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  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】制御装置、通信システム、制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/12 20090101AFI20230711BHJP
   H04W 28/22 20090101ALI20230711BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20230711BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W28/22
H04W84/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020063586
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021164047
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】598116864
【氏名又は名称】平栗 健史
(73)【特許権者】
【識別番号】520112874
【氏名又は名称】進藤 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】平栗 健史
(72)【発明者】
【氏名】進藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】満井 勉
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/101132(WO,A1)
【文献】特開2004-235978(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110250(WO,A1)
【文献】特開2012-147299(JP,A)
【文献】特開2011-244369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線装置により中継がなされる通信システムにおいて、複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御装置であって、
前記複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得する取得部と、
前記取得部において取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出する導出部と、
前記導出部において導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出する最適化部と、
前記最適化部において導出した中継経路の候補と、前記導出部において導出したQoE推定値と、前記取得部において取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出する学習エージェントと、
前記学習エージェントにおいて導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を前記複数の無線装置のそれぞれに指示する指示部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記導出部は、導出したQoE推定値と、過去に導出したQoE推定値との差異を導出し、導出した差異を前記学習エージェントに出力し、
前記学習エージェントは、前記最適化部において導出した中継経路の候補と、前記導出部において導出した差異と、前記取得部において取得した伝送速度と通信特性とを使用することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
本制御装置は、前記複数の無線装置のいずれかに含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
中継を実行可能な複数の無線装置と、
前記複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得する取得部と、
前記取得部において取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出する導出部と、
前記導出部において導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出する最適化部と、
前記最適化部において導出した中継経路の候補と、前記導出部において導出したQoE推定値と、前記取得部において取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出する学習エージェントと、
前記学習エージェントにおいて導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を前記複数の無線装置のそれぞれに指示する指示部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
複数の無線装置により中継がなされる通信システムにおいて、複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御方法であって、
前記複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得するステップと、
取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出するステップと、
導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出するステップと、
導出した中継経路の候補と、導出したQoE推定値と、取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出するステップと、
導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を前記複数の無線装置のそれぞれに指示するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御技術に関し、中継を制御する制御装置、通信システム、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線装置間の無線通信では、例えば、無線媒体の伝搬環境要因の1つである伝搬損失に応じた変調方式あるいは符号化方式が選択されることによって、伝送速度が決定される。これは、OSI参照モデルの物理層における制御といえる。また、複数の無線装置によりアドホックネットワークあるいはメッシュネットワークが形成される場合、2つ以上の無線装置を含む中継経路がされ、中継経路に沿って信号が転送される。中継経路には、最短経路あるいはランダムな経路が選択される(例えば、特許文献1参照)。これは、OSI参照モデルのデータリンク層あるいはトランスポート層における制御といえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Enomoto, M., Shibata, N., Yasumoto, K., Ito, M. and Higshino, T.、「A Demand-Oriented Information Retrieval Method on MANET」、Proc. ofInt’l Workshop on Future Mobile and Ubiquitous Information Technolo-gies(FMUIT ’06)(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信特性を向上させるために、物理層のみの伝搬環境にしたがって伝送速度が決定される。また、データリンク層あるいはトランスポート層などの通信特性である低遅延あるいは高スループットが得られるように中継経路が選択される。しかしながら、これらでは、ユーザが実際に利用するアプリケーションに対して高いパフォーマンスが得るように制御はされていない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、アプリケーションの伝送に適した制御を実行する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、複数の無線装置により中継がなされる通信システムにおいて、複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御装置であって、複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得する取得部と、取得部において取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出する導出部と、導出部において導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出する最適化部と、最適化部において導出した中継経路の候補と、導出部において導出したQoE推定値と、取得部において取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出する学習エージェントと、学習エージェントにおいて導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を複数の無線装置のそれぞれに指示する指示部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、通信システムである。この通信システムは、中継を実行可能な複数の無線装置と、複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御装置とを備える。制御装置は、複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得する取得部と、取得部において取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出する導出部と、導出部において導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出する最適化部と、最適化部において導出した中継経路の候補と、導出部において導出したQoE推定値と、取得部において取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出する学習エージェントと、学習エージェントにおいて導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を複数の無線装置のそれぞれに指示する指示部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、制御方法である。この方法は、複数の無線装置により中継がなされる通信システムにおいて、複数の無線装置のそれぞれの伝送速度と中継経路とを制御する制御方法であって、複数の無線装置のそれぞれに対して、既に設定されている伝送速度と、測定された通信特性とを取得するステップと、取得した通信特性からQoE(Quality of Experience)推定値を導出するステップと、導出したQoE推定値と通信特性が高くなるように多目的最適化を実行することによって、2つ以上の無線装置が含まれる中継経路の候補を導出するステップと、導出した中継経路の候補と、導出したQoE推定値と、取得した伝送速度と通信特性とをもとに、新たな伝送速度と中継経路を導出するステップと、導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を複数の無線装置のそれぞれに指示するステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アプリケーションの伝送に適した制御を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の無線装置の構成を示す図である。
図3図1の第4無線装置の構成を示す図である。
図4図1の通信システムによる処理手順を示すシーケンス図である。
図5図2の無線装置による処理手順を示すフローチャートである。
図6図3の第4無線装置による処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本実施例は、複数の無線装置を含む通信システムに関する。通信システムでは、2つ以上の無線装置によって中継経路が経路が形成され、中継経路に沿って信号が伝送される。前述のごとく、アプリケーションの信号の伝送に適した制御が求められる。ここでは、一例として、アプリケーションが映像ストリーミングである場合を前提とする。映像ストリーミングのパフォーマンスとして主観的な体感品質を客観的に示すQoE(Quality of Experience)指標がITU-T勧告G.1071で規定されている。しかしながら、QoE指標は、アドホックネットワークあるいはメッシュネットワークなどの中継経路選択のための制御として使用されていない。
【0013】
一方、近年ではAI(Artificial Intelligence:人工知能)、ディープラーニングをはじめとした機械学習による研究開発は盛んに行われ、無線通信分野でも取り組まれている。機械学習は、様々な分野に適用可能であるが、特に画像認識/識別などに適している。例えば、無線通信に機械学習を適用する場合、撮像装置によって撮像した画像から伝搬路の建物あるいは遮蔽物を学習・認識し、スループットの急峻な変化などが推定される。
【0014】
しかしながら、伝搬誤り、干渉、伝送速度、ネットワークのルーティング遅延、パケット損失、スループットなどの無線通信特有の評価パラメータを機械学習に用いて、伝送速度を選択したり、中継経路を選択したりすることはなされていない。このように、伝搬環境や高いパフォーマンスが得られるための伝送速度と中継経路は、各レイヤで個別に評価され、それらの選択に使用されている。しかしながら、複数のレイヤを跨って評価された伝送速度と中継経路を使用して、伝送速度の選択あるいは中継経路の選択はなされていないので、全レイヤを考慮した伝送速度と中継経路からアプリケーションの最大パフォーマンスを得ることが望まれる。
【0015】
本実施例では、無線通信における映像ストリーミングの通信品質を高くすることを目的とする。そのため、通信システムは、無線区間のパケット損失、遅延時間等を各無線装置で収集し、収集した情報を機械学習により、パフォーマンスが高くなるような伝送速度と中継経路を算出する。その際、機械学習における評価関数には、ユーザの映像ストリーミングおける主観的な体感品質を客観的パラメータで求めるQoE指標が使用される。
【0016】
図1は、通信システム1000の構成を示す。通信システム1000は、無線装置100と総称される第1無線装置100aから第7無線装置100gを含む。通信システム1000に含まれる無線装置100の数は7に限定されない。
【0017】
複数の無線装置100のうちの1つが送信元の無線装置100となり、別の1つが送信先の無線装置100となり、残りが中継用の無線装置100となる。例えば、第1無線装置100aが送信元の無線装置100となり、第7無線装置100gが送信先の無線装置100となる場合、第2無線装置100bから第6無線装置100fが中継用の無線装置100となる。その際、第1無線装置100aから送信されたパケット信号は、中継用の無線装置100により中継がなされて第7無線装置100gに受信される。送信元の無線装置100と送信先の無線装置100は、任意の無線装置100でかまわない。このように、通信システム1000では、複数の無線装置100により中継がなされる。パケット信号の中継には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0018】
各無線装置100に対して伝送速度と中継経路が設定される。ここで、伝送速度は、例えば、符号化方式、変調方式の組合せにより示され、中継経路は、送信元の無線装置100から送信先の無線装置100へ至る途中に含まれる中継用の無線装置100の組合せにより示される。このような各無線装置100の伝送速度と中継経路は、制御装置(図示せず)により制御される。制御装置は、複数の無線装置100のいずれかに含まれる。例えば、制御装置は、第4無線装置100dに含まれる。制御装置の構成はこれに限定されず、複数の無線装置100のそれぞれに制御装置が含まれ、いずれかの無線装置100に含まれる制御装置だけが動作してもよい。制御装置は、無線装置100とは別に構成されてもよい。
【0019】
図2は、無線装置100の構成を示す。無線装置100は、通信部10、処理部20、測定部30、設定部40を含む。通信部10は、アンテナを介して無線通信を実行する。処理部20は、通信部10に接続されて、無線通信における各種処理を実行する。図2の無線装置100が送信元の無線装置100である場合、処理部20は、送信すべきデータを通信部10に出力する。通信部10は、処理部20からのデータを含めたパケット信号を生成してから、パケット信号に対して符号化・変調等を実行して、その結果のパケット信号をアンテナから送信する。
【0020】
図2の無線装置100が中継用の無線装置100である場合、通信部10は、アンテナを介してパケット信号を受信する。通信部10は、パケット信号に対して復調、復号を実行することによってデータを取得する。通信部10は、取得したデータを含めてパケット信号を生成してから、パケット信号に対して符号化・変調等を実行して、その結果のパケット信号をアンテナから送信する。
【0021】
図2の無線装置100が送信先の無線装置100である場合、通信部10は、アンテナを介してパケット信号を受信する。通信部10は、パケット信号に対して復調、復号を実行することによってデータを取得する。通信部10は、取得したデータを処理部20に出力する。処理部20は、通信部10から受けつけたデータに対して所定の処理を実行する。
【0022】
測定部30は、通信部10において受信したパケット信号に対して、伝搬誤り、パケット損失、干渉を測定する。これらの測定は、物理層における通信特性の測定に相当する。また、測定部30は、通信部10において受信したパケット信号に対して、ネットワークのルーティング遅延、スループットを測定する。これらの測定は、データリンク層あるいはトランスポート層における通信特性の測定に相当する。これらの測定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。処理部20は、測定部30において測定した通信特性を通信部10に出力し、通信部10は、本無線装置100の識別情報(以下、「ID」という)と通信特性とが含まれたパケット信号を送信する。当該パケット信号の送信先は第4無線装置100dである。本無線装置100が第4無線装置100dに隣接しない場合、パケット信号は、他の無線装置100によって第4無線装置100dまで転送される。
【0023】
設定部40は、通信部10を介して第4無線装置100dからの伝送速度と中継経路の情報を受けつける。ここで、伝送速度の情報では、変調方式、符号化方式(符号化率)が示される。また、中継経路の情報では、中継経路に沿った無線装置100が順に示される。設定部40は、変調方式、符号化方式(符号化率)を通信部10に設定することによって、通信部10は、通信において変調方式、符号化方式(符号化率)を使用する。また、設定部40は、中継経路のうち、本無線装置100の前後に配置される2つの無線装置100を特定し、通信部10に対して、一方の無線装置100からのパケット信号を受信させ、他方の無線装置100にパケット信号を送信させる。さらに、設定部40は、通信部10のアンテナが方向を制御可能な指向性アンテナである場合、特定した2つの無線装置100に向かうようにアンテナの指向性を制御する。
【0024】
図3は、第4無線装置100dの構成を示す。第4無線装置100dでは、図2の無線装置100の処理部20に制御部50が含まれる。制御部50は、取得部200、導出部210、最適化部220、学習エージェント230、指示部240を含む。制御部50は前述の制御装置に相当する。第4無線装置100dが送信元の無線装置100である場合、あるいは中継用の無線装置100である場合、あるいは送信先の無線装置100である場合の処理はこれまでと同様であるので、ここでは説明を省略する。通信部10は、複数の無線装置100のそれぞれからパケット信号を受信する。当該パケット信号には、パケット信号を送信した無線装置100において測定された通信特性とIDとが含まれる。通信部10は、通信特性を処理部20に出力する。
【0025】
処理部20の取得部200は、複数の無線装置100のそれぞれにおける通信特性を取得する。また、処理部20は、複数の無線装置100のそれぞれに対して既に出力した伝送速度と中継経路を保持しており、取得部200は、複数の無線装置100のそれぞれにおける伝送速度と中継経路を取得する。
【0026】
導出部210は、取得部200において取得した通信特性、例えば、複数の無線装置100のそれぞれにおける通信特性、例えば、伝搬誤り、パケット損失、干渉をもとに、QoE推定値を導出する。また、導出部210は、導出したQoE推定値と、過去に導出したQoE推定値との差異を導出する。
【0027】
最適化部220は、導出したQoE推定値と、複数の無線装置100のそれぞれにおける通信特性が高くなるように多目的最適化を実行する。多目的最適化では、例えば、パレート最適解が導出される。パレート最適解は、2つ以上の無線装置100が含まれる中継経路の候補を示す。一般的に、複数の中継経路の候補が導出される。つまり、QoE指標は、伝搬誤り、パケット損失、干渉等の通信システム1000の通信特性から推定する客観品質評価手法における最適化手法の目的関数として導入される。
【0028】
学習エージェント230は、導出部210において導出したQoE推定値の差異を報酬として、最適化部220において導出した中継経路の候補と、取得部200において取得した伝送速度と通信特性とをもとに、機械学習を実行することによって、新たな伝送速度と中継経路を導出する。ここで、新たな伝送速度は、無線装置100毎に導出される。また、中継経路では、前述のごとく、中継経路に沿った無線装置100が順に示される。
【0029】
指示部240は、学習エージェント230において導出した新たな伝送速度と中継経路との使用を複数の無線装置100のそれぞれに指示するために、新たな伝送速度と中継経路との情報を通信部10に出力する。通信部10は、新たな伝送速度と中継経路との情報が含まれたパケット信号を複数の無線装置100のそれぞれに送信する。
【0030】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0031】
以上の構成による通信システム1000の動作を説明する。図4は、通信システム1000による処理手順を示すシーケンス図である。ここでは説明を明瞭にするために、一例として、通信システム1000のうちの第2無線装置100bから第4無線装置100dだけを示す。第2無線装置100bは通信特性を測定し(S10)、第3無線装置100cは通信特性を測定する(S12)。第2無線装置100bは通信特性を送信し(S14)、第3無線装置100cは通信特性を送信する(S16)。第4無線装置100dは伝送速度と中継経路とを導出する(S18)。第4無線装置100dは、伝送速度と中継経路を第2無線装置100bに送信し(S20)、伝送速度と中継経路を第3無線装置100cに送信する(S22)。第2無線装置100bは伝送速度と中継経路を設定し(S24)、第3無線装置100cは伝送速度と中継経路を設定する(S26)。
【0032】
図5は、無線装置100による処理手順を示すフローチャートである。測定部30は通信特性を測定する(S100)。通信部10は通信特性を送信する(S102)。通信部10が伝送速度、中継経路の情報を受信しなければ(S104のN)、待機する。通信部10が伝送速度、中継経路の情報を受信した場合(S104のY)、設定部40は、伝送速度、中継経路を設定する(S106)。
【0033】
図6は、第4無線装置100dによる処理手順を示すフローチャートである。取得部200は、伝送速度、通信特性を取得する(S150)。導出部210はQoE推定値を導出する(S152)。最適化部220は、パレート最適解として中継経路の候補を導出する(S154)。学習エージェント230は、学習により、伝送速度と中継経路を導出する(S156)。指示部240は、伝送速度と中継経路の使用を指示する(S158)。
【0034】
本実施例によれば、QoE推定値を機械学習に使用して伝送速度と中継経路とを導出するので、QoE指標が高くなるような伝送速度と中継経路とを導出できる。また、全レイヤの情報を機械学習に使用するので、QoE指標が高くなるような伝送速度と中継経路とを導出できる。また、QoE指標が高くなるような伝送速度と中継経路とを導出するので、伝搬環境が悪い、あるいは映像などのアプリケーションにおいてビートレートが低い場合にも、現状のネットワークで通信品質を高い状態に維持できる。また、機械学習の実行を継続するので、ネットワーク構成あるいは伝搬環境が変動した場合にも、伝送速度と中継経路とを自動的に調節できる。また、QoE推定値の差異を導出するので、QoE推定値を報酬に反映できる。また、制御装置は、複数の無線装置のいずれかに含まれるので、構成を容易にできる。
【0035】
以上、本発明の実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0036】
10 通信部、 20 処理部、 30 測定部、 40 設定部、 50 制御部、 100 無線装置、 200 取得部、 210 導出部、 220 最適化部、 230 学習エージェント、 240 指示部、 1000 通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6