に限定されるわけではなく、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成されるものであればよく、例えば建築材料等として用いられるH形鋼や配管パイプ、電柱、建築物の柱等であってもよい。さらに、本実施形態の測定対象物は、直線状に延びたものに限定されるわけではなく、例えば配管パイプのように湾曲した部分を有するものであってもよく、電柱に架けられた電線のように曲線状に延びたものであってもよい。測定対象物の幅は、測定対象物の長さに対して3分の1以下であることが望ましい。本実施形態の測量システム1は、電線100を含む視野の全体の測定結果を第1記憶部20に記憶させるのではなく、電線100部分の測定結果のみを第1記憶部20に記憶させる。
【0062】
図5は、電線100を基準光軸Oに沿ってみたX-Z平面図である。図6は、電線100及び測量システム1を上方からみたX-Y平面図である。図7は、電線100及び測量システム1を水平方向からみたY-X平面図である。
【0063】
図5から図7において、軸線X,軸線Y,軸線Zは、測量システム1のレーザスキャナ3の測定の基準点を通過する軸線である。軸線Yは、レーザスキャナ3の基準光軸Oと一致する軸線である。軸線X,Zは、互いに基準点で直交する軸線であり、それぞれ軸線Yと直交している。軸線X,軸線Y,軸線Zにより定められる3次元空間上の位置P(Px,Py,Pz)は、レーザスキャナ3を基準とした座標である。
【0064】
前述したように、軸線Yの水平角(水平面に対する傾斜角)は、姿勢検出部17により検出可能である。よって、演算制御部19は、姿勢検出部17が検出した水平角に基づいて位置P(Px,Py,Pz)を補正することにより、水平面を基準とした位置を算出することができる。
【0065】
図5から図7において、測定光23は、電線100上の位置P(Px,Py,Pz)を通過するように偏向部35により偏向されている。Pxは位置Pの軸線X上の座標であり、Pyは位置Pの軸線Y上の座標であり、Pzは位置Pの軸線Z上の座標である。
【0066】
図5に示すように、本実施形態の測定対象物である電線100は、一端101が電柱110に取り付けられ、他端102が電柱120に取り付けられ、線状に形成されている。一対の電柱110及び電柱120は、軸線X方向に間隔を空けて配置されている。電線100は、例えば、一端101及び他端102が軸線Z方向の高さが同一となるように電柱110及び電柱120に取り付けられている。電線100は、自重により、一端101から他端102に至る長さ方向の中央部において軸線Zに沿った鉛直方向の位置が最も低くなる。
【0067】
図6に示すように、X-Y平面(軸線X及び軸線Yが配置される平面)において、軸線Yと測定光23の射出方向とがなすX-Y平面上の角度は、水平角θ1となっている。図7に示すように、Y-Z平面(軸線Y及び軸線Zが配置される平面)において、軸線Yと測定光23とがなすY-Z平面上の角度は、鉛直角θ2となっている。射出方向検出部15は、光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測定光23の射出方向を示す水平角θ1及び鉛直角θ2を演算する。
【0068】
次に、演算制御部19が実行する処理について図8及び図9を参照して説明する。図8及び図9は、演算制御部19が実行する処理を示すフローチャートである。演算制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0069】
ステップS801で、演算制御部19は、電線100の探索を開始する始点となる探索開始点Pstを操作者の指示に基づいて選択する。図10に示すように、演算制御部19は、撮像部14が撮像した画像を操作装置4の操作画面4Aに表示させ、操作者に探索開始点Pstを入力するように促す。図10に示す符号は、説明のために付したものであり、操作画面4A上に表示されるものではない。
【0070】
演算制御部19は、例えば、「探索開始点Pstをタッチして下さい」とのメッセージを操作画面4Aに表示する。操作画面4Aには、例えば、タッチセンサが組み込まれている。演算制御部19は、操作者が指でタッチした操作画面4A上の位置を探索開始点Pstとして認識する。
【0071】
ステップS802で、演算制御部19は、電線100の探索を終了する終点となる探索終了点を操作者の指示に基づいて選択する。図10に示すように、演算制御部19は、撮像部14が撮像した画像を操作装置4の操作画面4Aに表示させ、操作者に探索終了点Penを入力するように促す。演算制御部19は、例えば、「探索終了点Penをタッチして下さい」とのメッセージを操作画面4Aに表示する。演算制御部19は、操作者が指でタッチした操作画面4A上の位置を探索終了点Penとして認識する。
【0072】
ステップS803で、演算制御部19は、操作者により電線100の探索開始が指示されたかどうかを判断し、探索開始が指示されたと判断した場合に、ステップS804へ処理を進める。演算制御部19は、例えば、「探索を開始しますか?」とのメッセージと、「YES」及び「NO」のボタンを操作画面4Aに表示させ、操作者が「YES」のボタンを押した場合に、探索開始が指示されたと判断する。
【0073】
ステップS804で、演算制御部19は、ステップS801で選択された探索開始点Pstに基づいて、スキャンの中心位置を設定する。演算制御部19は、探索開始点Pstを中心に円形にスキャンを行うように、基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。ここで、スキャンとは、所定の中心に対して測定光23を円周方向に1回転分走査する動作をいう。演算制御部19は、操作画面4A上の探索開始点Pstの2次元の座標から、電線100上の探索開始点Pstを中心に円形にスキャンを行うように水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。
【0074】
ステップS805で、演算制御部19は、ステップS804またはステップS811で算出された水平角θ1及び鉛直角θ2に基づいて、円形にスキャンを行う。演算制御部19は、水平角θ1及び鉛直角θ2に応じた回転位置となるように光学プリズム36aと光学プリズム36bを回転させることにより、所定の中心に対して測定光23を円周方向に1回転分走査する。測距演算部13は、測定光23に対する受光素子33からの受光信号に基づいて、測定光23に含まれる複数のパルス毎に測定点の測距を行う。演算制御部19は、測距演算部13により測距された測距データを第1記憶部20に格納する。
【0075】
図11は、電線100を円形にスキャンした状態を示す図である。図11は、図5と同様に電線100を基準光軸Oに沿ってみた図である。図11において、符号Cはスキャンの中心位置の位置を示す。符号Tは中心位置Cを中止にスキャンされる測定光23の走査軌跡を示す。符号SPはパルス状の測定光23による複数の測定点を示す。
【0076】
演算制御部19は、偏向部35の光学プリズム36aと光学プリズム36bの回転を制御することにより、図11に示す測定光23の走査軌跡を示す円のサイズ(円の直径)を調整することができる。演算制御部19は、ステップS804の後にステップS805を実行する場合、予め定められた円のサイズとなるように調整する。一方、後述するステップS810の後にステップS805を実行する場合、ステップS810で変更された円のサイズにより円形のスキャンを行う。
【0077】
図11に示すように、電線100を円形にスキャンすると、測定光23の走査軌跡Tと電線100とが2箇所で交差する。この2箇所のそれぞれにおいて、電線100からの測定光23が複数の測定点SPで反射し、受光素子33により受光される。ここで、nは0以上の任意の整数であり、探索開始点Pstにおいてn=0であり、探索開始点Pstから水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する毎にnを加算していくものとする。図11に示す例は、探索開始点Pstから水平角θ1及び鉛直角θ2の変更をn回行った後に円形にスキャンを行った状態を示している。
【0078】
ステップS806で、演算制御部19は、ステップS804で算出された測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2と、第1記憶部20に格納された複数の測定点SPの測距データとに基づいて、複数の測定点SPの3次元座標の集合体である点群データを取得する。具体的に、演算制御部19は、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2を、各測定点SPの測距データに関連付けることで、点群データを取得する。演算制御部19は、取得した点群データを第1記憶部20に格納する。
【0079】
ステップS807で、演算制御部19は、ステップS806で第1記憶部20に格納された点群データから、測定光23の走査軌跡Tと電線100とが交差する位置を示す一対の交点Pの座標を検出する。一対の交点Pは、図11において中心位置Cの左方と右方に配置される。演算制御部19は、例えば、中心位置Cの左方の交点Pの座標を、中心位置Cの左方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。また、演算制御部19は、例えば、中心位置Cの右方の交点Pの座標を、中心位置Cの右方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。
【0080】
ここで、点群データは、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2と、第1記憶部20に格納された複数の測定点SPの測距データ(測定結果)とに基づいて算出されるデータである。したがって、演算制御部19は、測距部3Aの測距結果と射出方向検出部15が検出する水平角θ1及び鉛直角θ2に基づいて一対の交点Pの座標を検出する。
【0081】
ここでは、複数の点群データの座標の平均値を算出して交点Pの座標を求めたが、他の態様であってもよい。例えば、複数の点群データの座標とともに各点群データに対応する反射測定光24の受光素子33による受光強度を記憶しておき、複数の点群データのうち最も受光強度が高いものを交点Pの座標としてもよい。
【0082】
ステップS808で、演算制御部19は、ステップS807で一対の交点Pの座標が検出されたかどうかを判断し、YESであればステップS809へ処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了させる。演算制御部19は、交点が検出されない場合、あるいは交点が1点のみ検出された場合に、NOと判断する。
【0083】
ステップS809で、演算制御部19は、ステップS807で検出された一対の交点Pの座標に基づいて、電線ベクトルVを算出する。電線ベクトルVは、現在のスキャンの中心位置Cの次に行うスキャンの中心位置Cn+1を終点とするベクトルである。演算制御部19は、ステップS807で検出された一対の交点Pの中点の座標Mを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有するベクトルを算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定める。
【0084】
演算制御部10は、例えば、αを1/3以上かつ2/3以下の値に設定する。αを1/3以上に設定することで、電線100のスキャン密度が過度の大きくなって電線100の点群データのデータ量が大きくなり、かつ点群データの取得時間が長くなることを抑制することができる。αを2/3以下に設定することにより、次に行う円形のスキャンによる測定光23の走査軌跡と電線100とが確実に2点で交差する。そのため、電線ベクトルVの長さが過度に大きくなって、曲がった形状を有する電線100を円形のスキャンした際に一対の交点が取得できなくなる不具合を抑制することができる。
【0085】
図12及び図13は、探索開始点Pstから複数回に渡って円形にスキャンしたときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。図12は電線100が直線状に延びる場合を示し、図13は電線100が曲線状に延びる場合を示す。図12及び図13に示すように、演算制御部19は、探索開始点Pstで円形のスキャンを行うと一対の交点Pを検出する。
【0086】
演算制御部19は、一対の交点Pの中点の座標Mを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有する電線ベクトルVを算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定める。演算制御部19は、同様に、一対の交点Pの中点の座標Mを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有する電線ベクトルVを算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定める。
【0087】
また、演算制御部19は、一対の交点Pの中点の座標Mを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有する電線ベクトルVを算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定める。
【0088】
図14及び図15は、円形のスキャンをn回からn+3回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。図14は電線100が直線状に延びる場合を示し、図15は電線100が曲線状に延びる場合を示す。図14及び図15に示すように、演算制御部19は、中心位置Cで円形のスキャンを行うと一対の交点Pを検出する。
【0089】
演算制御部19は、一対の交点Pの中点となる中心位置Cを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有する電線ベクトルVを算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定める。演算制御部19は、同様に、一対の交点Pn+1の中点となる中心位置Cn+1を始点とし、円形の走査軌跡Tn+1の直径Dn+1のα倍の長さを有する電線ベクトルVn+1を算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVn+1の向きを、一対の交点Pn+1のうち探索終了点Penに近接する側の交点Pn+1を通過する方向に定める。
【0090】
また、演算制御部19は、一対の交点Pn+2の中点となる中心位置Cn+2を始点とし、円形の走査軌跡Tn+2の直径Dn+2のα倍の長さを有する電線ベクトルVn+2を算出する。演算制御部19は、電線ベクトルVn+2の向きを、一対の交点Pn+2のうち探索終了点Penに近接する側の交点Pn+2を通過する方向に定める。
【0091】
ステップS810で、演算制御部19は、ステップS809で算出した電線ベクトルの終点にスキャンの中心位置を変更する。演算制御部19は、電線ベクトルの終点を中心に円形にスキャンを行うように、基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。演算制御部19は、前述したようにαを1/3以上かつ2/3以下の値に設定している。
【0092】
そのため、演算制御部19は、現在の円形のスキャンによる測定光23の走査軌跡と次に行う円形のスキャンによる測定光23の走査軌跡とが重なり、かつ、次に行う円形のスキャンによる測定光23の走査軌跡と電線100とが確実に2点で交差するように、一対の交点Pの座標に基づいて水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する。
【0093】
前述したように、演算制御部19は、電線ベクトルVの向きを、一対の交点Pのうち探索終了点Penに近接する側の交点Pを通過する方向に定めている。そのため、演算制御部19は、一対の交点Pの座標の中心が水平方向の左右いずれか一方に向けて連続的に移動するように、水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する。
【0094】
また、図12から図15に示すように、演算制御部19は、一対の交点Pの座標の延長線上を中心に円形のスキャンが行われるように電線ベクトルVを算出している。そのため、演算制御部19は、一対の交点Pの座標の延長線上に中心位置が配置されるように水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する。
【0095】
ステップS811で、演算制御部19は、次に行う円形のスキャンによる測定光23の円のサイズ(走査軌跡の直径)を適切なサイズに変更する。図11に示すように、演算制御部19は、電線100が配置される位置における走査軌跡の直径Dが電線100の太さEのβ倍となるように走査軌跡の直径Dを変更する。走査軌跡の直径Dは、電線100が配置される位置における走査軌跡の直径をいう。
【0096】
演算制御部19は、電線の太さEを複数の測定点SPから算出するものとする。また、演算制御部10は、例えば、βを5以上かつ10以下の値に設定する。電線100が配置される位置における走査軌跡の直径Dを電線の太さEに比例するようにしているのは、測量システム1から電線100までの距離によらずに、電線100上を一定のスキャン密度で測定するためである。
【0097】
演算制御部19は、測定光23の円のサイズ(走査軌跡の直径)が直径Dとなるように、ステップS810で算出した水平角θ1及び鉛直角θ2を補正する。演算制御部19は、ステップS810及びステップS811を実行することにより、ステップS809で算出した電線ベクトルの終点を中心とし、ステップS811で設定した直径Dの円形のスキャンが行われるように、水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する。
【0098】
ステップS812で、演算制御部19は、電線100の探索をするかどうかを判断し、YESであれば本フローチャートの処理を終了させ、NOであればステップS805以降の処理を再び実行する。演算制御部19は、ステップS805からステップS811までの処理を繰り返し実行することにより、探索開始点Pstから探索終了点Penまでの電線100の点群データを連続的に取得する。ステップS812で、演算制御部19は、例えば、ステップS840で変更されたスキャンの中心位置が探索終了点Penから所定距離内である場合に、NOと判断する。
【0099】
以上説明した本実施形態の測量システム1が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の測量システム1によれば、測距部3Aの測距結果と測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2に基づいて、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される測定対象物である電線100と測定光23の走査軌跡との一対の交点Pの座標が検出される。一対の交点Pの座標が検出される場合、周方向に走査される測定光23が電線100を測定している状態である。
【0100】
そして、電線100を測定している状態で、測定光23の走査軌跡と電線100とが交差するように、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2が変更される。そのため、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2を変更した後も、電線100を測定している状態が維持される。このような測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2の変更を繰り返すことにより、電線100の全体を簡易かつ効率よく測定することができる。
【0101】
また、本実施形態の測量システム1によれば、探索開始点Pstから探索終了点Penに向けた方向の電線ベクトルが算出されるため、電線の一端101から他端102までの領域を水平方向の左右いずれか一方に沿って連続的に測定することができる。
また、本実施形態の測量システム1によれば、一対の交点Pの座標の延長線上に測定光23の走査軌跡の中心が配置されるため、電線100が直線状に延びる場合に、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2を変更した後も電線100を確実に測定することができる。
【0102】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る測量システムについて説明する。第2実施形態の測量システムは第1実施形態の測量システム1の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き第1実施形態の測量システム1と同様であるものとする。
【0103】
第1実施形態の測量システム1において、演算制御部19は、一対の交点Pの中点の座標Mを始点とし、円形の走査軌跡Tの直径Dのα倍の長さを有する電線ベクトルVを算出するものであった。それに対して、本実施形態の演算制御部19は、一対の交点Pのいずれか一方を終点とする電線ベクトルVを算出するものである。
【0104】
図16は、本実施形態の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+3回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。図16に示すように、演算制御部19は、中心位置Cで円形のスキャンを行うと一対の交点Pを検出する。
【0105】
演算制御部19は、中心位置Cを始点とし一対の交点Pのいずれか一方を終点とする電線ベクトルVを算出する。演算制御部19は、同様に、中心位置Cn+1を始点とし一対の交点Pn+1のいずれか一方を終点とする電線ベクトルVn+1を算出する。演算制御部19は、同様に、中心位置Cn+2を始点とし一対の交点Pn+2のいずれか一方を終点とする電線ベクトルVn+2を算出する。演算制御部19は、一対の交点P,Pn+1,Pn+2のうち探索終了点Penに近接する側の交点P,Pn+1,Pn+2を終点とするように電線ベクトルV,Vn+1,Vn+2を算出する。
【0106】
図16に示すように、演算制御部19は、一対の交点Pのいずれか一方に中心位置Cn+1が配置されるように電線ベクトルVを算出している。そのため、演算制御部19は、一対の交点Pのいずれか一方に中心位置Cn+1が配置されるように水平角θ1及び鉛直角θ2を変更する。
【0107】
本実施形態の測定システムによれば、一対の交点Pの座標のいずれか一方に中心位置が配置されるため、電線100が曲線状に延びる場合や、延びる方向が転換する場合であっても、水平角θ1及び鉛直角θ2を変更した後に電線100を確実に測定することができる。
【0108】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る測量システムについて説明する。本実施形態の測量システムは第1実施形態の測量システム1の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き第1実施形態の測量システム1と同様であるものとする。
【0109】
本実施形態は、第1実施形態のステップS807における一対の交点の座標を検出する処理の内容を変更したものである。本実施形態は、ステップS807で3点以上の交点の座標を検出した場合の具体的処理に関するものである。
【0110】
図17は、本実施形態の測量システムにおいて、電線100及び電線200を円形にスキャンした状態を示す図である。ここで、電線100は測量システム1の測定対象物であるが、電線200は測量システム1の測定対象物ではない。測量システム1から電線100までの軸線X方向の距離は、測量システム1から電線200までの軸線X方向の距離よりも短い。
【0111】
本実施形態の演算制御部19は、一対の交点Pn+1の座標を検出する際に、一対の交点Pの座標に基づいて一対の交点Pn+1の座標の範囲を推定する。演算制御部19は、一対の交点Pn+1のうち探索開始点Pstに近接する側の交点Pn+1の座標の範囲A1を推定する。図17に示すように、範囲A1は、例えば、一対の交点Pを端部として電線100と同方向に延びるように形成される円筒状の空間である。この円筒状の空間の断面の直径は電線100の直径よりも大きくするのが望ましい。演算制御部19は、探索開始点Pstに近接する側の交点Pn+1の座標が範囲A1に含まれる場合に、探索開始点Pstに近接する側の交点Pn+1を正しい交点として検出する。
【0112】
演算制御部19は、一対の交点Pn+1のうち探索終了点Penに近接する側の交点Pn+1の座標の範囲A2を推定する。図17に示すように、範囲A2は、例えば、一対の交点Pを頂点とし電線ベクトルVn+1の終点を底面とする円錐状の空間である。演算制御部19は、探索終了点Penに近接する側の交点Pn+1の座標が範囲A2に含まれる場合に、探索終了点Penに近接する側の交点Pn+1を正しい交点として検出する。
【0113】
演算制御部19は、電線200上の交点Pn+1については、範囲A1及び範囲A2のいずれにも含まれないため、正しい交点として検出しない。これは、電線200上の交点Pn+1は、電線100上の交点Pn+1とは大きく異なる位置に配置されているからである。すなわち、演算制御部19は、図17に示す例では、電線100上の交点Pn+1を正しい交点として検出し、電線200上の交点Pn+1を正しい交点として検出しない。その結果、演算制御部19は、測定対象物である電線100上の一対の交点Pn+1を検出して点群データを取得する処理を進めることができる。
【0114】
本実施形態の測定システムによれば、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2を変更した後に検出される一対の交点Pn+1の座標の範囲A1,A2を推定し、その範囲A1,A2に含まれる座標を一対の交点Pn+1の座標として検出する。そのため、測定対象物である電線100の背後に他の測定対象物であり電線200が存在する場合であっても、推定した座標の範囲A1,A2に含まれない電線200上の交点の座標を排除し、測定の誤りを抑制することができる。
【0115】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る測量システムについて説明する。本実施形態の測量システムは第1実施形態の測量システム1の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き第1実施形態の測量システム1と同様であるものとする。
【0116】
図6に示すように、第1実施形態の測量システム1は、電線100が延びる方向と直交するように基準光軸Oを配置したものであった。また、第1実施形態の測量システム1は、測定光23を円形に走査するものであった。それに対して、本実施形態の測量システム1は、図18に示すように、電線100が延びる方向と測定光23の方向とが90°よりも大きい鈍角である傾斜角θ3をなすように配置したものである。また、本実施形態の測量システムは、測定光23を楕円形に走査するものである。
【0117】
図19は、本実施形態の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+1回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。図20は、図19に示す電線100を上方からみた図である。図19に示すように、演算制御部19は、一対の交点Pを結ぶ方向を短軸とした楕円形に測定光23を走査するように偏向部35の偏向作動を制御する。演算制御部19は、偏向部35を制御することにより、図19に示す楕円形の走査軌跡の短軸の長さを調整することができる。
【0118】
本実施形態の演算制御部19が楕円形の走査軌跡の短軸の長さを調整しているのは、電線100上の交点P,Pn+1の間隔が第1実施形態と比較して広くならないようにするためである。電線100上の交点P,Pn+1の間隔が広くなるとスキャン密度が低下し、電線100から所望のスキャン密度の点群データを取得することができない。そこで、本実施形態の演算制御部19は、傾斜角θ3に応じて測定光23の走査軌跡の短軸の長さを調整することで、電線100上の交点P,Pn+1の間隔が第1実施形態と同じになるようにしている。
【0119】
図20において、電線100上の一対の交点Pの間隔は、第1実施形態の円形の走査軌跡Tの直径Dと同じである。演算制御部19は、電線100上の一対の交点Pの間隔が直径Dと同じになるように、測定光23の走査軌跡の短軸の長さをWに調整している。短軸の長さWは軸線X方向の長さであり、W=D・sin(θ3)を満たす。
ここで、傾斜角θ3は、一対の交点Pを結ぶ直線と測定光23がX-Y平面上でなす角度である。
【0120】
演算制御部19は、測定光23の走査軌跡の短軸の長さをWに調整することにより、電線100上の交点P,Pn+1の間隔を第1実施形態と同じとすることができる。演算制御部19は、一対の交点Pの測距データに基づいて傾斜角θ3を算出し、測定光23の走査軌跡の短軸の長さWを算出する。図20に示すように、演算制御部19は、一対の交点Pを結ぶ長さが一定のDに維持されるように傾斜角θ3に基づいて偏向部35の偏向作動を制御する。
【0121】
このように演算制御部19は、測定光23の走査軌跡が一対の交点Pを結ぶ方向を短軸とした楕円形となるように測定光の射出方向(水平角θ1及び鉛直角θ2)を制御する。また、演算制御部19は、短軸が一対の交点Pを結ぶ直線と測定光23とがなす傾斜角θ3に応じた長さWとなるように測定光の射出方向(水平角θ1及び鉛直角θ2)を制御する。
【0122】
図21は、本実施形態の比較例の測量システムにおいて、円形のスキャンをn回からn+1回目まで行ったときに検出される交点と電線ベクトルを示す図である。図22は、図21に示す電線100を上方からみた図である。図21に示す比較例において、演算制御部19は、一対の交点Pの中心位置C回りに円形に測定光23を走査するように偏向部35の偏向作動を制御している。
【0123】
図22において、一対の交点Pの軸線X方向の間隔は、第1実施形態の円形の走査軌跡Tの直径Dと同じである。一方、電線100上の一対の交点Pの間隔は、Dよりも長いD´となっている。そのため、本比較例では、電線100上の一対の交点Pの間隔が直径Dと同じにはならず、直径Dよりも広い間隔となっている。そのため、本比較例では、演算制御部19は、電線100上の交点P,Pn+1の間隔を第1実施形態と同じとすることができない。本実施形態の測定システムによれば、一対の交点Pを結ぶ長さが一定に維持されるため、電線100の各部の座標を一定の間隔(スキャン密度)で取得することができる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【0125】
以上の説明において、測定対象物は電線であるものとしたが、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成されるものであれば、他の態様であってもよい。例えば、測定対象物は、建築材料等として用いられるH形鋼や配管パイプ、電柱、建築物の柱等であってもよい。測定対象物の幅は、測定対象物の長さに対して3分の1以下であることが望ましい。
【0126】
以上の説明においては、操作者が電線100の探索開始点Pst及び探索終了点Penの双方を選択するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、探索開始点Pstのみを操作者が選択するようにしてもよい。この場合、探索終了点Penを選択する代わりに探索方向として水平方向の左右いずれか一方を選択させるようにするのが望ましい。探索方向は、電線ベクトルの方向を決定する際に利用される。
【0127】
以上の説明においては、偏向部35を一対の光学プリズム36a,36bから構成するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、2軸ガルバノミラーを用いて一対の光学プリズム36a,36bと同様の機能を達成するようにしてもよい。
【0128】
以上の説明においては、演算制御部19は、円形あるいは楕円形にスキャンを行うが、測定光23の走査軌跡の形状は、円形あるいは楕円形に限定されるわけではなく、他の態様であってもよい。例えば、演算制御部19は、線状、棒状および柱状の少なくともいずれかに形成される測定対象物に沿って、正弦波や三角波などの波形の形状にスキャンを行ってもよい。
【符号の説明】
【0129】
1・・・測量システム、 3・・・レーザスキャナ、 3A・・・測距部、 4・・・操作装置、 4A・・・操作画面、 11・・・測定光射出部、 12・・・受光部、 14・・・撮像部、 15・・・射出方向検出部、 17・・・姿勢検出部、 20・・・第1記憶部、 23・・・測定光、 24・・・反射測定光、 27・・・発光素子、 33・・・受光素子、 35・・・偏向部、 40・・・測定光軸、 100・・・電線、 110,120・・・電柱、 A1,A2・・・範囲、 O・・・基準光軸、 θ1・・・水平角、 θ2・・・鉛直角、 θ3・・・傾斜角

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図22