(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】コークス化システム及びコークス化方法
(51)【国際特許分類】
C10B 55/00 20060101AFI20230711BHJP
C10G 9/02 20060101ALI20230711BHJP
C10G 1/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C10B55/00
C10G9/02
C10G1/02
(21)【出願番号】P 2020526561
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2018115326
(87)【国際公開番号】W WO2019096143
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】201711119034.2
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】初人慶
(72)【発明者】
【氏名】方向晨
(72)【発明者】
【氏名】郭丹
(72)【発明者】
【氏名】宋永一
(72)【発明者】
【氏名】劉継華
(72)【発明者】
【氏名】勾連忠
(72)【発明者】
【氏名】矯徳衛
(72)【発明者】
【氏名】武云
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04853106(US,A)
【文献】特表2005-523344(JP,A)
【文献】特表平06-504569(JP,A)
【文献】特開昭60-195186(JP,A)
【文献】特公昭47-003453(JP,B1)
【文献】特表2004-509216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 55/00
C10B 57/04
C10G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第m(合計m個
、m=2)の加熱
炉と、
第1~第n(合計n個
、n=3)のコークス塔と
、
分留塔及びコークス引上げ原料貯蔵タンクと、を備えたコークス化システムであって、
3つの前記コークス塔は、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識され、
2つの前記加熱炉は、それぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識され、
任意の前記コークス塔は、2つの前記加熱炉に接続されており、
任意の前記コークス塔の頂部は、パイプラインを介して分留塔の入口に接続されており、
前記分留塔の底部出口は、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクに接続されており、
前記コークス引上げ原料貯蔵タンクは、前記加熱炉bに接続され、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクからの材料を前記コークス塔の供給温度まで加熱し、
前記加熱炉aは、原料タンクと接続されており、前記コークス塔の供給温度までコークス化原料を加熱し、
前記材料は、コーカーガスオイルである、コークス化システム。
【請求項2】
制御ユニットをさらに備え、当該制御ユニットは、時間T0から、2つの前記加熱炉の各々から第hの前記コークス塔への材料輸送を、第1の前記加熱
炉から第mの前記加熱
炉へと順番に開始及び終了させ、時間Teに、第mの前記加熱
炉から第hの前記コークス塔への材料輸送を終了させられるように構成されており、T0はコークス充填開始時間であり、Teはn個の前記コークス塔の第hの前記コークス塔(hは1~nの任意の整数)に対するコークス充填終了時間である、
請求項1に記載のコークス化システム。
【請求項3】
少なくとも1つの濾過装置をさらに備え、当該濾過装置は、
2つの前記加熱
炉の少なくとも1つの入口及び/又は出口に配置されている、
請求項1に記載のコークス化システム。
【請求項4】
少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクをさらに備え、少なくとも1つの前記コークス形成原料貯蔵タンクは、前記
加熱炉aと連通している、
請求項1に記載のコークス化システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクは、
前記加熱炉bと連通していない、
請求項
4に記載のコークス化システム。
【請求項6】
m個の加熱
炉(m=2)及びn個のコークス塔
(n=3)を使用することによるコークス化工程を含むコークス化方法であって、
3つの前記コークス塔は、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識され、
2つの前記加熱炉は、それぞれ加熱炉a、及び加熱炉bと標識され、
3つの前記コークス塔の各々の天井部材料は、材料輸送手段において分離塔と連通して
おり、
前記加熱炉aは、コークス形成原料を輸送及び加熱するものであり、前記加熱炉bは、コークス引上げ原料を輸送及び加熱するものであり、
前記コークス化方法は、少なくとも以下の工程:
(1)前記コークス形成原料を前記コークス塔aに供給し、前記コークス塔aにより生成されたオイルガスを前記分離塔に導入して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(2)前記コークス塔aの供給時間が前記コークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%又は約50%に達するとき、前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔bによって生成されたオイルガスを前記分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(3)前記コークス塔bの供給時間が前記コークス塔bのコークス充填サイクルTの30~70%又は約50%に達するとき、前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔cへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔bへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔cによって生成されたオイルガスを前記分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(4)前記コークス塔aでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(5)前記コークス塔cの供給時間が前記コークス塔cのコークス充填サイクルTの30~70%又は約50%に達するとき、前記コークス塔cへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔cへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔bへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔aによって生成されたオイルガスを前記分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(6)前記コークス塔bでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(7)前記コークス塔aの供給時間が前記コークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%又は約50%に達するとき、前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔cへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔bによって生成されたオイルガスを前記分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(8)前記コークス塔cでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(9)(3)~(8)を繰り返す工程;
を含むコークス化方法。
【請求項7】
前記時間Teにおいて、第1~第mの前記加熱
炉から第hの前記コークス塔へ輸送された材料の合計は、第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)の目標コークス充填容量に等しい、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項8】
単一の材料輸送サイクル中に、第1~第mの前記加熱
炉の各々は、材料の1つのバッチのみを第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)に輸送する、又は単一の材料輸送サイクル中の任意の時点で、第hの前記コークス塔は(i)輸送された材料を受け入れないか、若しくは(ii)第1~第mの前記加熱
炉のうちの1つから輸送された材料のみを受け入れる、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項9】
材料輸送サイクルが完了した後、(i)第hの前記コークス塔を待機状態にする、又は(ii)第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)に対する次の材料輸送サイクルを開始するか、のいずれかの前に、第hの前記コークス塔をパージ操作及び脱コークス化操作に供する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項10】
第1~第mの前記加熱
炉の各々は、その輸送された材料を、前記輸送された材料のために第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)が必要とする温度まで加熱する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項11】
第1の前記加熱
炉は、その輸送された材料(第1の輸送された材料と呼ぶ)を400℃~480℃の供給温度W1に加熱し、
前記第1の輸送された材料は、第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)の塔内ガス速度G1を0.05~0.25m/sにし、
第mの前記加熱
炉は、その輸送された材料(第mの輸送された材料と呼ぶ)を460℃~530℃の供給温度Wmに加熱し、
前記第mの輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガス速度Gmを0.10~0.30m/sにし
、且つ/又は、
第1の前記加熱
炉による輸送された材料の加熱速度V1は、1~30℃/hであり、
第mの前記加熱
炉による輸送された材料の加熱速度Vmは、30~150℃/hであ
る、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項12】
前記供給温度W1は、420℃~460℃であり、且つ/又は、
前記第1の輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガス速度G1を0.05~0.10m/sにし、且つ/又は、
前記供給温度Wmは、460℃~500℃であり、且つ/又は、
前記第mの輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガスGmを0.15~0.20m/sにし、且つ/又は、
第1の前記加熱
炉による輸送された材料の加熱速度V1は、1~10℃/hであり、且つ/又は、
第mの前記加熱
炉による輸送された材料の加熱速度Vmは、50~100℃/hである、
請求項
11に記載のコークス化方法。
【請求項13】
n個の前記コークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料を、
前記分離塔に移送し、
前記分離塔において、前記材料を、前記分離塔の天井部材料と前記分離塔の底部材料とに少なくとも分離する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項14】
n個の前記コークス塔の各々の天井部材料を、精留塔、フラッシュ塔、蒸発塔、又は分留塔から選択される分離塔に移送する、
請求項
13に記載のコークス化方法。
【請求項15】
前記分離塔の運転条件は、前記塔の頂部における圧力が0.01~0.8MPaであり、前記塔の頂部における温度が100~200℃であり、前記塔の底部における温度が280~400℃であり、且つ/又はn個の前記コークス塔の運転条件は互いに同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、前記塔の頂部における圧力が0.01~1.0MPaであり、前記塔の頂部における温度が300~470℃であり、前記塔の底部における温度が350~510℃である、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項16】
第mの前記加熱
炉は、その輸送された材料としてコークス引上げ原料のみ、及び/又は、少なくとも前記分離塔の底部材料を含むコークス引上げ原料を有する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項17】
前記コークス形成原料は、石炭系原料及び石油系原料のうちの少なくとも1つから選択され、10~80%のコークス形成率(コークス形成率Aと呼ぶ)を有し、
且つ/又は前記分離塔の底部材料は、300~400℃の10%留出点温度、及び450~500℃の90%留出点温度を有し、
且つ/又は前記コークス引上げ原料は、石炭系原料及び石油系原料のうちの少なくとも1つから選択され、コークス形成率A>コークス形成率Bという条件で、1~40%のコークス形成率(コークス形成率Bと呼ぶ)を有する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項18】
前記コークス形成原料は、コールタール、コールタールピッチ、石油重油、エチレンタール、触媒分解残渣、又は熱分解残渣のうちの少なくとも1つから選択され、且つ/又は、
前記コークス形成原料の硫黄含有量は、0.6重量%より小さい又は0.5重量%より小さく、
コロイド/アスファルテン含有量は、10.0重量%より小さい、5.0重量%より小さい、又は2.0重量%より小さく、且つ/又は、
前記コークス形成率Aは、20%~70%又は30%~60%であり、且つ/又は、
前記分離塔の底部材料は、350℃~380℃の10%留出点温度及び460℃~480℃の90%留出点温度を有し、且つ/又は、
前記コークス引上げ原料は、コーカーガスオイル、コーカーディーゼル、エチレンタール、及び、熱分解重油から選択され、且つ/又は、
前記コークス引上げ原料は、1.0重量%より小さい又は0.6重量%より小さい硫黄含有量を有し、且つ/又は、
前記コークス形成率Bは、1~20%又は1~10%である、
請求項
17に記載のコークス化方法。
【請求項19】
1つの材料輸送サイクル中に第hの前記コークス塔(hは1~nの任意の整数)に輸送されるコークス形成原料の総量に対する前記コークス引上げ原料の総量の重量比率は、0.5~4.0である、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項20】
前記重量比率は、1.0~2.0である、
請求項
19に記載のコークス化方法。
【請求項21】
Te-T0=Tである場合、
第hの前記コークス塔
(hは1~nの任意の整数)は、10~60時間のコークス充填サイクルTを有し、
又はn個の前記コークス塔は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して10~60時間であるコークス充填サイクルTを有する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項22】
前記コークス充填サイクルTは、24~48時間であり、
又はn個の前記コークス塔は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して24~48時間であるコークス充填サイクルTを有する、
請求項
21に記載のコークス化方法。
【請求項23】
前記コークス形成原料及び前記コークス引上げ原料からなる群から選択される少なくとも1つの材料は、第mの前記加熱
炉に入れる
前に濾過し、且つ/又は、
前記少なくとも1つの材料は、前記コークス引上げ原料及び前記分離塔の底部材料から選択され、且つ/又は、
前記材料のコークス微粒子濃度は、0~100mg/L又は0~50mg/Lの範囲になるように制御する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項24】
n個の前記コークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料の少なくとも一部を、
前記分離塔に移送し、
前記分離塔の下部材料及び/又は底部材料の少なくとも一部を、第mの前記加熱
炉に輸送する、
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項25】
n個の前記コークス塔の各々の上部材料及び/又は上部材料の10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は100重量%を
前記分離塔に移送し、且つ/又は、
前記分離塔の下部材料及び/又は底部材料の10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は100重量%を第mの前記加熱
炉に輸送し、且つ/又は、
前記分離塔の下部材料及び/又は底部材料は、第1の前記加熱
炉に輸送しない、
請求項
24に記載のコークス化方法。
【請求項26】
前記天井部材料は、オイルガスであり、且つ/又は、
前記コークス引上げ原料は、コーカーガスオイルである、
請求項
25に記載のコークス化方法。
【請求項27】
コークス化装置を使用したコークス化方法であって、
前記コークス化装置は、3つのコークス塔、2
つの加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備え、
3つの前記コークス塔を、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、
2
つの前記加熱炉を、それぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識し、
任意のコークス塔は、2
つの前記加熱炉と接続され、
任意のコークス塔の頂部は、前記分留塔の入口とパイプラインを介して接続され、
前記分留塔の底部出口は、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、
前記加熱炉bは、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクからの材料を前記コークス塔の供給温度まで加熱するために使用され、
前記加熱炉aは、原料タンクに接続されており、新たな原料を前記コークス塔の供給温度まで加熱するために使用され、
具体的な操作方法は以下の通りである:
(1)コークス化原料を、前記加熱炉aによって加熱し、前記コークス塔aに入れ、生成されたオイルガスを前記分留塔に入れて分留して、ガス、コーカーガソリン、及びコーカーディーゼル、並びに塔底部におけるコーカーガスオイルを得て、塔底部にある前記コーカーガスオイルを、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクに導入する;
(2)工程(1)における前記コークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔aのコークス供給を前記コークス塔bに切り替え、前記コークス塔bは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記コークス塔aには前記加熱炉bを介して加熱された前記コークス引上げ原料を供給し、コークス充填を継続する;
(3)工程(2)における前記コークス塔bの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔bのコークス供給を前記コークス塔cに切り替え、前記コークス塔cは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料を前記コークス塔bに切り替え、このとき、前記コークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(4)工程(3)における前記コークス塔cの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔cのコークス供給を前記コークス塔aに切り替え、前記コークス塔aは工程(1)におけるプロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料を前記コークス塔cに切り替え、このとき、前記コークス塔bを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(5)工程(4)における前記コークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔aのコークス供給を前記コークス塔bに切り替え、前記コークス塔bは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料を前記コークス塔aに切り替え、このとき、前記コークス塔cを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(6)工程(3)、工程(4)、及び工程(5)のプロセスを繰り返す;
請求項
6に記載のコークス化方法。
【請求項28】
前記加熱炉bは、コーカーガスオイルを加熱するために使用され、且つ/又は、
前記コークス引上げ原料は、コーカーガスオイルである、
請求項
27に記載のコークス化方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はコークス化システムに関し、特に針状コークスを製造するためのコークス化システムに関する。本発明は、コークス化方法にも関する。
【0002】
〔背景〕
針状コークスは、主に高出力及び超高出力の黒鉛電極の製造に使用されている。鉄鋼時代の発展に伴い、スクラップ鋼の収率が徐々に高まり、電気炉鋼の開発が進められ、黒鉛電極、特に高出力及び超高出力電極の消費が必然的に増加し、針状コークスの需要は継続的に増加している。
【0003】
CN200810017110.3は、針状コークスを調製するための方法を開示しており、この方法は、芳香族リッチな画分又は残留油を、特定の昇温プログラム下で遅延コークス化処理に供し、得られたグリーンコークスを焼成して、高い中間相含有量及び発達した針状構造を有する針状コークスを得る工程を含む。
【0004】
CN201110449286.8は、均質な石油針状コークスを製造するための方法を開示しており、この方法は、針状コークスを製造するための原料を加熱炉によって比較的低温である400~480℃に加熱し、次いでコークス塔に原料を供給する工程を含み、コークス化原料は流動性中間相液晶を形成し、低温の新たな原料の供給段階が完了した後、加熱炉の出口温度を徐々に上昇させ、同時にコーカー加熱炉の供給物を新たな原料及び分留塔からの重質留出油に変化させ、コークス塔内の材料が凝固及びコークス形成のための温度に達したとき、コーカー加熱炉の供給物を反応プロセスで生成されたコーカー中間留出油に変化させ、同時にコークス塔内の温度が460~510℃に達することを確実にするためにコーカー加熱炉の供給温度を上昇させ、石油コークスの高温凝固を完了させて、針状コークス生成物を得る。
【0005】
US4235703は、残留油から高品質コークスを製造するための方法を開示しており、この方法は、原料を水素化脱硫及び脱金属し、次いで遅延コークス化を行って高出力電極石油コークスを製造する工程を含む。
【0006】
US4894144は、水素化処理プロセスによって直留重油を前処理することによって針状コークス及び高硫黄石油コークスを同時に製造するためのプロセスを開示し、水素化された残留油は、2つの部分に分割され、それぞれコークス化され、次いで焼成されて、針状コークス及び高硫黄石油コークスを得る。
【0007】
CN1325938Aは、硫黄含有大気残渣から針状石油コークスを製造する方法を開示しており、この方法では、原料を順に、水素化精製、水素化脱金属、及び水素化脱硫に供し、水素化生成物を分離して水素化重質留出油を得、水素化重質留出油を遅延コークス化に供して針状コークスを製造する条件下で、針状コークスを得る。
【0008】
上記の方法は、針状コークスを製造するために従来の1つの炉及び2つの塔の遅延コークス化様式を採用しており、これは針状コークス製造プロセスにおける温度変化と圧力変化によって生じる大きな操業ブレの問題を解決するものではなく、一般に、針状コークス製品の性能が不安定であるという問題を有している。従って、均一な性能を持つ高品質な針状コークス製品を如何に生産するかは、研究者によって追求される目標である。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明の発明者らは、従来技術における針状コークスを製造するための遅延コークス化事業において、加熱ユニットは一般に可変温度制御を採用し、加熱ユニットは遅延コークス化の製造サイクルにおける昇温、温度維持、降温、及び昇温のプロセスを循環的に行うことによって、可変温度範囲は広くなり、且つ安定した運転は困難であることを見出した。一部の遅延コークス化プロセスにおいても、加熱ユニットは異なる原料を加熱するために異なる加熱段階を経る必要があり、例えば、新たな原料、新たな原料とコーカーガスオイルとの混合物、及び中間留出油は異なるコークス充填段階で加熱され、加熱ユニットの供給性の違いは大きく、異なる供給段階における引上げ/形成比率(コークス引上げ原料(coke-pulling feedstock)のコークス形成原料(coke-forming feedstock)に対する比率)の制御は異なり、これは加熱ユニットの供給量に大きな変化を生じることを見出した。
【0010】
また、本発明者らは、長年の検討を通じて、製造条件が針状コークスの性能に重要な影響を及ぼすこと、条件の小さな変動が製品内の流線形組織の形成および熱膨張係数に影響を及ぼし得ること、並びに上記コークス充填プロセス中の加熱ユニットの温度変化、圧力変化、及び供給量の変化等の、操作における不可避的な小さな誤差が、製品の品質に大きな差を生じる主な原因であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0011】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
【0012】
1.第1~第m(合計m個)の加熱ユニット(好ましくは熱交換器又は加熱炉、より好ましくは加熱炉)と、第1~第n(合計n個)のコークス塔と、を備えたコークス化システムであって、mは2~n-1の任意の整数であり、nは3以上の任意の整数(好ましくは3~20の任意の整数、より好ましくは3~5の任意の整数、より好ましくは3)であり、m個の前記加熱ユニットの各々は、n個の前記コークス塔とそれぞれ連通しており、n個の前記コークス塔の各々(好ましくは上部及び/又は天井部)は、1つ以上(好ましくは1つ)の分離塔(好ましくは精留塔、フラッシュ塔、蒸発塔、又は分留塔、より好ましくは分留塔)とそれぞれ連通しており、1つ以上の前記分離塔(好ましくは下部及び/又は底部)は、第mの前記加熱ユニットと連通しており、任意に第iの前記加熱ユニット(iは1より大きくmより小さい任意の整数)と連通している(好ましくは、第1の前記加熱ユニットとは連通していない)、コークス化システム。
【0013】
2.制御ユニットをさらに備え、当該制御ユニットは、時間T0から、前記加熱ユニットの各々から第hの前記コークス塔への材料輸送を、第1の前記加熱ユニットから第mの前記加熱ユニットへと順番に開始及び終了させ、時間Teに、第mの前記加熱ユニットから第hの前記コークス塔への材料輸送を終了させられるように構成されており、T0はコークス充填開始時間であり、Teはn個の前記コークス塔の第hの前記コークス塔(hは1~nの任意の整数)に対するコークス充填終了時間である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化システム。
【0014】
3.少なくとも1つの濾過装置をさらに備え、当該濾過装置は、少なくとも1つの前記加熱ユニット(好ましくは第mの前記加熱ユニット、及び任意に第iの前記加熱ユニット、ここでiは1より大きくmより小さい任意の整数)の入口及び/又は出口に配置されている、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化システム。
【0015】
4.少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクをさらに備え、少なくとも1つの前記コークス形成原料貯蔵タンクは、第1の前記加熱ユニットと連通しており、任意に第iの前記加熱ユニット(iは1より大きくmより小さい任意の整数)と連通している(好ましくは、第mの前記加熱ユニットと連通していない)、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化システム。
【0016】
6.m個の加熱ユニット及びn個のコークス塔を使用することによるコークス化工程を含むコークス化方法であって、mは2~n-1の任意の整数であり、nは3以上の任意の整数(好ましくは3~20の任意の整数、より好ましくは3~5の任意の整数、より好ましくは3)であり、m個の前記加熱ユニットの各々は、材料輸送手段においてn個の前記コークス塔とそれぞれ連通しており、T0はコークス充填開始時間であり、Teはn個の前記コークス塔の第hの前記コークス塔(hは1~nの任意の整数)に対するコークス充填終了時間であるとした場合、前記時間T0に開始し、加熱ユニットの各々から第hの前記コークス塔への材料輸送を、第1の前記加熱ユニットから第mの前記加熱ユニットへと順番に開始及び終了し、時間Teに、第mの前記加熱ユニットから第hの前記コークス塔への材料輸送を終了する、コークス化方法。
【0017】
7.前記時間Teにおいて、第1~第mの前記加熱ユニットから第hの前記コークス塔へ輸送された材料の合計は、第hの前記コークス塔の目標コークス充填容量に等しい、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0018】
8.単一の材料輸送サイクル中に、第1~第mの前記加熱ユニットの各々は、材料の1つのバッチのみを第hの前記コークス塔に輸送する、又は単一の材料輸送サイクル中の任意の時点で、第hの前記コークス塔は(i)輸送された材料を受け入れないか、若しくは(ii)第1~第mの前記加熱ユニットのうちの1つから輸送された材料のみを受け入れる、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0019】
9.*材料輸送サイクルが完了した後、(i)第hの前記コークス塔を待機状態にする、又は(ii)第hの前記コークス塔に対する次の材料輸送サイクルを開始するか、のいずれかの前に、第hの前記コークス塔をパージ操作及び脱コークス化操作に供する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0020】
10.第1~第mの前記加熱ユニットの各々は、その輸送された材料を、前記輸送された材料のために第hの前記コークス塔に必要とする温度まで加熱する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0021】
11.第1の前記加熱ユニットは、その輸送された材料(第1の輸送された材料と呼ぶ)を400℃~480℃(好ましくは420℃~460℃)の供給温度W1に加熱し、前記第1の輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガス速度G1を0.05~0.25m/s(好ましくは0.05~0.10m/s)にし、第mの前記加熱ユニットは、その輸送された材料(第mの輸送された材料と呼ぶ)を460℃~530℃(好ましくは460℃~500℃)の供給温度Wmに加熱し、前記第mの輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガス速度Gmを0.10~0.30m/s(好ましくは0.15~0.20m/s)にし、第iの前記加熱ユニット(iは1より大きくmより小さい任意の整数)は、その輸送された材料(第iの輸送された材料と呼ぶ)を供給温度Wi(W1≦Wi≦Wm)に加熱し、前記第iの輸送された材料は、第hの前記コークス塔の塔内ガス速度GiがG1≦Gi≦Gmに到達することを可能にし、且つ/又は、第1の前記加熱ユニットによる輸送された材料の加熱速度V1は、1~30℃/h(好ましくは1~10℃/h)であり、第mの前記加熱ユニットによる輸送された材料の加熱速度Vmは、30~150℃/h(好ましくは50~100℃/h)であり、第iの前記加熱ユニットによる輸送された材料の加熱速度Vi(iは1より大きくmより小さい任意の整数)は、関係式V1≦Vi≦Vmを満たす、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0022】
12.n個の前記コークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料(好ましくは天井部材料)を、1つ以上(好ましくは1つ)の分離塔(好ましくは精留塔、フラッシュ塔、蒸発塔、又は分留塔、より好ましくは分留塔)に移送し、1つ以上の前記分離塔において、材料を、前記分離塔の天井部材料と前記分離塔の底部材料とに少なくとも分離する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0023】
13.1つ以上の前記分離塔の運転条件は、前記塔の頂部における圧力が0.01~0.8MPaであり、前記塔の頂部における温度が100~200℃であり、前記塔の底部における温度が280~400℃であり、且つ/又はn個の前記コークス塔の運転条件は互いに同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、前記塔の頂部における圧力が0.01~1.0MPaであり、前記塔の頂部における温度が300~470℃であり、前記塔の底部における温度が350~510℃である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0024】
14.第1の前記加熱ユニットは、その輸送された材料としてコークス形成原料を(好ましくは、のみを)有し、第mの前記加熱ユニットは、その輸送された材料(好ましくは、少なくとも前記分離塔の底部材料を含む)としてコークス引上げ原料を(好ましくは、のみを)有し、第iの前記加熱ユニット(iは1より大きくmより小さい任意の整数)は、その輸送された材料として前記コークス形成原料及び前記コークス引上げ原料からなる群から選択される少なくとも1つを有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0025】
15.前記コークス形成原料は、石炭系原料及び石油系原料(硫黄含有量は、好ましくは0.6重量%より小さく、より好ましくは0.5重量%より小さく、及びコロイド/アスファルテン含有量は、10.0重量%より小さく、好ましくは5.0重量%より小さく、より好ましくは2.0重量%より小さい)のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはコールタール、コールタールピッチ、石油重油、エチレンタール、触媒分解残渣、又は熱分解残渣のうちの少なくとも1つから選択され、10~80%(好ましくは20~70%、より好ましくは30~60%)のコークス形成率(コークス形成率Aと呼ぶ)を有し、且つ/又は前記分離塔の底部材料は、300℃~400℃(好ましくは350℃~380℃)の10%留出点温度、450℃~500℃(好ましくは460℃~480℃)の90%留出点温度を有し、且つ/又は前記コークス引上げ原料は、石炭系原料及び石油系原料(好ましくはコーカーガスオイル、コーカーディーゼル、エチレンタール、及び熱分解重油から選択され、より好ましくは、硫黄含量は1.0重量%より小さく、より好ましくは0.6重量%より小さい)のうちの少なくとも1つから選択され、コークス形成率(コークス形成率Bと呼ぶ)は、コークス形成率A>コークス形成率Bという条件で、1~40%(好ましくは1~20%、より好ましくは1~10%)である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0026】
16.1つの材料輸送サイクル中に第hの前記コークス塔(hは1~nの任意の整数)に輸送されるコークス形成原料の総量に対する前記コークス引上げ原料の総量の重量比率は、0.5~4.0(好ましくは1.0~2.0)である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0027】
17.Te-T0=Tである場合、第hの前記コークス塔は、10~60時間(好ましくは24~48時間)のコークス充填サイクルTを有し、又はn個の前記コークス塔は、互いに同一又は異なり(好ましくは互いに同一)、それぞれ独立して10~60時間(好ましくは24~48時間)であるコークス充填サイクルTを有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0028】
18.1つの材料輸送サイクル内で、1つの材料輸送サイクルをTC(時間単位)とし、第1~第mの前記加熱ユニットの第hの前記コークス塔への材料輸送時間をそれぞれD1~Dm(時間単位)とした場合、D1/TC=10~90%又は30~70%、D2/TC=10~90%又は30~70%、...、Dm/TC=10~90%又は30~70%、且つTC/2≦D1+D2+...+Dm≦TC(好ましくはD1+D2+...+Dm=TC)であり、又はD1=D2=...=Dm=TC/m=T/m、且つD1+D2+...+Dm=TC=Tであり、Tは第hの前記コークス塔のコークス充填サイクルである、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0029】
19.n個の前記コークス塔のうち、隣接する番号(番号1及び番号nは隣接する番号として規定される)の付いたいずれか2つが、それぞれ第aの前記コークス塔及び第bの前記コークス塔である(aは1~nの任意の整数であり、bは1~nの任意の整数であるが、a≠b)場合、第jの前記加熱ユニット(jは1~mの任意の整数)から第aの前記コークス塔への材料輸送が終了した時点で、第jの前記加熱ユニットから第bの前記コークス塔への材料輸送を開始する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0030】
20.前記コークス形成原料及び前記コークス引上げ原料からなる群から選択される少なくとも1つの材料(好ましくは前記コークス引上げ原料、より好ましくは前記分離塔の底部材料)を、加熱ユニットに入る前、及び/又はコークス塔に入る前(好ましくは加熱ユニットに入る前、より好ましくは第mの加熱ユニットに入る前、及び任意に第iの加熱ユニットに入る前、iは1より大きくmより小さい任意の整数)に濾過し、それによって材料のコークス微粒子濃度が0~200mg/L(好ましくは0~100mg/L、より好ましくは0~50mg/L)の範囲になるように制御する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0031】
21.n個の前記コークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料(好ましくは天井部材料)の少なくとも一部(例えば10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は100重量%)を、1つ以上(好ましくは1つ)の分離塔(好ましくは精留塔、フラッシュ塔、蒸発塔、又は分留塔、より好ましくは分留塔)に移送し、1つ以上の前記分離塔の下部材料及び/又は底部材料の少なくとも一部(例えば10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は100重量%)を、第mの前記加熱ユニット、及び任意に第iの前記加熱ユニット(iは1より大きくmより小さい任意の整数)に輸送し、好ましくは第1の前記加熱ユニットに輸送しない、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0032】
22.前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法であって、m=2、n=3であり、3つのコークス塔を、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2つの加熱ユニットを、それぞれ加熱ユニットa及び加熱ユニットbと標識した場合、3つのコークス塔の各々の天井部材料(オイルガス)は、材料輸送手段において前記分離塔の1つと連通しており、前記加熱ユニットaはコークス形成原料を輸送及び加熱するものであり、前記加熱ユニットbはコークス引上げ原料を輸送及び加熱するものであり、
前記コークス化方法は、少なくとも以下の工程:
(1)前記コークス形成原料を前記コークス塔aに供給し、前記コークス塔aにより生成されたオイルガスを前記分離塔に導入して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(2)前記コークス塔aの供給時間が前記コークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔bによって生成されたオイルガスを前記分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(3)前記コークス塔bの供給時間が前記コークス塔bのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔cへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔bへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔cによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(4)前記コークス塔aでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(5)前記コークス塔cの供給時間が前記コークス塔cのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、前記コークス塔cへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔cへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔bへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔aによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(6)前記コークス塔bでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(7)前記コークス塔aの供給時間が前記コークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、前記コークス塔aへの前記コークス形成原料の供給を停止し、同時に前記コークス塔bへの前記コークス形成原料の供給を開始し、前記コークス塔aへの前記コークス引上げ原料の供給を開始し、前記コークス塔cへの前記コークス引上げ原料の供給を停止し、前記コークス塔bによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(8)前記コークス塔cの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(9)(3)~(8)を繰り返す工程;
を含む、コークス化方法。
【0033】
23.3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備えるコークス化システムであって、3つの前記コークス塔を、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2組の前記加熱炉を、それぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識し、任意のコークス塔は、2組の前記加熱炉と接続され、任意のコークス塔の頂部は、分留塔の入口とパイプラインを介して接続され、前記分留塔の底部出口は、コークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクは、前記加熱炉bと接続され、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクからの材料を前記コークス塔の供給温度まで加熱するものであり、前記加熱炉aは、原料タンクと接続されており、コークス化原料を前記コークス塔の供給温度まで加熱する、コークス化システム。
【0034】
24.前記コークス引上げ原料貯蔵タンクと前記加熱炉bとの間に濾過装置が設けられている、前述の態様のいずれかに記載のコークス化システム。
【0035】
25.コークス化装置を用いたコークス化方法であって、前記コークス化装置は、3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備え、3つの前記コークス塔は、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識され、2組の前記加熱炉は、それぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識され、任意のコークス塔は2組の前記加熱炉と接続され、任意のコークス塔の頂部は、前記分留塔の入口とパイプラインを介して接続され、前記分留塔の底部出口は、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、前記加熱炉bは、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクからの材料を前記コークス塔の供給温度まで加熱するために使用され、前記加熱炉aは、原料タンクに接続されており、新たな原料をコークス塔の供給温度まで加熱するために使用され、
具体的な操作方法は以下の通りである:
(1)コークス化原料を、前記加熱炉aによって加熱し、前記コークス塔aに入れ、生成されたオイルガスを前記分留塔に入れて分留して、ガス、コーカーガソリン、及びコーカーディーゼルと、塔底部におけるコーカーガスオイルとを得て、塔底部にある前記コーカーガスオイルを、前記コークス引上げ原料貯蔵タンクに導入する;
(2)工程(1)における前記コークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔aのコークス供給を前記コークス塔bに切り替え、前記コークス塔bは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記コークス塔aには前記加熱炉bを介して加熱された前記コークス引上げ原料を供給し、コークス充填を継続する;
(3)工程(2)における前記コークス塔bの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔bのコークス供給を前記コークス塔cに切り替え、前記コークス塔cは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料を前記コークス塔bに切り替え、このとき、前記コークス塔aを、蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(4)工程(3)における前記コークス塔cの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔cのコークス供給を前記コークス塔aに切り替え、前記コークス塔aは工程(1)におけるプロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料を前記コークス塔cに切り替え、このとき、前記コークス塔bを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(5)工程(4)における前記コークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、前記コークス塔aのコークス供給を前記コークス塔bに切り替え、前記コークス塔bは工程(1)における前記コークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、前記加熱炉bにより比較的高温に加熱された前記コークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)を前記コークス塔aに切り替え、このとき、前記コークス塔cを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(6)工程(3)、工程(4)、及び工程(5)のプロセスを繰り返す;
コークス化方法。
【0036】
26.前記コークス塔は24~48時間のコークス製造サイクルを有し、前記コークス製造サイクルは、単一のコークス塔においてコークス化原料及びコークス引上げ原料をコークス充填するための合計時間である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0037】
27.コークス塔へのコークス化原料を、コークス化原料の供給時間が前記コークス製造サイクル全体の30~70%であるときに、別のコークス塔に切り替える、前述又は後続の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0038】
28.前記コークス塔内のガス速度を0.05~0.25m/sに制御する場合には、前記加熱炉aの出口における温度は400℃~460℃の範囲内であり、前記コークス塔内のガス速度を0.10~0.30m/sに制御する場合には、前記加熱炉bの出口温度は460℃~530℃の範囲内である、前述又は後続の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0039】
29.前記コークス塔内のガス速度を0.05~0.10m/sに制御する場合には、前記加熱炉aの出口温度は420℃~450℃の範囲内であり、前記コークス塔内のガス速度を0.15~0.20m/sに制御する場合には、前記加熱炉bの出口温度は460℃~500℃の範囲内である、前述又は後続の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0040】
30.前記加熱炉aは1~30℃/hの加熱速度を有し、前記加熱炉bは30~150℃/hの加熱速度を有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0041】
31.前記加熱炉aは1~10℃/hの加熱速度を有し、前記加熱炉bは50~100℃/hの加熱速度を有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0042】
32.コーカーガスオイルは、300℃~400℃の10%留出点温度、及び450℃~500℃の90%留出点温度を有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0043】
33.コーカーガスオイルは、350℃~380℃の10%留出点温度、及び460℃~480℃の90%留出点温度を有する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0044】
34.前記コークス引上げ原料(特にコーカーガスオイル)の前記コークス塔へのコークス充填において、前記コークス形成原料に対する前記コークス引上げ原料の比率を0~4.0に制御する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0045】
35.前記コークス引上げ原料(特にコーカーガオイル)を濾過ユニットに通過させて、コークス微粒子を除去してから、前記加熱炉に送り、濾過した前記コークス引上げ原料のコークス微粒子濃度を0~200mg/Lに制御する、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0046】
36.前記コークス化原料は石炭系原料又は石油系原料である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0047】
37.前記コークス化原料は、コールタール又はコールタールピッチ、石油重油、エチレンタール、接触分解残油又は熱分解残油のうちの1つ以上である、前述又は後述の態様のいずれかに記載のコークス化方法。
【0048】
〔技術的効果〕
本コークス化システム及び本コークス化方法によれば、以下の技術的効果の少なくとも1つを実現することができる:
(1)石油又は石炭原料を利用して、安定した性能を持つ高品質の針状コークスを製造することができる。
(2)同一のコークス塔上に複数の加熱ユニットを配置し、各加熱ユニットの供給物性と処理量に応じて加熱ユニットの各々を設計することにより、供給物性、供給量、並びに単一の加熱ユニットの温度変化及び圧力変化が製品物性に及ぼす影響を低減する。
(3)複数の加熱ユニット及び複数のコークス塔の運転により、原料貯蔵タンク内の新たな原料がコークス塔内に広域中間相構造を発生させるための最適条件を創出することができ、コークス塔内の広域中間相構造がある程度発達すると、必要なコークス引上げプロセスが行われる必要があるため、コークス化が容易でないコークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)による全面的なコークス充填へと後段の加熱段階を変遷させ、コークス引上げ原料は広域中間相の温度を上昇させコークス塔内のコークスを引き出す役割のみを果たし、等方性コークスの生成は制限され、原料貯蔵タンク内の新たな原料から広域中間相を生成させるプロセスとコークス引上げ原料によって温度を上昇させるプロセスはそれぞれ別々に実施され、各段階で要求される最適条件がそれぞれ創出され、針状コークス製品の性能は効果的に改善され、針状コークスの熱膨張係数は減少する。
(4)コークス引上げ原料(特にコーカーガスオイル)を加熱ユニットに入れる前に、濾過装置を通してコークス微粒子を除去することによって、システムの長期運転及び針状コークスの品質の改善が促進される。
(5)工業的な遅延コークス化システムの連続運転の要件は、複数のコークス塔及び複数の加熱ユニットによって運転される遅延コークス化によって、満たすことができる。
(6)製造された針状コークスは安定した流線形組織、低い熱膨張係数等という利点を有し、大規模な超高出力黒鉛電極用の針状コークスの要件を満たしている。
【0049】
〔図面の説明〕
図1は、本発明のコークス化システムの例示的な概略図であるが、本発明はそれに限定されない。
【0050】
図1において、1はコークス形成原料(新たな原料又はコークス化原料とも呼ぶ)、2は加熱炉b、3は加熱されたコークス形成原料、4はコークス塔(a、b、c)、5はオイルガスパイプライン、6は分留塔、7はコーカーガス、8はコーカーナフサ、9はコーカーディーゼル、10はコーカーガスオイル、11はリサイクルされたコーカーガスオイル、12はコークス引上げ原料貯蔵タンク、13は補助コークス引上げ原料パイプライン、14は加熱炉a、15は加熱されたコークス引上げ原料、16はコークス微粒子濾過装置である。コークス引上げガス原料貯蔵タンク12は、ライン10からのコーカーガスオイル及び/又はライン17からの他のコークス引上げ原料を貯蔵するために使用され、貯蔵された原料はまた、ライン18を介して環境中に排出され、且つ/又はライン11からのリサイクルされたコーカーガスオイルと所定の比率で混合された後、ライン13を介してコークス微粒子濾過装置16に補助コークス引上げガス原料として輸送されてもよい。場合によっては、ライン10からのコーカーガスオイル及びライン17からの他のコークス引上げ原料は、コークス引上げ原料貯蔵タンク12内で混合され、混合コークス引上げ原料が形成されてもよい。ここで、他のコークス引上げ原料は、外部供給源(例えば、他のコークス化システム又は分解システムから)であってもよく、又は本発明のコークス化システムからのものであってもよく、例えば、分留塔6からのコーカーガスオイル又はコーカーディーゼルであってもよい。
【0051】
図2は、従来技術による1つの加熱炉及び2つの塔の切り替えのコークス化システムである。
【0052】
図2において、17は新たな原料であり、18は加熱炉であり、19は加熱された新たな原料であり、20はコークス塔(a、b)であり、21はオイルガスパイプラインであり、22は分留塔であり、23はコーカーガスであり、24はコーカーナフサであり、25はコーカーディーゼルであり、26はコーカーガスオイルであり、27はリサイクルされたコーカーガスオイルである。
【0053】
本発明の文脈において、コーカーガスオイル及びリサイクルされたコーカーガスオイルは区別なく集合的にコーカーガスオイルと呼ばれることがあり、組合せコークス引上げ原料、他のコークス引上げ原料、及び補助コークス引上げ原料は、区別なく集合的にコークス引上げ原料と呼ばれることがある。
【0054】
〔詳細な説明〕
ここで、本発明の本実施形態を詳細に参照するが、本発明の範囲は、実施形態によっては限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0055】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特記しない限り、本明細書で使用する専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0056】
本明細書が「当業者に公知の」、「先行技術」などの表現と共に材料、物質、方法、手順、手段、又は構成要素等を導出する場合、そのように導出された題目は、本出願の出願時に当技術分野で従来から使用されている材料、物質、方法、手順、手段、又は構成要素だけでなく、現在ではそれほど一般的に使用されていない可能性があるが、同様の目的に適しているものとして当技術分野で知られるようになるであろう材料、物質、方法、手順、手段、又は構成要素を包含することが意図される。
【0057】
本発明の文脈において、コークス形成率は、温度500℃、圧力(ゲージ圧)0.5MPa、コークス化時間10分で、10Lタンクコークス化反応装置内で測定される。コークス形成率は、コークス化反応の終了時における反応原料(コークス形成原料又はコークス引上げ原料等)に対するコークス化反応装置中の残留固体の重量比率によって決定される。
【0058】
本発明の文脈において、「材料輸送手段(material transport manner)において...と連通している」とは、輸送管又は当業者に従来公知の任意の他の手段等を介して、1方向又は2方向に互いの間で材料が輸送され得ることを意味している。
【0059】
特に明示的に示されない限り、本明細書で言及されるすべてのパーセンテージ、部、比率等は、当業者によって一般的に認められない限り、重量によるものである。
【0060】
本明細書の文脈において、本発明の任意の2つ以上の実施形態は任意の組み合わせで組み合わせることができ、得られる解決策は本明細書の元の開示の一部であり、本発明の範囲内である。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、第1~第m(合計m個)の加熱ユニットと、第1~第n(合計n個)のコークス塔とを含むコークス化システムが開示される。ここで、mは2~n-1の任意の整数であり、nは3以上の任意の整数であり、好ましくは3~20の任意の整数、より好ましくは3~5の任意の整数、さらにより好ましくは3である。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、m個の加熱ユニットの各々は、それぞれ、n個のコークス塔と連通している。この連通は多方向バルブ、特に四方向バルブ(
図1に示す)等の当業者に公知の任意の方法で達成され得るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、n個のコークス塔の各々は、それぞれ、1つ以上の分離塔と連通している。好ましくは、コークス塔の上部及び/又は天井部(好ましくは天井部)が分離塔と連通している。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の分離塔は、第mの加熱ユニットと連通している。好ましくは、1つ以上の分離塔の塔の下部及び/又は塔の底部(好ましくは塔の底部)が第mの加熱ユニットと連通している。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の分離塔は、場合に応じて、第iの加熱ユニットとさらに連通していてもよい。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。好ましくは、1つ以上の分離塔の塔の下部及び/又は塔の底部(好ましくは塔の底部)が第iの加熱ユニットと連通している。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、本発明に基づいて針状コークスの性能をさらに改善し、且つコークス化システムのコークス化操作をより円滑にするために、1つ以上の分離塔は第1の加熱ユニットとは連通していない。ここで、連通とは、パイプラインを介した直接的な連通、及びその間に介在したタンクやフィルタ等の他の装置との間接的な連通の場合を含む。
【0067】
本発明の文脈において、前記連通とは、一般に、材料輸送手段での連通、特に一方向材料輸送手段での連通を意味している。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、加熱ユニットの種類は特に限定されるものではなく、ユニット内を通って輸送される材料を所定の温度に加熱できるものであれば、任意の加熱装置を用いることができ、例えば熱交換器や加熱炉、好ましくは加熱炉であればよい。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、分離塔の種類は特に限定されず、分離塔に供給される材料を所定の要件に従って複数の成分に分離できるものであれば、任意の分離装置を用いてもよく、その具体例としては、精留塔、フラッシュ塔、蒸発塔、分留塔等が挙げられ、分留塔が好ましい。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、分離塔の数は特に限定されず、具体的には、1~10、1~5、1~3、又は1つの塔が挙げられる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムは、3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを含むコークス化ユニットである。3つのコークス塔をそれぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2組の加熱炉をそれぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識した場合、任意の1つのコークス塔は2組の加熱炉に接続され、任意のコークス塔の頂部はパイプラインを介して分留塔の入口に接続され、分留塔の底部出口はコークス引上げ原料貯蔵タンクに接続されている。さらに、コークス引上げ原料貯蔵タンクは、コークス引上げ原料貯蔵タンクからの原料をコークス塔の供給温度まで加熱する加熱炉bに接続される。そして、加熱炉aは原料タンクと接続され、コークス化原料をコークス塔の供給温度まで加熱する。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、コークス化ユニットにおいて、未加工コークス引上げ原料タンクと加熱炉bとの間に濾過装置が設けられる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムは、制御ユニットをさらに備えることができる。
【0074】
本発明の一実施の形態によれば、T0をコークス充填開始時間とし、Teをn個のコークス塔の第hのコークス塔に対するコークス充填終了時間とすると、制御ユニットは、時間T0から加熱ユニットの各々から第hのコークス塔への材料輸送を、第1の加熱ユニットから第mの加熱ユニットへと順番に、時間T0を開始時間として開始及び終了させ、時間Teに第mの加熱ユニットから第hのコークス塔への材料輸送を終了させられるように構成されている。ここで、hは、1~nの任意の整数である。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、時間Teにおいて、第hのコークス塔への第1~第mの加熱ユニットからの材料輸送量の合計は、第hのコークス塔の目標コークス充填容量に等しい。本発明の文脈において、「目標コークス充填容量」とは、コークス塔に許容される最大かつ安全なコークス充填容量を意味している。
【0076】
本発明の文脈において、第1の加熱ユニットから第mの加熱ユニットまでの第hのコークス塔への材料輸送は時間T0から時間Teまでに完了し、これを材料輸送サイクルと呼ぶ。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、第1~第mの加熱ユニットの各々は、単一の材料輸送サイクル中に、材料の1つのバッチのみを第hのコークス塔に輸送する。輸送は、ここでは連続的、半連続的又はバッチ式に行うことができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、第hのコークス塔は、材料輸送サイクル中のいかなる時点においても材料輸送を受け入れない。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、第hのコークス塔は、単一の材料輸送サイクル中の任意の時点で、第1~第mの加熱ユニットのうちの1つのみからの材料輸送のみを受け入れる。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、材料輸送サイクルが完了した後、第hのコークス塔をパージし、脱コークス化し、次いで第hのコークス塔を待機状態にさせる。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、材料輸送サイクルが完了した後、第hのコークス塔をパージし、脱コークス化し、次いで第hのコークス塔に対する次の材料輸送サイクルを開始する。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、第1~第mの加熱ユニットの各々は、その輸送材料を、その輸送材料のために第hのコークス塔によって必要とされる供給温度まで加熱するように構成される。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、第1の加熱ユニットは、その輸送材料(第1の輸送材料と呼ぶ)を400℃~480℃(好ましくは420℃~460℃)の供給温度W1に加熱する。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、第1の輸送材料は、第hのコークス塔内の塔内ガス速度G1を0.05~0.25m/s、好ましくは0.05~0.10m/sにする。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、第mの加熱ユニットは、その輸送材料(第mの輸送材料と呼ぶ)を460℃~530℃、好ましくは460℃~500℃の供給温度Wmに加熱する。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、第mの輸送材料は、第hのコークス塔内の塔内ガス速度Gmを0.10~0.30m/s、好ましくは0.15~0.20m/sにする。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、第iの加熱ユニットは、その輸送材料(第iの輸送材料と呼ぶ)を供給温度Wiまで加熱し、ここでW1≦Wi≦Wmであり、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、第iの輸送材料は、第hのコークス塔内の塔内ガス速度GiをG1≦Gi≦Gmに到達させることが可能である。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、第1の加熱ユニットのその輸送材料の加熱速度V1は、1~30℃/h、好ましくは1~10℃/hである。対応する供給温度に達した後、温度は一定に維持される。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、第mの加熱ユニットのその輸送材料の加熱速度Vmは、30~150℃/h、好ましくは50~100℃/hである。対応する供給温度に達した後、温度は一定に維持される。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、第iの加熱ユニットのその輸送材料の加熱速度Viは、関係V1≦Vi≦Vmを満たす。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。対応する供給温度に達した後、温度は一定に維持される。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、n個のコークス塔の各々の上部及び/又は天井部(例えば、頂部)は、材料輸送手段において1つ以上の分離塔と連通している。言い換えると、n個のコークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料(天井部材料等)は、1つ以上の分離塔に輸送される。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の分離塔において、各コークス塔の天井部材料は少なくとも分離塔の天井部材料と分離塔の底部材料とに分割され、例えば、天井部材料は、天井部材料(一般にコーカーガスと呼ばれる)と、複数の塔側部材料(例えば、ナフサ及びコーカーガスオイルを含む)と、及び底部材料とに分割されてもよい。本発明の文脈において、分離塔の底部材料は、コーカーガスオイルとも呼ばれることがある。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、コーカーガスオイルは、300℃~400℃、好ましくは350℃~380℃の10%留出点温度と、450℃~500℃、好ましくは460℃~480℃の90%留出点温度とを有する。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の分離塔の運転条件は、塔頂部における圧力が0.01~0.8MPaであり、塔頂部における温度が100~200℃であり、塔底部における温度が280~400℃という条件を含む。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、n個のコークス塔の運転条件は、互いに同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、塔頂部における圧力が0.01~1.0MPa、塔頂部における温度が300~470℃、塔底部における温度が350~510℃という条件を含む。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、第1の加熱ユニットは、コークス形成原料を輸送材料として使用する。この目的のために、コークス化システムは一般に、円滑な運転のための少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンク(原料タンクとも呼ばれる)を含み得る。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのコークス形成原料タンクは、少なくとも1つのコークス形成原料タンク内のコークス形成原料を第1の加熱ユニットに輸送するために、第1の加熱ユニットと連通している。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、本発明に基づいて、針状コークスの性能をさらに改善し、コークス化システムのコークス化操作プロセスをより円滑にするために、第1の加熱ユニットは輸送材料としてコークス形成原料のみを使用し、コークス引上げ原料を使用せず、特に、例え輸送材料の一部であっても、分離塔の底部材料又はコーカーガスオイルを輸送材料として使用しない。言い換えれば、少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクは、第mの加熱ユニットと連通していない。ここで、連通とは、パイプラインを介して直接的に連通する場合と、その間に介在するタンクやフィルタ等の他の装置と間接的に連通する場合とを含む。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、第mの加熱ユニットは、輸送材料としてコークス引上げ原料を使用する。好ましくは、コークス引上げ原料は1つ以上の分離塔の底部材料を少なくとも含む。本発明において、コークス引上げ原料中の底部材料の割合(一般に補給率と呼ばれる)は特に限定されないが、一般に0~80%、好ましくは30~70%、より好ましくは50~70%である。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、本発明に基づいて、針状コークスの性能をさらに改善しコークス化システムのコークス化操作をより円滑にするために、少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクは、第mの加熱ユニットと連通していない。ここで、連通とは、パイプラインを介して直接的に通信する場合と、その間に介在するタンクやフィルタ等の他の装置と間接的に連通する場合とを含む。言い換えれば、第mの加熱ユニットはコークス引上げ原料のみをその輸送された材料として使用し、コークス形成原料をその輸送された材料として使用しない。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、第iの加熱ユニットは、輸送材料としてコークス形成原料及びコークス引上げ原料から選択される少なくとも1つを有する。この目的のために、第iの加熱ユニットの材料輸送のタイプに応じて、少なくとも1つのコークス形成原料貯蔵タンクは、(コークス形成原料が輸送材料として使用される場合は)第iの加熱ユニットと連通していてもよく、又は(他の材料が輸送材料として使用される場合は)第iの加熱ユニットと連通していなくてもよい。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成原料は、石炭系原料及び石油系原料のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはコールタール、コールタールピッチ、石油重油、エチレンタール、接触分解残渣、又は熱分解残渣のうちの少なくとも1つから選択される。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成原料のコークス形成率(コークス形成率Aと呼ぶ)は、一般に10~80%、好ましくは20~70%、より好ましくは30~60%である。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成原料の硫黄含有量は、一般に0.6重量%より小さく、好ましくは0.5重量%より小さい。この理由のために、コークス形成原料は、通常、精製されている。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成原料のコロイド含有量及びアスファルテン含有量は、一般に10.0重量%より小さく、好ましくは5.0重量%より小さく、より好ましくは2.0重量%より小さい。ここで、コロイド含有量及びアスファルテン含有量は、標準SH/T05094-2010に従って測定される。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の分離塔の底部材料の10%留出点温度は300℃~400℃、好ましくは350℃~380℃であり、90%留出点温度は450℃~500℃、好ましくは460℃~480℃である。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、コークス引上げ原料は、石炭系原料及び石油系原料のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはコーカーガスオイル、コーカーディーゼル、エチレンタール、及び熱分解重油のうちの少なくとも1つから選択される。コークス引上げ原料(特にコーカーガスオイル)は、前述の分離塔から(例えば、分離塔の底部材料として)得ることができ、又は商業的に入手可能であるもの、若しくは当技術分野で公知の任意の方法によって製造されたもの等、別の供給源から得ることができ、特に限定されない。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、コークス引上げ原料は、1つ以上の分離塔の底部材料を少なくとも含む。本発明において、コークス引上げ原料中の底部材料の割合(一般に補給率と呼ばれる)は特に限定されないが、一般に0~80%、好ましくは30~70%、より好ましくは50~70%である。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、コークス原料のコークス形成率(コークス形成率Bと呼ぶ)は、一般に1~40%、好ましくは1~20%、より好ましくは1~10%である。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成率A>コークス形成率Bである。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、コークス引上げ原料の硫黄含有量は、一般に1.0重量%より小さく、好ましくは0.6重量%より小さい。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、単一の材料輸送サイクル中に第hのコークス塔に輸送されるコークス形成原料の総量に対するコークス引上げ原料の総量の重量比率(「引上げ/形成比率」と呼ぶ)は、一般に0.5~4.0の範囲、好ましくは1.0~2.0の範囲である。ここで、hは1~nの任意の整数である。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、Te-T0=Tである場合、第hのコークス塔は、10~60時間、好ましくは24~48時間のコークス充填サイクルTを有する。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、n個のコークス塔のコークス充填サイクルTは、互いに同一又は異なり(好ましくは互いに同一)、それぞれ独立して10~60時間、好ましくは24~48時間である。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、1の材料輸送サイクルにおいて、前記材料輸送サイクルがTC(時間単位)であり、前記第1~第mの加熱ユニットの第hのコークス塔への材料輸送時間がそれぞれD1~Dm(時間単位)である場合、D1/TC=10~90%又は30~70%、D2/TC=10~90%又は30~70%、...、Dm/TC=10~90%又は30~70%であり、且つTC/2≦D1+D2+...+Dm≦TC、好ましくはD1+D2+...+Dm=TCである。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、D1=D2=...=Dm=TC/m=T/mであり、且つD1+D2+...+Dm=TC=Tである。ここで、Tは第hのコークス塔のコークス充填サイクルである。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、n個のコークス塔のうち、隣接する番号(番号1及び番号nは隣接する番号と規定される)の付いたいずれか2つが、それぞれ第aのコークス塔及び第bのコークス塔である場合、制御ユニットは、第jの加熱ユニットの第aのコークス塔への材料輸送を開始及び停止し、次いで、第jの加熱ユニットの第bのコークス塔への材料輸送を開始及び停止するように構成される。ここで、jは1~mの任意の整数である。また、aは1~nの任意の整数であり、bは1~nの任意の整数であるが、a≠bである。言い換えれば、n個のコークス塔のうち隣接する番号の付いたいずれか2つがそれぞれ第aのコークス塔及び第bのコークス塔である場合、第jの加熱ユニットから第aのコークス塔への材料輸送が完了した時点で、第jの加熱ユニットから第bのコークス塔への材料輸送が開始される(場合によっては、必要な遅延時間が経過した後)。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、m個の加熱ユニット及びn個のコークス塔を用いてコークス化する工程を含むコークス化方法も提供される。あるいはこの方法は、上記のような本発明のコークス化システムを用いてコークス化する工程を含む。以下に詳述されるものを除いて、特定されていないコークス化方法の全ての事柄又は内容は、コークス化システムの対応する説明に直接適用することができ、本明細書では詳細には説明しない。
【0120】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、n個のコークス塔の各々の上部材料及び/又は天井部材料(天井部材料等)の少なくとも一部を、1つ以上の分離塔に輸送し、1つ以上の分離塔の下部材料及び/又は底部材料の少なくとも一部を、第mの加熱ユニットに輸送し、且つ任意に第iの加熱ユニットに輸送する。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。「少なくとも一部」とは、例えば、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は100重量%を意味する。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、本発明に基づいて、針状コークスの性能をさらに改善しコークス化システムのコークス化操作をより円滑にするために、1つ以上の分離塔の下部材料及び/又は底部材料、さらにはその少なくとも一部を、第1の加熱ユニットに供給しない。
【0122】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において使用するコークス化装置は、3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備え、3つのコークス塔をそれぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2組の加熱炉をそれぞれ加熱ユニットa及び加熱ユニットbと標識し、任意のコークス塔は2組の加熱炉と接続され、任意のコークス塔の頂部はパイプラインを介して分留塔の入口と接続され、分留塔の底部出口はコークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、加熱炉bはコークス引上げ原料貯蔵タンクと接続され、コークス原料貯蔵タンクからの材料をコークス塔の供給温度まで加熱するために使用され、加熱炉aは原料タンクに接続されており、新たな原料をコークス塔の供給温度まで加熱するために使用される;
具体的な操作方法は以下の通りである:
(1)コークス化原料を、加熱炉aによって加熱し、コークス塔aに入れ、生成されたオイルガスを分留塔に入れて分留し、ガス、コーカーガソリン、及びコーカーディーゼルと、塔底部におけるコーカーガスオイルとを得て、塔底部にあるコーカーガスオイルを、コークス引上げ原料貯蔵タンクに導入する;
(2)工程(1)におけるコークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔aのコークス供給をコークス塔bに切り替え、コークス塔bは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、コークス塔aには加熱炉bを介して加熱されたコークス引上げ原料を供給し、コークス充填を継続する;
(3)工程(2)におけるコークス塔bの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔bのコークス供給をコークス塔cに切り替え、コークス塔cは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔bに切り替え、このとき、コークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てされる;
(4)工程(3)におけるコークス塔cの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔cのコークス供給をコークス塔aに切り替え、コークス塔aは工程(1)における方法を繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔cに切り替え、このとき、コークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(5)工程(4)におけるコークス塔aの供給時間がコークス製造サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔aのコークス供給をコークス塔bに切り替え、コークス塔bは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔aに切り替え、このとき、コークス塔cを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(6)工程(3)、工程(4)、及び工程(5)の方法を繰り返す。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、m=2、n=3であり、3つのコークス塔を、それぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2つの加熱ユニットを、それぞれ加熱ユニットa及び加熱ユニットbと標識した場合、3つのコークス塔の各々の天井部材料(オイルガス)は、材料輸送手段において分離塔の1つと連通しており、加熱ユニットaはコークス形成原料を輸送及び加熱するものであり、加熱ユニットbはコークス引上げ原料を輸送及び加熱するものであり、
コークス化方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(1)コークス形成原料をコークス塔aに供給し、コークス塔aにより生成されたオイルガスを分離塔に導入して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(2)コークス塔aの供給時間がコークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、コークス塔aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔aへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔bによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(3)コークス塔bの供給時間がコークス塔bのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、コークス塔bへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔cへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔bへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔aへのコークス引上げ原料の供給を停止し、コークス塔cによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(4)コークス塔aでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(5)コークス塔cの供給時間がコークス塔cのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、コークス塔cへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔aへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔cへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔bへのコークス引上げ原料の供給を停止し、コークス塔aによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(6)コークス塔bでの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(7)コークス塔aの供給時間がコークス塔aのコークス充填サイクルTの30~70%(好ましくは約50%)に達するとき、コークス塔aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔aへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔cへのコークス引上げ原料の供給を停止し、コークス塔bによって生成されたオイルガスを分離塔に供給して、少なくともコーカーガスオイルを分離する工程;
(8)コークス塔cの蒸気パージ操作及び脱コークス化操作を行う工程;
(9)(3)~(8)を繰り返す工程。
【0124】
本発明の一実施形態によれば、コークス形成原料及びコークス引上げ原料からなる群から選択される少なくとも1つの材料を、それぞれの加熱ユニットに入れる前、及び/又はそれぞれのコークス塔に入れる前に濾過する。この濾過により、材料のコークス微粒子濃度は、通常、0~200mg/L、好ましくは0~100mg/L、より好ましくは0~50mg/Lに制御される。ここで、濾過方法としては、例えば、精密濾過、遠心分離、凝集分離等が挙げられ、精密濾過が好ましい。これらの濾過方法は単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記材料としては、好ましくは前記コークス引上げ原料であり、より好ましくは前記1つ以上の分離塔の底部材料又はコーカーガスオイルである。好ましくは、前記材料をそれぞれの加熱ユニットに入れる前に前記濾過に供し、より好ましくは、前記材料(特に、前記コーカーガスオイル)を第mの加熱ユニットに入る前に前記濾過に供し、且つ/又は前記材料(特に、前記コーカーガスオイル)を第iの加熱ユニットに入れる前に前記濾過に供する。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。
【0125】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムは、任意に、少なくとも1つの加熱ユニットの入口及び/又は出口に設けられた少なくとも1つの濾過装置をさらに備える。好ましくは、少なくとも1つの濾過装置は、第mの加熱ユニットの入口及び/又は出口に設けられる。任意に、少なくとも1つの濾過装置は、第iの加熱ユニットの入口及び/又は出口に設けられる。ここで、iは1より大きくmより小さい任意の整数である。本発明の濾過装置は特に限定されるものではなく、所望の濾過目的が達成されるものであり、当技術分野で従来から用いられているものであればよく、具体的には、精密濾過装置、遠心分離装置、凝集分離装置等が挙げられる。入口は輸送材料入口と呼ばれ、出口は輸送材料出口と呼ばれる。
【0126】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムは少なくとも3つのコークス塔及び2つの加熱ユニットを備え、任意のコークス塔は少なくとも2つの加熱ユニットと連通しており、前記2つの加熱ユニットは原料1及び原料2をそれぞれ供給温度まで加熱するために使用され、前記任意のコークス塔は分留塔と連通している。ここで、原料1は典型的には新たなコーカー原料であり、原料2は典型的にはコークス引上げ原料(特にコーカーガスオイル)である。
【0127】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムは3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備え、3つのコークス塔をそれぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標識し、2組の加熱炉をそれぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標識し、任意のコークス塔は2組の加熱炉と連通しており、任意のコークス塔の頂部はパイプラインを介して分留塔の入口と連通しており、分留塔の底部出口はコークス引上げ原料貯蔵タンクと連通しており、コークス引上げ原料貯蔵タンクはコークス塔の供給温度までコークス引上げ原料貯蔵タンク内の材料を加熱するために加熱炉bと連通しており、加熱炉aはコークス塔の供給温度までコークス化原料を加熱するために原料タンクと連通している。
【0128】
本発明の好ましい実施形態によれば、コークス化システムは3つのコークス塔及び2つの加熱炉を含み、3つのコークス塔をそれぞれコークス塔a、コークス塔b及びコークス塔cと表記し、2つの加熱炉をそれぞれ加熱炉1及び加熱炉2と表記し、任意の1つのコークス塔は少なくとも2つの加熱炉と連通しており、2つの加熱炉はそれぞれ原料1及び原料2を供給温度まで加熱するために使用され、任意の1つのコークス塔は分留塔と連通している。ここで、原料1は一般に新たな原料であり、原料2は一般にコークス引上げ原料(特にコーカーガスオイル)である。
【0129】
本発明の好ましい実施形態によれば、コークス化システムの具体的な操作は以下の通りである:
(1)原料1を加熱炉1によって加熱し、加熱した原料をコークス塔aに供給し、生成したオイルガスを分留塔に供給して分留し、ガス、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、塔底部のコーカーガスオイルを得る;
(2)工程(1)におけるコークス塔aの供給時間がコークス充填サイクルの30~70%を含むとき、加熱炉1によって加熱された原料1をコークス塔bに切り替え、工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填工程をコークス塔bで繰り返し、加熱炉bを通して加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔aに供給して、コークス充填を継続する;
(3)工程(2)におけるコークス塔bの供給時間がコークス充填サイクルの30~70%を含むとき、加熱炉1によって加熱された原料1をコークス塔cに切り替え、工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填工程をコークス塔cで繰り返し、加熱炉bで加熱された原料2をコークス塔bに切り替え、このときにコークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(4)工程(3)におけるコークス塔cの供給時間がコークス充填サイクルの30~70%を含むとき、加熱炉1によって加熱された原料1をコークス塔aに切り替え、工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填工程を繰り返し、加熱炉bで加熱された原料2をコークス塔cに切り替え、このときにコークス塔bを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(5)工程(4)におけるコークス塔aの供給時間がコークス充填サイクルの30~70%を含むとき、加熱炉1によって加熱された原料1をコークス塔bに切り替え、工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填工程をコークス塔bで繰り返し、加熱炉bで加熱された原料2をコークス塔aに切り替え、このときにコークス塔cを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(6)工程(3)、工程(4)、及び工程(5)のプロセスを繰り返す。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、コークス塔は24~48時間のコークス充填サイクルを有し、ここで、コークス充填サイクルは、単一のコークス塔においてコークス形成原料及びコークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)のコークス充填時間の合計である。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、コークス形成原料の供給時間がコークス充填サイクルの30~70%であるとき、コークス塔へのコークス化原料は別のコークス塔に切り替えられる。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、加熱炉aの出口温度は400℃~460℃、好ましくは420℃~450℃の範囲であり、その上で、コークス塔内の塔内ガス速度は0.05~0.25m/s、好ましくは0.05~0.10m/sに制御される。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、加熱炉aの加熱速度は1~30℃/h、好ましくは1~10℃/hである。
【0134】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、加熱炉bの出口温度は460℃~530℃、好ましくは460℃~500℃の範囲内であり、その上で、コークス塔内の塔内ガス速度は0.10~0.30m/s、好ましくは0.15~0.20m/sに制御される。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、加熱炉bの加熱速度は30~150℃/h、好ましくは50~100℃/hである。
【0136】
本発明の好ましい実施形態によれば、コークス化方法によって使用されるコークス化システムは、3つのコークス塔、2組の加熱炉、分留塔、及びコークス引上げ原料貯蔵タンクを備え、3つのコークス塔をそれぞれコークス塔a、コークス塔b、及びコークス塔cと標記し、2組の加熱炉をそれぞれ加熱炉a及び加熱炉bと標記し、任意のコークス塔は2組の加熱炉と連通しており、任意のコークス塔の頂部はパイプラインを介して分留塔の入口と連通しており、分留塔の底部出口はコークス引上げ原料貯蔵タンクと連通しており、加熱炉bはコークス引上げ原料貯蔵タンク内の材料をコークス塔の供給温度まで加熱するためにコークス引上げ原料貯蔵タンクと連通しており、加熱炉aは新たな原料をコークス塔の供給温度まで加熱するために原料タンクと連通している。
【0137】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、コークス化方法の具体的な操作手順は以下の通りである:
(1)コークス形成原料を加熱炉によって加熱してコークス塔aに入れ、生成されたオイルガスを分留塔に入れ、生成されたオイルガスを分留塔に入れて分留し、ガス、コーカーガソリン、及びコーカーディーゼルと、塔底部におけるコーカーガスオイルとを得て、塔底部にあるコーカーガスオイルをコークス引上げ原料貯蔵タンクに導入する;
(2)工程(1)におけるコークス塔aの供給時間がコークス充填サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔aのコークス供給をコークス塔bに切り替え、コークス塔bは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、コークス塔aには加熱炉bを介して加熱されたコークス引上げ原料を供給して、コークス充填を継続する;
(3)工程(2)におけるコークス塔bの供給時間がコークス充填サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔bのコークス供給をコークス塔cに切り替え、コークス塔cは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔bに切り替え、このとき、コークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立てする;
(4)工程(3)におけるコークス塔cの供給時間がコークス充填サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔cのコークス供給をコークス塔aに切り替え、コークス塔aは工程(1)における方法を繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料をコークス塔cに切り替え、このとき、コークス塔aを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(5)工程(4)におけるコークス塔aの供給時間がコークス充填サイクル全体の30~70%を含むとき、コークス塔aのコークス供給をコークス塔bに切り替え、コークス塔bは工程(1)におけるコークス塔aのコークス充填プロセスを繰り返し、加熱炉bにより比較的高温に加熱されたコークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)をコークス塔aに切り替え、このとき、コークス塔cを蒸気パージ操作及び脱コークス化操作に供し、次回のコークス充填のために待機する状態となるように再組立する;
(6)工程(3)、工程(4)、及び工程(5)の方法を繰り返す。
【0138】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、コークス塔は24~48時間のコークス充填サイクルを有し、前記コークス充填サイクルは単一のコークス塔におけるコークス形成原料とコークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)の充填時間の合計である。
【0139】
本発明の一実施形態によれば、コークス化システムにおいて、コークス形成原料の供給時間がコークス充填サイクルの30~70%を含むとき、コークス塔へのコークス化原料を別のコークス塔に切り替える。
【0140】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、加熱炉aの出口温度は400℃~460℃、好ましくは420℃~450℃の範囲であり、その上で、コークス塔内の塔内ガス速度を0.05~0.25m/s、好ましくは0.05~0.10m/sに制御する。
【0141】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、加熱炉aの加熱速度は1~30℃/h、好ましくは1~10℃/hである。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、加熱炉bの出口温度は460℃~530℃、好ましくは460℃~500℃の範囲内であり、その上で、コークス塔内の塔内ガス速度を0.10~0.30m/s、好ましくは0.15~0.20m/sに制御する。
【0143】
本発明の一実施形態によれば、コークス化方法において、加熱炉bの加熱速度は30~150℃/h、好ましくは50~100℃/hである。
【0144】
以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0145】
図1に示すように:
(1)原料1を、まず、加熱炉2を通してコークス形成原料としてコークス塔4aに供給する。コークス塔4aによって生成されたオイルガスを、パイプライン5を介して分離塔6に供給して分離し、さらなる処理のために分離塔を出るガス7、ガソリン8、及びディーゼル9、並びに塔底部から分離塔を出るコーカーガスオイルを生成する。
(2)コークス塔4aの供給時間がコークス塔4aのコークス充填サイクルTの30~70%に達すると、コークス塔4aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス引上げ原料貯蔵タンク12内の補助コークス引上げ原料の、パイプライン13及び加熱炉14(ここで原料が加熱される)を介して濾過装置16を通した、コークス塔4aへの供給を開始する。コークス塔4a及び4bによって生成されたオイルガスを、分離塔6に供給して分離し、さらなる処理のために分離塔を出るガス7、ガソリン8、及びディーゼル9、並びに塔底部におけるコーカーガスオイルを生成し、その一部をパイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、もう一方の部分をパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合して、コークス塔4aに戻す。
(3)コークス塔4bの供給時間がコークス塔4bのコークス充填サイクルTの30~70%に達すると、コークス塔4bへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4cへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔4bへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4aへのコークス引上げ原料の供給を停止する。コークス塔4b及び4cによって生成されたオイルガスを、分離塔6に供給して分離し、さらなる処理のために分離塔を出るガス7、ガソリン8、及びディーゼル9、並びに塔底部におけるコーカーガスオイルを生成し、その一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、もう一方の部分を、パイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合し、コークス塔4bに戻す。
(4)待機状態のコークス塔4aの蒸気パージ及び脱コークス化を実施する;
(5)コークス塔4cの供給時間がコークス塔4cのコークス充填サイクルTの30~70%に達すると、コークス塔4cへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4aへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔4cへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4bへのコークス引上げ原料の供給を停止する。コークス塔4a及び4cによって生成されたオイルガスを分離塔6に供給して分離し、さらなる処理のために分離塔を出るガス7、ガソリン8、及びディーゼル9、並びに塔底部においてコーカーガスオイルを生成し、その一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、もう一方の部分を、パイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合し、コークス塔4cに戻す。
(6)待機状態のコークス塔4bの蒸気パージ及び脱コークス化を実施する;
(7)コークス塔4aの供給時間がコークス塔4aのコークス充填サイクルTの30~70%に達すると、コークス塔4aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔4aへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4cへのコークス引上げ原料の供給を停止する。コークス塔4a及び4bによって生成されたオイルガスを、分離塔6に供給して分離し、さらなる処理のために分離塔を出るガス7、ガソリン8、及びディーゼル9、並びに塔底部においてコーカーガスオイルを生成し、その一部をパイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、もう一方の部分をパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合し、コークス塔4aに戻す;
(8)待機状態のコークス塔4cの蒸気パージ及び脱コークス化を実施する;
(9)工程(3)~(8)を繰り返す。
【0146】
図2に示すように、針状コークス17のための新たな原料を加熱炉18によって加熱し、次いで、パイプライン19を介してコークス塔20に入れ、生成されたオイルガスをパイプライン21を介して分留塔22に入れて分離し、それぞれコーカーガス、ナフサ、コーカーディーゼル、及びコーカーガスオイルを生成し、これらを、パイプライン23、24、25、及び26を介してさらなる処理のために分留塔から出す。リサイクルされたコーカーガスオイルを、パイプライン27を介してコークス塔20に入れ、針状コークス製品をさらなる処理のために塔底部からコークス塔に出す。コークス塔20a及び20bを断続的な切替え方法で運転する。すなわち、コークス塔の供給量が最大かつ安全なコークス充填量に達したとき、供給を別のコークス塔に切替えて供給を継続し、第1のコークス塔は、蒸気パージ及び脱コークス化が行われて待機状態になる。
【0147】
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0148】
実施例及び比較例を含む本発明の文脈において、熱膨張係数は国際標準GB/T3074.4「黒鉛電極の熱膨張係数(CTE)の決定」に従って決定し、揮発性は石油化学標準SH/T0313「石油コークス試験方法」に従って決定し、真密度は国際標準GB/T6155「炭素材料の真密度の決定」に従って決定し、抵抗率はGB24525-2009「炭素材料の抵抗率の決定」に従って決定し、針状コークスの外観における流線形組織は裸眼によって直接評価した。
【0149】
実施例1
精油所からの触媒スラリーオイルをコークス化原料として使用した。スラリーオイルの具体的な分析特性を表1に示した。コークス塔の最大圧力は0.5MPaであり、コークス化手順のコークス製造サイクルは32hであった。本発明によって提供される3塔切り替えプロセスを実施した。工程(1)では、加熱炉1の出口温度は420~440℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は5℃/hであり、温度維持時間は12hであり、コークス塔内のガス速度を0.05~0.08m/sに制御した。工程(2)では、加熱炉2の出口温度は460~490℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は10℃/hであり、温度維持時間は13hであり、コークス塔内のガス速度を0.13~0.18m/sに制御した。工程(1)~(5)において、コーカーガスオイルは、350℃の10%留出温度、及び460℃の90%留出温度を有していた。コークス塔へのコークス引上げ原料を用いたコークス充填プロセスでは、引上げ/形成比(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)を1.0に制御した。コークス引上げ原料中のコークス微粒子の濃度は20mg/L以下に制御した。3塔プロセスで得られた針状コークスの異なるバッチの特性を表2に示した。
【0150】
具体的には、針状コークスを製造するためのコークス形成材料として精油所からの触媒スラリーオイルを用い、スラリーオイルの具体的な分析特性を表1に示し、そのコークス形成率Aは40%であった。補助コークス引上げ原料は、分離塔6からのコーカーガスオイル(コークス引上げ原料貯蔵タンク12に一時的に貯蔵される)であり、10%留出点温度は350℃、90%留出点温度は460℃であり、コークス形成率Bは10%であった。コークス塔のコークス充填サイクルTは32hであった。具体的な操作は以下の通りであった:
(1)原料1を加熱炉2によって加熱し、コークス形成原料としてコークス塔4aに供給した。加熱炉2の出口は、温度可変、温度一定のモードで制御した。可変温度範囲は420~440℃であり昇温速度は5℃/hであった。コークス塔4aの最大圧力は0.5MPaであった。コークス塔4aにより生成されたオイルガスは、パイプライン5を介して分離塔6に供給した。分離塔6の最大圧力は0.5MPaであり、塔頂部温度は150℃であり、塔底部温度は350℃であった。オイルガスを分離して、さらなる処理のために分離塔を出たガス7、ガソリン8及びディーゼル9、並びに塔底部から分離塔を出たコーカーガスオイルを生成した。
(2)コークス塔4aの供給時間がコークス塔4aのコークス充填サイクルTの50%に達したとき、コークス塔4aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス引上げ原料貯蔵タンク12中の補助コークス引上げ原料を、パイプライン13(ここでコークス引上げ原料中のコークス微粒子の濃度を20mg/L以下に制御した)及び加熱炉14(ここで原料を加熱した)を介して濾過装置16を通してコークス塔4aに供給した。加熱炉14の出口温度は460~490℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は10℃/hであった。コークス塔4a及び4bの最大圧力は0.5MPaに制御した。コークス塔4a及び4bで発生したオイルガスを分離塔6に供給し、分離塔6の最大圧力は0.5MPa、塔頂部温度は150℃、塔底部温度は350℃とし、分離して、さらなる処理のために分離塔を出たガス7、ガソリン8及びディーゼル9、並びに塔底部においてコーカーガスオイルを生成した。場合によっては、コーカーガスオイルの一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、残りの部分はパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合してコークス塔4aに戻した。引上げ/形成比率(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)を1.0に制御した。
(3)コークス塔4bの供給時間がコークス塔4bのコークス充填サイクルTの50%に達したとき、コークス塔4bへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4cへのコークス形成原料の供給を開始した。加熱炉2の出口は、温度可変、温度一定のモードで制御した。可変温度範囲は420~440℃であり昇温速度は5℃/hであった。コークス塔4bへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4aへのコークス引上げ原料の供給を停止した。加熱炉14の出口温度は460~490℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は10℃/hであった。コークス塔4b及び4cの最大圧力を0.5MPaに制御した。コークス塔4b及び4cで発生したオイルガスを分離塔6に供給し、分離塔6の最大圧力は0.5MPa、塔頂部温度は150℃、塔底部温度は350℃とし、分離して、さらなる処理のために分離塔を出たガス7、ガソリン8及びディーゼル9、並びに塔底部においてコーカーガスオイルを生成した。場合によっては、コーカーガスオイルの一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、残りの部分はパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合してコークス塔4bに戻すし。引上げ/形成比率(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)を1.0に制御した。
(4)コークス塔4aの蒸気パージ及び脱コークス化を行い、待機状態とした;
(5)コークス塔4cの供給時間がコークス塔4cのコークス充填サイクルTの50%に達したとき、コークス塔4cへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4aへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔4cへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4bへのコークス引上げ原料の供給を停止した。加熱炉2の出口を、温度可変、温度一定のモードで制御した。可変温度範囲は420~440℃であり昇温速度は5℃/hであった。加熱炉14の出口温度は460~490℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は10℃/hであった。コークス塔4a及び4cの最大圧力を0.5MPaに制御した。コークス塔4a及び4cで生成したオイルガスを分離塔6に供給し、分離塔6の最大圧力は0.5MPa、塔頂部温度は150℃、塔底部温度は350℃とし、分離して、さらなる処理のために分離塔を出たガス7、ガソリン8及びディーゼル9、並びに塔底部においてコーカーガスオイルを生成した。場合によっては、コーカーガスオイルの一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、残りの部分はパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合してコークス塔4cに戻した。引上げ/形成比率(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)を1.0に制御した。
(6)コークス塔4bの蒸気パージ及び脱コークス化を行い、待機状態とした。
(7)コークス塔4aの供給時間がコークス塔4aのコークス充填サイクルTの50%に達したとき、コークス塔4aへのコークス形成原料の供給を停止し、同時にコークス塔4bへのコークス形成原料の供給を開始し、コークス塔4aへのコークス引上げ原料の供給を開始し、コークス塔4cへのコークス引上げ原料の供給を停止した。加熱炉2の出口は、温度可変、温度一定のモードで制御した。可変温度範囲は420~440℃であり昇温速度は5℃/hであった。加熱炉14の出口温度は460~490℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行い、加熱速度は10℃/hであった。コークス塔4a及び4bの最大圧力を0.5MPaに制御した。コークス塔4a及び4bで発生したオイルガスを分離塔6に供給し、分離塔6の最大圧力は0.5MPa、塔頂部温度は150℃、塔底部温度は350℃とし、分離して、さらなる処理のために分離塔を出たガス7、ガソリン8及びディーゼル9、並びに塔底部におけるコーカーガスオイルを生成した。場合によっては、コーカーガスオイルの一部を、パイプライン10を介してコークス引上げ原料貯蔵タンク12に供給し、残りの部分はパイプライン11を介してリサイクルし、パイプライン13からの補助コークス引上げ原料と混合してコークス塔4aに戻した。
(8)コークス塔4cに対して蒸気パージ及び脱コークス化を行い、待機状態とした;及び、
(9)(3)~(8)の工程を繰り返し、針状コークスの安定した生産を開始した。
【0151】
3塔プロセスで得られた針状コークスの異なるバッチの特性を表2に示した。
【0152】
比較例1
実施例1と同じコークス形成原料を使用した。コークス充填サイクルTは32hであった。
図2に示す従来の2塔切替操作を行った。針状コークス17のための新たな原料を、加熱炉18によって加熱し、次いでパイプライン19を介してコークス塔20に入れた。加熱炉18の出口は、可変温度及び一定温度のモードで制御した。可変温度範囲は420~440℃であり、昇温速度は5℃/hであった。コークス塔20の最大圧力は0.5MPaであった。
【0153】
生成されたオイルガスはパイプライン21を介して分留塔22に供給し、分留塔22の最大圧力は0.5MPaであり、塔頂部温度は150℃であり、塔底部温度は350℃であり、分離して、コーカーガス、ナフサ、コーカーディーゼル及びコーカーガスオイルをそれぞれ生成し、これらはさらなる処理のためにパイプライン23、24、25及び26を介して分留塔から出した。リサイクルされたコーカーガスオイルを、パイプライン27を介してコークス塔20に供給した。引上げ/形成比率(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)は1.0であった。コークス塔の供給時間がコークス塔のコークス充填サイクルTの50%に達したとき、加熱炉18の出口温度は440℃の開始温度から5℃/hの昇温速度で500℃にまで上昇した。コークス塔の供給時間がコークス塔のコークス充填サイクルTの100%に達したとき、供給を別のコークス塔に切り替え、コークス充填を開始した。上記のプロセスを繰り返した。針状コークス製品をコークス塔底部から排出した。得られた針状コークスの異なるバッチの特性を表2に示した。
【0154】
【0155】
【表2】
実施例2
針状コークスを製造するために、実施例1と同じ装置及びコークス形成原料を使用した。補助コークス引上げ原料は、分離塔6からのコーカーガスオイル(コークス引上げ原料貯蔵タンク12に一時的に貯蔵された)であり、10%留出温度が330℃、90%留出温度が480℃であり、コークス生成率Bは20%であった。コークス塔のコークス充填サイクルTは40hであった。コークス塔の最大圧力は0.8MPaであった。加熱炉2の出口温度は400~460℃であり、昇温手順及び温度維持手順を行ったところ、昇温速度は4℃/hであった。コークス塔への加熱炉2によるコークス充填プロセスでは、コークス塔内のガス速度を0.07~0.10m/sに制御した。加熱炉14の出口温度は470~510℃であり、加熱速度は10℃/hであった。コークス塔への加熱炉14によるコークス充填プロセスでは、コークス塔内のガス速度を0.18~0.25m/sに制御した。コークス塔へのコークス引上げ原料(コーカーガスオイル等)のコークス充填プロセスでは、引上げ/形成比(コークス引上げガス原料のコークス形成原料に対する比率)を2.0に制御した。コークス引上げ原料中のコークス微粒子の濃度は10mg/L以下に制御した。分留塔の最大圧力は0.2MPaであり、塔頂部温度は100℃であり、塔底部温度は330℃であった。その他の条件は実施例1と同様であった。3塔プロセスで得られた針状コークスの異なるバッチの特性を表3に示した。
【0156】
比較例2
実施例2と同じコークス形成原料を使用した。コークス充填サイクルTは40hであった。加熱炉18の出口は温度可変及び温度一定のモードで制御し、温度可変範囲は420~460℃であり加熱速度は4℃/hであった。コークス塔20の最大圧力は0.8MPaであった。分留塔の最大圧力は0.2MPaであり、塔頂部温度は100℃であり、塔底部温度は330℃であった。引上げ/形成比率(コークス引上げ原料のコークス形成原料に対する比率)は0.5であった。コークス塔の供給時間がコークス塔のコークス充填サイクルTの50%に達したとき、加熱炉18の出口温度は460℃の開始温度から4℃/hの昇温速度で500℃まで上昇した。その他の条件は、比較例1と同様であった。得られた針状コークスの異なるバッチの特性を表3に示した。
【0157】
【図面の簡単な説明】
【0158】
【
図1】
図1は、本発明のコークス化システムの例示的な概略図であるが、本発明はそれに限定されない。
【
図2】
図2は、従来技術による1つの加熱炉及び2つの塔の切替コークス化システムである。