(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20230711BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20230711BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230711BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20230711BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20230711BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20230711BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230711BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230711BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/40
C08K5/00
C08K7/06
C08K9/02
H01B1/00 C
H01B1/00 H
H01B1/22 A
H01B5/14 Z
H05K9/00 W
H05K9/00 X
(21)【出願番号】P 2019521753
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(86)【国際出願番号】 KR2017012115
(87)【国際公開番号】W WO2018084518
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2019-07-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2016-0144890
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジウン
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】藤井 勲
【審判官】海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118589(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194850(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103911089(CN,A)
【文献】特開2004-196923(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101555393(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
H01B 1/00 - 1/24
H01B 5/00 - 5/16
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ
48~
58質量%、エポキシ樹脂1~35質量%、および硬化剤1~35質量%を含む
エポキシペースト組成物であって、
前記質量%の範囲において、前記銀コーティングされた銅ナノワイヤ:前記エポキシ樹脂が、4~5.5:1の質量比で含有され、
前記銀コーティングされた銅ナノワイヤの全含量100質量部に対して、銀の含量が2~60質量部である、
前記エポキシペースト組成物。
【請求項2】
前記銀コーティングされた銅ナノワイヤは、長さ方向に垂直な断面における最長直径(f)に対する、銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さ(a)の割合(f/a)が0.0001~0.06である、請求項
1に記載のエポキシペースト組成物。
【請求項3】
前記硬化剤は、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、およびアミノ系硬化剤から選択される何れか1つまたは2つ以上である、請求項1
または2に記載のエポキシペースト組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ウレタン変性エポキシ樹脂、および非環式エポキシ樹脂から選択される何れか1つまたは2つ以上である、請求項1から
3の何れか一項に記載のエポキシペースト組成物。
【請求項5】
前記エポキシペースト組成物は希釈剤をさらに含み、前記希釈剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、ブチルカルビトールアセテート、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールから選択される何れか1つまたは2つ以上である、請求項1から
4の何れか一項に記載のエポキシペースト組成物。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか一項に記載のエポキシペースト組成物を基板に塗布して硬化したものである、導電性フィルム。
【請求項7】
前記硬化は、100~200℃で20~60分間行う、請求項
6に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
比抵抗が1.0x10
-5~6.0x10
-6Ω・mであり、1500MHzでの電磁波遮蔽率が20~70dBである、請求項
6または
7に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
請求項1から
5の何れか一項に記載のエポキシペースト組成物を基板に塗布して硬化したものである、電磁波遮蔽フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いたエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルムに関する。詳細には、本発明は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、エポキシ樹脂、および硬化剤を含むエポキシペースト組成物であって、経済的であり、優れた電気的特性を有し、且つ硬化時間が速い導電性ペースト組成物、およびそれから形成される導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀ペーストは、銀粉末が充填材(filler)として含有されている導電性ペーストのことである。ここで、導電性ペーストは、導電性印刷インク、塗料などのようなコーティング材料や接着剤などのような製品群を指す。デュポン社が世界で初めて製品を開発し、20‐30年前までは、全世界の市場を占有していた。しかし、1955年に日本の電気通信研究所が導電性接着剤および塗料を開発して日本の化学会社に販売し始めた以来、製造メーカーが増加するようになった。導電性ペーストをフィルムや基板、または電子部品などの基板に塗布または印刷し、加熱して乾燥硬化させることで、電極や電気配線などを形成するといった方法は、従来から広く用いられている。しかしながら、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される電極や配線パターンなどにおいては、さらなる低抵抗が求められており、その要求が毎年高難度となっている。
【0003】
従来より、エポキシペーストとしては、導電性金属粉末を分散させたエポキシ樹脂および硬化剤から構成される二液型エポキシ樹脂系導電ペーストが広く用いられている。しかし、二液型エポキシ樹脂系導電ペーストは、使用直前にエポキシ樹脂と硬化剤を混合しなければならないため、使用しにくいという欠点があった。
【0004】
また、導電性ペーストが所望の導電性を示すようにするためには、十分な量の導電性粉末をエポキシ樹脂に分散させて製造しなければならない。しかし、導電性粉末を多量で使用することは、コストの点、脆性などの物性が弱くなる点から好ましくなかった。従来は、前記導電性粉末として、数ナノメートル~数十マイクロメートルのサイズの銀ナノ粒子や銀フレークなどを使用していたが、かかる銀粉末素材は、電気抵抗が低いにもかかわらず、その価格が高価である。したがって、導電性ペーストの製造時に銀に代替可能な素材の開発が求められている状況である。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意努力した結果、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤをフィラーとして用いてエポキシペースト組成物を製造する場合、基板への付着性に優れ、低温で乾燥しても高い導電性が得られるとともに、硬化時間が速く、高い経済性および生産性を有するように製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような問題を解決するために、本発明は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物を用いることで、経済的であり、導電性に優れるとともに、硬化時間が短いエポキシペースト組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物を基板に塗布した後、熱処理することで製造することにより、低い比抵抗および高い電磁波遮蔽率を有する導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために研究した結果、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、エポキシ樹脂、および硬化剤を含むエポキシペースト組成物を見出し、それから製造された導電性フィルムの比抵抗を著しく低め、電磁波遮蔽率を向上させて本発明を完成した。
【0009】
本発明のエポキシペースト組成物は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ55~70質量%、エポキシ樹脂1~35質量%、および硬化剤1~35質量%を含んでもよい。
【0010】
前記銀コーティングされた銅ナノワイヤは、銀の含量が、全含量100質量部に対して2~60質量部であってもよい。
【0011】
前記銀コーティングされた銅ナノワイヤは、長さ方向に垂直な断面における最長直径(f)に対する、銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さ(a)の割合(f/a)が0.0001~0.06であってもよい。
【0012】
前記硬化剤は、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、およびアミノ系硬化剤から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0013】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ウレタン変性エポキシ樹脂、および非環式エポキシ樹脂から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0014】
前記エポキシペースト組成物は希釈剤をさらに含んでもよく、前記希釈剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0015】
本発明の導電性フィルムは、前記エポキシペースト組成物を基板に塗布して熱処理したものであってもよい。
【0016】
前記熱処理は、100~200℃で20~60分間行ってもよい。
【0017】
前記導電性フィルムは、比抵抗が1.0x10-5~6.0x10-6Ω・mであり、1500MHzでの電磁波遮蔽率が20~70dBであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエポキシペースト組成物は、銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むことで、酸化安定性および熱安定性に優れ、エポキシ樹脂との相互結合力および分散性が高い。これにより、シート抵抗および比抵抗が低くて電気伝導度に優れるとともに、硬化時間が短いという特徴があるため、優れた伝導性および電磁波遮蔽特性を実現することが可能であるという利点がある。また、前記エポキシペースト組成物は、それを用いて、電磁波遮蔽および吸収用物品、電極、電子回路、アンテナなどの様々な分野で広く利用可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例による銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物を基板にコーティングしたものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【
図2】本発明の一比較例による銀フレークを含むエポキシペースト組成物を基板にコーティングしたものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【
図3】本発明の一実施例によるエポキシペースト組成物を基板にコーティングして製造された導電性フィルムの電磁波遮蔽率を測定したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明に係るコア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルムについてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を詳細に説明するための参照にすぎず、本発明がこれに制限されるものではなく、様々な形態で実現可能である。
【0021】
また、他に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1つにより一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本願の説明で用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
【0022】
本明細書において、「ナノワイヤ」とは、導電性フィラーとして用いられる銀コーティングされた銅ナノワイヤの直径がナノメートルのサイズを有し、その形状が、ワイヤのように長めの形状を有するフィラーを意味する。
【0023】
本明細書において、「銀コーティングされた銅ナノワイヤ」とは、銅ナノワイヤからなるコア(core)と、銀からなるシェル(shell)と、を含むコア‐シェル構造のナノワイヤを意味する。
【0024】
上記の目的を達成するための本発明は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルムに関する。
【0025】
本発明を具体的に説明すると、本発明のエポキシペースト組成物は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ55~70質量%、エポキシ樹脂1~35質量%、および硬化剤1~35質量%を含んでもよい。好ましくは、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ60~70質量%、エポキシ樹脂10~35質量%、および硬化剤10~35質量%を含んでもよい。
【0026】
本発明のエポキシペースト組成物の正確なメカニズムは明らかではないが、前記エポキシペースト組成物は、銀コーティングされた銅ナノワイヤ、エポキシ樹脂、および硬化剤を含むことで、驚くべきことに、酸化安定性および熱安定性に優れ、エポキシ樹脂との相互結合力および分散性が向上することができる。これにより、比抵抗およびシート抵抗が著しく低くなり、高い電気伝導度を有するとともに、基板への塗布時に導電性が著しく向上し、優れた伝導性および電磁波遮蔽特性を有することができる。
【0027】
前記エポキシペースト組成物は、エポキシペースト組成物の全含量に対して、55~70質量%、好ましくは60~70質量%の範囲で銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む場合、基板へのコーティング時に高い導電性を有することができ、組成物の高い粘度によって銀コーティングされた銅ナノワイヤが不均一に分散されることを防止することができるため好ましい。
【0028】
本発明に係るコア‐シェル構造のナノワイヤは、銅ナノワイヤからなるコア(core)と、銀からなるシェル(shell)と、を含むコア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤであって、従来の銅ナノワイヤ、例えば、銀でコーティングされていない銅ナノワイヤや、球状粒子、フレーク状のものに比べてより優れた酸化安定性および熱安定性を示すという特性を有している。
【0029】
また、ナノワイヤ状を有することで、金属ナノ粒子に比べて分散性が高く、粒子状またはフレーク状とナノワイヤ状の違いにより、導電性フィルムのシート抵抗を著しく低めるという効果を提供することができる。また、銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いることで、銀ナノワイヤを用いる場合に比べてコストを低減することができる。
【0030】
本発明の一態様において、前記銀コーティングされた銅ナノワイヤは、銀の含量が、全含量100質量部に対して2~60質量部であってもよい。前記含量の銀でコーティングされる場合、銅ナノワイヤの全体に亘って均一に銀がコーティングされ、酸化安定性および熱安定性に優れるとともに、銀の含量が過量で含まれることによって別の銀粒子が生成されることを防止することができるため好ましい。
【0031】
本発明の一態様において、前記銀コーティングされた銅ナノワイヤは、長さ方向に垂直な断面における最長直径(f)に対する、銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さ(a)の割合(f/a)が0.0001~0.06であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
前記範囲の割合(f/a)を有する場合、低い密度のナノワイヤでも高い導電性を実現することができ、硬化後にシート抵抗および比抵抗が低くなることができるため好ましい。
【0033】
具体的には銀コーティングされた銅ナノワイヤは、長さが 5~10μm、直径が200~300nmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
前記範囲の直径を有する場合、高い(f/a)を確保し、高い導電性および低いシート抵抗の導電性フィルムを実現することができる。また、表面積に比べて広い電子移動経路を有することで、電気的特性が向上することができ、銀コーティングされた銅ナノワイヤの柔軟性を有することができるため好ましい。
【0035】
前記範囲の長さを有する場合、高い(f/a)を確保し、高い導電性および低いシート抵抗の導電性フィルムを実現することができる。また、銀コーティングされた銅ナノワイヤ同士が接触する連結長が確保され、向上した電気的特性を有することができ、基板にコーティングする時に、銀コーティングされた銅ナノワイヤの物理的な切断を防止することができて好ましい。
【0036】
本発明に係る前記エポキシペースト組成物は、エポキシペースト組成物の全含量に対して1~35質量%、好ましくは10~30質量%の範囲でエポキシ樹脂を含む場合に、基板へのコーティング時に基板との粘着性が高くて脱離を防止し、エポキシ樹脂の本来の物性を失うことなく、過量による導電性の低下を防止することができて好ましい。
【0037】
本発明の一態様において、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ウレタン変性エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂などから選択される何れか1つまたは2つ以上のエポキシ樹脂であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
また、本発明に係る前記エポキシペースト組成物は、エポキシペースト組成物の全含量に対して、1~35質量%、好ましくは10~30質量%の範囲で硬化剤を含む場合、短い硬化時間で硬化させることができ、硬化時に高い温度を要しないため好ましい。また、小さい衝撃や刺激による硬化が起こることがないため、保管が容易であって好ましい。
【0039】
本発明の一態様において、前記硬化剤は、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、およびアミノ系硬化剤から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
前記硬化剤の具体的な例として、前記酸無水物系硬化剤としては、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ナジック酸無水物、グルタール酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、およびメチルテトラヒドロフタル酸無水物などから選択される何れか1つまたは2つ以上が用いられてもよい。
【0041】
前記フェノール系硬化剤としては、ホルムアルデヒド縮合型レゾール型フェノール樹脂、非ホルムアルデヒド縮合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂、およびポリヒドロキシスチレン樹脂などのようなフェノール樹脂;アニリン‐変性レゾール樹脂、およびメラミン‐変性レゾール樹脂などのようなレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert‐ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、およびナフトールノボラック樹脂などのようなノボラック型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン‐変性フェノール樹脂、テルペン‐変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェニレン骨格またはジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、およびナフトールアラルキル樹脂などのような特殊フェノール樹脂;およびポリ(p‐ヒドロキシスチレン)のようなポリヒドロキシスチレン樹脂などから選択される何れか1つまたは2つ以上が用いられてもよい。
【0042】
前記アミノ系硬化剤は、ジメチルジサイカン(Dimethyl Dicykan、DMDC)、ジシアンジアミド(DICY)、イソホロンジアミン(IPDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ビス(p‐アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、メチレンジアニリン(例えば、4,4´‐メチレンジアニリン)、ポリエーテルアミン、例えば、ポリエーテルアミンD230、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、2,4‐トルエンジアミン、2,6‐トルエンジアミン、2,4‐ジアミノ‐1‐メチルシクロヘキサン、2,6‐ジアミノ‐1‐メチルシクロヘキサン、2,4‐ジアミノ‐3,5‐ジエチルトルエン、2,6‐ジアミノ‐3,5‐ジエチルトルエン、1,2‐ジアミノベンゼン、1,3‐ジアミノベンゼン、1,4‐ジアミノベンゼン、ジアミノジフェニルオキシド、3,3´,5,5´‐テトラメチル‐4,4´‐ジアミノビフェニル、および3,3´‐ジメチル‐4,4´‐ジアミノジフェニルなどから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。好ましくは、アミノ硬化剤として、ジメチルジサイカン(DMDC)、ジシアンジアミド(DICY)、イソホロンジアミン(IPDA)、およびメチレンジアニリンから選択される何れか1つまたは2つ以上のアミノ硬化剤が使用できる。
【0043】
本発明の一態様によると、前記エポキシペースト組成物は、希釈剤をさらに含んでもよい。前記希釈剤は、エポキシペーストの粘度に応じて含量が調節可能であり、好ましくは、エポキシペースト組成物の全100質量部に対して、希釈剤が15~30質量部の量で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲で希釈剤を含む場合、コーティング時に均一に塗布可能な粘度を有し、銀コーティングされた銅ナノワイヤが均一に分散されるため、高い伝導度を有し、向上した遮蔽特性を有することができて好ましい。前記希釈剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、ブチルカルビトールアセテート、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0044】
本発明のエポキシペースト組成物は、基板へのコーティングまたはキャスティングなどの塗布時に均一に塗布し、加工性を高める点から、25℃で測定された粘度が300,000~400,000cpsとなるように製造されてもよい。
【0045】
本発明の導電性フィルムは、前記エポキシペースト組成物を基板に塗布して熱処理したものであってもよい。
【0046】
具体的に説明すると、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ55~70質量%、エポキシ樹脂1~35質量%、および硬化剤1~35質量%を含む前記エポキシペースト組成物を基板に塗布して熱処理してもよい。好ましくは、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ60~70質量%、エポキシ樹脂10~30質量%、および硬化剤10~30質量%を含む前記エポキシペースト組成物を基板に塗布して熱処理してもよい。
【0047】
前記基板としては、有機または無機材料で製造された基板が使用可能であり、より具体的に説明すると、プラスチック基板、ガラス基板、または石英基板などであってもよい。前記基板を構成する物質としては、例えば、メタクリル樹脂、芳香族ポリエステル、変性ポリフェニレンオキシド(ModifiedPolyphenylene Oxide:MPPO)、セルロースエステル(Cellulose ester)、セルロースアセテート、水晶(quartz)、スチレン‐ブタジエン共重合体、シリコンウエハ、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrenecopolymer、ABS樹脂)、エポキシ樹脂、オレフィンマレイミド共重合体、溶融シリカ、ガラス、再生セルロース(Regenerated cellulose)、トリアセチルセルロース、フェノール樹脂、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート(polymethylacrylate)、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンフルオリド(Polyvinylidenfluoride)、ポリビニルアセテート、ポリスルホネート、ポリスルホン(Polysulfone)、ポリスチレン(PS)、ポリシラザン(polysilazane)、ポリシラン(polysilane)、ポリシロキサン(polysiloxane)、ポリアラミド、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリエステル、ポリエステルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalte、PEN)、ポリエチレンスルホン、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephtalate、PET)、ポリエチルメタクリレート(polyethylmetacrylate)、ポリエチルアクリレート(polyethylacrylate)、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、ポリオキシエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカルボシラン(polycarbosilane)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン(PP)、AS樹脂、GaAs、MgO、シリカ、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリカーボン(polycarbon)などから選択されるものが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0048】
一態様によると、前記基板は、選択に応じて、ピラニア(Piranha)溶液処理、酸処理、塩基処理、プラズマ処理、常圧プラズマ処理、オゾン処理、UV処理、SAM(self assembled monolayer)処理、および高分子または単分子コーティング方法の少なくとも1つの方法により表面処理をさらに施してもよい。
【0049】
本発明の前記熱処理は、100~200℃で10~60分間行ってもよい。この熱処理過程中に、エポキシペースト組成物の硬化反応が起こることになる。この際、硬化反応は、反応物質の半硬化反応を含んでもよい。このように熱処理時に半硬化反応が進行される場合には、ラミネート、ホットプレスのような加圧工程などの後続の過程により、追加硬化反応をさらに進行することで、完全硬化された反応生成物を得ることができる。
【0050】
好ましくは、熱処理は、100~200℃、より好ましくは120~200℃、さらに好ましくは150~200℃で行うことが、フィルムの物性のために好ましい。
【0051】
また、本発明のエポキシペースト組成物は、好ましくは、10~60分、より好ましくは10~40分、さらに好ましくは10~30分内で熱処理してもよい。これは、エポキシペースト組成物を短時間内に硬化しても、低い比抵抗およびシート抵抗が高くなることなく維持され、高い経済性および生産性を有することができるためである。
【0052】
本発明のエポキシペースト組成物は、噴射コーティング(spray coating)、グラビアコーティング(gravure coating)、マイクログラビアコーティング(microgravurecoating)、バーコーティング(bar‐coating)、ナイフコーティング(knife coating)、リバースロールコーティング(reverse roll coating)、ロールコーティング(roll coating)、カレンダーコーティング(calender coating)、カーテンコーティング(curtain coating)、押出コーティング(extrusion coating)、キャストコーティング(cast coating)、ディップコーティング(dip coating)、エアナイフコーティング(air‐knifecoating)、発泡コーティング(foam coating)、スリットコーティング(slit coating)などから選択される塗布方法により基板にコーティングされてもよいが、これに制限されるものではない。
【0053】
本発明の一態様によると、前記エポキシペースト組成物は、電磁波遮蔽力、屈曲性、接着力、層間接着力を向上させ、基板に均一に塗布される点から、基板に50~200μmの厚さで塗布されてもよく、好ましくは50~150μmの厚さで塗布されてもよい。
【0054】
本発明の一態様によると、前記導電性フィルムの厚さは、導電性フィルムの電磁波遮蔽力、屈曲性、接着力、層間接着力を向上させる点から、1~100μmの範囲であってもよく、好ましくは25~80μmの範囲であってもよい。
【0055】
本発明のエポキシペースト組成物で製造された前記導電性フィルムは、1~100μmの厚さで製造された際に、比抵抗が1.0x10-5~6.0x10-6Ω・mであり、1500MHzでの電磁波遮蔽率が20~70dBであってもよい。好ましくは、優れた電気伝導度および遮蔽能を有する点から、本発明のエポキシペースト組成物で製造された前記導電性フィルムは、25~80μmの厚さで製造された際に、比抵抗が1.0x10-6~6.0x10-6Ω・mであり、1500MHzでの電磁波遮蔽率が50~70dBであってもよい。
【0056】
上記のような構成を有する本発明に係るコア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物は、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤが、エポキシ樹脂との相互結合力および分散性に優れるとともに、正確なメカニズムは明らかではないが、驚くべきことに、比抵抗およびシート抵抗が著しく低くて高い電気伝導度を有し、基板への塗布時に導電性を著しく向上させ、優れた伝導性および遮蔽性を有するという点を特徴とする。
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明に係るコア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルムについてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではなく、種々の形態で実現可能である。
【0058】
また、他に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1つにより一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本願の説明で用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
【0059】
また、明細書において、特に記載しない添加物の単位は、質量%であってもよい。
【0060】
[物性の測定方法]
1)形態および構造の測定:コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いたエポキシペースト組成物のコーティング形態は、走査型電子顕微鏡(SEM;FEI、SIRION)を用いて測定した。
【0061】
2)シート抵抗:電気伝導度を比較するために、下記実施例で製造された導電性フィルムのシート抵抗を、4探針プローブシート抵抗測定器(Loresta‐GP、MCP‐T610、三菱ケミカルアナリテック)を用いて測定した。4探針プローブシート抵抗測定器で導電性フィルムのシート抵抗を測定する際に、フィルムを4分割して測定した後、その平均値を取った。測定されたシート抵抗値に塗膜厚さを適用して比抵抗を算出した。
【0062】
3)ペーストコーティング:製造されたエポキシペースト組成物を、バーコータ(Bar coater、ERICHSEN、Model-510)を用いてポリイミド(Polyimide)フィルムにコーティングした。
【0063】
4)フィルム厚さの測定:厚さ測定器(ERICHSEN、Foil Thickness Gauge Model 497)で測定した。
【0064】
5)電磁波遮蔽の測定:導電性フィルムの電磁波遮蔽能を測定するために、ネットワークアナライザ(Network Analyzer、Protek、 A333)を用いて電磁波遮蔽能を測定した。
【0065】
[実施例1]
100mlの三角フラスコに、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ(バイオニアコーポレーション)8g、エポキシ樹脂(SE-55F、シンアT&C(SHIN-A T&C))2g、硬化剤(XHT‐1004、シンアT&C)3g、テルピネオール(α‐terpineol、サンゾン化学(Samchun Chemical))2.5g、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate、サンゾン化学)0.5gを入れ、自転・公転ミキサー(ARE‐310、シンキー)にて2000rpmで30分間撹拌した。その後、3ロールミル(3‐rollmill、EXAKT 50)を用いて分散処理を5回行うことで、エポキシペースト組成物を製造した。
【0066】
実施例1で製造されたエポキシペースト組成物の導電性をテストするために、100mm×100mmのポリイミドフィルムの表面に前記エポキシペースト組成物10mlを投与した後、湿潤厚さ100μmでコーティング可能なバーコータを用いてコーティングを行った。製造された導電性フィルムをドライオーブンで2℃/minの昇温速度で150℃まで昇温した後、乾燥条件を確認するために、150℃でそれぞれ15分、30分、60分間熱処理して導電性フィルムを製造した。この際、エポキシペースト組成物の最終乾燥厚さは20μmであった。
【0067】
前記実施例1の条件下で全エポキシペースト組成物を製造した際に、表1に示したように、硬化時間を15分から60分に増加させても、比抵抗は4.6x10-6Ω・mと一定に測定された。したがって、最適の硬化条件は150℃、15分であって、短時間で硬化が可能であり、経済性および生産性を向上させることができることを確認した。
【0068】
[実施例2]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量を11gで使用したことを除き、同様に行った。
【0069】
実施例2で製造されたエポキシペースト組成物の比抵抗は、表1に示されたように、熱処理時間によって変化することなく4.9x10-6Ω・mと測定されることを確認した。
【0070】
[実施例3]
前記実施例1において、硬化剤の含量を1.5gで使用したことを除き、同様に行った。
【0071】
実施例3で製造されたエポキシペースト組成物も、導電性フィルムで製造した際に、硬化条件によって比抵抗が変わることを確認することができた。150℃で15分間熱処理した場合には比抵抗が1.2x10-5Ω・mであったが、150℃で30分間熱処理した場合には比抵抗が9.9x10-6Ω・mに低くなり、150℃で60分間熱処理した場合には、比抵抗が9.0x10-6Ω・mにさらに低くなった。このことから、硬化剤の含量が減少するについて、硬化時間を増加することが必要であることが分かった。
【0072】
[実施例4]
前記実施例1において、硬化剤の含量を3.5gで使用したことを除き、同様に行った。
【0073】
実施例4で製造されたエポキシペースト組成物も、導電性フィルムで製造した際に、硬化時間が増加しても比抵抗が殆ど変わらないことが分かった。このことから、エポキシペースト組成物の製造時に硬化剤の含量が増加して、15分よりも早い時間内に硬化されたことを確認することができた。また、本発明のエポキシペースト組成物は、硬化された後の追加時間で熱処理をさらに行っても、物性が低下しないことを確認することができた。
【0074】
[比較例1]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤに代えて銀フレークを使用したことを除き、同様に行った。
【0075】
実施例1と比較すると、実施例1の比抵抗が4.6x10-6Ω・mであったのに対し、銀フレークでエポキシペースト組成物を製造した際には、比抵抗が2.4x10‐4Ω・mであって、おおよそ2オーダほど増加していることが分かった。このことから、銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物で導電性フィルムを製造した際に、さらに低い比抵抗が得られることを確認することができた。このような結果から、銀フレークを用いてエポキシペースト組成物を製造する場合より、銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いてエポキシペースト組成物を製造する場合に、優れた経済性および物性を有することを確認することができた。
【0076】
[比較例2]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤに代えて銀ナノ粒子を使用したことを除き、同様に行った。
【0077】
実施例1と比較すると、実施例1の比抵抗が4.6x10-6Ω・mであったのに対し、銀ナノ粒子でエポキシペースト組成物を製造した際には、比抵抗が4.2x10‐4Ω・mであって、おおよそ2オーダほど増加していることが分かった。このことから、銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物で導電性フィルムを製造した際に、さらに低い比抵抗が得られることを確認することができた。このような結果から、銀ナノ粒子を用いてエポキシペースト組成物を製造する場合より、銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いてエポキシペースト組成物を製造する場合が、優れた経済性および物性を有することを確認することができた。
【0078】
[比較例3]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤに代えて銅ナノワイヤを使用したことを除き、同様に行った。
【0079】
実施例1と比較すると、実施例1の比抵抗が4.6x10-6Ω・mであったのに対し、銅ナノワイヤでエポキシペースト組成物を製造した際には、比抵抗が6.7x10-2Ω・mであって、おおよそ4オーダほど増加していることが分かった。このことから、銅ナノワイヤを用いてエポキシペースト組成物を製造した際に、熱処理による銅ナノワイヤの酸化によりシート抵抗および比抵抗が急激に増加することを確認した。このような結果から、銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物で導電性フィルムを製造する場合、銅ナノワイヤを用いる場合に比べてより低い比抵抗が得られることを確認することができた。
【0080】
[比較例4]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量を5.5gで使用したことを除き、同様に行った。
【0081】
比較例4で製造されたエポキシペースト組成物は、銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量が低いため、電子移動経路が減少し、比抵抗が増加していることを確認した。
【0082】
[比較例5]
前記実施例1において、銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量を15gで使用したことを除き、同様に行った。
【0083】
比較例5で製造されたエポキシペースト組成物は、粘度が高すぎて組成物の成分が均一に分散されず、フィルム状にコーティングされなかったため、比抵抗値を測定することができなかった。
【0084】
[比較例6]
前記実施例1において、エポキシ樹脂の含量を0.1gで使用したことを除き、同様に行った。
【0085】
比較例6で製造されたエポキシペースト組成物は、組成物間の粘着力が低下し、フィルムが脱離されたため、比抵抗値を測定することができなかった。
【0086】
[比較例7]
前記実施例1において、エポキシ樹脂の含量を5gで使用したことを除き、同様に行った。
【0087】
比較例7で製造されたエポキシペースト組成物を導電性フィルムとして製造し、比抵抗を測定したところ、エポキシ樹脂の増加により、銀コーティングされた銅ナノワイヤの接触が減少して比抵抗が急激に増加することを確認した。
【0088】
【0089】
[実験例1]
厚さによる電磁波遮蔽テスト
厚さによる電磁波遮蔽能を調べるために、実施例1の導電性フィルムを用いて、バーコータにより湿潤厚さ100μmと200μmのコーティング膜を製造した。
【0090】
このように異なる厚さの2つの導電性フィルムを準備した後、電磁波遮蔽テストを行った。その結果、
図3に示されたように、エポキシペースト組成物を30μmでコーティングした場合には、遮蔽能が1500MHzで55dB程度と測定された。そして、エポキシペーストを75μmでコーティングした場合には、遮蔽能が1500MHzで70dB程度と測定された。
【0091】
したがって、本発明のエポキシペースト組成物で導電性フィルムを製造すると、優れた伝導性および電磁波遮蔽特性を実現することができる。また、前記エポキシペースト組成物は、それを用いて、電磁波遮蔽および吸収用物品、電極、電子回路、アンテナなどの様々な分野で幅広く適用可能である。
【0092】
【0093】
前記表1~2に示したように、コア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ55~70質量%、エポキシ樹脂1~35質量%、および硬化剤1~35質量%を含むエポキシペースト組成物の場合、優れた電気伝導度を有して低いシート抵抗および比抵抗を示し、高い電磁波遮蔽率を有することを確認した。
【0094】
以上のように、本発明では、特定の事項と限定された実施例に基づいてコア‐シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含むエポキシペースト組成物、およびそれを含む導電性フィルムを説明したが、これは、本発明のより全体的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から種々の修正および変形が可能である。
【0095】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求範囲と均等または等価的変形のある全てが、本発明思想の範囲に属するというべきである。