(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電子顕微鏡のための改良されたナビゲーション
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20230711BHJP
G01N 23/2206 20180101ALI20230711BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H01J37/22 502G
G01N23/2206
H01J37/28 B
(21)【出願番号】P 2020502394
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 GB2018052050
(87)【国際公開番号】W WO2019016559
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ハイド アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ホランド ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】バージェス サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ステイサム ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ピナード フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】コリン ジェイムズ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-190046(JP,A)
【文献】特開2004-226309(JP,A)
【文献】特開2009-026621(JP,A)
【文献】特開平03-034249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/252
G01N 23/225
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡で試料を分析するための方法であって、
第1の検出器、及び前記第1の検出器と異なる第2の検出器を使用して、一連の複合画像フレームを取得する段階と、
前記一連の複合画像フレームを視覚ディスプレイにリアルタイムで表示する段階と、を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が、
a)顕微鏡条件のセットにより設定された前記顕微鏡の設定された視野に対応する試料の領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、
b)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第1の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に前記荷電粒子ビームの衝突の結果として生成された粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、
c)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第2の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に前記荷電粒子ビームの衝突の結果として生成された粒子の第2のセットを監視して第2の画像フレームを得る段階と、を含み、
前記画像フレームの各々が、前記領域内の複数の位置に対応し且つ前記複数の位置で生成され監視される前記粒子から得られる値を有する複数の画素を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が更に、
d)前記第2の画像フレームの各画素に対して、設定された前記顕微鏡条件が、前記一連の複合画像フレームにおいて直前に取得された複合画像フレームの格納された第2の画像フレームの顕微鏡条件と同じである場合、及び、それぞれの前記画素が前記格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する前記領域内の位置に対応する場合に、前記格納された画素の値を前記画素の値と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める段階と、
e)前記複合画像フレームが、前記複数の画素の各々に対して、前記領域内の対応する位置で生成され且つ前記第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される前記粒子から得られたデータを提供するように、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する段階と、を含み、
前記段階b及びcは実質的に同時に実行される、方法。
【請求項2】
前記第1の検出器は電子検出器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の検出器は、前記試料の領域に関するトポグラフィ情報及び試料材料原子番号情報の何れか又は両方を含むデータを提供する結果として生じる粒子を監視するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の検出器は、X線検出器、X線スペクトロメータ、電子回折パターンカメラ、電子エネルギー損失スペクトロメータ、又はカソードルミネセンス検出器のうちの何れかである、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記粒子の第2のセットを監視して前記第2の画像フレームを得る前記段階は、前記第2の検出器から異なるタイプの2又は3以上の信号を得て、前記信号の各々に対応するサブ画像フレームを得る段階を含み、
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記第1の画像フレームを前記サブ画像フレームのうちの1又は2以上と組み合わせる段階を含む、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記粒子の第2のセットを監視して前記第2の画像フレームを得る前記段階は、
異なる粒子エネルギー範囲に各々が対応する前記粒子の第2のセットの2又は3以上のサブセットを監視して、前記サブセットの各々に対応するサブ画像フレームを得る段階であって、前記各サブ画像フレームが、前記領域内の前記複数の位置に対応する複数の画素であって、且つ、前記対応するサブセットに含まれ且つ前記複数の位置で生成された前記監視される粒子から得られた複数の画素を含む、段階と、
前記第2の画像フレームが、前記複数の画素の各々に対して、前記領域内の対応する前記位置で生成され且つ前記サブセットの各々に含まれる前記粒子から得られたデータを提供するように、前記サブ画像フレームを一緒に組み合わせて、前記第2の画像フレームを生成する段階と、
を含む、請求項1~5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記一連の複合画像フレームをリアルタイムで表示する前記段階は、各複合画像フレームに対して、対応する前記第1及び第2の画像フレームが得られてから前記複合画像フレームが視覚ディスプレイに表示されるまでの経過時間を備え、前記経過時間は、1秒より短い、請求項1~6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記複合画像フレームが複数の画素を含むように前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを重ね合わせる段階を含み、前記画素の各々は、前記領域内の前記複数の位置のうちの1つに対応し、前記第1のセット及び前記第2のセットの両方に含まれ且つ前記それぞれの位置で生成された前記粒子から得られたデータを提供する、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記第1の画像フレームの各画素を、前記第1の画像フレームのそれぞれの画素が対応する前記領域内の前記位置に対応する前記第2の画像フレームの画素と組み合わせる段階を含む、請求項1~8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記第1及び第2の画像フレーム内の対応する前記画素の強度に基づく複合画像画素の色を計算する段階を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記複合画像フレームがカラー画像を含むように、前記第1の画像フレームに第1の色を割り当て、前記第2の画像フレームに異なる第2の色を割り当てる段階を含み、前記第1及び第2の色の各画素における相対的な強度は、前記領域内の前記対応する位置で生成された前記監視される粒子の第1及び第2のセットにそれぞれ含まれる前記粒子を表す、請求項8~10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを並置する段階を含む、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記顕微鏡条件は、倍率、焦点、非点収差、加速電圧、ビーム電流、荷電粒子ビーム用に設定された走査偏向、前記試料用に設定された位置及び配向、並びに前記第1及び第2の検出器の各々用に設定された輝度及びコントラストのうちの何れかを含む、請求項1~12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記一連の複合画像フレームが取得され表示されるレートは、少なくとも1フレーム毎秒である、請求項1~13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
段階dにおいて、前記格納された画素を前記画素と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める前記段階は、信号平均化又は信号蓄積によって行われる、請求項1~14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
前記一連の複合画像フレームのうちの1又は2以上の複合画像フレームを取得する段階の間、
前記それぞれの複合画像フレームから得られたデータを格納する段階と、
前記得られたデータが、前記顕微鏡の前記設定された視野を表す視野データに関連付けられるように、前記視野データを格納する段階と、
を更に含む、請求項1~15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
前記試料の複数の領域の各々の少なくとも1つの複合画像フレームを取得する段階と、
前記試料上の前記領域の相対位置に従って配列された前記複数の領域の複合画像フレームを含む試料画像を生成する段階と、を含み、
本方法が更に、
前記試料画像上に、前記それぞれの複合画像フレームに対応する前記視野に関連付けられ格納された前記得られたデータに従って、前記複合画像フレームのうちの1又は2以上の各々での標識を表示する段階を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各エネルギー範囲のセットについての光子数を記録する前記第2の検出器からのデータを処理して、特定の特徴的な輝線に対応する光子数の測定値を引き出す段階を更に含み、前記特徴的な輝線の少なくとも2つの異なる輝線に対応する前記エネルギー範囲が重複する、請求項1~17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
試料を分析するためのシステムであって、
第1の検出器、及び該第1の検出器と異なる第2の検出器を含む顕微鏡と、
一連の複合画像フレームを取得する段階を実行するように前記顕微鏡を制御するよう構成されたコントローラユニットと、
取得した前記一連の複合画像フレームをリアルタイムで受け取って表示するように構成された視覚ディスプレイと、を備え、
前記複合画像フレームを取得する段階が、
a)顕微鏡条件のセットにより設定された前記顕微鏡の設定された視野に対応する前記顕微鏡内の試料の領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、
b)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第1の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に前記荷電粒子ビームの衝突の結果として生成された粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、
c)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第2の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に前記荷電粒子ビームの衝突の結果として生成された粒子の第2のセットを監視して、第2の画像フレームを得る段階と、を含み、
前記画像フレームの各々が、前記領域内の複数の位置に対応し且つ前記複数の位置で生成された監視される前記粒子から得られる値を有する複数の画素を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が更に、
d)前記第2の画像フレームの各画素に対して、設定された前記顕微鏡条件が、前記一連の複合画像フレームにおいて直前に取得された複合画像フレームの格納された第2の画像フレームの顕微鏡条件と同じである場合、及び、それぞれの前記画素が前記格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する前記領域内の位置に対応する場合に、前記格納された画素の値を前記画素の値と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める段階と、
e)前記複合画像フレームが、前記複数の画素の各々に関して、前記領域内の対応する位置で生成され且つ前記第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される前記粒子から得られたデータを提供するように、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する段階と、を含み、
前記段階b及びcは実質的に同時に実行される、システム。
【請求項20】
電子顕微鏡内の集束電子ビームが前記試料の表面上の2次元領域にわたって走査されている間に生成される信号を表示するための請求項19に記載のシステムであって、第1の信号が電子検出器からのものであり、
前記電子検出器は前記第1の検出器であり、
少なくとも1つの補助信号が、個々の化学元素含有量又は原子番号以外の材料特性に関する情報を提供する異なる検出器から得られ、
前記異なる検出器は前記第2の検出器であり、前記信号の各々は、前記領域をカバーする電子ビーム位置の2次元配列で測定され、測定結果の対応する画素配列は、前記領域をカバーする視野に対するデジタル画像を構成し、視覚ディスプレイを用いて、前記デジタル画像がユーザの周辺視野の範囲内に収まるか又は単一の複合カラー画像に結合されるように全ての信号に関するデジタル画像を示し、画素測定値の完全なセットが全ての信号に関する視野をカバーし、視覚表示の準備が短時間期間で行われて完了し、前記視野をカバーする全ての信号に関する画素測定値の前記完全なセット及び視覚表示の更新が、連続的に繰り返され、
同じ画素位置における前記少なくとも1つの補助信号の連続した測定値を用いて、前記視野又は顕微鏡条件が変化しない場合に、当該画素での前記測定値の信号対雑音比が高められ、
前記視野又は顕微鏡条件に何らかの変化がある場合に、同じ画素位置での信号の次の測定値が、以前の測定値を置き換えるのに使用され、前記短時間期間は、前記視野が変更されているときに、移動する特徴部を観察者が識別するべく画像表示が高速で更新されるように十分に短い、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記信号の1つより多い測定値についての表示結果の前記信号対雑音比は、前記測定値のカルマン平均化を使用することによって高められ、又は、前記測定値を加算し測定値の数に応じて輝度スケーリングを変更することによって高められる、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記短時間期間は、1秒より短い、請求項20又は21に記載のシステム。
【請求項23】
ユーザ制御下で意図的に前記試料が移動されているか、走査される前記領域が変更されている場合に、前記視野は変化しているとみなされる、請求項19~22の何れかに記載のシステム。
【請求項24】
前記視野又は顕微鏡条件の変化は、新しいデジタル画像を以前に取得されたデジタル画像と数学的に比較することによって検出される、請求項19~23の何れかに記載のシステム。
【請求項25】
補助信号は、X線スペクトロメータによって得られるスペクトル、電子に対して感度を有するカメラによって得られる電子回折パターン、電子エネルギー損失スペクトロメータ又はカソードルミネセンス検出器によって得られるスペクトルから得られる、請求項19~24の何れかに記載のシステム。
【請求項26】
前記視野の変化は、顕微鏡ステージを移動させること、及び/又は、位置座標のセットによって規定された新しい位置のためにビーム偏向にオフセットを追加することによって生じ、前記視野が当該位置にある間、電子及び/又は少なくとも1つの補助信号源からデータが蓄積され、前記データ全体が保存されるか、又は前記データからパラメータが得られて前記位置座標と一緒にデータベースに保存される、請求項23~25の何れかに記載のシステム。
【請求項27】
前記データベースから表示が生成され、以前に訪れた前記位置座標にて1又は2以上のパラメータの値を示すのに使用される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記表示は、ユーザが訪れた位置の全範囲をカバーし、前記データが記録された前記位置座標の各セットについて、前記データから計算された属性に対して、前記表示は、前記データが当該位置で記録されたときに電子ビームによって走査された前記視野に対応する領域をカバーする同じスケールでカラーオーバーレイを使用する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記領域が重なり合う場合、前記カラーオーバーレイに使用される前記属性の値及び/又は前記データからの他の属性の値を用いて、全ての重なり合う領域からの結果を集約、結合又はソートする、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記表示は、同じスケールでの前記試料の大面積の事前取得画像、又は前記データベース内の少なくとも1つの信号の保存データを使用して生成された画像に重ねられる、請求項27~29の何れかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡で試料を分析する方法、及び試料を分析するシステムに関する。具体的には、試料の周りの改良されたナビゲーションをユーザに提供し、低品質の信号対雑音比を有する信号でも、複数の信号からの情報を組み合わせて、ユーザが情報源と対話して広い領域にわたって効率的且つ効果的に探索できるようにするディスプレイを提供することにより、ユーザを支援することができる。
【背景技術】
【0002】
図1は、試料の表面を探索する際に走査型電子顕微鏡(SEM)において使用される典型的なシステムを示している。電子ビームは、真空チャンバー内で生成され、通常は磁気レンズ又は静電レンズの組み合わせを用いて集束される。ビームが試料に当たるときに、一部の電子が、この試料から後方散乱(後方散乱電子又はBSE)するか、又は試料と相互作用して二次電子(SE)及びX線などの他の幾つかの放射線を生成する。
【0003】
典型的には試料からのSE又はBSEの何れかの強度に応答するように設計された電子検出器は、信号処理電子機器に接続され、集束ビームが当たっている試料の該当部分に対応する信号を生成する。また、試料の該当部分から放射されるX線光子が、X線検出器に当たり、関連する信号処理を用いて、個々の光子エネルギーが測定されて、ビーム下に存在する化学元素の特徴的な輝線に対応する信号を生成することができる。集束電子ビームは、試料上の点のグリッドにわたってビーム偏向器を使用して、典型的には行ごとにラスタ形式で走査され(しかしながら、任意の順序で、及びランダムな点の選択とすることができ)、各点での電子信号が測定され、デジタル画像の対応する画素に格納され、このデジタル画像は、典型的には、コンピュータとインタフェース接続されたビデオ表示ユニットに表示される。グリッド内の全ての点がアクセスされると、画像データの1つの完全な「フレーム」が取得される。典型的には、点のグリッドは、最大1cmの寸法の「視野」をカバーするが、これはより大きくするか又は非常により小さくすることができ、画像が固定サイズのモニタ上に表示される場合、視野のサイズは、より小さな視野がより高い倍率を表すように、倍率を効果的に決定する。検査される試料は典型的には、電子ビームの偏向によって達成できる最大視野よりも寸法が遙かに大きく、試料表面全体を探索するには、通常はコントローラを使用して試料を支持するホルダ又はステージを移動させる必要があり、これにより、典型的には、走査される視野が数cm移動する可能性がある。同様のシステムを用いて、試料が、ビームが試料を透過するのに十分な薄さである場合の電子顕微鏡(走査型透過電子顕微鏡又はSTEM)において使用される。この場合、ビームの偏向及びステージ移動の範囲は、典型的には、SEMの場合よりも小さい。
【0004】
電子ビームが試料に当たると、この試料から放射される電子の数は、典型的には、生成されるX線光子の数よりも数桁大きくなる。その結果、X線画像は、一般に、電子画像よりも信号対雑音比(S/N)が遙かに低品質であり、X線画像を向上させるのに利用可能な最良の方法を使用することが望ましい。検出器によって収集されるX線の数は、電子ビームが試料に当たる点でX線検出器によって定められた立体角によって決定される。X線検出器が電子ビームの片側にある
図1に示された配置の場合、収集立体角は、広い面積の検出器を使用すること、又は検出器を試料の非常に近くに位置決めすることによって最大になる。異なる構成では、X線検出器は、入射電子ビームの周りに配置された幾つかのセンサを使用して、総収集立体角を最大にする。この「同軸」配置では、X線検出器は、最後のレンズアパーチャと試料の間に位置決めされ、電子ビームはセンサ間の間隙を通過する。
【0005】
収集立体角が最大であるときでも、単一フレームの場合のX線画像の信号対雑音は、典型的には、電子画像の場合のものよりも遙かに劣っており、これにより、画素あたりの滞留時間が短いときのデータの単一フレームで細部を確認することが困難になる。滞留時間を長くして信号対雑音比を向上させた場合、画像フレームを完了する時間が長くなり、ユーザは、視野全体をカバーする画像を認識するのにより長く待つ必要がある。X線イメージングの重要な技術革新は、格納されたデータを処理して、任意の所望の特徴的な化学元素放出物からX線画像を生成できるように、個々の光子の走査位置及びエネルギーの両方を記録する技法であった(Mott(モット)及びFriel(フリエル)1999、Journal of Microscopy(顕微鏡法学会誌)、193巻、1部、1月、2から14ページ)。Mott及びFrielは、単一の走査で画素ごとに長い滞留時間を使用するのではなく、短い滞留時間を使用して、同じ視野を繰り返し走査しながらデータを継続的に蓄積した。彼らのシステムは、蓄積されたデータを使用して表示のためのX線画像を繰り返し準備して、新しいデータフレームが追加されるときに、X線要素マップの粒状性が次第に低くなるように見え、細部及び濃淡が現れ始めるようにプログラムされていた。X線要素マップを取得して表示し、結果として生じる画像を観察するこの方法は、時間とともに改良され、現在、ほぼ20年にわたって一般的に使用されている。
【0006】
ユーザが関心領域を見つけるのに試料を探索する必要があるときには、ユーザは、典型的には、電子画像と高速に相互作用するように最適化がなされていたSEMディスプレイを使用する。SEMは、通常、フレームごとに更新される高S/N電子画像を表示し、高速フレームレートを使用して、焦点もしくは倍率が変更されるか、又は視野が移動する場合に(例えば、試料を支持するホルダもしくはステージを移動させること、又は走査偏向へのオフセットを追加することによって)、ユーザは、効率的に相互作用するのに十分に高速な速度で新しい画像を認識する。移動する特徴部を追跡するのに十分に高い更新レートは、フレームレートが50Hzより低い場合でさえ、家庭用テレビで類推して「TVレート」と通常呼ばれる。電子ビーム走査によりカバーされる視野が、試料表面上で関心のある特徴部のタイプを表示するのに適しているように電子画像の倍率を設定した後、ユーザは、電子画像を観察しながらステージを移動させて、関心のある化学元素又は化合物が含まれている可能性がある領域を見つける。可能性のある領域が視野に現れると、ユーザは、ステージの移動を停止して、走査レートを調整し、X線取得を開始して、Mott及びFrielによって記載されるように、S/Nがフレームごとに高まるにつれて要素マップを観測する。視野内の元素又は化合物の分布が適切でないことがすぐに明らかになった場合、ユーザは、高速フレームレート電子画像を使用して、X線を取得するのにより適した領域を見つけるためにステージを移動する対話式探索に戻る。電子画像に戻って探索し、周期的に停止して、十分なX線データを取得して、視野が必要な元素の適切な分布を有するか否かをチェックし、そうでない場合に、電子画像に戻って探索するこのサイクルは、非効率的であり、ユーザがまた、試料上の広い領域をナビゲートすることを試みている間に、関心のある材料を含む試料上の領域を見落とす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】PCT/GB2011/051060
【文献】米国特許第US5357110明細書
【文献】PCT/GB2014/051555
【非特許文献】
【0008】
【文献】Mott(モット)及びFriel(フリエル)1999、Journal of Microscopy(顕微鏡法学会誌)、193巻、1部、1月、2から14ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ユーザのタスクが、特定の化学元素もしくは化合物、又は特定の特性を有する材料を含む領域を見つけることであるときに、問題は、電子画像が十分な情報を提供しないことである。SE信号は、トポグラフィを適切に表し、BSE信号は、材料の平均原子番号を示すことができるが、どちらの信号も化学元素含有量又は材料特性に関する特定の情報を提供しないため、ユーザは、このような情報を提供するために、或る領域が追加データを取得する価値がある可能性があるか否かを推測する必要がある。X線画像は、化学元素含有量に関する情報を提供できるが、低品質のS/Nを有し、トポグラフィの詳細を提供しないため、試料上のどこにいるかをユーザが認識するのに役立つ視覚的な手掛かりを与えない。従って、ユーザが試料上の広い領域をナビゲートして関心のある材料を見つけるための改良された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、顕微鏡で試料を分析する方法が提供され、本方法は、第1の検出器、及び該第1の検出器と異なる第2の検出器を使用して、一連の複合画像フレームを取得する段階を含み、複合画像フレームを取得する段階は、a)顕微鏡条件のセットを用いて設定された顕微鏡の設定された視野に対応する試料領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、b)設定された顕微鏡条件に従って、第1の検出器を使用して、複数の位置で試料内に生成された結果として生じる粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、c)設定された顕微鏡条件に従って、第2の検出器を使用して、複数の位置で試料内に生成された結果として生じる粒子の第2のセットを監視して、第2の画像フレームを得る段階であって、各画像フレームが、領域内の複数の位置に対応し且つ当該複数の位置で生成された監視される粒子から得られる値を有する複数の画素を含む、段階と、d)第2の画像フレームの各画素に対して、設定された顕微鏡条件が、一連の直前に取得した複合画像フレームの格納された第2の画像フレームのものと同じである場合、及びそれぞれの画素が格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する領域内の位置に対応する場合に、格納された画素の値を画素の値と組み合わせて画素に関する信号対雑音比を高める段階と、e)複合画像フレームが、複数の画素の各々に対して、領域内の対応する位置で生成され且つ第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される粒子から得られたデータを提供するように、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて複合画像フレームを生成する段階と、を含み、本方法が更に、一連の複合画像フレームを視覚ディスプレイにリアルタイムで表示する段階を含む。
【0011】
本方法は、画像が取得されるときにリアルタイムで、2つの異なるタイプの検出器を使用して取得され、従って、異なる画像取得特性を有し、試料に関する異なる情報を表す試料顕微鏡画像を組み合わせて表示するという利点を提供することができる。これにより、顕微鏡装置のユーザが試料の異なる領域をナビゲートし、その上の関心のある特徴部を見つけることができる速度及び効率を非常に高めることができる。この改良は、特に、同じ視野内の同じ試料領域を同時に示す2種類の画像を同時に表示することにより、ユーザが、第1のタイプの画像に基づいて可能性のある関心のある特徴部を迅速に識別できるようにし、この特徴部は、例えば、試料の周りをナビゲートしながら、試料表面の物理的な形状又はトポグラフィを示すことができ、このような可能性のある特徴部が見つけられると、顕微鏡の視野が維持されて、これらの特徴が含まれ続けて、第2のタイプの画像データが取得又は蓄積されて、第1の画像タイプによって提供される情報と異なるタイプの試料についてのその領域に関する情報が得られるようになるということから生じる。
【0012】
本方法は、何らかの荷電粒子ビーム機器、又は集束粒子ビームを使用する機器で試料を分析することに使用することができる。従って、本開示では、顕微鏡という用語は、何らかのこのような機器を指すのに使用される。典型的には、顕微鏡は、荷電粒子ビームが電子ビームである電子顕微鏡である。別の実施形態では、荷電粒子ビームは、イオンビームである。
【0013】
更に、一連の複合画像が取得されるときに、複合画像フレームにおいて第1の画像タイプと第2の画像タイプとを組み合わせてリアルタイムで表示することは、このような動作が、ユーザによる光子のナビゲーションを一時停止又は中断することなく、「オンザフライ」で行うことができることを意味する。
【0014】
本開示で使用される「粒子」という用語は、本開示では、イオン及び電子などの原子の構成要素の粒子、並びに電磁放射の量子、すなわち光子、例えばX線光子を表す粒子を含む物質の粒子を含むことが理解されるであろう。幾つかの実施形態では、例えば、荷電粒子ビームは、イオンビームであり、典型的には、電子及びイオンを含む結果として生じる粒子を試料から放出させ、検出器は、この粒子を監視することができる。
【0015】
本方法は、第2の検出器が、所与の顕微鏡条件下で第1の検出器が監視するように適合された信号より典型的に低い信号対雑音比を有する信号を監視するタイプのものである実施形態において特に有用である。このような実施形態では、第1の検出器と第2の検出器との組み合わせは、第1の検出器が高い信号対雑音比の画像信号を迅速に提供して、ユーザが試料の異なる領域を迅速に検査することを可能にするように、選択することができる。視野をその異なる領域にわたって移動することにより試料の周りをナビゲートすることにおいて、第2の低信号対雑音比検出器は、より高い信号の第1の検出器で得られた第1の画像フレームよりも品質の低い第2の画像フレームを提供することができる。しかしながら、ユーザがナビゲーションの速度又は視野の変化率を遅くするか、又は固定視野を維持するためにナビゲーションを停止する場合に、検出器が、試料上の同じ画素又は位置に対する繰り返しの測定値を取得でき、従って、第2の画像フレームからの画素を、試料内の同じ位置に対応し以前に取得した第2の画像フレームのものと組み合わせることにより、第2の検出器を使用して取得した画像のより低い信号対雑音比が軽減でき、第2の検出器によって取得したデータから得られるより高い品質の画像が得られる。
【0016】
幾つかの実施形態において、各画像フレームは、領域内の複数の位置に対応し、その領域で生成された監視される粒子を表す値を有する複数の画素を含む。例えば、画素値は、検出器によって監視され、対応する位置で生成された粒子の強度を表すことができる。その結果として、複合画像フレームは、幾つかの実施形態では、複数の画素の各々に対して、領域内の対応する位置で生成され、第1及び第2の検出器の各々によって監視される粒子を表すデータを提供することができる。画像フレームが電子後方散乱回折画像であるような他の実施形態では、画素値は、その位置における生成された粒子を直接表さない場合があるが、そうではなく、計算によってその位置から得ることができる。
【0017】
典型的には、第1の検出器及び第2の検出器の各々は、設定された顕微鏡条件のセットの下で又はそれに従って試料の領域を調査する。得られた第1及び第2の画像フレームの各々において、各画素は、その画素に対応するサンプル上の位置で生成され検出器によって監視される粒子のカウントを表すこと、又はそれに応じた値を有することができ、或いは、例えば、これらの監視される粒子のエネルギー分布を示すことができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、複合画像フレームの取得中、それぞれの第2の画像フレームと格納された画像フレームとの結合は、この格納された第2の画像フレームのものと同じである視野に応じて自動的に行うことができる。具体的には、設定された視野が、一連のフレーム内の直前に取得した複合フレーム用に設定された視野と同じである場合、又は、例えば、対象の画素がこれらの2つの第2の画像フレーム間の重複領域にある場合に、画素は、格納された画素と組み合わせることができる。
【0019】
第2の画像フレームに対する結合処理中、格納された第2の画像フレームのものと同じである設定顕微鏡条件は、画素について取得した信号の内容が同じであると考えることができる。例えば、対象の第2の画像フレームの取得と格納された画像フレームとの間で、焦点、非点収差、倍率、電子ビーム又は他のタイプの荷電粒子ビームの加速電圧、ビーム電流、輝度、又はコントラストに対する変更が行われない場合には、画素の測定は、典型的には、試料又は走査位置が移動していない限り、試料上のその位置に対する格納された画素値の繰り返し測定値を構成するため、その画素に関する信号対雑音比を高めるのに使用することができる。言い換えると、同じである構成された顕微鏡条件は、第2の画像フレームが取得された顕微鏡条件が、格納された第2の画像フレームが取得された顕微鏡条件と同じであると考えることができる。
【0020】
リアルタイムでの複合画像フレームの表示は、典型的には、画像データが取得されるとすぐに処理して表示することを含むため、画像データが、実質的に即座に利用可能である。このようにして、ユーザは、リアルタイムの複合画像フレームをフィードバックとして使用して、試料の周りでナビゲーションを誘導することができる。言い換えれば、複合画像フレームのリアルタイム表示は、特定の画像フレームの取得と視覚ディスプレイ上でのその表示との間に目立った遅延がないように構成することができる。例えば、ユーザが、ナビゲーションを停止し、試料の同じ領域で視野を維持する場合には、リアルタイム表示は、典型的には、以前に変化した視野が関連する領域で停止する状態で、視覚ディスプレイ上でユーザのナビゲーション停止とユーザへの提示との間に実質的に目立った遅延がないことを意味する。従って、本方法は、取得された一連の複合画像フレームをリアルタイム又は「ライブ」で表示する段階を含むことができ、本方法は、短時間内、最も好ましくはミリ秒程度の画像を処理して表示する段階を含むことができる。しかしながら、本方法は、第1及び第2の画像フレームを取得してから対応する複合画像フレームを視覚ディスプレイ上に提示するまでの期間の範囲に対して有用であり得ることも想定される。これらのフレーム期間は、例えば、1秒、0.3秒、0.05秒、又は0.01秒とすることができる。好ましくは、一連の複合画像フレームは、それらが取得された順序で表示される。
【0021】
従って、本方法は、可能な限り早く優れたS/N画像を見る能力を損なうことなく、ナビゲーションのための改良された手法をユーザに提供する。典型的には、顕微鏡のユーザには、サンプルの形状及び形態の良質の視覚表現を与える画像を、他の検出器から得られた材料の含有量又は特性に関する追加情報を組み合わせたディスプレイが提供される。ディスプレイは、ユーザが、画像を、並べて、又は好ましくは色混合を使用して同じ位置に重ねて同時に確認できるように提示することができる。
【0022】
検出器は、ビームが領域内の位置全体にわたって走査されることにより領域の画像を取得することができる。典型的には、画像を取得するには、集束電子ビームが、視野内の1つの点において、顕微鏡ビームデフレクタを使用して位置決めされ、電子検出器からの信号は、その位置で測定され、ビームがこの位置にある間に、追加の信号測定値が、1又は2以上の追加の検出器から得られる。各信号源に対する結果は、試料上のビーム位置に対応するその信号源に関するデジタル画像内の「画素」位置に関する強度値として使用することができる。次に、ビームは、典型的には、新しい位置に偏向され、新しい信号結果が、各信号源に関するデジタル画像内の対応する画素に対して記録される。このプロセスは、ビームが、典型的に矩形の視野をカバーする位置にアクセスして、その視野に対応するデジタル画像データの単一の「フレーム」が、あらゆる信号に対して記録されるまで、継続することができる。従って、電子検出器からの信号データは、デジタル「電子画像」を生じさせ、追加の検出器からのデータが処理されて、電子画像と同じ、試料上の視野からのものである1又は2以上の追加画像が提供されるが、材料組成又は特性に関する追加情報が提供される。
【0023】
典型的には、全ての画像は、視覚表示ユニットに転送されて並べて表示されるか、又はPCT/GB2011/051060に記載されているような技法を使用して単一の複合カラー画像に結合され、ユーザがユーザの視線で全ての情報を確認できるようになる。デジタルデータの完全なフレームが全ての信号に対して記録されるとすぐに、データの新しいフレームが収集できる。視野又は顕微鏡条件が変化していない場合には、典型的には、新しいデータフレームは、各画素での信号平均又は蓄積値を使用して、前のフレームの結果を強化し、これらの画像の信号対雑音比を高めるのに使用される。改良された画像は、再度、視覚表示ユニットに転送され、このフレーム取得と表示のサイクルが繰り返されて、ユーザは、並んだ画像又は単一の合成画像を含む複合画像を確認するようになり、信号対雑音比は、新しいフレームが取得されるたびに、次第に改良される。しかしながら、視野又は顕微鏡条件が、フレーム間で変化する場合には、任意の信号平均又は蓄積データは、典型的には、新しいフレームからのデータに置き換えられる。
【0024】
視野の変化は、例えば、集束電子ビームが、試料上のより小さな又はより大きな領域にわたって偏向されるように、ユーザが倍率を変更することによってもたらすことができる。代替的に、ユーザは、試料が支持されているステージ又はホルダを移動させて、この試料が、集束電子ビームに対して移動し、偏向電子ビームがアクセスする視野が、試料表面の新しい領域に移動するようにする。また、視野は、集束電子ビームが試料上の異なる領域をカバーする点のグリッド上に向けられるように、ビームの偏向を変更することによって変更することができる。また、ビーム電圧などの顕微鏡条件は、変更することもでき、これにより、電子画像内のコントラスト、更に追加信号の情報内容が、変化することになる。これらの何れの場合でも、既存の画像データを新しく取得したデータで即座に置き換えることにより、ユーザが、単一のフレーム時間内に新しい視野を見ることができるようになる。フレーム時間が十分に短い場合には、ユーザは、視覚表示ユニットを使用して、視野が移動している間、試料の表面上の特徴部を追跡することができる。
【0025】
任意のデータフレーム取得後、視野又は顕微鏡の条件が、前のフレームのものと同じである場合には、取得モードは、典型的には、連続したデータフレームを使用して、表示される画像のS/Nを高める場合の信号平均又は蓄積モードに戻る。従って、幾つかの実施形態では、ユーザが関心領域を見つけるために試料の表面上で視野を移動している場合には、ユーザは、電子画像によって提供される試料の形状及び形態と、追加の信号によって提供される材料組成又は特性との組み合わせを見ることができる。関心領域が表示されるとすぐに、ユーザは、移動を停止することができ、信号対雑音比は、ユーザからの相互作用又は分析セッションの中断なしに、急速に高まることになる。
【0026】
発明者は、追加の信号がS/Nの低い単一データフレームを与える場合でさえ、画像は、関心領域の概略の位置を与えるのに十分であることが多いことを発見した。
【0027】
更に、視野が移動している間、連続したフレームが表示されるため、各フレームにおけるノイズは異なり、目と脳との組み合わせにより時間平均効果が得られ、これにより、ユーザは、単一のフレームでは不明瞭である場合がある移動特徴部を認識することができるようになる。ユーザが、興味のある特徴部を見るとすぐに、ユーザが移動を停止した場合には、自動信号平均化が自動的に開始して、幾つかのフレームが記録された直後、この特徴部の視認性が急速に高まるようになる。
【0028】
ユーザが「オンザフライ」で決定を行うことができる場合のナビゲーション効率におけるこの段階機能改良を達成するために、重要な利点は、3又は4以上の検出器を備えた実施形態において、全ての画像が、少なくともユーザの周辺視界の範囲内であるように、ユーザが両方の画像又はより多くの画像を同時に調査することである。好ましくは、材料組成又は特性に関する追加の画像情報は、電子画像上のカラーオーバーレイとして提供され、ユーザが電子画像から目をそらすことを必要とすることなく追加データを提示する「ヘッドアップ」ディスプレイの均等物が提供される。
【0029】
上述したように、第1の検出器は、典型的には、電子検出器である。しかしながら、他のタイプの監視機器を使用できることも考えられる。
【0030】
典型的な実施形態では、第1の検出器は、試料の領域に関するトポグラフィ情報及び試料材料原子番号情報の何れか又は両方を含むデータを提供する結果として生じる粒子を監視するように適合される。このようなデータは、典型的には、二次電子又は後方散乱電子検出器によって提供することができる。従って、このような検出器は、ユーザが試料表面の周りの視野を迅速にナビゲートすることによって、使用するのに適した情報を含む画像フレームを迅速に提供するのに好適とすることができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、第2の検出器は、構成された顕微鏡条件に対して、第1の検出器が監視するように適合される結果として生じる粒子が生成される試料内に生成される速度の10分未満の速度で試料内に生成される結果として生じる粒子を監視するように適合される。例えば、この方法が電子顕微鏡で使用される場合に、典型的には、所与の電子顕微鏡条件に対して、試料に衝突する電子ビームに応答して生成され結果として放出されるX線は、放出された電子が生成される速度のおおよそ1桁である速度で生成される。これの関連での速度は、1秒あたりに生成される粒子の数を指し、これらの粒子は、物質又は電磁放射で構成される。幾つかの実施形態では、第2の検出器が監視するように適合された粒子が生成される速度は、第1の検出器が監視するように適合された粒子が生成される速度の100分の1である。
【0032】
例えば電子後方散乱回折分析を含む幾つかの実施形態では、第1及び第2の粒子生成又は監視速度のこのような差は存在しない場合がある。
【0033】
異なる実施形態では、第2の検出器は、例えば、X線、二次電子、及び後方散乱電子などの異なるタイプの粒子を監視するように適合することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、第2の検出器は、X線スペクトロメータ、電子回折パターンカメラ、電子エネルギー損失スペクトロメータ、又はカソードルミネセンス検出器のうちの何れかである。
【0035】
幾つかの実施形態では、粒子の第2のセットを監視して第2の画像フレームを得る段階は、第2の検出器から異なるタイプの2又は3以上の信号を得て、該信号の各々に対応するサブ画像フレームを得る段階を含み、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせる段階は、第1の画像フレームを該サブ画像フレームのうちの1又は2以上と組み合わせる段階を含む。
【0036】
従って、幾つかの実施形態では、サブ画像フレームは、第2の検出器からのデータを処理して異なるタイプの情報を得ることによって得ることができる。例えば、エネルギー範囲のセットごとに記録された光子数の尺度を提供するX線スペクトルは、輝線が、或るエネルギー範囲に広がって、2つの異なる輝線から記録されたデータがエネルギーに関して重複するようになる場合でさえ、特定の特徴的な輝線に対応する光子数を測定するように処理することができる。幾つかの実施形態では、イメージングカメラカメラなどの第2の検出器によって記録された電子回折パターンが、電子ビーム下の材料の結晶相及びその相の配向を特定するように処理されて、異なる相及び異なる結晶配向に対応するサブ画像が生成できるようになる。
【0037】
従って、幾つかの実施形態では、複数の信号が、同じ検出器から得ることができることになる。このような実施形態では、典型的には、第2の検出器は、異なるタイプの2又は3以上の信号を出力することができ、これらは、異なるタイプの監視される粒子に対応し、異なるサブ画像フレームを得るのに使用することができる。例えば、出力することができる異なるタイプの信号は、X線スペクトロメータによって得られるスペクトルと、電子に対して感度の高いカメラによって得られる電子回折パターンと、電子エネルギー損失スペクトロメータ又はカソードルミネセンス検出器によって得られるスペクトルとを含むことができる。これらの信号タイプの何れかが、第1の画像フレーム及び第2の画像フレームの何れかを得ること、又はサブ画像フレームを得ることに使用することができる。従って、幾つかの実施形態では、粒子の第2のセットを監視して第2の画像フレームを得る段階は、各サブセットが、第2の検出器から得られた異なるタイプの信号に対応する粒子の第2のセットの2又は3以上のサブセットを監視して、該サブセットの各々に対応するサブ画像フレームを得る段階を含む。
【0038】
幾つかの実施形態は、第1及び第2の検出器と異なるタイプの第3の検出器を含む。例えば、第1、第2、及び第3の検出器の各々は、二次電子検出器、後方散乱電子検出器、及びX線検出器のうちの何れかとすることができる。
【0039】
上述したように、画像フレームの画素は、監視される粒子のエネルギー分布を表す値を表すこと、又はその値を有することができる。このことは、画像フレームのサブセット又は構成要素であり、各々が異なる範囲の粒子エネルギーに対応する2又は3以上のサブ画像フレームを得ることによって実現することができる。従って、幾つかの実施形態では、粒子の第2のセットを監視して第2の画像フレームを得る段階は、各サブセットが、異なる粒子エネルギー範囲に対応する該粒子の第2のセットの2又は3以上のサブセットを監視して、該サブセットの各々に対応するサブ画像フレームを得る段階と、第2の画像フレームが、複数の画素の各々に対して、領域内の対応する位置で生成されサブセットの各々に含まれる粒子から得られたデータを提供するように、サブ画像フレームを一緒に組み合わせて、第2の画像フレームを生成する段階と、を含み、各サブ画像フレームは、領域内の複数の位置に対応し、各サブ画像フレームは、対応するサブセットに含まれ該複数の位置で生成された監視される粒子から得られた複数の画素を含む。
【0040】
このようにして、第2の検出器は、各複合画像フレームに対して、1つより多い関連画像(サブ画像フレーム)を得て、異なるエネルギーの、又は異なるエネルギー帯域にある結果として生じる粒子を監視することができる。別個のサブ画像は、サブ画像フレームの各々に対して、対応する試料位置での粒子カウントに対応する、複数の構成画素に関する画素値又は強度を区別することを可能にするように一緒に組み合わせることができる。このことは、例えば、サブ画像フレームの各々に異なる色を割り当てること、又はそれを異なる色でレンダリングすることにより達成することができる。このことは、第2の画像フレーム、及びその結果として複合画像フレーム内の所与の位置又は画素での結果の色への可視的な寄与が、この位置で生成された対応エネルギーバンド又はサブセットでの監視される粒子の強度を視覚的に示すことができるように行うことができる。
【0041】
従って、幾つかの実施形態では、サブ画像フレームに基づく合成色の第2の画像フレームが形成され、次に、第1の画像フレームと組み合わされて、複合画像が形成できる。
【0042】
例えば、第2の検出器がX線検出器である実施形態では、一連のフレーム内の各複合フレームに対して、第2の検出器は、複数の化学元素の複数の特徴的なエネルギー又はエネルギーバンドに対応するエネルギー範囲の複数の粒子サブセットを監視することによって、これらの化学元素の特徴的な放射に関する強度を監視する。従って、単一のX線検出器から、複数のサブ画像が得られ、各サブ画像は異なる化学元素に対応する。
【0043】
幾つかの実施形態では、2又は3以上のサブ画像フレームは、第2の画像フレームを形成するために結合されないが、その代わり、第2の画像フレームと結合される前に、方法の段階(d)に従って、別々に処理されて、複合画像フレームが形成される。従って、異なる実施形態では、サブ画像フレームの何れか、又は画像フレームの何れかが、「蓄積」モード及び「リフレッシュ」モードの両方で取得されることが可能である。
【0044】
一連の取得した複合画像をユーザに迅速に提供することは特に重要であり、従って、好ましい実施形態では、一連の複合画像フレームをリアルタイムで表示する段階は、各複合画像フレームに対して、対応する第1及び第2の画像フレームが得られてからこの複合画像フレームが視覚ディスプレイに表示されるまでの経過時間は、1秒より短い、好ましくは0.3秒より短い、より好ましくは0.05秒より短いことを含むことを理解されたい。
【0045】
第1の画像フレームと第2の画像フレームとの結合は、好ましくは、ユーザが第1及び第2の検出器の両方によって監視される領域全体にわたって試料の特性を同時に検査できるようにする任意の方法で行うことができる。幾つかの好ましい実施形態では、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて複合画像フレームを生成する段階は、複合画像フレームが複数の画素を含むように第1の画像フレームと第2の画像フレームとを重ね合わせる段階を含み、該画素の各々は、領域内の複数の位置のうちの1つに対応し、第1のセット及び第2のセットの両方に含まれ、それぞれの位置で生成された粒子から得られたデータを提供する。
【0046】
従って、各複合画像フレームに関して、第1及び第2の画像フレームが組み合わされて、第1及び第2の検出器の両方によって取得されたデータを含む単一の画像フレームが形成できる。この画像フレームは、好ましくは、表示されている画像内の各位置に対する第1の粒子セット及び粒子の第2のセット情報が個別に区別されることを可能にするように視覚的にユーザに示される。
【0047】
画像フレームに対して行われる第1の画像フレームと第2の画像フレームとの結合は、典型的には、画素ごとの基準で行われる。従って、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて複合画像フレームを生成する段階は、典型的には、第1の画像フレームの各画素を、第1の画像フレームのそれぞれの画素が対応する領域内の位置に対応する第2の画像フレームの画素と組み合わせる段階を含む。従って、試料の領域内の同じ位置を表すことによって互いに対応する第1及び第2の画像フレームの画素は、一緒に追加されるそれらの画素地を有して、複合画像フレームの一部を形成する複合画素が生成できる。このようにして2つの画像を1つの画像にマージすることは、同じ領域を表す2つの画像フレーム内の画素が、追加される、すなわち、互いの上でその上部に重なるように、第1の画像フレームを第2の画像フレームに重ね合わせることと考えることができる。
【0048】
2つの画像フレームを互いに重ね合わせて複合画像フレームを形成する実施形態において、画像フレームの両方からの情報が複合画像フレームでユーザに見えるようにするには、色混合を使用することが望ましい。幾つかの実施形態では、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせる段階は、第1及び第2の画像フレーム内の対応する画素の強度に基づく複合画像画素の色を計算する段階を含む。典型的には、第1の画像を使用して強度を決定し、第2の画像が色相を管理することなどの第1の画像フレームと第2の画像フレームとの結合技法が可能である。このような技法は、例えば、トポグラフィック電子画像に重ねられた結晶配向を示す場合により適切であり得る。
【0049】
幾つかの実施形態では、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせる段階は、第1の画像フレームに第1の色を割り当て、第2の画像フレームに第2の異なる色を割り当てて、複合画像フレームがカラー画像を含むようにする段階を含むことができ、第1及び第2の色の各画素における相対的な強度は、領域内の対応する位置で生成された監視される粒子の第1及び第2のセットにそれぞれ含まれる粒子を表す。
【0050】
このような結合技法を使用すると、第1及び第2の画像フレームの各々による複合画像への寄与、従って、第1及び第2の検出器によってそれぞれ測定された第1及び粒子の第2のセットによる寄与が、各々、複合画像フレームに示される異なる色を割り当てられることによって視覚化される。例えば、第1の検出器が二次電子を監視し、第2の検出器がX線を監視する実施形態では、第1の画像フレームは、例えばHSL色値に従って明度値によって表すことができる。このようにして、試料の領域のトポグラフィは、さまざまな強度の画素又はグレーの濃淡を含むグレースケール画像の形で視覚的に表される。X線画像は、次に、例えば、緑色を割り当てられて、第2の画像フレームのX線画像によって表される領域内の化学元素含有量に関する情報が、グレースケールの第1の画像フレームと重なり合って、X線検出器からの視覚データが、緑色で視覚化されたままでありながら、第1の検出器からのトポグラフィ情報が、重なり合ったグレースケール画像に従って、明暗が異なる濃淡の領域の形でX線データと一致して示すことができるようになる。
【0051】
幾つかの他の実施形態では、2つの画像フレームを重ね合わせるのではなく、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせる段階は、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを並べて表示することによって行われる。従って、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて複合画像フレームを生成する段階は、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを並置する段階を含むことができる。好ましくは、このような実施形態では、2つの画像フレームは、複合画像フレームが視覚ディスプレイ上に表示されるときに、これらの画像フレームが、両方とも、ユーザの視野内で同時に見えるように互いに並んで位置決めされる。従って、これらの実施形態では、複合画像フレームは、典型的には、個々の第1及び第2の画像フレームの各々の少なくとも2倍の大きさであり、すなわち、その少なくとも2倍の画素を含む。
【0052】
第1及び第2の画像フレームが取得される顕微鏡条件は、幾つかの異なる構成可能な条件を含むことができる。電子顕微鏡の電子カラム用に構成できるこれらの条件は、倍率、焦点、非点収差、加速電圧、ビーム電流、走査偏向を含むことができる。すなわち、前述の顕微鏡条件のリストは、荷電粒子ビームに関して構成することができる。位置及び配向は、試料に関して構成することができ、又は、特に、試料を保持するように適合された試料ステージに関して構成することができる。言い換えると、空間座標は、デカルト座標系におけるX、Y、Z軸の位置、並びに試料の傾斜及び回転の程度を含むことができる。輝度及びコントラストは、第1及び第2の検出器の各々に関して構成することができる。
【0053】
従って、電子顕微鏡の視野は、典型的には、試料ステージの位置及び配向、倍率、走査偏向、すなわち、走査荷電粒子ビームに適用される偏向の程度などの顕微鏡条件を構成することにより構成することができる。
【0054】
第2の画像フレームと格納された第2の画像フレームの条件付き結合に関して、典型的には、視野又は検出器信号の内容を変更する顕微鏡条件のうちの何れかの何らかの変更は、格納された画像フレームが、もはや新しい条件又は視野の下でのデータと整合性のないものとなるため、画像のリフレッシュをトリガーする必要があり、すなわち、第2の画像フレームを格納された画像フレームと結合することなくこの第2の画像フレームを取り込んで、ユーザに表示される画像から以前に蓄積されたデータを削除する必要がある。しかしながら、顕微鏡の電子カラム条件が同じであり、個々の画素の座標が既知である場合には、例えば、ステージ位置又はビーム偏向の既知の調整によって試料上の観測視野に既知の制御が適用されるため、第2の画像フレームの位置と格納された以前の第2の画像フレームとの重なりが存在する場合に、典型的には、試料上の同じ位置に対応する画素のみが結合される。
【0055】
典型的には、視野の変化は、主に、試料又は試料ステージが移動した場合、又は荷電粒子ビームによって走査することができる試料の領域が、例えば、走査偏向条件を変更することによって試料上で移動した場合に生じる。従って、顕微鏡条件のフィールドの何らかの変化は、典型的には、同じ又は対応する画素位置での信号の次の測定値に、前の測定を置き換えるように使用させる。すなわち、第2の画像フレームは、結合段階が行われる「蓄積」モードではなく、「リフレッシュ」モードで取り込むことができる。従って、好ましくは、例えば、視野が、ステージの空間座標が変更されることにより移動している場合に、「リフレッシュされた」画像表示は、ユーザが、表示された一連の複合画像フレームを観測して、ディスプレイ全体にわたって試料上の移動特徴部を追跡するのに十分に迅速に更新される。
【0056】
画像フレームからの画素の結合は、必ずしも第2の画像フレームのみに限定されるものではないとすることができる。幾つかの実施形態では、画像フレームを得る「蓄積」モードの使用は、第1の画像フレーム、並びに第2の画像フレームに適用することができる。すなわち、複合画像フレームを取得する段階は更に、第1の画像フレームの各画素に対して、構成された顕微鏡条件が、一連の直前に取得した複合画像フレームの格納された第1の画像フレームのものと同じである場合で、それぞれの画素が、該格納された第1の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する領域内の位置に対応する場合に、該格納された画素の値を画素の値と組み合わせて、信号対雑音比を高める段階を含むことができる。画像フレームを得ることについての信号平均化又は蓄積モードを第1の検出器からの画像に適用することは、第1の検出器からの信号の信号対雑音比が低い、又は所望の閾値より低い場合の実施形態において好都合であり得る。
【0057】
視覚ディスプレイのフレームレート、すなわち、一連の画像内の連続した複合画像が視覚ディスプレイに表示されるレートは、異なる実施形態の間で異なるものとすることができ、構成可能とすることができる。幾つかの実施形態では、複合画像フレームが表示されるフレームレートは、少なくとも1フレーム毎秒、好ましくは少なくとも3フレーム毎秒、より好ましくは20フレーム毎秒である。幾つかの実施形態において、単一の複合画像フレームは、何らかの所与の時間に処理される。このような実施形態では、上記で提示された例示的なフレームレートは、それぞれ1秒又はそれより短い、0.3秒又はそれより短い、及び0.05秒又はそれより短い複合画像取得時間又は処理時間に対応する。
【0058】
試料上の特定の特徴部が、ディスプレイ全体にわたって又はその周りで連続的に移動するように見えるときに、ユーザがこの特徴部を追跡することを可能にするレート又は頻度で一連の複合画像フレームを表示することが有用である。このことは、幾つかの実施形態では、一連の複合画像フレームが取得され表示されるレートは、少なくとも10フレーム毎秒、好ましくは少なくとも18フレーム毎秒、より好ましくは少なくとも25フレーム毎秒、更により好ましくは少なくとも50フレーム毎秒であることにより達成することができる。従って、好ましくは、一連の複合画像フレームは、動画の形態で表示され、好ましくは、表示フレームレートは、ビデオフレームレートに等しい。
【0059】
好ましい実施形態では、格納された画素を画素と組み合わせて画素の信号対雑音比を高める段階は、信号平均化又は信号蓄積によって行われる。検出器からの出力は、信号、従って、信号平均化及び信号蓄積のノイズ低減技法とみなすことができ、反復測定値のセット、しながら、所与の画素に関して同じ条件下での測定値のセット、又は或る領域内の特定の位置に対応する画素にわたる平均値又は総和が使用できる。
【0060】
幾つかの好ましい実施形態では、本方法は更に、一連の複合フレームのうちの1又は2以上の取得中、それぞれの複合フレームから得られたデータを格納する段階と、得られたデータが、電子顕微鏡の構成された視野を表す視野データに関連付けられるように、該視野データを格納する段階とを含む。
【0061】
得られたデータは、複合画像フレーム自体を含むこと、又は複合画像フレーム自体とすることができる。得られたデータはまた、その視野に関して取得した複合画像フレームを蓄積したもの又はそれらの何らかの組み合わせを含むこともできる。得られたデータはまた、その視野によってカバーされる領域内の試料の材料特性を示す1又は2以上のパラメータを含むこともできる。例えば、得られたデータは、検出器から取得されたX線信号から得られた、その領域内の試料材料の化学組成を示すパラメータを含むことができる。
【0062】
視野に関連付けられて得られたデータは、例えばリレーショナルデータベース内の視野データにリンク又は関連し得られたデータを含むことができる。得られたデータと視野データとの関連付けにより、ユーザは、例えば、試料ステージを移動させることにより又はビーム偏向によりナビゲートすることによって、電子顕微鏡の視野を構成して、特定の特性を有する試料の領域を再訪すること、又は電子顕微鏡の視野がその領域に対応する場合に、撮影された複合画像フレームで示された、又はそれから得られるかもしくは計算された特性を識別することができるようになる。
【0063】
幾つかのこのような実施形態では、本方法は更に、試料の複数の領域の各々の少なくとも1つの複合画像フレームを取得する段階と、試料上の領域の相対位置に従って配列された複数の領域の複合画像フレームを含む試料画像を生成する段階とを含み、本方法は更に、該試料画像上に、それぞれの複合フレームに対応する視野に関連付けられ格納され得られたデータに従って、複合フレームのうちの1又は2以上の各々での標識を表示する段階を含む。
【0064】
試料画像上に表示する段階は、1又は2以上の複合フレームの各々の一部として、又はそれと重ね合わされた標識を表示する段階を含むことができる。このことは、この標識が試料画像内の試料上の領域に位置決めされるか、又はそれをラベル付けするという点において、それぞれの複合フレームに対応する視野に関連付けられ格納され得られたデータに従って行うことができる。
【0065】
この標識は、例えば、化学元素組成などの得られた特性を示す色又は形状を有するマーカを含むことができる。また、マーカは、X線画像又は関連領域に対応する信号から得られた元素の存在又は濃度などの、構成された条件に基づいて、試料画像内の所与の複合フレームに存在すること又は存在しないこともできる。
【0066】
従って、ユーザが、視野をその表面全体にわたって移動させることによって試料を探索しているときに、ユーザは、後でより詳細な調査に値する可能性のある関心領域に遭遇することができ、又は実際に、濃度の低下に起因して特定の材料の存在を見逃す場合がある。従って、視野及び顕微鏡条件が静止している場合は常に、データは、典型的には、追加の信号源から蓄積され、このデータ全体が、保存されるか、又はパラメータが、このデータから得られて、視野の位置及び寸法を規定する座標と一緒にデータベースに保存される。探索セッションの後、このデータベースに問い合わせて、データがユーザにとって「関心のある」という基準を満たす位置を見つけることができる。
【0067】
ユーザが関心のある特徴部を含む領域に戻るのを支援するために、ディスプレイは、データベースから生成され、訪問した視野位置で1又は2以上のパラメータの値を示すのに使用することができる。好ましくは、このディスプレイは、ユーザがアクセスできる動きの全範囲をカバーし、データが記録された各位置について、全てのデータ又はデータから得られたパラメータを表示する。記録された位置の視野が重なり合う場合には、データは、重なり合う領域に集約されるか、又は適切に組み合わされて、ユーザが更なる分析に最適な場所を識別するのを支援する画像が提供される。理想的には、追加情報は、動きの全範囲をカバーする試料の画像に重ねられる。
【0068】
従って、本発明は、試料に関する分析のための最適な領域を発見することを試みる場合に、生産性における段階的機能改良をユーザに与える相乗的機能性セットを提供する。
【0069】
本発明の第2の態様によれば、試料を分析するためのシステムが提供され、本システムは、第1の検出器、及び第1の検出器と異なる第2の検出器を含む顕微鏡と、一連の複合画像フレームを取得するように該顕微鏡を制御するよう構成されたコントローラユニットと、を備え、複合画像フレームを取得する段階は、a)顕微鏡条件のセットを用いて構成された顕微鏡の構成された視野に対応する顕微鏡内の試料の領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、b)構成された顕微鏡条件に従って、第1の検出器を使用して、複数の位置で試料内に生成された結果として生じる粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、c)構成された顕微鏡条件に従って、第2の検出器を使用して、複数の位置で試料内に生成された結果として生じる粒子の第2のセットを監視して、第2の画像フレームを取得する段階であって、各画像フレームは、領域内の複数の位置に対応し且つ当該位置で生成された監視される粒子から得られた値を有する複数の画素を含む、段階と、d)第2の画像フレームの各画素に対して、構成された顕微鏡条件が、一連の直前に取得した複合画像フレームの格納された第2の画像フレームのものと同じ場合、及びそれぞれの画素が格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する領域内の位置に対応する場合に、格納された画素の値を画素の値と組み合わせて信号対雑音比を高める段階と、e)複合画像フレームが、複数の画素の各々に関して、領域内の対応する位置で生成され且つ第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される粒子から得られたデータを提供するように、第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて複合画像フレームを生成する段階と、を含み、本システムは更に、取得した一連の複合画像フレームをリアルタイムで受け取って表示するように構成された視覚ディスプレイを備える。
【0070】
このようなシステムは、第1の態様による方法を実行するのに好適とすることができる。本システムは、複数の信号からの情報を組み合わせて、指示内容が試料の広い領域を迅速にナビゲートできるように、組み合わされた信号をリアルタイムでユーザに表示することによって、電子顕微鏡又は他の荷電粒子ビーム機器における試料の分析を助長する。
【0071】
幾つかの実施形態では、本システムは、電子顕微鏡内の集束電子ビームが試料の表面上の2次元領域にわたって走査されている間に生成され電子顕微鏡からのものである第1の信号を表示するのに適しており、少なくとも1つの補助信号は、個々の化学元素含有量又は原子番号以外の材料特性に関する情報を提供する異なる検出器から得られ、各信号は、領域をカバーする電子ビーム位置の2次元配列で測定され、測定結果の対応する画素配列は、領域をカバーする視野に対するデジタル画像を構成し、視覚ディスプレイを用いて、は、全ての信号に関するデジタル画像が、ユーザの周辺視野の範囲内に収まるように、該デジタル画像を示し、全ての信号に関する視野をカバーする画素測定値の完全なセット及び視覚表示の準備が、短い時間期間で行われて完了し、視野をカバーする全ての信号の画素測定値の完全なセット及び視覚表示の更新が、連続的に繰り返され、同じ画素位置における少なくとも1つの補助信号の連続した測定値は、視野又は顕微鏡条件が変化しない場合に、その画素での測定値の信号対雑音比を高めるのに使用され、視野又は顕微鏡条件に何らかの変化がある場合に、同じ画素位置での信号の次の測定値は、以前の測定値を置き換えるのに使用され、短い時間期間は、視野が変更されているときに、観察者が、移動する特徴部を識別する程度に速く画像表示が更新されるのに十分に短い。
【0072】
このような実施形態では、典型的には、信号の1つより多い測定値についての表示結果の信号対雑音比は、該測定値のカルマン平均化を使用することによって、又は測定値を加算して、測定値の数に応じて輝度スケーリングを変更することによって高まる。
【0073】
このようにして、試料上の画素又は位置の繰り返し測定値が、システムによって取得される一連の複合画像フレーム内の複数の連続する第2の画像フレームにおいて得られる場合に、カルマン再帰フィルタが、複数の画素測定値を使用して信号対雑音比を高めるのに使用することができる。幾つかの実施形態において、画像信号の改良は、連続する画素測定値を加算して、測定数、すなわちシステムによって画素が加算されるフレーム数に従って輝度を調整することによって達成される。
【0074】
典型的には、短い時間期間は、1秒より短い、好ましくは0.3秒より短い、理想的には0.05秒より短い。従って、本システムは、顕著な遅延のないように、又は本システムのユーザが最小の遅延を体験するように十分に迅速に視覚表示の準備を行って完了するように構成することができる。
【0075】
本システムは、視野がいつ変化するかを自動的に識別して、一連のフレーム内の連続したフレームが一緒に加算される「平均化」又は「蓄積」モードから「リフレッシュ」モードに切り替えるように構成することができる。幾つかの実施形態では、試料が移動している場合、又は走査領域が、ユーザ制御下で意図的に変更されている場合に、視野は、変化しているとみなされる。
【0076】
幾つかの実施形態では、視野又は顕微鏡条件の変化は、新しいデジタル画像を以前に取得された1つと数学的に比較することによって検出される。本システムは、取得した一連のフレーム内の連続するフレームを比較して、視野の変化を識別するように構成することができる。本システムは、視野内で移動しながら、この視野に留まる試料の部分に対して「蓄積」モードで動作しながら、ユーザが試料の周り視野をナビゲートするときに、試料の一部分がこの視野に導入されるときに、この部分に対して「リフレッシュ」モードで動作するように構成することができる。
【0077】
典型的には、補助信号は、X線スペクトロメータによって得られるスペクトル、電子に対して感度の高いカメラによって得られる電子回折パターン、電子エネルギー損失スペクトロメータによって得られるスペクトル、又はカソードルミネセンス検出器から得られる。
【0078】
幾つかの実施形態では、視野の変化は、顕微鏡ステージを移動させること、及び/又は位置座標のセットによって規定された新しい位置へのビーム偏向にオフセットを追加することによって生じ、視野がその位置にある間、データは、電子及び/又は少なくとも1つの補助信号源から蓄積され、このデータ全体が保存されるか、又はパラメータがこのデータから得られて、位置座標と一緒にデータベースに保存される。
【0079】
従って、本システムは、第1及び第2の検出器の何れか又は両方によって取得された信号から得られたデータを格納するためのデータベースを備えることができる。本システムは、このデータを試料に関する対応の位置座標と一緒に格納して、ユーザが、検査又は更なる分析に望ましい特定の特性が識別されるか又は得られる試料領域の位置を特定して、容易にこの領域にナビゲートできるようになる。
【0080】
幾つかの好ましい実施形態では、ディスプレイは、データベースから生成され、以前に訪れた位置座標で1又は2以上のパラメータの値を示すのに使用される。例えば、試料画像上で表されるときの、対応する格納位置座標で得られたデータ又はパラメータを視覚的表現は、システムが、表示された複合画像フレームに重ね合わされ得られた特性を示すマップをユーザに提供することを可能にする。
【0081】
このような実施形態では、典型的には、ディスプレイは、ユーザが訪れた位置の全範囲をカバーし、データが記録された位置座標の各セットに対して、データから計算された属性に関して、ディスプレイは、データがその位置で記録されたときに、電子ビームによって走査された視野に対応する領域をカバーするのと同じスケールでのカラーオーバーレイを使用する。従って、本システムは、電子顕微鏡によって訪問又は走査された領域に対して得られたデータを示すマーキングを含む、ラベル付き又は注釈付きのディスプレイを生成することができる。
【0082】
幾つかのこのような実施形態では、領域が重なり合う場合に、この重なり合う領域に使用される属性値及び/又はデータからの他の属性値は、全ての重なり合う領域からの結果を集約、結合又はソートするのに使用される。本システムは、取得された複合フレームが、以前に取得された複合フレームの視野と少なくとも部分的に重なり合う視野を有するような速度で、試料の周りで視野を移動させるのに使用することができる。従って、このような重なり合う複合画像フレームに関する実際の値又は得られたデータを組み合わせて、関連の重なり合う領域を表し改良されたデータがユーザに提供され得る。
【0083】
本システムは、第1又は第2の検出器、或いは更に別の検出器によって取り込まれた画像フレームに基づいて試料画像を構築することができる。加えて、幾つかの実施形態では、ディスプレイは、同じスケールでの試料の大面積の事前取得画像上に、又はデータベース内の少なくとも1つの信号の保存データを使用して生成された画像上に重ねられる。
【0084】
ここで、本発明の実施例について添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】従来技術による試料からの電子画像及びX線画像を記録するための走査型電子顕微鏡システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明による例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一例による、ユーザナビゲーション用の視覚表示画面の機能要素を示すワイヤフレームである。
【
図4】本発明の一例として化学元素が検出された試料の領域を示す標識有する複数の取得した複合画像フレームから形成された試料画像の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
ここで、
図1~
図4を参照して、本発明による電子顕微鏡にて試料を分析するための方法及びシステムについて説明する。
【0087】
図2のフローチャートに示されている例示的な方法は、
図1に示されている構成のものなどの電子顕微鏡を使用して実行することができる。本方法は、一連の複合画像フレームを取得するステップを含み、複合画像フレームの取得は、
図2におけるステップで示される。複合画像フレームは、この例では、所定の頻度で取得される。フレームの取得中、電子顕微鏡システムのユーザは、サンプルステージを移動させることにより、顕微鏡の視野に試料の異なる領域をカバーさせることができ、ステージの移動を周期的に遅く又は停止して、特定の関心領域が発見されたときに、その領域に対する第2の画像フレームデータを蓄積する。
【0088】
ステップ201において、電子顕微鏡の電子ビームは、領域のラスタ走査を実行するようにビームが偏向することにより、試料の領域内の複数の位置に衝突させる。
【0089】
ステップ202において、電子ビームがこれら複数の位置に衝突した結果としてこれらの位置で試料内に生じた粒子の第1のセットは、第1の検出器を使用して監視されて、第1の画像フレームが得られるようになる。ステップ203において、電子ビームが複数の位置に衝突した結果としてこれらの位置で試料内に生じた粒子の第2のセットが、第2の検出器を使用して監視されて、第2の画像フレームが得られる。電子ビームが各位置に当たると、第1及び第2の検出器は、当該位置に対する第1及び粒子の第2のセットから得られるそれぞれの信号を監視する。従って、ステップ202及び203は、実質的に同時に行われる。各検出器からの信号は、画素の相対位置が、それぞれの画素値が生成された監視される粒子の位置の領域内の相対位置に対応するように配列された画素から形成される画像を生成するのに使用される。
【0090】
ステップ206に示されているように、第2の画像フレーム内の各画素に対して、構成された顕微鏡条件が、一連の画像フレーム内の直前に取得された複合フレームの格納された第2の画像フレームに関する条件と同じである場合、及びそれぞれの画素が、この格納された第2の画素フレームが含む格納された画素が対応する領域内の位置に対応する場合、この格納された画素は、この画素の信号対雑音比を高めるように画素と組み合わされる。従って、同じ顕微鏡条件下で監視され同様に存在する試料の部分に対応する第2の画像フレームのこれらの部分は、連続した先行する第2の画像フレーム内で、「蓄積」モードで複合画像フレームに取り込まれて伝えられる(ステップ205)。そうでなければ、顕微鏡条件が同じでない場合、又は画素が、この格納された第2の画素フレームが含む格納された画素が対応する領域内の位置に対応しない場合、第2の画素フレームの当該画素は、「リフレッシュ」モードで取り込まれ、格納された画素と組み合わされない。
【0091】
ステップ206において、第1の画像フレーム及び第2の画像フレームが組み合わされて、両方の画像フレームからの視覚データを個別に区別し、試料領域の関連部分に関連付けることができるように2つの画像を互いに重ね合わせることにより、複合画像フレームが生成される。
【0092】
複合画像フレームが生成されると、ステップ207において、この複合画像フレームがリアルタイムで視覚ディスプレイに表示される。この例では、ステップ202において、この領域に関する複合画像フレームが、この領域に対するラスタ走査が完了してから0.05秒後に表示される。上述のステップは、一連の各複合画像フレームについて取得されるたびに繰り返される。
【0093】
図1に示されている構成のものなどの電子顕微鏡では、材料の組成又は特性に関する情報を提供する多数の信号源が存在する。SEMにおけるBSE検出器(又はSTEMにおける環状暗視野検出器)からの信号は、原子の原子番号の影響を受けるが、個々の化学元素含有量に関するいかなる情報も明らかにせず、入射電子ビーム下に存在する特定の材料を一意に識別することができない。しかしながら、電子に対して感度の高いイメージングカメラは、角度方向に対する電子の強度の変化を示す電子回折パターンを記録することができる。このようなパターンの分析は、特定の結晶相の配向又は存在などの結晶材料の特性を明らかにすることができる。薄い試料が分析される場合、フィルムを透過した電子のエネルギースペクトルは、電子エネルギー損失スペクトロメータ(EELS)を用いて取得することができ、スペクトル内のコアロスエッジの存在は、例えば、個々の化学元素の存在を明らかにすることができる。電子エネルギースペクトロメータはまた、個々の化学元素含有量の特性であるバルクサンプルからのオージェ放射を明らかにするスペクトルを取得するのに使用することもできる。光に対して感度の高い検出器は、サンプルがカソードルミネセンス(CL)である領域を明らかにすることができ、この信号は、材料の電子構造の影響を受ける。個々の化学元素からの特徴的な輝線からのX線信号は、X線に対して感度の高いセンサに向かって当該線エネルギーのX線の選択的ブラッグ反射を引き起こす幾何的形状の結晶、回折格子、又はゾーンプレートを使用することにより取得することができる。これらは全て、信号が、SE又はBSEからの電子画像に有用な補助となることができる個々の化学元素含有量又は材料特性に関する追加情報を提供する例である。しかしながら、以下の説明は、X線スペクトロメータを使用して化学元素含有量に関する追加情報を提供する場合の特定の事例に適用される。
【0094】
電子顕微鏡では、典型的には、1又は2以上のX線検出器と、試料から放射されるX線エネルギースペクトルを記録することを可能にする関連信号プロセッサとを有することが典型的である。光子エネルギー測定値のヒストグラムが短時間記録され、集束電子ビームが特定の画素位置に偏向される。ヒストグラムは、デジタルX線エネルギースペクトルに相当し、特定の化学元素の特徴的なX線放射に対応し取得された光子の数は、スペクトルから導出でき、これにより、化学元素のセットに対応する信号値のセットが得られる。更に、電子検出器(2次電子検出器又は後方散乱電子検出器など)からの信号は、当該位置で記録することができる。従って、電子ビームが、1つの完全な画像フレームを構成する画素位置のセットに偏向される場合に、デジタル電子画像及び異なる化学元素に対応する1又は2以上の画像に対応する画素測定値のセットが得られる。これらの電子及びX線画像に関するデータは、適切にスケーリングされ、典型的にはコンピュータの制御下でビデオ表示ユニットに渡される。
図2は、電子画像が左上に表示され、異なる化学元素に対応する1又は2以上のX線画像が、この電子画像のすぐ右に表示されて、これらの画像が、ユーザが電子画像に集中している同じ時間に視認できるようになる。情報を同時に視認するのを容易にするために、1又は2以上の化学元素からのX線データは、例えばPCT/GB2011/051060又はUS5357110で説明されているものなどの技法を使用して、組み合わされて、電子画像上のカラーオーバーレイとして表示でき、
図3では、電子画像上に重ね合わされたX線情報を表示するための選択肢は、ユーザがコンピュータマウスを使用して、ディスプレイ上の「レイヤマップ」とマークされたボックス内にカーソルを位置決めして「クリックすること」によって選択することができる。
【0095】
ユーザが、試料を探索して関心領域を見つけることを望む場合に、視野が移動する必要があり、画像を処理及び表示する方法は、視野が変化しながら、ユーザが試料を効率的に探索するのに役立つリアルタイムフィードバックをユーザに与えるように変化する必要がある。
【0096】
視野は、幾つかの方法で変更することができる。顕微鏡の倍率は、ビームデフレクタコイルに供給される電流(又はビームデフレクタプレートへの電圧)を小さくすることによって増加して、試料上で走査される領域のサイズが小さくなるようになる。オフセットは、試料上で走査される領域をシフトするのに使用される偏向又は追加の偏向器セットに追加することができる。試料は、この試料を支持するホルダ又はステージを電子ビーム軸に対して新しい位置に移動することにより、物理的に移動することができる。これらの全ての例において、得られる信号データは、試料上の異なる視野に対応することになる。更に、ユーザが顕微鏡に対する動作電圧を変更した場合に、全ての信号の内容が変化することになる。
【0097】
視野が変化している場合に、ユーザは、可能な限り早く結果を確認する必要があり、このことは、画素の値を対応するビーム位置での信号測定値の新しい結果に置き換えることによって達成されて、画像が、データの新しい各フレームでリフレッシュされるようになる。高フレームレートは、ユーザが視野の変更を続行するか否かを判定するのに十分な速度で画像がリフレッシュされることを保証する。特徴部は、それを追跡するために、少なくとも2つの連続フレームで視覚化される必要があるため、視野が移動している場合、フレーム時間は、オブジェクトを追跡できる速度を制限する。フレームの更新時間が1秒より長い場合に、ユーザは、制御を感じないことになり、ユーザの一連の思考に集中したままでいることができない。0.3秒のフレームリフレッシュ時間で、ユーザは、特徴部がほんのわずかの画面幅だけ移動する場合に、移動する特徴部を十分に追跡できるが、画面更新は顕著である。フレームリフレッシュ時間が、0.05秒より短い場合、画面更新は、ユーザの視野の持続性のため、ほとんど目立たない。しかしながら、画素あたりの滞留時間が短い場合には、個々のフレームの画像のノイズが悪化するため、S/Nは、より高いフレームレートで低下する。S/Nを高めるために画素あたりの滞留時間が長くなる場合には、画素数が減少しない限り、フレーム時間が同様に長くなる。しかしながら、フレーム内の画素数を少なくすることは、空間解像度の低い画像を与える。従って、画素あたりの滞留時間及びフレームあたりの画素数は、画像信号源及び視野の移動に必要な速度に合わせて最適になる必要がある。
【0098】
視野が移動している場合、ユーザが、移動する特徴部を追跡して異なる領域にナビゲートすることに決定することを容易にするために、短いフレーム更新時間が非常に望ましい。しかしながら、ユーザが、視野を移動することを停止した場合には、短いフレーム時間が使用される場合に、リフレッシュされた画像のノイズが大きくなる場合がある。従って、移動する視野及び静的な視野の最適な性能には矛盾する要件がある。この矛盾を克服するために、データの使用方法を変更し、視野が静止しているときに、視野が「平均化」モードに移行しながら、「リフレッシュ」モードから切り替える。
【0099】
視野が移動していない場合に、集束電子ビームが特定の位置に戻ったときに得られる新しい結果が、ここで、対応する画素における既存の値と組み合わされて、全体のS/N比が高まる。X線信号は、典型的には、画素滞留時間に記録された特定の特徴的なエネルギーの光子の数であり、新しいカウントが、既存のカウントに単純に追加されて、画素値が、新しいデータフレームごとに蓄積する合計カウントを表すことができるようになる。表示のために、合計カウントは、単純に「平均化」モードが使用されたフレームの数で除算されて、強度が一定のままであるが、ポアソンカウントノイズが減少するためS/Nが高まるようになる。代替実装形態は、システムが「平均化」モードにあるときに、任意の信号のS/N改良をもたらすのに使用することができる。例えば、特定の画素に対する「カルマン」再帰フィルタは、以下のように記述でき、
Y(N)=A*S(N)+(1-A)*Y(N-1)
ここで、S(N)は、画像データのN番目の入力フレームの信号であり、Y(N-1)は画素における前の値であり、Y(N)は画素の新しい値であり、Aは、1より小さいか又は1に等しい。A=1である場合に、これは、実質上「リフレッシュ」モードに等しいが、より小さいAの値は、最新の結果を高く重み付けし、以前のフレームを、指数関数的に低下する重みで重み付けして、全体の効果が、長く持続する画面のものであるようになる。しかしながら、特定の時点から開始して、最適なノイズ低減は、A=1/Nになるように連続するデータフレームごとにAを変更することにより得られ、このことは、全てのフレームにわたって等しい重みを付けた平均化と同じS/N低減をもたらす。
【0100】
「リフレッシュ」モードと「平均化」モードとの間のシームレスな遷移を可能にするための重要な要件は、ユーザがいつ視野を移動させているかをシステムが認識することである。コンピュータが、信号取得を制御するよりも、視野又は顕微鏡条件を調整するユーザ要求を認識している場合に、コンピュータは、どの取得モードを使用するかを即座に決定することができる。それ以外の場合、制御コンピュータは、視野が変化しているか否かを推測する必要がある。この場合、電子画像データの最初のフレームが保存され、電子画像データの連続する各フレームが最初のフレームと比較されて、フレームが異なるか否かが確認される。重要なシフトが検出されるとすぐに(例えば、2つの画像の相互相関における最大値のオフセットを観測することにより)、システムは、「リフレッシュ」モードに切り替え、システムが「平均化」モードに戻ったときに2つの連続する画像が有意なシフトを示すまでこのモードのままになる。このタイプの検査は、ユーザが試料ステージをビームの下で移動させて、視野のシフトが確実に生じる場合に理想的である。また、この検査は、2つの画像間の倍率の変化を検出するのにも効果的であり、それは、この変化が、通常、依然として相互相関結果の最大値に変化をもたらすためである。他の検査が、顕微鏡の状態の変化を検出するのに使用することができる。例えば、デジタル画像のヒストグラムの重心及び標準偏差は、顕微鏡の加速電圧を変更することによって電子ビームエネルギーが変更される場合のように、輝度又はコントラストが変更された場合に、変化することになる。また、焦点の変化は、デジタル画像のパワースペクトルの周波数分布の変化を観測することによって検出することができる。同様の方法は、特定の化学元素に対するX線画像間の差異を検出するのに使用することができる。代替的に、各画素において記録された全X線スペクトルからの信号を使用したX線画像が生成されて、特定の化学元素に関する画像よりも優れたS/Nを有することができるようになる。この合計X線スペクトル画像の相違は、視野又は条件の変化を検出するのに使用することができる。これらの検査の感度は、画像のS/Nに依存し、変化を検出するための基準は、変化に対する遅い応答と、変化がない場合の誤検出との間で最適な妥協点を与えるように調整される必要がある。従って、可能な場合はいつでも、ユーザが、いつ意図的に走査領域を変更したかをコンピュータが認識して、正確な取得モードが、画像の差異を検査することなく選択できるように構成することが望ましい。
【0101】
視野及び顕微鏡条件が静止しているときは常に、画素ごとにX線スペクトルデータが取得され、このデータは、画像データの連続フレームが組み合わされるときに蓄積して、「平均化」モードにある間、S/Nが高まる。視野の変更が導入又は検出された場合に、取得は、「リフレッシュ」モードに切り替わり、この時点で、蓄積されたX線スペクトルデータは、あらゆる画素が、この画素位置に対する関連エネルギースペクトルを有する場合のX線「スペクトル画像」を形成する。視野内の全ての画素スペクトルの合計が単一の「合計スペクトル」を形成し、このスペクトルは、スペクトルに現れる特徴的な放射ピークから化学元素を自動的に識別(Auto-ID)するように処理することができる。(Auto-ID)の精度は、特許出願PCT/GB2014/051555に記載された技法を使用して、パルスパイルアップ現象に関する合計スペクトルを補正することによって高まることができる。PCT/GB2014/051555の場合と同様に、クラスタリング手法が、類似のスペクトルを有する画素のセットを識別するのに使用でき、類似の画素の1つのセットからの全てのスペクトルの合計の分析が、スペクトルライブラリ内のマッチするエントリ、又は元素組成を定量化するように分析された合計スペクトルを見つけるのに使用でき、既知の化合物の組成のライブラリをマッチさせて化合物を識別できるようにするのに使用することができる。従って、視野が変更される直前の時点で、X線スペクトル画像は、現在の視野から利用可能であり、化学元素又は更に化合物が、その視野内で検出することができる。視野が、試料を支持するホルダ又はステージの移動によって制御されている場合に、ステージの座標(例えば、X、Y、Z)は、X及びYにおける視野の範囲がビーム偏向によって規定されながら視野の位置を規定する。ビーム偏向が、視野を中心位置からオフセットするのに使用される場合には、ビーム偏向を規定する追加の座標が存在することになる。ステージ座標とビーム座標との組み合わせ及び試料表面上で走査された領域のサイズは、検出された元素又は化合物のリストと一緒にデータベースに保存され、保存スペースが可能出る場合に、その視野に対するX線スペクトル画像全体が保存される。
【0102】
視野が移動している場合には、各フレーム時間の終了時、単一のデータフレームに対応する新しいX線スペクトル画像が存在するが、視野は、効果的に移動方向に沿って効果的に引き伸ばされ、画素データは、試料上の正確な位置に対応しない。しかしながら、単一フレームの合計スペクトルは、移動中、視野で検出された化学元素をAuto-ID(自動識別)して、引き伸ばされた視野にわたる各元素の平均濃度の測定値を得るように処理することができる。検出された元素及び濃度値は、好適なステージ及びビーム座標、並びにこのフレームで走査された領域のサイズと一緒にデータベースに保存される。
【0103】
探索セッションの後、このデータベースに問い合わせて、関心のある特定の元素又は化合物が検出された「関心のある」視野が見つかり、ユーザは、ステージをそれらの位置のうちの1つに戻してビーム偏向パラメータを復元して、更なるデータがその視野から取得できるようになる。ユーザが関心のある特徴部を含む領域に戻ってナビゲートするのを支援するために、概要マップが、データベースから生成されて、分析セッションにおいて訪問した全ての視野位置での関心のある元素又は化合物の存在を示すのに使用することができる。可能な場合に、この概要マップは、ユーザがアクセスできるステージの移動の全範囲をカバーし、データベース内でデータが記録された各位置に対して、データから取得できる関心のある任意の要求パラメータの値が表示される。例えば、特定の化学元素に関心がある場合、その領域で走査された視野からのスペクトル画像を処理して、あらゆる画素でこの化学元素に関する強度値を提供することがででき、又は、スペクトル画像が保存されていない場合に、要求された化学元素がその視野のどこかで検出された場合に、視野を覆う色付きのボックスが描画できる。色の強度は、視野の合計スペクトルで検出されたピークの振幅に比例するようにすることができ、同じ元素が検出された2つの視野が重なる場合に、重複領域における強度は、これらの2つの視野の最大強度に設定することができる。理想的には、概要マップが作図される前に、概要マップの背景が、試料の画像に置き換えられて、ユーザが関心のある視野と試料の可視構造との関係を確認することが助長される。この画像は、例えば、異なるステージ位置で一連の電子画像を取得して、これらの画像をつなぎ合わせて、ステージ移動の全範囲をカバーするモンタージュ画像を形成することにより得ることができる。代替的に、光学顕微鏡で得られた試料のデジタル画像を得ることができ、この画像は、基準マークと、概要マップに使用される座標系上の光学画像をアフィン変換するのに使用されるデジタル光学画像におけるステージ位置と座標と関係を含む。
【0104】
図4は、このような概要マップの例を示している。背景画像は、ステージを各方向に数cm移動させ、一連のデジタル電子画像を取得し、それらをつなぎ合わせてモンタージュを形成することによって取得される。矩形のボックスは、ユーザが試料を探索し、ステージが一時的に静止している間に、元素カルシウムが、その視野からのX線スペクトルで検出されたときに電子ビームで走査された視野の輪郭を示している。実際の表示上では、ボックスの輪郭は表示されないが、各矩形は、合計スペクトルにおけるCa Kの特徴的なピークで測定されたカウントに比例した強度で色付けされる(例えば、赤色)。矩形が重なる場合には、色の強度は、重なり合う任意の領域に関する最大値に対応する。Ca Kが任意の領域に対する合計スペクトルで検出されなかった場合には、ボックスは描画されない。従って、重なったボックスは、ユーザが以前にどこを探索したかと、システムがどこでカルシウムを検出したかとを示す「スネイルテイル」を形成する。カルシウムを含む小さな領域が存在する場合には、一部の視野は、部分的にのみその領域含む可能性があり、従って、その視野に関する合計スペクトルで記録されるCa Kカウントは、カルシウムが豊富な特徴部全体を含む視野よりも小さくなる。従って、概観画像の外観は、「ヒートマップ」であり、強度が高い場合には、その領域でカルシウムが見つかる可能性が高くなる。ステージが静止しているときは常に、各視野の完全なスペクトル画像を保存するのに利用可能な十分な記憶容量がある場合には、矩形全体に同じ色を使用するのではなく、個々の画素に記録されたCa Kカウントが、カウント数に比例した強度で色付けでき、これにより、この元素に対するより高い解像度「ヒートマップ」が提供される。
以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)顕微鏡で試料を分析するための方法であって、
第1の検出器、及び前記第1の検出器と異なる第2の検出器を使用して、一連の複合画像フレームを取得する段階と、
前記一連の複合画像フレームを視覚ディスプレイにリアルタイムで表示する段階と、を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が、
a)顕微鏡条件のセットにより設定された前記顕微鏡の設定された視野に対応する試料の領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、
b)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第1の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に結果として生成された粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、
c)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第2の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に結果として生成された粒子の第2のセットを監視して第2の画像フレームを得る段階と、を含み、
前記画像フレームの各々が、前記領域内の複数の位置に対応し且つ前記複数の位置で生成され監視される前記粒子から得られる値を有する複数の画素を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が更に、
d)前記第2の画像フレームの各画素に対して、設定された前記顕微鏡条件が、前記一連の複合画像フレームにおいて直前に取得された複合画像フレームの格納された第2の画像フレームの顕微鏡条件と同じである場合、及び、それぞれの前記画素が前記格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する前記領域内の位置に対応する場合に、前記格納された画素の値を前記画素の値と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める段階と、
e)前記複合画像フレームが、前記複数の画素の各々に対して、前記領域内の対応する位置で生成され且つ前記第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される前記粒子から得られたデータを提供するように、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する段階と、を含む方法。
(実施態様2)前記第1の検出器は電子検出器である、実施態様1に記載の方法。
(実施態様3)前記第1の検出器は、前記試料の領域に関するトポグラフィ情報及び試料材料原子番号情報の何れか又は両方を含むデータを提供する結果として生じる粒子を監視するように構成されている、実施態様1又は2に記載の方法。
(実施態様4)前記第2の検出器は、X線スペクトロメータ、電子回折パターンカメラ、電子エネルギー損失スペクトロメータ、又はカソードルミネセンス検出器のうちの何れかである、実施態様1~3の何れかに記載の方法。
(実施態様5)前記粒子の第2のセットを監視して前記第2の画像フレームを得る前記段階は、前記第2の検出器から異なるタイプの2又は3以上の信号を得て、前記信号の各々に対応するサブ画像フレームを得る段階を含み、
前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記第1の画像フレームを前記サブ画像フレームのうちの1又は2以上と組み合わせる段階を含む、実施態様1~4の何れかに記載の方法。
(実施態様6)前記粒子の第2のセットを監視して前記第2の画像フレームを得る前記段階は、
異なる粒子エネルギー範囲に各々が対応する前記粒子の第2のセットの2又は3以上のサブセットを監視して、前記サブセットの各々に対応するサブ画像フレームを得る段階であって、前記各サブ画像フレームが、前記領域内の前記複数の位置に対応する複数の画素であって、且つ、前記対応するサブセットに含まれ且つ前記複数の位置で生成された前記監視される粒子から得られた複数の画素を含む、段階と、
前記第2の画像フレームが、前記複数の画素の各々に対して、前記領域内の対応する前記位置で生成され且つ前記サブセットの各々に含まれる前記粒子から得られたデータを提供するように、前記サブ画像フレームを一緒に組み合わせて、前記第2の画像フレームを生成する段階と、を含む、実施態様1~5の何れかに記載の方法。
(実施態様7)前記一連の複合画像フレームをリアルタイムで表示する前記段階は、各複合画像フレームに対して、対応する前記第1及び第2の画像フレームが得られてから前記複合画像フレームが視覚ディスプレイに表示されるまでの経過時間を備え、前記経過時間は、1秒より短い、好ましくは0.3秒より短い、より好ましくは0.05秒より短い、実施態様1~6の何れかに記載の方法。
(実施態様8)前記第1の画像フレームと第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記複合画像フレームが複数の画素を含むように前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを重ね合わせる段階を含み、前記画素の各々は、前記領域内の前記複数の位置のうちの1つに対応し、前記第1のセット及び前記第2のセットの両方に含まれ且つ前記それぞれの位置で生成された前記粒子から得られたデータを提供する、実施態様1~7の何れかに記載の方法。
(実施態様9)前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記第1の画像フレームの各画素を、前記第1の画像フレームのそれぞれの画素が対応する前記領域内の前記位置に対応する前記第2の画像フレームの画素と組み合わせる段階を含む、実施態様1~8の何れかに記載の方法。
(実施態様10)前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記第1及び第2の画像フレーム内の対応する前記画素の強度に基づく複合画像画素の色を計算する段階を含む、実施態様8又は9に記載の方法。
(実施態様11)前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせる前記段階は、前記複合画像フレームがカラー画像を含むように、前記第1の画像フレームに第1の色を割り当て、前記第2の画像フレームに異なる第2の色を割り当てる段階を含み、前記第1及び第2の色の各画素における相対的な強度は、前記領域内の前記対応する位置で生成された前記監視される粒子の第1及び第2のセットにそれぞれ含まれる前記粒子を表す、実施態様8~10の何れかに記載の方法。
(実施態様12)前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する前記段階は、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを並置する段階を含む、実施態様1~7の何れかに記載の方法。
(実施態様13)前記顕微鏡条件は、倍率、焦点、非点収差、加速電圧、ビーム電流、荷電粒子ビーム用に設定された走査偏向、前記試料用に設定された位置及び配向、並びに前記第1及び第2の検出器の各々用に設定された輝度及びコントラストのうちの何れかを含む、実施態様1~12の何れかに記載の方法。
(実施態様14)前記一連の複合画像フレームが取得され表示されるレートは、少なくとも1フレーム毎秒、好ましくは少なくとも3フレーム毎秒、より好ましくは少なくとも20フレーム毎秒、更により好ましくは少なくとも20フレーム毎秒である、実施態様1~13の何れかに記載の方法。
(実施態様15)段階dにおいて、前記格納された画素を前記画素と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める前記段階は、信号平均化又は信号蓄積によって行われる、実施態様1~14の何れかに記載の方法。
(実施態様16)前記一連の複合画像フレームのうちの1又は2以上の複合画像フレームを取得する段階の間、
前記それぞれの複合フレームから得られたデータを格納する段階と、
前記得られたデータが、前記顕微鏡の前記設定された視野を表す視野データに関連付けられるように、前記視野データを格納する段階と、を更に含む、実施態様1~15の何れかに記載の方法。
(実施態様17)前記試料の複数の領域の各々の少なくとも1つの複合画像フレームを取得する段階と、
前記試料上の前記領域の相対位置に従って配列された前記複数の領域の複合画像フレームを含む試料画像を生成する段階と、を含み、
本方法が更に、
前記試料画像上に、前記それぞれの複合フレームに対応する前記視野に関連付けられ格納された前記得られたデータに従って、前記複合フレームのうちの1又は2以上の各々での標識を表示する段階を含む、実施態様16に記載の方法。
(実施態様18)試料を分析するためのシステムであって、
第1の検出器、及び該第1の検出器と異なる第2の検出器を含む顕微鏡と、
一連の複合画像フレームを取得する段階を実行するように前記顕微鏡を制御するよう構成されたコントローラユニットと、
取得した前記一連の複合画像フレームをリアルタイムで受け取って表示するように構成された視覚ディスプレイと、を備え、
前記複合画像フレームを取得する段階が、
a)顕微鏡条件のセットにより設定された前記顕微鏡の設定された視野に対応する前記顕微鏡内の試料の領域内の複数の位置に荷電粒子ビームを衝突させる段階と、
b)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第1の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に結果として生成された粒子の第1のセットを監視して、第1の画像フレームを得る段階と、
c)設定された前記顕微鏡条件に従って、前記第2の検出器を使用して、前記複数の位置で前記試料内に結果として生成された粒子の第2のセットを監視して、第2の画像フレームを得る段階と、を含み、
前記画像フレームの各々が、前記領域内の複数の位置に対応し且つ前記複数の位置で生成された監視される前記粒子から得られる値を有する複数の画素を含み、
前記複合画像フレームを取得する段階が更に、
d)前記第2の画像フレームの各画素に対して、設定された前記顕微鏡条件が、前記一連の複合画像フレームにおいて直前に取得された複合画像フレームの格納された第2の画像フレームの顕微鏡条件と同じである場合、及び、それぞれの前記画素が前記格納された第2の画像フレームに含まれる格納された画素が対応する前記領域内の位置に対応する場合に、前記格納された画素の値を前記画素の値と組み合わせて前記画素に関する信号対雑音比を高める段階と、
e)前記複合画像フレームが、前記複数の画素の各々に関して、前記領域内の対応する位置で生成され且つ前記第1の検出器及び第2の検出器の各々によって監視される前記粒子から得られたデータを提供するように、前記第1の画像フレームと前記第2の画像フレームとを組み合わせて前記複合画像フレームを生成する段階と、を含むシステム。
(実施態様19)電子顕微鏡内の集束電子ビームが前記試料の表面上の2次元領域にわたって走査されている間に生成される信号を表示するための実施態様18に記載のシステムであって、第1の信号が電子検出器からのものであり、
少なくとも1つの補助信号が、個々の化学元素含有量又は原子番号以外の材料特性に関する情報を提供する異なる検出器から得られ、前記信号の各々は、前記領域をカバーする電子ビーム位置の2次元配列で測定され、測定結果の対応する画素配列は、前記領域をカバーする視野に対するデジタル画像を構成し、視覚ディスプレイを用いて、前記画像がユーザの周辺視野の範囲内に収まるか又は単一の複合カラー画像に結合されるように全ての信号に関するデジタル画像を示し、画素測定値の完全なセットが全ての信号に関する視野をカバーし、視覚表示の準備が短時間期間で行われて完了し、前記視野をカバーする全ての信号に関する画素測定値の前記完全なセット及び視覚表示の更新が、連続的に繰り返され、
同じ画素位置における前記少なくとも1つの補助信号の連続した測定値を用いて、前記視野又は顕微鏡条件が変化しない場合に、当該画素での前記測定値の信号対雑音比が高められ、
前記視野又は顕微鏡条件に何らかの変化がある場合に、同じ画素位置での信号の次の測定値が、以前の測定値を置き換えるのに使用され、前記短時間期間は、前記視野が変更されているときに、移動する特徴部を観察者が識別するべく画像表示が高速で更新されるように十分に短い、実施態様18に記載のシステム。
(実施態様20)前記信号の1つより多い測定値についての表示結果の前記信号対雑音比は、前記測定値のカルマン平均化を使用することによって高められ、又は、前記測定値を加算し測定値の数に応じて輝度スケーリングを変更することによって高められる、実施態様18又は19に記載のシステム。
(実施態様21)前記短時間期間は、1秒より短い、好ましくは0.3秒より短い、理想的には0.05秒より短い、実施態様18~20の何れかに記載のシステム。
(実施態様22)ユーザ制御下で意図的に前記試料が移動されているか、走査される前記領域が変更されている場合に、前記視野は変化しているとみなされる、実施態様18~21の何れかに記載のシステム。
(実施態様23)前記視野又は顕微鏡条件の変化は、新しいデジタル画像を以前に取得されたデジタル画像と数学的に比較することによって検出される、実施態様18~22の何れかに記載のシステム。
(実施態様24)補助信号は、X線スペクトロメータによって得られるスペクトル、電子に対して感度を有するカメラによって得られる電子回折パターン、電子エネルギー損失スペクトロメータ又はカソードルミネセンス検出器によって得られるスペクトルから得られる、実施態様18~23の何れかに記載のシステム。
(実施態様25)前記視野の変化は、顕微鏡ステージを移動させること、及び/又は、位置座標のセットによって規定された新しい位置のためにビーム偏向にオフセットを追加することによって生じ、前記視野が当該位置にある間、電子及び/又は少なくとも1つの補助信号源からデータが蓄積され、前記データ全体が保存されるか、又は前記データからパラメータが得られて前記位置座標と一緒にデータベースに保存される、実施態様22~24の何れかに記載のシステム。
(実施態様26)前記データベースから表示が生成され、以前に訪れた前記位置座標にて1又は2以上のパラメータの値を示すのに使用される、実施態様25に記載のシステム。
(実施態様27)前記表示は、ユーザが訪れた位置の全範囲をカバーし、前記データが記録された前記位置座標の各セットについて、前記データから計算された属性に対して、前記表示は、前記データが当該位置で記録されたときに電子ビームによって走査された前記視野に対応する領域をカバーする同じスケールでカラーオーバーレイを使用する、実施態様26に記載のシステム。
(実施態様28)前記領域が重なり合う場合、前記オーバレイに使用される前記属性の値及び/又は前記データからの他の属性の値を用いて、全ての重なり合う領域からの結果を集約、結合又はソートする、実施態様27に記載のシステム。
(実施態様29)前記表示は、同じスケールでの前記試料の大面積の事前取得画像、又は前記データベース内の少なくとも1つの信号の保存データを使用して生成された画像に重ねられる、実施態様26~28の何れかに記載のシステム。