(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ケミカルメカニカルポリッシングパッド及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230711BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230711BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230711BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230711BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20230711BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C08G18/32 037
C08G18/18
C08G18/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019198323
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・アール・ガディンスキ
(72)【発明者】
【氏名】モハマッド・ティー・イスラム
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シー・ジェイコブ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138564(WO,A1)
【文献】特開2017-139443(JP,A)
【文献】特開2018-171702(JP,A)
【文献】特開2005-129644(JP,A)
【文献】特表2012-528487(JP,A)
【文献】特開2018-43342(JP,A)
【文献】特開2001-048858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
H01L 21/304
B24B 37/00
C08G 18/32
C08G 18/18
C08G 18/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって:
基板を提供すること;
水及びシリカ砥粒を含む研磨スラリーを提供すること;
正のゼータ電位を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドであって、組成物を有する研磨層及び研磨表面を含む研磨パッドであって、ここで組成物は、(a)~(d):
(a)1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナート;
(b)ヒドロキシル置換第4級アンモニウムからなる第1の硬化剤;
(c)第2の硬化剤であって、第4級アンモニウムを含まない第2の硬化剤;及び
(d)場合により、複数の微量要素;
を含む成分の反応生成物であり、
前記第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤の総モル量に基づいて50mol%以上で存在し、そして(b)及び(c)の硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1であり、そして
前記正のゼータ電位は、研磨パッド全体の表面にわたって一定であり、脱イオン水のpHを調整するために硝酸又は水酸化カリウムを用いた2~12のpH範囲にわたってpHに依存しない、ケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
基板の表面を研磨するために研磨表面と基板との間に動的運動を作り出すこと;そして、
研磨表面と基板の界面又はその付近のケミカルメカニカルポリッシングパッド上に研磨スラリーを分注すること
を含む方法。
【請求項2】
第1の硬化剤が、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の硬化剤が、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第2の硬化剤が、アミンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第2の硬化剤が、0.1重量%未満の第3級アミンを含有する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
アミンが、芳香族アミンである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
芳香族アミンが、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MBOCA)である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
第4級アンモニウムが、メチル硫酸トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
シリカ砥粒が、研磨pH1~6で測定された正の表面電荷を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
研磨スラリーが、pH3~5を有する、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に先進の半導体デバイスのケミカルメカニカルポリッシング(CMP)の分野に関する。更に詳細には、本発明は、化学修飾されたCMPパッド、及び先進の半導体デバイスのケミカルメカニカルポリッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性材料、半導体材料及び絶縁材料
の複数の層が半導体ウェーハの表面上に堆積されるか、又はそこから除去される。導電性材料、半導体材料、及び絶縁材料の薄層は、幾つかの堆積手法によって堆積され得る。最新の加工における一般的な堆積手法は、スパッタリングとしても知られている物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、及び電気化学的めっき法(ECP)を含む。
【0003】
材料の層が順次堆積され除去されるにつれ、ウェーハの最上面は平坦でなくなる。後続の半導体加工(例えば、メタライゼーション)はウェーハが平らな表面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、望ましくない表面トポグラフィー及び表面欠陥(粗面、凝集物質、結晶格子損傷、スクラッチ、及び混入層又は物質など)を除去するのに有用である。
【0004】
ケミカルメカニカルプラナリゼーション、又はケミカルメカニカルポリッシング(CMP)は、半導体ウェーハのような基板を平坦化するために使用される一般的な手法である。従来のCMPにおいて、ウェーハはキャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置内に研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、ウェーハに調節可能な圧力を提供し、ウェーハを研磨パッドに押し付ける。パッドを、外部駆動力によってウェーハに対して移動(例えば、回転)させる。それと同時に、化学組成物(「スラリー」)又は他の研磨溶液がウェーハと研磨パッドとの間に提供される。よって、パッド表面及びスラリーの化学的及び機械的作用によって、ウェーハ表面が研磨されて、平坦化される。
【0005】
パッドとスラリー粒子間の接触力に加えて、表面力もウェーハとスラリー粒子の間に作用し、CMP材料除去速度に影響を与える。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0120416号は、研磨物品の表面の至るところでゼータ電位の変動領域を有する研磨物品を開示している。活性スラリーが正のゼータ電位を有する砥粒(例えば、アルミナ)を含有するとき、研磨表面は、研磨物品の表面の他の領域と比較して大きな負のゼータ電位を有するように設計され、砥粒を研磨物品と液体界面との界面に引き付ける。
【0007】
米国特許第9,484,212号は、CMPパッドの研磨層の酸化ケイ素材料と窒化ケイ素の間の除去速度選択比を改善する方法を開示している。これは、研磨層組成物に使用される原料の特定の組合せと共に、研磨pH1~6で測定された正の表面電荷を有するシリカ砥粒の使用によって達成される。
【0008】
WO 2018021428は、正のゼータ電位を有する研磨パッドを開示している。研磨パッドは、第3級アミンポリウレタンで作られている。
【0009】
より高いCMP平坦化性能及び生産性を有する改善されたケミカルメカニカルポリッシングパッドが必要とされている。本発明は、表面全体にわたって一定の正のゼータ電位を有する化学修飾されたCMPパッド、及び研磨性能を改善するためにこの改善されたパッドを正に帯電したスラリーと組合せる方法を提供することによって、この必要性を満たす。
【0010】
開示の概要
ある実施態様は、メモリ、シリコンディスク、ガラス、及び半導体基板のうちの少なくとも1種から選択される基板を研磨するための正のゼータ電位を有するケミカルメカニカル(CMP)研磨パッドであって、組成物を有する研磨層及び研磨表面を含む研磨パッドであって、ここで組成物は、(a)~(d):
(a)1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナート;
(b)ヒドロキシル置換第4級アンモニウムからなる第1の硬化剤;
(c)第2の硬化剤であって、第4級アンモニウムを含まない第2の硬化剤;及び
(d)場合により、複数の微量要素;
を含む成分の反応生成物であり、
前記第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤の総モル量に基づいて50mol%以上で存在し、そして(b)及び(c)の硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1であり、そして
前記正のゼータ電位は、研磨パッド全体の表面にわたって一定であり、脱イオン水のpHを調整するために硝酸又は水酸化カリウムを用いた2~12のpH範囲にわたってpHに依存しない、研磨パッドを提供する。
【0011】
別の実施態様は、第4級アンモニウムが1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するとしている。
【0012】
別の実施態様は、第4級アンモニウムが1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基を含有するとしている。
【0013】
別の実施態様は、第2の硬化剤がアミンを含むとしている。
【0014】
別の実施態様は、第2の硬化剤が0.1重量%未満の第3級アミンを含むとしている。
【0015】
別の実施態様は、アミンが芳香族アミンであるとしている。
【0016】
別の実施態様は、芳香族アミンが4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MBOCA)であるとしている。
【0017】
別の実施態様は、第4級アンモニウムがメチル硫酸トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムであるとしている。
【0018】
別の実施態様は、第4級アンモニウムが塩化(2,3-ジヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムであるとしている。
【0019】
別の実施態様は、ゼータ電位が+90から+160mVの範囲にあるとしている。
【0020】
別の実施態様は、基板のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって:
基板を提供すること;
水及びシリカ砥粒を含む研磨スラリーを提供すること;
正のゼータ電位を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドであって、組成物を有する研磨層及び研磨表面を含む研磨パッドであって、ここで組成物は、(a)~(d):
(a)1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナート;
(b)ヒドロキシル置換第4級アンモニウムからなる第1の硬化剤;
(c)第2の硬化剤であって、第4級アンモニウムを含まない第2の硬化剤;及び
(d)場合により、複数の微量要素;
を含む成分の反応生成物であり、
前記第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤の総モル量に基づいて50mol%以上で存在し、そして(b)及び(c)の硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1であり、そして
前記正のゼータ電位は、研磨パッド全体の表面にわたって一定であり、脱イオン水のpHを調整するために硝酸又は水酸化カリウムを用いた2~12のpH範囲にわたってpHに依存しない、ケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
基板の表面を研磨するために研磨表面と基板との間に動的運動を作り出すこと;そして、
研磨表面と基板の界面又はその付近のケミカルメカニカルポリッシングパッド上に研磨スラリーを分注すること
を含む方法を提供する。
【0021】
別の実施態様は、シリカ砥粒が研磨pH1~6で測定された正の表面電荷を有するとしている。
【0022】
更に別の実施態様は、研磨スラリーがpH3~5を有するとしている。
【0023】
本実施態様のこれらと他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより当業者には更に容易に理解されるであろう。明確にするために別個の実施態様として上記及び下記の開示された実施態様の特定の特徴はまた、単一の実施態様において組合せて提供されてもよい。逆に、単一の実施態様に即して説明される開示された実施態様の種々の特徴はまた、別個に又は任意のサブコンビネーションとして提供されてもよい。
【0024】
詳細な説明
特に明記又は定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関係する分野の当業者によって一般に理解されている意味を有する。
【0025】
特に明記されない限り、全ての百分率、部、比率などは重量によるものである。
【0026】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる場合、これは、どの範囲が別々に開示されているかに関係なく、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。本明細書に数値の範囲が記載される場合、特に断りない限り、この範囲は、その端点、並びに範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。
【0027】
特に断りない限り、温度及び圧力の条件は周囲温度及び標準圧力である。記載される範囲は全て包括的であり、かつ組合せ可能である。
【0028】
特に断りない限り、括弧を含む任意の用語は、括弧が存在しないかのように用語全体、及び括弧内を含まない用語、並びに各選択肢の組合せのいずれかを指す。よって「(ポリ)イソシアナート」という用語は、イソシアナート、ポリイソシアナート、又はこれらの混合物のことをいう。
【0029】
本明細書に使用されるとき、「ASTM」という用語は、ASTM International, West Conshohocken, PAの刊行物のことをいう。
【0030】
本明細書に使用されるとき、特に断りない限り、「分子量」又は「平均分子量」という用語は、その製造業者によって報告された所与の物質の式量を意味する。平均分子量とは、所与の物質における分子の分布、例えば、ポリマー分布について報告された分子量のことをいう。
【0031】
本明細書に使用されるとき、反応混合物の「化学量論」という用語は、所与の反応混合物におけるNCO基のモル当量対OH基のモル当量数の比のことをいう。
【0032】
本明細書に使用されるとき、「ポリイソシアナート」という用語は、ブロックされたイソシアナート基を含む、3個以上のイソシアナート基を有する任意のイソシアナート基含有分子を意味する。
【0033】
本明細書に使用されるとき、「ポリウレタン」という用語は、二官能性又は多官能性イソシアナートからの重合生成物、例えば、ポリエーテル尿素、ポリイソシアヌラート、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリウレタン尿素、これらのコポリマー及びこれらの混合物のことをいう。
【0034】
本明細書に使用されるとき、「反応混合物」という用語は、微量要素のような任意の非反応性添加剤、及び研磨パッドにおいてポリウレタン反応生成物の湿潤硬度(ASTM D2240-15 (2015)によるショアD又はショアA)を低下させるための任意の添加剤を含む。
【0035】
本明細書に使用されるとき、「半導体ウェーハ」という用語は、パターンのない半導体又はパターンを有する半導体のような、半導体基板、半導体デバイス、種々のレベルの相互接続のための種々のパッケージ(シングルチップウェーハ又はマルチチップウェーハ、発光ダイオード(LED)用の基板、又ははんだ接続を必要とする他のアセンブリを含む)を包含することが意図される。
【0036】
本明細書に使用されるとき、「半導体基板」という用語は、半導体材料を含む任意の構造物を意味すると定義される。半導体基板は、半導体デバイス、及び半導体デバイスのアクティブ部又は操作可能部を含む1つ以上の半導体層又は構造を有する任意の基板を含む。
【0037】
本明細書に使用されるとき、「半導体デバイス」という用語は、そこに少なくとも1つのマイクロ電子デバイスが製造されたか、又は製造されている、半導体基板のことをいう。
【0038】
本明細書に使用されるとき、「ショアD硬度」及び「ショアA硬度」という用語は、ASTM D2240-15 (2015), “Standard Test Method for Rubber Property - Durometer Hardness”により、一定期間後に測定された所与の材料の硬度値である。硬度は、それぞれD又はAプローブを備えたRex Hybrid硬度テスター(Rex Gauge Company, Inc., Buffalo Grove, IL)で測定された。各硬度測定には4つの試料を積み重ねてシャッフルし;そして試験される各試験片は、硬度試験の再現性を改善するために、試験前に23℃で相対湿度50%に5日間置いて、ASTM D2240-15 (2015)に概説された方法を使用してコンディショニングされた。
【0039】
本明細書に使用されるとき、「SG」又は「比重」という用語は、本発明による研磨パッド又は層から切り取られた矩形の重量/体積比のことをいう。
【0040】
本明細書に使用されるとき、「MBOCA」という用語は、市販のアニリンである、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)を意味する。
【0041】
本明細書に使用されるとき、「MCDEA」という用語は、市販のアニリンである、ビス(4-アミノ-2-クロロ-3,5-ジエチルフェニル)メタンを意味する。
【0042】
本明細書に使用されるとき、「MTEOA MeOSO3」という用語は、メチル硫酸トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、即ちBASFから市販されている第4級アンモニウムである、Basionic FS-01若しくはEfka(登録商標)IO6783を意味する。
【0043】
特に断りない限り、上記の化学物質は、Aldrich(Milwaukee, WI)又は他の同様の実験用化学物質の供給業者から入手された。
【0044】
更に、文脈上特に明記されない限り、単数形の参照には複数形も含まれる場合がある(例えば、「a」及び「an」は1つ、又は1つ以上のことをいう)。
【0045】
驚くべきことに、1分子当たり少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナートと反応させるために、硬化剤として少なくとも50mol%(硬化剤の総モル量に基づいて)のヒドロキシル置換第4級アンモニウムをブレンドすると、表面全体にわたって正のゼータ電位を有するポリウレタン研磨層が得られ、そして研磨層の表面の正のゼータ電位がpHの影響を受けないことが見い出された。半導体基板は複雑さを増して進化し続けているため、除去速度を向上させ得る更に優れた特徴を持つCMPパッドに対するニーズが存在し続ける。本発明により提供されるCMPパッドは、これまで以上に複雑な基板の製造を可能にするために、除去速度の向上を達成するための別のツールを提供する。本発明に適した基板には、メモリ、シリコンディスク、ガラス、半導体ウェーハ、及び半導体基板が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨層の研磨層組成物は、以下:(a)1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナート;(b)ヒドロキシル置換第4級アンモニウムからなる第1の硬化剤;(c)第2の硬化剤であって、第4級アンモニウムを含まない第2の硬化剤;及び(d)場合により、複数の微量要素
を含む成分のポリウレタン反応生成物であって、そして前記第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤との総モル量に基づいて50mol%以上(更に好ましくは、55mol%超;最も好ましくは、60mol%~75mol%の間)で存在し、そして(b)及び(c)の硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1であり、そして前記正のゼータ電位は、研磨パッド全体の表面にわたって一定であり、脱イオン水のpHを調整するために硝酸又は水酸化カリウムを用いた2~12(更に好ましくは3~8、最も好ましくは4~6)のpH範囲にわたってpHに依存しない、反応生成物である。
【0047】
好ましくは、1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナートは、以下:(i)脂肪族多官能性イソシアナート;及び(ii)プレポリマーポリオールを含む成分の反応生成物である。更に好ましくは、1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナートは、以下:(i)脂肪族多官能性イソシアナートであって、イソホロンジイソシアナート(IPDI);ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HDI);4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI);1,4-シクロヘキサンジイソシアナート;1,3-シクロヘキサンジイソシアナート;1,2-シクロヘキサンジイソシアナート;2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート;2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート;1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びこれらの混合物からなる群より選択される、脂肪族多官能性イソシアナート;並びに(ii)プレポリマーポリオールであって、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、これらのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択される、プレポリマーポリオールを含む成分の反応生成物である。更により好ましくは、1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナートは、以下:(i)脂肪族多官能性イソシアナートであって、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12-MDI)である、脂肪族多官能性イソシアナート;並びに(ii)プレポリマーポリオールであって、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、これらのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択される、プレポリマーポリオールを含む成分の反応生成物である。
【0048】
好ましくは、プレポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール);ポリカーボネートポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール;これらの混合物;並びに、これらと、エチレングリコール;1,2-プロピレングリコール;1,3-プロピレングリコール;1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5-ペンタンジオール;3-メチル-1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;及び、トリプロピレングリコールからなる群より選択される1種以上の低分子量ポリオールとの混合物からなる群より選択される。更に好ましくは、プレポリマーポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG);ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、及びポリエチレンエーテルグリコール(PEG)の少なくとも1種からなる群より選択され;場合により、エチレングリコール;1,2-プロピレングリコール;1,3-プロピレングリコール;1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5-ペンタンジオール;3-メチル-1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;及び、トリプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種の低分子量ポリオールと混合される。
【0049】
好ましくは、1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナートは、5.5~11.5重量%(好ましくは、6~11重量%;更に好ましくは、7~10.5重量%;最も好ましくは、7.25~10.5重量%)の未反応イソシアナート(NCO)基を有するイソシアナート終端ウレタンプレポリマーである。
【0050】
好ましくは、第1の硬化剤である第4級アンモニウム硬化剤は、1分子当たり2個のヒドロキシル基を含有する。更に好ましくは、第4級アンモニウム硬化剤は、1分子当たり3個のヒドロキシル基を含有する。好ましくは、第4級アンモニウム硬化剤は、対イオンとしてハロゲン化物、硫酸又は硝酸イオンを含有する。好ましくは、第4級アンモニウム硬化剤は、100~500g/molの範囲の分子量を有する。市販の第4級アンモニウム硬化剤の例には、BASF製のBasionic FS-01、即ち、メチル硫酸トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化(2,3-ジヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、及び塩化ドデシルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムが含まれる。
【0051】
好ましくは、第2の硬化剤はアミンである。更に好ましくは、第2の硬化剤は、0.1重量%未満の第3級アミンを含有する。最も好ましくは、第2の硬化剤は芳香族アミンである。好ましくは、第2の硬化剤は、100~500g/molの範囲の分子量を有する。市販の芳香族アミン硬化剤の例には、MBOCA、及びMCDEAが含まれる。
【0052】
第2の硬化剤はまた、脂肪族アミン開始ポリオール硬化剤、例えば、脂肪族アミン開始ポリエーテルポリオール硬化剤であるVoranol 800を含む。
【0053】
好ましくは、第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤との総モル量に基づいて50mol%以上(更に好ましくは55mol%超;最も好ましくは60mol%~75mol%の間)で存在し、そして硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1である。上に開示された量の第1の硬化剤の存在により、表面全体にわたって一定の正のゼータ電位を有する研磨層の形成が可能になる。開示された範囲外では、不十分な量の第1の硬化剤はゼータ電位を研磨層のある位置から別の位置へと変化させるが、一方、過剰量の第1の硬化剤は研磨層に材料の相分離を引き起こす。
【0054】
好ましくは、複数の微量要素は、封入気泡、中空コアポリマー材料、水溶性材料及び不溶性相材料(例えば、鉱油)から選択される。更に好ましくは、複数の微量要素は、封入気泡及び中空コアポリマー材料から選択される。好ましくは、複数の微量要素は、150μm未満(更に好ましくは50μm未満;最も好ましくは10~50μm)の重量平均径を有する。好ましくは、複数の微量要素は、ポリアクリロニトリル又はポリアクリロニトリルコポリマー(例えば、Akzo Nobel製のExpancel(商標))のいずれかのシェル壁を有するポリマーマイクロバルーンを含む。好ましくは、複数の微量要素は、0~35体積%の多孔度(更に好ましくは10~25体積%の多孔度)で研磨層組成物に組み込まれる。好ましくは、複数の微量要素は、研磨層組成物の至るところに分布している。
【0055】
本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法は、以下:基板を提供すること;水及びシリカ砥粒を含む研磨スラリーを提供すること;正のゼータ電位を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドであって、組成物を有する研磨層及び研磨表面を含む研磨パッドであって、ここで組成物は、(a)~(d):(a)1分子当たり平均少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基を有する多官能性イソシアナート;(b)ヒドロキシル置換第4級アンモニウムからなる第1の硬化剤;(c)第2の硬化剤であって、第4級アンモニウムを含まない第2の硬化剤;及び(d)場合により、複数の微量要素を含む成分の反応生成物であり、そして前記第1の硬化剤は、第1の硬化剤と第2の硬化剤との総モル量に基づいて50mol%以上で存在し、そして(b)及び(c)の硬化剤中の合わせた反応性水素基対(a)の多官能性イソシアナート中の少なくとも2個の未反応イソシアナート(NCO)基の化学量論比は、0.8~1.1であり、そして正のゼータ電位は、研磨パッド全体の表面にわたって一定であり、脱イオン水のpHを調整するために硝酸又は水酸化カリウムを用いた2~12のpH範囲にわたってpHに依存しない、研磨パッドを提供すること;基板の表面を研磨するために、研磨表面と基板の間に動的運動を作り出すこと;そして研磨表面と基板の界面又はその付近で、ケミカルメカニカルポリッシングパッドに研磨スラリーを分注することを含む。
【0056】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される基板は酸化ケイ素を含む。更に好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される基板は、酸化ケイ素を含む半導体基板である。更により好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される基板は、酸化ケイ素及び窒化ケイ素を含む半導体基板である。最も好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される基板は、少なくとも1種の酸化ケイ素フィーチャーと少なくとも1種の窒化ケイ素フィーチャーとを含む半導体基板であり;ここで、少なくとも1種の酸化ケイ素フィーチャー及び少なくとも1種の窒化ケイ素フィーチャーが、ケミカルメカニカルポリッシング中に研磨表面及び研磨スラリーに曝され;そして、少なくとも1種の酸化ケイ素フィーチャー及び少なくとも1種の窒化ケイ素フィーチャーの少なくともある程度が基板から除去される。
【0057】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、水及びシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するシリカ砥粒を含む。更に好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、水;及び、0.1~6重量%のシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するシリカ砥粒を含む。更により好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、水;及び、0.5~5重量%のシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するシリカ砥粒を含む。最も好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、水;及び、0.75~2重量%のシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するシリカ砥粒を含む。
【0058】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーに含まれる水は、偶発的不純物を制限するために、脱イオン化及び蒸留の少なくとも一方が行われている。
【0059】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーに含まれるシリカ砥粒は、コロイダルシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するコロイダルシリカ砥粒である。更に好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーに含まれるシリカ砥粒は、動的光散乱法により測定されるとき≦100nmの平均粒径を有するコロイダルシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するコロイダルシリカ砥粒である。最も好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーに含まれるシリカ砥粒は、動的光散乱法により測定されるとき5~100nm(更に好ましくは10~60nm;最も好ましくは20~60nm)の平均粒径を有するコロイダルシリカ砥粒であって、1~6(好ましくは2~5;更に好ましくは2.5~5;最も好ましくは2.75~4.75)の研磨pHで測定された正の表面電荷を有するコロイダルシリカ砥粒である。
【0060】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、1~6の研磨pHを有する。更に好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、2~5の研磨pHを有する。更により好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、2.5~5の研磨pHを有する。最も好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、2.75~4.75の研磨pHを有する。
【0061】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法において、提供される研磨スラリーは、分散剤、界面活性剤、緩衝剤、消泡剤及び殺生物剤からなる群より選択される追加の添加剤を更に含む。
【0062】
好ましくは、研磨表面は、研磨表面にマクロテクスチャーを付与することにより基板の研磨用に適合されている。更に好ましくは、研磨表面は、研磨表面にマクロテクスチャーであって、穿孔及び溝の少なくとも一方から選択されるマクロテクスチャーを付与することにより基板の研磨用に適合されている。穿孔は、研磨表面から研磨層の厚さの途中まで又は端から端まで伸びてもよい。好ましくは、溝は、研磨中にケミカルメカニカルポリッシングパッドが回転すると、少なくとも1つの溝が研磨される基板の表面上を掃引するように、研磨表面に配置される。好ましくは、研磨表面は、湾曲溝、直線溝及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの溝を含むマクロテクスチャーを有する。
【0063】
好ましくは、研磨表面は、研磨表面にマクロテクスチャーであって、研磨表面で研磨層に形成された溝パターンを含むマクロテクスチャーを付与することにより基板の研磨用に適合されている。好ましくは、溝パターンは複数の溝を含む。更に好ましくは、溝パターンは、溝デザインから選択される。好ましくは、溝デザインは、同心円溝(円形でもらせん形でもよい)、湾曲溝、斜交平行溝(例えば、パッド表面にわたってX-Y格子として配置される)、他の規則的デザイン(例えば、六角形、三角形)、タイヤ溝型パターン、不規則なデザイン(例えば、フラクタルパターン)、及びこれらの組合せからなる群より選択される。更に好ましくは、溝デザインは、ランダム溝、同心円溝、らせん溝、斜交平行溝、X-Y格子溝、六角溝、三角溝、フラクタル溝及びこれらの組合せからなる群より選択される。最も好ましくは、研磨表面には、らせん溝パターンが形成されている。溝の輪郭は、好ましくは、直線の側壁を有する矩形から選択されるか、又は溝の断面が、「V」字形、「U」字形、鋸歯、及びこれらの組合せであってもよい。
【0064】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、20~150mil(更に好ましくは30~125mil;最も好ましくは40~120mil)の平均厚さの研磨層を有する。
【0065】
本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、多孔性及び非多孔性(即ち、無充填)の両方の形状で提供され得る研磨層を有する。好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D1622により測定されるとき≧0.6g/cm3の密度を持つ研磨層を有する。更に好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D1622により測定されるとき0.7~1.1g/cm3(更に好ましくは0.75~1.0;最も好ましくは0.75~0.95)の密度を持つ研磨層を有する。
【0066】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D2240により測定されるとき10~60のショアD硬度を持つ研磨層を有する。更に好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D2240により測定されるとき15~50(最も好ましくは20~40)のショアD硬度を持つ研磨層を有する。
【0067】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D412により測定されるとき100~500%(更に好ましくは200~450%;最も好ましくは300~400%)の破断伸びを持つ研磨層を有する。
【0068】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D1708-10により測定されるとき10~50MPa(更に好ましくは15~40MPa;最も好ましくは20~30MPa)の靱性を持つ研磨層を有する。
【0069】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ASTM D1708-10により測定されるとき5~35MPa(更に好ましくは7.5~20MPa;最も好ましくは10~15MPa)の引張強度を持つ研磨層を有する。
【0070】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨機のプラテンと接するように適合されている。更に好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨機のプラテンに固定されるように適合されている。最も好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、感圧接着剤及び真空の少なくとも一方を使用してプラテンに固定されるように設計されている。好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、プラテン接着剤であって、ケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面とは反対側に配置されるプラテン接着剤を更に含む。
【0071】
好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨層と接する少なくとも1つの追加層を更に含む。好ましくは、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨層に接着された圧縮性ベース層を更に含む。圧縮性ベース層は、研磨される基板の表面に対する研磨層の適合性を改善することが好ましい。好ましくは、圧縮性ベース層は、圧縮性ベース層と研磨層との間に挿入されたスタック接着剤を介して研磨層に接着される。好ましくは、スタック接着剤は、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、コンタクト接着剤、及びこれらの組合せからなる群より選択される。更に好ましくは、スタック接着剤は、感圧接着剤及びホットメルト接着剤からなる群より選択される。最も好ましくは、スタック接着剤は反応性ホットメルト接着剤である。
【0072】
基板研磨作業における重要な工程は、プロセスの終点を決定することである。終点検出のための一般的なインサイツ法は、選択した光の波長を透過する窓を研磨パッドに提供することを伴う。研磨中、光ビームは窓を介してウェーハ表面に向けられ、そこでビームが反射して、窓を通過して検出器(例えば、分光光度計)に戻る。戻り信号に基づいて、終点検出のために、基板表面の特性(例えば、基板表面上の膜の厚さ)を決定できる。このような光に基づく終点方法を容易にするために、本発明の方法において提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、場合により終点検出窓を更に含む。好ましくは、終点検出窓は、研磨層に組み込まれた一体窓;及び提供されたケミカルメカニカルポリッシングパッドに組み込まれたプラグイン終点検出窓ブロックから選択される。
【0073】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法は、回転プラテン、回転ヘッド、及び回転コンディショナーを有する研磨機を提供することを更に含むが;ここで、研磨層は回転プラテンに取り付けられており;基板は回転ヘッドに固定されており;回転プラテンは、毎分93回転のプラテン速度で回転し;回転ヘッドは、毎分87回転のヘッド速度で回転し;基板は、3psiのダウンフォースで研磨層の研磨表面に押し付けられ;研磨スラリーは、200mL/分の流量で研磨表面に供給される。
【0074】
好ましくは、本発明の基板をケミカルメカニカルポリッシングする方法は、回転プラテン、回転ヘッド、及び回転コンディショナーを有する研磨機を提供することを更に含むが;ここで、研磨層は回転プラテンに取り付けられており;基板は回転ヘッドに固定されており;回転プラテンは、毎分93回転のプラテン速度で回転し;回転ヘッドは、毎分87回転のヘッド速度で回転し;基板は、3psiのダウンフォースで研磨層の研磨表面に押し付けられ;研磨スラリーは、200mL/分の流量で研磨表面に供給され;回転コンディショナーはダイヤモンド研磨ディスクであり;研磨表面は、回転コンディショナーを使用して研磨され;回転コンディショナーは、研磨表面に垂直な7lbのコンディショナー力で研磨表面に押し付けられる。
【0075】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0076】
以下の表1に明記される反応混合物配合物の反応生成物を含む小板は、以下の表1に明記される反応混合物を、機械的試験用の小板を形成するための1cm開口部及び空洞を備えた幅4 7/8インチ(12.4cm)×長さ7 1/2インチ(19.1cm)の成形型としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされた角枠に注型することにより形成された。実施例1及び対照では、ポリイソシアナートプレポリマーとして、Lanxess製のPTMEGベースのプレポリマーであるLF750Dを使用した。実施例2では、ポリイソシアナートプレポリマーとして、LF750Dと、DOW製の変性メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)プレポリマーであるIsonate(商標)181との混合物を使用した。反応混合物を、硬化前にPTFEコーティングされたブレードを導入した角枠に注ぎ入れ、それにより、それぞれ0.065インチ(0.17cm)から0.090インチ(0.23cm)の厚さの2つの小板を作った。以下の表1に明記される反応混合物の反応生成物を含む研磨層を、少なくとも25インチ(63.5cm)×25インチ(63.5cm)×1/4インチ(0.635cm)の寸法を有するPTFEコーティングされた平らな正方形のアルミニウム板上にドローダウンし、続いてドローダウンバーを平らにし、次に硬化してパンチで切り取って、直径50.8cm(20インチ)及び平らな底を有するパッドを作成し、次に研磨パッド又は研磨層の作成において使用するために、後述のとおり表面仕上げ及び溝切りを行った。
【0077】
二成分プロセスを使用して、各反応混合物を形成した。示されたポリイソシアナートプレポリマー又はポリイソシアナートの混合物、及びオプションの微量要素は、1つの成分である。適切な流動性を確保するために、この成分を65℃に加熱した。合わせた硬化剤(例えば、MTEOA MeOSO3及びMBOCA)は別の成分である。3つの試料は全て、表1に示されるとおり、合わせた硬化剤とNCOの間で同じ化学量論モル濃度を含んでいた。この二成分を、高剪断混合ヘッドを使用して混合した。混合ヘッドから出した後、反応混合物を2~5分間かけて成形型中に又はプレート上に分注し、成形型又はプレートを硬化オーブンに入れる前に15分間ゲル化させた。次に示された材料を、以下のサイクルを使用して硬化オーブンで硬化させた:周囲温度から104℃の設定点まで30分間徐々に上昇させ、次に104℃で15.5時間保持し、そして次に104℃から21℃に徐々に下降させた。
【0078】
実施例1及び2に示された反応混合物から成形された材料小板を分析して、それらのゼータ電位を決定した。
【0079】
硬化したポリウレタンシートを成形型から取り出し、次に溝の深さが0.76mmの1010溝パターンを有する約2.0mm(80mil)厚さの研磨層へと表面仕上げ及び溝切りを行った(旋盤を用いて切削)。次に得られた各研磨溝付き研磨層を、感圧接着剤CR-II(商標)プラテン接着剤を使用してSP2150(商標)サブパッド(0.762mm、ポリウレタン(PU)フォーム、Dow Chemical Company)上に積み重ねて、研磨パッドを形成した。こうして調製されたパッドを、研磨試験に使用した。
【0080】
また表1には、各試料のマトリックスポリマー弾性率特性、Expancel及び多孔性のないバルクポリマーの弾性率も示される。3つの試料は全て、同等の弾性率を有するため、同様の機械的特性を有することが示された。硬化剤又は硬化剤の混合物中のイオン含有量を増加させると、得られるポリマーの弾性率を低下させる効果がある。実施例2では、硬化剤中のイオン含有量の増加による弾性率の低下を相殺するために、追加のポリイソシアナートプレポリマーとしてIsonate(商標)181を含める必要があった。
【0081】
【0082】
ゼータ電位
パッドを直径1インチのディスクに切り取り、両面テープでテフロン(登録商標)の試料ホルダーに取り付けた。試料を4000RPMで回転するシャフトに固定し、作用電極から1mmの距離で0.1mM KCl溶液に浸した。溶液をペルチェ素子により25℃に保持した。
【0083】
溶液の導電率、pH、及び温度を個別に測定し、ソフトウェアに手作業で追加し、そこで次に下記式を使用して試料のゼータ電位を計算する:
【0084】
【0085】
pH5.5での実施例1及び2のゼータ電位値は、単一小板の2つのランダムな位置から表2に示される。硬化剤中に50mol%未満のMTEOA MeOSO3を含有する実施例1、及びそのゼータ電位値は、50mol%超のMTEOA MeOSO3を有する実施例2のものよりかなり大きく変化する。安定した研磨性能を得るには、ゼータ電位がパッド表面全体にわたって一定である必要がある。
【0086】
【0087】
pH3、5.5、及び10での対照及び実施例2のゼータ電位値は表3に示される。実施例2のゼータ電位は、測定された全てのpHで正であり、変化はわずかである。対照のゼータ電位は、pH3でのみ正であることが判り、pH範囲全体ではかなり変化する。よって実施例2は、パッド全体にわたって安定であり、かつpHの関数ではない、安定な正電荷を有する。
【0088】
【0089】
研磨
研磨試験は、2重量%砥粒に希釈した正に帯電した酸性スラリーであるOptiplane 2300(商標)(OP2300、Dow Chemical Company製)、及び1:3のスラリー:DI水の希釈の負に帯電したアルカリ性スラリーであるSemi-Sperse(商標)25(SS25、Cabot Microelectronics製)を使用して、Applied Materials Mirra(商標)研磨機で実施された。TEOSブランケットウェーハを使用して、除去速度(RR)を求めた。特に断りない限り(プラテンrpm(PS)/キャリアrpm(CS)として)、全ての研磨実験に使用される研磨条件には、プラテン速度93rpm;キャリア速度87rpmが;研磨媒体流量150mL/分と共に;及び指示されたダウンフォース(DF)と共に含まれる。ケミカルメカニカルポリッシングパッドは、それぞれ3.2kg(7lb)のダウンフォースを30秒間使用してコンディショナーでブレークインされた。研磨パッドは、3.2kg(7lb)のダウンフォースで動作する、100%インサイツコンディショニングに設定された、Saesol(商標)8031C(AK45)ダイヤモンドコンディショニングディスクを使用して更にコンディショニングされた。除去速度(RR)は、3mmの端を除いて49点のらせん状走査を利用するFX200計測ツール(KLA-Tencor, Milpitas, CA)を用いて、研磨の前後に膜厚を測定することによって決定された。
【0090】
両面感圧接着剤フィルムを使用して、示された研磨機の研磨プラテン上に研磨層を取り付けた。
【0091】
表4は、3及び5psiのダウンフォースでの対照及び実施例2の除去速度を示す。表4に示されるとおり、実施例2は、試験した両方のダウンフォースで対照よりも優れている。
【0092】