(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】幹細胞を培養し、増殖させ、分化させるための方法及び材料
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20230711BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230711BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230711BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20230711BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20230711BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C12N5/07
A61L27/36 100
A61L27/36 300
A61L27/38 100
A61K35/30
A61K35/545
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2019566805
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 US2018035992
(87)【国際公開番号】W WO2018226648
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-02
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーモーステイン,アラン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ,ジャレル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】クヌーセン,トラヴィス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,マシュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】プリド,ジョセ エス.
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/090550(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/119213(WO,A2)
【文献】特表2007-524411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331867(US,A1)
【文献】特表2013-502234(JP,A)
【文献】国際公開第2017/044488(WO,A1)
【文献】特開2016-052271(JP,A)
【文献】特表2006-501848(JP,A)
【文献】特表平09-501303(JP,A)
【文献】米国特許第06607522(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132847(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0013847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12Q
A61K
C12M
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜色素上皮単層を作製するための方法であって、
フィブリノゲンで被覆された表面を有し、誘導多能性幹細胞を、前記網膜色素上皮単層を形成することができる網膜色素上皮細胞に分化させることができる培地を含む容器中で誘導多能性幹細胞を培養することを含み、
前記表面は約25~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものであり、
前記誘導多能性幹細胞が前記フィブリノゲンと接触し、
前記誘導多能性幹細胞が前記容器中で前記網膜色素上皮細胞に分化し、
前記網膜色素上皮細胞が前記容器中で前記網膜色素上皮単層を形成し、
形成された前記網膜色素上皮単層が
、フィブリノゲンと接触している網膜色素上皮細胞の6角形のパターン形成を含
む、
方法。
【請求項2】
前記培養が、0.1×10
6~1×10
6個の誘導多能性幹細胞/cm
2を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導多能性幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器が培養皿である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記容器が培養フラスコである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記表面が、約50~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面が、約75~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が、約1~約48時間、前記フィブリノゲンで被覆されたものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞を約7~約90日間培養して前記網膜色素上皮単層を形成することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ゼノフリーである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月23日に出願された米国特許出願第62/634,580号、及び2017年6月5日に出願された米国特許出願第62/515,286号に基づく優先権を主張する。これら先の出願の開示は、本出願の開示の一部と見なされ、その全体が本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1. 技術分野
本書類は、誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)及び網膜色素上皮に関する。例えば、本書類は、幹細胞(例えばiPSC)を培養し、増殖させ、分化させるための方法及び材料に関する。本書類はまた、幹細胞(例えばiPSC)から網膜色素上皮を作製するための方法及び材料に関する。
【0003】
2. 背景情報
iPSCベースの再生医療の標的疾患の一例は、黄斑変性である。黄斑変性は網膜色素上皮(RPE)の障害である。ベストロフィノパチー(bestrophinopathy)を含む遺伝性黄斑変性は、RPE機能に関与するタンパク質変異により生じる。ベストロフィノパチー、最も一般的にはベスト病、はBest1遺伝子の変異に起因し、光受容器を支えるその役割においてRPE機能障害を引き起こし、最終的に光受容器の死をもたらす。有病率は過去に、16,000~21,500人に1人と報告されている(Dalvin等, Ophthalmic Genet., Epub:1-5 (2016))。遺伝的に引き起こされる黄斑変性は稀であるが、加齢黄斑変性(AMD)は、先進国において失明の主な原因である。2050年には、500万件を占めると推定されている。AMDは、RPE機能に直接影響する免疫及び血管機能のより複雑な疾患である。
【0004】
黄斑変性の治療として、RPE置換が最近、一般的な焦点となっている。現代の幹細胞技術の進歩によって、胚性幹細胞(ESC)及びiPSCは魅力的な移植の候補となっている。複数の報告により、様々な分化培地を用いて両方の幹細胞源をRPE系に分化させることができることが示される(Sonoda等, Nat. Protoc., 4:662-673 (2009); Johnson等, Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015); Brandl等, NeuroMolecular Med., 16:551-564 (2014); Idelson等, Cell Stem Cell., 5:396-408 (2009); Carr等, Mol. Vis., 15:283-295 (2009))。ESC-RPEとiPSC-RPEの両方が、細胞マーカー、貪食、及び色素沈着を含む正常なRPE機能を示すことが示されている(Singh等, Ophthalmol. Vis. Sci., 54:6767-6778 (2013))。
【発明の概要】
【0005】
本書類は、iPSC及びRPEに関する。例えば、本書類はRPEを含有する組成物、並びに幹細胞(例えばiPSC)を培養し、増殖させ、分化させるための方法及び材料を提供する。例えば、本書類は、RPEを含有する組成物、並びに例えば幹細胞(例えばiPSC)からRPEを作製するための方法及び材料を提供する。本明細書に記載のように、ヒトフィブリノゲンは、ヒトに使用するためのiPSC-RPEの培養、分化及び製造のためのゼノフリー(xeno-free)(非異種)でcGMP(現行適正製造基準)に準拠した細胞接着基質として使用され得る。いくつかの場合、本明細書に提供される方法及び材料を実施するために、フィブリン(例えばフィブリンハイドロゲル)がフィブリノゲンの代わりに使用され得る。
【0006】
フィブリノゲンは、血液中の血栓形成に関与するタンパク質であるフィブリンの前駆体ポリペプチドである。フィブリノゲンは、ヒト血液中に約200~400mg/dLで見られる可溶性の340kDaのポリペプチドである。凝固カスケードが活性化されると、活性酵素トロンビンがフィブリノゲンから2つのフィブリノペプチドを切り分け、フィブリン単量体を与える。フィブリン単量体は、互いに非常に高い親和性を有し、重合して不溶性の3Dメッシュハイドロゲルを形成する。細胞外マトリックスタンパク質ではないが、他に記載のようにフィブリノゲンは培養の際一次血小板及び内皮細胞の接着を促進することが示されている(Spectre等, Thromb Haemost., 108: 328-37 (2012); Underwood等, J. Biomater Sci Polym Ed., 13: 845-62 (2002))。同様に、3Dメッシュハイドロゲルとしてのフィブリノゲンは、組織工学の応用のために使用されている。フィブリンゲルは、3次元(3D)メッシュ形成、非異種起源、生体適合性、及び生分解を含む非常に魅力的な特性を示す。例えば、フィブリンは、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)のような細胞と共に血管形成及び脈管化アッセイにおいて使用される(Mishra等 Biomaterials, 77:255-66 (2016))。
【0007】
概して、本書類の一態様は、網膜色素上皮単層を作製するための方法を特徴とする。該方法は、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、該細胞はフィブリノゲンと接触しており、該細胞は網膜色素上皮単層を形成する。該幹細胞は、誘導多能性幹細胞(例えばヒト誘導多能性幹細胞)であり得る。該容器は、培養皿(例えば培養フラスコ)であり得る。該表面は、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含み得る。該フィブリノゲンはヒトフィブリノゲンであり得る。該表面は、約3~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆され得る。該表面は、約15~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆され得る。該表面は、約25~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆され得る。該表面は、約50~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆され得る。該表面は、約75~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆され得る。該表面は、約1~約48時間前記フィブリノゲンで被覆され得る。該方法は、該細胞を約7~約90日間培養して該網膜色素上皮単層を形成することを含み得る。該方法はゼノフリーであり得る。
【0008】
他の態様では、本書類は、網膜色素上皮単層を含む網膜移植片を特徴とし、ここで、該網膜色素上皮単層は本明細書に記載の方法に従って製造されたものである。
【0009】
他の態様では、本書類は、眼の状態を治療するための方法を特徴とする。該方法は、網膜色素上皮単層を含む網膜移植片を哺乳動物の眼に移植することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該網膜色素上皮単層は本明細書に記載の方法に従って製造されたものである。該眼の状態は黄斑変性であり得る。該哺乳動物はヒトであり得る。
【0010】
他の態様では、本書類は、培養下で幹細胞を維持するための方法を特徴とする。該方法は、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該表面は250μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、該幹細胞は該フィブリノゲンと接触し、該幹細胞は少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する。該幹細胞は誘導多能性幹細胞であり得る。該幹細胞はヒト誘導多能性幹細胞であり得る。該容器は培養皿であり得る。該容器は培養フラスコであり得る。該表面は、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含み得る。該フィブリノゲンはヒトフィブリノゲンであり得る。該表面は、約250~約5000μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約300~約900μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約350~約750μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約400~約600μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約450~約550μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約1~約48時間、該フィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該方法は、約2日~約90日間、該細胞を培養することを含み得る。該方法はゼノフリーであり得る。該幹細胞は内皮細胞を形成し得る。該幹細胞は上皮細胞(例えばRPE細胞)を形成し得る。該フィブリノゲンは自家的に取得され得る。
【0011】
他の態様では、本書類は、培養下で幹細胞を維持するための方法を特徴とする。該方法は、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、該幹細胞は該フィブリノゲンと接触し、該幹細胞は少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する。該幹細胞は誘導多能性幹細胞であり得る。該幹細胞はヒト誘導多能性幹細胞であり得る。該容器は培養皿であり得る。該容器は培養フラスコであり得る。該表面は、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含み得る。該フィブリノゲンはヒトフィブリノゲンであり得る。該表面は、約100~約5000μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約300~約900μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約100~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約350~約750μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約400~約600μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約450~約550μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約1~約48時間、該フィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該方法は、約2日~約90日間、該細胞を培養することを含み得る。該方法はゼノフリーであり得る。該幹細胞は内皮細胞を形成し得る。該幹細胞は上皮細胞(例えばRPE細胞)を形成し得る。該フィブリノゲンは自家的に取得され得る。
【0012】
他の態様では、本書類は、培養下で幹細胞を維持するための方法を特徴とする。該方法は、フィブリンハイドロゲルで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該フィブリンハイドロゲルは0.5mg/mLを超えるフィブリノゲンで形成されたものであり、該幹細胞は該フィブリンハイドロゲルと接触し、該幹細胞は少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する。該幹細胞は誘導多能性幹細胞であり得る。該幹細胞はヒト誘導多能性幹細胞であり得る。該容器は培養皿であり得る。該容器は培養フラスコであり得る。該表面は、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含み得る。該フィブリノゲンはヒトフィブリノゲンであり得る。該フィブリンハイドロゲルは、約0.5mg/mL~約80mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成されたフィブリンハイドロゲルであり得る。該フィブリンハイドロゲルは、約10mg/mL~約50mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成されたフィブリンハイドロゲルであり得る。該フィブリンハイドロゲルは、約25mg/mL~約35mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成されたフィブリンハイドロゲルであり得る。該フィブリンハイドロゲルは、0.5~500U/mLのトロンビンを用いて重合されたフィブリンハイドロゲルであり得る。該フィブリンハイドロゲルは、抗フィブリン溶解剤を含み得る。該抗フィブリン溶解剤は、約0.5mg/mL~約50mg/mLの濃度のトラネキサム酸であり得る。該抗フィブリン溶解剤は、約0.1U/mL~約40U/mLの濃度のアプロチニンであり得る。
【0013】
他の態様では、本書類は、内皮細胞を作製するための方法を特徴とする。該方法は、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含むか、又はそれから本質的に成り、ここで、該表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、該幹細胞は該フィブリノゲンと接触し、該幹細胞は内皮細胞を形成する。該幹細胞は誘導多能性幹細胞であり得る。該幹細胞はヒト誘導多能性幹細胞であり得る。該容器は培養皿であり得る。該容器は培養フラスコであり得る。該表面は、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含み得る。該フィブリノゲンはヒトフィブリノゲンであり得る。該表面は、約3~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約15~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約25~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約50~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約75~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該表面は、約1~約48時間、該フィブリノゲンで被覆された表面であり得る。該方法は、約7日~約90日間、該細胞を培養して内皮細胞を形成することを含み得る。該方法はゼノフリーであり得る。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料に類似の、又はそれらと均等な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用され得るが、以下に適切な方法及び材料を記載する。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が支配する。さらに、該材料、方法及び実施例は説明を助けるためだけのものであり、限定されることを目的とするものではない。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を0.1μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞はオルガノイドを形成し、付着しなかった。単層は観察されなかった。
【
図2】
図2は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を0.5μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞はオルガノイドを形成し、付着しなかった。単層は観察されなかった。
【
図3】
図3は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を1μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、約70%未満コンフルエントであるパッチ状の単層を形成した。
【
図4】
図4は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を5μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、大きなパッチ(矢印)を有する概ねコンフルエントな単層を形成した。
【
図5】
図5は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を10μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、大きなパッチ(矢印)を有する概ねコンフルエントな単層を形成した。
【
図6】
図6は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を15μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、時折パッチ(矢印)を有するコンフルエントな単層を形成した。
【
図7】
図7は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を25μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。
【
図8】
図8は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を50μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。
【
図9】
図9は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を75μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。
【
図10】
図10は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を100μg/mLのフィブリノゲンで被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。
【
図11】
図11は、7日間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に1×10
5個の細胞を、陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(Matrigel)で被覆した96ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。
【
図12】
図12は、プレートを被覆するのに使用したフィブリノゲンの濃度(μg/mL)に対し、培養の7日後のプレーティングしたiPSC-RPE細胞のコンフルエンシーパーセントをプロットしたグラフである。25~100μg/mLのフィブリノゲンではコンフルエントな単層が達成され、5~15μg/mLのフィブリノゲンでは少数のパッチを有するコンフルエントな単層が達成され、1μg/mLのフィブリノゲンでは不十分な単層しか達成されず、0.1~0.5μg/mLのフィブリノゲンでは有意な接着が達成されなかった。
【
図13】
図13は、1週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(右パネル)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(左パネル)で被覆した6ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。4× 対物。
【
図14】
図14は、1週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(右パネル)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(左パネル)で被覆した6ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。RPE細胞は、6角形のパターン形成を有する敷石状の外観を形成する。20× 対物。
【
図15】
図15は、6週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(右パネル)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(左パネル)で被覆した6ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。いずれの群においても、色素沈着した細胞の大きな領域が見られる。4× 対物。
【
図16】
図16は、6週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(右パネル)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(左パネル)で被覆した6ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。いずれの群においても、特徴的な色素沈着した、6角形にパターン化されたRPE細胞が見られる。20× 対物。
【
図17】
図17は、12週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞の写真を含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(右パネル)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(左パネル)で被覆した6ウェルプレートにプレーティングした。RPE細胞は、コンフルエントな単層を形成した。いずれの群においても、RPEは色素沈着しており、6角形状であるように見える。20× 対物。
【
図18】
図18は、12週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞のウェスタンブロットの写真である。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(フィブリノゲン被覆)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(マトリゲル被覆)で被覆したプレートにプレーティングした。MERTKは癌原遺伝子のチロシンタンパク質キナーゼMERを示し;RPE65はレチノイドイソメロヒドラーゼ(retinoid isomerohydrolase)を示し;Best1はBestrophin 1を示し;CRALBPはレチンアルデヒド結合タンパク質1(retinaldehyde-binding protein 1)を示し、B-アクチンはβアクチンポリペプチドを示す。
【
図19】
図19は、24時間にわたる培養培地へのVEGF及びPEDF分泌の濃度をプロットした棒グラフを含む。最初に5×10
6個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(Fg)又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(MG)で被覆したプレートにプレーティングし、12週間培養した。濃度はELISAを介して決定した。n=1。
【
図20】ヒトフィブリノゲン上で生育したiPSC-RPEの60日目の培養物。A)ヒトフィブリノゲン被覆したプレート上で生育したhiPSC-RPE細胞のT25フラスコ。B)Aに示したフラスコ中のhiPSC-RPEの顕微鏡写真。細胞の敷石状の外観及び色素沈着が観察された。焦点が合っていない領域は、単層による液体輸送から生じたドームである。C) RPEマーカーについてのProteinsimpleのWESを用いたウェスタンブロット。矢印は、表示したマーカーについてのバンドの位置を示す。
【
図21】ヒトフィブリノゲンで被覆したプレート上で生育したiPSC株における多能性の保持。A)ヒトフィブリノゲン上で生育した細胞について、フローサイトメトリーを用いて評価した多能性マーカー発現の一例。各パネルは2つのマーカーで染色したことを示す。B)フローサイトメトリーを用いて評価したiPSCの比較ゲーティング%(Geltrex対3種のヒトフィブリノゲン複製物)。C)免疫蛍光法による多能性マーカーの発現。D)STEMDIFF 3系統分化キット(Trilineage differentiation kit)(Stemcell Technologies)を用いた、ヒトフィブリノゲン上で生育したiPSCが3つすべての系統に分化する能力を保持することの実証。
【
図22】ヒトフィブリノゲンの凝固能(clottability)に対するTris-HCl濃度の影響。A)2mg/mLのフィブリノゲンを表示した濃度でTris-HCl、pH8.0中に希釈し、トロンビンの添加により凝固を刺激した。プレートリーダーを用いて透過率を決定した。B)凝固したフィブリンは、フィブリノゲン溶液よりも低い透過率を有する。Tris-HCl濃度≧250mMでは凝固は起きなかった。
【
図23】
図23は、iPSC-RPEでの貪食アッセイを用い、内在化桿体外節(ROS)のパーセント及びROSの総結合をプロットしたグラフを含む。1×10
5個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(3種の異なる調製物:Evicel (evi)、cryo1 (Aneg)及びcryo2 (Bpos))又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(MG)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングし、8週間培養した。N=3。
【
図24】
図24は、ウェスタンブロット解析を用い、相対的RPEマーカー発現をプロットしたグラフを含む。1×10
5個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(3種の異なる調製物:Evicel (evi)、cryo1 (Aneg)及びcryo2 (Bpos))又は陽性対照として200μg/mLのマトリゲル(MG)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングし、8週間培養した。N=3。
【
図25】
図25は、2週間分化培地で培養した後のiPSC-RPE細胞のウェスタンブロットの写真を含む。1×10
5個の細胞を、5、25又は100μg/mLのフィブリノゲン(それぞれFg5、Fg25及びFg100)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングした。
【
図26】
図26は、2週目から14週目まで分化培地で培養した後のiPSC-RPEにおけるRPEマーカーのウェスタンブロット定量のグラフを含む。1×10
5個の細胞を、5、25又は100μg/mLのフィブリノゲン(それぞれFg5、Fg25及びFg100)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングした。
【
図27】
図27は、48時間にわたる培養培地へのPEDF及びVEGF分泌の濃度をプロットしたグラフを含む。2週目から14週目にわたって、1×10
5個の細胞を、5、25又は100μg/mLのフィブリノゲン(それぞれFg5、Fg25及びFg100)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングした。濃度はELISAにより決定した。N=1。
【
図28】
図28は、8週間にわたって分化培地で培養した後のiPSC-RPEにおけるRPEマーカーのウェスタンブロット定量のグラフを含む。1×10
5個の細胞を、100μg/mLのフィブリノゲン(4つの異なるフィブリノゲン供給源:Evicel、stemCOAT、Tisseel及びMillipore)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングした。n=1。
【
図29】
図29は、12週間分化培地で培養した後のiPSC-RPEの写真を含む。1×10
5個の細胞(WiCellクローン4)を、様々な濃度のフィブリノゲン(6つのフィブリノゲン供給源:Tisseel、stemCOAT、Ethanol Precipitate 1、Sigma、Millipore及びEthanol Precipitate 2)で被覆した96ウェルプレートの各ウェル上にプレーティングした。記載した濃度は最も良い単層の外観を伴う最も低い濃度を表す。
【
図30】
図30は、2日間培養した後の、アプロチニン補充なしでmTESR培地中のフィブリン上で培養したiPSC細胞の写真を含む。iPSCコロニーは、30mg/mLフィブリノゲン及び100U/mLトロンビンで形成されたフィブリンハイドロゲルを有する12ウェルプレート上に、中程度の濃度(コンフルエントなプレートから1:10希釈)でプレーティングした。iPSCはコロニーとして現れる。
【
図31】
図31は、2日間培養した後の、50U/mL アプロチニンを補充してmTESR培地中のフィブリン上で培養したiPSC細胞の写真を含む。iPSCコロニーは、30mg/mLフィブリノゲン及び100U/mLトロンビンで形成されたフィブリンハイドロゲルを有する12ウェルプレート上に、中程度の濃度(コンフルエントなプレートから1:10希釈)でプレーティングした。iPSCはコロニーとして現れる。
【
図32】
図32は、フィブリノゲンの様々な調製物のSDS-PAGEゲルの写真を含む。レーン1は、分子量ラダーである;レーン2は、1:40希釈のエタノール沈殿させた(ethanol precipitated)フィブリノゲンである;レーン3は、1:30希釈のエタノール沈殿させたフィブリノゲンである;レーン4は、1:110希釈のevicel(寒冷沈殿させたフィブリノゲン)である;レーン5は、1:100希釈のevicelである;レーン6は、1:6希釈のエタノール沈殿させたフィブリノゲンの第2バッチである;レーン7は、1:8希釈のエタノール沈殿させたフィブリノゲンの第2バッチである;レーン8は、1:20希釈の寒冷沈殿させたフィブリノゲンである;レーン9は、1:25希釈の、プラスミノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子(von willebrand factor)、及びフィブロネクチンを除去した寒冷沈殿させたフィブリノゲンである;レーン10は、1:22希釈の除去した寒冷沈殿させたフィブリノゲンである。
【
図33】
図33A~Bは、様々な基質上で生育させたiPSCの多能性染色の写真を含む。A)evicel(寒冷沈殿させたフィブリノゲン)、エタノール沈殿させたフィブリノゲン(EPF)、及び陽性対照としてgeltrex上で培養したiPSCにおける多能性因子Oct4、Ssea4、Nanog及びTra1-60の免疫蛍光染色。B)培養被覆の3つの群間の多能性因子のFACS解析。
【
図34】
図34は、フィブリノゲン被覆したプレート上で生育させた異なるiPSC株、WiCellクローン4を用いた多能性マーカーの写真を含む。EPF上で培養したiPSCにおいて多能性因子Oct4、Ssea4、Nanog及びTra1-60について免疫蛍光を行った。
【
図35】
図35は、フィブリノゲン上で培養したiPSC(WiCellクローン4)の3系統分化解析のグラフを含む。内胚葉分化は、フィブリノゲン被覆したプレート上のiPSCの73.91±8.58%で成功した。中胚葉分化は、フィブリノゲン被覆したプレート上のiPSCの42.17±3.91%で成功した。外胚葉分化は、フィブリノゲン被覆したプレート上のiPSCの56.69±8.15%で成功した。
【
図36】
図36は、1日間内皮成長培地(Endothelial Growth Media)(EGM-2)中で培養した後の培養した未分化iPSC-ECの写真を含む。マトリゲル上でiPSC-ECを分化させ、次いで100μg/mLフィブリノゲンで被覆したT25フラスコ上に2.5×10
5個のiPSC-ECをプレーティングした。iPSC-ECは、円形の核を有する特徴的な紡錘形状で出現する。
【
図37】
図37は、1日間EGM-2中で培養した後フィブリノゲン被覆したプレート上で直接分化させたiPSC-ECの写真を含む。100μg/mLのフィブリノゲンで被覆したT25フラスコ上に2.5×10
5個のiPSC-ECをプレーティングした。iPSC-ECは、円形の核を有する特徴的な紡錘形状で出現する。
【
図38】
図38は、フィブリノゲン被覆したプレート上で分化させたiPSC-ECの写真を含む。CD31及びUEA-レクチン(UEA-Lectin)を含む内皮マーカーについて免疫蛍光染色を行った。CD31染色は、細胞表面上及び細胞質内、核周辺に出現する。UEA-レクチン染色は、細胞表面中に均一に出現する。
【
図39】
図39は、2日間培養した後の、補助剤なしでmTESR培地中、フィブリノゲン被覆したプレート上で培養したiPSC細胞の写真を含む。iPSCコロニーは、100μg/mL又は750μg/mLのフィブリノゲンで被覆した12ウェルプレート上に、中程度の密度(コンフルエントなプレートから1:10希釈)でプレーティングした。ここで使用したフィブリノゲンは、凍結されたヒト血漿のエタノール沈殿により取得した。iPSCはコロニーとして出現する。
【
図40】
図40は、3日間培養した後、補助剤なしでmTESR培地中、フィブリノゲン被覆したプレート上で培養したiPSC細胞の写真を含む。iPSCコロニーは、1mg/mLのフィブリノゲン又は陽性対照としてgeltrexで被覆した12ウェルプレート上に、高密度(コンフルエントなプレートから1:3希釈)でプレーティングした。ここで使用したフィブリノゲン(Evicel)は、寒冷沈殿により取得した。iPSCはコンフルエントな単層として出現する。
【
図41】
図41は、3系統分化を経た後のiPSCの免疫蛍光染色の写真を含む。EPF及びgeltrex培養細胞の両方について、FoxA2及びSox17染色を用いて内胚葉分化を確認した。EPF及びgeltrex培養細胞の両方について、CD31及びNCAM染色を用いて中胚葉分化を確認した。EPF及びgeltrex培養細胞の両方について、Nestin及びPax6染色を用いて外胚葉分化を確認した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本書類は、iPSC及びRPEに関する。いくつかの場合、本書類は、幹細胞(例えばiPSC)を培養し、増殖させ、分化させるための方法及び材料を提供する。例えば、本書類は、フィブリノゲン被覆を用いて幹細胞を培養し、増殖させ、分化させるための表面を作製するための方法及び材料を提供する。いくつかの場合、幹細胞は増殖及び(例えばRPEに)分化し得る。いくつかの場合、幹細胞は分化せずに増殖し得る。いくつかの場合、本書類は、RPEを含有する組成物、並びに幹細胞(例えばiPSC)を培養し、増殖させ、RPE細胞に分化させるための方法及び材料を提供する。例えば、本書類は、フィブリノゲン被覆を用いて、幹細胞がRPE単層を形成するための表面を作製するための方法及び材料を提供する。本明細書に記載のように、フィブリノゲンは、ゼノフリー(非異種)の方法においてRPE単層形成のための基質として使用され得る。例えば、ヒトRPE単層を作製するために使用されるすべての動物由来成分は、ヒトに由来し得る。さらに、本明細書に記載のように形成されたRPE単層は、RPE移植片を作製するために使用され得る。RPE移植片は、網膜変性又は黄斑変性等の眼の状態を治療するために使用され得る。いくつかの場合、本明細書で提供されるRPE単層又はRPE移植片は、RPEが扁平な皺のない単層であるように設計され得る。
【0018】
任意の適切な方法が、RPE単層を作製するためのフィブリノゲンを製造するために使用され得る。例えば、フィブリノゲンは、血液製剤から単離(例えばヒト血液から単離)されてもよく、又は組換え技術を用いて製造されてもよい。いくつかの場合、フィブリノゲンは、例えばBaxter International (Tisseel)、Ethicon Inc (Evicel)又はCSL Behring (RiaSTAP)から市販されている。例えば、フィブリノゲンはハイドロゲルとして形成され得る。いくつかの場合、フィブリノゲンハイドロゲルは、フィブリノゲン(例えばフィブリノゲン溶液)をトロンビン(例えばトロンビン溶液)と混合することにより形成され得る。いくつかの場合、フィブリノゲンハイドロゲルはまた、抗フィブリン溶解剤(例えばアプロチニン及びトラネキサム酸)を含み得る。
【0019】
任意の適切な方法がフィブリノゲンで表面を被覆するために使用され得る。例えば、細胞培養容器の表面は、ある時間フィブリノゲンを含有する溶液に該表面を曝すことによって、フィブリノゲンで被覆され得る。フィブリノゲンで表面を被覆するために、任意の適切な濃度のフィブリノゲンが使用され得る。例えば、約3μg/mL~約1000μg/mL(例えば、約5μg/mL~約500μg/mL、約15μg/mL~約500μg/mL、約25μg/mL~約500μg/mL、約5μg/mL~約250μg/mL、約5μg/mL~約150μg/mL、約5μg/mL~約100μg/mL、約15μg/mL~約100μg/mL、約25μg/mL~約100μg/mL、又は約50μg/mL~約100μg/mL)のフィブリノゲンを含有する溶液が、フィブリノゲンで表面を被覆するために使用され得る。いくつかの場合、フィブリノゲンを含有する溶液は、約1時間~約72時間(例えば、2時間~約72時間、4時間~約72時間、6時間~約72時間、2時間~約48時間、2時間~約24時間、6時間~約48時間、又は6時間~約24時間)、被覆されている表面に曝され得る。いくつかの場合、スプレー被覆、スパッタ被覆、スピン被覆、又は浸漬被覆法が、フィブリノゲンで表面を被覆するために使用され得る。
【0020】
例えば、細胞培養容器の表面は、該表面上にフィブリンハイドロゲルを形成することによって、フィブリノゲンで被覆され得る。任意の適切な濃度のフィブリノゲンハイドロゲルが、フィブリノゲンで表面を被覆するために使用され得る。いくつかの場合、フィブリンハイドロゲルは、フィブリノゲン含有溶液をトロンビン含有溶液と混合することにより形成され得る。例えば、約1mg/mL~約100mg/mL(例えば、約1mg/mL~約80mg/mL、約1mg/mL~約75mg/mL、約1mg/mL~約60mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、約1mg/mL~約35mg/mL、約1mg/mL~約25mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約15mg/mL~約100mg/mL、約25mg/mL~約100mg/mL、約40mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約100mg/mL、約60mg/mL~約100mg/mL、約70mg/mL~約100mg/mL、約85mg/mL~約100mg/mL、約10mg/mL~約85mg/mL、約25mg/mL~約75mg/mL、約40mg/mL~約60mg/mL、約20mg/mL~約40mg/mL、約30mg/mL~約50mg/mL、又は約60mg/mL~約80mg/mL、)のフィブリノゲンを含有する溶液が、約1U/mL~約1,000U/mL(例えば、約15U/mL~約1,000U/mL、約25U/mL~約1,000U/mL、約50U/mL~約1,000U/mL、約100U/mL~約1,000U/mL、約250U/mL~約1,000U/mL、約500U/mL~約1,000U/mL、約750U/mL~約1,000U/mL、約900U/mL~約1,000U/mL、約1U/mL~約750U/mL、約1U/mL~約500U/mL、約1U/mL~約250U/mL、約1U/mL~約100U/mL、約1U/mL~約75U/mL、約1U/mL~約50U/mL、約50U/mL~約800U/mL、約100U/mL~約600U/mL、約200U/mL~約500U/mL、約300U/mL~約400U/mL、約100U/mL~約300U/mL、又は約500U/mL~約750U/mL)のトロンビンを含有する溶液と混合され得る。例えば、フィブリノゲンを含有する溶液は、約1:0.25~約1:200(例えば、約1:0.25~約1:150、約1:0.25~約1:100、約1:0.25~約1:75、約1:0.25~約1:50、約1:0.25~約1:25、約1:0.25~約1:10、約1:0.25~約1:5、約1:0.25~約1:1、約1:0.25~約1:0.5、約1:0.5~約1:200、約1:1~約1:200、約1:10~約1:200、約1:25~約1:200、約1:50~約1:200、約1:75~約1:200、約1:100~約1:200、約1:150~約1:200、約1:175~約1:200、約1:1~約1:150、約1:25~約1:100、約1:50~約1:100、約1:25~約1:75、又は約1:100~約1:150)の比率でトロンビンを含有する溶液と混合され得る。いくつかの場合、表面上に形成されるフィブリンハイドロゲルは再水和され得る。例えば、フィブリンハイドロゲルは、再水和の前約10分~約24時間(例えば、約30分~約24時間、約1時間~約24時間、約2時間~約24時間、約6時間~約24時間、約12時間~約24時間、又は約18時間~約24時間)、被覆されている表面上に形成され得る。いくつかの場合、フィブリノゲンを含有する溶液及び/又はトロンビンを含有する溶液はまた、抗フィブリン溶解剤(例えばアプロチニン及びトラネキサム酸)を含み得る。いくつかの場合、スプレー被覆、スパッタ被覆、スピン被覆、又は浸漬被覆法が、フィブリノゲンを含有する溶液及びトロンビンを含有する溶液で表面を被覆するために使用され得る。
【0021】
いくつかの場合、細胞培養容器の表面はまた、細胞外マトリックスタンパク質等の1以上の追加の分子で被覆され得る。例えば、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ゼラチン、エラスチン、ラミニン、又はそれらの任意の組み合わせが、細胞培養容器の表面を被覆するために使用され得る。
【0022】
細胞培養容器の表面が本明細書に記載のようにフィブリノゲンで被覆されると、幹細胞はフィブリノゲンと接触して置かれ、培養され得る。任意の適切な幹細胞が使用され得る。例えば、胚性幹細胞(例えばヒト胚性幹細胞)、誘導多能性幹細胞(例えばヒト誘導多能性幹細胞)、又は成人幹細胞(例えば間葉系幹細胞及び脂肪由来幹細胞)が使用され得る。幹細胞は、単一細胞(例えば単細胞懸濁液)、コロニー、又はスフェロイドとして、フィブリノゲンと接触して置かれ得る。いくつかの場合、幹細胞は、本明細書に記載のようにフィブリノゲンで被覆された細胞培養容器の新鮮な表面上に継代され得る。例えば、幹細胞は、細胞培養容器の表面から解離され、本明細書に記載のようにフィブリノゲン及び任意で1以上の追加の分子(例えばコラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ゼラチン、エラスチン、又はそれらの任意の組み合わせ)で被覆された新鮮な細胞培養容器表面上に再度プレーティングされ得る。幹細胞の継代は、幹細胞(例えばiPSC)の数を増大させるのに効果的であり得る。例えば、幹細胞の継代は、(例えばRPE単層を形成することができるRPE細胞に)分化し得る幹細胞の数を増大させるのに効果的であり得る。いくつかの場合、幹細胞(例えばiPSC)が分化する場合、幹細胞は任意の適切な種類の細胞に分化し得る。幹細胞は、任意の胚葉(例えば内胚葉細胞、中胚葉細胞、又は外胚葉細胞)の細胞に分化し得る。幹細胞は、任意の適切な種類の細胞に分化し得る。例えば、幹細胞は、血管内皮に分化し得る。例えば、幹細胞はに分化し得る。例えば、幹細胞は上皮細胞(例えばRPE細胞)に分化し得る。幹細胞を(例えばRPE単層を形成することができるRPE細胞に)分化させるために、任意の適切な分化プロトコルが使用され得る。幹細胞(例えばiPSC)を、RPE単層を形成することができるRPE細胞に分化させるために使用され得る分化プロトコルの例には、限定されないが、他に記載の技術が含まれる(例えばSonoda等, Nat. Protoc., 4:662-673 (2009); Johnson等, Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015); Brandl等, NeuroMolecular Med., 16:551-564 (2014); Idelson等, Cell Stem Cell., 5:396-408 (2009);及びCarr等, Mol. Vis., 15:283-295 (2009)を参照されたい)。RPE単層が形成されると、それは眼の状態を治療するためのRPE移植片を作製するために使用され得る。
【0023】
本書類はまた、高度近視、網膜色素線条及び黄斑変性等の眼の状態を治療するために本明細書に提供されるRPE単層又はRPE移植片を用いるための方法を提供する。黄斑変性として分類され、かつ本明細書に記載のように治療され得る疾患の一部には、限定されないが、加齢黄斑変性(AMD)、中心地理的萎縮(central geographic atrophy)、ベストロフィノパチー、レーバー先天性黒内障、コロイデレミア(choroideremia)、脳回転状萎縮(Gyrate atrophy)、ソースビー黄斑変性、ミトコンドリア遺伝性糖尿病及び難聴(mitochondrial-inherited diabetes and deafness、MIDD)、クロロキン関連網膜症、マラチアレベンティニーズ(malattia leventinese)、ノースカロライナジストロフィー(North Carolina dystrophy)、高オルニチン血症、中心性漿液性脈絡網膜症、成人発症中心窩黄斑ジストロフィー(foveomacular dystrophy)、及びシュタガルト病(Stargardt’s disease)が含まれる。例えば、哺乳動物(例えばヒト)が眼の手術のために準備され得、損傷したRPE領域を露出させるために網膜下剥離(sub-retinal detachment)が行われ得る。この時点で、本明細書に提供されるRPE移植片を目的の領域上に送達するために移植装置が使用され得る。いくつかの場合、眼に近づけるためにカニューレが使用され得る。いくつかの場合、気層泡(air-phase bubble)がRPE移植片を所定の場所に押し付けるために使用され得る。レーザー光凝固によって移植片を固定し滑らないようにするためにレーザーツール(例えば糖尿病性網膜症のために使用されるレーザーツール)が使用され得る。この時点で、本明細書で提供される第2のRPE移植片を眼内部の目的の領域上に送達するために移植装置が使用され得る。第2の移植片は、第1の移植片に隣接して、好ましくは最初の切開部又はカニューレを通して配置され得る。第2の移植片を固定し滑らないようにするためにレーザーツールが使用され得る。本明細書で提供される第3のRPE移植片を眼内部の目的の領域上に送達するために移植装置が使用され得る。第3の移植片は、
第2の移植片に隣接して、好ましくは最初の切開部又はカニューレを通して配置され得る。第3の移植片を固定し滑らないようにするためにレーザーツールが使用され得る。本セクションでは、3個のRPE移植片を移植することが記載されるが、治療される部位をカバーするために任意の適切な数が使用され得る。例えば、1、2、3、4、5、6又はそれ以上の本明細書で提供されるRPE単層/フィブリン移植片が、治療される単一の眼内に移植され得る。概して、このモジュラータイリングアプローチ(modular tiling approach)は、臨床医が患者の必要に応じて移植片を個別化することを可能とすることができ、広範な部位に拡張可能であり、網膜の任意の領域に適用可能であり、必要な切開の数を低減させる。
【0024】
本発明は以下の実施例においてさらに説明されるが、実施例は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0025】
[実施例1-フィブリノゲンを使用してiPSC-RPE単層を形成]
<化学製品>
フィブリノゲンは3種の供給源から入手した: EvicelとしてEthiconから(60 mg/mL)、TisseelとしてBaxterから(95 mg/mL)、研究グレードの材料としてSigma-Aldrich(57 mg/mL)及びMillipore(44 mg/mL)から。最終的な使用濃度は、PBSを用いて0~1mg/mLの濃度範囲に形成した。
【0026】
<被覆プロトコル>
他に記載のようにマトリゲル被覆プレートを陽性対照として利用した(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015))。ストックのフィブリノゲンをPBS中に希釈することにより様々な濃度のフィブリノゲンを調製し、様々な大きさのウェル上にプレーティングし4~37℃に1~24時間置いた。続いてPBSで洗浄した後、細胞を様々な濃度(0.1×106~1×106細胞/cm2)でプレーティングし、5% CO2下、37℃でインキュベートした。接着及び生存能力について経時的に細胞を観察した。
【0027】
<細胞>
継代1又は2の部分的に分化したiPSC-RPEをLAgen Laboratories LLC (Rochester, MN)から取得した。最初の分化過程は、変更を加えながら他に記載のように行った(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015))。最初にコラゲナーゼで消化することによりプレートから細胞を解離させ、次いでaccumaxで細胞懸濁液を作製し、フィブリノゲン又はマトリゲルで被覆した組織培養ポリスチレン(TCPS)又はポリカーボネート上に様々な濃度(0.1×106~1×106細胞/cm2)で再度プレーティングした。細胞は他に記載のように分化培地と共に培養した(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015))。
【0028】
<分化>
プレーティングした細胞の明視野画像を撮り、分化過程中様々な時点で細胞の形態を評価した。2週間の培養後、様々な時点におけるウェスタンブロット解析及びELISAによる成長因子分泌によって、RPE細胞の完全な分化を評価した。
【0029】
ウェスタンブロット解析は、RPE65、Best1、CRALBP、MERTK及びβアクチンを含む特定のRPEマーカーについて、ProteinSimple Wes機器(ProteinSimple, San Jose, CA)を用いて達成した。成長因子分泌はELISAにより定量した。6~12週間の培養後、試験の前に24~48時間の使用済み培地を回収し-20℃で凍結した。ELISAは、回収した培地と共に市販のキット(DuoLISA, RND Systems)を用いてVEGF及びPEDFについて行った。
【0030】
<結果>
1週間0.1~0.5μg/mLのフィブリノゲンで被覆したプレート上で培養した細胞はプレートに接着しなかったか、又は十分に付着しなかった(
図1及び
図2)。1週間1μg/mLのフィブリノゲンで被覆したプレート上で培養した一部の細胞は付着したが、単層形成は不十分であった(
図3)。1週間5~15μg/mLのフィブリノゲンで被覆したプレート上で培養した細胞は、パッチ状の単層の形成をもたらした(
図4~6)。1週間25μg/mL以上のフィブリノゲンで被覆したプレート上で培養した細胞は、コンフルエントな単層を形成した(
図7~10)。
図7~10に示す単層は、陽性対照を用いて得た単層(
図11)と類似していた。
図12も参照されたい。
【0031】
部分的に分化したiPSC-RPE細胞を用いて形成し、100μg/mLのフィブリノゲン又は200μg/mLのマトリゲル(即ち陽性対照)で被覆したプレート上で1週間(
図13~14)、6週間(
図15~16)、又は12週間(
図17)培養した単層は、互いに区別できない単層をもたらした。これらの単層は、6週間以内に特徴的なRPE形態(色素及び「敷石状」の外観)を示した。さらに、100μg/mLのフィブリノゲン又は200μg/mLのマトリゲル(即ち陽性対照)で被覆したプレートを用いて培養した細胞は、12週間の培養後、同等なタンパク質発現プロファイルを示した(
図18)。両方の培養物から得た24~48時間培養の上清はまた、RPE細胞に特徴的な高レベルの分泌されたVEGF及び色素上皮由来因子(PEDF)を含有した(
図19)。これらの結果は、フィブリノゲンが健全な生存能力のあるiPSC-RPE単層を形成するための基質として使用され得ることを実証する。
【0032】
以下の供給源から得たフィブリノゲン調製物を試験した:Ethicon (Evicel)、Baxter (Tisseel)、Sigma-Aldrich、Millipore、及び寒冷沈殿物及びエタノールから作製した抽出物。プレートの被覆の効率及び必要とされる最小濃度に関して相違が観察された(表1)。さらに、Sigma-Aldrich又はMillipore/EMDから得たフィブリノゲンは、iPSCの適切な付着を支持しなかった。これらの製品は、凍結乾燥された粉末として取得し、使用前に再構成した。このことは、凍結乾燥がフィブリノゲンを被覆材料として用いる能力に影響し得ることを示唆する可能性がある。しかし、Tisseelは、同様に凍結乾燥から再構成したが、iPSC-RPEの適切な付着を可能とした。絶対的なフィブリノゲンレベルと様々な市販の調製物の有効性との相関関係は観察されなかった。凍結乾燥(lyophilization)過程/調製中、又は長期間の保管後、特に適切な凍結-乾燥(freeze-drying)過程及び/又は凍結-凍結乾燥保護剤(cryo-lyoprotectant)の不存在下でタンパク質変性が起こり得る。従って、組織培養のための表面被覆として使用するために、並びに3D細胞培養に使用され得るハイドロゲルの製造に使用するために特別に調製されるヒトフィブリノゲン市販製剤を最適化すること、又は細胞療法適用のための足場を開発することは有益であり得る。
【0033】
【0034】
<貪食結果>
貪食アッセイは、他に記載のように行った(Marmorstein等, Sci. Rep., 8:4487 (2018))。iPSC-RPEを様々なフィブリノゲンの供給源:evicel及び2つの別個の寒冷沈殿物(Aneg及びBpos)上で生育させた。マトリゲル被覆を陽性対照として使用した。evicel(Evi)上で培養したRPEは、マトリゲルと同様の総OS結合を示したが、Aneg及びBposは総OS結合の約2倍の増大を示した(
図23)。結合すると、Aneg(67%)及びBpos(57%)は、MG(55%)と同様の内在化比率を示したが、Evi(14%)はMGより有意に低かった(p=0.009)。
【0035】
<ウェスタンブロット解析結果>
様々な被覆試薬上で生育したRPEについて、RPE65、CRALBP及びBEST1発現のウェスタンブロット比較を行った(
図24)。フィブリノゲンベースの基質は、内部βアクチンシグナルに対し標準化した場合、マトリゲル対照に比べ、RPE65及びBest1の発現の増大を示した。CRALBPはすべての群間で相違を示さなかった。
【0036】
フィブリノゲン被覆したプレート上で生育したiPSC-RPEは、プレーティングの2週間後、早くもRPE65、Best1、CRALBP及びMERTKを含む特徴的なRPEマーカーを発現した(
図25)。マトリゲル被覆したプレートは、典型的にはRPE65及びBest1発現の前に6~8週間を要した。3つの異なるフィブリノゲン被覆濃度(5、25、及び100μg/mL)について経時的にウェスタンブロットを解析した(
図26)。4つのマーカー各々は、8週目付近で最大となり10週目後安定であるように見えた。3つの被覆濃度の間には標準化された相違はなかったが、5μg/mL条件は常にコンフルエントな単層をもたらすわけではなかった。
【0037】
同様に、PEDF及びVEGF分泌の経時変化を、ELISAを用いて測定した(
図27)。PEDFは、2週目~14週目まで、濃度が増大するという全体的な傾向を示し、10週目に最大値となった。被覆濃度の間で相違は顕著ではなかった。VEGFは、6週目から14週目まで、経時的に全体的な分泌の増大を示した。5μg/mL被覆濃度におけるVEGF放出は、25及び100μg/mL条件に比べ、低下しているように見えた。
【0038】
100μg/mL濃度の様々な市販のフィブリノゲン供給源上で培養したRPEにおけるRPEマーカー発現を比較した(
図28)。Evicel及びstemCOATは、Tisseel及びMiliporeを含む試験したすべての他の供給源よりも優れていた。Sigmaは100μg/mLでiPSC-RPEを付着させず、ウェスタンブロット解析に含めなかった。
【0039】
同様に、様々なフィブリノゲン供給源上で培養したWiCellクローン4由来iPSC-RPEの透過光写真を取得した(
図29)。Tisseel、stemCOAT、EPF1及びEP2は色素沈着した単層のコンフルエントな形成を示した。特に、EPF2は、わずか4μg/mLで単層の接着を完全に示した。2mg/mLもの濃度を含むすべての試料において空隙が検出されたため、SigmaとMiliporeのフィブリノゲンはいずれもコンフルエントな単層をもたらさなかった。
【0040】
[実施例2-網膜色素上皮単層形成のためのプロトコル]
ヒトフィブリノゲン(例えばEvicel、60mg/mL)を、DPBSを用いて100μg/mLに希釈する。2mLを6ウェルプレートのウェル上にプレーティングする。プレートを4℃で一晩インキュベートする。フィブリノゲン溶液を吸引し、プレートをDPBSで3回洗浄する。ヒトの部分的に分化したiPSC-RPE(継代2)を、1×106細胞/cm2の濃度でウェル上にプレーティングする。細胞を、接着させるために37℃、5% CO2で一晩インキュベートする。細胞は、他に記載のように分化培地中にプレーティングする(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015))。培地交換は1日置きに約8週まで行う。分析又は使用のために、細胞を回収し調製する。
【0041】
このプロトコルによって、ゼノフリーの被覆材料を用いたヒトの眼に移植するのに適したRPE細胞及びRPE単層が製造され得る。例えば、RPE単層は外科的な送達装置に載せられ、ヒトの眼が手術のために準備される。準備後、RPE単層は眼の網膜下腔に移植される。
【0042】
[実施例3-iPSCを培養し分化させるためのフィブリノゲン被覆の使用]
ヒトフィブリノゲンで組織培養プラスチック製品を被覆するための、及び3Dヒトフィブリンハイドロゲルを製造するための、再生産可能な品質管理された製品を開発するために、以下を行った。製品を、iPSC培養を維持する能力を有するか否か、及び様々な細胞種、例えばRPE、内皮、及び心筋細胞にiPSCを分化させるのに使用される能力を有するか否かについて、評価した。
【0043】
本明細書に記載のように、ヒトフィブリノゲンは、iPSCをRPE細胞に分化させるために効果的な被覆として機能した。
図20A~Cもまた、参照されたい。iPSCのRPEへの分化の過程においてどの程度ヒトフィブリノゲンを組織培養プラスチック製品のための被覆として使用できるか検証するために、以下を行った。エタノール沈殿及び寒冷沈殿の両方から取得したヒトフィブリノゲンで被覆したプレート上で生育したヒトiPSC株006-BIOTR-0001、クローン1(Cl1)は、Geltrex(登録商標)上で生育したcl1細胞に匹敵するレベルで多能性マーカーの発現が継続したことによって判定されるように、その多能性を維持した(
図21A~C)。さらに、細胞は、3系統分化エンドポイントアッセイ(trilineage differentiation endpoint assay)を用いた内胚葉、中胚葉、及び外胚葉への分化誘導を受ける能力を保持した(
図21D)。これらの結果は、ヒトフィブリノゲンが、ヒトiPSCの成長、増殖及び分化において使用される組織培養プラスチック製品のための広く適用可能な非異種被覆として使用され得ることを実証する。
【0044】
研究グレードのヒトフィブリノゲンは、典型的には凍結乾燥製品として販売される。製造業者間の製造の相違に起因する材料の変性は、全フィブリノゲンに対する凝固可能なものの比率に影響を与える。また、製造業者間には、残存緩衝液及び塩濃度並びに絶対的な純度の相違もある。最後に、無菌であること、又は製品にマイコプラズマ若しくは他の病原体が含まれないことは保証されていない。これらの変数は、これらの材料から形成されるフィブリンハイドロゲルの特性に影響し、一貫した結果を得ることを困難とし、組織培養のための表面を被覆するために使用された場合の濃度及び効率の有意な相違をもたらす。再生産可能なヒトフィブリンハイドロゲルを生成するための、及び組織培養プラスチック製品を再生産可能な方法で被覆するための再生産可能な品質管理されたヒトフィブリノゲン製品を開発するために、以下を行う。
【0045】
ヒト血漿寒冷沈殿物を出発材料として用いて、高度に濃縮されたフィブリノゲン濃縮物を製造する。フィブリノゲン濃縮物を、純度、凝固能、無菌性、及び他の基準について評価する。ロット試験後、該フィブリノゲンは、フィブリンゲルを生成するために用いられ、本明細書に記載のようにiPSC-RPEの生育を支えることが期待される。成功した場合、該材料をプレートの被覆に使用するために滴定する。
【0046】
ヒト血漿寒冷沈殿物は、凍結された血漿を4℃でゆっくりと解凍させることによって、調製する。フィブリノゲン、凝固因子、及びフィブロネクチンは血液バッグ中で沈殿し、遠心分離機で沈降する白い「ペレット」を形成する。該材料は、血液バンクから直接取得し、該ペレットを有したままの約10~20mLの血漿で凍結した状態で通常供給される。臨床的に、該血漿は(例えば血友病患者への)治療的投与のためのペレットを再構成するために使用される。この手順は以下の通りである:寒冷沈殿物を一晩4℃で解凍し、余分な血漿を除去する。ペレットを氷冷した滅菌食塩水中で2回洗浄し、余分な血漿タンパク質を除去する。その後、ペレットを5mLの250 mM Tris-HCl、pH 8.0中に可溶化させる。約5mLの体積を有する寒冷沈殿ペレットの1単位は、約500~約1500mgのフィブリノゲンを含有するよう設計し、可溶化後、125 mM Tris-HCl、pH 8.0中50~150mg/mLフィブリノゲンの最終濃度で10mL体積中に溶解する。pH8.0のこの濃度のTris-HClは、凝固能を阻害することなく非常に高い濃度までフィブリノゲンを溶解することが確認された(
図22A~B)。フィブリンハイドロゲルの製造のためには、この濃度が望ましい。細胞培養のための表面の被覆のためにはより希薄な濃度が望ましく、決定される。Stago Start凝固アナライザー(Stago, France)上でvon Clauss法(Mackie等, Br. J. Haematol., 121(3):396-404 (2003); 及びMachin等, BMJ,307(6909):882-3 (1993))を用いて凝固可能なフィブリノゲンを決定した後、フィブリノゲンを適切な濃度に希釈し、0.22μmフィルターを通して濾過し、10及び50mLボトルに無菌で分注する。該製造過程は、必要に応じて規模拡大する。
【0047】
追加のロット試験を行う。血液バンクは、FDA CFR 21-1271に従ってドナーをスクリーニングし、HIV、HTLV、ジカ(Zika)、ウエストナイルウイルス、B型肝炎、及びC型肝炎について提供された血液を直接試験する。ヒト病原体についてのこれらの試験に加え、pH、ビウレットアッセイを用いて総タンパク質濃度、ブロムクレゾールパープルを用いてアルブミン濃度、及びAMP(登録商標)マイコプラズマ検出キット(Sartorius, Gottingen, Germany)を用いてマイコプラズマについて、製造したフィブリノゲンのロットをインハウスでアッセイする。無菌性は、Steris (Mentor, OH)によりUSP <71>標準に従って各ロットについてアッセイされる。エンドトキシン試験を行う。
【0048】
Geltrex(登録商標)及びMatrigel(登録商標)は、約80%の純度まで濃縮されたマウスラミニンを主に含有する。本明細書に記載のように製造するフィブリノゲン調製物は、同様のフィブリノゲン純度を達成するよう設計する。未加工の寒冷沈殿物は、典型的には約65%のフィブリノゲンから構成される。さらなる濃縮のために、プロタミン、グリシン、及び/又は冷エタノールでの沈殿工程を製造方法に組み込む。
【0049】
出発材料は臨床グレードの寒冷沈殿物である。それは無菌で届けられ、おそらくマイコプラズマを含まない。調製工程はクリーンルーム中で行う。最後に、プレート被覆のために用いる希釈したフィブリノゲン調製物を、0.22μmフィルターを通して滅菌濾過し、ボトルに詰める。
【0050】
好結果のフィブリノゲン調製物を決定し、最初の凝固可能フィブリノゲン濃度が>5mg/mLであり、純度が70%を超えるヒトフィブリノゲンのロットを製造する。材料は、無菌試験に合格するように設計し、マイコプラズマフリーであるように設計し、7.9~8.1のpHを有するように設計し、iPSC-RPE細胞を含むiPSCの成長及び分化を支えるゲルを形成するように設計する。
【0051】
他に記載のように(Gandhi等, Acta Biomater., 67:134-146 (2018))、ゲルを形成できるか否かについて製造したフィブリノゲンを試験し、iPSC-RPEが、製造したゲルに付着できるか否か判定する。特に、iPSCを継代するための、及びiPSCをRPE、内皮、及び心筋細胞に分化させるための被覆として、製造したフィブリノゲンを、Geltrex(登録商標)、Matrigel(登録商標)、及び組換えヒトラミニン521と並べて比較する。その実験を用いて、iPSC及びiPSC由来の細胞種の培養において、製造したフィブリノゲン製品がラミニンに置き換わるよう機能し得ることを実証する。
【0052】
iPSCの付着及び成長のためのプレート被覆についての滴定として、以下を行う。本明細書に記載のように、取得したデータは、単にフィブリノゲン溶液をプレートに添加し37℃で1時間インキュベートすることによってプレート被覆が達成されることを実証した。完了した研究では、100μg/mLのフィブリノゲンをiPSC-RPEの培養のために使用したが、これはiPSC接着には十分でなかった。
図21A~Dに示されるように、プレートを、500μgフィブリノゲン/mLを含有する溶液で、250μL/cm
2の体積を用いて被覆した。本明細書に示されるヒト血漿から調製した最初のフィブリノゲン調製物、及び臨床フィブリン組織「グルー(glue)」から取得したフィブリノゲンについては奏功した。それは、凍結乾燥された粉末として供給されるSigma-Aldrich又はMillipore/EMDから取得した研究グレードのフィブリノゲンについては、機能しなかった。
【0053】
iPSC及びiPSCから分化した細胞の培養に必要な凝固可能フィブリノゲンの最小濃度を決定するために、以下を行う。フィブリノゲンを本明細書に示されるように調製し、2mg/mLの濃度に希釈する。一連の2倍連続希釈液を0.03125mg/mLの低濃度まで調製し、3枚の12ウェルマルチウェルプレート各々の9ウェルをこれらの溶液で被覆する。各プレートの残りの3ウェルを、過去に機能することが示された希釈度/濃縮度を用いてGeltrex(登録商標)(42μg/mL)、Matrigel(登録商標)(2mg/mL)、又はヒトラミニン521(30μg/mL)で被覆する。被覆後、iPSCを各プレートの各ウェル中にプレーティングする。ウェル全体を毎日撮影し、Molecular DevicesのMinimax 300サイトメーター付属物を備えたSpectramax 3を用いてコロニーを計数する。毎日自然分化しているように見えるiPSCコロニーを手動で清掃又は除去することができる。しかし、この実験については、ウェルは清掃しない。その代わりに、統一された一連の基準に従って写真から自然分化しているように見えるコロニーの数を計数するよう、盲検化された観察者に指示する。7日目の終了時に、各プレートの各ウェルについて、自然分化しているコロニーの数と比較してコロニーの数をグラフに描く。その結果を用いて、プレートを被覆するためにラミニンを用いる場合に観察される自然分化の比率を超える自然分化の比率を伴わずにiPSCの付着及び増殖を支えるのに最小限必要なフィブリノゲン濃度を決定する。ロット間の変動について調整するために、3つの独立に製造したヒトフィブリノゲンのロットを試験し、それらを用いて、試験した3つすべてのロットに有効な最小濃度として閾値を定義する。
【0054】
フィブリノゲンがiPSCの多能性を保存するか否か判定するために、フィブリノゲン上での複数の継代後のiPSCを用いて多能性を試験する。60mm皿を、本明細書に記載のように決定した最適な濃度のフィブリノゲンで被覆し、それらの上に、異なるドナーに由来する5つのiPSC株からiPSCをプレーティングする。細胞を5回連続的に継代し、
図21A~Dについて記載されるようにフローサイトメトリーを用いて各継代から得た細胞を試験し、それらが多能性マーカーの発現を保持するか否か判定する。同様に、
図41は、EPF及びgeltrex上で培養したiPSCについての多能性マーカーの定性的染色を示す。5回目の継代後、細胞をまた、多能性マーカーについて免疫蛍光により染色し、核型分析し、STEMDIFF(登録商標)3系統分化キット(Stemcell Technologies)を用いて外胚葉、中胚葉及び内胚葉への分化誘導を受ける能力についてアッセイする。
【0055】
iPSCから分化した細胞の付着及び成長についてプレート被覆を滴定するために、iPSCをiPSC由来RPE、内皮細胞、又は心筋細胞と置き換えて上述の実験を行う。これらの細胞は、3つの系統から分化した細胞:外胚葉(RPE)、内胚葉(内皮)、及び中胚葉(心筋細胞)を代表するために用いる。その結果を用いて、各細胞種を付着させ、支えるためのフィブリノゲンの最小濃度を特定する。RPE、内皮細胞、及び心筋細胞は、各工程においてプレート被覆としてフィブリノゲンを代用することを除き確立された分化プロトコルを用いて、2つのiPSC株(cl1及びIMP90クローン4)から取得する。この2つの細胞株は、ラミニン上で3つすべての細胞種を生成し、異なる供給源に由来し、異なるリプログラミング系(それぞれセンダイウイルス及びレトロウイルス)を用いて製造されるため、選択する。
【0056】
ヒトフィブリノゲンがiPSCの付着及び成長においてラミニンと同等、又はそれよりも優れていると実証され、外胚葉、内胚葉及び中胚葉起源の細胞へのiPSCの分化について同等又は優れていると実証された場合、好結果が達成される。
【0057】
[実施例4-iPSCの培養及び分化のためのフィブリノゲン被覆]
<細胞>
CLR-0001-BIOTR iPSC株を継代10~20で用いた(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015); 及びMarmorstein等 Sci. Rep., 8:4487 (2018))。追加の株、WiCell由来のCLR-0004もまた使用した(Johnson等, Investig. Opthalmology Vis. Sci., 56:4619 (2015))。mTESR (Stem Cell Technologies)をiPSC成長のために用い、mRESLR (Stem Cell Technologies)を用いて継代のために細胞を解離させた。継代はiPSCクラスターについて行い、多能性及び増幅を維持するために約20~40%コンフルエンシーの密度で再度プレーティングした。
【0058】
<フィブリノゲン抽出>
フィブリノゲンを、エタノール沈殿(Dietrich等, Tissue Eng. Part C Methods., 19:216-226 (2013))及び寒冷沈殿(Sparrow等, Methods Mol. Biol. Clifton NJ., 728:259-265 (2011))を含む標準的な方法を用いて抽出した。沈殿後、フィブリノゲンを様々なモル濃度のTris-HCL、TBS、PBS及びクエン酸塩緩衝食塩水中で再構成した。試料を滅菌濾過し、多数回の凍結融解を防ぐためにストック溶液として分注した。市販のフィブリノゲン(Evicel;Ethicon)もまた、比較のために用いた。
【0059】
Clauss法を用いて凝固可能なフィブリノゲン濃度を確認した。Evicelの既知の総タンパク質濃度値を標準として用い、市販のBCAアッセイ(Pierce Technologies)を用い、総タンパク質濃度を決定した。純度のために、120V、0.1Aで1.5時間、10%ミニプロティアンゲル(mini protean gel)(Bio-Rad)を用いてSDS-PAGEゲルを行った。ゲルをカートリッジから取り出し、クマシーブルー溶液(Bio-Rad)で一晩染色し、脱色液(Bio-Rad)中で複数回洗浄した。その後、GelDOC (Bio-Rad)を用いてゲルを画像化した。
【0060】
<プレート被覆>
様々な供給源から得たフィブリノゲンストック溶液を37℃で解凍し、各緩衝液中で使用濃度に希釈した。EvicelはPBS中に希釈した。0.3125 mL/cm2表面積のプレーティング密度を用いた。プレートは、使用の前最低でも2時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、iPSCをプレーティングする前にPBSで3回プレートを洗浄した。
【0061】
Geltrex (Thermo Fisher)を陽性対照として用いた。geltrexの凍結アリコートを氷上で解凍し、DMEM/F12培地中に1:240に希釈し、0.3125 mL/cm2表面積の密度でプレーティングした。プレートを37℃で少なくとも2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを吸引し、すぐに細胞をプレーティングした。
【0062】
<FACS>
様々な被覆された表面上で培養する細胞は、フローサイトメトリーを行う前少なくとも48時間培養した。細胞を、最大5分間37℃でTrypLE (Life Technologies)を用いて解離させ、4分間800gで遠心分離し、PBS中に再懸濁して非染色対照のために2本のチューブに分け、再度遠心分離した。製造業者のプロトコルに従って、PerFix-nc (Beckman Coulter)中に細胞を固定した。染色する細胞は、透過処理試薬(permeabilizing reagent)、1:10 Alexa 488 抗ヒトNanog (BD)、1:10 Alex 647 抗-OCT 3/4 (BD)、1:10 PE 抗-SSEA4 (BD)、及び1:10 PerCP-Cy5.5 抗ヒトTRA1-60 (BD)から成る染色溶液と混合した。ランする前に細胞スラリーが沈殿できるようにすることによって、細胞塊を除去した。4つのチャンネルを用いてGallios (Beckman Coulter)上で試料をランした。合計1000個の細胞が計数され、発現の確認に必要となる二重陽性細胞を有していた。
【0063】
<分化>
アクターゼ(Accutase)(Innovative Cell Tech; San Diego, CA)を用いて各々の被覆材料を有する60mmプレートから各々の被覆材料を有する6ウェルプレート(Ecto)又は24ウェルプレート(Endo, Meso)上にiPSCを継代した。製造業者のプロトコルに従ってSTEMdiff神経誘導培地(Neural Induction Medium)(Stem Cell Tech)を用いて外胚葉分化を行った。0日目の培地にのみY-27632(RND Systems)を添加した。9日間の培養後、アクターゼを用いて6ウェルプレートから細胞を継代し、24ウェルプレート上に再度プレーティングした。おおよそ70%コンフルエントとなるまで神経誘導培地を用い、分化を完了させた。製造業者のプロトコルに従ってSTEMdiff胚体内胚葉(Definitive Endoderm)キット(Stem Cell Tech)を用いて内胚葉分化を行った。5日後、4%PFA中で細胞を固定した。製造業者のプロトコルに従ってStemDiff中胚葉誘導培地を用いて中胚葉分化を行った。5日後、4%PFA中で細胞を固定した。
【0064】
<免疫蛍光染色>
固定したiPSCを、多能性マーカーについて染色し、培養基質間のクローン間変動(clonal variation)を評価した。固定した細胞を、室温で30分間、0.2% Triton-X 100 (Sigma-Aldrich)中で透過処理した後、ブロッキング溶液(DAKO)中でインキュベートした。室温で1時間、以下の一次抗体の組み合わせのうちの1つと共に各ウェルをインキュベートした:(A) 1:200ウサギ抗Oct 3/4 (Abcam)及び1:100マウス抗SSea4 (Abcam)又は(B) 1:100ウサギ抗Nanog (Cell Signaling)及び1:100マウス抗Tra1-60 (Abcam)。ウェルを洗浄液(DAKO)で3回洗浄した。その後、2次抗体混合物を室温で30分間インキュベートした:1:200抗ウサギAlexa 594及び1:300抗マウスAlexa488。ウェルを再度洗浄し、DAPIで5分間染色し、Cytation 5イメージャー(BioTek)を用いて画像化した。
【0065】
以下の一次抗体:(外)1:20ヒツジ抗Pax6 (RND Systems)、(内)1:200ウサギ抗Fox A2 (Cell Signaling)、又は(中)1:200ウサギ抗MixL1 (Millipore)を含むよう改変したことを除き同様のプロトコルを用いて分化した細胞を染色した。Gen5イメージングプリズム(Imaging Prism)(BioTek; Winooski, VT)ソフトウェアを用いて画像を解析し、分化効率を、全DAPI陽性細胞で割った全二重染色陽性細胞として計算した。
【0066】
<ゲル培養>
フィブリンゲルを他に記載のように作製した(Gandhi等, Acta Biomater., 67:134-146 (2018))。簡潔に説明すると、30mg/mLのフィブリノゲン及び100U/mLのトロンビン(最終濃度)の混合物を12ウェルプレートのウェル中で混合し、特注のパラフィルム付きポリカーボネート型(polycarbonate mold with parafilm)を用いてウェル内でゲルを平らにした。ゲルを37℃で2時間完全に重合させた後、PBSで洗浄し、ゲル上にiPSCを播種した。
【0067】
<結果>
<フィブリン上のiPSC>
iPSCはフィブリンハイドロゲル上で成功裏に培養された。
図30は、アプロチニンの補充なしで30mg/mLのフィブリノゲン及び100U/mLのトロンビンで作製したフィブリンハイドロゲル上で培養したiPSCコロニーを示す。iPSCコロニーは経時的に増殖した。より大量にプレーティングすると、iPSCはコンフルエントな単層を形成した。アプロチニンなしで、ゲル内に多数のひずみ線があり、iPSCにより及ぼされた機械的な力が示唆される。アプロチニンなしで、ゲルはコンフルエンシーに達した時に著しく分解されているようには見えなかった。
【0068】
図31は、50U/mLアプロチニンを補充して同様のフィブリンハイドロゲル上で培養したiPSCコロニーを示す。同様に、iPSCコロニーは経時的に増殖し、より大量にプレーティングすると試料中で単層を形成した。アプロチニンの添加によってゲル内のひずみ線が防止されるようには見えなかった。アプロチニンを加えると、ゲルは少なくとも1カ月まで分解しない。
【0069】
<様々なフィブリノゲンのSDS-PAGEゲル>
様々なフィブリノゲン調製物の質的純度を決定するために、SDS-PAGEゲルをランし、クマシーブルーで染色した。各々のフィブリノゲン調製物はiPSCを培養するのに成功した。レーン9及び10は、プラスミノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子、及びフィブロネクチンを除去した陽性対照の寒冷沈殿させたフィブリノゲンを表す(
図32)。フィブリノゲンは3つのバンド、α(67kDa)、β(54kDa)及びγ(47kDa)として特徴的に現れる(
図32)。すべての実験試料は、同様のフィブリノゲンの特徴的なプロファイルを示した。レーン2及び3は、エタノール沈殿させたフィブリノゲン調製物(EPF1)を表す(
図32)。これは260kDa、150kDa及び120kDa付近に複数のバンドを含む。フィブロネクチンは血漿沈殿物の一般的な成分であり、260kDa付近のバンドとして見いだされる。レーン4及び5は、市販の寒冷沈殿させたフィブロネクチン(Evicel, EVI)を表す(
図32)。レーン6及び7は、エタノール沈殿させたフィブリノゲンの第2の異なる調製物(EPF2)のためのものである(
図32)。この試料はフィブロネクチン濃度がはるかに低いように見えた。これはまた、100μg/mLでiPSCを成功裏にプレーティングすることができた試料であった。最後に、レーン9は寒冷沈殿させたフィブリノゲン(CPF1)を表す(
図32)。
【0070】
<フィブリノゲン上でのiPSCの多能性維持>
iPSCを、フィブリノゲンの様々な調製物上で培養した。EPF2を用いると、最も低い濃度で、iPSC接着が成功した。例えば、
図39は、EPF2条件を用いて100μg/mLのフィブリノゲンで被覆したプレートに接着したiPSCを示す。700μg/mLのフィブリノゲン濃度は同様の接着を示した。
【0071】
iPSCコロニーのための被覆材料としてフィブリノゲンを用いると、多能性マーカーが維持されることが確認された。EVI、EPF1及びgeltrex(GT)上のiPSCコロニーの免疫蛍光染色は、個々のコロニー全体を通してOct4、SSea4、Nanog及びTra1-60について陽性染色を示した(
図33A)。最低1000細胞についてFACS解析を用いて、多能性マーカーの個々の細胞発現を定量した(
図33B)。あるマーカーは、すべての他のマーカーと共に二重陽性である場合にのみ陽性と見なした。Oct4発現は、EVI上では97.4±4.1%、EPF1上では98.9±1.8%、及びGT上では98.4±2.4%において陽性であった。SSea4発現は、EVI上では99.3±1.2%、EPF1上では98.4±2.3%、及びGT上では97.1±4.3%において陽性であった。NANOG発現は、EVI上では97.5±3.3%、EPF1上では94.1±7.6%、及びGT上では94.9±4.5%において陽性であった。TRA1 60発現は、EVI上では92.2±6.1%、EPF1上では91.4±5.5%、及びGT上では88.6±5.5%において陽性であった。
【0072】
<フィブリノゲン上でのiPSCの分化>
分化の前に、フィブリノゲン被覆したプレート上でiPSC単層を生成する能力を決定した。
図40は、iPSCは、フィブリノゲン上で培養した場合、geltrex陽性対照と比べてコンフルエントな単層を形成することができたことを示す。
【0073】
フィブリノゲン上で培養したiPSCは、市販のキット(STEMdiff3系統分化キット, StemCell Technologies)を用いて3生殖系列(germ line)に分化した。内胚葉、中胚葉及び外胚葉分化培地中で誘導後、iPSCを固定し、各々のマーカーについて染色した。EPF上で培養したiPSCは、内胚葉誘導後にFoxA2及びSox17、中胚葉誘導後にCD31及びNCAM、及び外胚葉誘導後にNestin及びPax6について発現を示した。geltrex上で培養したiPSCは陽性対照として用い、すべてのマーカーについて陽性であった。
【0074】
<異なるiPSCクローン>
フィブリノゲン上でiPSCを培養する能力が細胞株に固有ではないことを実証するために、他に記載の市販のiPSC細胞株(WISCi004-A-1)(Srikanth等, Cell Rep., 12:1414-1429 (2015);及びZeng等, PloS One, 5:e11853 (2010))を用いた。WISCi004-A-1は、フィブリノゲン被覆したプレート上で培養した場合、成功裏に多能性を維持した。免疫蛍光は、Oct4、SSea4、Nanog及びTra1-60の陽性染色を明らかにした(
図34)。さらに、iPSCは3生殖系列系統に分化した。フィブリノゲン上で培養したWISCi004-A-1株では、内胚葉分化は73.9±8.6%のiPSCで達成され、中胚葉は42.2±3.9%のiPSCで達成され、外胚葉は56.7±8.2%のiPSCで達成された(
図35)。
【0075】
[実施例5-フィブリノゲン被覆したプレート上でのiPSC内皮細胞分化及び培養]
<iPSC-EC分化>
CLR-0001-BIOTR iPSC株を継代10~15で用いた。6ウェルプレートを1mg/mLフィブリノゲン試薬で2mL/ウェルを用いて被覆し、使用前に37℃で2時間インキュベートした。他に記載のようにiPSC-EC分化を行った(Orlova等, Nat. Protoc., 9:1514-1531 (2014))。簡潔に説明すると、iPSCコロニーを直径0.5~1mmの断片に分割し、細胞あたり5~8コロニーをプレーティングした。iPSCを2日間mTeSR1培地と共に培養し、その後中胚葉誘導培地(25ng/mL アクチビンA(RND Systems)、30ng/mL BMP4(Miltenyi Biotec)、50ng/mL VEGF(RND Systems)、及び1.5μM CHIR(RND Systems)を補充したBPEL(Orlova等, Nat. Protoc., 9:1514-1531 (2014))ベース)と交換した。2日後、培地を血管特異的培地(50ng/mL VEGF及び10μM SB431542(RND Systems)を補充したBPELベース)と交換した。4日後、血管特異的培地を補給し、さらに2日後に再度補給した。
【0076】
ECの島(island)が現れた後、磁気ビーズを用いてiPSC-ECを精製した。CD31標識ビーズ(Thermo Fisher)を、1ウェルあたり21μLのビーズを用いてDMEM中の0.1% BSA中に懸濁した。細胞をPBSで洗浄した後、僅かに攪拌しながら室温で30分間、細胞と共にビーズをインキュベートした。その後ビーズを洗浄し、細胞をTrypLE (Thermo Fisher)で解離させ、室温で5分間インキュベートした。FACSB-10溶液(FACS緩衝液中の10% FBS)で反応を止めた。100μmセルストレーナーを用いて細胞溶液を濾した。磁化カラム中に細胞を置き、FACSB-10で2回、DMEM中の0.1% BSAで2回洗浄した。磁性カラムから除去した後残りの細胞を内皮成長培地(EGM2)(Lonza)中に再懸濁し、100μg/mLフィブリノゲンで被覆したT75フラスコ上にプレーティングした。
【0077】
<iPSC-EC培養及び継代>
iPSC-ECを、継代4まで継代及び生育した。培地を吸引した後、iPSC-ECをPBS中で洗浄し、室温で5分間TrypLEを用いて解離させた。細胞をEGM2培地中に再懸濁し、10分間300gで遠心分離した。細胞を100μg/mLフィブリノゲンで被覆したT25フラスコ又は100μg/mLフィブリノゲンで被覆した4チャンバー培養スライド(BD)上に1×104細胞/cm2で再度プレーティングした。2日毎に培地を交換し、再継代前6日目まで細胞を生育した。
【0078】
<iPSC-EC染色>
固定したiPSC-ECを内皮マーカーについて染色した。100μg/mLフィブリノゲンで被覆した4ウェル培養スライド上で培養したiPSC-ECを、5分間氷冷したメタノールで固定した。メタノールをPBSで3回洗い流した。固定した細胞を、ブロッキング溶液(PBS中の6%正常ヤギ血清、0.3% トリトン-X(triton-X)100(Sigma-Aldrich))を用いて室温で45分間、ブロッキングした。以下の一次抗体のうちの1つと共に4℃で一晩、細胞をインキュベートした:(A) 10μg/mL 抗CD31(BBA7, RND Systems)又は(B) 10μg/mL FITC標識UEA-レクチン(Vector Labs)。ウェルをPBSで3回洗浄した。その後、CD31染色のみについて、0.3% TX-PBS中の10μg/mLのFITC-抗マウス二次抗体を、細胞と共に室温で1時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、スライドに蛍光色素を滴下し(fluromount)、カバースリップした。蛍光顕微鏡(Nikon)を用いてスライドをイメージ化した。
【0079】
<結果>
<iPSC-EC培養>
iPSC-ECは以前、他に記載のように分化させた(Orlova等, Nat. Protoc., 9:1514-1531 (2014))。このプロトコルは、iPSCのECへの分化を開始するためにマトリゲル被覆された6ウェルプレートを用いた。成功裏に精製し、マトリゲル上で培養した後、iPSC-ECをフィブリノゲン被覆したプレート上にTrypLEを用いて継代した。iPSC-ECは、フィブリノゲン被覆したプレートに成功裏に付着し、典型的な紡錘形状の表現型で出現した(
図36)。
【0080】
iPSCを分化させるためにフィブリノゲン被覆したプレートを使用できるか否か試験するために、最初のiPSC接着のためにフィブリノゲン被覆した6ウェルプレートを用いるよう、以前言及されたプロトコルを改変した。分化後、iPSC-ECを精製し、フィブリノゲンで被覆したt75上に再度プレーティングした。iPSC-ECは円形の核を有する特徴的な紡錘形状で出現した(
図37)。iPSC-ECの免疫蛍光染色は、CD31及びUEA-レクチンについての陽性染色を明らかにした(
図38)。
【0081】
[他の実施形態]
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されてきたが、上記の説明は例示することを目的としており、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを目的とするものではないことは理解すべきである。他の態様、利点、及び改変は添付の特許請求の範囲内にある。
本発明は以下の態様も提供する。
[1] 網膜色素上皮単層を作製するための方法であって、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含み、前記表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、前記細胞が前記フィブリノゲンと接触し、前記細胞が前記網膜色素上皮単層を形成する、方法。
[2] 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)である、[1]に記載の方法。
[3] 前記幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記容器が培養皿である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記容器が培養フラスコである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記表面が、約3~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記表面が、約15~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 前記表面が、約25~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記表面が、約50~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 前記表面が、約75~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記表面が、約1~約48時間、前記フィブリノゲンで被覆されたものである、[1]~[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記細胞を約7~約90日間培養して前記網膜色素上皮単層を形成することを含む、[1]~[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15] ゼノフリーである、[1]~[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16] 網膜色素上皮単層を含む網膜移植片であって、前記網膜色素上皮単層が、[1]~[15]のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたものである、網膜移植片。
[17] 眼の状態を治療するための方法であって、網膜色素上皮単層を含む網膜移植片を哺乳動物の眼に移植することを含み、前記網膜色素上皮単層が、[1]~[15]のいずれか1項に記載の方法に従って作製されたものである、方法。
[18] 前記眼の状態が黄斑変性である、[17]に記載の方法。
[19] 前記哺乳動物がヒトである、[17]又は[18]に記載の方法。
[20] 培養下で幹細胞を維持するための方法であって、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で前記幹細胞を培養することを含み、前記表面は250μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、前記幹細胞が前記フィブリノゲンと接触し、前記幹細胞が少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する、方法。
[21] 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞である、[20]に記載の方法。
[22] 前記幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、[20]又は[21]に記載の方法。
[23] 前記容器が培養皿である、[20]~[22]のいずれか1項に記載の方法。
[24] 前記容器が培養フラスコである、[20]~[23]のいずれか1項に記載の方法。
[25] 前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、[20]~[24]のいずれか1項に記載の方法。
[26] 前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、[20]~[25]のいずれか1項に記載の方法。
[27] 前記表面が、約250~約5000μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[26]のいずれか1項に記載の方法。
[28] 前記表面が、約300~約900μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[27]のいずれか1項に記載の方法。
[29] 前記表面が、約350~約750μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[28]のいずれか1項に記載の方法。
[30] 前記表面が、約400~約600μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[29]のいずれか1項に記載の方法。
[31] 前記表面が、約450~約550μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[30]のいずれか1項に記載の方法。
[32] 前記表面が、約1~約48時間、前記フィブリノゲンで被覆されたものである、[20]~[31]のいずれか1項に記載の方法。
[33] 約2日~約90日間、前記細胞を培養することを含む、[20]~[32]のいずれか1項に記載の方法。
[34] ゼノフリーである、[20]~[33]のいずれか1項に記載の方法。
[35] 培養下で幹細胞を維持するための方法であって、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で前記幹細胞を培養することを含み、前記表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、前記幹細胞が前記フィブリノゲンと接触し、前記幹細胞が少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する、方法。
[36] 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞である、[35]に記載の方法。
[37] 前記幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、[35]又は[36]に記載の方法。
[38] 前記容器が培養皿である、[35]~[37]のいずれか1項に記載の方法。
[39] 前記容器が培養フラスコである、[35]~[38]のいずれか1項に記載の方法。
[40] 前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、[35]~[39]のいずれか1項に記載の方法。
[41] 前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、[35]~[40]のいずれか1項に記載の方法。
[42] 前記表面が、約100~約5000μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[41]のいずれか1項に記載の方法。
[43] 前記表面が、約300~約900μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[42]のいずれか1項に記載の方法。
[44] 前記表面が、約100~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[42]のいずれか1項に記載の方法。
[45] 前記表面が、約350~約750μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[42]のいずれか1項に記載の方法。
[46] 前記表面が、約400~約600μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[42]のいずれか1項に記載の方法。
[47] 前記表面が、約450~約550μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[42]のいずれか1項に記載の方法。
[48] 前記表面が、約1~約48時間、前記フィブリノゲンで被覆されたものである、[35]~[47]のいずれか1項に記載の方法。
[49] 約2日~約90日間、前記細胞を培養することを含む、[35]~[48]のいずれか1項に記載の方法。
[50] ゼノフリーである、[35]~[49]のいずれか1項に記載の方法。
[51] 前記幹細胞が内皮細胞を形成する、[20]~[50]のいずれか1項に記載の方法。
[52] 前記フィブリノゲンが自家的に(autologously)取得されたものである、[20]~[51]のいずれか1項に記載の方法。
[53] 培養下で幹細胞を維持するための方法であって、フィブリンハイドロゲルで被覆された表面を有する容器中で前記幹細胞を培養することを含み、前記フィブリンハイドロゲルは0.5mg/mLを超えるフィブリノゲンで形成されたものであり、前記幹細胞が前記フィブリンハイドロゲルと接触し、前記幹細胞が少なくとも1回の継代後、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉由来の細胞に分化する能力を維持する、方法。
[54] 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞である、[53]に記載の方法。
[55] 前記幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、[53]又は[54]に記載の方法。
[56] 前記容器が培養皿である、[53]~[55]のいずれか1項に記載の方法。
[57] 前記容器が培養フラスコである、[53]~[56]のいずれか1項に記載の方法。
[58] 前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、[53]~[57]のいずれか1項に記載の方法。
[59] 前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、[53]~[58]のいずれか1項に記載の方法。
[60] 前記フィブリンハイドロゲルが、約0.5mg/mL~約80mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成される、[53]~[59]のいずれか1項に記載の方法。
[61] 前記フィブリンハイドロゲルが、約10mg/mL~約50mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成される、[53]~[60]のいずれか1項に記載の方法。
[62] 前記フィブリンハイドロゲルが、約25mg/mL~約35mg/mLのフィブリノゲン濃度で形成される、[53]~[61]のいずれか1項に記載の方法。
[63] 前記フィブリンハイドロゲルが、0.5~500U/mLのトロンビンを用いて重合される、[53]~[62]のいずれか1項に記載の方法。
[64] 前記フィブリンハイドロゲルが、抗フィブリン溶解剤を含む、[53]~[63]のいずれか1項に記載の方法。
[65] 前記抗フィブリン溶解剤が、約0.5mg/mL~約50mg/mLの濃度のトラネキサム酸である、[64]に記載の方法。
[66] 前記抗フィブリン溶解剤が、約0.1U/mL~約40U/mLの濃度のアプロチニンである、[38]~[50]のいずれか1項に記載の方法。
[67] 内皮細胞を作製するための方法であって、フィブリノゲンで被覆された表面を有する容器中で幹細胞を培養することを含み、前記表面は3μg/mLを超えるフィブリノゲンで被覆されたものであり、前記幹細胞が前記フィブリノゲンと接触し、前記幹細胞が内皮細胞を形成する、方法。
[68] 前記幹細胞が、誘導多能性幹細胞である、[67]に記載の方法。
[69] 前記幹細胞が、ヒト誘導多能性幹細胞である、[67]又は[68]に記載の方法。
[70] 前記容器が培養皿である、[67]~[69]のいずれか1項に記載の方法。
[71] 前記容器が培養フラスコである、[67]~[70]のいずれか1項に記載の方法。
[72] 前記表面が、ポリスチレン、ポリカーボネート、混合セルロース、PTFE、PDMS、PET、ガラス、ポリ-L-リジン被覆、又はその組み合わせを含む、[67]~[71]のいずれか1項に記載の方法。
[73] 前記フィブリノゲンがヒトフィブリノゲンである、[67]~[72]のいずれか1項に記載の方法。
[74] 前記表面が、約3~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[73]のいずれか1項に記載の方法。
[75] 前記表面が、約15~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[74]のいずれか1項に記載の方法。
[76] 前記表面が、約25~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[75]のいずれか1項に記載の方法。
[77] 前記表面が、約50~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[76]のいずれか1項に記載の方法。
[78] 前記表面が、約75~約250μg/mLのフィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[77]のいずれか1項に記載の方法。
[79] 前記表面が、約1~約48時間、前記フィブリノゲンで被覆されたものである、[67]~[78]のいずれか1項に記載の方法。
[80] 前記細胞を約7~約90日間培養して内皮細胞を形成することを含む、[67]~[79]のいずれか1項に記載の方法。
[81] 前記方法がゼノフリーである、[67]~[80]のいずれか1項に記載の方法。