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特許7311454センサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】センサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 27/02 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01L27/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020059882
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156827
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】横田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓也
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-21021(JP,A)
【文献】特表2010-525306(JP,A)
【文献】特開2018-194418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0317772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245716(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/02,
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサモジュールと、
複数の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、
複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得し、取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるオフセット値を蓄積するオフセット値蓄積部と
を備え、
前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、
前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、センサシステム。
【請求項2】
前記判定部は、複数の前記時系列データの相関係数が相関係数閾値を超える場合に、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記オフセット値蓄積部は、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールのうち、1台のセンサモジュールをセンサモジュール親機とし、前記センサモジュール親機以外のセンサモジュールをセンサモジュール子機として、前記センサモジュール親機に対する前記センサモジュール子機のオフセット値を蓄積する、請求項1又は請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記オフセット値蓄積部は、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールのうち、一方の前記センサモジュールに対する他方の前記センサモジュールのオフセット値を蓄積する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記オフセット値蓄積部は、複数の前記時系列データの各々の中央値を抽出し、抽出した複数の前記中央値の中央値を抽出することによって仮想的なセンサモジュール親機の中央値を取得し、仮想的な前記センサモジュール親機に対する前記センサモジュールのオフセットを蓄積する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記センサモジュールは、気圧センサである、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、
複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部と
を備え、
前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、
前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、判定装置。
【請求項8】
複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、
複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるオフセット値を蓄積するオフセット値蓄積部と
を備え、
前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、
前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、サーバ。
【請求項9】
複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出するステップと、
複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得するステップと、
取得する前記ステップで取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定するステップと
を有し、
前記検出するステップでは、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、
前記データ蓄積部は、前記検出するステップで検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、コンピュータが実行する判定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出するステップと、
複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得するステップと、
取得する前記ステップで取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定するステップと
を実行させ、
前記検出するステップでは、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定させ、
前記データ蓄積部は、前記検出するステップで検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを校正する技術に関して、圧力計の校正作業を精確に行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、圧力検出手段と、圧力検出手段から出力される検出信号の出力レベルを圧力値に変換する圧力値変換手段とを備えた圧力計に対し、圧力値変換手段を校正する圧力計の検査システムである。検査システムは、圧力計と無線又は有線で接続され、圧力計の圧力値が受信可能であり、かつ、圧力値変換手段を制御可能な操作端末と、圧力計を収納可能であり、収納した圧力計に接続され圧力計に圧力を加えるための配管を備えた恒温箱と、恒温箱の外側には配管に接続され加圧又は減圧が可能なバルブ手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-224997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にセンサは機差によるオフセットや線形性からの外れ、使用環境における経年劣化、使用条件による特異的な誤差等を包含しているため、センサの測定値(以下「センサ値」ともいう)をそのまま使用することは測定誤差の増大につながる。そのため、センサは定期的な補正が必要となる。しかし、センサを補正する場合には、補正用の環境下でセンサに測定させなければならず、センサの交換作業や、代替センサの準備、測定休止期間が発生するなどユーザの負担は大きい。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、センサを補正できるセンサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様は、複数のセンサモジュールと、複数の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部と、前記データ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得し、取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部と、前記判定部が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるオフセット値を蓄積するオフセット値蓄積部とを備え、前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、センサシステムである
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載のセンサシステムにおいて、前記判定部は、複数の前記時系列データの相関係数を導出し、導出した前記相関係数が相関係数閾値を超える場合に、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定する。
)本発明の一態様は、上記(1)又は上記(2)に記載のセンサシステムにおいて、前記オフセット値蓄積部は、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールのうち、1台のセンサモジュールをセンサモジュール親機とし、前記センサモジュール親機以外のセンサモジュールをセンサモジュール子機として、前記センサモジュール親機に対する前記センサモジュール子機のオフセット値を蓄積する。
)本発明の一態様は、上記(1)から上記()のいずれか一項に記載のセンサシステムにおいて、前記オフセット値蓄積部は、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールのうち、一方の前記センサモジュールに対する他方の前記センサモジュールのオフセット値を蓄積する。
)本発明の一態様は、上記(1)から上記()のいずれか一項に記載のセンサシステムにおいて、前記オフセット値蓄積部は、複数の前記時系列データの各々の中央値を抽出し、抽出した複数の前記中央値の中央値を抽出することによって仮想的なセンサモジュール親機の中央値を取得し、仮想的な前記センサモジュール親機に対する前記センサモジュールのオフセットを蓄積する。
)本発明の一態様は、上記(1)から上記()のいずれか一項に記載のセンサシステムにおいて、前記センサモジュールは、気圧センサである。
)本発明の一態様は、複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部とを備え、前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、判定装置である
(8)本発明の一態様は、複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部と、複数のセンサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部と、前記判定部が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるオフセット値を蓄積するオフセット値蓄積部とを備え、前記検出部は、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、前記データ蓄積部は、前記検出部が検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、サーバである
(9)本発明の一態様は、複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出するステップと、複数の前記センサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得するステップと、取得する前記ステップで取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定するステップとを有し、前記検出するステップでは、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定し、前記データ蓄積部は、前記検出するステップで検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、コンピュータが実行する判定方法である
(10)本発明の一態様は、コンピュータに、複数のセンサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出するステップと、複数のセンサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するデータ蓄積部が蓄積した少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が取得した複数の前記データを含む時系列データを取得するステップと、取得する前記ステップで取得した複数の前記時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定するステップとを実行させ、前記検出するステップでは、前記時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定の前記パターンが検出されたと判定させ、前記データ蓄積部は、前記検出するステップで検出した所定の前記パターンに含まれる複数の前記データを蓄積する、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、センサを補正できるセンサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態のセンサシステムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態のセンサシステムが検出する時系列データの一例を示す図である。
図3】本実施形態のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
図4】本実施形態のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
図5】本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例1を示す図である。
図6】本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例2を示す図である。
図7】本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例3を示す図である。
図8】本実施形態のセンサシステムの構成例を示す図である。
図9】実施形態の変形例のセンサシステムの構成例を示す図である。
図10】実施形態の変形例のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本実施形態のセンサシステム、判定装置、サーバ、判定方法、及びコンピュータプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0009】
(実施形態)
(センサシステム)
図1は、本発明の実施形態のセンサシステムの構成例を示す図である。センサシステム1は、複数のセンサを備え、複数のセンサ間で、自律的に補正を実行する。センサの一例は、気圧センサである。ここでは、センサシステム1の一例として、気圧センサを用いた場合について説明を続ける。例えば、気圧センサを使用して高度計が構成される。
気圧センサは、センサ単体で海面気圧からの高度差に相当する気圧差を測定することで高度を算出する。しかし、海面気圧は大気の変動により逐次変化するため、センサ単体で海面気圧からの高度差に相当する気圧差を測定することで高度を算出する方法では、高度の精度が上がらなかった。そこで2台の気圧センサを用い、それぞれに絶対高度を算出しその差分を取ることで海面気圧の変動分をキャンセルし、センサ間の高度差を出す方法が提案されている。
【0010】
しかし、気圧センサは一般的に機差にともなうオフセットがのった(含んだ)状態で気圧値を出力しており、その影響により高度の測定精度が上がらない問題があった。そのため、気圧センサを標準器と比較して校正を行う必要があるが、ユーザ側でそのような校正環境を準備し稼働中のセンサを停止させることは負担が大きい。
そこで本実施形態では、風や空調、自動車や電車等による輸送時、高さ方向への移動時に見られる特徴的な気圧変動に着目し、それらがセンサ同士で同時に観測された場合には、自律的にセンサ同士が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判断する。センサ同士が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判断した場合に、センサ同士は、仮想的に校正環境が整ったものとしてセンサ同士で片方向にもしくは双方向にオフセット補正を実施し、高度の精度向上を図る。
【0011】
[センサのオフセット誤差によって生じる高度算出誤差の具体例]
ここで、少なくとも2台の気圧センサを用いる必要性と、少なくとも2台のセンサ間でオフセット補正をする必要性とについて具体的な数値を交えて説明する。
気圧はその地点より上にある気柱の重量に比例しており、国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization)によれば、高度と気圧の関係は式(1)のように表せる。
【0012】
h=((P0/P)^1/5.257-1)×(T+273.15)/0.0065 (1)
【0013】
式(1)において、「h」、「P0」、「P」、「T」は、以下の通りである。
h:高度(m)、P0:海面気圧(hPa)、P:現地気圧(hPa)、T:現地気温(℃)
まず、1台の海抜8.73mの高さにある誤差の無い気圧センサで高度を算出した場合を考える。この場合、海面気圧P0が1000hPa、現地気温Tが25℃としたときに、現地測定気圧Pは999hPaとなり、高度hは8.73mと算出され正しい値となる。
【0014】
(センサ1台で海面気圧に変化があった場合)
ここで、海面気圧P0が1000hPaから急激に変化して999hPaになった場合を想定する。仮に、現地測定気圧Pが998hPa、海面気圧P0が999hPaとならなければないところを、海面気圧がリアルタイムに更新できておらず、式(1)上で、P0が以前の値の1000hPaを使用した場合、高度は17.47mと算出される。この場合、誤差は+8.73m(=17.472-8.739)と大きくなる。
【0015】
(センサ1台でオフセットがのっていた場合)
一方で、海面気圧P0が1000hPaにおいて、現地測定気圧Pを測定しているセンサにオフセットがのっており(含まれており)、998hPaと1hPa小さく計測してしまった場合を想定する。この場合、高度hは17.47mとなり、+8.74m(=17.472-8.73)とこちらも誤差は大きくなる。
ここで、誤差の無い2台のセンサを使って高度差を算出する場合を考える。海面気圧P0が1000hPa、現地気温Tが25℃とした場合に、1台の気圧センサが海抜0mに配置され、もう1台の気圧センサが海抜8.73mに配置された場合は、下側の気圧センサと上側の気圧センサとが、それぞれ、1000hPaと999hPaと測定され、高度差は式(1)から8.73m(=8.731-0)と算出され正しい値となる。
【0016】
(センサ2台で海面気圧に変化があった場合)
ここで、海面気圧P0が1000hPaから急激に変化して999hPaになった場合を想定すると、下側の気圧センサと上側の気圧センサとが、それぞれ999hPaと998hPaとなり、海面気圧P0が999hPaとならなければないところを、海面気圧がリアルタイムに更新できておらず、式(1)上でP0が以前の値の1000hPaを使用した場合を想定すると、高度は8.74m(=17.472-8.731)と算出され誤差は+0.01m(=8.74-8.73)と小さくなる。
1台で測定していた時の誤差+8.74mと比較すると、2台のセンサに海面気圧の変化分の誤差がそれぞれ同様にのるため、結果全体で誤差がキャンセルされ、高度の測定精度が向上している。
【0017】
(センサ2台の内、上側1台にだけオフセットがのっていた場合)
一方で、海面気圧P0が1000hPaにおいて、現地の上側のセンサだけにオフセットがのっており998hPaと1hPa小さく計測してしまった場合を考えると、下側の気圧センサと上側の気圧センサとは、それぞれ1000hPaと998hPaとなり、高度hは17.47m(=17.472-0)と算出され誤差は+8.74m(=17.472-8.73)と大きくなる。
【0018】
(センサ2台の内、2台とも同じだけオフセットがのっていた場合)
ここで、海面気圧P0が1000hPaにおいて、2台のセンサにそれぞれ同じオフセットがのっており、それぞれ1hPa小さく測定した場合を考えると、下側の気圧センサが999hPa、上側の気圧センサが998hPaと測定することになり、標高hがそれぞれ、8.73m、17.47mと算出されるため、標高差は8.74m(=17.472-8.731)と算出され、誤差は0.01m(=8.741-8.73)と小さい。
つまり、2台のセンサから標高差を算出する際には、それぞれの気圧の絶対値はあまり重要ではなく、2台の相対的な気圧差が重要であることが分かる。各気圧センサの直線性からのズレが小さいことが前提にはなるが、標準器を利用した絶対値への校正を行わずとも、2台のセンサ間でオフセット補正を行い、同一地点の測定において同じ気圧値が出力されるようになれば精度よく標高差を算出することが可能となる。
【0019】
センサシステム1について、具体的に説明する。センサシステム1は、センサモジュール部10と、センサ値蓄積部20と、判定部30と、オフセット値蓄積部40とを備える。
センサモジュール部10は、物理量をセンシングし、センシングすることによって取得した物理量を示す情報を、センサ値蓄積部20へ出力する。
センサ値蓄積部20は、センサモジュール部10が出力した物理量を示す情報を取得し、取得した物理量を示す情報を蓄積する。
判定部30は、センサ値蓄積部20が蓄積した物理量を示す情報を複数取得し、取得した物理量を示す複数の情報の各々が、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する。判定部30は、物理量を示す複数の情報の各々が、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、物理量を示す複数の情報の各々に基づいて、オフセット値を導出し、導出したオフセット値を、オフセット値蓄積部40に出力する。
オフセット値蓄積部40は、判定部30が出力したオフセット値を記憶することによって蓄積する。
【0020】
センサモジュール部10と、センサ値蓄積部20と、判定部30と、オフセット値蓄積部40とについて詳細に説明する。
センサモジュール部10は、センサモジュール11と、センサモジュール12とを備える。
センサモジュール11は、時刻同期部T1と、センサ部S1と、通信部C1とを備える。センサモジュール12は、時刻同期部T2と、センサ部S2と、通信部C2とを備える。
時刻同期部T1と時刻同期部T2とは、時刻同期を行う。
センサ部S1とセンサ部S2とは、それぞれ測定対象をセンシングする。センサ部S1は、センシングした結果であるセンサ値V1と測定時刻情報とを、通信部C1へ出力する。センサ部S2は、センシングした結果であるセンサ値V2と測定時刻情報とを、と通信部C2へ出力する。
通信部C1は、センサ部S1が出力したセンサ値V1と測定時刻情報とを、センサ値蓄積部20へ送信する。通信部C1は、判定開始信号を、判定部30へ送信する。通信部C2は、センサ部S2が出力したセンサ値V2と測定時刻情報とを、センサ値蓄積部20へ送信する。通信部C2は、判定開始信号を、判定部30へ送信する。
センサ値蓄積部20は、センサ値蓄積部21とセンサ値蓄積部22を備える。
センサ値蓄積部21は、通信部C1が出力したセンサ値V1と測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部21は、取得したセンサ値V1と測定時刻情報とを記憶することによって蓄積する。センサ値蓄積部22は、通信部C2が出力したセンサ値と測定時刻情報とV2を取得する。センサ値蓄積部22は、取得したセンサ値V2を記憶することによって蓄積する。
判定部30は、通信部C1と通信部C2とが送信した判定開始信号を受信した場合に、センサ値蓄積部21に蓄積されたセンサ値V1と測定時刻情報とに基づいて導出されるセンサ値V1の時系列データと、センサ値蓄積部22に蓄積されたセンサ値V2と測定時刻情報とに基づいて導出されるセンサ値V2の時系列データとを取得する。判定部30は、取得したセンサ値V1の時系列データとセンサ値V2の時系列データとを比較することによって、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する。
【0021】
図2は、本実施形態のセンサシステムが検出する時系列データの一例を示す図である。
ここでは、一例として、気圧センサで構成されたセンサ部S1を含むセンサモジュール11と、気圧センサで構成されたセンサ部S2を含むセンサモジュール12とが、屋内に設置される。センサ部S1とセンサ部S2とは、1秒毎に、気圧を測定する。
ただし、1秒は一例であり、1秒よりも短い時間でもよいし、長い時間でもよく、現地の気圧の時間変化の傾きや使用するセンサの時間応答度によって決定できる。
図2において、横軸は経過時間[s]であり、左の縦軸は気圧[hPa]であり、右縦軸は2つの気圧センサ間の前後5秒間(11点)の相関係数である。
本実施形態では、気圧の特徴的な変化が1周期10秒程度であったこと、判定部30によって行われる相関係数の算出に十分な量のデータ数として10点程度のデータが必要であったことから測定間隔を1秒とした。
図2によれば、±0.02hPa程度のセンサノイズが見られる。センサノイズの中で、25秒付近と50秒付近とに1周期10秒程度で、+0.1hPa程度の気圧の山が見られる。図2の相関係数のグラフは相関係数が0.9を超えた時のみの情報を表示しており、この気圧の山が発生した時とほぼ同時刻であることがわかる。
【0022】
判定部30は、気圧データを用い、2つのセンサモジュール間で相関係数を導出する。例えば、判定部30は、ある測定データの前後5点の計11点の気圧データを用いて、相関係数を導出する。判定部30は、導出した相関係数が相関係数閾値以上であるか否かを判定する。判定部30は、相関係数が相関係数閾値を超えると判定した場合に2つのセンサが同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定し、相関係数が相関係数閾値未満であると判定した場合に2つのセンサが同一環境下にないと判定する。図2に示される例では、相関係数閾値を0.9程度に設定し、相関係数閾値を超えた場合は、2つのセンサが、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定する。
判定部30は、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、オフセット値を導出する。例えば、判定部30は、センサ値V1の時系列データと、センサ値V2の時系列データとを比較して、差分を導出し、導出した差分を、オフセット値として、オフセット値蓄積部40へ出力する。
オフセット値蓄積部40は、オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とを備える。オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ判定部30が出力したオフセット値を取得する。オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ取得したオフセット値を記憶することによって蓄積する。このように構成することによって、オフセット値蓄積部40にオフセット値を蓄積できるため、センサ値を補正できる。
【0023】
(センサシステムの動作)
図3は、本実施形態のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
(ステップS1-1)
センサモジュール11において、時刻同期部T1は、現在時刻情報を受信する。時刻同期部T1は、例えばLTE(登録商標)、LTE-Mなどの無線通信方式で、接続している基地局から現在時刻情報を受信する。また、例えば、時刻同期部T1は、GPSを始めとしたGNSSやNTPを利用して現在時刻情報を受信してもよい。時刻同期部T1は、受信した現在時刻情報に基づいて、内部時刻を補正する。時刻同期部T1は、内部時刻を補正した結果を、センサ部S1へ出力する。
センサモジュール12において、時刻同期部T2は、現在時刻情報を受信する。時刻同期部T2は、例えばLTE(登録商標)、LTE-Mなどの無線通信方式で、接続している基地局から現在時刻情報を受信する。また、例えば、時刻同期部T2は、GPSを始めとしたGNSSやNTPを利用して現在時刻情報を受信してもよい。時刻同期部T2は、受信した現在時刻情報に基づいて、内部時刻を補正する。時刻同期部T2は、内部時刻を補正した結果を、センサ部S2へ出力する。
【0024】
(ステップS2-1)
センサモジュール11において、センサ部S1は、時刻同期部T1が出力した内部時刻を補正した結果を、現在時刻情報として、取得する。センサ部S1は、予め定められた測定間隔に従って、被測定物を測定する。センサ部S1は、被測定物を測定することによって、測定値V1と測定時刻情報とを取得する。センサ部S1は、取得した測定値V1と測定時刻情報とを、通信部C1へ出力する。
通信部C1は、センサ部S1が出力した測定値V1と測定時刻情報とを取得する。通信部C1は、取得した測定値V1と測定時刻情報とを、センサ値蓄積部21へ送信する。
センサモジュール12において、センサ部S2は、時刻同期部T2が出力した内部時刻を補正した結果を、現在時刻情報として、取得する。センサ部S2は、予め定められた測定間隔に従って、被測定物を測定する。センサ部S2は、被測定物を測定することによって、測定値V2と測定時刻情報とを取得する。センサ部S2は、取得した測定値V2と測定時刻情報とを、通信部C2へ出力する。
通信部C2は、センサ部S2が出力した測定値V2と測定時刻情報とを取得する。通信部C2は、取得した測定値V2と測定時刻情報とを、センサ値蓄積部22へ送信する。
【0025】
(ステップS3-1)
センサ値蓄積部20において、センサ値蓄積部21は、通信部C1が送信した測定値V1と測定時刻情報とを受信する。センサ値蓄積部21は、受信した測定値V1と測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部21は、取得した測定値V1と測定時刻情報とを関連付けて記憶する。
センサ値蓄積部22は、通信部C2が送信した測定値V2と測定時刻情報とを受信する。センサ値蓄積部22は、受信した測定値V2と測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部22は、取得した測定値V2と測定時刻情報とを関連付けて記憶する。
(ステップS4-1)
通信部C1と通信部C2とは、判定開始信号を、判定部30へ送信する。
判定部30は、通信部C1と通信部C2とが送信した判定開始信号を受信したことをトリガーとして、センサ値蓄積部21に蓄積されている測定値V1と測定時刻情報とに基づいて導出される測定値V1の時系列データと、センサ値蓄積部22に蓄積されている測定値V2と測定時刻情報とに基づいて導出される測定値V2の時系列データとを取得する。判定部30は、取得した測定値V1の時系列データと、測定値V2の時系列データとを比較することによって、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する。判定部30は、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、オフセット値を導出し、導出した差分を、オフセット値として、オフセット値蓄積部40へ出力する。
オフセット値蓄積部40は、オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とを備える。オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ判定部30が出力したオフセット値を取得する。オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ取得したオフセット値を記憶することによって蓄積する。
(ステップS5-1)
判定部30は、ステップS4-1で取得した測定値V1の時系列データと、測定値V2の時系列データとを消去する。その後、ステップS1-1に戻る。
【0026】
図4は、本実施形態のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
図4は、図2のステップS4-1の処理の詳細を示す。
(ステップS1-2)
判定部30は、センサ値蓄積部21から最新のN(Nは、N>1の整数)個分のセンサ値V1の時系列データ(センサ値V1と測定時刻情報)を取得する。
判定部30は、センサ値蓄積部22から最新のN個分のセンサ値V2の時系列データ(センサ値V2と測定時刻情報)を取得する。
(ステップS2-2)
判定部30は、取得したセンサ値V1の時系列データとセンサ値V2の時系列データとの各々に基づいて、N個のセンサ値V1のうち最初の測定時間とN個のセンサ値V2のうち最初の測定時間とを比較する。判定部30は、最初の測定時間同士の差である取得時刻差が時刻差閾値以下であるか否かを判定する。ここで、時刻差閾値は、N個のセンサ値V1のうち最初の測定時間とN個のセンサ値V2のうち最初の測定時間とが同時刻とみなせるか否かに基づいて設定される。例えば、時刻差閾値は、時刻同期の誤差にかかる秒数であってもよい。判定部30が、最初の測定時間同士の差である取得時刻差が時刻差閾値以下でないと判定した場合には、終了する。
(ステップS3-2)
判定部30が、最初の測定時間同士の差である取得時刻差が時刻差閾値以下であると判定した場合には、センサ値V1の時系列データとセンサ値V2の時系列データとの間の相関係数を導出する。
(ステップS4-2)
判定部30は、導出した相関係数が相関係数条件を満たすか否かを判定する。例えば、判定部30は、相関係数が相関係数閾値を超えているか否かを判定する。判定部30は、相関係数が相関係数閾値未満であると判定した場合には終了する。
【0027】
(ステップS5-2)
判定部30は、相関係数が相関係数閾値を超えていると判定した場合には、センサモジュール同士は同一環境下で同一の被測定物を測定していたものと判定する。判定部30は、センサモジュール同士が同一環境下で同一の被測定物を測定していたと判定した場合に、センサモジュール同士でセンサ部S1のセンサ値とセンサ部S2のセンサ値との間のオフセット値を導出する。例えば、判定部30は、N個のセンサ値V1の時系列データ(V1_1、V1_2、・・・、V1_N)のうち最初のデータ(V1_1)と、N個のセンサ値V2の時系列データ(V2_1、V2_2、・・・、V2_N)のうち最初のデータ(V2_1)とに基づいて、オフセット値(={(V1_1)―(V2_1)})を導出する。また、例えば、判定部30は、N個のセンサ値V1の時系列データ(V1_1、V1_2、・・・、V1_N)のうち中央値(V1_C)と、N個のセンサ値V2の時系列データ(V2_1、V2_2、・・・、V2_N)のうち中央値(V2_C)とに基づいて、オフセット値(={(V1_C)-(V2_C)})を導出してもよい。
判定部30は、導出したオフセット値を、オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とへ出力する。
(ステップS6-2)
オフセット値蓄積部40において、オフセット値蓄積部41は、判定部30が出力したオフセット値を取得し、取得したオフセット値を記憶する。オフセット値蓄積部42は、判定部30が出力したオフセット値を取得し、取得したオフセット値を記憶する。
【0028】
前述した実施形態では、センサモジュール部10にセンサモジュール11とセンサモジュール12との2台のセンサモジュールを備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、センサモジュール部10に3台以上のセンサモジュールを備えるようにしてもよい。このように構成することによって、3台以上のセンサモジュールの各々に含まれるセンサ部のセンサ値に基づいて、オフセット値を導出できるため、センサ値を補正できる。
【0029】
図5は、本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例1を示す図である。図5には、センサモジュール部10にP(P>2の整数)台のセンサモジュールを備える場合を示す。図5に示される例では、P台のセンサモジュールのうち、特定の1台のセンサモジュールを親機として見立てて、親機以外のセンサモジュールを子機とする。センサモジュール子機からセンサモジュール親機に向けて(センサモジュール親機に対するセンサモジュール子機の)センサ値のオフセット値を算出し、該当するセンサモジュール子機とセンサモジュール親機とのペア間で、そのオフセット値を蓄積する。ここでは、簡単のため各センサモジュールのN個分の個々のセンサ値の中央値を使ったオフセット値の算出方法を例に挙げる。センサモジュール親機のN個のセンサ値の中央値をMaster_CVとし、センサモジュール子機1のN個のセンサ値の中央値をSlave1_CVとし、センサモジュール子機2のN個のセンサ値の中央値をSlave2_CVとし、センサモジュール子機(P-1)のN個のセンサ値の中央値をSlave(P-1)_CVとする。
この場合、センサモジュール親機とセンサモジュール子機1との間のセンサ値のオフセット値はSlave1_CV-Master_CVと導出され、センサモジュール親機とセンサモジュール子機2との間のセンサ値のオフセット値はSlave2_CV-Master_CVと導出され、センサモジュール親機とセンサモジュール子機(P-1)との間のセンサ値のオフセット値はSlave(P-1)_CV-Master_CVと導出される。
【0030】
図6は、本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例2を示す図である。図6に示される例では、センサモジュール部10に含まれる複数のセンサモジュールの全てを子機として同列に扱う。2台のセンサモジュール間において、センサ値のオフセット値を導出する。該当する2台のセンサモジュールのペア間で、そのオフセット値を蓄積する。ここでは、簡単のため各センサモジュールのN個分の個々のセンサ値の中央値を使ったオフセット値の導出方法を例に挙げる。センサモジュール子機1のN個のセンサ値の中央値をSlave1_CVとし、センサモジュール子機2のN個のセンサ値の中央値をSlave2_CVとし、センサモジュール子機3のN個のセンサ値の中央値をSlave3_CVとする。
この場合、センサモジュール子機1と、センサモジュール子機2との間のオフセット値は、Slave2_CV-Slave1_CVと導出され、センサモジュール子機1と、センサモジュール子機3との間のオフセット値は、Slave1_CV-Slave3_CVと算出される。
この場合、センサモジュール部10に含まれる複数のセンサモジュールの全てを子機として同列に扱う。このため、該当する2台のセンサモジュールのペア間においてオフセットの方向は特に指定は無い。しかし、2台のセンサモジュールのうち、どちらのセンサモジュールの中央値からどちらのセンサモジュールの中央値を引いたか、つまり、基準とするセンサモジュールについては、別途記録しておく必要がある。
ここでは、センサモジュール子機が3台の場合について示したが、センサモジュール子機が4台以上である場合にも適用できる。
【0031】
図7は、本実施形態に係るセンサシステムのオフセット値の導出の例3を示す図である。図7に示される例では、仮に、同時刻とみなせる秒数以内に同一環境下で同一の被測定物を測定していると判断されたP個のセンサモジュールが存在したとする。この場合に、P個のセンサモジュールの各々が測定することによって取得されたN個分の個々のセンサ値の中央値を、中央値(Slave1_CV、Slave2_CV、・・・、SlaveP_CV)とする。さらに、中央値の中央値を、仮想的な親機のN個分の個々のセンサ値の中央値とし、仮想親機中央値(Virtual Master_CV)とする。
この場合、各センサモジュール子機から、仮想的なセンサモジュール親機への(仮想的なセンサモジュール親機に対する各センサモジュール子機の)オフセット値を、以下のように導出する。
センサモジュール子機1と、仮想的なセンサモジュール親機との間のオフセット値は、Slave1_CV-Virtual Master_CVと導出される。センサモジュール子機2と、仮想的なセンサモジュール親機との間のセンサ値のオフセット値は、Slave2_CV-Virtual Master_CVと導出される。センサモジュール子機Pと、仮想的なセンサモジュール親機との間のセンサ値のオフセット値は、SlaveP_CV-Virtual Master_CVと導出される。
このように構成することによって、標準器が無い状態においても、複数のセンサモジュールから仮想的なセンサモジュール親機を生み出し、標準器としての役割を持たせることが可能となる。
【0032】
前述した実施形態では、センサ部S1とセンサ部S2とが測定する対象の一例として、気圧について説明したが、この例に限られない。例えば、加速度、磁気、電圧などの時間的に変化する量全般について適用できる。
前述した実施形態において、判定部30を、判定装置として、単体の装置として実現してもよい。また、判定部30と、オフセット値蓄積部40とを、サーバとして、単体の装置として実現してもよい。
【0033】
本実施形態に係るセンサシステム1によれば、センサシステム1は、複数のセンサモジュール(センサモジュール11と、センサモジュール12)と、複数のセンサモジュールのうち、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュールの各々が測定することによって取得したデータを蓄積するセンサ値蓄積部20と、センサ値蓄積部20が蓄積した少なくとも二台のセンサモジュールの各々が取得した複数のデータを含む時系列データを取得し、取得した複数の時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する判定部30と、判定部30が同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるオフセット値を蓄積するオフセット値蓄積部40とを備える。
このように構成することによって、センサシステム1は、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュールの各々が取得した複数のデータ(センサ値)を含む時系列データを取得し、取得した複数の時系列データの各々の比較結果に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定できる。センサシステム1は、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、複数の時系列データの各々の比較結果に基づいて導出されるセンサ値のオフセット値を蓄積できる。このため、通常稼働しているセンサモジュールに対して、別途補正のために校正環境を準備したり、手動で補正開始トリガーを与えたりすることなく、蓄積したオフセット値を使用して、センサモジュールが測定することによって取得したデータを自律的に補正できる。複数のセンサモジュール間での測定誤差を低減できる。
【0034】
図8は、本実施形態のセンサシステムの構成例を示す図である。図8に示される例では、図1を参照して説明したセンサシステム1において、センサモジュール12、センサ値蓄積部22、判定部30、オフセット値蓄積部42は省略され、補正部50が追加されている。
例えば、通信部C1は、補正部50へ補正開始信号を送信する。補正部50は、通信部C1が送信した補正開始信号を受信し、受信した補正開始信号に基づいて、センサ値蓄積部21から最新のセンサ値を取得し、オフセット値蓄積部41から最新のオフセット値を取得する。補正部50は、取得したセンサ値V1に対して、取得したオフセット値に基づいて、補正を行う。補正部50は、補正済みのセンサ値CV1を出力する。
従来は、オフセット値を、センサモジュールのローカル端末に個々に蓄積し、蓄積されたオフセット値を更新していたが、本実施形態では、オフセット値を、センサモジュールの外部の蓄積部に、オフロードする。センサモジュール単体はセンサの測定値を出力するだけの単純な構成であるにも関わらず、センサモジュールの数が数十、数百と増加した場合においてもシステム全体で精度を自律的に担保することが可能となる。例えば、満員電車の複数の乗客の各々が携帯しているスマートフォンに搭載されているセンサの測定値を、オフセット値で、一括で補正することが可能となる。
また、本実施形態に係るセンサシステム1によれば、判定部30は、複数の時系列データの相関係数を導出し、導出した相関係数が相関係数閾値を超える場合に、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定する。このように構成することによって、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュールの各々が取得した複数のデータを含む時系列データの各々の相関係数に基づいて、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定できる。
【0035】
また、本実施形態に係るセンサシステム1によれば、オフセット値蓄積部40は、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュールのうち、1台のセンサモジュールをセンサモジュール親機とし、親機以外のセンサモジュールをセンサモジュール子機として、親機に対する子機のオフセット値を蓄積する。
このように構成することによって、標準器が無い状態においても、複数のセンサモジュールから、センサモジュール親機を設定し、設定したセンサモジュール親機に標準器としての役割を持たせることが可能となる。
また、本実施形態に係るセンサシステム1によれば、オフセット値蓄積部40は、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュールのうち、一方のセンサモジュールに対する他方のセンサモジュールのオフセット値を蓄積する。
このように構成することによって、時刻同期された少なくとも二台のセンサモジュール同士のオフセット値を導出できる。
また、本実施形態に係るセンサシステム1によれば、オフセット値蓄積部40は、複数の時系列データの各々の中央値を抽出し、抽出した複数の中央値の中央値を抽出することによって仮想的なセンサモジュール親機の中央値を取得し、仮想的なセンサモジュール親機に対するセンサモジュールのオフセットを蓄積する。
このように構成することによって、標準器が無い状態においても、複数のセンサモジュールから、仮想的なセンサモジュール親機を設定し、設定したセンサモジュール親機に標準器としての役割を持たせることが可能となる。
また、本実施形態に係るセンサシステム1によれば、センサモジュールは、気圧センサである。このように構成することによって、気圧センサを使用して高度計が構成できる。
【0036】
(実施形態の変形例)
(センサシステム)
図9は、実施形態の変形例のセンサシステム1aの構成例を示す図である。センサシステム1aは、複数のセンサを備え、複数のセンサ間で、自律的に補正を実行する。センサの一例は、気圧センサである。ここでは、センサシステム1aの一例として、気圧センサを用いた場合について説明を続ける。例えば、気圧センサを使用して高度計が構成される。
センサシステム1aは、センサモジュール部10aと、センサ値蓄積部20と、判定部30と、オフセット値蓄積部40とを備える。
センサモジュール部10aは、物理量をセンシングし、センシングすることによって取得した物理量の時系列データから所定のパターンが検出された場合に、所定のパターンに含まれる複数のセンサ値と、複数のセンサ値の各々の測定時刻情報とを、センサ値蓄積部20へ出力する。
センサ値蓄積部20は、センサモジュール部10が出力した所定のパターンに含まれる複数のセンサ値と、複数のセンサ値の各々の測定時刻情報とを取得し、取得した複数のセンサ値と、複数のセンサ値の各々の測定時刻情報とを蓄積する。
判定部30は、センサ値蓄積部20が蓄積した所定のパターンに含まれる複数のセンサ値と、複数のセンサ値の各々の測定時刻情報とを取得し、取得した所定のパターンに含まれる複数のセンサ値が、同一環境下で同一の被測定物を測定したものであるか否かを判定する。判定部30は、所定のパターンに含まれる複数のセンサ値が、同一環境下で同一の被測定物を測定したものであると判定した場合に、所定のパターンに含まれる複数のセンサ値に基づいて、オフセット値を導出し、導出したオフセット値を、オフセット値蓄積部40に出力する。
オフセット値蓄積部40は、判定部30が出力したオフセット値を記憶することによって蓄積する。
【0037】
センサモジュール部10aと、センサ値蓄積部20と、判定部30と、オフセット値蓄積部40とのうち、実施形態と異なるセンサモジュール部10aについて詳細に説明する。
センサモジュール部10aは、センサモジュール11aと、センサモジュール12aとを備える。
センサモジュール11aは、時刻同期部T1と、センサ部S1と、検出部J1と、通信部C1とを備える。センサモジュール12aは、時刻同期部T2と、センサ部S2と、検出部J2と、通信部C2とを備える。
センサ部S1とセンサ部S2とは、それぞれ測定対象をセンシングする。センサ部S1は、センシングした結果であるセンサ値V1と測定時刻情報とを、検出部J1へ出力する。センサ部S2は、センシングした結果であるセンサ値V2と測定時刻情報とを、検出部J2へ出力する。
検出部J1は、センサ部S1が出力したセンサ値V1と測定時刻情報とを取得し、取得したセンサ値V1と測定時刻情報とを保持する。例えば、検出部J1は、N個分のセンサ値V1と測定時刻情報とがプールされるまで待機する。検出部J1は、N個分のセンサ値V1と測定時刻情報とがプールされたら、N個のセンサ値V1の最大値と最小値との差分などの統計値を導出する。検出部J1は、導出した統計値が所定の条件を満たす場合に、特徴的なパターンを検出したと判定する。検出部J1は、特徴的なパターンを検出したと判定した場合に、検出した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを、通信部C1へ出力する。
検出部J2は、センサ部S2が出力したセンサ値V2と測定時刻情報とを取得し、取得したセンサ値V2と測定時刻情報とを保持する。例えば、検出部J2は、N個分のセンサ値V2と測定時刻情報とがプールされるまで待機する。検出部J2は、N個分のセンサ値V2と測定時刻情報とがプールされたら、N個のセンサ値V2の最大値と最小値との差分などの統計値を導出する。検出部J2は、導出した統計値が所定の条件を満たす場合に、特徴的なパターンを検出したと判定する。検出部J2は、特徴的なパターンを検出したと判定した場合に、検出した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを、通信部C2へ出力する。
【0038】
実施形態の変形例のセンサシステムが検出する時系列データの一例は、図2を適用できる。図2を参照して説明したように、一例として、気圧センサで構成されたセンサ部S1を含むセンサモジュール11aと、気圧センサで構成されたセンサ部S2を含むセンサモジュール12aとが、屋内に設置される。センサ部S1とセンサ部S2とが、1秒毎に、気圧を測定する。
ただし、1秒は一例であり、1秒よりも短い時間でもよいし、長い時間でもよく、現地の気圧の時間変化の傾きや使用するセンサの時間応答度によって決定できる。
実施形態の変形例では、気圧の特徴的な変化が1周期10秒程度であったこと、判定部30によって行われる相関係数の算出に十分な量のデータ数として10点程度のデータが必要であったことから測定間隔を1秒とした。
図2によれば、±0.02hPa程度のセンサノイズが見られる。センサノイズの中で、25秒付近と50秒付近とに1周期10秒程度で、+0.1hPa程度の気圧の山が見られる。
【0039】
実施形態の変形例では、センサノイズと気圧の山もしくは谷が切り分けられた場合に、
気圧の山もしくは谷に該当する波形を特徴的な時系列データ(パターン)として定義する。ここで、特徴的な時系列データ(パターン)とみなすかどうかは、基本的にはセンサノイズの標準偏差±σを中心に考え、どの程度の頻度でセンサノイズを特徴的な時系列データとして誤検出することが許容されるかで決定する。図2によれば、±0.02hPa程度のセンサノイズに対して、センサノイズの2倍の±2σ内に相当する気圧の変化はノイズレベルと判断する。本実施形態の変形例では、一例として、測定時から前後5点の計11点の最大値と最小値との差分が0.08hPa(=0.02×2×2)を超えないものに関しては特徴的な時系列データは発生していないと判断する。
通信部C1は、検出部J1が出力した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを、センサ値蓄積部20へ送信する。通信部C1は、判定開始信号を、判定部30へ送信する。通信部C2は、検出部J2が出力した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを、センサ値蓄積部20へ送信する。通信部C2は、判定開始信号を、判定部30へ送信する。
センサ値蓄積部21は、通信部C1が出力した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部21は、取得した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを記憶することによって蓄積する。センサ値蓄積部22は、通信部C2が出力した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部22は、取得した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを記憶することによって蓄積する。
【0040】
判定部30は、通信部C1と通信部C2とが送信した判定開始信号を受信したことをトリガーとして、センサ値蓄積部21に蓄積された特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報と、センサ値蓄積部22に蓄積された特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを取得する。判定部30は、取得した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報と、特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを比較することによって、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する。
例えば、判定部30は、ある測定データの前後5点の計11点の気圧データを用いて、相関係数を導出する。判定部30は、算出した相関係数が相関係数閾値以上であるか否かを判定する。判定部30は、相関係数が相関係数閾値を超えると判定した場合に2つのセンサが同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定し、相関係数が相関係数閾値未満であると判定した場合に2つのセンサが同一環境下にないと判定する。
判定部30は、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、オフセット値を導出する。例えば、判定部30は、特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2とを比較して、差分を導出する。判定部30は、導出した差分を、オフセット値として、オフセット値蓄積部40へ出力する。
【0041】
(センサシステムの動作)
図10は、実施形態の変形例のセンサシステムの動作の一例を示すフロー図である。
ステップS1-3は、図3を参照して説明したステップS1-1を適用できる。
(ステップS2-3)
センサモジュール11aにおいて、センサ部S1は、時刻同期部T1が出力した内部時刻を補正した結果を、現在時刻情報として、取得する。センサ部S1は、予め定められた測定間隔に従って、被測定物を測定する。センサ部S1は、被測定物を測定することによって、測定値V1を取得する。センサ部S1は、取得した測定値V1と測定時刻情報とを、検出部J1へ出力する。
センサモジュール12aにおいて、センサ部S2は、時刻同期部T2が出力した内部時刻を補正した結果を、現在時刻情報として、取得する。センサ部S2は、予め定められた測定間隔に従って、被測定物を測定する。センサ部S2は、被測定物を測定することによって、測定値V2を取得する。センサ部S2は、取得した測定値V2と測定時刻情報とを、検出部J2へ出力する。
(ステップS3-3)
センサモジュール11において、検出部J1は、センサ部S1が出力した測定値V1と測定時刻情報とを取得し、取得したセンサ値V1と測定時刻情報とを保持する。検出部J1は、N個分のセンサ値V1と測定時刻情報とがプールされるまで待機する。検出部J1は、センサ値V1を保持することによって得られるセンサ値V1の時系列データから、特徴的なパターンを検出する。具体的には、検出部J1は、N個分のセンサ値V1と測定時刻情報とがプールされたら、N個のセンサ値V1の最大値と最小値との差分などの統計値を導出する。
検出部J2は、センサ部S2が出力した測定値V2と測定時刻情報とを取得し、取得したセンサ値V2と測定時刻情報とを保持する。検出部J2は、N個分のセンサ値V2と測定時刻情報とがプールされるまで待機する。検出部J2は、センサ値V2を保持することによって得られるセンサ値V2の時系列データから、特徴的なパターンを検出する。具体的には、検出部J2は、N個分のセンサ値V2と測定時刻情報とがプールされたら、N個のセンサ値V2の最大値と最小値との差分などの統計値を導出する。
【0042】
(ステップS4-3)
センサモジュール11aにおいて、検出部J1は、導出した統計値が所定の条件を満たすか否かを判定する。検出部J2は、導出した統計値が所定の条件を満たすか否かを判定する。検出部J2が、導出した統計値が所定の条件を満たさないと判定した場合に、ステップS7-3へ移行する。
(ステップS5-3)
センサモジュール11aにおいて、検出部J1は、統計値が所定の条件を満たすと判定した場合に、検出した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻とを、通信部C1へ出力する。通信部C1は、検出部J1が出力した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻とを、センサ値蓄積部20へ送信する。
検出部J2は、統計値が所定の条件を満たすと判定した場合に、検出した特徴的なパターンに含まれる複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻とを、通信部C2へ出力する。通信部C2は、検出部J2が出力した複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻とを、センサ値蓄積部20へ送信する。
センサ値蓄積部20において、
センサ値蓄積部21は、通信部C1が送信した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを受信する。センサ値蓄積部21は、受信した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部21は、取得した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とを関連付けて記憶する。
センサ値蓄積部22は、通信部C2が送信した複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを受信する。センサ値蓄積部22は、受信した複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを取得する。センサ値蓄積部22は、取得した複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを関連付けて記憶する。
【0043】
(ステップS6-3)
通信部C1と通信部C2とは、判定開始信号を、判定部30へ送信する。
判定部30は、通信部C1と通信部C2とが送信した判定開始信号を受信したことをトリガーとして、センサ値蓄積部21に蓄積されている複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報と、センサ値蓄積部22に蓄積されている複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを取得する。判定部30は、取得した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報とに基づいて導出される測定値V1の時系列データと、複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とに基づいて導出される測定値V2の時系列データとを比較することによって、同一環境下で同一の被測定物を測定しているか否かを判定する。判定部30は、同一環境下で同一の被測定物を測定していると判定した場合に、オフセット値を導出する。判定部30は、導出した差分を、オフセット値として、オフセット値蓄積部40へ出力する。
オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ判定部30が出力したオフセット値を取得する。オフセット値蓄積部41と、オフセット値蓄積部42とは、それぞれ取得したオフセット値を記憶することによって蓄積する。
(ステップS7-3)
判定部30は、S5-3で取得した複数のセンサ値V1と、複数のセンサ値V1の各々の測定時刻情報と、複数のセンサ値V2と、複数のセンサ値V2の各々の測定時刻情報とを消去する。その後、ステップS1-3に戻る。ステップS6-3の処理の詳細は、図4を適用できる。
【0044】
実施形態の変形例のセンサシステム1aによれば、前述した実施形態のセンサシステム1に、少なくとも二台の前記センサモジュールの各々が測定することによって取得した複数のデータを含む時系列データから、所定のパターンを検出する検出部(検出部J1、検出部J2)を備える。センサ値蓄積部20は、検出部が検出した所定のパターンに含まれる複数のデータを蓄積する。このように構成することによって、センサ値蓄積部20には、所定のパターンに含まれる複数のデータが蓄積されるため、実施形態のセンサシステム1と比較して、センサ値蓄積部20に蓄積されるデータ量を低減できる。
また、検出部(検出部J1、検出部J2)は、時系列データに含まれる連続する複数のデータの最大値と最小値との差分が、差分閾値を超えた場合に、所定のパターンが検出されたと判定する。このように構成することによって、時系列データの山(ピーク)もしくは谷が検出されたか否かに基づいて、所定のパターンを検出できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。これら実施形態及びその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してコンピュータプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0046】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1、1a…センサシステム、10、10a…センサモジュール部、11、12、11a、12a…センサモジュール、20、21、22…センサ値蓄積部、30…判定部、40、41、42…オフセット値蓄積部、50…補正部
図1
図2
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