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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】回転工具装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20230711BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20230711BHJP
   B23Q 5/20 20060101ALI20230711BHJP
   B23B 29/32 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B23B29/24 D
B23Q3/157 K
B23Q5/20 C
B23B29/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019560605
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2018047388
(87)【国際公開番号】W WO2019124560
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/610,085
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】小竹 恭太
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129051(JP,A)
【文献】国際公開第2015/059756(WO,A1)
【文献】特許第5269632(JP,B2)
【文献】国際公開第2000/010758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/24、32
B23Q 3/157
B23Q 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に搭載される回転工具装置であって、
モータに係合され且つ互いに噛合して配置される複数の歯車を有し、前記モータから動力が伝達される動力伝達機構と、
ワークを加工する回転工具を着脱可能に保持する工具装着部が設けられ、且つ、前記動力伝達機構によって伝達された動力により回転する回転軸と、
前記回転軸の回転を規制する際に、前記動力伝達機構が前記モータと係合された状態で、前記複数の歯車の何れかを係止する係止部材と、を有し、
前記回転軸は、前記回転工具を交換するときに、回転を規制される、ことを特徴とする回転工具装置。
【請求項2】
前記係止部材は、前記回転軸が延伸する軸方向に直交する移動方向に移動することで、前記複数の歯車の何れか1つの歯溝に噛合して、前記回転軸の回転を規制する、請求項1に記載の回転工具装置。
【請求項3】
前記複数の歯車は、前記移動方向に沿って配置され、
前記係止部材は、端部に位置する歯車に係合する、請求項2に記載の回転工具装置。
【請求項4】
前記軸方向に延伸し且つ前記軸方向及び前記移動方向の何れとも相違する方向に延伸する溝部が形成されたピストンを備えるシリンダと、一端が前記係止部材に固定され且つ他端が前記溝部に挿入された連結部材とを更に有し、
前記係止部材は、前記ピストンが前記軸方向に移動することに応じて、前記移動方向に移動する、請求項2又は3に記載の回転工具装置。
【請求項5】
動力を出力するモータと、
モータに係合され且つ互いに噛合して配置される複数の歯車を有し、前記モータから動力が伝達される動力伝達機構と、ワークを加工する回転工具を着脱可能に保持する工具装着部が設けられ、且つ、前記動力伝達機構によって伝達された動力により回転する回転軸と、前記回転軸の回転を規制する際に、前記動力伝達機構が前記モータと係合された状態で、前記複数の歯車の何れかを係止する係止部材と、を有する回転工具装置と、
前記回転工具を交換するときに、前記回転軸の回転を規制することを示す回転規制指令を出力する制御装置と、
を有することを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具装置、及び回転工具装置を有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一端に回転工具が装着された工具軸を動力により回転させて、回転工具によってワークを加工する回転工具装置を有する工作機械が記載されている。
【0003】
図1(a)は特許文献1に記載される刃物台の部分拡大斜視図であり、図1(b)はタレットが旋回可能位置にあるときの工具軸の係合状態を示す図であり、図1(c)はタレットが固定位置にあるときの工具軸の係合状態を示す図である。
【0004】
刃物台900は、タレット960を駆動軸930の延伸方向に移動することで、タレット960が旋回可能な旋回可能位置と、タレット960が固定される固定位置とを切り替える。
【0005】
タレット960が旋回可能位置にあるとき、タレット960は、カップリング912及び961が離隔することで、タレット旋回軸962の回転に応じて回転する。また、歯車967の歯溝は、係止部材952の端部である突出部953に係合されて固定される。歯車967は、軸受964aを介して不旋回部材940に回転可能に配置され回転工具軸964の一端に配置される。回転工具軸964は、回転工具990を回転可能に保持する。係止部材952は、軸受950aを介して不旋回部材940に回転可能に保持される旋回プレート950に挿入されて固定される。旋回プレート950は、タレット960が旋回するときにタレット960と共に旋回する。旋回プレート950がタレット960と共に旋回することで、歯車967に接続された回転工具990は、タレット960が旋回する間、タレット960に対して固定される。
【0006】
タレット960が固定位置にあるとき、タレット960は、カップリング912及び961が噛合することで、保持部材911に固定される。また、歯車967は、突出部953から離隔し、且つ、駆動軸930の回転に応じて回転する歯車943と噛合する。歯車943は、軸受942aを介して不旋回部材940に回転可能に配置される中間駆動軸942の一端に配置される。タレット960が固定位置にあるとき、歯車967が歯車943と噛合することで、回転工具990は、駆動軸930の回転に応じて、歯車967及び歯車943を介して回転する。
【0007】
また、割り出しされていない回転工具軸966の一端に配置される歯車967は、タレット960が旋回可能位置及び固定位置の何れの位置にあるときも係止部材954の突起部955等により、タレット960に対して固定される。
【0008】
特許文献1に記載される工作機械は、タレット960が旋回可能位置にあるときに歯車967の歯溝に突出部953を挿入することで、簡易な構造で容易に回転工具軸の回転を抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5269632号公報
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載される刃物台では、タレット960が旋回可能位置にあるときに、突出部953に係合されて固定される回転工具に接続される歯車967と、動力源に接続されている歯車943とが離隔して配置される。特許文献1に記載される刃物台は、固定される歯車967と歯車943とが離隔して配置されるため、動力源側の位相と、回転工具の位相関係を一定に保つことは容易ではない。
【0011】
本開示は、回転工具の回転を停止したときの動力源の駆動軸の位相と回転工具を回転する回転軸の位相関係を一定に保つことができる回転工具装置を提供することを目的とする。
【0012】
実施形態に係る回転工具装置は、動力源に係合され且つ互いに噛合して配置される複数の歯車を有し、動力源から動力が伝達される動力伝達機構と、ワークを加工する回転工具を着脱可能に保持する工具装着部が設けられ、且つ、動力伝達機構によって伝達された動力により回転する回転軸と、回転軸の回転を規制する際に、動力伝達機構が動力源と係合された状態で、複数の歯車の何れかを係止する係止部材とを有する。
【0013】
さらに、実施形態に係る回転工具装置では、係止部材は、回転軸が延伸する軸方向に直交する移動方向に移動することで、複数の歯車の何れか1つの歯溝に噛合して、回転軸の回転を規制することが好ましい。
【0014】
さらに、実施形態に係る回転工具装置では、複数の歯車は、移動方向に沿って配置され、係止部材は、端部に位置する歯車に係合することが好ましい。
【0015】
さらに、実施形態に係る回転工具装置では、回転規制機構は、軸方向に延伸し且つ軸方向及び移動方向の何れとも相違する方向に延伸する溝部が形成されたピストンを備えるシリンダと、一端が係止部材に固定され且つ他端が溝部に挿入された連結部材とを更に有し、係止部材は、シリンダが軸方向に移動することに応じて、移動方向に移動することが好ましい。
【0016】
また、実施形態に係る工作機械は、動力源に係合され且つ互いに噛合して配置される複数の歯車を有し、動力源から動力が伝達される動力伝達機構と、ワークを加工する回転工具を着脱可能に保持する工具装着部が設けられ、且つ、動力伝達機構によって伝達された動力により回転する回転軸と、回転軸の回転を規制する際に、動力伝達機構が動力源と係合された状態で、複数の歯車の何れかを係止する係止部材とを有する回転工具装置と、回転工具を交換するときに、回転軸の回転を規制することを示す回転規制指令を出力する制御装置とを有する。
【0017】
一実施形態に係る回転工具装置及び工作機械は、回転工具の回転を停止したときの動力源側の位相と回転工具の位相関係を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術を示す図である。
図2】第1実施形態に係る工作機械の斜視図である。
図3】(a)は図2に示す回転工具装置の正面図であり、(b)は図2に示す回転工具装置の背面図である。
図4】(a)は図2に示す回転工具装置の平面図であり、(b)は図2に示す回転工具装置の底面図である。
図5】(a)は図2に示す回転工具装置の左側面図であり、(b)は図2に示す回転工具装置の右側面図である。
図6図3(b)に示すA-A‘線に沿う断面図である。
図7】(a)は図5(b)に示すE-E´線に沿う断面図であり、(b)は(a)において矢印Gで示す領域の部分拡大図であり、(c)は(a)において矢印Hで示す領域の部分拡大図であり、(d)は図3(b)に示すB-B´線に沿う断面図である。
図8図5(b)に示すF-F´線に沿う断面図である。
図9図5(a)に示すD-D´線に沿う断面図である。
図10図2に示す工作機械の機能ブロック図である。
図11図10に示すNC装置により実行される回転工具交換処理のフローチャートである。
図12】S103の処理が実行される前の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図13】S103の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図14】S104の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図15】S105の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図16】S107の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図17】S108の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図18】S109の処理が実行された後の回転工具装置の状態を示す図であり、(a)は回転工具装置の断面図及び部分拡大断面図であり、(b)は(a)に示すA-A´線に沿う断面図及び部分拡大断面図である。
図19】第2実施形態に係る工作機械の斜視概要図である。
図20図19に示す工作機械の機能ブロック図である。
図21】回転工具装置と自動工具交換装置とを含む図20に示す工作機械の部分側面図である。
図22図20に示す自動工具交換装置の透視斜視図である。
図23図20に示す自動工具交換装置の機能ブロック図である。
図24】(a)は図22に示す回転工具保持装置の斜視図であり、(b)は図22に示す回転工具保持装置の正面図であり、(c)は回転工具保持装置の部分側面図であり、(d)は(b)の矢印Aで示される部分の拡大図である。
図25図23に示すNC装置により実行される加工処理及び回転工具交換処理のフローチャートである。
図26】S201の処理が実行される前の回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図27】S201の処理が実行された後の回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図28】S202の処理が実行された後の回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図29】S203の処理が実行された後の回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図30】S208の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その1)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図31】S208の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その2)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図32】S208の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その3)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図33】S210の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その1)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図34】S210の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その2)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図35】S212の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その1)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図36】S212の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その2)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図37】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その1)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図38】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その2)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図39】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その3)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図40】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その4)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図41】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その5)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図42】S214及びS215の処理が実行されるときの回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図(その6)であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
図43】S218の処理が実行された後の回転工具装置及び自動工具交換装置の状態を示す図であり、(a)は第1の斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は第2の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図を参照して、実施形態に係る回転工具装置及び工作機械について詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の縮尺等は説明のため適宜変更している。
【0020】
(第1実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の構成及び機能)
第1実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の構成及び機能を図2~10を参照して説明する。また、図10において、エア配管は破線で示され、電気配線は一点鎖線で示される。
【0021】
工作機械100は、左右に対向して正面主軸部110と、背面主軸部130とを有し、前後に刃物台120と、背面工具保持部140と設けている。
【0022】
右側の正面主軸部110は、正面主軸を回転可能に支持する。左側の背面主軸部130は、背面主軸を回転可能に支持する。正面主軸及び背面主軸は、チャックを介してワークを一体的に保持する。後方側の刃物台120は、正面主軸に保持されたワークを加工する工具を保持する。刃物台120は、第1回転工具261及び第2回転工具262を含む回転工具を回転可能に保持する回転工具装置1を有する。前方側の背面工具保持部140は、背面主軸に保持されたワークを加工する工具を保持する。工作機械100は正面主軸部110、背面主軸部130及び刃物台120を移動させることによって、正面主軸に保持されたワークを刃物台120に保持された工具によって加工し、背面主軸に保持されたワークを背面工具保持部140に保持された工具によって加工することができる。工作機械100に対して正面主軸及び背面主軸の軸線方向がZ方向、Z方向に直交する鉛直方向がY方向、Z方向及びY方向に直交する水平方向がX方向と規定されている。正面主軸部110、背面主軸部130及び背面工具保持部140の構成及び機能は、従来公知であり詳細な説明は省略する。
【0023】
回転工具装置1は、回転工具装置1に保持された回転工具に動力を供給する回転装置121にY方向を軸心として旋回自在に支持されている。回転装置1は、XYテーブル122に一体的に装着されている。回転工具装置1を旋回する動力を供給する旋回モータ123が回転装置121に設けられている。
【0024】
図3~6に示すように、回転工具装置1は、筐体10内に、駆動軸20、第1回転軸21、第2回転軸22及び動力伝達機構23が収容されている。
【0025】
駆動軸20は、X方向に延伸する軸部材であり、軸受103を介して筐体10に回転可能に支持される。駆動軸20の一端は動力源としてのモータ161(図10参照)が発生した動力を駆動軸20に伝達する伝達部材104(図10参照)にベベルギヤを介して連結され、駆動軸20の他端は動力伝達機構23に連結されている。モータ161の動力は、駆動軸20を介して動力伝達機構23に伝達される。
【0026】
第1回転軸21は、第1軸部21aの一端に第1工具装着部21bが設けられ、軸受103を介して筐体10により回転可能に支持されている。第1軸部21aは、X方向に延伸する軸部材であり、第1工具装着部21bは第1回転工具261を保持する。
【0027】
図7に示すように、第2回転軸22は、軸部22aを有する。軸部22aは、軸線方向に貫通する中空を有し、工具保持部22bと、弾性部材22cと、固定部材22dが中空内部に設置されている。軸部22aは、一端に工具装着部22fが設けられ、他端がシリンダ室265内に突出している。軸部22aは、工具装着部22fによって、第2回転工具ユニット263を保持する。第2回転工具ユニット263に第2回転工具262が着脱可能に設けられている。第2回転工具ユニット263は、一端から第2回転工具262が突出し、他端からアンカー264が突出している。工具保持部22bは、空気孔22eが貫通して設けられ、工具側の一端でアンカー264と係合し、他端が固定部材22dに係合されている。固定部材22dと軸部22aの間に弾性部材22cが工具保持部22bに外嵌されて設けられている。固定部材22dは、径が異なる2つ円筒部を有する部材であり、径が大きい円筒部の周面が軸部22aの内面と擦接する。
【0028】
筐体10の側面には、第1エア供給部11、第2エア供給部12及び第3エア供給部13、並びに第4エア供給部14、第5エア供給部15及び第6エア供給部16が配置される。
【0029】
シリンダ室265内にピストン266が収容され、第1エア供給部11はシリンダ室265内のピストン266を挟んだ軸部22aの反対側に連通している。第2エア供給部12はシリンダ室265内の軸部22a側に連通している。第1エア供給部11からエアが供給されるとピストン266を介して固定部材22dがX方向に移動することによって、第2回転工具ユニット263が開放(アンロック)される。弾性部材22cは、工具保持部22b及び固定部材22dの押圧に応じて収縮する。また、第2エア供給部12からエアが供給されるとピストンがX方向に戻り、固定部材22dが弾性部材22cの弾性力によって戻り、第2回転工具ユニット263が係止(ロック)される。ピストン266は、第1エア供給部11へのエアの供給による移動中に、ピストン266に形成されたエア供給路が第3エア供給部13と連通し、固定部材22dと当接することによってエア供給路と空気孔22eとが連通する。第2回転軸22の内部は、第2回転工具ユニット263が開放される間に、第3エア供給部13からエアが供給されると、空気孔22eの内部を介して供給されたエアによりブローされることで工具装着箇所に付着した切粉等を除去する。
【0030】
なお第6エア供給部16から工具装着部22f内にエアを供給し、工具装着部22f内部のエアの圧力を検出することで、第2回転工具ユニット263が工具装着部22fに正常に装着されていることを確認するように構成してもよい。
【0031】
図8に示すように、動力伝達機構23は、第1歯車23aと、第1歯車23aと噛合される第2歯車23bと、第2歯車23bと噛合される第3歯車23cと、第3歯車23cと噛合される第4歯車23dとを有する。第1歯車23a~第4歯車23dは、Y方向に沿って配置される。第1歯車23aは、キー等の係合部材23eを介して駆動軸20に係合される。第3歯車23cは、係合部材23eを介して第1回転軸21に係合される。第4歯車23dは、係合部材23eを介して第2回転軸22に係合される。
【0032】
第1歯車23aは、係合された駆動軸20がモータ161からの動力により回転することに応じて回転する。第2歯車23bは、第1歯車23aが回転することに応じて回転する。第3歯車23cは、第2歯車23bが回転することに応じて回転する。第3歯車23cが回転することで第1回転軸21が回転し、第1回転軸21が回転することで、第1回転工具261が回転する。第4歯車23dは、第3歯車23cが回転することに応じて回転する。第4歯車23dが回転することで第2回転軸22が回転し、第2回転軸22が回転することで、第2回転工具262が回転する。
【0033】
第4歯車23dの下方に形成されたX方向に延伸するシリンダ室24f内に、ピストン24aが挿入されている。ピストン24aは、X方向及びY方向と交差する方向に延伸する溝部24dが形成される。溝部24dは、工具先端側に向かって下方側に傾斜して形成される。
【0034】
第4歯車23dの直下にシリンダ室24fと交差して形成される収容室の内部に、係止部材24bが摺動可能に収容されている。係止部材24bは、突起状の係止部24eを上端に有し、ピストン内に挿入されている。両端が溝部24dに挿入されている連結部材24cが係止部材24bを貫通している。係止部材24bと連結部材24cは延伸方向が互いに直交している。
【0035】
筐体10には、シリンダ室24fのピストン24aを挟んだ反工具側と第4エア供給部14とを接続する第1シリンダ配管24hが形成され、シリンダ室24fのピストン24aを挟んだ工具側と第5エア供給部15とを接続する第2シリンダ配管24iが形成されている。ピストン24aは、第4エア供給部14からエアが供給されるとシリンダ室24f内を工具側に移動し、連結部材24cを介して係止部材24bを第4歯車23d側に移動させる。また、ピストン24aは、第5エア供給部15からエアが供給されるとシリンダ室24f内を反工具側に移動し、連結部材24cを介して係止部材24bを第4歯車23d側から離隔する方向に移動させる。
【0036】
第4歯車23dの歯溝と係止部24eとが対向するように、第4歯車23dの回転位置を位置決めし、係止部材24bを第4歯車23d側に移動することで、係止部24eを第4歯車23dの歯溝に噛合させることができる。係止部24eを第4歯車23dの歯溝に噛合させ、係止部材24bを第4歯車23dに係止させることで、第4歯車23dの回転位置が固定される。係止部材24bを第4歯車23d側から離隔する方向に移動させることによって、第4歯車23dの歯溝に噛合された係止部24eを第4歯車23dの歯溝から離隔させることができる。係止部24eを第4歯車23dの歯溝から離隔させることで、第4歯車23dの回転が許容される。
【0037】
図10に示すように、工作機械100は、駆動軸20を回転させるモータ161と、エア供給装置170と、自動工具交換装置180と、制御装置とも称されるNC(Numerical Control)装置190とを更に有する。モータ161は電源回路から供給される電力に応じて回転し、モータ161の回転軸162が、モータ161の回転に応じて回転して、モータ161が発生した動力を伝達部材104及び駆動軸20を介して動力伝達機構23に伝達する。モータ161の回転軸162の位相を検出する位相検出センサ163が設けられている。位相検出センサ163はエンコーダからなり、回転軸162の位相を示す位相信号を電気配線105を介してNC装置190に出力する。
【0038】
エア供給装置170は、第1エア配管171~第6エア配管176と、本体部177とを有する。第1エア配管171~第3エア配管173のそれぞれは、第1エア供給部11、第2エア供給部12及び第3エア供給部13に接続される。第4エア配管174~第6エア配管176のそれぞれは、第4エア供給部14、第5エア供給部15及び第6エア供給部16に接続される。本体部177は、コンプレッサ、空気バルブ及び制御回路等を備え、NC装置190から電気配線105を介して入力される空気制御信号に応じて、第1エア配管171~第6エア配管176のそれぞれにエアを供給する。
【0039】
NC装置190は、インターフェース部191と、記憶部192と、入力部193と、出力部194と、処理部195とを有する。
【0040】
インターフェース部191は、電気配線105を介して、モータ161、位相検出センサ163、エア供給装置170及び自動工具交換装置180等と通信を行う。記憶部192は、例えば、半導体記憶装置を備え、処理部195での処理に用いられるプログラム及びデータ等を記憶する。例えば、記憶部192は、自動工具交換装置180によって第2回転工具262が設けられた第2回転工具ユニット263を交換する回転工具交換処理を処理部195に実行させるための回転工具交換プログラム等を記憶する。回転工具交換プログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部192にインストールされてもよい。
【0041】
入力部193は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、オペレータによる操作に対応する信号を生成し、生成された信号は、オペレータの指示として、処理部195に供給される。出力部194は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、処理部195から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。
【0042】
処理部195は、工作機械100の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部195は、記憶部192に記憶されている回転工具交換プログラムに基づいて、第2回転工具ユニット263を交換する回転工具交換処理を実行することができる。
【0043】
処理部195は、加工指令部1950と、交換指令取得部1951と、停止指令部1952と、工具ロック指令部1953と、工具交換指令部1954と、ブロー指令部1955と、停止解除指令部1956とを有する。これらの各部は、処理部195が備えるプロセッサで実行される回転工具交換プログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとしてNC装置190に実装されてもよい。加工指令部1950は、ワークを加工するための種々の処理を実行することができる。加工指令部1950は、第2回転工具ユニット263を交換することを示す回転工具交換指令を交換指令取得部1951に出力することができる。
【0044】
(NC装置190による回転工具交換処理)
図11~18を参照して、NC装置190による回転工具交換処理を説明する。図11に示す回転工具交換処理は、予め記憶部192に記憶されている回転工具交換プログラムに基づいて、主に処理部195によりNC装置190の各要素と協働して実行される。
【0045】
まず、交換指令取得部1951は、加工指令部1950から回転工具交換指令を取得する(S101)。次いで、停止指令部1952は、モータ161に第2回転軸22が所定の位相で停止することを示す停止指令を出力し(S102)、モータ161は、停止指令の入力に応じて第2回転軸22の位相が所定の位相となる位置で回転軸162を停止する。第2回転軸22の位相が所定の位相となる位置で回転軸162が停止することで、第4歯車23dの所定の歯溝と係止部24eとが対向する。次いで、停止指令部1952は、第2回転軸22の回転を規制することを示す回転規制指令をエア供給装置170に出力する(S103)。
【0046】
図12及び13に示すように、S103において回転規制指令が入力されると、エア供給装置170は、第4エア配管174を介して第4エア供給部14にエアを供給する。第4エア供給部14にエアが供給されることにより、第4歯車23dの歯溝に係止部材24bが噛合される。第4歯車23dの歯溝に係止部材24bが噛合することで、駆動軸20、第1回転軸21及び第2回転軸22の回転が規制される。
【0047】
次いで、工具ロック指令部1953は、第2回転工具ユニット263を開放することを示す開放指令をエア供給装置170に出力する(S104)。
【0048】
図14に示すように、S104において、エア供給装置170は、第1エア配管171を介して第1エア供給部11にエアを供給する。第1エア供給部11にエアが供給されることにより、第2回転工具ユニット263が開放される。
【0049】
次いで、工具交換指令部1954は、第2回転工具ユニット263を引き抜くことを示す引抜指令を自動工具交換装置180に出力する(S105)。
【0050】
S105において、図15に示すように、第2回転軸22に保持されていた第2回転工具ユニット263は、自動工具交換装置180によって第2回転軸22から引き抜かれる。
【0051】
次いで、ブロー指令部1955は、第2回転工具ユニット263が外された第2回転軸22の内部を供給されたエアでブローすることを示すブロー指令をエア供給装置170に出力する(S106)。S106においてブロー指令が入力されると、エア供給装置170は、第3エア配管173を介して第3エア供給部13にエアを供給する。第3エア供給部13から供給されたエアは、空気孔22eに到達して、第2回転軸22の内部は、エアによりブローされる。
【0052】
次いで、工具交換指令部1954は、第2回転工具ユニット263の代わりに第2回転工具ユニット263´を挿入することを示す挿入指令をエア供給装置170に出力する(S107)。自動工具交換装置180と回転工具装置1は、挿入指令が入力されることに応じて、第2回転工具ユニット263´を協働して第2回転軸22に挿入する。
【0053】
S107において、図16に示すように、第2回転工具ユニット263´は、自動工具交換装置180によって第2回転軸22に挿入され、第2回転工具ユニット263は、自動工具交換装置180側に収容される。
【0054】
一般的に、自動工具交換装置は、回転工具ユニットを所定の位相で保持するため、第2回転工具ユニット263が自動工具交換装置180に保持可能となる第2回転軸22の位相で、第4歯車23dの歯溝に係止部24eを噛合させることによって、自動工具交換装置180と回転工具装置1との間で、回転工具ユニットの交換を行うことができる。
【0055】
次いで、工具ロック指令部1953は、第2回転工具ユニット263´を係止することを示す係止指令をエア供給装置170に出力する(S108)。
【0056】
図17に示すように、S108において工具ロック指令が入力されると、工具ロック指令部1953は、第2エア配管172を介して第2エア供給部12にエアを供給する。第2エア供給部12にエアが供給されると、第2回転工具ユニット263´が係止される。これにより、第2回転工具262が、第2回転工具262と異なる第2回転工具262´に交換される。
【0057】
そして、停止解除指令部1956は、第2回転軸22を回転可能にすることを示す回転規制解除指令をエア供給装置170に出力する(S109)。
【0058】
図18に示すように、S109において回転規制解除指令が入力されると、エア供給装置170は、第5エア配管175を介して第5エア供給部15にエアを供給する。第5エア供給部15にエアが供給されることにより、駆動軸20、第1回転軸21及び第2回転軸22は回転可能になる。
【0059】
(第1実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の作用効果)
回転工具装置1は、動力伝達機構23がモータ161の回転軸162と係合された状態で、第2回転軸22の回転を規制するので、第2回転軸22の回転が規制される間、モータ161の回転軸162と第2回転軸22の位相関係が維持される。
【0060】
また、回転工具装置1では、ピストン24a、係止部材24b及び連結部材24cを有する回転規制機構24の係止部材24bによって動力伝達機構23の歯車を係止する。回転工具装置1は、係止部材24bが動力伝達機構23の歯車の歯溝に噛合して、第2回転軸22の回転を規制するという簡便な構成で、第2回転軸22の回転を確実に規制することができる。
【0061】
また、回転工具装置1では、動力伝達機構23の歯車は係止部材24bの移動方向に沿って配置され、係止部材24bは端部に位置する歯車に係合するので、回転規制機構24が小型化されて、回転工具装置1の大きさを小さくできる。
【0062】
また、回転工具装置1では、係止部材24bは、ピストン24aが第2回転軸22の軸方向に移動することに応じて、軸方向に直交する移動方向に移動することで動力伝達機構23の端部に位置する歯車を係止するので、回転規制機構24及び回転工具装置1の大きさを更に小さくできる。
【0063】
(第2実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の構成及び機能)
第2実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の構成及び機能を図19~24を参照して説明する。図19において、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、直交する矢印で示される。図20において、エア配管は破線で示され、電気配線は一点鎖線で示される。また、図21~22において、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図19に示されるX方向、Y方向及びZ方向と対応する方向である。
【0064】
工作機械200は、自動工具交換装置280及びNC装置290を自動工具交換装置180及びNC装置190の代わりに有することが工作機械100と相違する。自動工具交換装置280及びNC装置290以外の工作機械200の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された工作機械100の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0065】
図20及び21に示すように、自動工具交換装置280は、工作機械200において、回転工具装置1の後方に配置される。
【0066】
自動工具交換装置280は、筐体286を有し、筐体286は、架台2800にX方向に進退移動可能に支持されている。筐体286内には、回転工具保持装置281と、回転工具抜差装置282が収容されている。回転工具保持装置281は、保持装置駆動装置283によって駆動される。回転工具抜差装置282は、抜差装置駆動装置284によって駆動される。保持装置駆動装置283及び抜差装置駆動装置284は、電源装置285によって電源が供給される。筐体286には、自動工具交換装置280内に収容される交換用の第2回転工具ユニット263a~263jを回転工具装置1に対して交換する際、第2回転工具ユニット263a~263jを搬出及び搬入するために開閉するシャッタ2860が配置される。
【0067】
図24に示すように、回転工具保持装置281は、円形状の第1保持板2810と、第1保持回転軸2811と、第2保持回転軸2812と、軸接続部2813と、保持底板部2814と、第2保持板2815と、マガジン2816とを有する。第1保持回転軸2811及び第2保持回転軸2812は、軸接続部2813を介して接続される。第1保持回転軸2811は、第1保持板2810を介して保持底板部2814に回転可能に支持される。第2保持回転軸2812は、第2保持板2815を介して第2保持板2815に回転可能に支持される。第1保持回転軸2811及び第2保持回転軸2812は、保持装置駆動装置283から伝達される動力に応じて回転駆動される。
【0068】
マガジン2816は、マガジン基材2816aと、ホゾ部材2816bとを有する。マガジン基材2816aは、第2保持回転軸2812の端部に一体的に固定される円形状の部材であり、外縁に沿って第2回転工具ユニット263a~263jを保持する凹部が形成される。ホゾ部材2816bは、外縁にホゾ2616eが形成された略円形状の部材であり、マガジン基材2816aの端面に一体的に固定される。第2回転工具ユニット263a~263jはそれぞれ、溝部2630にホゾ2616eが係合された状態で凹部に保持される。
【0069】
前記凹部内に、一端がマガジン基材2816aに固定された弾性部材からなる固定留め具2816dが設けられ、各固定留め具2816dは、第2回転工具ユニット263a~263jのそれぞれを凹部内で押圧する。第2回転工具ユニット263a~263jのそれぞれは、固定留め具2816dによって前記凹部内に弾力的に保持される。
【0070】
回転工具抜差装置282は、抜差基部2820と、第1腕部2821と、第2腕部2822とを有する。抜差基部2820は、抜差装置駆動装置284によってX方向及びY方向に移動制御自在に設けられている。第1腕部2821及び第2腕部2822は、抜差基部2820から回転工具装置1の方向に向けて延伸する一対の腕部であり、互いに接近するように移動することで第2回転工具ユニット263を挟持し、離間するように移動することで第2回転工具ユニット263の挟持を解除する。
【0071】
保持装置駆動装置283は、モータ等を有し、回転工具保持装置281及び回転工具抜差装置282と共に筐体286をX方向に移動し、第1保持回転軸2811及び第2保持回転軸2812を回転することで、マガジン2816を回転する。抜差装置駆動装置284は、モータ等を有し、回転工具抜差装置282をX方向及びY方向に移動する。
【0072】
NC装置290は、処理部295を処理部195の代わりに有することがNC装置190と相違する。処理部295は、加工指令部2950と、交換指令取得部2951と、停止指令部2952と、工具ロック指令部2953と、工具交換指令部2954と、ブロー指令部2955と、停止解除指令部2956とを有する。これらの各部は、処理部295が備えるプロセッサで実行される加工プログラム及び回転工具交換プログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとしてNC装置290に実装されてもよい。
【0073】
(NC装置290による加工処理及び回転工具交換処理)
図25~43を参照して、NC装置290による回転工具交換処理を説明する。図25に示す回転工具交換処理は、予め記憶部292に記憶されている加工プログラム及び回転工具交換プログラムに基づいて、主に処理部295によりNC装置290の各要素と協働して実行される。
【0074】
まず、加工指令部2950は、図26に示す初期位置に配置された刃物台120を、加工位置移動指令をXYテーブル122に出力することによって(S201)、図27に示す加工開始位置に移動する。
【0075】
次いで、加工指令部2950は、加工を実施することを示す加工指令をモータ161及びXYテーブル122に出力することによって(S202)、図27に示すようにXYテーブル122に固定的に装着されたバイト12Xによりワークの加工を行い、次いで図28に示すようにXYテーブル122に回転可能に装着された回転工具によりワークの加工を行う。
【0076】
図29に示すように、加工指令によって、回転工具装置1の第1回転工具261又は第2回転工具262によりワークの加工が行われ、次工程で回転工具装置1の第2回転工具ユニット263を交換する場合、工具交換指令部2954は、自動工具交換装置280の筐体286をスタンバイ位置に移動することを示すスタンバイ位置移動指令を保持装置駆動装置283に出力する(S203)。保持装置駆動装置283は、スタンバイ位置移動指令が入力されたことに応じて、第2回転工具262によるワークの加工の妨げにならない場合、筐体286を図29に示すようにスタンバイ位置に移動する。
【0077】
次いで、加工指令部2950は、第2回転工具ユニット263を交換することを示す回転工具交換指令を交換指令取得部2951に出力し(S204)、交換指令取得部2951は、加工指令部2950から回転工具交換指令を取得する(S205)。次いで、前記第2回転工具262による加工終了後、停止指令部2952は、モータ161にモータ停止指令を出力する(S206)と共に、回転規制指令をエア供給装置170に出力する(S207)。
【0078】
次いで、工具交換指令部2954は、回転工具装置1をB軸方向に回転すると共に、回転工具装置1を所定の工具交換位置に移動することを示す工具交換位置移動指令をXYテーブル122及び旋回モータ123に出力する(S208)。
【0079】
S208において、図30~32に示すように、まず、旋回モータ123は、図30に示すように、回転工具装置1をY軸方向に上方から見て反時計回りに90°B軸旋回する。次いで、XYテーブル122は、図31に示すように、回転工具装置1をX方向に筐体286に接近させるように移動する。そして、旋回モータ123は、図32に示すように、回転工具装置1を更に反時計回りに90°B軸旋回し、XYテーブル122は、第2回転工具ユニット263と回転工具抜差装置282が対向し、第2回転工具ユニット263と第1腕部2821及び第2腕部2822とが同一の高さになるように回転工具装置1を移動する。このとき回転工具装置1では、回転規制機構24が有する係止部材24bによって動力伝達機構23の歯車が係止される。
【0080】
次いで、工具ロック指令部2953は、第2回転工具ユニット263を開放することを示す開放指令をエア供給装置170に出力する(S209)。S103の処理と同様な処理をエア供給装置170が実行することで、第2回転工具ユニット263が開放される。次いで、工具交換指令部2954は、第2回転工具ユニット263を引き抜くことを示す引抜指令を自動工具交換装置180、XYテーブル122に出力する(S210)。
【0081】
S210において、図33に示すように、まず、シャッタ2860が開くと共に、自動工具交換装置280は、第2回転工具ユニット263が第1腕部2821と第2腕部2822との間に挿入されるように筐体286を移動し、第1腕部2821及び第2腕部2822によって第2回転工具ユニット263を挟持する。次いで、図34に示すように、回転工具抜差装置282は、筐体286に対してX方向に移動し、第1腕部2821及び第2腕部2822によって挟持された第2回転工具ユニット263を回転工具装置1から引き抜く。
【0082】
次いで、ブロー指令部2955は、第2回転工具ユニット263が外された第2回転軸22の内部をブローすることを示すブロー指令をエア供給装置170に出力する(S211)。次いで、工具交換指令部2954は、第2回転工具ユニット263の代わりに第2回転工具ユニット263cを挿入することを示す挿入指令をエア供給装置170及び保持装置駆動装置283に出力する(S212)。
【0083】
S212において、図35に示すように、まず、マガジン2816は、第2回転工具ユニット263c(第2回転工具ユニット263´に相当)がマガジン2816の頂部に配置されるように回転する。一方、XYテーブル122は、第2回転軸22の高さがマガジン2816の頂部に配置される第2回転工具ユニット263cの軸の高さと一致するように、回転工具装置1をY方向に移動する。次いで、図36に示すように、XYテーブル122は、回転工具装置1をX方向に移動して、第2回転工具ユニット263cを第2回転軸22に挿入する。
【0084】
次いで、工具ロック指令部2953は、第2回転工具ユニット263cを係止することを示す係止指令をエア供給装置170に出力する(S213)。このとき回転工具装置1では、第2回転工具ユニット263cが保持されると共に、回転規制機構24が有する係止部材24bによる動力伝達機構23の歯車の係止が解除される。次いで、工具交換指令部2954は、回転工具装置1を初期位置に移動することを示す初期位置移動指令をXYテーブル122及び旋回モータ123に出力する(S214)。次いで、工具交換指令部2954は、第2回転工具ユニット263をマガジン2816に収容することを示す工具収容指令を自動工具交換装置280に出力する(S215)。
【0085】
S214において、まず、図37に示すように、XYテーブル122は、回転工具装置1をY方向に移動して、マガジン2816から第2回転工具ユニット263cを、固定留め具2816dの付勢力に抗して上方に引き抜く。次いで、図38に示すように、自動工具交換装置280及び刃物台120は、互いに離間するようにX方向に移動して、第2回転工具ユニット263cを自動工具交換装置280から離隔させると共に、シャッタ2860が閉じる。次いで、図39及び40に示すように、旋回モータ123は、回転工具装置1をY軸方向に上面から見て時計方向に90°B軸旋回し、次いで、XYテーブル122は、回転工具装置1を正面主軸に向かってX方向に移動する。そして、図41に示すように、旋回モータ123は、回転工具装置1を更に時計方向に90°B軸旋回し、回転工具装置1を初期位置に待機させる。
【0086】
一方、S215において、まず、図39に示すように、回転工具抜差装置282は、第2回転工具ユニット263の溝部2630がホゾ2616eに対向するように、X方向に移動する。S206のモータ停止指令によって第2回転工具ユニット263は、溝部2630がホゾ2616eと対向する位相で停止している。次いで、図40に示すように、回転工具抜差装置282は、Y方向に移動して、第2回転工具ユニット263の溝部2630にホゾ2616eを係合させて、第2回転工具ユニット263をマガジン2816の頂部に装着する。次いで、図41に示すように、回転工具抜差装置282は、Y方向に移動して、マガジン2816の頂部から離脱する。そして、図42に示すように、回転工具装置1は、X方向に移動して、交換された第2回転工具ユニット263cによりワークの加工を行う。第2回転工具ユニット263cによる加工終了後、図43に示すように、XYテーブル122の移動によって、加工を完了したワークを突っ切る。
【0087】
(第2実施形態に係る回転工具装置及び工作機械の作用効果)
工作機械200は、自動工具交換装置280と回転工具装置1との間において、第2回転工具ユニット263の溝部2630が±Y方向すなわち鉛直方向に並ぶ位相でマガジン2816のホゾ2616eと合う位相で第2回転工具ユニット263が停止するので、自動工具交換装置280のマガジン2816のホゾ2616eと第2回転工具ユニット263の溝部2630とを容易に係合できる。
【0088】
また、工作機械200は、回転工具装置1及び自動工具交換装置280の双方を互いに近接する方向に移動することで工具を交換するので、工具交換に必要なスペースを小さくすることができる。
【0089】
また、工作機械200は、自動工具交換装置280の内部に移動可能に配置される回転工具抜差装置282を介して第2回転工具ユニット263を交換するので、自動工具交換装置280をコンパクトにすることができる。さらに、工作機械200は、自動工具交換装置280のコンパクト化が可能なので、工作機械200への自動工具交換装置280を容易に搭載することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43