(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】水平多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
B25J9/06 D
(21)【出願番号】P 2019163884
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-029298(JP,A)
【文献】特開昭63-002679(JP,A)
【文献】特開2011-045978(JP,A)
【文献】特開2007-237314(JP,A)
【文献】特開2000-197304(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003394(WO,A1)
【文献】特開2002-012321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100146(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/00
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アーム部と、その先端に回動可能に連結された第2アーム部とを含み、前記第2アーム部に、上下方向に延在する作動軸とこの作動軸を昇降させるための昇降機構部とが備えられた水平多関節ロボットであって、
前記第2アーム部は、前記作動軸及び前記昇降機構部が搭載されるアーム本体部と、このアーム本体部の上面部に組み付けられて前記作動軸及び前記昇降機構部の周囲を覆うカバー部材と、を含み、
前記カバー部材は、上下方向に貫通する筒状であってかつ上下方向の全体に亘って水平断面形状が同一の押出成型部材からなるとともに、周方向の一乃至複数の位置において上下方向の全体に亘って延在するリブを備え、
前記リブは、前記カバー部材の外周面に設けられ、ナット部材を
、そのねじ孔の軸方向が前記カバー部材の前記外周面と直交する横向きの姿勢で支持可能な溝形の断面形状を有しており、
前記アーム本体部は、前記カバー部材の
前記外周面の下端部が内嵌される
壁面であってかつ当該カバー部材の前記リブに対応する位置に
、中心軸が前記壁面に直交する横向きの貫通孔が形成された嵌合部を備え、
前記カバー部材は、前記リブの下端部に前記ナット部材を支持した状態でアーム本体部の前記嵌合部に内嵌され、当該嵌合部の外側から前記貫通孔を通じて前記ナット部材に螺合挿入されたボルト部材により前記アーム本体部に固定されている、
ことを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の水平多関節ロボットにおいて、
前記嵌合部を有しかつ前記アーム本体部の上面部に着脱可能に組付けられたベース部材をさらに含む、ことを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水平多関節ロボットにおいて、
前記カバー部材を第1固定カバー部材と定義したときに、当該第1固定カバー部材の上端部に固定されて、前記第1固定カバー部材の上端開口を塞ぐ第2固定カバー部材を備えている、ことを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の水平多関節ロボットにおいて、
前記カバー部材を固定カバー部材と定義したときに、
前記固定カバー部材の内側に配置されて前記作動軸の上端部に連結され、当該作動軸と共に昇降する可動カバー部材をさらに備えている、ことを特徴とする水平多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるような水平多関節ロボット(スカラロボット)が公知である。この水平多関節ロボットは、基台上に固定されるベース部と、このベース部に対して旋回可能に支持された第1アーム部と、この第1アーム部の先端に旋回可能に連結された第2アーム部と、この第2アーム部の先端に昇降及び鉛直軸回りの回転が可能に支持された作動軸と、を備えている。
【0003】
第2アーム部には、作動軸と平行に配置されたねじ軸と、ねじ軸を回転駆動するモータと、ねじ軸に装着されたナット部材とが備えられ、このナット部材に前記作動軸が連結されている。つまり、モータの駆動によりねじ軸が回転すると、作動軸がナット部材と共にねじ軸に沿って昇降(上下方向に移動)するのである。
【0004】
作動軸を昇降させるための機構部分(ねじ軸等)は、全体が樹脂製のカバー部材で覆われており、これにより、ねじ軸に塗布されたグリスの周辺への飛散が防止されるとともに、高速駆動されるねじ軸等への不用意なアクセスが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような水平多関節ロボットでは、作動軸に要求される昇降ストロークによって作動軸の軸長やねじ軸の軸長など、前記機構部分の高さが異なる。そのため、水平多関節ロボットの生産では、作動軸の軸長やその昇降ストロークが異なる数タイプ(品種)の水平多関節ロボットが予め企画され、その中から受注を受けたタイプが製造される、多品種少量生産が一般的である。そのため、以下のような課題がある。
【0007】
カバー部材については、作動軸の軸長やその昇降ストロークに応じたサイズ(高さ)のものが必要となるため、サイズごとに異なる金型を準備して製造する必要があり、金型費用が嵩む。また、受注に応じてカバー部材をその都度受注数だけ少量で製造する場合には、カバー部材の製造コストが嵩む。これを避けるために、予め各サイズのカバー部材を一定数ずつ製造して在庫として保管しておく場合には、受注数の少ないタイプのカバー部材に変形、変色等の経時劣化が生じるおそれがある。さらに、企画されたタイプ以外の水平多関節ロボット、すなわち作動軸の軸長やその昇降ストロークが企画されたタイプとは異なる水平多関節ロボット(いわゆる特注品)についての受注があった場合に、当該ロボットにとって最適なカバー部材を使用することが困難となる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、生産面での利便性が高い水平多関節ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一局面に係る水平多関節ロボットは、第1アーム部と、その先端に回動可能に連結された第2アーム部とを含み、前記第2アーム部に、上下方向に延在する作動軸とこの作動軸を昇降させるための昇降機構部とが備えられた水平多関節ロボットであって、前記第2アーム部は、前記作動軸及び前記昇降機構部が搭載されるアーム本体部と、このアーム本体部の上面部に組み付けられて前記作動軸及び前記昇降機構部の周囲を覆うカバー部材と、を含み、前記カバー部材は、上下方向に貫通する筒状であってかつ上下方向の全体に亘って水平断面形状が同一の押出成型部材からなるとともに、周方向の一乃至複数の位置において上下方向の全体に亘って延在するリブを備え、前記リブは、前記カバー部材の外周面に設けられ、ナット部材を、そのねじ孔の軸方向が前記カバー部材の前記外周面と直交する横向きの姿勢で支持可能な溝形の断面形状を有しており、前記アーム本体部は、前記カバー部材の前記外周面の下端部が内嵌される部分であってかつ当該カバー部材の前記リブに対応する位置、中心軸が前記壁面に直交するに横向きの貫通孔が形成された嵌合部を備え、前記カバー部材は、前記リブの下端部に前記ナット部材を支持した状態でアーム本体部の前記嵌合部に内嵌され、当該嵌合部の外側から前記貫通孔を通じて前記ナット部材に螺合挿入されたボルト部材により前記アーム本体部に固定されているものである。
【0010】
上記のような多関節ロボットの構成によれば、カバー部材が、上下方向に貫通する筒状であってかつ上下方向の全体に亘って水平断面形状が同一ものであるから、例えば、以下のような製造方法を採用することが可能であり、これにより、作動軸の軸長やその昇降ストロークが異なる複数タイプの多関節ロボットの製造を合理的に行うことが可能となる。
【0011】
すなわち、製造方法は、前記カバー部材の断面形状に対応するダイスを備えた押出成形機に、樹脂または金属からなる素材を挿入し、当該素材を、前記ダイスを通じて押し出して切断することにより、前記カバー部材と同一の断面形状を有する所定長さの成型品を押し出し成形する成型工程と、前記成型品を、前記昇降機構部の高さに対応する長さに切断することにより前記カバー部材を取得するカバー切り出し工程と、前記カバー切り出し工程で取得したカバー部材を、前記アーム本体部の上面部に組み付ける組付工程と、を含む。
【0012】
この製造方法では、作動軸の軸長やその昇降ストロークが異なる複数タイプの水平多関節ロボットを製造する場合、カバー部材を共通の前記成型品から切り出すこととなる。つまり、前記成型品を事前に製造しておき、受注タイプの水平多関節ロボットに応じて、前記成型品から当該受注タイプに対応するカバー部材を切り出すのである。そのため、従来のように、前記複数タイプの水平多関節ロボットに対応するために事前に各タイプのカバー部材を製造し、在庫として保管しておく必要がなくなる。また、予め企画されたタイプとは異なるタイプ、すなわち、作動軸の軸長やその昇降ストロークが企画されたタイプとは異なる水平多関節ロボットについての受注があった場合でも、これに最適なサイズのカバー部材を難なく準備して当該水平多関節ロボットを製造することが可能となる。
【0013】
従って、上記の水平多関節ロボットによれば、生産面での利便性が向上する。
【0014】
また、前記カバー部材は、周方向の一乃至複数の位置において上下方向の全体に亘って延在するリブを備えているので、カバー部材の肉厚を抑えつつその面強度や剛性を確保することが可能となる。そのため、カバー部材の上下方向の寸法が長くなるような場合でも、その変形(ゆがみ等)を効果的に抑制することができ、その結果、カバー部材のサイズ(上下方向の寸法)に拘わらずその外観品質を良好に保つことが可能となる。
【0015】
また、カバー部材は、リブの下端部にナット部材を支持した状態でアーム本体部の嵌合部に内嵌され、当該嵌合部の外側から貫通孔を通じてナット部材に螺合挿入されたボルト部材により前記アーム本体部に固定されているので、カバー部材をアーム本体部に対して安定的に固定させることができ、また、アーム本体部に対するカバー部材の固定部分としてリブを利用した合理的な構成が達成される。
【0016】
この場合、上記の水平多関節ロボットは、前記嵌合部を有しかつ前記アーム本体部の上面部に着脱可能に組付けられたベース部材をさらに含むものでもよい。
【0017】
この構成によれば、例えばアーム本体部の平坦な上面部に対しても、カバー部材を安定的に組み付けることが可能となる。
【0018】
上記各態様の水平多関節ロボットにおいては、前記カバー部材を第1固定カバー部材と定義したときに、当該第1固定カバー部材の上端部に固定されて、前記第1固定カバー部材の上端開口を塞ぐ第2固定カバー部材を備えているのが好適である。
【0019】
この構成によれば、第1、第2の固定カバーにより作動軸及び昇降機構部の全体、すなわち、作動軸及び昇降機構部の周囲と上方を覆うことが可能となる。
【0020】
また、上記各態様の水平多関節ロボットにおいては、前記カバー部材を固定カバー部材と定義したときに、前記固定カバー部材の内側に配置されて前記作動軸の上端部に連結され、当該作動軸と共に昇降する可動カバー部材をさらに備えているものであってもよい。
【0021】
この構成によれば、固定カバー部材にその上端開口を塞ぐための他の固定カバー部材を別途固定する場合にくらべ、高さを低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る水平多関節ロボットによれば、生産面での利便性が高い水平多関節ロボットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る水平多関節ロボットの側面図である。
【
図2】前記水平多関節ロボットを上方から視た斜視図である。
【
図3】カバー部材の取り付け構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図である。
【
図5】カバー部材の他の取付構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図である。
【
図6】リブを用いたカバー部材の取付構造を示す第2アーム部の要部斜視図である。
【
図9】リブを用いたカバー部材の取付構造の変形例を示す第2アーム部の要部斜視図である。
【
図10】カバー部材に天井カバーが取り付けられた第2アーム部の要部斜視図である。
【
図11】天井カバーの取り付け構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図である。
【
図12】(a)は天井カバーを上方から視た斜視図、(b)は天井カバーを下方から視た斜視図である。
【
図13】可動の天井カバーを備えた第2アーム部の要部斜視図である。
【
図14】天井カバーの取り付け構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図である。
【
図15】(a)は可動カバーを上方から視た斜視図、(b)は可動カバーを下方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
[水平多関節ロボットの全体構成]
図1は、本発明に係る水平多関節ロボット(スカラロボット)の側面図であり、
図2は、水平多関節ロボットを上方から視た斜視図である。
【0026】
図1及び
図2に示す水平多関節ロボット(以下、ロボットと略す)1は、基台BP上に設置される略円柱状のアーム支持台2と、このアーム支持台2に連結されたアーム3と、このアーム3の先端部に支持される作業軸5とを有する。なお、
図1中の符号7は、アーム3に搭載された後記モータ24、30、38等に対する電力や制御信号送信用のケーブル等が収容された筒状案内部材であり、アーム支持台2とアーム3(後記第2アーム部4B)とに亘ってアーチ状に設けられている。
【0027】
アーム3は、アーム支持台2に支持されて水平方向に延びる第1アーム部4Aと、この第1アーム部4Aの先端に支持されて水平方向に延びる第2アーム部4Bとを備えている。
【0028】
第1アーム部4Aは、細長い中空構造のフレーム部材12を備えている。フレーム部材12は、断面矩形(長方形)で細長くかつ長手方向両端が開口した筒状のフレーム本体部13aと、その長手方向両端に固定されて、当該両端の開口を塞ぐ一対のエンドキャプ13bとを有し、少なくともフレーム本体部13aが、アルミニウム合金などの剛性を有した軽量の金属材料で構成されている。
【0029】
第1アーム部4Aのフレーム部材12は、アーム支持台2の箱形のフレーム部材10内に配置された第1アームモータ16に減速機構18を介して連結されている。この構成により、第1アーム部4Aは、アーム支持台2の上部に垂直軸Ax1周りに回動(旋回)可能に支持され、前記第1アームモータ16により回転駆動される。
【0030】
第2アーム部4Bは、第1アーム部4Aと同様の細長い中空構造のフレーム部材22を備えている。すなわち、フレーム部材22は、断面矩形(長方形)で細長くかつ長手方向両端が開口した筒状のフレーム本体部23aと、その長手方向両端に固定されて、当該両端の開口を塞ぐ一対のエンドキャプ23bとを有し、少なくともフレーム本体部23aが、アルミニウム合金などの剛性を有した軽量の金属材料で構成されている。
【0031】
フレーム部材22の基端部(第1アーム部4A側の端部)には、第2アームモータ24が下向きに配置されており、フレーム部材22は、この第2アームモータ24及び減速機構25を介して第1アーム部4A(フレーム部材12)の先端の上面部に連結されている。この構成により、第2アーム部4Bは、第1アーム部4Aの先端部に垂直軸Ax2周りに回動(旋回)可能に支持され、前記第2アームモータ24により回転駆動される。
【0032】
第2アーム部4B(フレーム部材22)には、さらに、前記作業軸5と、作業軸5の駆動機構部26と、駆動機構部26を覆うカバー部材28とが備えられている。なお、当例では、フレーム部材22が本発明の「アーム本体部」に相当し、駆動機構部26が本発明の「昇降機構部」に相当する。
【0033】
作業軸5は、スプライン軸からなり、フレーム部材22の先端部に、当該フレーム部材22を上下方向に貫通するように配置されている。作業軸5は、駆動機構部26を介して当該フレーム部材22に上下方向の移動(昇降)及び軸心回りの回転が可能に支持されるとともに、当該駆動機構部26により駆動される。
【0034】
より具体的には、駆動機構部26は、作業軸5を上下方向に移動させる昇降駆動機構と、作業軸5を回転させるための回転駆動機構とを備えている。
【0035】
回転駆動機構は、フレーム部材22の先端部に配置されたR軸モータ30と、減速機構32と、スプラインナット34とを備えている。R軸モータ30は、筒状のロータの外周にステータが配置されたいわゆる中空モータであり、当該R軸モータ30のロータに、スプラインナット34が減速機構32を介して連結されている。
【0036】
そして、これらR軸モータ30、減速機構32及びスプラインナット34を上下方向に貫通するように作業軸5が配置されるとともに、スプラインナット34に対して相対的な上下方向の移動(昇降)が可能でかつ相対回転が阻止されるように、当該作業軸5とスプラインナット34とがスプライン結合されている。
【0037】
昇降駆動機構は、フレーム部材22に回転自在に支持されて当該フレーム部材22から上方に延びるねじ軸36と、フレーム部材22の内部に配置されて、前記ねじ軸36の一端に連結されたZ軸モータ38と、ねじ軸36に装着されたナット部材40と、このナット部材40と作業軸5の上端部分とを連結する連結部材42とを含む。なお、連結部材42は、作業軸5の回転を許容する状態で当該作業軸5の上端部分に連結されている。
【0038】
つまり、昇降駆動機構は、Z軸モータ38の駆動によりねじ軸36を回転させ、このねじ軸36の回転運動をナット部材40及び連結部材42を介して作業軸5の上下運動に変換して、当該作業軸4を上下方向に移動させる。一方、回転駆動機構は、R軸モータ30の駆動によりスプラインナット34を介して作業軸5を回転させる。
【0039】
なお、作業軸5の先端部分には、図外の作業用ツール(エンドエフェクタ)が装着される。例えば、ワークを把持して搬送するためのチャック装置、ワークに対して溶接等の各種加工を施す加工装置及びワークを測定するための測定装置など、ワークに対して所定の作業を行うための作業用ツール6が作業軸5の先端部分に装着される。但し、作業用ツール6の種類は、チャック装置、加工装置及び測定装置に限定されるものではない。
【0040】
第2アーム部4Bのフレーム部材22の上面部22aには、前記作業軸5および駆動機構部26のうち、フレーム部材22の上方に配置される部分を覆う、前記カバー部材28が固定されている。以下、このカバー部材28およびその取り付け構造について詳述する。
【0041】
[カバー部材28及びその取付構造]
以下、カバー部材28の詳細とその取り付け構造について説明する。なお、以下の説明で用いる各方向に関する記載は、特に言及する場合を除き、
図2中に記載した指標に基づくものとする。すなわち、第2アーム部4Bの長手方向を「前後方向」と称し、第2アーム部4Bの先端側(作業軸5が配置する側)を「前」とする。また、前後方向と水平面上で直交する方向を「幅方向(左右方向)」と称す。
【0042】
図3は、カバー部材28の取り付け構造を示す第2アーム部4Bの要部分解斜視図である。カバー部材28は、ねじ軸36に塗布されたグリスの飛散を防止するとともに、高速で駆動されるねじ軸36等への不用意なアクセスを規制するためのものである。
【0043】
カバー部材28は、上下方向に貫通する筒状であってかつ上下方向の全体に亘って水平断面形状が同一の押出成型部材からなり、全体がABS等の樹脂材料により一体に形成されている。このカバー部材28は、前壁部50a、後壁部50b、左壁部50c及び右壁部50dを備えており、その断面形状は、前後方向に細長い略長方形(矩形)である。
【0044】
カバー部材28の各コーナー部分には、その他の部分よりも厚みが大きい肉厚部52が、当該カバー部材28の上下方向全体に亘って設けられている。各肉厚部52には、それぞれ、上下方向に貫通する貫通孔54が形成されている。
【0045】
カバー部材28の各壁部50a~50dには、それぞれ、各壁部50a~50dの外壁面から外向きに突出して上下方向に延びる、同一断面形状のリブ56a~56dが形成されている。前後の壁部50a、50bの各リブ56a、56cは、各壁部50a、50bの幅方向略中央において各壁部50a、50bの上下方向全体に亘って形成されている。また、左右の壁部50c、50dの各リブ56c、56dは、各壁部50c、50dの前後方向略中央において各壁部50a、50bの上下方向全体に亘って形成されている。
【0046】
図4に示すように、各リブ56a~56dは、その長手方向に亘って延在する溝部57を有した断面溝形(断面C字型)の形状を有する。具体的には、各リブ56a~56dは、断面視において、各壁部50a~50dの壁面から外向きに立ち上がる一対の立ち上がり部58aと、これらの先端から互いに接近する方向に延びる鉤部58bとを備え、これら一対の立ち上がり部58a及び鉤部58bにより溝部57が形成された形状を有している。
【0047】
なお、各リブ56a~56dの溝部57の形状は、より詳しくは、
図4中に二点鎖線で示すように、所定サイズのナットNを各壁部50a~50dの外壁面(外周面)に沿った横向きの姿勢、すなわち、ねじ孔の軸方向が各壁部50a~50dの外壁面と直交する方向に向く姿勢で両立ち上がり部58aの間に支持することが可能な形状とされている。そして、各リブ56a~56dに支持されたナットNの脱落を阻止しつつ、当該ナットNに対して、当該ナットNに対応するボルトを外側から螺合挿入できるように、前記鉤部58b同士の間隔が設定されている。
【0048】
一方、前記フレーム部材22の上面部22aには、前記カバー部材28を取り付けるための取付孔22bが形成されている。これら取付孔22bは、
図3に示すように、カバー部材28の前記貫通孔54に対応して形成されている。そして、同図に示すように、タッピングボルトからなるボルトB1が上面部22aの下側から取付孔22bを通じてカバー部材28の前記貫通孔54に螺合挿入されている。これにより、
図1及び
図2に示すように、カバー部材28がフレーム部材22の上面部22aに固定され、上述の通り、作業軸5および駆動機構部26のうち、フレーム部材22の上方に配置される部分の周囲が覆われている。
【0049】
なお、当例では、カバー部材28の上端開口が塞がれていない。しかし、前記連結部材42には、
図1及び
図2に示すように、カバー部材28の内周面に摺接可能、又は微少隙間を隔てて非接触となるように拡張された拡張部42aが設けられており、その結果、連結部材42がカバー部材28の上蓋として機能している。
【0050】
[作用効果等]
上記のようなロボット1の構成によれば、上記の通り、カバー部材28は、上下方向に貫通する筒状であってかつ上下方向の全体に亘って水平断面形状が同一の押出成形部材である。そのため、ロボット1の製造に際して、以下のような製造方法を採用することにより、合理的にロボット1を製造することが可能となる。
【0051】
1)カバー部材28の断面形状に対応するダイスを備えた押出成形機に、樹脂からなる素材を挿入し、当該素材を、前記ダイスを通じて押し出して定寸に切断する。これにより、カバー部材28と同一断面形状を有し、かつ、カバー部材28の上下方向寸法よりも十
分に長い成型品を押し出し成形する(成型工程)。
【0052】
2)前記成型品を、駆動機構部26の高さ(すなわち、作業軸5の軸長及び昇降ストローク)に対応する長さに切断することにより前記カバー部材28を取得する(カバー切り出し工程)。
【0053】
3)カバー切り出し工程で取得したカバー部材28を、第2アーム部4B(フレーム部材22)の上面部22aに組み付ける(組付工程)。
【0054】
このような製造方法によれば、成型工程で形成した一つの前記成型品から、作業軸5の軸長や昇降ストロークが異なる複数タイプのロボット1のカバー部材28を切り出して使用することが可能となる。つまり、前記成型品を事前に製造しておき、受注のあったタイプのロボット1に応じて、当該ロボット1に対応する寸法のカバー部材28を前記成型品から切り出せばよい。
【0055】
そのため、作業軸5の軸長や昇降ストロークが異なる複数タイプのロボット1について、当該タイプ毎のカバー部材28を予め製造して在庫として保管しておく必要がなくなる。従って、例えば、受注数の少ないタイプのロボット1のカバー部材28が長期的に保管されて経時劣化(変形や変色)することを回避することが可能となる。
【0056】
また、予め企画されたタイプとは異なるタイプ、すなわち、作業軸5の軸長やその昇降ストロークが企画されたタイプとは異なるロボット1(いわゆる特注品)についての受注があった場合でも、当該タイプのロボット1に最適なカバー部材28を難なく準備すること、ひいては当該特注品に係るロボット1を速やかに製造することが可能となる。従って、上述したロボット1は、構成が合理的で、生産面での利便性が高いものと言える。
【0057】
なお、成型工程で成型された前記成型品からカバー部材28を切り出す場合、例えば、カバー部材28の寸法(上下方向の寸法)が長くなると、カバー部材28に自重による変形(ゆがみ)が生じ、形状的な安定性が低下することが考えられる。
【0058】
しかし、上記ロボット1のカバー部材28によれば、各壁部50a~50dに上下方向に延在するリブ56a~56dが各々形成されているので、カバー部材28の肉厚を抑えながらもの面強度や剛性が良好に確保される。そのため、カバー部材28の寸法が比較的長い場合でも、自重による変形(ゆがみ)が効果的に抑制され、これにより、カバー部材28の外観品質を良好に保つことが可能となる。
【0059】
また、後に詳述するが、上記カバー部材28は、貫通孔54の代わりに(又は貫通孔54と共に)、リブ56a~56dを用いてフレーム部材22に固定することも可能である。そのため、上記カバー部材28の構成によれば、リブ56a~56dがカバー部材28の補強機能と、当該カバー部材28をフレーム部材22に固定するための機能とを兼ね備えた合理的な構成が達成される、という利点もある。
【0060】
なお、上記実施形態では、貫通孔54にねじを切ることなく(雌ねじを形成することなく)、上述の通り、当該貫通孔54にタッピングボルトからなるボルトB1を螺合挿入し、これにより、カバー部材28を当該ボルトB1でフレーム部材22に固定している。しかし、貫通孔54を下孔として予めねじを切った上で、六角穴付きボルトなどの一般的なボルト(タッピングボルトでないボルト)でカバー部材28をフレーム部材22に固定するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、上面部22aの下側からボルトB1でカバー部材28を固定しているが、例えば、カバー部材28の上下方向の寸法が比較的短い場合には、
図5に示すように、六角穴付きボルトなどのボルトB2によりカバー部材28の上から当該カバー部材28をフレーム部材22に固定するようにしてもよい。すなわち、フレーム部材22の上面部22aの取付孔22bをねじ孔とし、貫通孔54に対してカバー部材28の上側からボルトB2を挿入して、当該ボルトB2を取付孔22bに螺合挿入する。
【0062】
[リブ56a~56dを用いたカバー部材28の取付構造]
上記カバー部材28は、リブ56a~56dを用いてフレーム部材22に固定することも可能である。以下、その場合の構造について説明する。
【0063】
図6は、リブ56a~56dを用いたカバー部材28の取付構造を示す第2アーム部4Bの要部斜視図であり、
図7は、
図6の一部分解斜視図であり、
図8は、
図7の要部拡大図である。
【0064】
図6~
図8に示すように、リブ56a~56dを用いてカバー部材28がフレーム部材22に固定される場合には、ロボット1は、枠型のアタッチメント60(本発明の「ベース部材」に相当する)をさらに含む。
【0065】
アタッチメント60は、カバー部材28の輪郭と同等の断面形状を有しかつカバー部材28が内嵌可能な周壁部62(本発明の「嵌合部」に相当する)と、この周壁部62の下端部から外向きに延びる板状の台座部64とを備えた平面視略長方形の枠型を成し、周壁部62と台座部64とが同一の樹脂材料または金属材料により一体に形成された構成を有している。
【0066】
周壁部62のうちリブ56a~56dに対応する位置には、各々横向き(周壁部62の厚み方向)に貫通する貫通孔62aが形成され、また、台座部64のうちコーナー部分には上下方向(台座部64の厚み方向)に貫通する貫通孔64aが形成されている。
【0067】
一方、第2アーム部4Bのフレーム部材22の上面部22aには、アタッチメント60の前記台座部64の貫通孔64aに対応する位置に各々ねじ孔22cが形成されている。
【0068】
アタッチメント60は、台座部64を介してフレーム部材22の上面部22aに載置され、六角穴付きボルト等のボルトB3が台座部64の上方から貫通孔64aを通じてねじ孔22cに螺合挿入されることにより、前記上面部22aに固定されている。
【0069】
そして、カバー部材28が、その下端部を上面部22aに当接させた状態で、アタッチメント60の周壁部62の内側に内嵌されている。
【0070】
カバー部材28の各リブ56a~56dには、
図8に示すように、ナットNが横向きの姿勢(
図4参照)、つまり、上述の通り、ねじ孔の軸方向が各壁部50a~50dの外壁面と直交する方向に向く姿勢で支持されている。ナットNは、各リブ56a~56dの上端又は下端から溝部57に挿入されている。
【0071】
そして、六角穴付きボルト等からなるボルトB4が、アタッチメント60の周壁部62の外側から貫通孔62aに挿入され、さらに、リブ56a~56dに支持されているナットNに螺合挿入されている。これにより、カバー部材28の各壁部50a~50dがアタッチメント60に固定され、カバー部材28が当該アタッチメント60を介してフレーム部材22の上面部22aに固定されている。
【0072】
このような、リブ56a~56dを用いたカバー部材28の取付構造によれば、カバー部材28の下端部がアタッチメント60(周壁部62)でサポートされるので、カバー部材28をより安定的にフレーム部材22に固定することが可能となる。
【0073】
この場合、
図3、
図5に示したように、カバー部材28の貫通孔54を用いて、ボルトB1、B2によりカバー部材28をフレーム部材22に固定する構造を併用すれば、カバー部材28をより一層安定的にフレーム部材22に固定することが可能となる。
【0074】
なお、上記ロボット1では、リブ56a~56dを用いてカバー部材28をフレーム部材22に取り付ける構造の変形例として、
図9に示すような構造を採用することも可能である。
【0075】
図9は、リブ56a~56dを用いたカバー部材28の取付構造の変形例を示す要部分解斜視図である。
【0076】
図9に示す例では、フレーム部材22の上面部22a(フレーム本体部23aの上面部)に、カバー部材28の輪郭と同等の断面形状を有しかつカバー部材28が内嵌可能な開口部221が形成されている。開口部221の内壁面のうち、前側の壁面及び左右の壁面であってかつリブ56a~56dに対応する位置には、各々横向きに貫通する(フレーム本体部23aの壁部を貫通する)貫通孔22dが形成されている。当例では、フレーム部材22(フレーム本体部23a)の上壁部が本発明の「嵌合部」に相当する。
【0077】
そして、カバー部材28の下端部が開口部221の内壁面に内嵌され、この状態で、六角穴付きボルト等からなるボルトB5が、フレーム部材22の外側から貫通孔22dに挿入され、さらに、リブ56a~56dに支持されているナットNに螺合挿入されている。これにより、カバー部材28がフレーム部材22に直接固定されている。
【0078】
このような取付構造によれば、カバー部材28の下端部が開口部221の内壁面でサポートされるので、
図6~
図8の取付構造と同様に、カバー部材28を安定的にフレーム部材22に固定することが可能となる。
【0079】
なお、
図9の例では、フレーム部材22(フレーム本体部23a)の構造上、カバー部材28は、前壁部50a及び左右の壁部50c、50dのみがボルトB5でフレーム部材22に固定されている。しかし、例えばフレーム部材22の上面部22aに、当該上面部22aから上方に突出する平面視略長方形の突出部分を形成し、当該突出部分に前記開口部221を形成するとともに、当該突出部分の周面の各リブ56a~56dに対応する位置に前記貫通孔22dを形成するようにすれば、カバー部材28のすべての壁部50a~50dをボルトB5でフレーム部材22に固定することが可能となる。
【0080】
[天井カバー70を備えた構造]
次に、カバー部材28の上端部に天井カバー70が備えられたロボット1の構成について説明する。
図10は、カバー部材28に天井カバー70が取り付けられた構成の第2アーム部4Bの要部斜視図であり、
図11は、天井カバー70の取り付け構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図であり、
図12(a)は天井カバーを上方から視た斜視図、
図12(b)は天井カバーを下方から視た斜視図である。
【0081】
図10及び
図11に示すロボット1では、カバー部材28の上端に天井カバー70が固定されることにより、作業軸5および駆動機構部26のうち、フレーム部材22の上方に配置される部分が、それら周囲のみならず上方からも覆われている。
【0082】
天井カバー70は、カバー部材28の周壁部(すなわち壁部50a~50d)と略同一断面形状、すなわち断面略長方形の周壁部72と、その上端に繋がる天井部74とを備えた概略ドーム型の形状であり、周壁部72と天井部74とが同一の樹脂材料により一体に形成された構造を有している。なお、天井部74は、若干前下がりに形成されている。
【0083】
周壁部72のコーナー部分、具体的には、カバー部材28の前記貫通孔54に対応する位置には、当該周壁部72を上下方向に貫通する貫通孔72aが形成されている。
【0084】
そして、
図11に示すように、天井カバー70の周壁部72がカバー部材28の周壁部(壁部50a~50d)に突き当てられた状態で、天井カバー70がカバー部材28の上部に配置され、タッピングボルトからなるボルトB6が天井カバー70の上方から貫通孔72aを通じてカバー部材28の前記貫通孔54に螺合挿入されている。これにより、天井カバー70がカバー部材28の上部に固定されて、作業軸5および駆動機構部26が上方から覆われている。
【0085】
このような
図10~
図12に示す構成によると、作業軸5および駆動機構部26がその周囲のみならず上方からも覆われる。そのため、ねじ軸36に塗布されたグリスの飛散をより高度に防止するとともに、高速で駆動されるねじ軸36等への不用意なアクセスをより高度に規制することが可能となる。
【0086】
また、上記天井カバー70によれば、カバー部材28のサイズ、すなわち上下方向の寸法に関わらず同じものを使用することが可能であり、しかも、その取り付けには、カバー部材28をフレーム部材22に固定するための貫通孔54が共用されているので、合理的な構成で、カバー部材28の上方を覆うことができいるという利点がある。
【0087】
なお、この実施形態では、貫通孔54にねじを切ることなく(雌ねじを形成することなく)、タッピングボルトからなるボルトB6を貫通孔54に螺合挿入し、これにより、カバー部材28をボルトB6でカバー部材28に固定している。しかし、貫通孔54を下孔として予めねじを切った上で、六角穴付きボルトなどの一般的なボルト(タッピングボルトでないボルト)で天井カバー70をカバー部材28に固定するようにしてもよい。
【0088】
当例では、カバー部材28が本発明の「第1固定カバー部材」に相当し、天井カバー70が本発明の「第2固定カバー部材」に相当する。
【0089】
[可動の天井カバー80を備えた構造]
次に、可動の天井カバー80が備えられたロボット1の構成について説明する。
図13は、可動の天井カバー80が備えられたロボット1の第2アーム部4Bの要部斜視図であり、
図14は、天井カバー80の取り付け構造を示す第2アーム部の要部分解斜視図であり、
図15(a)は天井カバー80を上方から視た斜視図であり、
図12(b)は天井カバー80を下方から視た斜視図である。
【0090】
図13及び
図14に示すロボット1では、天井カバー80が、カバー部材28の内側に配置されて、前記連結部材42に固定されている。つまり、天井カバー80は、作業軸5に連結されて、当該作業軸5と共に上下方向に移動する可動カバーである。
【0091】
天井カバー80は、断面略長方形の周壁部82と、その上端に繋がる天井部84とを備えた概略ドーム型の形状であり、周壁部82と天井部84とが同一の樹脂材料により一体に形成された構造を有している。周壁部82は、カバー部材28の周壁部(すなわち壁部50a~50d)と略同一の断面形状であるが、カバー部材28の周壁部よりも一回り小さく形成されている。つまり、天井カバー80の周壁部82は、カバー部材28の周壁部の内周面に摺接可能、又は微少隙間を隔てて非接触となるように形成されている。なお、天井部84は、
図10に示す天井カバー70と同様に若干前下がりに形成されている。
【0092】
天井部84には、その下面から下向きに伸びる前後一対のボス部84bが形成されており、これらボス部84bに、天井部84を上下方向に貫通する、ざぐり部を備えた貫通孔84aが形成されている。また、天井部84のうちこれら貫通孔84aよりも後方であって、駆動機構部26の前記ねじ軸36に対応する位置には、当該ねじ軸36を導出するための開口部86が形成されている。
【0093】
一方、前記駆動機構部26の連結部材42には、上記貫通孔84a(ボス部84b)に対応する位置にねじ孔42bが形成されている。
【0094】
そして、
図13及び
図14に示すように、天井カバー80がカバー部材28の周壁部(壁部50a~50d)の内側において連結部材42上に配置され、六角穴付きボルト等のボルトB7が天井カバー80の上方から貫通孔84aを通じて連結部材42の前記ねじ孔42bに螺合挿入されている。これにより、天井カバー80が連結部材42の上部に固定されて、作業軸5および駆動機構部26が上方から覆われている。
【0095】
図13及び
図14に示すロボット1の構成では、作業軸5が昇降すると、この作業軸5と一体に天井カバー80がカバー部材28の内側を昇降する。そして、天井カバー80が作業軸5と共に下降する際には、天井カバー80の前記開口部86を通じてねじ軸36が天井カバー80の上方に導出される。
【0096】
このような
図13及び
図14に示すロボット1の構成によると、
図10及び
図11に示すロボット1の構成に比べて、カバー部材28の上端から天井カバー80の上端までの高さ寸法h(
図13参照)を低く抑えることが可能となる。そのため、第2アーム部4Bの上下方向の寸法を出来るだけ小さく抑えたいという要求があるような場合に有効な構成となる。
【0097】
なお、当例では、カバー部材28が本発明の「固定カバー部材」に相当し、天井カバー80が本発明の「可動カバー部材」に相当する。
【0098】
以上、本発明に係るロボット1及びその製造方法について説明したが、これらのロボット1及びその製造方法は、本発明の好ましい実施形態の例示であって、ロボット1の具体的な構成や製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態では、カバー部材28の変形(ゆがみ)を抑制するために、各壁部50a~50dにリブ56a~56dが形成されている。しかし、例えば、作業軸5が比較的短くかつその昇降ストロークも比較的小さいために、カバー部材28の上下方向の寸法が比較的小さくなるタイプのロボット1が対象となる場合や、カバー部材28の各壁部50a~50dの厚みが比較的大きく、カバー部材28の剛性が十分に確保されるような場合には、リブ56a~56dを省略してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、リブ56a~56dがナットNを支持することが可能な断面溝形の形状を有しており、これにより、リブ56a~56dが、カバー部材28の補強機能と、当該カバー部材28をフレーム部材22に固定するための機能とを兼ね備えた構成とっている。しかし、リブ56a~56dは、単にカバー部材28を補強するだけものであってもよい。この場合には、各壁部50a~50dの壁面に、断面形状が単純な矩形(四角形)や三角形のリブ56a~56dを設けるようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、カバー部材28、アタッチメント60、天井カバー70、80は何れも樹脂製であるが、勿論、アルミニウム合金などの比較的軽量の金属材料で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 水平多関節ロボット
2 アーム支持台
3 アーム
4A 第1アーム部
4B 第2アーム部
5 作業軸
10、12 フレーム部材
22 フレーム部材22(アーム本体部)
22a 上面部
26 駆動機構部(昇降機構部)
28 カバー部材(固定カバー部材、第1固定カバー部材)
60 アタッチメント(ベース部材)
62 周壁部(嵌合部)
70 天井カバー(第2固定カバー部材)
80 天井カバー(可動カバー部材)