(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】誘引システム、焼却システム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/44 20060101AFI20230711BHJP
F23L 5/02 20060101ALI20230711BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20230711BHJP
F23L 17/16 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F23G5/44 F
F23L5/02
F23L15/00 A
F23L17/16 607C
(21)【出願番号】P 2020053612
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小関 泰志
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180528(JP,A)
【文献】実開平05-096740(JP,U)
【文献】特開2014-167382(JP,A)
【文献】特開2015-194307(JP,A)
【文献】特開2007-170703(JP,A)
【文献】特開2015-194308(JP,A)
【文献】米国特許第06029588(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00 - 7/14
F23L 1/00 - 99/00
F23J 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉からの排ガスと気体とを熱交換し前記気体を昇温する熱交換器に、前記気体を給気し、前記熱交換器により昇温される昇温気体を給気する給気システムと、
前記給気システムから給気される前記昇温気体により駆動する第1タービンと前記第1タービンの駆動力により前記焼却炉からの排ガスを圧縮し排気する第1圧縮機とを備えた誘引機と、
を備えた、誘引システム。
【請求項2】
前記給気システムは、前記昇温気体を更に前記焼却炉に給気する、
請求項1に記載の誘引システム。
【請求項3】
前記給気システムは、
前記熱交換器から給気される前記昇温気体の一部の昇温気体により駆動する第2タービンと前記第2タービンの駆動力により気体を圧縮し排気する第2圧縮機とを備え、
前記第2圧縮機からの排気が前記熱交換器に給気する前記気体であり、
前記第2タービンからの排気が前記焼却炉に給気する前記昇温空気である、
請求項2に記載の誘引システム。
【請求項4】
前記給気システムは、
圧縮気体を生成する送風機を備え、
前記圧縮気体が前記熱交換器に給気する前記気体である、
請求項2に記載の誘引システム。
【請求項5】
焼却炉と、
前記焼却炉からの排ガスと気体とを熱交換し前記気体を昇温する熱交換器と、
前記熱交換器に前記気体を給気し前記熱交換器により昇温される昇温気体を給気する給気システムと、
前記給気システムから給気される前記昇温気体により駆動する第1タービンと前記第1タービンの駆動力により前記焼却炉からの排ガスを圧縮し排気する第1圧縮機とを備えた誘引機と、
前記第1タービンからの排気と前記第1圧縮機の排気とを混合する混合系とを備えた、
焼却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘引システム、焼却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、焼却システムの大型化、機器数の削減、省エネ等を目的とする技術が提案されている。特許文献1は、排ガスの保有熱を回収して得られるエネルギーを利用して排ガスを誘引する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、排ガスの誘引システムの省エネ化と共に複雑化の抑制が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の誘引システムは、焼却炉からの排ガスと気体とを熱交換し前記気体を昇温する熱交換器に、前記気体を給気し、前記熱交換器により昇温される昇温気体を給気する給気システムと、前記給気システムから給気される前記昇温気体により駆動する第1タービンと前記第1タービンの駆動力により前記焼却炉からの排ガスを圧縮し排気する第1圧縮機とを備えた誘引機と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の誘引システムによれば、省エネ化と共に複雑化の抑制を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態における誘引システムを備えた焼却システムを説明する図である。
【
図2】
図2は、
図1の給気システムの第1の具体例を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1の給気システムの第2の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態における誘引システムを備えた焼却システムを説明する図である。なお、以下の図の説明では、同一の機能を備えた機器等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0009】
焼却システム1は、例えば、汚泥などの各種廃棄物を焼却する。焼却システム1は、誘引システム10を備える。誘引システム10は、焼却炉11からの排ガスと気体とを熱交換し気体を昇温する熱交換器12に、気体を給気し、熱交換器12により昇温される昇温気体を給気する給気システム110を備える。さらに、誘引システム10は、給気システム10から給気される昇温気体により駆動する第1タービン120T(以下、タービン120Tと記す)とタービン120Tの駆動力により焼却炉11からの排ガスを圧縮し排気する第1圧縮機120C(以下、圧縮機120Cと記す)とを備えた誘引機120を備える。なお、焼却炉11による焼却により発生するガスを排ガスと記す。
【0010】
焼却システム1は、排ガスから微細個体物等の各種汚染物質を除去する機能を有する、いわゆる排ガス処理系(例えば、集塵機13、排煙処理塔14)を備える。更に、焼却システム1は、各種汚染物質が除去された排ガスを大気に排出する煙突15を備える。各図において、矢印線は気体が流れるパイプを模式的に示し、矢印は気体の流れる方向を模式的に示している。
【0011】
焼却炉11は、例えば、ストーカ式、流動床式、キルン式等の焼却炉である。以下の実施の形態では、焼却炉11は、流動床式の焼却炉を例示する。焼却炉11の排ガス出口と熱交換器12の排ガス入口とはパイプを介して連通する。
【0012】
熱交換器12は、焼却炉11からの排熱(排ガス)と給気システム110からの気体とを熱交換し、昇温した気体を給気システム110に給気し、排ガスを集塵機13に排出する。熱交換器12の気体入口と給気システム110の第1気体出口とはパイプを介して連通する。また、熱交換器12の気体出口と給気システム110の第1気体入口とはパイプを介して連通する。また、熱交換器12の排ガス出口と集塵機13の排ガス入口とはパイプを介して連通する。
【0013】
給気システム110は、第2気体入口を介して外部から気体(例えば空気)を取り入れ、熱交換器12に給気し、熱交換12により昇温される昇温気体を給気する。給気システム110の第2気体出口と誘引機120のタービン120Tの気体入口とはパイプを介して連通する。給気システム110は、このパイプを介して、昇温空気をタービン120Tに給気する。
【0014】
集塵機13は、熱交換器12を通過した排ガスから焼却灰等の個体物を分離して除去する。集塵機13の排ガス出口と排煙処理塔14の排ガス入口とはパイプを介して連通する。集塵機13により個体物が除去された排ガスは排煙処理塔14に排出される。
【0015】
排煙処理塔14は、集塵機13からの排ガスと、塔の上方のノズル(図示しない)から噴射されるアルカリ性洗浄水とを接触させて、硫黄酸化物や集塵機13で除去されなかった微細個体物等を排ガスから取り除く(洗煙)。排煙処理塔14の気体出口と誘引機120の圧縮機120Cの気体入口とはパイプを介して連通する。
【0016】
誘引機120は、排煙処理塔14にて洗煙された排ガスを誘引して煙突15に排気する。具体的には、誘引機120は、給気システム110からの昇温気体により駆動する第1タービン120Tと、タービン120Tの駆動力により焼却炉11からの排ガスを圧縮し煙突15に排気(換言すれば、排ガスを誘引)する第1圧縮機120Cとを備える。
【0017】
圧縮機120Cの気体出口と煙突15の気体入口とはパイプを介して連通する。また、タービン120Tの気体出口と煙突15の気体入口とはパイプを介して連通する。
【0018】
煙突15は、タービン120Tからの排気と圧縮機16から給気された排ガスとを混合する混合系である。具体的には、タービン120Tを回転させた後に排出される高温の排気は煙突15に給気され、圧縮機120Cにより圧縮された、洗煙済みの排ガスは、煙突15に給気される。煙突15に高温気体が給気されることで、圧縮機120Cから給気された排ガスに含まれる水蒸気の凝結を抑制する。その結果、白煙の発生を防止することができる。
【0019】
本実施の形態によれば、焼却システムで生じる排熱により回収した流体エネルギーを排ガスの誘引に直接利用しているので、排ガスの誘引のための新たにエネルギーが不要になり、省エネを実現できる。更に、タービン120Tを回転させた後に排出される高温の排気を煙突15に給気するので、いわゆる白煙防止ファン、及び、白煙防止ファンが給気する空気を昇温する熱交換器を別途設ける必要がなく、焼却システムにおける設備、装置の複雑化を抑制できる。
【0020】
なお、集塵機13に入る排ガスの温度が高い場合には、集塵機13の前段に排ガスの温度を下げる装置を設けても良い。
以下、
図2、
図3を参照して、給気システム110について具体的に説明する。
【0021】
(第1の具体例)
図2は、
図1の誘引システム10の第1の具体例を説明する図である。誘引システム10aは、
図1の給気システム110として給気システム111を備える。給気システム111は、酸素を含む高温の気体(例えば空気)を焼却炉11と誘引機120に給気する。給気システム111は、熱交換器12からの昇温気体の一部の昇温気体により駆動する第2タービン111T(以下、タービン111Tと記す)と、タービン111Tの駆動力により気体を圧縮し排気する第2圧縮機(以下、圧縮機111Cと記す)とを備える。給気システム111は、圧縮機111Cからの排気(すなわち、圧縮気体)を熱交換器12に給気し、タービン111Tからの排気を焼却炉11に給気し、熱交換器12からの昇温気体の一部の昇温気体を誘引機120のタービン120Tに給気する。
【0022】
圧縮機111Cの気体入口には外部から空気が給気される。熱交換器12の気体入口と、給気システム110の第1気体出口に相当する圧縮機111Cの気体出口とはパイプを介して連通する。
【0023】
熱交換器12の気体出口と、給気システム110の第1気体入口に相当するタービン111Tの気体入口及びタービン120Tの気体入口とはパイプを介して連通する。
たとえば、熱交換器12の気体出口とタービン111Tの気体入口とを連結するパイプに分岐弁が設けられ、この分岐弁とタービン120Tの気体入口とがパイプを介して連通する。熱交換器12により加熱された圧縮気体が給気システム110のタービン111Tの上流側から誘引機120のタービン120Tに給気されるので、排熱を回収して得られた流体のエネルギーを直接的にタービン120Tに給気することができる。その結果、効率的なエネルギー利用が可能になり省エネを実現できる。
【0024】
給気システム110の第2気体出口に相当するタービン111Tの気体出口と焼却炉11の気体入口とはパイプを介して連通する。タービン111Tを回転された後に排出される高温気体は焼却炉11に給気され、焼却炉11の燃焼プロセスにおいて利用される。
【0025】
図2の給気システム111の場合、高温空気を焼却炉11の燃焼プロセス及び排煙処理塔14からの排ガスの誘引に利用することができる。そのため、既設の焼却システムにパイプ及び誘引機120を設置すれば本実施の形態の焼却システムが運転できる。
【0026】
(第2の具体例)
図3は、
図1の誘引システム10の第2の具体例を説明する図である。誘引システム10bは、
図1の給気システム110として送風機112Bを備えた給気システム112を備える。
図2の給気システム111においては、タービン駆動の圧縮機が圧縮気体を生成したが、第2の具体例では、送風機112Bが圧縮気体を生成し熱交換器12に給気する。
る。
【0027】
送風機112Bの気体入口には外部から空気が給気される。熱交換器12の気体入口と、給気システム110の第1気体出口に相当する送風機112Bの気体出口とはパイプを介して連通する。熱交換器12の気体出口と、焼却炉11の気体入口及びタービン120Tの気体入口とはパイプを介して連通する。
たとえば、熱交換器12の気体出口と焼却炉11の気体入口とを連結するパイプに分岐弁が設けられ、この分岐弁とタービン120Tの気体入口とがパイプを介して連通する。熱交換器12により加熱された圧縮気体が誘引機120のタービン120Tに給気されるので、排熱を回収して得られた流体のエネルギーを直接的にタービン120Tに給気することができる。その結果、効率的なエネルギー利用が可能になり省エネを実現できる。
【0028】
(比較例)
次に、
図4A、
図4Bを参照して、本実施の形態の焼却システムによる効果について説明する。
図4Aは、第1の比較例を説明する図である。
図4Aにおける焼却システム2aは、焼却炉11と、熱交換器12と、集塵機13と、排煙処理塔14と、煙突15と、供給機40と、誘引機40ibとを備える。供給機40は、タービン40Tと圧縮機40Cとを備え、タービン40Tの駆動力がシャフト40sh1を介して誘引機40ibに伝達される。誘引機40ibは、シャフト40sh1を介して伝達された駆動力によりファンが回転する構造を備え、ファンの回転により排煙処理塔14からの排ガスが誘引され煙突15に給気される。
【0029】
換言すれば、第1の比較例は、排熱を回収することで得られる流体の運動エネルギーを、タービン40Tにより機械的な回転運動に一旦変換し、この変換した運動エネルギー(回転運動)によりシャフト40sh1を回転させることで誘引機40ibのファンを回転させる構成である。以下、この構成を第1の比較例の駆動方式と記す。
【0030】
図4Bは、第2の比較例を説明する図である。
図4Bにおける焼却システム2bは、焼却炉11と、熱交換器12と、集塵機13と、排煙処理塔14と、煙突15と、供給機40と、発電機Gと、誘引機41ibを備える。タービン40Tの駆動力がシャフト40sh2を介して発電機Gに伝達される。発電機Gは、この駆動力により発電し、発電した電力を、電線40wを介して誘引機41ibに給電する。誘引機41ibは、この電力によりファンが回転する構造を備え、ファンの回転により排煙処理塔14からの排ガスが誘引され煙突15に給気される。
【0031】
換言すれば、第2の比較例は、排熱を回収することで得られる流体の運動エネルギーを、タービン40Tにより機械的な回転運動に一旦変換し、更に、発電機Gがこの回転運動を利用して生成した電気エネルギーを、電線40wを介して誘引機41ibに給気する構成である。以下、この構成を第2の比較例の駆動方式と記す。
【0032】
本実施の形態の誘引システムでは、上記した第1、第2の比較例の駆動方式と異なり、排熱を回収して得られる流体のエネルギー(例えば、運動エネルギー、熱エネルギー)を、誘引機120(タービン120T)にパイプを介して直接供給する。そして、誘引機120は、排煙処理塔14にて洗煙された排ガスをこのエネルギーにより誘引している。この構成は、第1、第2の比較例のように、運動エネルギーを一旦他のエネルギー(例えば、タービン40Tの運動エネルギー、発電機の電気エネルギー)に変換し、この他のエネルギーを用いて、排ガスを誘引する構成とは明らかに異なり、排熱を効率的に排ガスの誘引に利用することができる。
【0033】
特に、第1の比較例のように、シャフト40sh1等の物理的手段により動力を伝達する場合、排熱を回収して流体の運動エネルギーを得る装置と誘引機との距離が遠いと、例えば設置場所の点でシャフトの敷設が困難になる。特に、複数のシャフトが軸継手を介して連結している場合には、シャフトの敷設がより困難になり、更に、装置が複雑化する。また、この場合、機械的な問題(例えば、シャフト、軸継手の振動や摩耗)による故障の防止、修理が必要になる。
【0034】
しかし、本実施の形態によれば、高温の気体を、パイプを介してタービン120Tに直接給気しているので、施設の複雑化が抑制される。さらに、機械的な原因による故障が発生しないので故障防止策、修理が不要になる。
【0035】
また、第2の比較例のように、発電機Gを利用すると、焼却システムが複雑化し、更に、発電機の故障の防止及び修理が必要になる。しかし、本実施の形態によれば、高温の気体を、パイプを介してタービン120Tに直接給気しているので、複雑な装置が不要になり、施設の複雑化が抑制される。さらに、機械的な原因による故障が発生しないので故障防止策、修理が不要になる。
【0036】
以上、焼却システムの実施形態を説明したが、この説明により実施形態が限定されるものではない。また、説明した焼却システムに含まれる各種要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 焼却システム
2a 第1の比較例の焼却システム
2b 第2の比較例の焼却システム
10 誘引システム
10a 誘引システム
11 焼却炉
12 熱交換器
13 集塵機
14 排煙処理塔
15 煙突
16 圧縮機
40 供給機
40C 圧縮機
40ib 誘引機
40T タービン
40sh1 シャフト
40sh2 シャフト
110 給気システム
111 第2の給気システム
111C 第2圧縮機
111T 第2タービン
112 給気システム
112B 送風機
120 誘引機
120C 第1圧縮機
120T 第1タービン
G 発電機