(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】塗布具付容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230711BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20230711BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230711BHJP
B65D 51/32 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A45D34/04 515A
A45D34/00 510A
A45D34/04 510Z
A45D34/04 515E
B65D83/00 J
B65D51/32 100
(21)【出願番号】P 2019238718
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210302(JP,A)
【文献】特開2005-312787(JP,A)
【文献】米国特許第06164857(US,A)
【文献】特開2002-336037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A45D 34/00
B65D 83/00
B65D 51/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたキャップと、
前記内容物を塗布するための塗布部と、先端側に当該塗布部が設けられると共に基端側が前記キャップに保持される軸部とを有する塗布具と、
を備える塗布具付容器であって、
前記軸部の軸方向において前記容器本体が位置する側を下方とし、前記キャップが位置する側を上方としたとき、
周壁面に前記口部に螺合するねじ部を有し、天面に前記軸部が挿入される挿入孔を有するキャップ本体と、
前記天面の上方に設けられ前記挿入孔を介して挿入された前記軸部の挿入深さを可変に当該塗布具を保持する塗布具長可変保持部と、
前記天面の下方に設けられ、前記軸部が挿入される筒状の弾性部材からなるしごき筒と、を備え、
前記しごき筒の
上端には径方向外側に突出する第一フランジと第二フランジが設けられ、前記第一フランジと前記第二フランジとの間に前記キャップ本体の前記天面が挟み込まれることで前記キャップ本体に前記しごき筒が固定され、前記しごき筒の下端は前記ねじ部の下方において前記軸部の表面に密接する塗布具付容器。
【請求項2】
前記口部の内側には、前記塗布部が通過したときに、当該塗布部に余分に付着した内容物を取り除くためのしごき部材が設けられ、
前記キャップを前記口部に装着させる際に、前記キャップの回動に伴い、前記しごき筒が前記しごき部材の表面に密接しながら下方に移動する、請求項1に記載の塗布具付容器。
【請求項3】
前記塗布具長可変保持部は、前記キャップ本体に連設されると共に前記軸部が挿入される内筒部と、当該内筒部の外側に、当該内筒部に対して回転可能に設けられる外筒部とを有し、前記外筒部を前記内筒部に対して回転させることによって前記軸部の基端を前記軸方向上下に移動させる
ものであり、前記外筒部を前記内筒部に対して第一方向に回転させて前記塗布具を軸方向上方に移動させることができ、さらに前記外筒部の前記第一方向への回転を継続することで、前記キャップ本体を前記容器本体の前記口部から取り外すことができる請求項1又は請求項2に記載の塗布具付容器。
【請求項4】
前記塗布具長可変保持部は、前記軸部の基端を移動可能に保持する保持部を備え、前記保持部を前記軸方向に沿って上下にスライドさせることで、前記軸部の基端を前記軸方向上下に移動させる請求項1又は請求項2に記載の塗布具付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を塗布するための塗布具を備える塗布具付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
リップグロスやコンシーラ、マニキュア、マスカラ、アイライナー等の液状の化粧料等の内容物を収容する容器では、例えば、特許文献1に開示されるように、内容物を収容する容器本体と、内容物を唇等の所定の位置に塗布するための塗布具とを備えて構成される。塗布具は容器本体に着脱自在に装着されるキャップに保持されている。
【0003】
塗布具は、キャップに保持される軸部と、軸部の先端に設けられる塗布部とを備えている。塗布部はチップ状、ブラシ状、筆状等、内容物の塗布に適した形状及び材質とされている。軸部の長さは、容器本体の底部に塗布部が届く長さとされる。軸部をこのような長さとすることで、容器本体内の内容物の残量が少なくなったときも、塗布部に内容物を付着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような塗布具付容器では、容器本体が軸方向に長尺な筒状に形成されることが多い。そのため、軸部の長さを塗布部が容器本体の底部に届くような長さとすると、軸部が長くなり、キャップと塗布部との間が離れすぎる場合がある。当該塗布具付容器では、一般に、キャップを容器本体から取り外すと、容器本体の口部に設けられたしごき部材により塗布部の表面に余分に付着した内容物が取り除かれ、所定量の内容物が塗布部により容器本体から取り出される。そして、ユーザはキャップを指でつかんだ状態で、塗布部に付着した内容物を所定の位置に塗布する。このとき、キャップと塗布部とが離れ過ぎているため、ユーザが塗布部を所望の位置に移動させることが難しくなり、内容物をユーザの意図した通りに塗布することが困難になるという課題がある。
【0006】
そこで、軸部の長さを可変とし、キャップを容器本体に装着させたときには軸部を塗布部が容器本体の底部に届くような長さとし、ユーザが内容物を所定の位置に塗布する際には軸部が短くなるように構成されると、ユーザの操作性も向上する。軸部の長さを可変とするには、例えば、軸部の基端側をキャップに挿入し、その挿入深さを変化させる構成が考えられる。その場合、軸部をキャップに抜き差しすることになるため、キャップの内側に内容物が付着して、ねじ部が汚れるなどの不具合の発生を抑制する必要がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、内容物の残量が少なくなったときも塗布部に適量の内容物を付着させることができ、且つ、ユーザの操作性を向上しつつ、キャップのねじ部などに内容物が付着することを抑制可能な塗布具付容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容物が収容される容器本体と、前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたキャップと、前記内容物を塗布するための塗布部と、先端側に当該塗布部が設けられると共に基端側が前記キャップに保持される軸部とを有する塗布具と、を備える塗布具付容器であって、前記軸部の軸方向において前記容器本体が位置する側を下方とし、前記キャップが位置する側を上方としたとき、周壁面に前記口部に螺合するねじ部を有し、天面に前記軸部が挿入される挿入孔を有するキャップ本体と、前記天面の上方に設けられ前記挿入孔を介して挿入された前記軸部の挿入深さを可変に当該塗布具を保持する塗布具長可変保持部と、前記天面の下方に設けられ、前記軸部が挿入される筒状の弾性部材からなるしごき筒と、を備え、前記しごき筒の上端には径方向外側に突出する第一フランジと第二フランジが設けられ、前記第一フランジと前記第二フランジとの間に前記キャップ本体の前記天面が挟み込まれることで前記キャップ本体に前記しごき筒が固定され、前記しごき筒の下端は前記ねじ部の下方において前記軸部の表面に密接する塗布具付容器である。
【0009】
前記口部の内側には、前記塗布部が通過したときに、当該塗布部に余分に付着した内容物を取り除くためのしごき部材が設けられ、前記キャップを前記口部に装着させる際に、前記キャップの回動に伴い、前記しごき筒が前記しごき部材の表面に密接しながら下方に移動することが好ましい。
【0010】
前記塗布具長可変保持部は、前記キャップ本体に連設されると共に前記軸部が挿入される内筒部と、当該内筒部の外側に、当該内筒部に対して回転可能に設けられる外筒部とを有し、前記外筒部を前記内筒部に対して回転させることによって前記軸部の基端を前記軸方向上下に移動させるものであり、前記外筒部を前記内筒部に対して第一方向に回転させて前記塗布具を軸方向上方に移動させることができ、さらに前記外筒部の前記第一方向への回転を継続することで、前記キャップ本体を前記容器本体の前記口部から取り外すことができるようにしてもよい。
【0011】
また、前記塗布具長可変保持部は、前記軸部の基端を移動可能に保持する保持部を備え、前記保持部を前記軸方向に沿って上下にスライドさせることで、前記軸部の基端を前記軸方向上下に移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗布具付容器によれば、容器本体に着脱自在に装着されるキャップに対して、塗布具が塗布具長可変保持部に対して軸部が挿入深さを可変に保持される。そのため、キャップを容器本体に装着させた状態では、キャップに対して軸部の挿入深さを浅くすることで塗布部を容器本体の底部に届く長さとすることで、内容物の残量が少なくなったときも、塗布部に内容物を付着させることができる。一方、キャップが容器本体から取り外された状態では、キャップに対して軸部の挿入深さを深くすることで、キャップと塗布部との間の距離が短くなり、内容物を塗布する際のユーザの操作性が向上する。
【0013】
さらに本発明の塗布具付容器によれば、キャップ本体の天面上方に塗布具長可変保持部を設け、キャップ本体の天面下方にしごき筒を設けられている。軸部の挿入深さが深くなるように塗布具が塗布具長可変保持部に挿入されると、軸部の表面にしごき筒の下端が密接しているため、軸部の表面に付着した内容物がしごき筒により掻き取られ、キャップ本体の天面に設けられた挿入孔から塗布具長可変部側に内容物が侵入することを防ぐことができる。さらに、しごき筒の下端は、キャップ本体の周壁面に設けられたねじ部よりも下方に位置しているため、しごき筒の下端によって掻き取られた内容物がねじ部に付着したり、キャップ本体の天面の内側に付着することを抑制することができる。
【0014】
これらのことから本発明の塗布具付容器によれば、内容物の残量が少なくなったときも塗布部に適量の内容物を付着させることができ、且つ、ユーザの操作性を向上しつつ、キャップのねじ部などに内容物が付着することを抑制可能な塗布具付容器を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る塗布具付容器の第一の実施の形態を示す図であり、(a)は塗布具付容器の断面図であり、(b)は(a)を90度回転させたときの外筒部を取り外した状態を示すキャップ部分の正面図である。
【
図2】
図1の塗布具付容器のキャップ及び塗布具部分を示す断面図であり、(a)は途中の段階まで軸部を塗布具長可変保持部に挿入させた状態を示す図であり、(b)は軸部を塗布具長可変保持部に挿入可能な最大深さで挿入させた状態を示す図である。
【
図3】
図1の塗布具付容器において、(a)は容器本体にキャップを装着させる状態を示す図であり、(b)は容器本体にキャップを装着させた後、塗布具長可変保持部により軸部を途中の段階まで容器本体に挿入させた状態を示す図である。
【
図4】本発明に係る塗布具付容器の第二の実施の形態を示す図であり、キャップ及び塗布具部分を示す一部断面図である。
【
図5】本発明に係る塗布具付容器の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る塗布具付容器の実施の形態を説明する。
図1に本実施の形態の塗布具付容器100を示す。
図1(a)に示すように、塗布具付容器100は、内容物が収容される有底筒状の容器本体10と、容器本体10に着脱自在に装着されるキャップ20と、当該キャップ20に保持されて容器本体10の内部に挿入される塗布具30とを備える。
【0017】
ここで、本明細書における「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、塗布具付容器100を
図1(a)に示すように正立姿勢に配置した状態で、塗布具30の中心軸Oに沿う軸方向において容器本体10が位置する側を「下」、キャップ20が位置する側を「上」と称するものとする。また周方向とは、中心軸Oを中心に周回する向きであり、径方向とは、中心軸Oに直交する向きである。また、容器本体10、キャップ20の中心軸は塗布具30の当該中心軸Oに一致するものとする。以下、順に説明する。
【0018】
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態の容器本体10は略円筒形状をなし、その内側は内容物を収容可能な収容空間となっている。容器本体10に収容される内容物として、例えば、リップグロスやコンシーラ、マニキュア、マスカラ、アイライナー等の液状の化粧料の他、薬液、接着液、洗浄液等が挙げられる。但し、内容物は塗布具30によって塗布されるものであればよく、液状の他、ゲル状、クリーム状等内容物の状態は液状に限定されるものではなく、内容物の種類も特に限定されるものではない。
【0019】
容器本体10は、略円板状の底部11aと、この底部11aの周囲に立設された周壁部11bとにより、有底円筒状の胴部11が形成されている。胴部11の上方には肩部12を介して口部13が連結されている。口部13は円筒状を呈し、口部13は胴部11よりも小径に形成されている。当該口部13の外周面には雄ねじ14が設けられている。
【0020】
また、口部13の内側には、しごき部材15が設けられている。しごき部材15は、ポリプロピレン樹脂(PP)、HDPE(高密度ポリエチレン樹脂)、LDPE(低密度ポリエチレン樹脂)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)などの各種弾性材料により形成される。その他、ゴム、熱可塑性樹脂系エラストマー、熱硬化性樹脂系エラストマー等から形成されてもよい。但し、後述するしごき筒23の構成材料よりも硬い材料であることが好ましい。しごき部材15は、容器本体10の口部13の内周面に沿って設けられる円筒形状の筒状壁15aを有する。筒状壁15aの下端部は軸方向下方に向かうにつれて径方向内側に縮径されている。しごき部材15を介して、口部13に塗布具30が挿抜可能に挿入される。しごき部材15に塗布具30が挿入されたとき、筒状壁15aの下端は軸部31の表面に当接する。また、筒状壁15aの上端には、口部13の上端を被覆するフランジ15bが設けられている。
【0021】
塗布具30の塗布部33が口部13を通過する際、塗布部33は筒状壁15aの下端に密接するため、塗布部33に余分に付着した内容物が掻き取られる。このように、口部13にしごき部材15を設けることで、塗布具30を容器本体10に対して挿抜するという簡易な動作によって、適量の内容物を塗布部33に付着させることができる。
【0022】
次にキャップ20について説明する。本実施の形態のキャップ20の外観は有天円筒状を呈し、上記容器本体10の口部13に着脱自在に装着される。キャップ20は、容器本体10の口部13に装着されるキャップ本体21と、キャップ本体21の上方に設けられる塗布具長可変保持部22と、キャップ本体21の内側に設けられるしごき筒23とを備えている。これらの詳細な構成については後述するものとする。
【0023】
次に、塗布具30について説明する。塗布具30は、軸部31と、軸部31の基端側に設けられ、キャップ20に保持される被保持部32と、軸部31の先端側に設けられる塗布部33とを備えている。
【0024】
軸部31は長尺な棒状に形成されている。軸部31の基端側はキャップ20内に挿入され、軸部31の先端側は容器本体10に挿入される。被保持部32は、軸部31の基端側に設けられる。被保持部32はキャップ20の内周面(後述する内筒部22aの内周面)に摺接する摺接部32aを有し、当該摺接部32aから径方向に外側に突出する案内ピン32bを備えている。摺接部32a及び案内ピン32bは、
図1(a)に示すように断面視において軸方向両側に設けられており、当該摺接部32a及び案内ピン32bによって、軸部31の中心軸Oが容器本体10の中心軸に略一致するように位置決めされている。
【0025】
塗布部33は軸部31よりも幅広に構成されたブラシ状に形状されており、軸部31等により容器本体10の内側に吊下保持される。
図1(a)に示すように、キャップ20に対する軸部31の挿入深さが最も浅いとき、塗布部33は容器本体10の底部11aの近傍に位置する。
図1(a)にはブラシ状の塗布部33を例示したが、塗布部33はブラシ状に限られるものではなく、スポンジ状、筆状等の他の形態であってもよく、内容物の種類や内容物を塗布する部位等に応じて適宜適切なものを選択することができる。
【0026】
次に、キャップ20の各構成要素について説明する。キャップ本体21は、天壁(天面)21aと、天壁21aの周囲に垂設される周壁21bとを有する。キャップ本体21の下方は開口している。周壁21bは容器本体10の口部13の外周面を取り囲むように設けられる。当該周壁21bの内周面(周壁面)には容器本体10の口部13に螺合する雌ねじ21c(ねじ部)が形成されている。また、天壁21aの略中央には塗布具30の軸部31が挿入される挿入孔21dが設けられている(
図2(a)参照)。
【0027】
塗布具長可変保持部22は、内筒部22a及び外筒部22bからなる二重筒構造を有する。ここで、
図1(b)は塗布具長可変保持部22から外筒部22bを取り外した状態を示すキャップ20の外観を示す正面図である。但し、
図1(b)は、
図1(a)に対してキャップ20を90度回転させた方向から見た図である。
図1(b)に示すように、内筒部22aはキャップ本体21の天壁21aを底面とする有底筒状に形成されている。内筒部22aには厚み方向に貫通する螺線状の案内溝孔Aが形成されている。この案内溝孔Aは内筒部22aに中心軸Oに対して対称に2本設けられており、各案内溝孔Aは内筒部22aの下端から上端に向かうまでの間に内筒部22aの外周を略半周するように設けられている。この案内溝孔Aは内筒部22aの厚み方向を貫通する溝孔として構成されている。なお、
図1(b)には1本の案内溝孔Aのみを示している。
【0028】
また、当該案内溝孔Aの下部は
図1(b)に示すように軸方向に直交する方向の横溝孔からなる第一回転規制部A1を有する。さらに、当該案内溝孔Aの上部にも軸方向に直交する方向の溝面を有する第二回転規制部A2が設けられている。第一回転規制部A1及び第二回転規制部A2については後述する。
【0029】
外筒部22bはキャップ20の外観を成す頂壁20aと、当該頂壁20aの周囲から垂設される外周壁20bとを備え、有天筒状を呈する。外筒部22bは内筒部22aに対して回転可能に設けられている。外周壁20bの内周面の下部には凹溝Cが周方向に沿って設けられており、当該凹溝Cには内筒部22aの外周面下部に設けられた係止部Dが挿入される。このような構成により、外筒部22bが内筒部22aから抜け止めされている。また、外筒部22bの内周面には
図1(b)に仮想線で示すように軸方向に略平行に延びる縦溝Bが設けられている。
図1(a)に示すように、この縦溝Bは外筒部22bの内周面に互いに対向配置するように二本設けられている。
【0030】
塗布具長可変保持部22に対して塗布具30は被保持部32により軸部31の基端側の挿入深さを可変に保持される。具体的には、次のとおりである。
図1(a)に示すように被保持部32の案内ピン32bは、内筒部22aに設けられた案内溝孔Aを介して外筒部22bに設けられた縦溝Bに挿入される。外筒部22bを内筒部22aに対して回転させると、案内ピン32bは内筒部22aに設けられた案内溝孔Aに沿って内筒部22aに対して周方向に移動しながら、外筒部22bに設けられた縦溝Bに沿って軸方向に移動する。例えば、外筒部22bを内筒部22aに対して逆ねじの方向に回転させたとき、
図1(a)の状態から、
図2(a)、(b)の順に、被保持部32の位置が軸方向においてキャップ20の下端から頂壁20aに向かって移動し、キャップ20の内側に挿入された軸部31の挿入深さが深くなる。それにより、塗布具30の全体が回転しながら軸方向上方に移動し、キャップ20と塗布部33との間の距離が短くなる。また、案内ピン32bが案内溝孔Aの上部まで移動したとき、第二回転規制部A2と縦溝Bとが重なり合い(
図1(b)参照)、第二回転規制部A2の溝面と縦溝Bの溝面とによって囲まれた空間内に案内ピン32bが位置する。そのため、外筒部22bを内筒部22aに対してそれ以上逆ねじの方向に回転不能とされる。
【0031】
このように、本実施の形態の塗布具付容器100によれば外筒部22bを回転させるといった簡易な操作で、塗布具30を軸方向上方に移動させることができる。ここで、キャップ本体20を容器本体10の口部13から取り外した後に、外筒部22bを内筒部22aに対して回転させて、塗布具30を軸方向上方に移動させてもよいし、キャップ本体20が容器本体10の口部13に装着された状態で外筒部22bを内筒部22aに対して回転させて、塗布具30を軸方向上方に移動させてもよい。当該実施の形態の塗布具付容器100では、外筒部22bを内筒部22aに対してそれ以上逆ねじの方向に回転不能となった後も、ユーザが外筒部22bを回転すると、その力がキャップ本体20に伝達され、外筒部22bを回転し続けることでキャップ本体20を容器本体10の口部13から取り外すことができるように構成されている。いずれの場合であっても、塗布具30を軸方向上方に移動させることで、キャップ20と塗布部33との間の距離が短くなるため、キャップ20を指でつかんだ状態で、塗布部33に付着した内容物Clを所定の位置に塗布するときの操作性がよく、ユーザは塗布部33を所望の位置に移動させて内容物Clを意図した通りに塗布することが容易になる。
【0032】
一方、使用後は
図3(a)に示すようにキャップ20を容器本体10の口部13に装着させ、その後、外筒部22bを内筒部22aに対して順ねじの方向に回転させると、
図3(b)に示すように、軸部31の挿入深さが浅くなり、塗布具30の全体が軸方向下方に移動する。外筒部22bの回転を継続すると、塗布具30が軸方向下方に繰り出されていき、
図1(a)に示すように塗布部33が容器本体10の底部11aの近傍まで移動する。そのため、容器本体10内の内容物Clの残量が少なくなったときも、塗布部33に内容物Clを付着させることができる。また、案内ピン32bが案内溝孔Aの下部まで移動したとき、第一回転規制部A1と縦溝Bとが重なり合い、第一回転規制部A1の溝面と縦溝Bの溝面とによって囲まれた空間内に案内ピン32bが位置する。その結果、外筒部22bを内筒部22aに対してそれ以上順ねじの方向に回転不能とされる(
図1参照)。
【0033】
次に、
図2(a)を参照しながら、しごき筒23について説明する。本実施の形態では、しごき筒23は、軸部31が挿入される筒状の部材である。しごき筒23は、ゴム、熱可塑性樹脂系エラストマー、熱硬化性樹脂系エラストマー等の各種弾性材料により形成される。その他、PP、HDPE、LDPE、LLDPE等から形成されてもよい。但し、しごき部材15の構成材料よりも軟らかい材料であることが好ましい。しごき筒23の上部は挿入孔21dに挿入され、しごき筒23の上部に設けられたシール部24により挿入孔21dと軸部31との間が密接されると共に、当該しごき筒23が挿入孔21dの周囲の天壁21aに固定される。より具体的にはしごき筒23の上部に設けられた径方向外側に突出する第一フランジ24a及び第二フランジ24bの間に挿入孔21dの周囲の天壁21aが挟み込まれている。
【0034】
しごき筒23の下端は、キャップ本体21の周壁21bの内周面に設けられた雌ねじ21cの最も下方に位置するねじ山の下方において軸部31の表面に密接している。また、しごき筒23の外形状は、容器本体10の口部13の内側に設けられたしごき部材15の内形状と略同様の形状を呈する。キャップ20を容器本体10の口部13に装着したとき、しごき筒23はしごき部材15の内側に収容され、しごき筒23の外周面としごき部材15の内周面とは少なくとも一部において密接する。但し、しごき筒23及びしごき部材15の内側は中心軸Oに向く側をいい、外側はその反対側をいうものとする。
【0035】
塗布具長可変保持部22により塗布具30の全体を軸方向上方に移動させたとき、このしごき筒23により、軸部31の表面に付着した内容物Clを掻き取って取り除くことができる。
図2を参照しながら具体的に説明する。
図2(a)に示すように、外筒部22bを内筒部22aに対して逆ねじの方向に回転させると、上述したように塗布具30の全体が軸方向上方に移動する。このとき、しごき筒23の下端は軸部31の表面に密接しているため、軸部31の表面に付着した内容物Clが掻き取られる(
図2(b)参照)。
【0036】
ここで、しごき筒23ではなく挿入孔21dの周囲にリング状のシール部材60をキャップ本体21の天壁21aの内面に設けた場合(
図5参照)と対比しながら説明する。
図5(a)に示すように、シール部材60を天壁21aの内面付近に設けた場合、上述した機構により塗布具30をキャップ20に対して軸方向上方に移動させると、シール部材60によって軸部31の表面に付着した内容物Clが掻き取られてしまう。使用する都度、キャップ本体21の天壁21aの内面付近に掻き取られた内容物Clが堆積し、それが広がると
図5(b)に示すように周壁面の雌ねじ21cが設けられた箇所にも内容物Clが付着し、キャップ20を容器本体10から脱着する際に口部13の周囲も汚れてしまうという不具合が生じる。
【0037】
これに対して、本実施の形態の塗布具付容器100では、シール部材としての機能を有するしごき筒23を長尺な筒状とし、しごき筒23の下端をキャップ本体21の周壁21bの内周面に設けられた雌ねじ21cの最も下方に位置するねじ山の下方において軸部31の表面に密接させることで、
図2(b)に示すようにキャップ本体21の周壁21bの内周面に設けられた雌ねじ21cの下方において内容物Clが掻き取られるため、キャップ本体21の天壁21aの内周面や周壁21bの内周面、特に雌ねじ21cの設けられた箇所に内容物Clが付着することを抑制し、それにより容器本体10の口部13が汚れることも防止することができる。
【0038】
さらに、塗布具30を容器本体10に対して挿抜すると、塗布具30の表面に付着した内容物Clがしごき部材15により掻き取られる。その際、内容物Clがしごき部材15の内周面に付着する。使用後、キャップ20を容器本体10の口部に装着させる際に、
図3(a)、(b)に示すようにしごき筒23の外周面の少なくとも一部がしごき部材15の内周面に対して密接しながら下方に移動するため、しごき部材15の内周面に付着した内容物Clがしごき筒23の外周面により下方に押し込まれて、容器本体10の内部に戻すことができる。なお、
図3においてはしごき部材15の内面に付着した内容物Clの図示を省略している。また、符号も一部省略している。
【0039】
〈第2の実施の形態〉
次に、本発明係る塗布具付容器の第2の実施の形態について、
図4を参照しながら説明する。第2の実施の形態の塗布具付容器200は、キャップ40に設けられる塗布具長可変保持部22の機構が異なる点を除いて、第1の実施の形態の塗布具付容器100と略同様の構成を有する。そのため、ここでは第1の実施の形態の塗布具付容器100と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
第1の実施の形態の塗布具付容器100は、外筒を内筒に対して回転させるという回転操作により塗布具30のキャップ20に対する保持位置を軸方向上下に変化させたが、第2の実施の形態の塗布具付容器200では軸部51の基端側に連結される保持部52をキャップ40の外周壁40bに対して上下動させることで、塗布具50の保持位置を軸方向上下に変化させる。キャップ40に対して、塗布具50をスライド移動させるための機構は適宜公知の機構を適用することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施の形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0042】
例えば、塗布具30をキャップ20に対して軸方向上下に移動させて、塗布具30を進退させるための機構は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で挙げた例によらず、適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 :容器本体
11 :胴部
11a:底部
11b:周壁部
12 :肩部
13 :口部
14 :雄ねじ
15 :しごき部材
15a:筒状壁
15b:フランジ
20 :キャップ
20a:頂壁
20b:外周壁
21 :キャップ本体
21a:天壁
21b:周壁
21c:雌ねじ
21d:挿入孔
22 :塗布具長可変保持部
22a:内筒部
22b:外筒部
23 :しごき筒
24 :シール部
24a:第一フランジ
24b:第二フランジ
30 :塗布具
31 :軸部
32 :被保持部
32a:摺接部
32b:案内ピン
33 :塗布部
40 :キャップ
40b:外周壁
50 :塗布具
51 :軸部
52 :保持部
100:塗布具付容器
200:塗布具付容器
A :案内溝孔
A1 :第一回転規制部
A2 :第二回転規制部
B :縦溝
C :凹溝
Cl :内容物
D :係止部
O :中心軸