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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230711BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230711BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020518426
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2020080596
(87)【国際公開番号】W WO2021120434
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】201911327801.8
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ ▲艷▼▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 春瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 建明
(72)【発明者】
【氏名】唐 超
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-266938(JP,A)
【文献】特開2005-129533(JP,A)
【文献】特開2003-242991(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073381(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104425841(CN,A)
【文献】国際公開第2017/094712(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138453(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103367804(CN,A)
【文献】特開2012-089469(JP,A)
【文献】特開2019-057356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 6/16
H01G 11/62
H01G 11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロエチレンカーボネート、及び式Iの構造のシリケート化合物を含む電解液を含有するリチウムイオン電池であって、
【化1】

式中、R、R、R及びRはそれぞれ、置換又は無置換のC~C4アルキル基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンであり、
前記シリケート化合物と前記フルオロエチレンカーボネートとの質量比は、1:1~1:10であり、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の0.1重量%~5重量%である、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記シリケート化合物は、以下のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【化2】
【請求項3】
前記電解液は、式IIの構造の化合物、式IIIの構造の化合物又は式IVの構造の化合物のうちの少なくとも1種を含む環状カルボン酸無水物化合物をさらに含み、
【化3】

式中、R、R、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ、水素、ハロゲン及び置換又は無置換のC~C10炭化水素基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記環状カルボン酸無水物は、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2-メチルコハク酸無水物、2,3-ジメチルコハク酸無水物又はグルタル酸無水物のうちの少なくとも1種を含み、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の0.1重量%~5重量%である、請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記電解液は、式Vを有するジスルホン酸エステル化合物をさらに含み、
【化4】

式中、nは1~4の整数であり、前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の0.1重量%~5重量%である、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記電解液は、添加剤として、LiPO、不飽和環状炭酸エステル、環状スルトン、環状硫酸ラクトン又はニトリル化合物のうちの少なくとも1種をさらに含み、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の0.1重量%~13重量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記LiPOの含有量は、前記電解液の総重量の0.001重量%~2重量%であり、
前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート又はビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含み、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、前記電解液の総重量の0.001重量%~2重量%であり、
前記環状スルトンは、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン又は1,3-プロペンスルトンのうちの少なくとも1種を含み、前記環状スルトンの含有量は、前記電解液の総重量の0.01重量%~3重量%であり、
前記環状硫酸ラクトンは、硫酸エチレン、硫酸プロピレン又は4-メチルエチレンサルフェートのうちの少なくとも1種を含み、前記環状硫酸ラクトンの含有量は、前記電解液の総重量の0.01重量%~3重量%であり、かつ
前記ニトリル化合物は、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチレングルタロニトリル、ジプロピルマロノニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル又は1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタンのうちの少なくとも1種を含み、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の0.5重量%~7重量%である、請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本願は、2019年12月20日に出願された出願番号CN201911327801.8の中国出願の優先権を主張し、その内容が全文を参照する形で本文に組み込まれる。
【0002】
本願は、エネルギー貯蔵の技術分野に関し、特に電解液ならびに前記電解液を含む電気化学デバイス及び前記電気化学デバイスを含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、前世紀の90年代に発展した次世代の環境配慮型電池であり、動作電圧が高く、比エネルギーが大きく、サイクル寿命が長く、環境にやさしく、メモリー効果がないなどの利点を有しており、新エネルギー電気自動車、情報・通信・家電(3C)製品、携帯型電子機器、電動工具、エネルギー貯蔵、軍事、航空宇宙などの分野に幅広く応用されている。しかしながら、リチウムイオン電池の用途の発展及び現代の情報技術の持続的な発展に伴い、リチウムイオン電池の電池エネルギー密度及び安全性に対して、より高い要求がなされている。
【0004】
高電圧型リチウムイオン電池の開発は、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める有効な手段の1つである。高電圧及び高温条件下では、正極材料の酸化活性が高くなり、安定性が低下し、従来の電解液の正極表面での酸化分解が速くなり、ガスが発生する。同時に、正極活物質(特にマンガン系材料)中の遷移金属元素(例えばニッケル、コバルト、マンガンなど)は、溶出が速くなり、充放電過程を経て負極に堆積することにより、固体電解質膜(SEI)を破壊して電解液の負極での還元分解を招き、リチウムイオン電池の電気化学性能の更なる悪化を引き起こす。どのようにしてリチウムイオン電池の高温保存及びサイクル性能をさらに向上させるかが、既にこの分野で早急に解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、電解液ならびに前記電解液を含む電気化学デバイス及び前記電気化学デバイスを含む電子デバイスを提供し、前記電解液は、フルオロエチレンカーボネート及びシリケート化合物を含む。特定割合のフルオロエチレンカーボネート及びシリケート化合物を電解液に添加することは、正負極の表面における安定した界面保護層の形成に有利であり、それによりリチウムイオン電池のサイクル寿命及び高温保存性能が著しく改善される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施例では、本願は、フルオロエチレンカーボネート及びシリケート化合物を含む電解液を提供する。
【0007】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記シリケート化合物の構造は式Iに示される。
【0008】
【化1】
式中、R、R、R及びRはそれぞれ、置換又は無置換のC~C10炭化水素基から独立して選択され、置換の場合、置換基はハロゲンであり、前記シリケート化合物と前記フルオロエチレンカーボネートとの質量比は、1:1~1:10である。
【0009】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記シリケート化合物は、以下のうちの少なくとも1種を含む。
【0010】
【化2】
【0011】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%である。
【0012】
いくつかの実施例では、前記電解液は、式II、式III又は式IV構造のうちの少なくとも1種を含む環状カルボン酸無水物化合物をさらに含む。
【0013】
【化3】
式中、R、R、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ、水素、ハロゲン及び置換又は無置換のC~C10炭化水素基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである。
【0014】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%である。
【0015】
いくつかの実施例では、前記電解液中に、前記環状カルボン酸無水物は、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2-メチルコハク酸無水物、2,3-ジメチルコハク酸無水物又はグルタル酸無水物のうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
いくつかの実施例では、前記電解液は、式Vを有するジスルホン酸エステル化合物をさらに含む。
【0017】
【化4】
式中、nは1~4の整数である。
【0018】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%である。
【0019】
いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物は、メチレンメタンジスルホネートから選択される。
【0020】
いくつかの実施例では、前記電解液は、添加剤として、LiPO、不飽和環状炭酸エステル、環状スルトン、環状硫酸ラクトン又はニトリル化合物のうちの少なくとも1種をさらに含む。前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約0.001重量%~約13重量%であり、
前記LiPOの含有量は、前記電解液の総重量の約0.001重量%~約2重量%であり、
前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート又はビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含み、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、前記電解液の総重量の約0.001重量%~約2重量%であり、
前記環状スルトンは、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン又は1,3-プロペンスルトンのうちの少なくとも1種を含み、前記環状スルトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約3重量%であり、
前記環状硫酸ラクトンは、硫酸エチレン、硫酸プロピレン又は4-メチルエチレンサルフェートのうちの少なくとも1種を含み、前記環状硫酸ラクトンの含有量は、前記電解液の総重量の0.01重量%~3重量%であり、かつ
前記ニトリル化合物は、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチレングルタロニトリル、ジプロピルマロノニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル又は1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタンのうちの少なくとも1種を含み、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約7重量%である。
【0021】
いくつかの実施例では、本願は、上記いずれか1つの電解液を含む電気化学デバイスを提供する。
【0022】
いくつかの実施例では、本願は、上記電気化学デバイスを含む電子デバイスを提供する。
【0023】
本願の追加的な態様及び利点は、後続の説明において部分的に説明し、示し、又は本願の実施例の実施により説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願の実施例を詳細に説明する。本願の実施例は、本願を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書において、「略」、「概ね」、「実質的に」及び「約」という用語は、小さな変化を記述し説明するために用いられる。事象又は状態と組み合わせて用いられる場合、前記用語は、その事象又は状態が正確に発生する例とその事象又は状態が非常に近似して発生する例を指すことができる。例えば、数値と組み合わせて用いられる場合、前記用語は、前記数値の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下の変化範囲を表すことができる。例えば、2つの数値の間の差分値が前記数値の平均値の±10%以下(例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下)であれば、前記2つの数値は「概ね」同じであると考えられる。
【0026】
また、本明細書において、量、比率及び他の数値を範囲の形式で表す場合がある。このような範囲の形式は、便宜上及び簡略化のためであると理解されるべきで、範囲により限定されていることを明示的に指定した数値を含むだけでなく、各数値及びサブ範囲が明示的に指定されたのと同様に、前記範囲内に含まれる全ての個々の数値又はサブ範囲をも含むものと柔軟に理解されるべきである。
【0027】
発明を実施するための形態及び特許請求の範囲において、「うちの少なくとも一方」、「うちの少なくとも1つ」、「うちの少なくとも1種」という用語又はその他の類似用語で接続された項目の列挙は、列挙された項目の任意の組み合わせを意味し得る。例えば、項目A及びBが列挙された場合、「A及びBのうちの少なくとも一方」及び「A又はBのうちの少なくとも一方」というフレーズは、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。他の例では、項目A、B及びCが列挙される場合、「A、B及びCのうちの少なくとも一方」及び「A、B又はCのうちの少なくとも一方」というフレーズは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cは除く)、A及びC(Bは除く)、B及びC(Aは除く)、又はA、B及びCの全てを意味する。項目Aは、単一の構成要素(コンポーネント)又は複数の構成要素を含み得る。項目Bは、単一の構成要素又は複数の構成要素を含み得る。項目Cは、単一の構成要素又は複数の構成要素を含み得る。
【0028】
本明細書において、用語「炭化水素基」は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。例えば、炭化水素基によって意図されるのは、1~10個の炭素原子を有する直鎖炭化水素構造である。「炭化水素基」は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状炭化水素構造であるとも意図される。具体的な炭素数を有する炭化水素基が特定された場合、該炭素数を有する全ての幾何学異性体を含むことが意図される。また、本明細書における炭化水素基は、1~8個の炭素原子を有する炭化水素基、1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は任意選択的に置換されてもよい。例えば、炭化水素基は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むハロゲン又はアルキル基により置換されてよい。
【0029】
用語「アルキル基」によって意図されるのは、1~10個の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素構造である。「アルキル基」は、さらに、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状炭化水素構造であるとも意図される。例えば、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であってよい。具体的な炭素数を有するアルキル基が特定された場合、該炭素数を有する全ての幾何学異性体を含むことが意図される。したがって、例えば、「ブチル基」は、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基及びシクロブチル基を含む意味であり、「プロピル基」は、n-プロピル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基を含む。アルキル基の実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、ノルボルニル基などを含むが、これらに限定されない。また、アルキル基は任意選択的に置換されてもよい。
【0030】
用語「アルケニル基」は、直鎖であるか又は分岐鎖を有し、かつ少なくとも1個、通常、1個、2個又は3個の炭素炭素二重結合を有する一価不飽和炭化水素基を指す。特に定義されない限り、前記アルケニル基は、通常、2~10個の炭素原子を有し、例えば、6~10個の炭素原子を有するアルケニル基、2~8個の炭素原子を有するアルケニル基又は2~6個の炭素原子を有するアルケニル基であってよい。代表的なアルケニル基は(例えば)、ビニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、n-ブタ-2-エニル基、ブタ-3-エニル基、n-ヘキサ-3-エニル基などを含む。また、アルケニル基は任意選択的に置換されてもよい。
【0031】
用語「アルキニル基」は、直鎖であるか又は分岐鎖を有し、かつ少なくとも1つ、通常、1つ、2つ又は3つの炭素炭素三重結合を有する一価不飽和炭化水素基を指す。特に定義されない限り、前記アルキニル基は、通常、2~10個の炭素原子を有し、例えば、6~10個の炭素原子を有するアルキニル基、2~8個の炭素原子を有するアルキニル基又は2~6個の炭素原子を有するアルキニル基であってよい。代表的なアルキニル基は(例えば)、エチニル基、プロプ-2-イニル(ノルマル-プロピニル基)、ノルマル-ブチル-2-アルキニル基、ノルマル-ヘキシル-3アルキニル基などを含む。また、アルキニル基は任意選択的に置換されてもよい。
【0032】
本明細書において、用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はIであってよい。
【0033】
一、電解液
本願は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びシリケート化合物を含む電解液を提供する。
【0034】
いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の構造は式Iに示される。
【0035】
【化5】
式中、R、R、R及びRはそれぞれ、置換又は無置換のC~C10炭化水素基、置換又は無置換のC~C炭化水素基、又は置換又は無置換のC~C炭化水素基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである。いくつかの実施例では、R、R、R及びRはそれぞれ、置換又は無置換のC~Cアルキル基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである。更なるいくつかの実施例では、R、R、R及びRはそれぞれ、メチル基、エチル基又はプロピル基から独立して選択される。
【0036】
いくつかの実施例では、前記電解液中の前記式Iのシリケート化合物は、以下の化合物1~3のうちから選択される少なくとも1種である。
【0037】
【化6】
【0038】
いくつかの実施例では、前記式Iのシリケート化合物は、オルトケイ酸テトラエチル(化合物1)である。
【0039】
いくつかの実施例では、前記シリケート化合物と前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)との質量比は、約1:1~約1:10である。いくつかの実施例では、前記シリケート化合物と前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)との質量比は、約1:2~約1:6であり、いくつかの実施例では、前記シリケート化合物と前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)との質量比は、約1:3~約1:5である。いくつかの実施例では、前記質量比は、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6又は約1:7である。シリケート化合物及びフルオロエチレンカーボネートを電解液に添加し、かつ両者を上記範囲にすると、電解液を安定させると共に、正極の表面に緻密な保護層を形成し、電池のサイクル性能及びレート性能を向上させることができる。
【0040】
いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%である。いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約4重量%である。いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約1重量%~約3重量%である。いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約1.5重量%~約2重量%である。いくつかの実施例では、前記シリケート化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%又は約4重量%である。含有量が0.1重量%より低いと、電解液の安定性の向上は限定的であり、5重量%より大きいと、正極に形成される膜が厚くなりすぎ、Liの伝送に影響を与え、それによりセル抵抗及びサイクル性能を劣化させる。
【0041】
いくつかの実施例では、前記電解液は、式II、式III又は式IV構造のうちの少なくとも1種を含む環状カルボン酸無水物化合物をさらに含む。
【0042】
【化7】
式中、R、R、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ、水素、ハロゲン、置換又は無置換のC~C10炭化水素基、置換又は無置換のC~C炭化水素基、又は置換又は無置換のC~C炭化水素基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである。いくつかの実施例では、R、R、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ、置換又は無置換のC~Cアルキル基から独立して選択され、置換の場合、置換基は、ハロゲンである。更なるいくつかの実施例では、R、R、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ、水素又はメチル基から独立して選択される。
【0043】
いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物は、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2-メチルコハク酸無水物、2,3-ジメチルコハク酸無水物又はグルタル酸無水物のうちの少なくとも1種を含む。
【0044】
いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%を占め、いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約4重量%を占め、いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約1重量%~約3重量%を占め、いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約1.5重量%~約2重量%を占め、いくつかの実施例では、前記環状カルボン酸無水物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%又は約4重量%を占める。前記環状カルボン酸無水物を上記電解液中に添加すると、環状カルボン酸無水物は、高い還元電位を有するため、より優先的に負極で緻密なSEI膜に還元され、シリケート化合物とFECとで形成されるSEIをさらに修飾し、Liの通過を容易にし、電池のレート及びサイクル性能をさらに改善する。前記環状カルボン酸無水物の含有量が低すぎると、負極の界面で安定的な保護を形成するのに不十分であり、サイクル性能を改善する効果を得ることができず、前記環状カルボン酸無水物の含有量が高すぎると、形成された膜が厚すぎることにより、電池容量の減衰及び電池抵抗の増加を招く。
【0045】
いくつかの実施例では、前記電解液は、式Vを有するジスルホン酸エステル化合物をさらに含む。
【0046】
【化8】
式中、nは1~4の整数である。
【0047】
いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物は、メチレンメタンジスルホネート(MMDS)から選択される。
【0048】
いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約5重量%を占め、いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約4重量%を占め、いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約1重量%~約3重量%を占め、いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約1.5重量%~約2重量%を占め、いくつかの実施例では、前記ジスルホン酸エステル化合物は、前記電解液の総重量の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%又は約4重量%を占める。前記ジスルホン酸エステル化合物を上記電解液中に添加することにより、正極で安定性に優れたSEI膜を形成し、さらに正極材料における遷移金属の溶出を抑制して電解液との直接接触を減少させることにより、電池のレート性能及びサイクル性能をさらに改善する。
【0049】
いくつかの実施例では、前記電解液は、添加剤として、不飽和環状炭酸エステル、環状スルトン、環状硫酸ラクトン、ニトリル化合物又はLiPOのうちの少なくとも1種をさらに含む。いくつかの実施例では、前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート(VC)又はビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの少なくとも1種を含み、前記環状スルトンは、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン(BS)又は1,3-プロペンスルトン(PST)のうちの少なくとも1種を含み、前記環状硫酸ラクトンは、硫酸エチレン(DTD)、硫酸プロピレン又は4-メチルエチレンサルフェート(4-メチル硫酸エチレン)のうちの少なくとも1種を含み、かつ前記ニトリル化合物は、スクシノニトリル(SN)、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチレングルタロニトリル、ジプロピルマロノニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル又は1,2-ビス(2-シアノエトキシ)エタンのうちの少なくとも1種を含む。
【0050】
いくつかの実施例では、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約13重量%を占め、いくつかの実施例では、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約10重量%を占め、いくつかの実施例では、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約8重量%を占め、いくつかの実施例では、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約1重量%~約7重量%を占め、いくつかの実施例では、前記添加剤の含有量は、前記電解液の総重量の約1.5重量%~約6重量%を占め、いくつかの実施例では、前記添加剤は、前記電解液の総重量の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%又は約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約6.5重量%、約7重量%、約7.5重量%、約8重量%、約8.5重量%、約9重量%又は約9.5重量%を占める。
【0051】
いくつかの実施例では、前記LiPOの含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約2重量%であり、いくつかの実施例では、前記LiPOの含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約1重量%であり、いくつかの実施例では、前記LiPOの含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約0.6重量%である。
【0052】
いくつかの実施例では、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約2重量%であり、いくつかの実施例では、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約1.5重量%であり、いくつかの実施例では、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約1重量%である。
【0053】
いくつかの実施例では、前記環状スルトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約3重量%であり、いくつかの実施例では、前記環状スルトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約2重量%であり、いくつかの実施例では、前記環状スルトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約1.5重量%である。
【0054】
いくつかの実施例では、前記環状硫酸ラクトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.01重量%~約3重量%であり、いくつかの実施例では、前記環状硫酸ラクトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.1重量%~約2重量%であり、いくつかの実施例では、前記環状硫酸ラクトンの含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約1.5重量%である。
【0055】
いくつかの実施例では、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約7重量%であり、いくつかの実施例では、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約5重量%であり、いくつかの実施例では、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約0.5重量%~約3重量%であり、いくつかの実施例では、前記ニトリル化合物の含有量は、前記電解液の総重量の約1重量%~約2重量%である。
【0056】
いくつかの実施例では、前記電解液は、有機溶剤及びリチウム塩をさらに含む。
【0057】
いくつかの実施例では、前記有機溶剤は、質量比が約1:9~約7:3である環状エステル及び鎖状エステルを含み、前記環状エステルは、エチレンカルボナート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(BL)、フッ素含有基により置換されたエチレンカルボナート又はプロピレンカーボネートから選択される少なくとも1種であり、前記鎖状エステルは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、酢酸エチル(EA)、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル(MA)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピルエステル(PP)、酪酸メチル(MB)、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロプロピオン酸エチルから選択される少なくとも1種である。いくつかの実施例では、前記有機溶剤の含有量は、前記電解液の総重量の約60重量%~約95重量%であり、いくつかの実施例では、前記有機溶剤の含有量は、前記電解液の総重量の約60重量%~約90重量%である。いくつかの実施例では、前記有機溶剤の含有量は、前記電解液の総重量の約70重量%~約85重量%である。
【0058】
いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、有機リチウム塩又は無機リチウム塩のうちの少なくとも1種である。いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、フッ素元素、ホウ素元素、又はリン元素のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CFSO、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムLi(N(SOF)、リチウムジフルオロオキサレートボレートLiB(C、ジフルオロボラニルリチオオキサラートLiBF2(C)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)から選択される少なくとも1種である。いくつかの実施例では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムであってよい。いくつかの実施例では、前記リチウム塩の濃度は、約0.5mol/L~約1.8mol/Lである。いくつかの実施例では、前記リチウム塩の濃度は、約0.8mol/L~約1.5mol/Lである。いくつかの実施例では、前記リチウム塩の濃度は、約0.8mol/L~約1mol/Lである。
【0059】
二、電気化学デバイス
本願の電気化学デバイスは、電気化学反応が発生する任意のデバイスを含み、その具体的な例として、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はコンデンサを含む。特に、該電気化学デバイスは、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。いくつかの実施例において、本願の電気化学デバイスは、金属イオンを吸蔵放出できる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵放出できる負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータ(隔膜)と、本願の電解液と、を含む。
【0060】
(電解液)
本願の電気化学デバイスに用いられる電解液は、本願の上記電解液のいずれかである。また、本願の電気化学デバイスに用いられる電解液は、本願の要旨を逸脱しない範囲内の他の電解液をさらに含み得る。
【0061】
(正極)
本願の電気化学デバイスに用いられる正極の材料は、本分野で公知の材料、構造及び製造方法で製造できる。いくつかの実施例では、全文を参照する形で本願に組み込んだ米国特許第9812739B号明細書に記載の技術を用いて本願の正極を製造することができる。
【0062】
いくつかの実施例では、正極は、集電体と、該集電体に配置された正極活物質層とを含む。正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出する少なくとも1種のリチウム化層間化合物を含む。いくつかの実施例では、正極活物質は、複合酸化物を含む。いくつかの実施例では、該複合酸化物は、リチウムと、コバルト、マンガン及びニッケルから選択される少なくとも1種の元素とを含む。
【0063】
いくつかの実施例では、正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn2-y、LiNiCoMn1-x-y-zから選択され、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V、Tiから選択される1種以上であり、かつ0≦y≦1、0≦x≦1、0≦z≦1、x+y+z≦1又はそれらの任意の組み合わせである。
【0064】
いくつかの実施例では、正極活物質は、その表面にコーティング層を有してもよく、又はコーティング層を有する別の化合物と混合してもよい。該コーティング層は、コーティング元素の酸化物、コーティング元素の水酸化物、コーティング元素のオキシ水酸化物、コーティング元素のオキシ炭酸塩及びコーティング元素のヒドロキシ炭酸塩から選択される少なくとも1種のコーティング元素化合物である。コーティング層に用いられる化合物は、非晶質又は結晶質であってよい。
【0065】
いくつかの実施例では、コーティング層に含まれるコーティング元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、P又はそれらの任意の組み合わせを含んでよい。いくつかの実施例では、コーティング層中のコーティング物は、AlPO、Mg(PO、Co(PO、AlF、MgF、CoF、NaF、Bのうちの少なくとも1種であってよい。いくつかの実施例では、正極活物質の総重量に基づいて、コーティング層中のコーティング元素の含有量は、約0.01重量%~約10重量%である。正極活物質の性能に悪影響を及ぼさない限り、任意の方法でコーティング層を施すことができる。例えば、該方法は、スプレー、含浸など本分野で公知のいかなるコーティング方法も含んでよい。
【0066】
正極活物質層は、粘着剤をさらに含み、かつ任意に導電性材料を含む。粘着剤は、正極活物質粒子同士間の結合を強化し、かつ正極活物質と集電体との結合を強化する。
【0067】
いくつかの実施例では、粘着剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシ含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル化)スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含むが、それらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施例では、導電性材料は、炭素系材料、金属系材料、導電性ポリマー及びそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例では、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例では、金属系材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀から選択される。いくつかの実施例では、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0069】
いくつかの実施例では、集電体は、アルミニウムであってよいが、それに限定されない。
【0070】
正極は、本分野で公知の製造方法により製造することができる。例えば、溶剤中に、活物質、導電性材料及び粘着剤を混合して活物質組成物を製造し、かつ該活物質組成物を集電体にコーティングすることにより、正極を得られる。いくつかの実施例では、溶剤はN-メチルピロリドンなどを含んでよいが、それらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施例では、正極は、集電体上でリチウム遷移金属系化合物粉体及び結着剤を含む正極活物質層を使用して正極材料を形成することで製造される。
【0072】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、通常、正極活物質と結着剤(必要に応じて使用される導電性材料及び増粘剤など)を乾式混合してシート状にし、得られたシート状物を正極集電体に圧着するか又はこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にし、正極集電体に塗布して乾燥させることで、製造される。いくつかの実施例では、正極活物質層の材料は、本分野で公知のいかなる材料も含む。
【0073】
(負極)
本願の電気化学デバイスに用いられる負極の材料、構成及びその製造方法は、任意の従来技術で開示された技術を含んでよい。いくつかの実施例では、負極は、全文を参照する形で本願に組み込んだ米国特許第9812739B号明細書に記載の負極である。
【0074】
いくつかの実施例では、負極は、集電体と、該集電体に配置された負極活物質層とを含む。負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出する材料を含む。いくつかの実施例では、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出する材料は、炭素材料を含む。いくつかの実施例では、炭素材料は、リチウムイオン充電式電池で通常使用されるいかなる炭素系負極活物質であってもよい。いくつかの実施例では、炭素材料は、結晶質炭素、非晶質炭素又はそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。結晶質炭素は、無定形、シート状、小片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛であってよい。非晶質炭素は、軟質炭素、硬質炭素、メソフェーズピッチ炭化物、カ焼コークスなどであってよい。
【0075】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、負極活物質を含む。いくつかの実施例では、負極活物質は、リチウム金属、構造化リチウム金属、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、硬質炭素、軟質炭素、シリコン、シリコン-炭素複合物、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のリチウム化TiO-LiTi12、Li-Al又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0076】
負極が炭化シリコン化合物を含む場合、負極活物質の総重量に基づいて、シリコン:炭素=約1:10~10:1であり、炭化シリコン化合物のメジアン径D50が約0.1マイクロメートル~20マイクロメートルである。負極が合金材料を含む場合、蒸着方法、スパッタリング法、プレーティング法などの方法で負極活物質層を形成することができる。負極がリチウム金属を含む場合、例えば、球形綛状の導電性骨格及び導電性骨格中に散在する金属粒子を用いて負極活物質層を形成する。いくつかの実施例では、球形綛状の導電性骨格は、5%~85%の空隙率を有してもよい。いくつかの実施例では、リチウム金属負極活物質層には、保護層がさらに設置される。
【0077】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、粘着剤を含んでよく、かつ任意に導電性材料を含む。粘着剤は、負極活物質粒子同士間の結合、負極活物質と集電体との結合を強化する。いくつかの実施例では、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシ含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル化)スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含むが、それらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施例では、導電性材料は、炭素系材料、金属系材料、導電性ポリマー又はそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例では、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例では、金属系材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀から選択される。いくつかの実施例では、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0079】
いくつかの実施例では、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、導電性金属が被覆されたポリマー基板及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0080】
負極は、本分野で公知の製造方法で製造することができる。例えば、負極は、溶剤中に、活物質、導電性材料及び粘着剤を混合して活物質組成物を製造し、かつ該活物質組成物を集電体にコーティングすることにより得られる。いくつかの実施例では、溶剤は、水などを含んでよいが、それらに限定されない。
【0081】
(セパレータ)
いくつかの実施例では、本願の電気化学デバイスには、正極と負極との間に短絡を防止するためのセパレータが設置される。本願の電気化学デバイスに使用されるセパレータの材料及び形状は、特に限定されず、任意の従来技術で開示された技術であってよい。いくつかの実施例では、セパレータは、本願の電解液に安定な材料で形成されたポリマー又は無機物などを含む。
【0082】
例えば、セパレータは、基板層及び表面処理層を含んでよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルム又は複合フィルムであり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドから選択される少なくとも1種である。具体的には、ポリプロピレン多孔質フィルム、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合フィルムから選択して用いてもよい。基板層は、1層又は複数層であってもよく、基板層が複数層である場合、異なる基板層のポリマーの組成は、同じであっても異なっていてもよく、そして異なる基板層のポリマーの重量平均分子量は、完全に同じではなく、基板層が複数層である場合、基板層によってポリマーの孔閉塞温度は異なる。
【0083】
いくつかの実施例では、基板層の少なくとも1つの表面に表面処理層が設置され、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合して形成された層であってもよい。
【0084】
無機物層は、無機粒子及び接着剤を含み、無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムから選択される1種又は複数種の組み合わせである。接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンから選択される1種又は複数種の組み合わせである。ポリマー層はポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン又はポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0085】
三、応用
本願に係る電解液は、電気化学デバイスの高温保存性能及びサイクル性能を改善することができるため、これにより製造された電気化学デバイスは、様々な分野の電子機器に適用される。
【0086】
本願の電気化学デバイスの用途は特に限定されず、従来技術で公知のいかなる用途にも用いることができる。一実施例では、本願の電気化学デバイスは、ノートパソコン、ペン入力型コンピュータ、モバイルコンピュータ、電子ブックプレーヤ、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタなどに用いることができるが、それらに限定されない。
【実施例
【0087】
以下、実施例及び比較例を挙げて本願をさらに具体的に説明するが、その主旨を逸脱しない限り、本願は、こられの実施例に限定されない。
【0088】
1.リチウムイオン電池の製造
(1)正極の製造
マンガン酸リチウム(LiMn)、導電剤(Super P(登録商標)の導電性炭素)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2:2の重量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、真空撹拌機の作用で均一に撹拌し、固形分含有量が72wt%の正極スラリーを取得し、正極スラリーを13マイクロメートルの厚さのアルミニウム箔上に均一に塗布し、アルミニウム箔を85℃で乾燥させ、次に冷間圧延し、切断し、切出した後に、85℃の真空条件で4時間乾燥させて正極を得る。
【0089】
(2)負極の製造
人造黒鉛、導電剤(Super P(登録商標)の導電性炭素)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96.4:1.5:0.5:1.6の重量比で混合し、脱イオン水を添加し、真空撹拌機の作用で、固形分含有量が54wt%の負極スラリーを取得する。負極スラリーを負極集電体である銅箔上に均一に塗布し、銅箔を85℃で乾燥させ、次に冷間圧延し、切断し、切出した後に、120℃の真空条件で12時間乾燥させて負極を得る。
【0090】
(3)電解液の製造
乾燥したアルゴン雰囲気のグローブボックス内に、エチレンカルボナート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)をEC:EMC:DEC=3:5:2の質量比で混合し、次に特定の量と種類の添加剤を添加し、溶解させて十分に撹拌した後にリチウム塩LiPFを添加し、均一に混合した後に電解液を得る。LiPFの濃度は1mol/Lである。電解液に用いられる添加剤の具体的な種類及び含有量は、以下の表に示す通りであり、添加剤の含有量は、電解液の総質量に基づいて算出した質量百分率である。
【0091】
(4)セパレータの製造
12マイクロメートルの厚さのポリエチレン(PE)セパレータを選択する。
【0092】
(5)リチウムイオン電池の製造
正極、セパレータ、負極を順に積層し、セパレータを正極と負極との間に配することで分離の機能を持たせ、その後に巻回し、タブを溶接して電極アセンブリを得る。電極アセンブリを包装袋に入れ、乾燥させ、上記の製造された電解液を注入し、真空封止、静置、化成(0.02Cの定電流で3.3Vまで充電し、さらに0.1Cの定電流で3.6Vまで充電する)、整形、容量試験などの工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
【0093】
2.リチウムイオン電池の性能試験
(1)リチウムイオン電池の25℃でのレート試験
リチウムイオン電池を25℃のインキュベーター(恒温器)内に入れ、30分間静置して、リチウムイオン電池を一定の温度にする。一定の温度に達したリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、次に4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、0.5C/1C/2C/5Cのレートでそれぞれ3.0Vまで放電し、異なるレートでの放電容量を記録し、0.5Cの放電容量を100%として、5Cの放電容量維持率を算出する。
【0094】
(2)リチウムイオン電池の25℃でのサイクル性能
リチウムイオン電池を25℃のインキュベーター内に入れ、30分間静置して、リチウムイオン電池を一定の温度にする。一定の温度に達したリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、次に4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、さらに1Cの定電流で電圧が3.0Vになるまで放電し、これを1つの充放電サイクルとする。初回の放電容量を100%として、充放電サイクルを500サイクル繰り返し行い、試験を停止し、サイクル容量維持率を記録して、リチウムイオン電池のサイクル性能を評価する指標とする。
【0095】
サイクル容量維持率とは、あるサイクルまでサイクルしたときの容量を1回目の放電時の容量で除して100パーセントを掛けたものである。
【0096】
(3)リチウムイオン電池の45℃でのサイクル性能
リチウムイオン電池を45℃のインキュベーター内に入れ、30分間静置して、リチウムイオン電池を一定の温度にする。一定の温度に達したリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、次に4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、さらに1Cの定電流で電圧が3.0Vになるまで放電し、これを1つの充放電サイクルとする。初回の放電容量を100%として、充放電サイクルを300サイクル繰り返し行い、試験を停止し、サイクル容量維持率を記録して、リチウムイオン電池のサイクル性能を評価する指標とする。
【0097】
(4)電池の厚さ膨張率
電池の厚さを測定し、以下の式で電池の厚さ膨張率を算出する。
厚さ膨張率=(サイクル後の電池の厚さ-サイクル前の電池の厚さ)/サイクル前の電池の厚さ×100%
【0098】
A.上記方法に従って実施例1~13及び比較例1~7の電解液及びリチウムイオン電池を製造する。そして、リチウムイオン電池の25℃でのレート放電性能、25℃でのサイクル維持率及び45℃でのサイクル維持率並びに厚さ膨張率を試験し、試験結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
比較例1~比較例6の試験結果から分かるように、電解液中に特定の構造のシリケート化合物及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加していないか又は上記両者のうちの1つしか添加していない場合、電池のレート放電性能及びサイクル性能が劣り、厚さ膨張率が高い。
【0101】
実施例1~実施例13及び比較例1~比較例7のデータから分かるように、特定の割合のシリケート化合物及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加することによって、電池のレート放電性能及びサイクル容量維持率を効果的に改善すると共に、サイクル過程における電池厚さの増加量を改善することができる。いかなる理論にも限定されることを望まないが、上記性能の改善は、シリケート類化合物が電解液中の微量の水(Trace Water)及びHFを吸収することによるものであって、電解液の安定性を向上させるのに役立ち、同時に酸化されやすく、かつ正極に緻密な保護膜を形成し、電解液による正極の破壊を減少させる。フルオロエチレンカーボネート(FEC)は還元電位が高く、初回の充放電時に優先的に負極で還元されて膜を形成し、形成される膜は緻密であり、電解液の負極における分解反応を抑制している。電解液中に添加されたオルトケイ酸テトラエチルとFECとの割合が特定の範囲にあるとき、電解液をより効果的に安定させ、かつ正負極でより優れた界面保護を形成することができる。オルトケイ酸テトラエチルとFECとの割合が高すぎると、膜形成の抵抗が大きいため、電池抵抗が増加し、電池性能に影響を及ぼすことになり、割合が低すぎると、有効な界面保護を形成するのに不十分であり、電池のサイクル性能を改善するという効果を得ることができない。
【0102】
B.上記方法に従って実施例14~実施例24及び比較例8~比較例9の電解液及びリチウムイオン電池を製造する。リチウムイオン電池の25℃でのレート放電性能、25℃でのサイクル維持率、45℃でのサイクル維持率及び厚さ膨張率を試験する。試験結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
実施例6及び実施例14~23、及び上記実施例と比較例8~比較例9との比較に基づいて分かるように、オルトケイ酸テトラエチル及びFECを含む電解液中に、さらにジスルホン酸エステル化合物(例えば、メチレンメタンジスルホネートMMDS)又は環状カルボン酸無水物(例えば、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物及びコハク酸無水物など)のうちの少なくとも一方を添加することにより、電池のサイクル性能、ガス生成状況及びレート放電性能をさらに改善することができる。
【0105】
C.上記方法に従って実施例25~実施例34の電解液及びリチウムイオン電池を製造する。リチウムイオン電池の25℃でのレート放電性能、25℃でのサイクル維持率、45℃でのサイクル維持率及び厚さ膨張率を試験する。試験結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
実施例27~実施例33及び実施例19から分かるように、オルトケイ酸テトラエチル、FEC及びマレイン酸無水物を含む電解液中に、さらに0.1%~約13%の他の添加剤(例えば、1,3-プロパンスルトン(PS)、ビニレンカーボネート(VC)、LiPO、又は1,3,6-ヘキサントリカルボニトリルのうちの少なくとも一方)を添加することにより、電池のサイクル性能、ガス生成状況及びレート放電性能をさらに改善することができる。また、実施例6と実施例25及び26との比較から、又は実施例7と実施例34との比較から分かるように、特定の量のオルトケイ酸テトラエチル及びFECを含む電解液中に、特定の量の他の添加剤(例えば、1,3-プロパンスルトン(PS)、ビニレンカーボネート(VC)、LiPO、又は1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル又はスクシノニトリル(SN)のうちの少なくとも一方)を添加することにより、電池の常温サイクル性能及び高温サイクル性能をさらに向上させることができる。上記実験結果により、これらの添加剤を組み合わせて使用することが、電池の正負極界面の保護の強化に有利であり、したがって電池性能をさらに向上させることが明らかになっている。
【0108】
明細書全体において「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「一実施例」、「別の例」、「例」、「具体的な例」又は「部分的な例」の引用は、本願の少なくとも1つの実施例又は例が、該実施例又は例において説明された特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各部分に現れる記載、例えば、「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一実施例において」、「別の例において」、「一例において」、「特定の例において」又は「例において」は、本願における同じ実施例又は例を必ずしも指すとは限らない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は複数の実施例又は例において、任意の適切な方式で組み合わせることができる。
【0109】
例示的な実施例を示し説明してきたが、当業者であれば、上記実施例が本願を限定するものとして解釈され得ず、本願の精神、原理及び範囲から逸脱することなく実施例に対して変更、代替及び修正を行うことができることを理解すべきである。