(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】倒木対策用ケーブル吊架装置
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20230711BHJP
H02G 7/06 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G7/06
(21)【出願番号】P 2019184959
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000225201
【氏名又は名称】那須電機鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】洞 大貴
(72)【発明者】
【氏名】岡田 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡▲さき▼ 大輔
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-111329(JP,U)
【文献】特開昭62-178113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持物の一側に基部を固定し先端部を水平に突出させた角筒状のアーム材を設け、当該アーム材の先端部の底板に切り欠きを設け、ケーブルを下部で把持したケーブル把持金具の上部を前記アーム材の切り欠きを通して、アーム材内に入れ、当該切り欠きを有するアーム材の両側に、アーム材の下方で内側に曲がった折曲下端を有する板状の取付金具の上部をそれぞれ固定し、当該両側の取付金具の折曲下端で前記アーム材内に入ったケーブル把持金具の上部を係止し、前記ケーブルに所定値以上の荷重が掛かった際前記取付金具が変形して、ケーブル把持金具の係止を解く構成としたことを特徴とする、倒木対策用ケーブル吊架装置。
【請求項2】
支持物の一側に基部を固定し先端部を水平に突出させた角筒状のアーム材を設け、当該アーム材の先端部の下部を斜めに切り落として、先端部の断面が逆U字型となるよう形成し、ケーブルを下部で把持したケーブル把持金具の上部を、前記アーム材の先端部の断面逆U字型部からアーム材内に入れ、当該断面逆U字型部の両側に、アーム材の下方で内側に曲がった折曲下端を有する板状の取付金具の上部をそれぞれ固定し、当該両側の取付金具の折曲下端で前記アーム材内に入ったケーブル把持金具の上部を係止し、前記ケーブルに所定値以上の荷重が掛かった際前記取付金具が変形して、ケーブル把持金具の係止を解く構成としたことを特徴とする、倒木用ケーブル吊架装置。
【請求項3】
前記アーム材の先端部の先端開口部に、前記アーム材の上板から底板までの長さを有するストッパ板を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の倒木対策用ケーブル吊架装置。
【請求項4】
前記アーム材の基部と支持物の一側との間に当座を介在させたことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置。
【請求項5】
前記アーム材の基部の下に、前記アーム材の基部端と自体の基部端を合わせた横長のリブ材を設けたことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の倒木対策用吊架装置。
【請求項6】
前記ケーブル把持金具が、L字型の水平片の先端に立ち上がり縁を有し、水平片の孔に下から挿入した、鉤型ボルトの端部を前記立ち上がり縁に設けた切り欠きに入れて、立ち上がり縁の外側に突出した鉤型ボルト端部にナットを螺着し、前記L字型の垂直片の外側に断面コ字型のチャネル材の中央片を重ねて、これらのチャネル材及び垂直片をボルト、ナットで固定し、前記チャネル材の両側片の一辺を、前記鉤型ボルトを下にした際に水平となる水平辺に形成し、当該チャネル材の両側片の各水平辺を前記両側の取付金具の折曲下端の内側に当接させる構成としたことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置。
【請求項7】
前記支持物が電柱であり、当該電柱に槍出アーム用バンドを巻き回して前記アーム材の両側を当該槍出アーム用バンドで固定したことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架空ケーブルに過大な荷重がかかった際に、吊架装置の一部を破壊もしくは変形させることで架空ケーブル損傷及び支持物倒壊を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、台風等の強風により架空ケーブルの付近の木が倒れ、当該倒木などにより架空ケーブルに過大な荷重がかかった場合、ケーブルが損傷したり、支持物が倒壊することがある。これを回避するため、架空ケーブルを支持する装置に予め弱点部分を備えて、当該弱点部分を破断、変形させたり、架空ケーブルを把持する把持部を開放させたりするようにした装置が種々開発されている。
【0003】
特許文献1のものは、所定値以上の吊り下げ荷重が作用したとき、内蔵するコイルバネの圧縮によりフック部が下方に移動し、これによりフック部に設けた掛け金が外れ、ケーブル把持金具がフック部から抜け落ちるように構成されている。これによりケーブル破断や支持物倒壊を防止する。
【0004】
また、特許文献2のものは、柱に固定した腕金に吊るした碍子に電線を支持するバインド線を、倒木による負荷によって破断する程度の強度を有するものとした。従って、このような負荷がかかるとバインド線が破断し、電線が落下するものである。
【0005】
また、特許文献3のものは、電線を固定腕と可動腕で把持しており、電線に過大な負荷が掛かった場合、圧力センサに所定値以上の圧力値が発生し、固定腕と可動腕との連結が解除されるように回転手段を駆動して、電線が切断される前に電線を落下させる電線保護装置である。
【0006】
また、特許文献4のものは、送電線が連結された碍子に所定の外力がかかると破断する弱点部と、弱点部が破断すると作動して伸長し、送電線の弛み度を増加させるダンパとを備える取付金具を介在させた。これにより、送電線の損傷を防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-102124号公報
【文献】特開2010-226824号公報
【文献】特開2016-005363号公報
【文献】特開2016-149829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1はコイルバネを用いたもので、ケーブルにかかる負荷によりコイルバネを圧縮させ、フック部が下に下がり、掛け金が外れ、ケーブル把持金具がフック部から抜け落ちる構成となっており、コイルバネ、フック部、掛け金の3つの部材が作用しないとケーブルが支持部から外れず、構造が複雑である。また、コイルバネは高価であり、装置全体のコストが高い欠点を有する。
【0009】
また、ケーブルの把持部とケーブルの支持部との間に上記コイルバネ、フック部及び掛け金が介在し、そのためにケーブルの把持部とケーブルの支持部との距離が大きく、ケーブルに負荷が掛かった際に、ケーブルが前後に揺れ動いて装置が動作しないおそれがある。
【0010】
また、特許文献2のものは、バインド線が倒木の際の電線に対する負荷によって破断する程度の強度にする点は、バインド線の素材、太さ等を選択するのが難しく、その上、作業者の電線に対するバインド線の巻き付け方によっても異なり、効果にばらつきが生じやすい。
【0011】
また、特許文献3のものは、倒木等により電線に過大な負荷が掛かった場合に圧力センサがこれを感知し、回転手段により可動腕を回転させて、電線を落下させる構造であり、構造が複雑で確実性に乏しい。
【0012】
また、特許文献4のものは、取付金具に設けた弱点部がくびれ形状となっており、これにより過大な負荷が碍子に掛かると取付金具が破断する構成であり、この弱点部をどの程度くびれさせるかによって強度が異なるため、弱点部の製造が難しい。
【0013】
そこで、この発明は上述の欠点に着目し、コイルバネ等の高価な部材を用いず、板状部材を用いてケーブルを把持し、ケーブルに過大な負荷が掛かった場合に前記板状部材が変形し、ケーブル把持が外れて、ケーブルが落下する、構成が簡単で、作用が確実な倒木対策用ケーブル吊架装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、支持物の一側に基部を固定し先端部を水平に突出させた角筒状のアーム材を設け、当該アーム材の先端部の底板に切り欠きを設け、ケーブルを下部で把持したケーブル把持金具の上部を前記アーム材の切り欠きを通して、アーム材内に入れ、当該切り欠きを有するアーム材の両側に、アーム材の下方で内側に曲がった折曲下端を有する板状の取付金具の上部をそれぞれ固定し、当該両側の取付金具の折曲下端で前記アーム材内に入ったケーブル把持金具の上部を係止し、前記ケーブルに所定値以上の荷重が掛かった際、前記取付金具が変形して、ケーブル把持金具の係止を解く構成とした、倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【0015】
また、請求項2の発明は、支持物の一側に基部を固定し先端部を水平に突出させた角筒状のアーム材を設け、当該アーム材の先端部の下部を斜めに切り落として、先端部の断面が逆U字型となるよう形成し、ケーブルを下部で把持したケーブル把持金具の上部を、前記アーム材の先端部の断面逆U字型部からアーム材内に入れ、当該断面逆U字型部の両側に、アーム材の下方で内側に曲がった折曲下端を有する板状の取付金具の上部をそれぞれ固定し、当該両側の取付金具の折曲下端で前記アーム材内に入ったケーブル把持金具の上部を係止し、前記ケーブルに所定値以上の荷重が掛かった際、前記取付金具が変形して、ケーブル把持金具の係止を解く構成とした、倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【0016】
また、請求項3の発明は、前記アーム材の先端部の先端開口部に、前記アーム材の上板から底板までの長さを有するストッパ板を設けた、請求項1又は2に記載の倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【0017】
請求項4の発明は、前記アーム材の基部と支持物の一側との間に当座を介在させた、請求項1~3のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記アーム材の基部の下に、前記アーム材の基部端と自体の基部端を合わせた横長のリブ材を設けた、請求項1~4のいずれかに記載の倒木対策用吊架装置とした。
【0019】
また、請求項6の発明は、前記ケーブル把持金具が、L字型の水平片の先端に立ち上がり縁を有し、水平片の孔に下から挿入した、鉤型ボルトの端部を前記立ち上がり縁に設けた切り欠きに入れて、立ち上がり縁の外側に突出した鉤型ボルト端部にナットを螺着し、前記L字型の垂直片の外側に断面コ字型のチャネル材の中央片を重ねて、これらのチャネル材及び垂直片をボルト、ナットで固定し、前記チャネル材の両側片の一辺を、前記鉤型ボルトを下にした際に水平となる水平辺に形成し、当該チャネル材の両側片の各水平辺を前記両側の取付金具の折曲下端の内側に当接させる構成とした、請求項1~5のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【0020】
また、請求項7の発明は、前記支持物が電柱であり、当該電柱に槍出アーム用自在バンドを巻き回して前記アーム材の両側を当該槍出アーム用自在バンドで固定した、請求項1~6のいずれかに記載の倒木対策用ケーブル吊架装置とした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1及び2の発明によれば、アーム材の先端部の下からアーム材の先端部内に入れた、ケーブル把持金具の上部を、アーム材の両側に固定した各取付金具の折曲下端で係止しているため、当該ケーブル把持金具の下部で把持した電線に倒木等により、所定値以上の荷重が掛かった際、前記取付金具の折曲下端を含む下部が変形し、ケーブル把持金具が落下する。従って、電線への所定値以上の過大な荷重がケーブル把持金具に直接作用し、確実に取付金具が変形して、ケーブルが落下する。それ故、ケーブルや当該装置の他の部材の損傷の可能性が極めて低い。また、単純な構成のため、信頼性が高い。
【0022】
また、この発明の装置では、ケーブルの支持点がケーブル把持金具の上部であり、また、ケーブルの把持箇所は同じケーブル把持金具の下部であるため、これらの距離は極めて小さくすることができる。従って、前記倒木等によりケーブルに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ケーブルが前後左右に動く距離が小さく、ケーブルに掛かる前記荷重をケーブル把持金具が受けやすく、ケーブルの把持が確実に外れる。
【0023】
また、請求項3の発明によれば、アーム材の先端部にはストッパ板が設けられ、また、アーム材の先端部の底板は切り欠き又は断面逆U字型の端縁部があり、これらによりアーム材に把持されているケーブル把持金具の上部は前後左右でその動きを規制されている。従って、常時はケーブル把持金具は固定され、ケーブルに所定値以上の荷重が掛かったときのみに、前記把持が解除されてケーブルは確実に落下する。
【0024】
また、請求項4の発明によれば、アーム材の基部と支持物の一側との間に当座が介在しているため、前記ケーブルに所定値以上の荷重が掛かった場合、アーム材が支持物に食い込まず、支持物が反力受けとなり、ケーブル把持金具を係止している取付金具が変形しやすい。また、支持物を傷つけない。
【0025】
また、請求項5に発明によれば、前記アーム材の下に、その基部端を合わせたリブ材を設けているため、支持物に掛かる荷重を低減させることができ、アーム材のたわみを抑えることができるためケーブル把持金具を係止している取付金具が変形しやすい。
【0026】
また、請求項6の発明によれば、前記ケーブル把持金具は従来からケーブルの直接支持に使用されている吊架金物のため入手しやすく、このケーブル把持金具にチャネル材を固定し、当該チャネル材の両側片の一辺を前記取付金具の折曲下端内側に当て、さらに、前記取付金具に係止されているケーブル把持金具の真下にケーブルが位置するように吊り下げるため、前記ケーブルへの所定値以上の荷重が掛かった場合に、前記取付金具の変形で落下しやすい。
【0027】
また、請求項7の発明によれば、前記アーム材を電柱に取り付ける際、槍出アーム用自在バンドで固定するため、アーム材を電柱に固定しやすく。迅速に当該ケーブル吊架装置を設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置を電柱に装着した状態の正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置を電柱に装着した状態の平面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は平面図、(c)は右側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のアーム材を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は右側面図、(d)図は底面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のリブ材を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図、(d)図は底面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のスぺーサを示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は右側面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の抑え材を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は右側面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の取付金具を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は右側面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の当座を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は右側面図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の裏当座を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は左側面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のケーブル把持金具の図であり、(a)図は正面図、(b)図は右側面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のチャネル材を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は右側面図である。
【
図13】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のケーブル把持金具にチャネル材を取り付けた状態を示す図であり、(a)図は正面断面図、(b)は右側面図、(c)図は使用状態における正面図である。
【
図14】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のアーム材にリブ材及びスペーサを取り付ける構成を示す正面図である。
【
図15】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のアーム材にリブ材を取り付け、さらにスペーサの上に抑え材を取り付けた正面図である。
【
図16】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のアーム材にリブ材を取り付け、さらに、スペーサ、抑え材及び取付金具を取り付けた正面図である。
【
図17】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置のアーム材にリブ材を取り付け、さらに、スペーサ、抑え材及び取付金具を取り付けた右側面図である。
【
図18】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の通常使用状態を示す図であり、(a)図は一部断面図、(b)図は右側断面図である。
【
図19】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の倒木時の状態を示す図であり、(a)図は一部断面図、(b)図は右側断面図である。
【
図20】この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置の使用状態を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は右側面図である。
【
図21】従来例の倒木対策用ケーブル吊架装置の使用状態を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の倒木対策用ケーブル吊架装置Aを
図1~
図20に基づいて説明する。
【0030】
まず、倒木対策用ケーブル吊架装置Aは、
図1及び
図2に示すように、電柱Bに槍出アーム用自在バンドCにより装着される。そして
図20の(b)図に示すように、倒木対策用ケーブル吊架装置Aのケーブル把持金具にケーブルDのメッセンジャワイヤD1を支持するものである。
【0031】
倒木対策用ケーブル吊架装置Aは、
図3に示すように、略角筒状のアーム材1、同じく角筒状のリブ材2、スペーサ3、抑え材4、取付金具5、当座6及びチャネル材7を取り付けたケーブル把持金具8(
図13の(c)図を参照)とから構成されている。
【0032】
前記アーム材1は
図4に示すように、角筒状のもので先端部の下部が斜めに切り落とされ、先端に向かって先細の傾斜端面1aが形成されている。また、当該傾斜端面1aの下端縁に接した底板1bに略半円状の切り欠き1cが形成されている。また、前記底板1bには2個のボルト孔1dが設けられている。
【0033】
前記リブ材2は、
図5に示すように、角筒状のもので先端部の下部が斜めに切り落とされ、先端に向かって先細の傾斜端面2aが形成されている。また、上板2bには2個のボルト孔2cが設けられている。そして、
図14に示すように、前記アーム材1の底板1bとリブ材2の上板2bとを重ね、各ボルト孔1dと各ボルト孔2cを合わせてボルト9をこれらの孔に通し、当該ボルト9端でナット10を締め付け、一体にしている。なお、ボルト9及びナット10については
図17に示す。
【0034】
前記スペーサ3は、
図6に示すように、板状のもので、四辺形の一側下部が斜めに切り落とされ、先端に向かって先細の傾斜端面3aが形成されている。この傾斜端面3aは前記アーム材1の傾斜端面1aと同じ傾斜となっており、
図14に示すように、アーム材1の先端の傾斜端面1aにスペーサ3の傾斜端面3aを合わせて、スペーサ3はアーム材1の両側面に重合される。
【0035】
前記抑え材4は、
図7に示すように、平面視コの字型であり、
図15~
図17に示すように、前記スペーサ3の上からアーム材1の先端部に被せられ、その端部両側で前記スペーサ3及びアーム材1の両側面を貫通するボルト11及びナット12により固定される。
【0036】
前記取付金具5は、
図8に示すように、縦長の板体から成り、その下端部に、内側に約30度傾斜した折曲下端5aを有したものである。そして、この取付金具5を2個用意し、各取付金具5の上部を、
図16及び
図17に示すように、抑え材4の両側に当て、ボルト13を一方の取付金具5、抑え材4の各側板、スペーサ3及びアーム材1の両側板を順次貫通させ、他方の取付金具5の外側に突出するボルト13端にナット14を螺着して各取付金具5の上部が固定されている。そして、両側の取付金具5の折曲下端5aは、
図17に示すように、前記抑え材4の下端より下方で抑え材4の両側板の内側に突出している。
【0037】
前記当座6は、この倒木対策用ケーブル吊架装置Aを電柱Bに取り付ける際に使用するもので、
図9に示すように、本体6aは電柱の外周面に沿って湾曲しており、その上端中央部に抜け落ち防止用の鉤型係止片6bを設けている。
【0038】
また、
図1、
図2及び
図20の(a)図に示すように、倒木対策用ケーブル吊架装置Aを槍出アーム用自在バンドCにより電柱Bに取り付ける際に、前記当座6と対向する位置の槍出アーム用自在バンドCと電柱Bとの間に2個の裏当座17を介在させる。これらの各裏当座17は前記当座6と同じ構成であるが、上下左右の幅が異なる。当該裏当座17は、
図10に示すように、本体17aは電柱の外周面に沿って湾曲しており、その上端中央部に抜け落ち防止用の鉤型係止片17bを設けている。
【0039】
この裏当座17と前記当座6により、当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aに吊架されたケーブルに所定値以上の荷重が掛かった場合でも支持物である電柱Bを傷つけない。
【0040】
前記ケーブル把持金具8は従来からある吊架金物であり、
図11に示すように、L字型の本体の水平片8aの先端に立ち上がり縁8bを有し、水平片8aの孔に下から挿入した鉤型ボルト8cの端部を前記立ち上がり縁8bに設けた切り欠き8dに入れて、立ち上がり縁8bの外側に突出した鉤型ボルト8c端部にナット8eを螺着し、前記本体の垂直片8fの上部にボルト15を貫通させ、当該ボルト15の端部にナット16を螺着したものである。
【0041】
前記チャネル材7は、
図12に示すように、下向きの略チャネル型の本体を成し、その上板7aにボルト孔7bを設け、両側板7cが逆向き台形形状となっている。そして、
図13に示すように、前記上板7aを前記ケーブル把持金具8の垂直片8fの外面に当て、ボルト15を前記ボルト孔7bに通して、チャネル材7の上板7aの外面から突出するボルト15の端部に螺着した前記ナット16で締め付けてケーブル把持金具8にチャネル材7を固定している。その際、チャネル材7の両側板7cが前記ボルト15の頭部15aの両側脇に位置している。
【0042】
また、当該チャネル材7を付けたケーブル把持金具8を当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aに使用する場合は、
図13の(c)図に示すように、鉤型ボルト8cを最下部に位置させる。この状態で前記チャネル材7の両側板7cの下辺7dが略水平となる形状としている。
【0043】
そして、このチャネル材7を付けたケーブル把持金具8を前記アーム材1の先端部内部に挿入する。それには、前記ボルト13に螺着したナット14を緩めて両側の取付金具5の固定を緩め、前記チャネル材7を付けたケーブル把持金具8の上部に位置するチャネル材7を前記アーム材1の先端部内部に下から挿入する。
【0044】
そして、前記各取付金具5の折曲下端5aの内側で、前記チャネル材7の両側片7cの下辺7dを受ける構成に調整し、この状態で前記ナット14をボルト13に対して締め付ける。この状態が
図3及び
図18に示すものである。
【0045】
この状態では、ケーブル把持金具8の上部のチャネル材7は両側片7cを各取付金具5の折曲下端5aで係止され、また、チャネル材7は、
図18の(a)図に示すように、その前方は抑え材5で塞がれ、後方は前記アーム材1の傾斜端面1aの端縁で動きが規制されている。従って、ケーブル把持金具8はアーム材1からむやみに外れない。
【0046】
そして、
図1及び2に示すように、当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aを前記電柱Bに、槍出アーム用自在バンドCにより取り付け、前記ケーブル把持金具8にケーブルDのメセンジャワイヤD1を把持させる(
図18の(b)図参照)。また、前記倒木対策用ケーブル吊架装置Aのアーム材1及びリブ材2の基部と電柱Bの外周との間に前記当座6を、また、当該当座6と対向する位置の槍出アーム用自在バンドCと電柱Bとの間に2個の裏当座17を夫々挿入して槍出アーム用自在バンドCにより当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aを固定する。
【0047】
そして、ケーブルDの上に木が倒れてきてケーブルDに所定値以上の荷重が掛かった場合、前記両側の取付金具5にその負荷が伝わり、取付金具5は、
図19の(b)図に示すように、横に広がるように変形し、
図19の(a)図及び(b)図に示すように、前記ケーブル把持金具8のチャネル材7の両側板7cは取付金具5の折曲下端5aの支持が外れてケーブル把持金具8はケーブルD(メッセンジャワイヤD1を含む)とともに落下する。すなわち、ケーブル把持金具8はアーム材1の傾斜端面1aの内側の断面逆U字型内部から落下するが、ケーブル把持金具8の端部がアーム材1の底板1bの端縁に引っかからないように当該底板1bに切り欠き1cが設けられている。
【0048】
この様に、ケーブルDに所定値以上の荷重が掛かった場合に取付金具5が変形し、ケーブル把持金具8は支持箇所を失って、落下するため、ケーブルDに損傷を与えない。
【0049】
また、
図20と
図21は、この発明の倒木対策用ケーブル吊架装置Aと従来のケーブル吊架装置、特に特許文献1のものと比較するため、それぞれの正面図及び右側面図を示したものである。
【0050】
この発明の倒木対策用ケーブル吊架装置Aはアーム材1のすぐ下で、ケーブルDのメセンジャワイヤD1を吊架しているのに対し、特許文献1のものでは、コイルバネ50、フック51及び掛け金52の下にケーブル把持金具53が相互に回転自裁に接続され、当該ケーブル把持金具53にケーブルDのメッセンジャワイヤD1を把持させている。この様に装置の支持点とケーブル把持点との距離をこの発明の倒木対策用ケーブル吊架装置Aと特許文献1のもとで比べると、この発明のものは約40mm、特許文献1のものは約570mmであり、この発明の倒木対策用ケーブル吊架装置Aはその距離を極めて短くすることができる。
【0051】
これは、ケーブルDに所定値以上の荷重が掛かった際、前記距離が短ければ、ケーブル支持点に荷重が伝わりやすい。一方、特許文献1のように前記距離が長ければ、ケーブルは荷重に対し前後左右に動き、ケーブル支持点に荷重が伝わりにくい。
【0052】
また、前記実施の形態例1では上記アーム材1の先端部に傾斜端面1aを設け、かつ切り欠き1cを設けているが、これに替えて、アーム材1の先端部の底板を切り取ってその箇所だけ断面逆U字型にし、ケーブル把持金具の上部を下から挿入できる構成にしてもよい。
【0053】
また、前記実施の形態例1ではケーブル把持金具8にチャネル材7を設け、当該チャネル材7の両側片7cを取付金具5の折曲下端5aに係止しているが、これに限らず、ケーブル把持金具8の上部を係止する構成としてもよい。
【0054】
また、前記実施の形態例1ではスペーサ3を設けているが、当該スペーサ3はアーム材1と抑え材4との間に介在させ、両者のサイズの相違の調整を行っているもので、この発明の必須要件ではない。
【0055】
また、前記実施の形態例1では抑え材4を設けているが、抑え材4に代えて、アーム材1の先端部にアーム材1の上板から底板までの長さをほぼ有するストッパ板を設けても良い。また、リブ材2は前記実施の形態例1では角筒形状としているが、角筒形状でなく横長のものであればよい。また、リブ材2、当座6及び裏当座17は当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aの補強材であるが、必須要件ではない。
【0056】
さらに、前記実施の形態例1では、当該倒木対策用ケーブル吊架装置Aを支持物の一つである電柱Bに取り付けるのに槍出アーム用自在バンドCを用いているが、当該槍出アーム用自在バンドを用いずに倒木対策用ケーブル吊架装置Aを支持物に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
A 倒木対策用ケーブル吊架装置 B 電柱
C 槍出アーム用自在バンド D ケーブル
D1 メッセンジャワイヤ
1 アーム材 1a 傾斜端面
1b 底板 1c 切り欠き
1d ボルト孔
2 リブ材 2a 傾斜端面
2b 上板 2c ボルト孔
3 スペーサ 3a 傾斜端面
4 抑え材
5 取付金具 5a 折曲下端
6 当座 6a 本体
6b 鉤型係止片
7 チャネル材 7a 上板
7b ボルト孔 7c 両側板
7d 下辺
8 ケーブル把持金具 8a 水平片
8b 立ち上がり縁 8c 鉤型ボルト
8d 切り欠き 8e ナット
8f 垂直片
9 ボルト 10 ナット 11 ボルト 12 ナット 13 ボルト 14 ナット 15 ボルト 15a 頭部
16 ナット 17 裏当座
17a 本体 17b 鉤型係止片